金 日 成

政治活動を立派におこなって人民軍の威力をさらに強めよう
朝鮮人民軍第7回扇動員大会でおこなった演説 
1977年11月30日

 同志の皆さん!

 私はまず、朝鮮労働党中央委員会と共和国政府および最高司令官の名において、朝鮮人民軍扇動員大会に参加した同志の皆さんにあついあいさつを送ります。

 私はまた、本大会が成功裏に進められたことに対し、皆さんに熱烈な祝賀を送るものです。

 私はきょう、この機会をかりて、わが党の現行の諸政策と人民軍内で政治活動を強化する問題、そして、人民軍軍人が軍務生活で必ず守るべきいくつかの問題について述べたいと思います。

 1 祖国の自主的平和統一の実現をめざすわが党の路線について

 いまわが党は、祖国の自主的平和統一の実現のために三大路線を堅持しています。言いかえれば、わが党は祖国の自主的平和統一を実現するために、第1に共和国北半部で社会主義建設を促進して北半部の社会主義陣地をいっそう強化し、第2に南朝鮮人民の民主化闘争を積極的に支持声援し、第3に社会主義諸国人民と第三世界諸国人民、非同盟諸国人民をはじめ、世界の革命的諸国人民との団結を強化するために闘っています。共和国北半部で社会主義建設を立派におこない、南朝鮮人民の革命闘争を支援し、国際革命勢力との連帯を強めるというこの三大課題を遂行することが、こんにち、わが党の重要な路線であり、方針であります。

 祖国の自主的平和統一をめざす闘いにおいて第1に重要な課題は、共和国北半部で社会主義建設を立派に進めることです。

 わが国の社会主義建設はひきつづき発展の一路をたどり、順調にいっています。

 我々は、社会主義建設のために、思想、技術、文化の三大革命を進めています。

 思想革命の中心的課題は、すべての人をチュチェ思想で武装させ、全社会をチュチェ思想で一色化することです。これまで思想革命を力強くくりひろげた結果、全人民がわが党の革命思想、チュチェ思想でしっかり武装し、全社会にチュチェ思想がみなぎっています。これは、わが党のおさめた偉大な成果です。

 私は、わが国の労働者階級と協同農民、勤労インテリ、人民軍軍人をはじめ、全人民がチュチェ思想でしっかり武装し、党のまわりに一丸となって団結していることをたいへん誇らしく思っています。

 いま思想革命をおろそかにしている国では、いろいろと好ましからぬことが起こっています。一部の国の人々は思想的に変質腐敗しており、さまざまな社会的混乱が生じています。

 低い山と比べれば高い山がさらに大きく見えるように、こうした国々と比較するとき、わが党がおさめた成果はまことに偉大で誇らしいものです。わが国のように、全人民が党の唯一思想でしっかり武装し、党のまわりにかたく団結して党の号令によって一糸乱れず動く、これほど偉大な党、偉大な人民は、世界にまたとありません。それゆえ、社会主義諸国、第三世界諸国、非同盟諸国は、わが国をうらやんでいるのです。

 今年、世界各国の首班がわが国を訪問しましたが、彼らは朝鮮人民が党のまわりにかたく団結し、革命的情熱に燃えていることに非常に感嘆していました。わが国を訪れたある国の大統領は、朝鮮人民のようにかたく団結し、革命的情熱に燃えている人民は世界に類がない、こうした人民をもつ党には恐れるべきものかないと語りました。彼はまた、わが国の社会主義建設のテンポが非常に速いことに驚嘆しなから、戦争で廃墟と化した平壌がわずか20年で雄大な近代都市に建設された姿を目にして、自分の国ではこのような建設テンポは想像すらできないと言いました。わが国で社会主義建設が急速にはかどっているのは、党のまわりにかたく結集した労働者、農民、勤労インテリ、人民軍将兵が党の呼びかけにこたえて一体となって立ち上がり、高度の革命的熱意を発揮して闘っているからです。

 もちろん、我々の仕事には、まだ部分的に欠陥もあります。しかし、これらの欠陥は、急速な前進過程にあらわれる欠陥であり、あまりにも多くの仕事をするなかで生じる欠陥です。我々は、このような欠陥をたえず批判し改めています。

 わが党が思想革命でおさめた成果は比類なく偉大なものです。低い連山の上に白頭山がきわだって高くそびえているように、我々の成果は特出したものであり、他の国とは比べ物になりません。

