金 日 成

スペイン共産党機関紙『ムンド・オブレロ』主筆と
スペイン無所属新聞『エルパイス』国内報道担当主筆の
質問に対する回答
-1980年11月28日-


  西欧諸国との政治・経済関係についてどうお考えですか。


  我々は、我が国に友好的な資本主義諸国とも、平和共存の原則で友好関係を結び、仲良くすることを望んでいます。

 我々は、これらの国と国家関係を結び、有無相通ずる原則で貿易関係を発展させ、科学技術協力と文化交流を発展させるのも悪くないと考えています。

 これは我が党の対外政策です。


  貴国とスペインのあいだにはいかなる関係も存在していません。

 あなたは両国の関係樹立を希望しておられるのでしょうか。この関係樹立の展望はどうでしょうか。


  我々は、完全な平等と相互尊重、内政不干渉の原則でスペインと国家関係を結び、貿易関係や文化交流なども発展させることができると思います。

 我が国とスペインが友好関係を結び、それを発展させるのは、両国人民の利益にかなうばかりか、世界の平和と安全保障の偉業にも有益であると考えます。


  現在、中国とソ連とのあいだに生じている緊張に対し、朝鮮はどのような立場をとっているのでしょうか。

 貴国とモスクワ政府、また北京政府との関係はどのようなものでしょうか。


  中国とソ連はいずれも社会主義国です。ところが現在、中国とソ連のあいだには意見相違があり、そのため両国の関係が冷たくなっているのは事実です。

 我々は、両国の意見相違が解消され、すべてが好ましく解決されるよう願っています。

 我々は、兄弟諸国を分裂させたり、団結を妨げるようなことはせず、団結に有益で、統一の助けとなることだけをしています。

 我が国と中国、ソ連との関係についていうならば、これらの国はともに過去の困難な闘争の過程で我が国と友好関係を結んだ兄弟国なので、我々は中国とも団結し、ソ連とも団結する政策を終始一貫堅持しています。そのため、現在我が国とこれらの国との友好・協力関係はすべての分野にわたって好ましく発展しています。


  あなたは貴党の第6回大会で、貴国の北と南の連邦制を実施することを提案されました。相異なる社会体制が存在する状況のもとで、そのような提起が具体的にはどうすることを意味するのでしょうか。


  解放後、今日にいたるまで、我が国の北と南には長いあいだ相異なる体制が存在してきました。共和国北半部には社会主義体制が現存し、南半部には資本主義体制が現存しています。こうした状況のもとで、民族の団結を達成し、祖国の統一を実現するためには、ある一方の体制を絶対化してはならないと考えます。もし北と南がそれぞれ自分の体制を絶対化し、それを相手側に強要するならば、不可避的にに対決と衝突をもたらすようになります。そうなれば、統一はおろか、かえって分裂を深める結果をまねくでしょう。それで我々は、体制上の統一ではなく、まず民族の統一を実現して、分裂による民族の苦痛を軽減しようというのです。

 思想と体制が異なるからといって、国の分断状態を際限なくのばしてはならず、また統一が大事で切実であるからといって、既に30余年ものあいだ持続してきた双方の現実を無視してもなりません。そのため我が党は、このたびの第6回党大会で、北と南がともに相手側に現存する思想と体制をそのまま容認する基礎のうえで、双方が同等に参加する民族統一政府を組織し、そのもとで北と南が同等の権限と義務をもち、それぞれ地域自治制を実施する連邦共和国を創立して祖国を統一するという方案をうちだしたのです。

 連邦形式の統一国家では、双方の同数の代表と適当数の海外同胞代表で最高民族連邦会議を構成し、そこに連邦常設委員会を組織して北と南の地域政府を指導させ、連邦国家の全般的な活動を管轄させるのが合理的であると考えます。

 最高民族連邦会議とその常任機構である連邦常設委員会は連邦国家の統一政府として、政治、国防、対外関係など、国家と民族の全般的利益にかかわる共通の問題を討議、決定することになるでしょう。そして、各分野にわたって北と南の団結と合作を実現すべきです。

