金 日 成

財政管理を正しくおこなって社会主義建設をさらに促進しよう
全国財政・銀行部門活動家大会でおこなった演説
−1978年12月23日−


 同志のみなさん!

 私はまず、朝鮮労働党中央委員会と共和国政府、そして全朝鮮人民の名において、全国財政・銀行部門活動家大会を熱烈にお祝いいたします。

 私はまた、第2次7か年計画遂行の初年度に国家歳入計画を成功裏に達成し、経済建設と国防建設の保障と人民生活の向上に必要な膨大な支出を円滑に保障してもなお11月末現在、9億ウォンに達する財政黒字をもたらしたことを非常に満足に思い、大会に参加した同志のみなさんとすべての財政・銀行部門の活動家に心からの感謝を送るものです。

 我が党の財政政策は、極めて正確かつ正当なものです。ここ十年間、我が国では国家歳入が毎年平均13%という速いテンポで成長し、国家予算の規模は3.4倍に増大しました。現在、我が国の財政は、1949年度の年間歳入を5日間で保障しています。これは、我が党の財政政策が蓄積と消費の正しい均衡を保っており、継続革新、継続前進する社会主義計画経済の発展法則を正しく具現していることを証明しています。

 いま我が国の財政負担は、世界中のどの国よりも重いといえます。我が国はそれほど大きい国ではありません。もちろん、朝鮮が統一すれば5千万の人口を擁する大国になりますが、現在は南北に分断されている状況のもとで、我が国はさほど大きい国とはいえません。にもかかわらず、我が国では数十万の軍隊を完全に自費で維持しており、860余万の子供と学生・生徒を国家と社会の負担で育て、勉強させています。世界の多くの国の人々が我が国を「教育の王国」といっていますが、実際に我が国は「教育の王国」といえます。現在、我が国では、350万に達する子供が託児所と幼稚園で国家と社会の負担によって育てられており、510万の学生・生徒が人民学校から大学にいたる各級の学校で無料教育をうけています。これは非常に誇らしいことであり、立派なことです。

 分断されている我が国が、数十万の軍隊を維持し、人口の半数を越える子供と学生・生徒を国家の負担で育て勉強させている状況のもとで、日に一食はご飯を食べ、二食は粥をすするとしても、とがめる人はいないでしょう。しかし我々は、全人民に日に三食腹いっぱいご飯を食べさせています。いま我が国の新しい世代は粥という言葉さえ知りません。我が国ではまた、全人民に季節ごとに衣服を支給し、無料治療制と社会保障制、国家負担による静養・休養制を実施しています。

 我々は、これに必要な莫大な資金を自力でまかなっています。我々はけっして、人民から、税金を取って資金源を埋め合わせているのではありません。我が国は久しい前に税金のない国となりました。世界で一番はじめに税金のない国になったのは我が国だと思います。

 我が国が、すべての学生・生徒を無料で教育し、全人民を無料で治療するという重い負担をにないながらも、人民から一銭の税金も取らない最初の国となったのは、我が党の路線と政策がいかに偉大であり、朝鮮人民のたたかいがいかに勇ましいものであるかを十分に物語っています。

 いま、我が国を訪問する外国人は、朝鮮人民は日ごろ幸せに暮しているので、自分の享受している幸せを実感していないといっています。

 私はきのう、ある国の党代表団に合いました。席上、代表団の団長は、自分は世界の70数か国を訪問したが、朝鮮のように清潔で、人民が明朗かつ質素で活気にみち、すべての人が生活にたいする自負をいだいている国は見たことがないといっていました。かれは、朝鮮人民が社会主義建設を立派におこなったことに深く感嘆し、朝鮮民主主義人民共和国は最も健全で、最も尊厳あり、最も人民的な社会主義を最も正しく建設している社会主義のモデル国だといいました。それで私は、朝鮮は社会主義のモデルとまではいえなくても、人民はほかにひけをとらない暮らしをしているといいました。