 人民軍の宣伝・扇動活動家は、大きな誇りをもって、わが党が思想革命でおさめた成果をすべての党員と軍人に解説しなければなりません。

 思想革命とあわせて技術革命と文化革命も立派に進められています。

 現段階での技術革命の基本目標は、第5回党大会がうちだした3大技術革命の課題を遂行することです。

 我々は、技術を発達させる問題も、決して、たんなる技術改造や経済的課題ではなく、一つの革命、政治的課題とみなしています。共産主義者が権力を握り、社会主義革命を遂行して勤労者を搾取と抑圧から解放したのちは、彼らを骨のおれる労働から解放する重大な課題が提起されます。勤労者の骨のおれる労働を楽な労働に変え、労働の本質的な差をなくすのは一つの革命です。それで、我々は、第5回党大会で重労働と軽労働の差、農業労働と工業労働の差を著しく縮め、女性を家事の重い負担から解放することを3大技術革命の課題として提起しました。

 3大技術革命の課題に従って、いま我々は、炭鉱や鉱山など有害で骨のおれる労働がおこなわれている部門の仕事を楽をものにするために努力しており、農村では農業労働を機械や電気、化学の力でできるようにして、今後、農民にも労働者と同じく8時間労働制を実施し、季節や気候条件の変化に影響をうけずに働けるようにしようと努力しています。我々はまた、女性を家事の重い負担から解放する仕事に拍車をかけています。

 わが国では、いたるところで無数の託児所や幼稚園を運営し、女性が何の心配もなく社会に進出して働けるようにする問題を立派に解決しました。現在、託児所と幼稚園には350万以上の子どもがいますが、我々はこの子どもたちを全部国家と社会の負担で保育しています。

 いま世界の多くの国では、女性がもっと多く子どもを産みたくても養育の心配のため、それができません。しかし、わが国の女性には、そのような心配が全く不必要です。外国では経済的な事情から子どもを多く生むのを制限していますが、わが国ではそういうことをしていません。わが国では、もっぱら母親の健康を守るために、子どもを少なく生むよう勧めているだけです。

 我々は今後、食品加工工業をはじめ、軽工業を速やかに発展させて、女性を炊事からも解放し、いっさいの家事の負担から完全に解放する考えです。これは、女性解放の最後の課題です。女性を搾取と抑圧、人身的従属と不平等から解放したあと、家事の負担からも解放して、女性が男子と同等の社会的地位をしめ革命の片方の車輪を進めていけるようにしたとき、女性解放が完全に実現されます。

 我々はひきつづき技術革命を力強くおし進めて、肉体労働と精神労働の差までもふくむ労働のあらゆる差をなくし、全社会的な範囲で勤労者の完全な平等を実現しなければなりません。これは、共産主義社会の建設で我々がなすべき最後の闘いの一環であり、偉大な革命課題です。

 文化革命については、先ごろ党中央委員会第5期第14回総会で発表した『社会主義教育に関するテーゼ』のなかで明らかにしたので、ここでは多くふれないことにします。

 我々のおこなっている文化革命は、外国のそれとは異なります。わが国の文化革命は、すべての勤労者に一つ以上の技術を身につけさせ、社会の全構成員をインテリ化する事業です。社会の全構成員が高度の知識と技術を身につけずには、最も文化的で発達した社会、共産主義社会を建設することができません。したがって、文化革命もやはり共産主義社会を建設するため我々が遂行すべき最後の闘いです。

 わが国ではいま、全般的11年制義務教育を実施しています。これからは働きながら学ぶ大学を増設して、すべての勤労者に高等教育をほどこす考えです。これは、わが党が示した文化革命の独創的で偉大な課題です。

 このように、わが党がうちだした思想、技術、文化の三大革命の課題は、自主的で創造的かつ共産主義的な革命課題であり、わが党がかかげている三大革命の三つの赤旗は最も偉大な革命の旗印です。

 私はきょう皆さんに、発電所や工場をいくつ建設し、学校をいくつ増設したといった社会主義経済・文化建設の具体的な成果について述べるつもりはありません。こういうことは、既に新聞や雑誌、ラジオやテレビなどをつうじてよく知っていることと思います。

 人民軍軍人は、わが党が堅持している三大革命路線の正しさをはっきりと認識すべきです。また、わが国の全人民が、党のまわりにかたく団結して力強く闘い、共和国北半部を強固な革命の基地、共産主義的基地に築いたことに深い自負をいだき、堂々と誇るべきです。

