金 日 成

ベニン人民共和国内務安全・民族方向省研究計画局長の
質問に対する回答
−1979年6月30日− 
 
  主席閣下、私は数回にわたって美しい貴国を訪問して、あなたの接見をうける特典に浴し、今回はあなたの親友であるベニン人民共和国大統領マチユー・ケレク同志の特使である朝鮮民主主義人民共和国駐在ベニン人民共和国大使と同行して美しい貴国をふたたび訪れました。
 主席閣下、あなたが関心を払っておられるベニンとの協力の重要性について、ベニン人民にお話ししていただけないでしょうか。

  私は、このたび、あなたがマチュー・ケレク大統領の特使一行としてふたたびわが国を訪問してくださったことをたいへんうれしく思います。

 あなたがたのわが国訪問は、朝鮮人民に対するベニン人民のあたたかい友好の情のあらわれであり、それは、朝鮮とベニン両国間の友好・協力関係のいっそうの強化発展に寄与することでしょう。

 朝鮮人民とベニン人民間の友好・協力関係は、帝国主義と支配主義に反対し、国の自主権を守る共同闘争の過程で好ましく発展しています。特に、1976年7月のマチュー・ケレク大統領閣下の訪朝以来、両国間の友好・協力関係は新たな高い段階に発展しています。両国間の友好的な往来と接触がさかんになっており、両国政府と人民は積極的に支持しあい、新しい社会建設の各分野で緊密に協力しあっています。

 ベニン人民共和国政府とベニン人民は、朝鮮人民の祖国統一偉業に断固たる支持をよせています。ベニン政府は、国連をはじめ国際舞台で、我々の立場を支持して積極的に活動しています。我々は、これを満足に思っています。私はこの機会をかりて、祖国の統一をめざす朝鮮人民の正義の偉業に積極的な支持声援をよせているベニン政府とベニン人民に深い謝意を表します。

 朝鮮民主主義人民共和国政府と朝鮮人民は、帝国主義者と国内反動派の侵略と転覆・破壊策動を勇敢にはねのけて、新しい社会の建設を力強くおし進めているベニン人民の闘いを積極的に支持声援しています。朝鮮人民は、反帝・自主の旗のもとに新しい社会の建設をめざすベニン人民の闘いを誠心誠意、支持声援することを国際主義的義務とみなしています。

 朝鮮とベニンとの友好・協力関係は、自主性を擁護して闘う両国人民の共通の志向と利害関係を反映しており、相互尊重と真の友愛の精神にもとづいています。

 両国が政治的に積極的に支持しあい、経済・技術協力の緊密化をはかることは、すでにかちとった革命の獲得物と国の自主権を守り、富強な自主独立国家を建設する過程で提起されるさまざまな問題を成功裏に解決していく可能性をもたらします。朝鮮とベニン両国間の友好・協力関係を発展させることはまた、第三世界諸国間の国際的団結と協力を強化するうえで大きな寄与となります。

 我々は、朝鮮人民とベニン人民との立派な友好・協力関係を非常に重んじています。わが共和国政府は、両国人民間の好ましい関係を今後さらに発展させるためあらゆる努力を尽くすでしょう。

  最近、多くの国が経済危機に見舞われています。しかし、朝鮮民主主義人民共和国では新しい工場が建設され、ほかの部門も発展しています。
 あなたは、貴国の経済をいかに建設しておられるのでしょうか。

  あなたが正しく指摘したように、いま世界の多くの国が経済危機に見舞われています。ここ数年、世界的に燃料難、原料難が甚だしいため、燃料や原料を輸入に依存している国々はいずれも大きな経済的難関に直面しており、一国の経済危機は連鎖的にほかの国々に影響をおよぼしています。

 しかしわが国の経済は、世界的な経済変動の影響をうけておらず、危機ということすら知らずにいます。わが国では人民経済がいちだんと高い段階に発展しており、工業、農業をはじめ、人民経済各部門の生産がたえず増大しています。こんにちのわが国の経済状態は、全般的に極めて好調です。

 わが国が世界的な経済変動の影響をうけることなく、ひきつづき社会主義建設を立派に進められるのは、わが党の正しい指導のもとに強固な自立的民族経済を建設したからです。

 我々は、新しい社会の建設に踏みだした当初から自立的民族経済建設の路線をうちだし、その実現をめざして積極的に闘ってきました。もちろん、自立的民族経済を建設する朝鮮人民の闘いは決して容易なものではなく、我々は幾多の難関と試練を乗り越えなければなりませんでした。しかしわが党と人民は、自力更生の革命的スローガンを高くかかげて勇敢に闘い、ついに国内の資源と自国の技術、幹部によって運営され、多面的に発達し、現代技術で装備された自立的民族経済を立派に建設しました。

