金 日 成

特務長の位置と任務について
朝鮮人民軍特務長講習終了式でおこなった演説 
1979年10月25日

 同志の皆さん!

 私はまず、党中央委員会と共和国政府および党中央委員会軍事委員会、そして私自身の名で、人民軍と人民警備隊の下士・兵士の長兄として、常に中隊の生活と管理に責任をもち、中隊の強化のため尽力しているすべての特務長にあつい感謝を送ります。

 私はここで、特務長の位置と任務について若干述べようと思います。

 人民軍の内務規定をはじめ、各種の軍事規定には、特務長の位置と任務が明確に示されています。こんにちの革命発展の要求と人民軍に提起されている課題にてらして、特務長の位置と任務は極めて重要なものです。

 皆さんも知っているとおり、中隊は人民軍の基礎組織であり、基本戦闘単位であります。ですから、人民軍を強化するには、中隊を強化することが何よりも重要です。人間が健康であるためには、人体を構成している細胞が丈夫でなければならないように、人民軍を強化するためには、人民軍の細胞組織である中隊が強化されなければなりません。

 中隊を強化するのは、人民軍の基礎組織を強化することであり、基本戦闘単位を強化することであります。人民軍のすべての基礎組織、基本戦闘単位が強化されるとき、朝鮮人民軍は、一当百の革命武力としていっそう強化発展するでしょう。

 中隊を強化するうえで重要な問題は、特務長の役割を高めることです。

 特務長は毎日、下士・兵士と生活をともにし、苦楽を分かちあう中隊戦闘員の長兄です。

 特務長はたんに、軍人の食事を保障する経理係ではありません。特務長は日常的に中隊を管理する責任者であり、また中隊における政治思想教育者でもあります。特務長は、中隊長が不在のとき中隊長にかわって中隊を管理する責任者であり、中隊政治指導員が不在のときは、中隊政治指導員にかわって政治思想教育をおこなう政治活動家です。特務長は、中隊の軍人に対する物質生活を保障すれば自分の任務が果たされるものと思ってはいけません。

 特務長は、中隊の軍人に対する物質生活を保障するだけでなく、隊伍管理もおこない、政治活動もおこなわなければなりません。言いかえれば、特務長は、中隊の隊伍管理、政治活動、経理活動のすべてに責任をもつ人です。特務長は、このように重要な位置にあり、極めて大きな任務を担っているのです。

 特務長の位置と任務が重要であるため、特務長がその役割をいかに果たすかによって、中隊が強化されるか否かが左右されます。党中央委員会と最高司令官は、人民軍の強化において重要な位置をしめている中隊を強化するため、特務長の役割をいっそう高めることを期待しています。

 特務長は、中隊においてふだんから下士・兵士と起居をともにしています。したがって、特務長は、常に下士・兵士の長兄であることを忘れず、革命的同志愛をもって彼らを実弟のようにいつくしみ、たゆみなく教育しなければなりません。また特務長は、中隊長と中隊政治指導員を助けて、いかにすれば中隊管理と軍人に対する政治活動を改善することができるかを常に研究しなければなりません。

 特務長が中隊の管理をしっかりおこなうためには、何よりもまず対人活動を正しくおこなわなければなりません。

 対人活動を正しくおこなうことは、特務長の最も大切な任務です。

 特務長はこれまで主に経理活動をしてきましたが、これからは対人活動を正しくおこなうことに重点をおかなくてはなりません。

 対人活動を正しくおこなう問題は、チュチェ思想の要求として提起されます。人間がすべてを決定するのですから、対人活動をぬきにしては、いかなることも立派におこなうことができません。対人活動を正しくおこない、人々の革命的熱意と創意を積極的に発揮させるのは、わが党の活動方法の基本であります。

 人民軍は、労働者、農民、勤労インテリの息子、娘で組織された革命軍隊です。ですから、人民軍では命令一本やりではだめであり、必ず対人活動を正しくおこなわなくてはなりません。訓練や行軍、休息や宿営などいかなる場合においても必ず対人活動を正しくおこない、軍人の革命的熱意と自発性を大いに発揮させるべきです。そうしてこそ、部隊管理も円滑にいき、部隊に課されたあらゆる革命課題を成功裏に遂行することができるのです。