 人民軍軍人は全人民と一丸となって、三大革命の栄誉ある課題をあくまで立派に遂行するため総決起しなければなりません。

 祖国の自主的平和統一を実現するためには、共和国北半部で社会主義張建設を立派に進めるとともに、南朝鮮の革命をなし遂げなければなりません。

 南朝鮮革命は、南朝鮮人民を革命的に目ざめさせ、立ち上がらせてこそ勝利することができます。南朝鮮革命における当面の重要な課題は、南朝鮮人民が反ファッショ民主化闘争を力強くくりひろげて軍事ファシスト独裁「政権」を打倒し、南朝鮮かいらい一味を唆しているアメリカ帝国主義者を国際的に徹底的に孤立させることです。

 いま南朝鮮かいらい一味の不正・腐敗行為が、世界的に物議をかもしだしています。アメリカの議会までが、南朝鮮かいらい一味の贈賄事件を取り上げて騒いでいます。

 南朝鮮かいらい一味は、実に醜悪な連中です。彼らは、アメリカから借りた金でアメリカ人を買収しています。最近アメリカの陸軍長官や、空軍司令官、何とか司令官といった軍部の要人連が足しげく南朝鮮にやって来るのは、南朝鮮かいらい一味がアメリカから借りた金を彼らのポケットにさしこみ、キーセンを提供するからです。アメリカ軍部の要人がたんなる軍事上の目的ならば、年に何十回も南朝鮮にやってくる必要はないはずです。アメリカ人は、南朝鮮かいらい一味のこのような贈賄行為の内幕を知っているので、いま毎日のように騒いでいます。アメリカ国内で南朝鮮かいらい一味の贈賄行為が問題視されるのは悪くありません。

 南朝鮮かいらい一味は、南朝鮮人民から孤立しているだけでなく、その同盟者や主人たちからも孤立しています。もちろん、アメリカの一部の反動層は彼らを擁護していますが、大多数のアメリカ人民と民主人士は、彼らのファッショ的暴政と人権弾圧、不正・腐敗行為を暴露、糾弾しています。これは、南朝鮮人民の民主化運動にとって大きな助けとなります。

 いま南朝鮮人民は、かいらい一味の過酷なファッショ的弾圧のもとでも間断なく反ファッショ民主化闘争をくりひろげています。南朝鮮の労働者、農民、青年学生にとどまらず、宗教界や上層部の人々のあいだでも、軍事ファシスト独裁「政権」の打倒を叫ぶ声が日増しに高まっています。

 このような情勢のもとで我々は、各方面から南朝鮮人民の反ファッショ民主化闘争を支援し、南朝鮮人民が軍事ファシスト独裁「政権」を打倒するとともに、アメリカ帝国主義者を駆逐するように.し、祖国の自主的平和統一を実現するための基礎を築いていかなければなりません。

 国際革命勢力との団結を強化することは、祖国の自主的平和統一をめざす闘いで、わが党が一貫して堅持している方針です。

 近年、国際革命勢力との団結を強める活動でもすばらしい成果をおさめています。

 わが国は、あくまでも自主性を堅持する国として、世界各国の人民から支持と共鳴を得ています。社会主義諸国や第三世界諸国、非同盟諸国の人民をはじめ、世界のすべての進歩的人民は、わが党のチュチェ思想と、政治における自主、経済における自立、国防における自衛の路線を支持し、それに学ぼうとしています。こんにち、わが国を支持する声は全世界的な規模で高まっています。これは、わが党の堅持している自主路線の正しさを証明するものであり、朝鮮革命にとって非常に好ましいことです。

 わが党が最初、自主の旗をかかげ、政治における自主、経済における自立、国防における自衛の路線をうちだしたとき、一部の人は、統一もされていない小さい国がどうしてひとりで自主的にやっていけるのか、と嘲笑しました。また国内にも動揺分子がかなりいました。しかし、いまでは誰もが、わが党の自主路線を支持し、羨望しています。

 最近、わが国を訪れたある社会主義国の代表団は、朝鮮人民が自立的民族経済を建設し、すべての問題を自主的に処理し、何事であれ意のままにおこなっているのは、うらやましい限りだといいました。これは、彼らの心の底から出た言葉だと思います。社会主義革命を遂行し、社会主義制度を樹立してからも、自主性をもてずに外国に従属するなら、革命をする必要はありません。

 わが国を訪れた第三世界のある国の大統領は、自主性を堅持するというのはどのようにすることなのかと、私に質問したことがあります。私は彼に、何か物を食べるとき、かんでみてうまければのみくだし、まずければ吐き出してしまうように、外国のものを取り入れたり、何かをするとき、必ず自国の実情に即しておこなうことだと答えました。その後、彼は、わが国の人々に会うたびに、金日成主席は、何でも味をみてうまければのみくだし、そうでなければ吐き捨てろと語った、自分はあくまでもこの原則を守っていると言っています。

