金日成「社会主義教育に関するテーゼ」

3 社会主義教育の方法


 社会主義教育は、科学的で革命的な教育方法にもとづいておこなってこそ成果をおさめることができる。我々は、社会主義教育の目的と使命に即して科学的で革命的な教育方法をうち立て、それによって教育活動をおこなわなければならない。


1 開発授業

 学校教育の基本形態は授業であり、授業の基本的方法は開発授業である。授業を開発の方法でおこなってこそ、学生に授業内容を正しく消化させ、教育の目的を立派に達成することができる。

 開発授業は、社会主義教育の本質と認識過程の合法則性に合致する最もすぐれた授業方法である。

 社会主義教育はその本質からして、学生の自立性と創意性をはぐくむ授業方法を要求する。開発授業は、学生自身が能動的な思考活動によって授業内容を理解するようにし、かれらの自立性と創意性を大いに助長発展させる。

 認識の主体は、人間自身である。人間は自己の能動的な思考活動によってのみ、事物現象の本質を認識することができる。開発授業方法は学生の思惟活動を促し、事物現象の本質を容易に把握し、理解できるようにする。

 学校では、すべての課目の授業を必ず開発の方法でおこなうべきである。

 開発授業では学生の自覚と積極性を高め、授業内容の論理件と体系性、順次性を保障する基礎のうえで、学生の準備程度と特質に合うよう各種の授業手法を正しく適用しなければならない。

 開発授業の手法で重要なのは、話や対話の形式で説明を十分にすることである。説明は生き生きとして説得力があり、理路整然として、学生が授業内容を容易に理解できるようにしなければならない。

 学生の思考を積極的に開発するためには、討論と論争を広くおこない、特に問答式の方法を正しく適用しなければならない。問答式の方法は、我が党の伝統的な学習方法であり、既に実生活をとおしてその優位性が明らかに立証されている。問答式の方法を積極的に取り入れることは、学生に授業の内容を幅広く、深く認識させるための裏付けとなる。

 直観教育、実物教育は、学生に事物現象と科学的原理にたいする生き生きとしたイメージを与え、かれらの能動的思考を開発するうえで重要な作用をする。学校では課目の特質に即して授業内容を直観化し、各種形態の近代的な直観手段を広く利用して直観教育、実物教育を強化しなければならない。

 学生にたいする思想教育は、解説と説得の方法でおこなうべきである。

 共産主義思想は、学生自身がおのずと理解し共感するとき、はじめて確固たる信念となりうる。したがって、思想教育は強圧的な方法や詰めこみの方法ではなく、必ず解説と説得の方法でおこない、学生が先進思想をおのずと理解し共感するようにし、欠点をもっていたり立ち後れた人にたいしてもよく言い聞かせ、本人が、自分の欠点といたらなさを、みずからさとり、是正するようにしなければならない。

 解説と説得は、個々の学生の具体的特質と準備程度に即して、そして不断に忍耐強くおこなわなければならない。

 模範的行為で感化するのは、思想教育の基本的方法の一つである。

 模範的行為は、否定的行為にたいする積極的な批判となり、人々にいかに働き生活すべきかを生き生きと教える。したがって、模範的行為は人々のあいだで否定的行為にうちかち、新しいもの、進歩的なものを助長発展させる強力な推進力となる。

 青少年は新しいものに敏感であり、正義感が強く、他人の模範を好んで見習う。したがって模範的行為は、青少年学生のあいだで大きな共鳴を呼び、広く一般化することができる。

 抗日革命烈士の英雄的闘争は、革命の試練を体験していない新しい世代に真の闘争と生活の真理を教えるかがみである。学校では抗日革命烈士の輝かしい模範で学生を感化し、教育する活動を強力にくりひろげなければならない。

 学生のあいだで創造される模範は、かれらの実生活と直接結びついているため大きな感化力をもっている。学生のあいだで創造される模範的行為を適時に発見して広く一般化し、すべての学生がそれを学習と生活に具現するようにしなければならない。また学生自身の肯定的な側面を大いに助長、発展させ、否定的側面はみずから克服するようにしなければならない。