 対人活動をおこなって、1人が10を動かし、10が100人、100人が1000人、1000人が1万人を動かすのは、わが党の確固たる方針です。特務長は、党の方針どおり対人活動を正しくおこなって、まず下士官を動かし、優秀な兵士を奮い立たせ、さらには、人民軍のすべての下士官と兵士を奮い立たせなければなりません。

 対人活動を正しくおこなうためには何よりもまず、個々の人についてよく知っていなければなりません。特務長は、中隊内の下士官と兵士の思想と性格、体質と文化水準、習慣などをすべてのみこんでいなければなりません。そうしたことをすべて正確につかんでこそ、各人にかなった教育方法を適用することができます。これは、医師が病気を治療するのに、病気の根源を正確に判断してこそ、その病気に適応した処方をだすことができるのと同じことです。

 特務長は、下士官と兵士を正確に把握したうえで、思想・意識水準の低い人に対しては思想教育をいっそう強化し、体力の弱い人にはもっと体を鍛えさせ、文化水準の高くない人には文化水準を高める対策を講じなければなりません。そして、下士官と兵士の人格を尊重し、彼らの性格と習慣にあった生活条件を整えるため積極的に努力すべきです。

 対人活動においては、思想教育活動を確固と先行させ、特に、チュチェ思想教育を強化すべきです。

 チュチェ思想は、人々の自主性と創意性を最大限に発揮させる最も威力ある思想であり、わが党の唯一の指導思想であります。

 特務長は、下士官と兵士に常日ごろ、チュチェ思想についてよく解説し、彼らがすべて、わが党の革命思想、チュチェ思想でしっかり武装するようにしなければなりません。そうして、人民軍のすべての下士官と兵士が軍務において高い創意を発揮し、党と革命のために、祖国と人民のために自己の生命をためらうことをくささげる高い思想的決意をもつようにすべきです。

 次に、特務長が中隊管理を正しくおこなうためには、抗日遊撃隊式の活動方法をしっかり具現しなければなりません。

 抗日遊撃隊は、隊員と指揮官とのあいだにへだたりがなく、遊撃隊員が人民と呼吸をともにし、みなが一つの思想でかたく団結して同じ目的のために闘いました。

 抗日遊撃隊は、定まった兵営も、定まった地域も、国家的後方ももたず、きょうは東、明日は北と毎日のように移動しながら敵と戦わなくてはなりませんでした。当時の物質的条件というのは、とうてい言葉では言いあらわせないほど厳しいものでした。抗日遊撃隊はそうした困難な状況のもとでも、革命的同志愛と将兵一致、鋼鉄のような思想、意志の統一があったからこそ、ひたすら祖国の解放と独立のため、勤労人民の階級的解放のため、15年ものあいだあらゆる障害と難関にうちかって勇敢に戦うことができたのです。

 人民軍は、抗日武装闘争の栄えある革命伝統を直接受け継いだ革命軍隊です。人民軍は、帝国主義に反対して祖国と人民の安全を守り、国の完全な自主・独立を達成するために闘っています。わが国の南半部には、依然としてアメリカ帝国主義侵略軍が居座っており、祖国はいまだに統一されていません。我々は、まだ多くのことをしなければならず、今後も困難な闘争をくりひろげなければなりません。このような状況において、人民軍は「抗日遊撃隊式の活動方法をしっかり具現しよう!」というスローガンをひきつづき高くかかげていかなければなりません。

 抗日遊撃隊式の活動方法を具現するうえで何よりも大切なのは、官僚主義を絶対に許さないことです。

 官僚主義は、革命軍隊の活動方法とは縁もゆかりもありません。殴打や罵倒、強圧的方法は、資本主義国の軍隊でのみ通用するものです。

 人民軍においては、官僚主義的活動方法に断固反対すべきであり、徹頭徹尾、革命軍隊の活動方法である解説と説得、教育の方法で部隊を管理しなければなりません。

 特務長は、すべての下士官と兵士が、軍事規定に精通し、規定の要求どおりに行動するようたゆみなく教育し、立派なおこないは称賛し、間違いは諭して、みずから是正するようにさせるべきです。特に、革命的同志愛を高く発揮し、同志たちの過ちをそのつど正してやり、すべての軍人が同志的にかたく団結するようにしなければなりません。これが、ほかならぬ抗日遊撃隊式活動方法の要求なのです。