 いま世界のすべての国が自主性を求めています。社会主義諸国と第三世界諸国、非同盟諸国はいうに及ばず、資本主義諸国でさえ自主性を求めています。それで、私は現代を自主性の時代と名づけました。

 わが党のチュチェ思想は、国際革命勢力との団結を強化するうえで偉大な旗印となっています。わが党のチュチェ思想が、国際舞台で大きな生命力を発揮し、世界人民の共鳴と支持を呼んでいることから、世界各国とわが国との団結は日を追ってますます強まっています。こんにち、わが国と国際革命勢力との関係は、かつてなく深まっています。これは、わが党がおさめたいま一つの偉大な勝利です。

 総体的にいって、祖国統一偉業の実現をめざす三大課題である共和国北半部での社会主義建設と南朝鮮人民の民主化闘争に対する支援、国際革命勢力との団結の強化のいずれもが、わが党の望むとおり順調にはかどっています。

 私は皆さんが部隊に帰って、このことを人民軍の全将兵に伝えてくれるよう望みます。

 2 人民軍内での政治活動を強化するために

 私は、人民軍内の政治活動で重要な位置をしめる宣伝・扇動活動家たちに、政治宣伝・扇動活動を強化する問題について強調したいと思います。

 政治宣伝・扇動活動は、党活動をはじめ、すべての活動において優先させるべき活動です。いかなる活動においても、まず政治活動を優先させ、ついで仕事を手配しなければなりません。

 すべての活動において政治活動を優先させるのは、わが党の堅持している基本方針であり、重要な活動方法の一つです。

 革命闘争と建設事業は、人民自身が自覚的におこなうべき事業です。政治活動を優先させ人民大衆の自覚的な熱意を呼びおこさないことには、革命闘争と建設事業で一歩も前進することができません。
 資本主義社会では、政治活動の必要がありません。資本主義社会では、金で人を使うので、金さえあれば何でもできます。資本家は、労働者が働かなければ賃金を払わず、職場から追い出してしまいます。それで資本主義社会の勤労者は、生きるために仕方なく働かなければならないのです。

 しかし、社会主義社会はそうでありません。わが国では、誰もが生まれながらに食べる権利を保障され、暮らしの心配などしていません。したがって、社会主義社会では、強制的なやり方や金で人を働かせることはできません。社会主義社会では、必ず政治活動を優先させ、すべての勤労者が、なぜ働かなければならないのかを知って自覚的に働くようにしなければなりません。こうして、はじめて彼らは熱心に働くようになります。

 人民軍の場合にしても同じことがいえます。政治活動を優先させるかどうかによって部隊の戦果が左右されます。政治活動を正しくおこなう部隊では、すべての軍人が自分の任務をよくわきまえ、旺盛な士気をもって勇敢に戦.い、常に戦闘で勝利するものです。しかし、政治活動を優先させず、組織活動を綿密におこなわない部隊は戦果をあげることができません。

 抗日武装闘争の時期と祖国解放戦争の時期、そして戦後の人民武力建設において我々がおさめた成果はいずれも、政治活動を優先させて得たものです。経験は、まず政治活動をおこない、ついで仕事の手配を綿密にしてはじめて、すべての活動で成果がおさめられることを示しています。

 現在、人民軍の隊列は、以前とは比べようもなく拡大しました。うつわが大きくなり、意識水準の異なる人々が大勢そのなかにはいってきました。このような状況にあって政治活動をさらに強化することが切実に必要です。

 では、人民軍内で政治活動を立派におこなうためにはいかにすべきでしょうか。

 第1に、軍人に対するチュチェ思想教育を強めることです。

 現在、わが党は、全社会をチュチェ思想化する課題をかかげています。したがって、人民軍もチュチェ思想教育を強化して、指揮官から兵士にいたるまですべての軍人をチュチェ思想で一色化しなければなりません。

 軍人をわが党の革命思想、チュチェ思想で武装させるうえで最も重要なのは、チュチェ思想の原理教育を強めることです。チュチェ思想の原理教育を強めてこそ、すべての軍人はチュチェ思想の真理をはっきり理解し、その要求どおり自主性と創意性を高度に発揮することができます。人民軍ではチュチェ思想の原理教育を強めて、すべての軍人をチュチェ思想の革命的原理でしっかり武装させ、彼らが軍事・政治訓練と革命任務の遂行過程で立ちはだかるあらゆる困難を敢然と克服し、党と領袖のために、祖国と人民のために、革命のために命を賭して闘う高度の思想的自覚をもつようにしなければなりません。