 我々は、社会主義経済建設の分野でじつに多くのことをなし遂げました。先の6か年計画期間にしても、税金制度を完全に撤廃したばかりでなく、物価を大幅に引き下げ、勤労者の生活給金をいちだんと引き上げました。

 社会主義経済建設でおさめたこれらの誇らしい成果は、朝鮮人民が党の路線と政策を貫徹するため積極的にたたかった結果であり、これは我が国社会主義制度の優位性を明白に示すものです。

 これまで社会主義経済建設分野における大きな成果には、財政・銀行部門活動家の功労が少なからずこめられています。私はきょう、この機会をかりて、我が党の財政政策を貫くため積極的に努力している財政・銀行部門の活動家とすべての経済活動家に改めて熱い感謝を送るものです。

 朝鮮人民が社会主義建設でおさめた成果は極めて大きいものであり、世界に広く誇るべきものです。我々は、社会主義建設で達成した成果について当然、自負と誇りをいだくべきです。

 我々はゼロの状態から国の建設をはじめました。我々は、なにもない廃墟のなかから工場、企業所を建設し、掘っ立て小屋と土壕舎から文化住宅や高層建築物をうちたてました。いま我が国には、機械工場と軽工業部門の工場をはじめ、各種の工場が無数にあります。かつては満足なクラブ一つありませんでしたが、いまではいたるところに会館や研究室、劇場や映画館、文化宮殿や少年宮殿などの文化・教育機関があります。これらすべては、人民が精根を傾け、汗水流して建設したものです。

 我々は最初ゼロからはじめてこんにちのような高い水準に到達したのですから、これからは、これにもとづいてさらに早く発展することができ、どんなことでもなし遂げることができます。

 戦後の復興建設当時、我々はクレーンがなくて木製のデリツクをつくつて使用しました。木製のデリツクで高層アパートや国際ホテルを建て、平壌の近代的な街を建設しました。しかしいまでは、建設場ごとにクレーンが林立しています。

 我々に、強固な経済的土台があり、ゼロからはじめて新しい祖国を施設した経験があり、有能な民族幹部がおり、鍛えられた労働者階級と勤労人民がいる以上、我々は第2次7か年計画の雄大な目標をゆうに達成することができます。これは疑いをさしはさむ余地もありません。

 先ごろ開かれた党中央委員会第5期第17回総会では、1979年度の人民経済発展計画を討議し、社会主義経済建設に新たな転換をもたらす戦闘的課題を示しました。我々は来年、決定的に採掘工業を先行させて燃料、原料の問題を円滑に解決し、すべての部門で生産を正常化し、軽工業部門の工場をフル稼動させて人民生活をいうそう向上させ、輸送の緊張を解消して増大する輸送需要を円滑に保障しなければなりません。党中央委員会総会がうちだしたこの課題を円滑に遂行するなら、我が国の経済的威力はいつそう強化され、人民生活はいちだんと向上し、第2次7か年計画はくりあげて完遂されるでしょう。

 もちろんこんにち、我が国の経済力は極めて強力なものであり、人民の生活水準もかなり高いといえます。我が国の自立的民族経済は、経済建設と人民生活に必要なすべてのものを国内生産で保障しており、人民はだれもが衣食の心配を知らず、全般的無料教育制と無料治療制の恩恵に浴して、希望にみちて働き、幸せに暮らしています。しかし、我々はこれに満足してはなりません。我々は、国の自立的民族経済をひきつづき発展させ、人民生活をたえまなく向上させなければなりません。そのためには、我が党が新たに示した経済建設の課題を貫徹しなければなりません。

 それでは、社会主義経済建設分野の新たな課題を遂行するうえで、財政・銀行部門活動家に課された任務はなんでしょうか。

 なによりもまず、独立採算制の正しい実施をはからなければなりません。

 社会主義経済の管理運営において、独立採算制を正しく実施するのは非常に重要なことです。独立採算制の原則に従って工場、企業所を管理運営するのは、社会主義経済法則の要求です。我々は社会主義建設の初期からこんにちにいたるまで、実際の経験をつうじて独立採算制を正しく実施することが極めて重要な問題であることを痛感させられました。

