金日成「社会主義教育に関するテーゼ」

4 我が国の社会主義教育制度


 社会主義教育事業は、社会主義社会の本質にかなった先進的な教育制度にもとづいてのみ成功裏におこなうことができる。

 我が国の社会主義教育制度は、教育事業に社会主義教育学の基本原理を具現し、社会主義教育の目的達成を可能にする基本的保証である。

 我が国の社会主義教育制度の歴史的根元は、抗日革命闘争の時期にきずかれた。我々は抗日革命闘争の時期にチュチェ思想にもとづく革命的な教育路線をうちだし、それを具現して独創的な形式と方法で教育活動をおこなった。その過程で革命人材養成の貴い経験が蓄積され、我が党の栄えある革命的教育伝統がきずかれた。抗日革命闘争の時期に創造された新しい教育制度は、我が国の社会主義教育制度の原型となった。

 我々は解放後、反帝反封建民主主義革命の時期に、新しい祖国建設のための社会経済改革の一環として、日本帝国主義の植民地奴隷教育制度を撤廃し、人民的で民主主義的な教育制度を創設した。民主主義教育制度は革命と建設の前進にともなってさらに強化され、しだいに社会主義教育制度へと発展した。社会主義革命が完遂され、社会主義建設が本格的に進められる段階にいたって、教育体系と教育内容、教育方法が社会主義社会の要求に応じて改編され、社会主義教育制度が全面的に確立した。

 我が国の社会主義教育制度は、労働者階級の革命偉業、社会主義・共産主義建設の偉業に奉仕する革命的な教育制度であり、国家が全面的に責任をもって全人民に教育をほどこす最も人民的な教育制度である。

 我々は、実際の生活をつうじてその優位性と生命力が遺憾なく実証された、我が国の社会主義教育制度をいっそう強化発展させ完成しなければならない。


1 全般的義務教育制度

 社会主義教育制度は、本質において全般的義務教育制度である。社会主義教育は一部少数の階層ではなく、社会の全構成員を共産主義的人間に育成する全人民教育である。我が社会ではすべての人が教育をうける権利をもち、またすべての人が教育をうける義務を負っている。教育体系の構成と教育機関の配置、無料教育制の実施をはじめ、我が党と国家の教育施策はすべて全人民をもれなく学ばせる原則から発している。

 義務教育で基本をなすのは、学校義務教育である。

 我々は解放後、短期間に人民学校から大学にいたる各級学校を大々的に設け、整然たる民主的教育体系を確立し、その基礎に立って革命と建設の前進と国の経済的土台の強化にともない、全般的義務教育制を段階をもうけて実施した。1956年に全般的初等義務教育制を実施し、ついで1958年には全般的中等義務教育制を、1967年からは全般的9年制技術義務教育を実施した。そして、1972年からは1年間の就学前義務教育と10年間の学校義務教育をほどこす全般的11年制義務教育を実施している。

 全般的11年制義務教育はすべての新しい世代に、労働年齢に達するまでの期間に完全な中等一般教育をほどこす無料義務教育である。全般的11年制義務教育は、科学的な教育体系と最も徹底した無料教育にもとづいており、一般教育と技術教育を高い水準で結びつけている。

 我が党は、正規の学校で新しい世代のための義務教育を実施するとともに、すべての勤労者が一定の教育体系のなかで義務的に学ぶようにする政策を実施している。

 我が党は学業を専門にする教育体系とともに、働きながら学ぶ各種形態の教育体系を設け、それを立派に運営し、学齢期の新しい世代ばかりでなく、すべての勤労者をもれなく学ばせるようにした。党の賢明な方針によって、かつて搾取社会で学びの道を閉ざされていた成人をふくむすべての勤労者が体系的な教育をうけ、誰もが中学校修了程度以上の文化・技術水準を身につけるようになった。こんにち、我が国では党と国家の指導のもとに、すべての勤労者が文化・技術水準と政治理論水準をさらに高める学習を日常化している。

 全般的義務教育制度を社会主義・共産主義建設や合法則的要求にそってさらに発展させ、完成しなければならない。

 全般的義務教育制度を完成するためには、現在実施している全般的11年制義務教育をいっそう強固にし、それをふまえて将来は高等義務教育を実施しなければならない。

 精神労働と肉体労働の差をなくし、共産主義社会を実現するためには、社会の全構成員の文化・技術水準をいちだんと高め、全社会のインテリ化を実現しなければならない。全社会のインテリ化は、社会の全構成員が一定の高等教育体系に組み入れられ、教育をうけるようになってはじめて実現可能であり、そのためには高等教育も義務教育化しなくてはならない。高等教育までが義務教育になれば、社会主義教育制度としての全般的義務教育制が完成される。

