金 日 成

ネパール記者代表団との談話
−1979年6月19日− 

 あなたがたと平壌でお会いすべきでしたが、いま現地指導で地方に来ているため、遠いところまでおいでを願ってたいへん申し訳ありませんでした。ご了解願います。

 私は、あなたがたのわが国訪問を熱烈に歓迎します。

 私は、あなたがたが朝鮮人民とネパール人民の友好のために大いに努力しており、朝鮮人民に積極的な支持声援をよせていることに対し感謝の意を表します。

 特に、ネパールジャーナリスト協会の委員長が、国の統一と社会主義建設をめざす朝鮮人民の闘いに積極的な支持声援をよせ、私にたびたび祝電を送ってくださったことに感謝しています。私はきょう、あなたとはじめてお会いしますが、旧友に会ったような感じがします。きょう、こうして会ったのですから、もう親しい友人になったも同然です。

 私は、わが国と私に対するあなたの心あたたまるお言葉に謝意を表します。そして、朝鮮人民の祖国統一偉業に積極的な支持を表明してくださったことに感謝します。

 私はきょう、あなたがたに会議の途中で会うことになりました。ごく短い時間ですが、あなたがたの提起した問題について簡単にお話しようと思います。

 あなたがたは、いまチュチェ思想が広く一般化されていることについて話してほしいということでした。

 現代は、自主性の時代であるといえます。なぜなら、かつて抑圧され搾取されていた多くの国の人民が、帝国主義と植民地主義の従属から解放されたからです。また、かつて帝国主義者の支配下にあった国の人民が、民族の独立を守り、政治的自主性を堅持することが非常に重要であることを自覚し、自主の道に向かって前進しているからです。

 現在、新しい社会の建設に踏みだした人民は、実生活をとおして、経済建設と文化建設をはじめ、すべてのことを自国の実情に即しておこなわなければならないということを認識しています。いま各国の人民は、自国の建設において一定の既存公式やほかの国の経験を模倣するのでなく、自国の実情に即して、自分なりの方式でおこなっています。新社会を建設する人民は、古い資本主義的な方式を模倣しないばかりか、社会主義を建設する場合にもほかの国の経験をそのまま模倣しようとしません。

 国ごとに政治的理念と信教が異なり、社会体制の差異がありますが、自民族と自国を富強にし、自国の人民により豊かな暮らしをさせる新社会を建設するためには、ただ自分の方式で、自国の人民が要求するとおりおこなわなくてはならないという精神をもっています。

 一言でいって、世界の人民がいかなる支配や従属にも反対し、民族の独立と自主、自立、自衛を志向するのか現代の基本的趨勢となっています。

 また現在、多くの国が、あらゆるものを人民に奉仕させ、また人民が社会の主人にならなければならないということを主張しています。人民大衆の自主性と創造性を高度に発揮させてこそ、政治における自主、経済における自立、国防における自衛の政策が実現されることを多くの人が自覚しています。特に、自立的民族経済を建設してこそ、政治における自主性を保障できるという認識が多くの人の思想を支配しています。

 世界の多くの人がこのような認識をもっているため、我々と同じ思想をもつようになるのだと思います。

 この問題について話したいことはたくさんありますが、あなたがたのよく知っている問題であり、また『労働新聞』の責任主筆からもっと聞くこともできるので、この程度にとどめることにします。

 次に、わが国の第2次7か年計画遂行の展望についての質問にお答えしましょう。

 わが国の第2次7か年計画は極めて膨大な計画です。

 第2次7か年計画が遂行されれば、わが国はいまより一段階さらに高い社会主義の高峰を極めることになるでしょう。

 第2次7か年計画の最も重要な課題は、人民経済の主体化、現代化、科学化を促進することです。

 人民経済を主体化するというのは、自国の原料と技術に依拠して、自国の実情にかなった経済を建設し、発展させることを意味します。

 私はいまここに来て、当該部門の活動家とわが国の冶金工業の主体化を実現する問題について討議しています。

 わが国には、冶金工業の発展に必要な高品位の鉱石が豊富にあります。しかし、わが国には、冶金工業の燃料であるコークス用炭が多くありません。そのため我々は、金属工業部門でどうすればコークス用炭を節約し、国内の石炭を燃料とする冶金工業の拡大発展をはかることができるかという問題について討議しています。

 学者たちの話によれば、わが国の石炭を燃料にして冶金工業を発展させることは十分可能だとのことです。

 冶金工業だけでなく、化学工業、軽工業、農業など、ほかの人民経済各部門も、わが国の原料と技術に依拠し、わが国の実情に即して発展させる方向で人民経済の主体化の実現をはかっていますが、これは順調にいっています。

 人民経済の現代化というのは、立ち後れた技術を先進技術に発展させることです。

 いっきょに5〜10階建ての家に飛び上がるように、立ち後れた技術をいっぺんに最新技術に改造することだけが現代化なのではありません。いまより一段階上がっても現代化といえるのではないかと思います。

 現在、我々は、国の技術発展水準をさらに一段階高めるための現代化を進めています。

 我々は、まず工業部門で機械化、オートメ化を実現して、人民の骨のおれる労働を軽減し、重労働と軽労働の差をなくす方向で現代化をおし進めています。

 一言でいって、現代化とは、技術革命をつづけようということです。技術革命をおこなって、人民を骨のおれる労働から解放するのは、わが党第5回大会がうちだした課題です。

 現在、朝鮮人民は3大革命の旗を高くかかげ、人民経済の各部門で技術革命を立派に遂行しています。

 科学化ということは、科学発展水準を現在にくらべて一段階さらに高めるということです。言いかえると、農業も科学的に営み、すべてのことを科学的におこなおうということです。そうして、近い将来にわが国の科学を世界の科学発展レベルに追いつかせようということです。