 軍人をチュチェ思想で武装させるためには、.チュチェ思想の原理教育と革命伝統教育を正しく取り合わせなければなりません。

 党規約に明記されているように、わが党は、抗日革命闘争の時期に築かれた栄えある革命伝統を直接受けついだ党です。わが党は、多年間の革命闘争をつうじて創立され成長したがゆえに、こんにち、かくも強力かつ健全で共産主義の信念に燃え、他のすべての革命組織を立派に指導することができるのです。

 わが人民軍もやはり抗日革命闘争の栄えある革命伝統を受けついだ軍隊です。人民軍は、朝鮮人民革命軍の後身です。朝鮮人民革命軍が解放後、朝鮮人民軍に発展したのです。

 我々は、人民軍軍人に対する革命伝統教育を強め、彼らに抗日革命闘争と祖国解放戦争の時期に革命烈士と英雄的戦士が党と領袖のために、祖国と人民のために血を流し、貴重な生命までささげて戦ったことを深く理解させなければなりません。こうして、すべての軍人が党と領袖のために、祖国と人民のために戦うのが、いかに光栄なことであるかをはっきり知って、革命烈士に習い、最後の血の一滴までささげて断固戦うよう教育しなければなりません。

 革命伝統教育を強めるうえで重要なのは、抗日遊撃隊員の回想記や革命伝統を主題にした小説を多く読むことです。しかし、それを興味本位に読んではなりません。抗日遊撃隊員の回想記や革命伝統を主題にした小説は、人々を革命的に教育する教科書です。軍人の政治活動にたずさわる宣伝・扇動活動家自身が、まず正しい認識をもってまじめに学習しなければなりません。

 第2に、軍人に対する階級的教育を強めることです。

 これについてはしばしば述べてきたところですが、いま一度強調するのも悪くないと思います。

 いま我々と対峙している敵は、アメリカ帝国主義者と日本帝国主義者です。今後、我々は、帝国主義者と戦い、南朝鮮の地主、資本家の「政権」とも戦わなければなりません。

 しかし、かつて日米帝国主義と戦った人々のほとんどは、年老いて白髪になりかけており、新しく育った青年は帝国主義についてよく知らず、地主や資本家の搾取と抑圧をうけた経験もありません。わが国の若い世代は、日本帝国主義者もヤンキーも見たことがなく、地主や資本家がどんな人間かもよく知っていません。

 このような状況のもとで、新しい世代に対する階級的教育をおろそかにするならば、彼らは敵と断固たたかうことができません。したがって、人民軍では軍人に対する階級的教育をさらに強化しなければなりません。

 階級的教育で重要なのは、搾取され抑圧されていた過去を忘れないように軍人を教育することです。

 かつて、日本帝国主義者が朝鮮民族をいかに抑圧し、アメリカ帝国主義者がわが国に対する侵略行為をいかにはたらいてきたかを、すべての軍人にはっきり教えることが何よりも重要です。かつて、日本帝国主義者はわが国を36年間も占領して支配しながら、朝鮮人民を過酷に抑圧し搾取しました。また、アメリカ帝国主義者は、わが共和国北半部に侵入して朝鮮人民を無残に虐殺しました。このことを人民軍軍人に明確に認識させるべきです。

 過去を忘れないように教育するうえで重要なのはまた、地主や資本家が人民をどのように搾取し抑圧したかを教えることです。

 のびゆく新しい世代は搾取と抑圧の支配した過去を知らないため、人間の社会はもともとこのように住みよい社会なのだと思っています。人民軍では、過去を忘れないよう軍人をしっかり教育して、旧社会はこんにちの社会主義社会のように住みよい社会ではなく、革命烈士の血みどろのたたかいによって、こうした立派な社会が築かれたことを認識させなければなりません。そうすれば、すべての軍人が二度と地主や資本家に搾取され抑圧されることのないよう、闘う決意をさらにかためることでしょう。

 軍人に帝国主義と地主、資本家がいかなるものかを忘れないようにするためには、生々しい素材を扱った小説、映画、テレビなどによる階級的教育をたえずおこなわなければなりません。