 独立採算制を正しく実施するためには、価値法則を正しく適用しなければなりません。価値法則を正しく適用してこそ、原単位消費基準を引き下げ、従業員一人当たりの生産額を高め、製品の品質を向上させることもできます。

 いま、社会主義経済の管理運営において、価値法則の適用を軽視していることが主な欠陥の一つとなっています。

 党中央委員会第5期第17回総会でも指摘しましたが、いま石炭をはじめ、一部の製品の品質が高くないのは、価値法則を正しく適用していないことに主な原因があります。

 炭鉱で石炭の質を保障しなかったときには、経営活動に大きな影響が及ぶようにしなくてはならないのですが、そうなっていないので炭鉱の幹部は石炭の質を高める問題に十分な注意を払っていません。極端な場合、ある炭鉱では選炭機が設置されているにもかかわらず、生産計画の数字を合わせるため選炭機を利用せず、ボタの多い石炭をそのまま火力発電所に運び出しています。それでも、炭鉱では通常の石炭代を受け取っており、生産計画を遂行したものとして評価されています。炭鉱からボタのまじった石炭がそのまま送られてくるため、火力発電所では熱が保障されず、電力生産に支障をうけており、発電設備を破損させて事故を発生させる事態まで引き起こしています。

 こうしたことは独立採算制の規定に反することです。炭鉱でこういうことができないように価格制定部門では、石炭価格を各等級に分けて正しく定めるべきであり、財政・銀行部門ではウォンによる統制を強めなければなりません。これまで財政・銀行部門が石炭の質を問題視せず、生産数字を見るだけで炭鉱に支払いをしたのは間違っています。

 財政・銀行部門では、軽工業部門やほかの部門にたいしても十分な財政的統制をおこなっていません。

 来年、学生・生徒と子供に衣服を供給するために軽工業部門でつくつてきた見本を見ると、上等なものでした。しかし、見本だけ上等なのではなんにもなりません。学生・生徒と子供に供給する衣服は全部立派に仕立てなければなりません。以前にも見本は上等なものでしたが、軽工業部門の工場で本格的に生産するときには、同じ布地でも見本のようにつくらず、おおざっぱに生産する傾向があらわれました。

 しかし、財政・銀行部門では、取引収入金を取って国家の歳入を増やすことに関心を払うだけで、財政的統制を強化しで工場、企業所が製品の質を高め、独立採算制を正しく実施するように仕向けることにはさほど関心を払っていません。

 独立採算制が正しく実施されていないため、まだ従業員一人当たりの生産額も全般的にはそれほど高くありません。従業員一人当たりの生産額を1万ウォン以上に高める課題を示してからだいぶたちますが、いまだにその目標に達していない工場、企業所が多く、既に到達した水準で頭うちとなり、伸び悩みの状態にある工場、企業所もあります。

 人民経済の各部門と工場、企業所で価値法則を正しく適用し、独立採算制を正しく実施させるためには、国家計画委員会価格制定総局と国家科学技術委員会、品質監督総局、そして生産を直接指導する幹部の役割を高めなければならないのはもちろんですが、財政・銀行部門の活動家の役割を高めることが、また極めて重要です。

 財政・銀行部門の活動家が、現在のように財政的統制を正しくおこなわず、良質の製品を生産した人と低質の製品を生産した人を同一に評価し、たくさん働いた人と少ししか働いていない人に同一の賃金を支払うようにしてはなりません。良質の製品を生産した人とたくさん働いた人には、そうでない人に比べて当然、高い評価を与え、賃金も多くもらえるようにすべきです。

 財政・銀行部門が価値法則の要求に即して財政的統制を正しくおこなえば、工場 企業所で節約運動を強化し、設備をきちょうめんに管理し、技術革新運動を積極的にくりひろげるよう刺激を与えるようになり、勤労者の創造的熱意もいっそう高めることができます。こうなれば、原単位消費基準を引き下げ、従業員一人当たりの生産額をさらに高め、製品の品質もいちだんと高めることができます。ですから、財政・銀行部門の活動家がその役割を十分に果たすことは、社会主義経済建設の促進と人民生活の向上において重要な意義をもちます。