 現在、第2次7か年計画は、非常にスムーズに遂行されつつあります。

 我々は今年、上半期の人民経済計画を、工業総生産額において20日間繰りあげて6月10日までに遂行しました。

 現在の勢いで前進すれば、今年度の人民経済計画を20〜30日間繰りあげて遂行できると思います。

 わが国の労働者階級とすべての勤労者が、党と政府の方針に従って献身的に闘っているので、第2次7か年計画を期限前に超過遂行するのは十分可能だと思います。

 我々は、第2次7か年計画を十分遂行することができます。

 この問題についても話すことはたくさんありますが、必要なことは関係部門の活動家から聞かせてもらえると思います。皆さんがわが国の現実から直接見て感じたこともあると思います。

 次に、わが国の統一問題についてお話しましょう。

 全朝鮮人民の念願であるわが国の統一問題は、皆さんだけでなく、世界の人民の関心事となっています。

 わが国と友好関係をもっているあなたがたが、朝鮮の統一問題について関心を向けているのは当然をことであり、我々はこれをうれしく思っています。

 いま統一の妨げとなっている問題はなんであるかという質問でしたが、祖国統一の主な障害は、南朝鮮当局者が統一を望んでいないことです。南朝鮮当局者は「二つの朝鮮」をつくりあげようとしています。

 朝鮮人民は、同じ言語と同じ風習をもつ単一民族です。わが国は5千年の長い文化的な歴史をもっています。わが国は単一民族であるため、二つに引き裂くことはできません。我々は、統一を主張します。

 我々は、国の統一を自主的に、平和的に、民族大団結の原則にもとづいて実現することを主張しています。自主的統一というのは、ほかの国の干渉をうけることなく、朝鮮人同士で国を統一するということです。また、国の統一は平和的に実現しなければなりません。我々は、南朝鮮の現体制と北学部の社会主義制度をそのままにして統一することを主張しています。我々は、民族の利益のために体制と理念、信教の違いを超越して民族の団結をなし遂げるべきであり、すべてを国の統一の実現に服従させるべきだと考えます。

 しかし南朝鮮当局者は、外国勢力を後ろだてにして朝鮮を永久に分裂させようとしています。そのため、彼らは「二つの朝鮮」で国連に加盟しようと策動しています。

 我々が平和統一を主張しているにもかかわらず、南朝鮮当局者はありもしない「北からの南侵の脅威」という口実のもとに、南朝鮮に米軍をそのまま駐留させています。また彼らは、対外的に「クロス承認論」を主張しています。アメリカがわが国を承認し、中国とソ連が南朝鮮を承認するという方法で互いにクロス承認することによって、事実上朝鮮を永久に二つの国にしようとしているのです。

 南朝鮮当局者は統一を望んでいないだけでなく、甚だしくは軍事境界線に「万里の長城」を築くという行動までしています。これは、朝鮮を永久に分裂させようとするいま一つの悪辣な策動です。

 しかし、朝鮮を永久に分裂させようとする南朝鮮当局者の策動は実現しません。朝鮮人民は一つの民族であるため、南朝鮮人民も統一を求めており、北半部の人民も統一を求めています。

 現南朝鮮当局者が、ファッショ的弾圧政策を実施して民主運動の弾圧をつづけているため、最近、南朝鮮の各党派は統一問題の論議には当局者だけでなく、広範な党派も参加させるべきだと主張しています。我々は、彼らの主張は正しいと思います。

 わが国の統一問題の解決で基本的障害の一つとなっているのは、南朝鮮当局者が統一を望んでいないことであり、いま一つの障害は外部勢力が南朝鮮当局者を唆していることです。しかし我々は、このような障害を十分克服することができます。いま、一部の列強が朝鮮の統一を妨害していますが、我々は必ずや全朝鮮人民の団結した力で国の統一を実現するでしょう。

 最後に、朝鮮民主主義人民共和国とネパール王国との関係について話しましょう。

 あなたがたは朝鮮とネパールとの友好関係が好ましく発展しているといわれましたが、これは非常に重要なことです。

 いまネパール王国と朝鮮民主主義人民共和国は、極めて好ましい友好関係を保っています。我々は、この好ましい友好関係が両国人民の利益に完全に合致するものであるとみなしています。

 両国はともにアジアに位置している国であり、自主性を主張しています。また、両国はいずれも非同盟運動に参加しています。これは、両国間の団結の基礎になると考えます。

 我々は、ネパール王国が平和、中立、自主の国として発展する政策を実施していることを立派なことであるとみなし、それを積極的に支持します。

 昨年、ネパール国王の弟たちがわが国を訪問しましたが、それは両国人民の友好関係の発展に大きく寄与しました。

 我々は今後とも、ネパール王国と朝鮮民主主義人民共和国、ネパール人民と朝鮮人民の友好・団結を強化するためひきつづき努力するでしょう。

 私は、両国の人民が新興独立諸国、非同盟諸国の団結のためともに肩を組んで進むことを望みます。

 両国は発展途上にある国なので、すべての面で互いに協力し交流し、立派な経験を交換しつつ、友好・団結をさらに強化していくべきです。

 私は、朝鮮民主主義人民共和国とネパール王国間の友好のための皆さんの努力によって、両国間の友好関係がさらに強化発展するものと思います。

 私はきょう、あなたがたに会えて非常にうれしく思います。今後、朝鮮人民の立派な友人として、両国間の友好のためにひきつづき努力してくださるよう期待します。

 きょう、こうしてあなたがたが私を訪問してくださり、非常に感謝いたします。帰国されましたら、朝鮮人民の友好の情をネパール人民に伝えてください。
出典:『金日成著作集』34巻

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