 長編小説『血の海』や『花を売る乙女』は、階級的教育の生きた資料です。小説『血の海』は、かつて日本帝国主義者が朝鮮人をいかに無残に虐殺し、朝鮮人民が日本帝国主義に抗してどう闘ったかを描いており、小説『花を売る乙女』は、かつて地主が農民をいかに抑圧し搾取したかを描いています。『血の海』を読めば日本帝国主義を憎み、『花を売る乙女』を読めば地主を憎むようになります。今後すべての軍人に『血の海』や『花を売る乙女』などの革命的小説を多く読ませなければなりません。

 階級的教育で次に重要なのは、南朝鮮を忘れないように軍人を教育することです。

 南朝鮮は、わが国の領土の半分に相当し、そこにはわが国人口の半数以上が住んでいます。南朝鮮は、アメリカ帝国主義者に占領されており、日本軍国主義者が再び南朝鮮をねらっています。いま南朝鮮の同胞は、かつて朝鮮人民が日本帝国主義者と地主、資本家に搾取され抑圧されていたように、アメリカ帝国主義者とその手先から過酷に搾取され抑圧されています。それゆえ、我々は瞬時も南朝鮮を忘れてはなりません。

 人民軍の宣伝・扇動活動家は、南朝鮮人民がアメリカ帝国主義者とその手先から過酷に搾取され抑圧されていることを軍人にはっきり認識させ、彼らがアメリカ帝国主義者の占領下にある国土の半分を取り戻さずには、革命任務を全うしえないのだという責任感に徹するようにすべきです。

 第3に、社会主義祖国を熱愛するようにすべての軍人を教育することです。

 軍人に祖国愛をもつようにせよというのは、ここに彼らの父母兄弟や妻子が住んでいるからだけではありません。より重要なのは、朝鮮人民にすべての幸せをもたらす社会主義制度がここにあるからです。

 わが社会主義祖国は、搾取も抑圧も税金もなく、誰もが働き、学び、無料で病気を治せる、世界で最もすばらしい祖国です。言いかえれば、わが社会主義祖国は、政治において自主的で、経済において自立的で、国防において自衛的なチュチェの祖国です。

 人民軍では、社会主義的愛国主義教育を強化して、すべての軍人がわが社会主義祖国を限りなく愛し、敵の侵略から確固と守りぬくようにしなければなりません。

 第4に、共産主義の勝利に対する不動の信念をもつようにすべての軍人を教育することです。

 共産主義社会は、階級がなく、すべての人が能力に応じて働き、必要に応じて分配をうけるすばらしい社会です。人民軍では、共産主義の勝利に対する不動の信念をもち、共産主義社会の建設をめざして積極的に闘うようにすべての軍人を教育しなければなりません。

 3 軍務生活において人民軍軍人の守るべき10大遵守事項について

 人民軍には、内務規定、規律規定など、軍人の守るべき各種の軍事規定があります。しかし、まだ一部の軍人は、軍事規定の要求どおり軍務生活をしていません。部分的にせよ軍事規律に違反する軍人もいるし、人民の財産の保護に努めない軍人もおり、兵士を大切にしない指揮官もいます。

 かつて、抗日遊撃隊には特別な軍事規定などありませんでしたが、軍事規律に背いたり、人民の財産に手をつけたりする隊員はおらず、指揮官は兵士を実の兄弟のように愛しました。人民軍は、抗日遊撃隊の輝かしい革命伝統を受けついだ軍隊です。抗日遊撃隊の創建からすると、人民軍は46年という長い歴史をもっています。ところがいま、人民軍軍人のあいだに軍事規定に違反する欠陥が見られるのはなぜでしょうか。

 その基本的な原因は、人民軍内の政治活動がまだ十分におこなわれていないところにあります。

 これまで我々は、人民軍内の政治活動を強化して官僚主義をはじめ、さまざまな欠陥をなくし、人民軍を不敗の革命武力に強化する一連の措置をとりました。特に、人民軍の隊伍を強化するために、軍隊の細胞である中隊を強化するようしばしば強調し、党中央委員会と人民軍党委員会で講習をおこなうなど、中隊を強化するため少なからず努力してきました。

 しかし、人民軍では、いまなお政治活動が十分におこなわれておらず、そのため軍人のあいだに軍事規定を遵守しない傾向がしばしばあらわれています。軍事規定があっても、軍人がそれを守らなければ軍事規律は強まらず、何の役にも立ちません。

 私はきょう、党中央委員会総書記として、そして、人民軍最高司令官として、人民軍のすべての軍人が軍務生活で必ず守るべき10大遵守事項を提示したいと思います。

 もちろん、この十項目にすべての問題をもりこむのは無理なことです。したがって、これをもってすべての軍事規定に代えることはできません。しかし、人民軍軍人が常に銘記していつ、どこにあっても必ず守るべき最も基本的な事項をまとめて示すことが必要であると考えます。