 財政・銀行部門の活動家が、これまで財政的統制を正しくおこなわなかったことにたいし、今回の会議でなまぬるい批判しかおこなわれなかったのなら、もう少し厳しく批判するのがよいでしょう。批判は、人をそしり、痛い目にあわせるのが目的なのではなく、欠陥を改め、活動の改善をはかることに目的があります。批判は、活動をひきつづき発展させる推進力です。

 軽工業部門でも、批判を強めてこそ製品の品質を高める問題を解決することができます。学生・生徒と子供の衣服の見本を見て軽工業部門の幹部にいったことですが、軽工業部門では、年に2、3度労働者、農民や青年学生、子供のなかにはいり、軽工業製品にたいする品評会を開いて人民の批判をうけるようにすべきです。そうすれば、原単位消費基準をさらに引き下げ、製品の品質もいっそう高めることができるはずです。

 財政・銀行部門では、これから財政的統制をいっそう強め、人民経済各部門の工場、企業所が価値法則の要求に即して独立採算制を正確に実施するように働きかけるべきです。

 同時に、 独立採算制企業所の隊伍をひきつづき拡大すべきです。

 まだ国家予算によって運営されている機関、企業所が少なくありません。国土管理部門、都市経営部門、買いつけ部門など、各部門でより多くの機関、企業所が独立採算制に移行するようにつとめるべきです。

 つぎに、財政規律を強めなければなりません。

 財政規律を強める目的は、財政浪費を防ぐことにあります。

 いま、自分勝手に財政支出をする規律のない傾向が少なくありません。いたずらに宴会や集会を催し、無意味な贈り物をするといった虚飾虚礼と、計画外の建設に財政をみだりに支出して国家予算支出を超過する傾向がいまなお根絶されていません。

 財政・銀行部門の活動家は、財政規律に違反するこうした傾向とたたかうべきであり、予算執行において厳格な規律をうちたて、財政的統制を強めなけばなりません。

 すべての財政支出は、国家予算の支出項目にしたがって正確におこない、一銭たりとも資金を超過支出しないようにすべきです。

 財政・銀行部門の活動家は、人民が稼ぎだした資金によつて人民の幸せな生活を保障するために働く人民の忠僕です。ですから財政・銀行部門の活動家は、常に国家資金を一銭といえども節約し、国家により多くの利益を与えるという立場で働かなければなりません。

 国家が規定した以外の資金を費やすことや規定に反して資金を支出することは、いずれも国家の法律に違反する行為です。国家予算は、最高主権機関である最高人民会議で採択した法律である以上、それに違反する権利は誰にもありません。国家予算に規定づけられているとおり、資金を正確に支出するのは、財政規律を強めるための第一の任務です。

 財政規律を強めるためには、財政総括を正しくおこなわなければなりません。

 いま、一部の経済幹部は、財政にたいする認識不足から、財政総括に当然の関心を向けていません。そのため国家機関、企業所と協同経営体では財政予算執行の総括を満足におこなっていません。

 すべての国家機関、企業所と協同経営体では、財政予算の執行状況総括をそのつど正しくおこなうべきです。工場、企業所と協同経営体では、毎月、四半期ごとに収益を得た金額と消費した金額、国家に利益を与えた金額を労働者、事務員と組合員に具体的に公開しなければなりません。こうしてこそ、財政予算執行にたいする大衆的統制と監督を強め、厳格な財政規律を確立することができます。財政規律の確立は、財政機関の力だけではスムーズにいくものではありません。財政管理にたいし大衆的に監督し、大衆的にたたかい、大衆がともに責任を負うようにしてこそ、厳格な財政規律を確立することができます。