 次に、特務長は、兵士の生活をよく見守らなければなりません。

 特務長は、兵士の日常生活に責任を負っている人です。特務長は長兄の気持ちで、兵士の生活をこまかく見守らなければなりません。

 特務長は、兵士によく食べさせ、よく寝かせ、彼らが十分に休息できるよう、手落ちなく手配しなければなりません。休息するときには、兵士に文化的な休息ができるよう、充実した文化生活をさせるべきです。特務長はまた、部隊の武器と戦闘技術機材、生活器材を責任をもって管理し、すべての兵士が、いつも、戦闘準備と訓練準備をしっかり整えるよう、正しく指導し、手助けしなくてはなりません。

 次に、特務長は、活動と生活において率先垂範しなければなりません。

 特務長は、身体と身なりをきれいにすべきです。特務長は、内務規定をはじめ、いっさいの規定を誰よりもよく守り、あらゆる活動において先頭に立たなければなりません。一言でいって、特務長はあらゆる面で兵士の鑑となり、手本となるべきです。

 特務長が率先垂範しようとすれば、兵士より早く起きて遅く床につかなければなりませんが、そうしようとすれば骨がおれるでしょう。しかし、骨がおれても、特務長がそれにうちかち、実践躬行の模範を示してこそ、兵士がそれに見習って軍務生活を立派におこなうことができるのです。

 現在、わが国の情勢は非常に緊張しています。最近、南朝鮮ではファッショ的支配に反対し、民主主義を要求する青年学生と人民の大規模な暴動とデモがあいついで起きています。南朝鮮の青年学生と人民の闘争におそれをなした南朝鮮の為政者は、それを鎮圧しようと、おびただしいかいらい軍兵力まで動員してファッショ的な弾圧騒動を起こしています。またアメリカ帝国主義侵略者は、週に2度ずつ、グアム島にある戦的爆撃機B52を南朝鮮に飛来させて、爆撃演習をくりひろげています。アメリカ帝国主義侵略軍の爆撃機が南朝鮮にきて爆撃演習をくりひろげる基本目的は、南朝鮮人民を脅かし、わが国の情勢を緊張させようとするところにあります。アメリカ帝国主義侵略者と南朝鮮かいらい一味の策動からして、彼らはいつなんどき我々に襲いかかってくるかわかりません。南朝鮮で人民の闘争がはげしさを増し、植民地ファッショ支配の危機が極度に達すれば、敵は危機からの活路を共和国北半部に対する侵略戦争に求めようとするでしょう。

 情勢が緊張しているだけに、人民軍軍人は常に緊張した動員態勢を堅持すべきであり、絶対に気を緩めてはなりません。万一、人民軍軍人が、敵と長期間対峙しているばかりに少しでも油断したり、倦怠感にとらわれて居眠りでもしようものなら、敵は我々に襲いかかってくるでしょう。敵は、我々が居眠りすることを願っており、侵略の好機をうかがっているのです。したがって、人民軍軍人は、敵がいつどこから攻め込んできても、直ちに反撃を加えることができるよう戦闘準備を手ぬかりなく整えていなければならず、常に気を引きしめて生活しなければなりません。

 党中央委員会は、人民軍の中隊を強化するために心をくだいている特務長を常に忘れていません。党中央委員会は、特務長が長年服務して除隊するときには、人民経済大学や共産大学をはじめ、各級の養成機関に送って勉強させ、学校を卒業すれば、水準と能力に応じて、党・政治機関か国家・経済機関に配置して活動できるようにするでしょう。

 私はきょう皆さんに、党中央が特務長に対して深い関心を払っていることを伝えておきます。特務長は、自分の将来について少しも案ずることなく、特務長の任務をいっそう立派に遂行するため積極的に努力すべきです。

 特務長は、党の唯一思想体系でしっかり武装し、党中央委員会を政治的、思想的に、生命を賭して擁護、防衛し、人民軍の中隊を強化するため全力をつくして闘わなければなりません。

 私は、特務長が党の方針どおり対人活動を正しくおこない、中隊の管理を几帳面にし、軍人の物質生活を十分に保障して中隊をいっそう強化することによって、人民軍を一当百の革命武力に強化発展させるのに大いに貢献するよう期待します。
                                                
出典:『金日成著作集』34巻

<参考>実践躬行−「躬」は自ら、自分での意。「躬行」は、実際に自分で行うさま。


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