金 日 成

自主性を堅持しよう
 ベネズエラ社会主義運動党第1副委員長との談話
−1981年9月7日− 


 私は、ベネズエラの著名な政治活動家であるあなたと会えてうれしく思います。

 私は、あなたの今回の我が国訪問と、特に食糧・農業増産にかんする非同盟およびその他発展途上諸国の討論会での活躍にたいして、たいへん感謝しています。

 きょうあなたは、我が党と朝鮮人民にたいし、いろいろと立派な励ましの言葉を述べてくれました。これにたいして謝意を表します。

 私はまた、ベネズエラ社会主義運動党が朝鮮人民の祖国統一偉業に積極的な支持声援をよせ、ことに朝鮮の統一のためあなたが積極的に活動されていることにたいして感謝の意を表します。

 ただいまベネズエラ社会主義運動党の対外政策と貴党の堅持している革命的方針についてのお話がありましたが、私は貴党の路線と政策を全面的に支持します。

 自主性を堅持する点において、我が党と貴党の立場は完全に一致していると思います。党および国家活動において自主性を堅持するのは、現代の要請にかなった最も正しい政策です。

 もちろん我々は、マルクスやレーニンなどの革命の先輩から革命闘争の理論と方法を学びました。しかし、かれらの示した革命理論や方法をいつまでも教条主義的に適用することはできません。歳月の流れとともに、時代の性格や社会的環境、革命の対象はかわります。革命の対象がかわる以上、革命の性格もかわり、革命の理論と方法もかわるべきです。

 マルクスは、発達した資本主義諸国で革命が連続的に起こり、世界革命が勝利するものとみました。かれは、発達した資本主義諸国で革命が起これば、植民地民族解放運動はおのずと勝利するものと考えました。しかし、歴史は、マルクスの予見どおりには発展しませんでした。歴史が示しているように、革命は発達した資本主義諸国で連続的に起こったのではなく、後進諸国で先に起こりました。

 レーニンの功績は、立ち後れた資本主義国のロシアで革命の勝利を達成したことです。ロシア革命は、レーニンが指導しました。レーニンの指導のもとに遂行されたロシア革命は、世界革命の前進に大きく寄与しました。ロシア革命の勝利は、世界の被抑圧民族と後進諸国の人民に、革命闘争をすれば勝利できるという確信を与えました。

 しかし歴史的事実は、レーニンの方法が革命勝利の唯一の道ではないことを示しています。世界のすべての国が、レーニンの革命闘争の方式どおりに革命をおこなうわけにはいきません。

 革命は、輸出することも、輸入することもできません。革命闘争で提起されるすべての問題は、自国人民の力に依拠し、自国の実情に即して解決しなければなりません。

 現代は自主性の時代です。

 第2次世界大戦後、世界の多くの国が独立を達成しました。フランス、イギリス、スペイン、ポルトガル、オランダなどが多くの植民地をもち、世界の各大陸を支配した時代はすでに過ぎ去りました。かつて植民地的従属下にあった国々が、いまではほとんど解放されました。いまなお民族の独立を達成していないのは、南部アフリカなど一部地域のいくつかの国だけです。

 こんにち、民族の独立をかちとった各国人民の最も重要な問題は、いかにして国の政治的独立を強固にし、自主性を守りぬくかということです。

 自主性は、国家と民族の生命です。すべての国は、誕生するときから自主権をもっています。自主権をもたない国は、真の独立国とはいえません。

 国家相互間には、領土と人口のうえで大小の差はあっても、上下の差別はありえません。国家相互間に上下の主従関係は、絶対にあってはなりません。

 党の場合にしても同じことが言えます。あなたが言われたように、党相互間に親と子、祖父と孫、長兄と弟といった関係はありえません。私は、党相互間で自主性の原則の遵守を求めるあなたがたの主張は極めて正しいものであると考えます。あなたがたの主張は、我が党の主張と完全に一致します。我が党は常に、すべての国と党が自主性を堅持することを主張しています。

 すべての国が、政治的独立をかため、自主性を堅持するためには、自立的民族経済を建設しなければなりません。自立的民族経済を建設するということは、自国人民の力に依拠し、自国の実情にかなった経済を建設して経済的自立を達成することを意味します。

 経済的自立は、政治的独立と自主性の物質的基礎です。経済的に自立しなければ、他国への政治的従属をまぬがれず、民族的不平等からぬけ出すことができません。経済的に自立してこそ、政治的独立を強固にし、自主性を堅持し、民族の自由な発展を保障することができます。