 国家機関、企業所と協同経営体では、財政管理状況について、月別、四半期別の総括もおこない、半年分の総括もおこなうべきです。

 財政総括は独立採算制機関にかぎらず、国家予算で運営される機関でもおこなう必要があります。国家予算で運営される機関が財政総括をそのつどおこなわなくては、国家から与えられた予算で経済管理をきちょうめんにおこなっていくことができません。

 財政総括を正しくおこなえば、すべての幹部と勤労者が国の経済管理をきちょうめんにし、社会主義経済建設でうけもった革命課題を超過遂行するため、さらに努力するようになるでしょう

 つぎに、浪費行為との闘争を強化しなければなりません。

 いま国家と社会の共同財産をみだりに支出して浪費する傾向が少なくありません。

 国家と社会のすべての財産は人民がきずいたものであり、したがって、それは人民の共同所有です。社会主義制度のもとでは、すべての人が社会主義的分配の原則に従って、各自が働いた分だけ分配をうけます。ですから社会主義社会では、ただというものはありえません。必要によって分配が実施される共産主義社会にいたっても、すべての人が働かなければならないのですから、ただというものはありえません。ところがいま、人々の頭のなかにブルジョア思想の残りかすがくすぶっているため、ただでいただけるものを欲しがる傾向がかなりあり、工場、企業所、協同農場の幹部のあいだに国家と社会の共同財産をやたらに浪費する傾向が跡を絶っていません。

 布地一つを例にとってみても、たいへんな量が浪費されています。現在、党と国家の配慮によって、鉄道運輸部門や炭鉱、鉱山をはじめ、人民経済各部門の労働者に衣服を供給していますが、仕立てが粗雑で、国家の定めた供給基準が正しく守られていないので、多量の布地を浪費しています。また一部の国家・経済機関では、人民に供給されるべき布地を買ってはカーテンや椅子のカバーなどに使っています。このように、国家・経済機関が国家資金を不当に支出し、多くの布地を買って浪費するため、毎年布地を大量に生産していますが、商店に出まわる分は多くありません。

 浪費現象の多い主な原因は、財政的統制を強化せず、商品の価格を正しく定めていないことにあります。

 このたび布地の浪費現象を検討する過程で調べたところによると、両江道ではビナロン糸でロープをつくってホップのつるの柵に利用していました。ホップの栽培に必要なロープぐらいは、山にいくらでもあるシナの木の皮でつくることもできるし、畑のへりに麻を植えてそれでつくることもできます。ところが、ビナロン糸を卸売価格で安く売るため、立派な布地が織れる大切なビナロン糸を買い、ロープをつくって浪費しています。ビナロン糸でロープをつくれば、それだけ布地が生産できなくなるということに幹部は気づいていません。

 協同農場で肥料を散布しているのを見ても、国家が廉価で肥料を供給するため、それを惜しむことなくやたらに散布しています。こうして大切な肥料を浪費するばかりでなく、農作に支障を与えています。

 財政・銀行部門の活動家は、浪費行為に反対して強くたたかうべきであり、各部門の財政活動を平素から監督し統制すべきです。

 我が国の財政機関は、資本主義国家の財政機関とは、その使命と役割が根本的に異なっています。資本主義国家の財政機関は、主として人民から税金を取り立て、公務員に賃金を支給する役割を果たしている程度ですが、我が国の財政機関は、社会主義工業、農業の経営と人民生活の向上に必要な国家資金を直接掌握し取り扱う主人です。ですから財政活動家は、国家資金を着服・浪費し、むやみに支出する傾向と強くたたかわなければなりません。

 つぎに、地方予算制をいっそう強化しなければなりません。

 地方予算制は、我が国ではじめて実施した独創的な社会主義的予算制度です。

 我が国で地方予算制が実施される以前には、地方の経済生活に必要な資金を全額中央の予算でまかないました。しかし、地方予算制が実施されて数年後からは、すべての地方が各自の歳入で支出をまかない、さらに多くの収益を得て国家におさめています。昨年も、各地方で地方予算制を着実に実施した結果、10億ウォンという莫大な金額を国家におさめました。