 当面して、全般的11年制義務教育の順調な実施に力をそそぎながら高等義務教育を実施する準備を進め、今後一定の段階にいたれば高等教育機関を大々的に拡張し、しだいに高等義務教育の実施へと移行すべきである。高等教育機関の拡張にあたっては、働きながら学ぶ教育体系の拡大発展に基本をおかなければならない。こうして、社会主義建設の労働分野に影響を与えることなく、全般的11年制義務教育を終えたすべての青年に高等教育をほどこさなければならない。

 全般的義務教育をより円滑に実施するためには、教育機関の地域的配置を合理的におこなわなければならない。教育機関を各地域に適切に配置することは、全国的範囲において思想革命、技術革命、文化革命を強力におし進め、都市と農村の差をちぢめ、国のすべての地域を均衡的に発展させるうえでも重要な意義をもつ。

 国の地域的特徴と全般的均衡を考慮し、都市と農村、工業地帯と農業地帯に教育機関を合理的に配置しなければならない。民族幹部にたいする国家の需要をみたし、各道に総合的幹部養成基地をきずく原則に立って高等教育機関を配置しなければならない。

 高等教育機関の科学部門別編成を合理的におこなうことが重要である。各時期の民族幹部にたいする国家的需要を正確に見積もり、それにもとづいて科学部門別に大学とその学部、学科を正しく編成し、学生数を正確に定めるべきである。特に、社会主義・共産主義建設の進展と自然科学技術の高度の発達とあいまって、人文科学系統にたいする自然科学技術系統の比重を著しく高めなければならない。


2 全般的無料教育制度

 義務教育は、無料教育によって裏打ちされてこそ真の義務教育となる。無料教育の保障されない義務教育は義務教育とはいえない。社会主義社会の義務教育が資本主義社会の「義務教育」と根本的に異なる点は、教育費を国家が負担し、人民に学ぶ権利と自由を実質的に保障するところにある。国家負担による全般的無料教育は、生産手段と教育施設が国家と人民の所有となっており、教育にたいする国家と人民の利害開係が一致する社会主義社会でのみ可能である。

 我が国では、国家が人民の教育に全面的に責任を負う原則から出発し、最も徹底した無料教育を実施している。

 我々は.国の経済状態が非常に困難であった解放直後に、既に貧しい家の子女の授業料を免除し、専門学校の学生と大学生に国家奨学金を支給する措置を講じ、戦後には全般的初等義務教育と全般的中等義務教育を無料教育によつて保障した。そして、1959年からは我が国のすべての教育機関で、国家負担で教育をおこなう全般的無料教育制を実施した。

 こんにち、我々は全般的11年制義務教育を徹底した無料教育で保障しており、幼稚園から大学にいたる各級教育機関で学ぶすべての児童・学生にたいする教育をいっさい無料でおこなっている。学校教育だけでなく、各種形態の社会教育も無料でおこない、幹部と勤労者のための成人教育もすべて国家の費用でおこなっている。我が国の国家予算支出で教育費のしめる比重は極めて大きく、それは毎年系統的に増大している。

 我が国における国家負担による全般的無料教育制度は、次代の教育と民族幹部養成のためにはなにをも惜しまない我が党と国家の人民的施策と、日を追ってますます強固になっていく国の自立的民族経済によってしっかりと裏打ちされている。

 教育事業が発展し、国の経済土台が強固になるにつれて、国家は教育機関と教育施設をいっそう拡充し、すべての学生に教科書と学用品を無料で供給し、集団寄宿生活をする学生の生活保障費も支給すべきである。


3 働きながら学ぶ教育制度

 働きながら学ぶ教育制度は、社会主義建設の各部門で働く勤労者が生産活動と専業に従事しながら、一定の教育体系のなかで学ぶすぐれた教育制度である。

 我が党は育ちゆく新しい世代だけでなく、労働者、農民をはじめ、勤労者と全人民をもれなく学ばせる原則から、学業を専門とする教育体系とともに働きながら学ぶ教育体系を設け、それを発展する現実の要求に応じてたえず発展させてきた。こんにち働きながら学ぶ教育体系は勤労者高等中学校、工場高等専門学校、工場大学、通信および夜間教育網、幹部と勤労者の正規の学習体系などの教育形態からなっている。

 働きながら学ぶ教育制度は、勤労者が社会主義建設の持ち場を離れずに学習をつづけられるようにし、全人民教育の成果的実現を保障する。

 かつて搾取社会で学べなかった勤労者がおり、学業を専門とする教育体系の規模と教育期間が限られており、また教育事業と社会主義建設を同時におし進めなければならない状況にあって、学業を専門とする教育体系だけでは全人民教育を実現することはできない。学業を専門とする教育体系とあわせて働きながら学ぶ教育体系があるからこそ、我が国ではすべての人に学ぶ道を開き、社会主義建設を力強くおし進めながら、同時に全人民をたえず教育している。こんにち、我が国には教育を受けていない人もいなければ教育を中断する人もおらず、すべての人が一生学習をつづけている。ここに、学業を専門とする教育体系と働きながら学ぶ教育体系とを並行して発展させる我が党の教育方針の正しさがあり、働きながら学ぶ教育制度の大きな優位性の一つがある。