2 理論教育と実践教育、教育と生産労働の結合

 理論教育と実践教育を結びつけることは、学生を有用な生きた知識をもった、共産主義的革命人材に育てる重要な方途である。書物から学んだ理論は実践によってその真理性が立証され、応用能力と結びついてこそ革命実践に役立つ生きた知識となる。

 学校教育で講義と実験・実習を正しく結びつけ、学生が講義で得た知識を自分のものにして十分に消化し、それを実践に適用できる能力をつちかわなければならない。学校教育ては、特に生産実習と専攻実習を十分におこなうことが重要である。中等教育段階での生産実習は、近代的生産の基礎的な技術知識と機械設備、労働道具を扱う技術・技能を修得させる方向でおこない、高等教育段階での生産実習と専攻実習は、専攻部門の科学的原理と近代的な技術・技能を修得させることに重点をおいておこなわなければならない。

 熟練と技量を要する課目にたいしては練習を強化しなければならない。練習は科学的な理論と原理にもとづき、体系性と順次性を保障して学生の自立性を高める方向でおこなうべきである。

 学生に現実のなかから生き生きとした幅広い知識を学ばせるため、革命戦跡地や革命史跡地などの踏査を計画的に組織し、社会文化教育機関、工場、企業所、協同農場などの見学を定期的におこなうべきである。

 教育と生産労働を正しく結びつけなければならない。

 社会的実践の最も重要な形態である生産労働は、自然を変革し、社会を発展させ、人間を教育、改造する有力な手段である。人間は生産労働をとおして自然と社会を認識し、変革し、自己の思想・意識と品性を改造する。生産労働から離れて学業を専門にする学生を生産労働に参加させるのは、かれらを革命化、労働者階級化し、教育の質的水準を高めるうえで重要な意義をもつ。学生は生産労働をとおして思想を鍛え、労働者階級の革命性と組織性を見習い、学校で学んだ知識を強固にし、その応用能力をつちかい、現実にたいする体験と労働にたいする熟練を積む。

 学生を生産労働に参加させるさいには、教育学的要求を徹底的に守らなければならない。教育一面にのみ偏重して生産労働を軽視する傾向と、学生を生産労働に過度に参加させる傾向をともに警戒しなければならない。学生の生産労働は教育の助けとなるように合理的に組織すべきである。


3 組織生活、社会・政治活動の強化

 青少年学生を政治的、思想的に鍛え、革命的に教育するためには、組織生活、社会・政治活動を強化し、それを授業と密接に結びつけなければならない。

 組織生活は思想鍛練の溶鉱炉であり、革命的教育の学校である。青少年学生は少年団、社労青の組織生活をとおして思想的教育を受け、革命的鍛練を積み、組織性と規律性をつちかう。高い思想性と強い組織性をもった共産主義的な革命人材は、革命的組織生活を通じてのみ育つことができる。

 学生の組織生活を強化するうえで提起される重要な問題は、青少年学生に組織生活にたいする正しい観点と態度をもたせ、組織生活に自覚的に参加させることである。組織生活は、すなわち政治生活であり、政治生命を維持していく過程である。青少年学生は、少年団、社労青の組織生活に参加することを最も大きな栄誉、神聖な義務とし、組織の規約上の義務と任務分担を自覚的かつ誠実に遂行しなければならない。

 少年団、社労青の組織生活では思想教育を主としながら、批判を強化しなければならない。批判の雰囲気のなかでおこなわれる組織生活によってのみ、学生を政治的、思想的に鍛え、革命的に教育し、共産主義的な革命人材の育成に寄与することができる。学生のあいだで批判と自己批判を強化し、特に組織生活総括会議を高い政治的・思想的水準でおこなわなければならない。

 学生の組織生活を強化するためには、学校の少年団および社労青組織の機能と役割を高めなければならない。学校の少年団および社労青組織は、学生の政治生命を守る政治的保護者であり、身近な教育者である。学校の少年団組織と社労青組織は学生の政治生命を保護、管理し、かれらの政治的・思想的教育と鍛練に大きな力をそそがなければならない。学校の少年団および社労青組織は、学生の年齢や準備の程度、心理的特性に合うよう分担を与え、それを立派に遂行するよう援助し、任務分担の実行状況をそのつど総括して再び新しい任務分担をおこない、すべての学生を常に活動させなければならない。