 こんにちわが国の経済は、社会主義建設と人民生活に必要なものをすべて国内生産でまかなっており、いかなる外部の影響にも微動だにせず、ひきつづき速いテンポで発展しています。わが国の自立的民族経済の威力がいかに大きなものであるかは、あなたがわが国の現実を見てまわる過程で直接感じたことと思います。

 現在、朝鮮人民は、社会主義経済建設の新たな雄大な綱領である第2次7か年計画を遂行しています。第2次7か年計画の中心的課題は、人民経済の主体化、現代化、科学化を促進することですが、これもやはり、わが党の自立的民族経済建設路線にもとづくものであり、わが国の自立的民族経済をさらに強固にするためのものです。

 我々は第2次7か年計画期間に、冶金工業をはじめ人民経済のすべての部門を、国内の原料と自国の技術に依拠して、わが国の実情にいっそう適応したものに発展させる計画です。言いかえれば、人民経済の自立性と主体性をいっそう強めることが我々の闘争課題です。我々はまた、人民経済のすべての部門を現代技術でしっかり装備し、わが国の科学発展水準をいちだんと高めて、世界の先進レベルに引き上げるために努力しています。

 現在、第2次7か年計画は極めてスムーズに遂行されつつあります。ひきつづき今の勢いで進むならば、第2次7か年計画の遂行ははるかに繰りあげられるものと思います。第2次7か年計画が完遂されれば、わが国の自立的民族経済はさらに強固になり、わが国は、現在よりいちだんと高い峰に登りつめることになるでしょう。

  チュチェ思想は世界的に重要な位置をしめており、特に第三世界諸国に普及されています。
 一部の知識人は、第三世界にとってチュチェ思想は第三の道の哲学になるだろうといっています。
 主席同志、こうした見解についてあなたはどうお考えでしょうが。

  現代は、かつて抑圧され、虐げられてきた人民が世界の主人として登場し、自己の運命を自主的に、創造的に開拓していく自主性の時代です。

 いま、世界の人民は、すべて自主的に生きることを求めています。誰であろうと他人に従属させられることを望まず、自己の自主権が蹂躙されるのを許そうとしません。新興独立諸国と社会主義諸国は言うにおよばず、一部の資本主義国でさえ、帝国主義者、支配主義者の統制と干渉に反対し、自主的に生きようとしています。

 かつて、長いあいだ帝国主義者に搾取され抑圧されてきた世界の多くの国の人民が、こんにちでは自主の旗を高くかかけて、新しい社会の建設をめざして力強く前進しています。現在、新興独立諸国は多くの難関と試練を克服して政治的独立を強固にし、自立的民族経済を建設し、自衛的国防力を強化するため勇敢に闘っています。これは、こんにち世界の人民が自主性を求め、自主の道を進むのは、何ものによっても阻むことのできない時代の趨勢となっていることを物語っています。

 我々のチュチェ思想は、こうした時代の趨勢を反映した思想です。

 チュチェ思想で最も重要なのは、革命闘争と建設事業において主体性を確立することです。主体性を確立するということは、革命と建設に対して主人としての態度をとることを意味します。言いかえれば、他人への依頼心をすてさり、自力更生の革命精神を発揮して自己の問題はあくまでも自分自身が責任をもって解決していく自主的立場と、革命と建設で提起されるすべての問題を自国人民の利益と自国の実情に即して解決していく、創造的立場を堅持することを意味します。

 自主的立場と創造的立場は、政治における自主、経済における自立、国防における自衛の原則に具現されます。

 政治的自主性は、国家と民族の生命です。政治において自主性を堅持してこそ、国家と民族の尊厳を守り、革命と建設を力強くおし進めることができます。

 政治的独立は、自立経済によって裏打ちされなければなりません。自立的民族経済を建設してこそ、政治的独立を強固にし、民族の繁栄をもたらすことができ、人民に豊かな物質生活を保障することができます。

 自主独立国家は、必ず国防において自衛を実現しなければなりません。自衛的国防力がなくては、帝国主義者のあらゆる侵略と干渉をはねのけ、民族の独立と革命の獲得物を守りとおすことができません。

 朝鮮人民は、チュチェ思想を指導指針とし、革命と建設のすべての分野で主体性を確立することによって、新しい社会の建設をめざす闘いで大きな勝利をおさめました。かつては、貧しく立ち後れた植民地国家であったわが国が、こんにちでは政治における自主、経済における自立、国防における自衛の強力な社会主義国にかわりました。朝鮮人民が新しい社会の建設でおさめた輝かしい勝利は、チュチェ思想の正しさと生命力をはっきりと実証しています。