 政治的独立を達成した国が、自立的民族経済を建設せず、経済分野で他国に依存するならば、それは事実上、他国への従属を意味し、真の独立を達成したとはいえません。社会主義を建設する国であっても、経済的に他国に従属すれば、いかに社会体制が進歩的で、反帝スローガンをかかげても、政治的独立を喪失したのとかわりありません。

 人民が帝国主義とたたかう目的は、国の政治的独立を達成して自主性を実現することにあります。しかし、帝国主義の植民地支配から解放されたのち、経済的自立を達成できず、ふたたび経済的に他国に従属するならば、政治的独立を達成した意味がなくなります。それは結局、ある形の従属を他の形の従属にかえたにすぎないからです。自主性を失い、自主権を行使できない国は、けっして自主独立国とはいえません。

 我々は国家だけでなく、人間も自主性を堅持することを主張します。

 朝鮮には、かつて我々が抗日革命闘争の初期からうたった歌があります。朝鮮の青年は、いまもその歌を好んでうたいます。その歌には、人は人として自由権をひとしくもって生まれしもの、自由権なければ生ける屍、生命すてても自由は守る、というくだりがあります。

 人間はなにものにも拘束されず、自由に生きようとする欲求をもっています。世界の主人として、自由に生きようとする人間の性質を自主性といいます。

 人間は、自主性とともに創造性をもっています。人間が創造性をもっているということは、自分の意思と要求にそって自然と社会を改造する、創造的能力をもっていることを意味します。

 自主性と創造性は、人間の最も本質的な属性です。人間は自主性と創造性をもっているがゆえに、あらゆるものの主人、すべてを決定する要因となります。

 人間の自主性と創造性は、密接なつながりをもっており、統一的に発現します。人間は、自主性があってこそ創造性を発揮することができ、創造性を発揮してこそ自主性を堅持することができます。人間に自主性がなければ創造性を発揮できず、創造性が発揮できなければ自主性を実現することができません。

 自主性と創造性は、人間の本質的属性ではありますが、それは先天的なものではありません。我が国では、人間が生まれたときから、その自主性と創造性をつちかうために努力しています。我々は、幼年期から青年期をへて成人になるまで、かれらの自主性と創造性をはぐくんでいます。

 第3世界諸国、アジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国の人々は、朝鮮の現実を見て、そんな大きな力の源はどこにあるのかとたずねます。我々の力は、全人民が国の主人としての高い自覚をもち、自主性と創造性を発揮して働くところにあります。人民大衆の力は無尽蔵です。したがって、人民大衆の力を信じ、それに依拠してすべての問題を解決することが極めて大切です。

 チュチェ思想は、人間本位の哲学です。チュチェ思想は、すべてを人間中心に考察し、人間の運命を切り開く方途を示します。我々にチュチェ思想があり、全人民がチュチェの世界観で武装しているところに、我々の必勝不敗の力の源があるのです。

 我々はチュチェ思想をもっているがゆえに、日本帝国主義との戦いでも勝利し、アメリカ帝国主義との戦いでも勝利しました。また、戦争でことごとく破壊された廃墟の上に、こんにちのような立派な国を建設することができました。

 全朝鮮人民がチュチェ思想で武装しているので、我々は国の統一も十分達成できると思っています。

 朝鮮の統一は時間の問題です。

 現在、アメリカ帝国主義者は、南朝鮮に原子爆弾や最新式戦闘機を持ちこんで連日爆撃演習をおこない、我々を威嚇しています。しかし、朝鮮人民はそれを恐れていません。アメリカ帝国主義者が朝鮮で新たな戦争を起こすとしても、朝鮮人民を全滅させることはできません。朝鮮人民は最後の一人までアメリカ帝国主義侵略者と戦い、必ず勝利するでしょう。

 現在、南朝鮮の青年と人民のあいだでは、チュチェ思想を学ぼうとする気運が日ましに高まっています。以前は、南朝鮮人民のあいだに崇米・恐米思想がはびこっていました。言いかえれば、南朝鮮人民のあいだには、アメリカ帝国主義を恐れ、アメリカを崇拝する思想がありました。しかし日がたつにつれ、南朝鮮人民はアメリカは恐れるほどの存在ではなく、アメリカ帝国主義者こそ悪い連中であると認めています。南朝鮮人民のあいだでは、しだいに崇米・恐米思想がなくなりつつあり、チュチェ思想にたいする信頼感がますます強まっています。

 チュチェの世界観で武装し、チュチェ思想の示す道にそって進む朝鮮人民はこれまでと同じく、今後も必ず勝利するという自信にみちています。

 こんにち国際情勢は複雑を極めています。

 アメリカ帝国主義者の侵略と戦争策動のため、情勢は極度に緊張しており、新たな世界大戦の危険が日ましに増大しています。いま世界大戦勃発の危険は朝鮮にもあり、東南アジアとヨーロッパにもあります。しかし、ヨーロッパが自主の道を進み、アジアで日本が自主の道を進むならば、世界大戦は防止できます。