 軍務生活において人民軍軍人の守るべき10大遵守事項は、次のとおりです。

 第1に、人民軍軍人は、常に軍事規定を厳守すること。

 軍人が軍事規定を厳守するためには、内務規定や規律規定などの軍事規定の学習を強めなければなりません。

 第2に、人民軍軍人は、自分の武器に精通し、常に手入れをよくすること。

 軍人にとって武器は生命にひとしいものです。軍人が立派に戦うためには、武器を巧みに使い、常にきれいに手入れし、よく保管しなければなりません。軍人は、拳銃、自動小銃、機関銃、投擲器自動小銃、発射筒など各自の銃器の射撃に長じ、その手入れに心がけるべきです。大砲、航空機、艦船、ロケットを扱う人の場合にしても同じです。人民軍軍人は、すべて各自の武器をもっています。自動車の運転手にとっては自動車がすなわち武器です。それゆえ、人民軍のすべての軍人は、自分の武器に精通し、常に手入れをよくしなければなりません。

 第3に、人民軍軍人は、いかなる状況下にあっても軍事命令をあくまで実行すること。

 人民軍軍人は、すべて、いつ、どのような状況のもとでも最高司令官の命令を無条件貫き、最高司令官の命令にもとづく人民武力相、軍団長、師団長、連隊長、大隊長、その他の指揮官の命令をたがえることなく実行する気風を確立しなければなりません。

 第4に、人民軍軍人は、党および政治組織の分担した任務を必ず実行すること。

 人民軍軍人は、党中央委員会から与えられた任務と、また党中央委員会の決定、指示を実行するため各級党組織と社労青組織が分担した任務を確実に実行しなければなりません。

 第5に、人民軍軍人は、国家機密、軍事機密、党組織の機密を厳守すること。

 革命軍隊にとって機密は生命であり、機密の厳守は戦闘勝利の重要な保障です。軍事作戦で機密がもれれば、その作戦はもはや失敗したのも同然です。したがって、すべての人民軍軍人は、機密を漏洩する行為と断固たたかい、国家機密、軍事機密、党組織の機密を厳守しなければなりません。

 第6に、人民軍軍人は、国家の社会主義的法と秩序を徹底的に遵守すること。

 わが国の社会主義的法は、少数の搾取階級の利益を守る資本主義的法とは正反対に、労働者、農民、兵士、勤労インテリをはじめ、全人民を保護し、その利益を守ることに奉仕しています。人民軍軍人は、人民の生命財産や利益を守るために銃を取ったのであるから、誰よりも自覚的に社会主義的法と秩序を遵守しなければなりません。

 第7に、人民軍軍人は、軍事・政治訓練に欠かさず参加し、熱心に学ぶこと。

 この問題は、皆さんもよく知っていることなので解説をはぶきます。

 第8に、人民軍軍人は、人民を愛し、人民の財産をいささかもそこなわないこと。

 人民軍は、労働者、農民のなかから生まれた人民の軍隊です。人民軍軍人は、人民を離れては生きていけません。「魚が水を離れては生きていけないように、遊撃隊は人民を離れては生きていけない」というのが抗日遊撃隊の合言葉でした。人民から遊離した人民軍はありえず、そうした軍隊は必要もありません。人民軍は、人民の利益を守るために創建された軍隊です。したがって、人民軍軍人はいかに困難な場合でも、針1本、糸やなわ1本でも人民の財産をそこねてはなりません。

 軍人が人民の利益を侵さないようにするには、軍隊内の政治幹部が兵士の気持ちをよく察し、それにあわせて活動することが重要です。

 抗日武装闘争当時の実例を一つあげましょう。

 私が遊撃隊を率いて北満遠征をしたときのことです。部隊が夜間行軍中、大きなウリ畑のそばを通りかかったときのことです。畑からはよく熟れたウリのおいしそうな匂いが漂ってきました。隊員たちの視線はおのずとウリ畑に集中し、誰もが食べたそうな表情でした。ウリ畑をそのまま通りすぎれば、一部の隊員はウリに手をつけるおそれもあったので、私は休憩命令をくだしました。そして、伝令兵を送って畑の持ち主を探し、畑のウリの値段を聞いて全部買うことにしました。我々は、50円程度でよいという畑の持ち主に100円を払い、隊員たちに十分食べさせてから行軍をつづけました。隊員たちは非常に喜び、畑の持ち主も遊撃隊はほんとうに紳士的な軍隊だといって、我々が通過したことを秘密にしてくれました。