 チュチェ思想は、朝鮮革命の要求から、朝鮮人民の経験にもとづいて我々が創始した思想ではありますが、現代の趨勢を反映しているため、世界各国人民の共感を呼んでいます。

 あなたは、第三世界諸国人民のあいだにチュチェ思想が広く普及されているといわれましたが、それは、チュチェ思想が彼らの志向と要求にも合致しているからだと思います。

 人民がどのような思想を支持し、どの道に進むかは、みずからの意思によって決められる問題です。チュチェ思想は、自己の運命の主人は自分自身であり、自己の運命を開拓する力もまた自分自身にあるとみなしています。第三世界諸国の人民が自己の運命の主人であるという高い自覚をもって、自己の前途を自主的に開拓していくならば、必ずや輝かしい未来がもたらされるでしょう。

  次回の非同盟諸国首脳会議は、キューバで開かれることになっています。
 貴国は、この会議に必ず参加するものと思います。
 閣下は、この会議がどうなるものとお考えでしょうが。

  非同盟運動の尊厳あるメンバーである朝鮮民主主義人民共和国は、今年の9月にハバナで開かれる第6回非同盟諸国首脳会議に代表団を派遣するでしょう。わが代表団はこの会議に参加して、会議の成果を保障し、非同盟運動の強化発展をはかるため積極的に努力するでしょう。

 非同盟運動は、世界の数億万人口と数多くの国を包括している最も幅広い国際的運動であり、現代の基本的趨勢を反映している強力な反帝革命勢力であります。反帝・自主をめざす非同盟諸国の共同闘争は、国際情勢の発展と世界の革命的変革過程に大きな影響を及ぼしています。

 こんにち非同盟運動の影響力の増大に恐れをなした帝国主義者、支配主義者は、この運動に攻撃のほこ先を向けています。帝国主義者、支配主義者は、非同盟運動を破壊するため、世界のいたるところで転覆活動と分裂・離間策動を強化しており、非同盟諸国を自己の支配権のもとに引き入れようと争奪戦を繰り広げています。

 現情勢は非同盟諸国をして、帝国主義者、支配主義者の攻撃から非同盟運動を守りこの運動をいっそう強化発展させるために力強く闘うことを求めています。

 すべての非同盟国は、非同盟運動の原則を固守し、この運動の崇高な理念を実現するため積極的に闘わなければなりません。そうしてこそ、帝国主義者、支配主義者のあらゆる妨害策動をはねのけ、非同盟運動の勝利的前進をかちとり、自由、繁栄の新世界を成功裏に建設することができます。

 非同盟諸国は、この運動の団結を強めるため積極的に努力しなければなりません。団結は非同盟運動の不敗の力の源であり、反帝革命闘争の勝利のための決定的な裏付けであります。我々は団結すれば勝利し、分裂すれば敗北を免れません。

 非同盟諸国は、帝国主義者、支配主義者の分裂・離間策動に対し警戒心を強め、彼らに唆されたりだまされたりして、互いに争う愚かなことをしてはなりません。非同盟諸国はまた、この運動の原則に反する行動や、国家間の団結に支障をきたす行動をとってはなりません。非同盟諸国は、共通の敵に反対するため団結を第一として、これにすべてを服従させ、個々の国のあいだの意見相違や紛争も団結の原則に立って解決すべきです。

 非同盟諸国は、政治的に団結するだけでなく、経済的に緊密に協力しあうべきです。非同盟諸国は、豊富な天然資源と、新しい生活創造の過程でつんだいろいろの立派な経験と、人民大衆の底知れない創造的エネルギーをもっています。非同盟諸国が有無相通ずる原則に従って経済・技術協力を発展させていくならば、強大国の世話にならなくても、自立的民族経済を立派に建設し、国家と民族の繁栄をもたらすことができます。

 非同盟諸国は、新国際経済秩序を確立するために闘うべきです。旧国際経済秩序は植民地主義制度の所産であり、帝国主義者にのみ利益をもたらす不公平な経済秩序です。旧経済秩序を存続させては、新興諸国は貧窮から脱することも、自立的民族経済を成功裏に建設することもできません。非同盟諸国は団結して闘うことによって、帝国主義者によってつくりだされた旧国際経済秩序をうちこわし、新興諸国人民の利益にかなった、公正な新国際経済秩序を確立しなければなりません。