 我が国で実施している地方予算制は、資本主義国の予算制とは性格が根本的に異なっています。資本主義国では、人民から税金を取り立てて予算を編成するので、歳入をいくら増やしたといえば、それだけ人民をもっと搾取したことを意味します。しかし、我が国の地方予算で国家におさめる資金は、地方経営工業を発展させ、サービス業を改善して追加的に収益をあげた資金であり、人民の生活を充足させ、国家に利益を与える資金です。ですから、我が国の地方予算制は、極めてすぐれた予算制度です。

 これまで、政権機関と財政部門の活動家が、地方予算制を実施するという党の方針を高くかかげ、立派な成果をおさめたことにたいし、私は非常に満足に思っています。

 しかし我々は、これまでの成果におごってはならず、今後、地方予算制を発展させるため大いに努力しなければなりません。

 地方予算制を発展させるということは、すなわち、地方ごとに自力で経済管理ができるよう地方経営工業と農業、水産業、人民へのサービス活動、買いつけ事業などの発展をはかることを意味します。

 地方予算制の強化において、買いつけ事業を改善して地方経営工業を発展させることが極めて重要です。

 いま、買いつけ事業が不振なので、地方経営工業をさらに早く発展させることができないありさまです。私が1962年に地方の党および経済活動家昌城連席会議で強調したように、地力経営工業は、農民の生産する農産物など地元の原料をそのつど買いつけて日用必需品や食料品を生産し、農村住民に供給することを基本的使命としています。ですから買いつけ事業を活発にしなければ、地方経営工業の発展は不可能です。今後、買いつけシステムを立て直し、買いつけ事業の抜本的改善をはかって、地方産業工場に原料を円滑に供給しなければなりません。

 各地方では、水産業の発展に大いに力をそそぐべきです。

 水産部門には、まだ生産増大の潜在力が十分にあります。地方で水産業を発展させれば、より多くの収益をあげ、地方予算制を円滑に実施することができます。小規模漁業を大いに発展させ、あらゆる条件と可能性を利用して.水産物の生産を増やすべきです。

 地方ではまた、ニワトリと卵、食肉生産を積極的に増やし、それを商店と農民市場にたくさん出して売るようにすべきです。そうすれば、人民の生活向上にプラスとなり、国家の歳入もいちだんと増やすことができます。

 財政・銀行部門の活動家は、我が党の示した地方予算制の優位性をより十分に発揮させるため積極的に努力することによって、我が国の各地方の人民が自主的で創造的な生活を思うぞんぶん享受できるようにすべきです。

 つぎに、銀行機関の役割を強めなければなりません。

 銀行は、資金を融通する機関です。工場、企業所、協同農場が経営を管理する過程には、一時的に遊休貨幣資金が生まれることもあれば、資金の不足をきたすこともあります。銀行は、遊休貨幣資金をそのつど回収して必要な部門にまわし、資金の不足する部門には貸し付けをして経営活動が円滑にいくように保障する役割を果たします。

 我々は解放直後、営農資金がなくて農民が困難をなめているとき、農民銀行を設置して農民の営農資金を解決しました。

 解放後、農民は土地改革のおかげで土地はもったものの、役牛と種子用穀物がなく、農機具も不足していました。しかし、かれらには役牛や種子用穀物、農機具を買い入れる金がありませんでした。そのとき、地主は農民のこうした実情を見て、おまえたちが素手でどうやって農業が営めるというのか、といい、富農と高利貸はよい機会だとばかりに高利貸しをして貧農を搾取しようとしました。役牛を持っている人は、貧農に一日か二日牛を貸しては、秋になって米を高い代価で取り立てようとしました。