 私は最近、我が国を訪問したヨーロッパのある国の代表団との会見で、ヨーロッパの発達した資本主義国であるフランス、西ドイツ、イギリスなどが自主の道を進み、全ヨーロッパが自主化すれば、新たな世界大戦を防止することができるだろうといいました。いま日本のある政治家が訪朝中ですが、私はかれにも、日本が自主の道を進むことを勧めるつもりです。

 我々は、反米闘争2つの側面から展開しなければなりません。

 その1つは、革命的な方法でアメリカ帝国主義の五体を引き裂くことです。革命を進めている国々が一致してアメリカ帝国主義の手足をあっちでもこっちでも切り取るといったふうに、五体を引き裂くべきです。すなわち、アメリカ帝国主義が侵略の触手をのばしているすべてのところで、かれらに反対する革命闘争を強力にくりひろげなければなりません。

 他方では、政治的側面からアメリカ帝国主義の五体を引き裂かなければなりません。政治的にアメリカ帝国主義の五体を引き裂くというのは、すべての国が自主性を堅持し、アメリカ帝国主義者に追随しないということです。そうすれば、アメリカ帝国主義者は国際的に孤立し、もはや支配者として君臨できなくなるでしょう。

 アメリカ帝国主義者は久しい前からよその国を互いに戦わせ、そこから漁夫の利を得る狡猾な術策を弄しています。

 アメリカ帝国主義者は第1次世界大戦のときも、このような手口で労せずして莫大な利益を得ました。第1次世界大戦でドイツとロシアが戦っているときに、アメリカ帝国主義者はその中間でぼろもうけをしました。第2次世界大戦のときにも、アメリカ帝国主義者は損失をこうむりませんでした。こうして結局、かれらは肥大化しました。

 アメリカ帝国主義者は現在もやはり、過去と同じ手口を用いています。いまかれらは、アジアではアジア人同士戦わせ、ラテンアメリカでは一部の大きな国を手なずけて、他の小さな国々を支配しようとしています。かれらは、アフリカと中近東でもこのように策動しています。

 アメリカ帝国主義者の従属下にある国々が、彼らに追随せず、世界各国人民が自主の道を進むならば、アメリカ帝国主義は政治的に孤立し、無力な存在になるでしょう。したがって、新たな世界大戦を防止し、世界の平和を維持するためには、世界のすべての国が自主性を擁護し固守するたたかいを積極的に展開しなければなりません。

 アメリカ帝国主義者は、世界各国人民が自主の道を進むのを最も恐れています。アメリカ帝国主義者が朝鮮人民を恐れるのは、我々に原子爆弾があるからではなく、朝鮮人民がチュチェ思想で武装し、自主性を堅持しているからです。かれらが、今回の食糧・農業増産にかんする非同盟およびその他発展途上諸国の討論会に、ベネズエラが政府代表団を派遣しないように圧力を加えたのも、ベネズエラ人民が自主の道を進むのを恐れたからだと思います。

 私は、自主性を堅持するという我々両党の主張は正しいものだと考えます。我々の進路は正確であり、我々のなすことは正当であります。私は、ベネズエラ社会主義運動党の堅持している自主路線が、我が党の堅持している自主性と一致することをうれしく思います。両党は今後もひきつづき自主性を堅持していくべきです。

 我々は、いかなる国でも自主の道を進むのを歓迎するでしょう。それは、自主の道を進むのが人民の利益に合致するからです。

 自主の旗をかかげて進む人民は必ず勝利するでしょう。私は、ベネズエラ社会主義運動党が、人民を自主の精神で呼び起こしてかたく結集し、自主の旗を高くかかげて進むならば、必ず勝利するものと確信します。

 あなたが帰国されたら、ベネズエラ社会主義運動党の委員長と書記長に私のあいさつを伝えてくださるようお願いします。そして、我が党がかれらを招請するということも伝えてください。かれらが朝鮮を訪問すれば、我々は熱烈に歓迎するでしょう。我々の対面が実現すれば、立派な戦友として、同志として多くの問題が討議されるでしょう。

 私はきょう、あなたと話し合えたことをたいへんうれしく思っています。我々にたいするあなたの立派なお言葉に、私は大きく励まされました。

 私は、両党が大洋をへだてて遠く離れていても、今後手を取りあって世界各国人民の自主性を擁護するため、ともにたたかうよう望みます。

 帰国されたら、ベネズエラ社会主義運動党の指導部と貴党の全党員に送る我が党のあいさつを伝えてください。

出典:『金日成著作集』36巻


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