 学生を社会・政治活動に広く参加させることが重要である。

 社会・政治活動は、学生が学校で学んだ知識を現実に適用する実践活動であり、社会主義建設に直接寄与する革命活動である。学生を社会・政治活動に広く参加させることによって、幼いときから社会と人民のために献身的にたたかう真の社会の主人に、大衆を教育し組織動員できる有能な社会・政治活動家に育てなければならない。

 学生で党政策宣伝隊、科学宣伝隊、衛生宣伝隊など各種の宣伝隊を組織し、大衆に党政策を解説し、科学・技術知識や文化・衛生知識を広く普及するようにさせるべきである。また、学生のあいだで衛生近衛隊、緑化近衛隊の活動や少年団林、社労青林を造成する運動、社会主義建設支援運動をはじめ、各種のよいことをする運動を強力にくりひろげるべきである。

 大学生の社会・政治活動で特別に重要な位置をしめるのは、かれらを三大革命グループ運動に積極的に参加させることである。大学生を三大革命グループ運動に計画的に参加させ、思想、技術、文化の三大革命の遂行に積極的に寄与し、その過程でみずからを政治的、思想的にいっそう鍛えるようにしなければならない。


4 学校教育と社会教育の結合

 学生は学校で組織的で体系的な教育をうけるとともに、社会関係のなかでの生活をつうじて教育をうける。したがって、次代の教育を立派におこなうためには学校教育を強化するとともに、教育的影響を与えるあらゆる場所で学生を正しく教育し、学校教育と社会教育を密接に結びつけなければならない。

 学校教育と社会教育を結びつけるのは、社会主義制度の本質に根ざす社会主義教育の重要な特徴であり、優位性である。勤労者の団結と協力が社会関係の基本をなし、集団主義が社会生活の基礎をなしている社会主義社会では、学校と社会が次代の教育にたいして共通の志向と利害関係をもつ。これは、次代の教育を社会全体の事業として進め、学校教育と社会教育を密接に結びつける確固たる裏付けとなる。

 学校教育と社会教育を正しく結びつけるためには、学校教育の役割を決定的に高め、そのうえで社会教育を強力におし進めなければならない。

 社会主義社会における社会教育は、学生を共産主義的人間に育てあげるうえで重要な役割を果たす。社会教育は学生を政治的、思想的に教育し、かれらにたいする科学技術知識と文学・芸術知識、体育技術の普及に積極的に寄与する。社会教育を立派におこなって学校教育を裏打ちし、学校教育の成果を強固なものにし、それを補充しなければならない。

 学生にたいする社会教育を強化するうえで重要なのは、社会教育機関の責任と役割を高め、社会教育施設と宣伝教育手段を十分に利用することである。

 学生少年宮殿、学生少年会館、少年団野営所、図書館などの社会教育施設は、学生教育の立派な基地である。社会教育施設を拠点にして政治時事講演、科学討論会、発表会などを定期的に催し、各種のサークル活動を広くおこなうべきである。

 学校と社会教育機関との連係を強め、教員と社会教育機関関係者は学生教育において緊密に協力しなければならない。教員と社会教育機関関係者は、常に学生の教育問題について話しあい、経験を交流し、学生教育で歩調を合わせなければならない。

 家庭は社会の細胞である。青少年は家庭での生活過程で多くの教育的影響をうける。家庭を革命化し、家庭に社会主義的生活様式を確立し、家庭生活そのものが学生に革命的影響を与えるようにしなければならない。父兄は社会・政治生活や社会主義建設に模範的に参加し、常に質素に生活し、礼儀正しく行動することにより、一言一句、一挙一動がすべて子弟の教育となり手本となるようにすべきである。

 社会的環境が、青少年に及ぼす教育的影響は極めて大きい。放送、出版物、映画を革命的な内容で一貫させ、全社会に健全な生活気風を確立して、社会で見たり聞いたりすることがすべて学生の教育になり、教養の糧になるようにしなければならない。