 働きながら学ぶ教育制度は、革命的世界観が確立し、理論と実践力を兼備した有能な民族幹部の大量養成を可能にし、教育事業と社会主義建設とを密接に結びつける。

 働きながら学ぶ教育体系に網羅された人は、学生であると同時に生産者であり、現職の活動家である。実践活動を基本とするかれらは、革命的実践の切実な要求から理論を学び、学んだ理論を社会主義建設の実践活動に直接適用する。かれらにとって学習と実践活動は切り離せない統一的過程である。働きながら学ぶ教育体系によっておこなわれる教育は、社会主義教育学の基本原理に全面的に合致するものであり、それは社会主義・共産主義社会が求める有能な革命人材を育てあげる極めて適切な方途である。

 働きながら学ぶ教育機関の大部分は、学業を専門とする教育機関や生産企業所に併設されているので、教職員や教育施設、実験・実習条件などを容易に解決できる。また、働きながら学ぶ教育体系では、学生が生産活動と専業から離れずに学ぶので、社会主義建設での労働力の問題に影響を及ぼさない。

 働きながら学ぶ教育制度の優位性を遺憾なく発揮させ、発展する現実の要求に応じてそれをさらに発展させなければならない。

 全般的11年制義務教育が実施されている現状で、一定の期間がたてば勤労者高等中学校の体系は不必要になり、将来、働きながら学ぶ教育体系では高等教育体系と、幹部と勤労者の正規の学習体系が基本形態として残るであろう。全社会のインテリ化を実現するという党の方針に従って、社会の全構成員が高等教育をうけられるようにするためには、働きながら学ぶ高等教育体系をさらに拡充しなけれはならない。特に工場大学を増設し、その授業を改善し、農村地域では農場大学を設けて農村の活動家と農業勤労者に高等教育をほどこさなければならない。


4 国家的幼児保育・教育制度

 幼児を社会の主人に、共産主義建設の後続隊に育成するためには、かれらを幼いときから文化的な施設で集団的に保育、教育しなければならない。幼児を集団的に保育すれば、幼いときから組織生活や規律生活に習慣づけられ、集団主義思想と共産主義的道徳品性が芽ばえ、知的発達と身体の発育にも良い影響を与える。

 我が党と共和国政府は常に、幼児を社会的に保育する事業に大きな力をそそいできた。我々は解放後、多額の国家資金を投じて都市や工場、企業所、国営農場に託児所と幼稚園を設けて運営し、幼児を社会的に保育、教育する体系をうち立てた。祖国解放戦争の困難な環境のもとでも、幼児を社会的に保育する事業を中断しなかったばかりか、数多くの育児園や愛育院を設け、戦災孤児を引きとって育てる画期的な措置をとった。戦後、国の自立的民族経済の土台がきずかれ、社会主義制度が樹立したのち、国家的幼児保育・教育事業は本格的な発展段階にはいった。国家の計画的な投資と全社会的運動によって、都市や農村のいたるところに近代的施設をそなえた託児所、幼稚園が大々的に建設され、その運営事業が体系的に改善された。

 こうして我が国には、国家と社会の負担ですべての学齢前児童を託児所と幼稚園で集団的に保育する社会主義的な幼児保育・教育制度が確立された。

 我が国の国家的幼児保育・教育制度は、幼児養育において共産主義的原則を具現した最も先進的な幼児保育・教育制度である。

 幼児を集団的に、社会的に保育するのは重要な共産主義的施策である。社会主義・共産主義社会は集団主義にもとづく社会であり、集団的教育は共産主義的人間育成の根本形式である。人々を幼いときから社会的関係のなかで集団的に保育、教育してこそ、真の共産主義的品格をそなえた人間に育成することができる。

 幼児保育・教育事業に必要な費用を国家と社会の負担でまかなうことも、共産主義的原則にその基礎をおいている。我が国での幼児保育・教育事業は全的に国家と社会の負担でおこなわれ、これと関連して子供たちに与えられる国家的および社会的恩恵は、父母の職業や労働の質と量に関係なく完全に平等に適用される。

 国家的幼児保育・教育制度をさらに強化発展させなければならない。

 幼児保育・教育機関をさらに近代的なものに改善してよく管理し、社会主義教育学にもとづいて幼児保育・教育水準をたえず向上させなければならない。幼児をいっそう立派に保育、教育し、女性の社会活動を積極的に保障するため、漸次、週間および月間の託児所、幼稚園を広範に設けて運営しなければならない。

 託児所、幼稚園にたいする供給活動をいっそう改善しなければならない。託児所、幼稚園にたいする国家的な供給体系を整然とうち立て、幼児保育・教育に必要な食料品、玩具、教具・校具、医薬品、養育設備を十分に供給しなければならない。



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