 いま、人民軍の一部の政治幹部は、兵士の心理に合わせて母親のような気持ちで活動していません。

 ある区分隊では、初トウモロコシが食べたいという兵士の希望さえかなえてやれず、人民との関係をこじれさせたことがあったそうですが、これは政治指導員や政治委員もしくは区分隊長や部隊長が兵士たちの気持ち知らないためです。初トウモロコシが出まわりはじめれば兵士たちも食べたがるにきまっています。だとすれば、あらかじめ付近の協同農場と交渉して初トウモロコシを少々求めてきて兵士に食べさせれば、人民との関係をまずくするようなことはないでしょう。

 第9に、人民軍軍人は、国家の財産と軍用物資をしっかり守り、その節約に努めること。

 わが国の社会主義制度のもとでは、すべての財産がみな人民のものです。橋梁一つ、樹木一本、軍用物資一個といえども、みな人民の財産です。それゆえ、人民軍のすべての軍人は、国家の財産と軍用物資をしっかり守り、それを極力節約しなければなりません。

 第10に、人民軍軍人は、同志を実の兄弟のように大切にし、軍隊内に上下一致の団結の美風を確立すること。

 人民軍内に革命的同志愛の美風を確立する問題については、人民軍創建25周年記念日の演説で述べました。そのさいにも話したことですが、革命的同志愛は、人民軍の不敗の力の源です。人民軍内に革命的同志愛の美風がみなぎるとき、軍人は生命を賭して一つの塹壕のなかでともに戦い、敵と戦って常に勝利することができます。すべての軍人は、私の演説をさらに深く学習し、革命的同志愛の美風を高度に発揮するため大いに努力すべきです。こうして、将校は兵士をいたわり、兵士は将校を尊敬し、将校と兵士がみな実の兄弟のように互いに大事にしあい、かたく団結しなければなりません。

 人民軍軍人は、誰もが、以上の10大遵守事項をあくまで守らなければなりません。

 すべての軍人が、食事のときにも行軍のときにも、いつ、どこで何をするときにも、この10大遵守事項を肝に銘じて指針とするならば、規律に背くようなことはなくなるでしょう。

 今後、人民軍の宣伝員、扇動員と政治幹部は、10大遵守事項にもとづいて軍人に対する政治活動を立派におこない、軍事・政治訓練といっさいの軍務生活に新たな転換をもたらさなければなりません。

 人民軍に提起されている当面の諸課題を遂行するうえで、宣伝員、扇動員の役割は極めて重要です。したがって、宣伝員、扇動員は、高度の責任感をもってその栄誉ある使命を全うするため大いに努力しなければなりません。

 宣伝員、扇動員が各自の役割を十分に果たすためには、何よりも、わが党の政策と軍事路線に精通しなければなりません。党の政策と軍事路線に通暁しなければ、宣伝・扇動活動の成果は期待できません。

 宣伝員、扇動員はまた、軍務生活で模範となるべきです。宣伝員、扇動員が軍人たちにいくら立派な言葉で多くの宣伝をしても、実際の行動で模範を示さないならば、何の効果もありません。宣伝員、扇動員は、軍務生活で模範を示してこそ、その役割を十分に果たすことができます。

 私は、本扇動員大会が人民軍内での政治活動をさらに改善し、人民軍を一当百の革命武力に強化するうえで画期的な転機となるものと確信します。


<注釈>−北満遠征 金日成主席が、朝鮮人民革命軍一部隊を率いて北満一帯に進出し、繰りひろげた軍事・政治活動をいう。北満遠征は、2回にわたっておこなわれた。第1次北満遠征は1934年10月下旬から1935年2月中旬にかけておこなわれた。
 著作のなかで指摘されているのは、1935年6月から1936年2月にかけての第2次北満遠征をさす。
 第2次北満遠征の目的は、北満で活動中の部隊を助けて、その戦闘力を高め、彼らと協同して大がかりな遊撃活動を展開し、敵を大量撃滅する一方、この一帯の人民に革命的影響を与え、彼らを反日闘争へと奮い立たせることにあった。
 第2次北満遠征の時期、朝鮮人民革命軍の積極的な軍事活動と大衆政治活動によって、この一帯の日本帝国主義侵略者は連続打撃をこうむり、広範な人民大衆は、急速に革命化、組織化された。その結果、北満一帯の広大な地域に強固な大衆的基礎が築かれた。
                                                
出典:『金日成著作集』32巻


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