 しかし当時、我々には農民に営農資金として貸し出す資金がありませんでした。日本帝国主義者は敗走するとき、工場を全部破壊し、多少残っていた小さな工場はいずれも個人企業家が所有していました。そのため資金の出所がありませんでした。そこで我々は、農村収奪のために日本帝国主義者がつくった金融組合の財産を没収し、それを元手にして農民銀行を組織することにしました。そして農民には、持っている金を農民銀行に出資させました。1ウォン持っている人は1ウォン、2ウォン持っている人は2ウォン、3ウォン持っている人は3ウォンをそれぞれ出資させました。農民にかぎらず、労働者、事務員にも農民銀行に出資させました。農民銀行に出資した人には、年に一度、秋に出資額に応じて配当を支払うようにしました。

 農民は、農民銀行創設の方針を積極的に支持し、われ先に農民銀行に出資しました。こうして、少なからぬ農民銀行創設基金をととのえることができました。

 農民銀行は農民に貸し付けをおこない、かれらが慈江道のような山間部に行って役牛を買って使い、種子用穀物と小農機具を購入できるようにしました。一方国家は、農民銀行の資金で役牛を買って牛馬賃耕所を設け、農民の田畑を耕耘する措置を講じました。当時、賃耕料は役牛の飼育ができる程度に安くしました。

 我々はこういうふうにして解放直後、難題であった農民の営農資金問題を成功裏に解決し、貧農が富農と高利貸の搾取からぬけでられるようにしました。農民銀行はまた、農民に協同精神を植えつけ、協同化の優位性を認識させるうえでも重要な働きをしました。

 現在、我が国には生産手段にたいする全人民的所有と協同的所有が存在しており、それにともなう国家経営と協同経営がありますが、どういう形態の経営であれ、それを正しく運営するには、銀行の役割を高めて遊休貨幣資金を最大限に動員利用し、ウォンによる統制を正しくおこなわなければなりません。

 銀行機関は、預金活動を強化して遊休貨幣資金を積極的に動員する一方、貸し付けを正しくおこなわなければなりません。

 農業協同化のさい、銀行機関は我が党の階級政策にそって、農業協同組合と貧農には長期貸し付けを、中農には短期貸し付けをし、富農には貸し付けをしませんでした。いまではこういう問題が提起されませんが、銀行機関の役割は依然として非常に重要です。銀行機関は厳格な支払い・納入規律を確立し、貸し付けを公正におこなうべきです。銀行機関は、対象別に正しく検討し、貸し付けが是非とも必要な工場、企業所と協同農場、生産協同組合に必要な分だけ資金を貸し付けるべきです。指標別計画を達成できずに資金の不足をきたしている工場、企業所には、短期貸し付けだけおこなうべきです。

 財政機関と銀行機関の活動は、互いに切り離せない密接な関係にあります。したがって財政機関と銀行機関は、共同作戦に力を入れなければなりません。

 財政・銀行機関の計算業務を積極的に機械化すべきです。

 これからは、すべての計算業務をコンピューターでおこなわなければなりません。そうしてこそ、計算の迅速化をはかり、労働力を節約することもできます。銀行機関では外貨獲得運動を広く展開し、近代的な計算設備をととのえるようにすべきです。

 財政・銀行機関に女性をたくさん採用すべきです。

 現在、我が国人民経済の労働力構成において、女性の比率はほぼ半分に達していますが、財政・銀行機関には女性が多くありません。このことは、幹部のあいだに、いまなお女性をないがしろにする傾向が完全になくなっていないことを示しています。財政・銀行機関で女性が働けない条件はなく、むしろ男性より立派に働くことができます。これから財政・銀行機関では女性を大いに採用すべきです。

 これまで財政・銀行部門の活動家は困難な道を歩んできましたが、その過程で多くの成果をおさめました。もちろん今後も、我々の前進途上にはさまざまな難関があるでしょう。しかし、以前になめたような厳しい難関はないでしょう。いまは財政・銀行部門の土台がしっかりときずかれているのですから、これからは仕事がもっとらくにできるはずです。

 私は、今後すべての財政・銀行部門の活動家が、たちはだかる難関を成功裏に克服し、党から与えられた任務を立派に遂行するものと確信します。

出典:「金日成著作集」33巻


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