 非同盟諸国は、帝国主義者の侵略と戦争政策を阻止、破綻させ、世界の平和と安全を守るために闘うべきです。非同盟諸国は、外国の領土にある帝国主義者のすべての侵略軍隊と軍事基地を完全に撤収させ、世界各地に平和地帯と非核地帯を設置する闘いを力強く繰り広げるべきです。また非同盟諸国は、常時世界の平和と安全を脅かしている侵略的なブロックと軍事同盟の解体のために闘うべきです。

 第6回非同盟諸国首脳会議は、こんにち非同盟運動に提起されているさしせまった問題を討議することになるでしょう。

 我々は、第6回非同盟諸国首脳会議が、加盟国の積極的な参加のもとに、非同盟運動の原則と理念に従っておこなわれ、非同盟運動の強化発展において重要な契機となるものと思います。

  こんにち全世界は、朝鮮とその統一について大きな関心を向けています。
 主席同志、あなたは、南朝鮮かいらい一味があなたの示した原則にもとづいて祖国統一のための協商を進めるのを、アメリカ人が放任するものとお考えでしょうか。

  祖国の統一をめざす朝鮮人民の闘いは、全民族の共通の願いと民族の自主権を実現する正義の闘いであり、世界の平和と安全を強固なものにする正義の闘いであります。そのため、祖国の統一をめざす朝鮮人民の闘いは、世界の数多くの友人から積極的な支持と声援をうけており、朝鮮の統一問題は正義と平和を愛する世界各国人民の大きな関心事となっています。

 祖国の統一をめざす闘いにおいて、わが党と共和国政府は、いかなる外部勢力の干渉もうけることなく、自主的に、民主主義的原則に従って平和的に国の統一を達成するという方針を終始一貫堅持してきました。

 北と南の協商によって平和的に国の統一問題を解決しようとするわが共和国政府の誠意ある努力の結果、いまから7年前、北と南の接触と対話の扉が開かれ、ついに歴史的な南北共同声明が発表され、南北当局者間の協商がおこなわれました。しかし、南朝鮮当局者の民族分裂策動と背信行為のため、全民族の期待と世界各国人民の関心のうちに開かれた北と南の対話は相応の結実がもたらされないまま破綻してしまいました。

 南朝鮮当局者は、今年にはいって新たに開かれた北と南の協商もやはり中断状態に陥れました。

 彼らは、北と南が互いに相手側に対する軍事行動と誹謗中傷を中止しようというわが方の提案に対し、米軍と合同で南朝鮮で最大規模の軍事演習騒ぎを繰り広げ、共和国北半部に対する誹謗中傷をいっそう強めることをもってこたえました。彼らは、会談の場にのぞんでも、全く誠実さを見せませんでした。南朝鮮側は、協商の場にあらわれては理不尽な口実をもうけて北と南の協商に人為的な難関をつくりだしました。一方彼らは、民主主義と祖国の統一を求める南朝鮮の民主人士と各階層の人民に対するファッショ的弾圧をいっそう強めました。

 これらの事実は、南朝鮮当局者には、心から対話を成功させて祖国を統一しようとする意思が全くないことを改めて明白にしました。北と南の対話を成立させて結実をもたらすためには、双方がともに国を統一しようとする立場から出発しなければなりません。ところが南朝鮮当局者の立場は、統一しようとする立場ではなく、分裂しようとする立場です。

 南朝鮮当局者のこうした立場は、アメリカの立場を反映しているものです。南朝鮮当局者は、アメリカ人によってつくられた台本どおりに行動しています。アメリカは「二つの朝鮮」政策をうちだし、その実現のために、北と南の対話を朝鮮の統一のための対話ではなく、分裂のための対話へと導くよう南朝鮮当局者を唆しています。

 アメリカがひきつづき「二つの朝鮮」政策を追求して南朝鮮当局者を分裂へと唆している状況のもとでは、北と南の真の協商の成立はむずかしいと思います。

 アメリカは、朝鮮民族の念願と時代の流れに逆行する「二つの朝鮮」政策を放棄し、南朝鮮当局者を分裂策動へとあおりたてる行動をやめるべきです。アメリカは、南朝鮮から核兵器をはじめ、軍事装備とともに、米軍を完全に撤収させるべきです。

 もし、アメリカが南朝鮮から手を引き、朝鮮の統一を妨害する政策を実施しなくなるならば、南北朝鮮人民は民族大団結の原則にもとづき、対話と協商によって国の統一問題を平和的に解決することができるでしょう。
 出典:『金日成著作集』34巻

ページのトップ


inserted by FC2 system