 連邦国家の統一政府は、北と南に現存する社会体制と行政組織、各党、各派、各階層の意思を尊重し、ある一方が他方に自己の意思を強要できないようにすべきです。

 北と南の地域政府は、連邦政府の指導のもとに、全民族の根本的利益と要求に合致する範囲内で独自の政策を実施し、すべての分野で双方の差をせばめ、国家と民族の統一的発展を遂げるために努力すべきです。

 連邦国家は、いかなる政治的・軍事的同盟やブロックにも加担しない中立国、非同盟国になるべきです。相異なる思想と体制をもつ状況のもとで、連邦国家が中立国となるのは必然的であり、最も合理的なことであると考えます。


  貴国の南半部で弾圧されている人々のために、ヨーロッパ諸国が、具体的にはスペインができることはどういうことだとお考えですか。


  今日、南朝鮮では、アメリカの差し金による軍事ファシスト一味の策動のため、人民の自由と権利が無残に踏みにじられています。

 軍事ファシスト一味は、南朝鮮全域に「非常戒厳令」を宣布し、政党、大衆団体、個別的人士のあらゆる政治活動を完全に禁止しています。かれらは、社会の民主化と祖国の統一を要求する金大中をはじめ、南朝鮮の著名な民主人士と政治活動家を手当たりしだいに逮捕、投獄し、「内乱陰謀罪」だの、「反共法違反罪」だのといつた途方もない罪名を着せて、過酷に弾圧しています。

 南朝鮮の軍事ファシスト一味が強行している弾圧蛮行は、その残酷さにおいて世界のあらゆるファッショ独裁者をはるかにしのいでいます。

 南朝鮮で現在のような過酷な軍事ファッショ支配が実施されている状況のもとでは、民族の和解と団結については考えることすらできません。

 弾圧がはげしければはげしいほど、人民の不満と抵抗はさらに大きくなるでしょう。これは結局、人民の暴力的進出をもたらし、そうなれば朝鮮半島の情勢を極度に緊張させるようになるでしょう。

 我々は、スペインと他のヨーロッパ諸国の人々が、南朝鮮における、こうしたゆゆしい事態に深い関心を払う必要があると考えます。

 南朝鮮のこうした事態を拱手傍観するならば、それはすべての朝鮮人民に不幸をもたらすばかりか、アジアと世界の平和偉業にも重大な悪結果をもたらすようになるでしょう。

 我々は、スペインとその他のヨーロッパ諸国が、南朝鮮のファシスト一味の弾圧政治に反対する運動を幅広くくりひろげ、軍事独裁者が「政権」の座からしりぞかざるをえなくなるよう、強い圧力を加える必要があると思います。同時に、不当に逮捕、拘禁され、処刑されている金大中をはじめ、民主人士と愛国的人民の釈放・救出運動を、さまざまな形で力強く展開することが極めて重要であると考えます。

 ヨーロッパ諸国人民をはじめ、世界各国人民の積極的な支持声援のもとに、南朝鮮人民が軍事ファッショ支配を一掃し、社会の民主化を実現するなら、祖国の平和統一偉業に有利な局面が開かれるでしょう。


  チュチェ思想とはどういうものかについて、スペインの共産主義者たちに説明していただきたいと思います。


  チュチェ思想は我が党の指導思想であり、朝鮮民主主義人民共和国のあらゆる活動の指導指針です。

 我々は、革命と建設においてチュチェ思想を確固たる指導指針とし、すべての分野で主体性を確立しています。

 チュチェ思想とは一言でいって、革命と建設の主人は人民大衆であり、革命と建設をおし進める力も人民大衆にあるという思想です。いいかえれば、チュチェ思想は、自己の運命の主人は自分自身であり、その運命を切り開く力も自分自身にあるという思想です。

 チュチェ思想は、人間があらゆるものの主人であり、すべてを決定するという哲学的原理に基づいています。

 チュチェ思想は、世界における人間の地位と役割を科学的に解明することによって、自然と社会に対する最も正しい見解を与え、世界を認識し改造する強力な武器を与えます。

 チュチェ思想は、あらゆるものを人間中心に考察し、人間に奉仕させることを要求します。

 あらゆるものを人間中心に考察し、人間に奉仕させるということは、人間の自主性を擁護し、人間の役割を高めることに力点をおいて考察し、行動することを意味します。

 チュチェ思想はまた、革命と建設において自主的立場と創造的立場を堅持することを要求します。

 革命と建設の主人は人民大衆であるので、人民大衆は当然、革命と建設に対して主人としての態度をとらなければなりません。勤労人民大衆は、革命の主人としての自覚をもち、自主的立場と創造的立場を堅持してこそ、革命と建設で提起されるあらゆる問題を、自国人民の利益と自国の実情に即して、自力で立派に解決していくことができます。