5 就学前教育、学校教育、成人教育の並進

 社会主義教育は、社会の全構成員を幼年から老年にいたるまで生涯にわたって教育する、全面的かつ永続的な教育とならなければならない。

 人間の思想と品格は幼いころから形成され、生涯にわたって強固になり発展する。世界にたいする人間の認識は日とともに深まり、人類の知識と経験はますます豊富になる。社会の全構成員を革命的世界観と高度の科学技術知識をもった共産主義的人間に育成するためには、幼年から老年になるまで不断に教育しなければならない。

 社会の全構成員を生涯にわたってたえず教育する方途は、就学前教育、学校教育、成人教育を正しく結びつけ、並進させることである。

 就学前教育、学校教育、成人教育は人々の成長期にともなう順次的な教育段階であり、人々にたいする教育の連続的過程である。

 就学前教育は人々にたいする教育の第一工程である。人間は幼いころから思想が形成され、知的発達がおこなわれるため、幼いときに正しい教育をおこない、良い習慣をつちかうことが大切である。

 就学前教育の重点は、学校教育の基礎をつくることにおくべきである。幼稚園では革命思想教育と道徳教育を基本にしながら、知的発達に必要な教育を十分におこない、子供の文化的素養を高め、身体を丈夫にすることに深い関心を払わなければならない。特に、一年間の就学前義務教育の水準を高め、子供に学校教育を順調にうけられる準備をととのえさせなければならない。

 幼稚園教育は、幼児の心理的特性に合わせて直観教材と実物による授業、歌と踊り、遊戯をつうじての教育など、いろいろな形式と方法をよく取り合わせておこなわなければならない。

 学校教育は、人間の一生で最も重要な時期の教育である。青少年期は世界観の形成される時期であり、探究心と認識能力が旺盛で、肉体的な発育の早い時期である。したがって、学校教育は人間の世界観の確立と品格の形成に決定的な影響を及ぼす。

 学校教育の基本的任務は育ちゆくすべての新しい世代を、革命的世界観が確立し、現代科学技術を身につけた革命人材に育てることである。青少年を、中等教育では革命的世界観の骨組みができ、完全な中等一般知識を身につけた人間に、高等教育では革命的世界観が確立し、現代科学技術を身につけた革命人材に育てなくてはならない。

 成人教育は、社会主義建設に参加している勤労者にたいする教育である。成人教育は勤労者の革命的世界観を強固にし、発展させ、かれらの一般知識水準と技術・文化水準をたえず高めるうえで重要な意義をもつ。

 人間の思想・意識は固定不変のものではなく、条件と環境によって変わるものであり、科学技術はひとところにとどまることなく不断の発展を遂げる。学校教育をつうじて革命的世界観が確立し、高度の科学技術を身につけた人であっても、ひきつづき教育しなければ革命的世界観をゆるぎないものにし発展させることはできず、発展する現実についていくことはできない。したがって、成人教育を強化し、学校教育の成果を強化発展させ、発展する現実に即して人々の文化・技術水準をたえず高めなければならない。

 成人教育は、一般知識水準と技術・文化水準の異なる勤労者を対象とする。こんにち、我が国における成人教育の対象は、かつて正規の学校教育をうけられず、成人教育体系をつうじて中学校修了程度の知識水準に達した者、正規の学校で中等教育をうけた者、それに高等教育をうけた者である。

 成人教育を強化するためには、知識水準の異なる勤労者の特性に応じて各種形態の成人教育体系を設け、すべての勤労者がそれぞれの水準に適した教育体系のなかで学習するようにしなくてはならない。

 発展する現実の要求に即した幹部の教育にも深い関心を払わなければならない。各種形態の再教育体系をつうじて幹部を計画的に再教育するとともに、土曜学習、水曜講演会にもれなく参加させ、毎日2時間学習することを正常化しなくてはならない。

 我々は「全党、全人民、全軍が学習しよう!」というスローガンのもとに、全国に革命的学習気風をうち立て、子供から年寄りにいたるまで、社会の全構成員が熱心に学び、さらに学ぶようにしなければならない。



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