 革命は輸出することも、輸入することもできません。他国の人が革命を肩がわりすることはできません。個々の国の革命の主人はその国の人民自身であり、革命勝利の決定的な要因もその国自体の力です。

 国ごとに実情が異なり、そのうえ労働者階級と人民大衆の革命運動の発展に伴い、以前には提起されなかった困難かつ複雑な問題が新たに数多く提起されています。したがって個々の国の革命においては、まず主人であるその国の人民自身が努力してたたかうべきであり、革命と建設におけるすべての問題を自分で考え、判断し、自力で自国の実情に即して解決しなければなりません。こうしてこそ、革命と建設を立派に遂行することができます。

 チュチェ思想を具現するうえで重要な問題は、思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛の原則をつらぬくことです。

 思想において主体性を確立するということは、一言でいって、主人としての自覚をもって、自国の革命と建設に主人らしく参加する思想と観点を確立することを意味します。

 思想において主体性を確立できなければ、独自の思考力が鈍って、どのような創意住も発揮することができず、ついには正否の区別もつかず、あたまから他国に追従するようになります。このように独自性と自主性を失えば、結局は革命と建設事業を台無しにしてしまいます。

 次に、政治において自主性を堅持しなければなりません.

 政治において自主性を堅持してこそ、国の独立と民族の尊厳を守り、人民大衆の自由と権利を実質的に保障することができます。したがって個々の党は、すべての路線と政策を自国の実情に即して独自に立て、実行しなければなりません。

 チュチェ思想を全面的に具現するためにはまた、経済において自立の原則をかたく守らなければなりません。

 経済的自立は政治的独立の物質的基礎であります。経済的に他国に従属したり依存するならば、政治的にも他国に従属せざるをえません。それゆえ、個々の国の人民は自力更生の精神を発揮して、自立的民族経済を建設する方向に進まなければなりません。

 チュチェ思想を具現するためにはまた、国防において自衛の原則をしっかりと守らなければなりません。

 自衛的な国防力があってこそ、外部勢力の侵略から民族の自主権を守り、革命と建設の成果を守ることができます。

 我が党は、朝鮮革命を遂行する全期間にわたってチュチェ思想を確固たる指導思想とし、それを革命と建設のすべての分野に具現することによって、輝かしい勝利をおさめることができました.

 我々は今後もチュチェ思想の旗を高くかかげ、革命と建設を力強くおし進めていくでしょう。


  国際共産主義運動発展の展望についてどうお考えでしょうか。


  国際共産主義運動は、帝国主義をはじめとするあらゆる反動勢力と対峙している強力な革命勢力です。国際共産主義運動が団結した力で進むならば、帝国主義に反対し、平和をめざすたたかいで大きな役割を果たすであろうことは、疑う余地もありません。

 しかし今日、共産党、労働者党は意見相違のため、統一団結を達成できずにいます。そのため、世界革命において当然果たすべき役割を果たしていません。

 我々は、世界のすべての共産党、労働者党が革命の根本的利益から出発して、団結を第一とし、これにすべてを服従させるべきだと考えます。共産党、労働者党は、意見相違を後回しにし、共通点を探して団結するために努力すべきです。

 意見相違のため、今は国際共産主義運動が団結していませんが、各国の共産党、労働者党が互いに自主性を尊重し、団結するために努力するならば、今後、統一団結は回復し、帝国主義に反対し、社会主義・共産主義偉業の勝利をめざすたたかいで、歩調をあわせることができるようになると考えます。

 我が党はこれまでと同様、今後とも自主性の旗を高くかかげ、国際共産主義運動の統一と団結を達成するためあらゆる努力を傾けるでしょう。

出典:金日成著作集 35巻

ページのトップ
inserted by FC2 system