金 日 成

『社会主義教育に関するテーゼ』の発表について
朝鮮労働党中央委員会第5期第14回総会でおこなった演説
−1977年9月5日−


 私は、今回の党中央委員会総会に提起する『社会主義教育に関するテーゼ』と関連して、その趣旨について簡単に述べたいと思います。

 労働者階級が資本主義制度をくつがえして社会主義制度を樹立したのち、社会主義経済建設を立派におこなって人民の物質生活の向上をはかることも重要ですが、人々の思想・意識水準と文化・技術水準を高めることもそれに劣らず重要です。

 既にきずきあげた物質的・技術的土台を効果的に利用し手ぎわよく管理し、それをいっそう発展させるためには、勤労者の思想・意識水準と文化・技術水準をたえず高めなければなりません。

 周知のように、社会のすべての物質的富は、勤労者大衆の創造的労働によってもたらされます。勤労者大衆は、社会の主人であるという政治的自覚と高い文化・技術水準を身につけてこそ、社会主義建設であらゆる創造的才能と積極性を発揮することができます。勤労者の思想・意識水準と文化・技術水準を高めなければ、かれらは社会の主人としての役割を十分に果たすことができず、結局、社会主義建設が足踏み状態に陥ったり後ずさりすることもありえます。したがって、労働者階級は政権を掌握し、社会主義制度を樹立したのち、社会主義社会に即した教育を実施しなければなりません。

 労働者階級は、政権を掌握してからも、長いあいだ資本主義の包囲のもとで社会主義を建設するようになります。そうした状況のもとで、外部からはブルジョア反動思想や退廃的な文化が浸透し、内部では封建思想、ブルジョア思想などあらゆる古い思想が頭をもたげるおそれがあります。それゆえ、労働者階級の党と国家は、社会主義教育の強化に第一義的な関心を払わなければなりません。もし、労働者階級の党と国家が社会主義社会に即した教育を実施せず、社会主義教育でも資本主義教育でもない、どっちつかずの教育をおこなうなら、資本主義の思想的・文化的浸透と古い思想の残りかすの腐食作用を防ぐことはできません。

 資本主義から社会主義・共産主義への過度期に社会主義教育を正しくおこなってこそ、社会の全構成員を革命化、労働者階級化、共産主義化することができます。

 社会主義教育を強化することは、発達した資本主義諸国で労働者階級が政権を握ろうと、立ち後れた植民地、半封建的な国々で労働者階級が政権を握ろうと、いずれも重要な課題として提起されます。生産力の発展水準によって、過渡期の期間に長短の差はありえますが、人々の思想・意識を改造する教育事業はどの国でも重要な問題として提起されます。

 搾取制度をくつがえし、搾取と抑圧からぬけだすたたかいを展開するときは、人々の革命的熱意が非常に高いが、搾取制度をくつがえし、ある程度の物質的・技術的土台をきずいたあとは、革命的熱意がしだいにさめてきます。社会主義革命をおこなって久しい国々の経験からしても、我が国の社会主義建設の経験からしても、社会主義革命を遂行し、衣食住の心配がなくなると人々の革命的熱意が低下することを示しています。

 したがって、労働者階級の党と国家は、社会主義制度を樹立したのち、教育事業を強化して、社会の全構成員の革命的熱意をいっそう高めなくてはなりません。

 マルクスが1848年に『共産党宣言』を発表してから130年の歳月がすぎており、レーニンの指導のもとにロシアで十月社会主義革命が勝利してからも、既に60年の歳月がすぎました。その間、国際共産主義運動と被抑圧人民の解放闘争には、大きな転換がもたらされました。特に、第2次世界大戦以後、多くの国が資本の鉄鎖を断ち切って社会主義革命の勝利をなし遂げ、多くの国の被抑圧人民が帝国主義の植民地的従属から解放されて民族の独立をかちとり、社会主義をめざして前進しています。

 レーニンはつとに、一国において社会主義の勝利が可能であるという理論を示しました。しかし、ロシアで社会主義革命が勝利してから半世紀がはるかにすぎ、現在、多くの国が社会主義を建設していますが、どの国もまだ共産主義に到達していません。

 マルクスは『共産党宣言』で、これまで存在したすべての社会の歴史は階級闘争の歴史であったことを明らかにし、連続革命に関する理論をうちだしました。労働省階級が政権を握ったあとも、社会主義・共産主義を建設するためには革命をつづけなければなりません。そのためには、人々の革命意識をひきつづき高める教育活動が切実に必要です。

 社会主義・共産主義社会の建設で最も複雑かつ困難な課題は、人々を教育改造して共産主義の思想的要塞を占領することです。しかし、共産主義的人間育成の問題、社会主義教育の問題については誰も明らかにしておらず、どの国にもその手本がありません。共産主義的人間育成の問題、社会主義教育の問題が正しく解決されないため、社会主義が勝利して久しいにもかかわらず、共産主義を実現した国はまだどこにもありません。共産主義者は、ここから深刻な教訓を酌み取るべきです。

 こんにち、社会主義の道を進むのは阻むことのできない時代の趨勢となっています。いま第三世界諸国、大多数の新興独立諸国が社会主義の道を進むことを表明しています。もちろん、それらの国のいう社会主義が科学的社会主義であるか、非科学的な社会主義であるかということには差があるでしょう。いま一部の人は、みずからの主張する社会主義を宗教式社会主義であるともいっています。かれらの主張する社会主義がいかなるものであろうと、社会主義がよいものであるということだけは誰もが認めています。

 現在、新興独立諸国をはじめ、多くの国は社会主義を志向しつつ、社会主義諸国が社会主義をいかに建設するかを注視しています。こうした状況のもとで、社会主義諸国は社会主義建設をより成功裏に進め、教育問題を立派に解決して、社会主義を志向する多くの国に模範を示す必要があります。

 社会主義教育の基本課題は、人々を思想的に改造し、かれらの文化・技術水準を高めることです。

 人々を思想的に改造すること、すなわち人々の頭に残っている封建主義と資本主義の思想的残りかすを根こそぎにし、かれらを熱烈な共産主義的革命家に育成するのは、社会主義教育で解決すべき最も重要な問題の一つです。

 人々を思想的に改造するためには、なによりも階級的教育を強化し、すべての人が帝国主義者や地主、資本家の搾取にさいなまれた過去を忘れず、搾取制度に反対して断固たたかうようにしなければなりません。特に、育ちゆく新しい世代に、かつて地主、資本家が労働者、農民をいかに搾取したかをはっきりと教え、かれらが搾取制度を強く憎悪するようにしなければなりません。

 すべての人を思想的に改造するためにはまた、社会主義的愛国主義教育を強化しなければなりません。すべての人に社会主義制度がいかにすぐれているかを十分に認識させ、かれらか社会主義制度を貴び愛し、あらゆる敵の侵害から革命の獲得物を最後まで守りぬくようにすべきです。

 人々を共産主義的に教育するうえで重要なのは、革命的楽観主義で武装させることです。すべての人が革命の勝利と共産主義にたいする確固とした信念をもつて、社会主義・共産主義社会の建設のためにたたかい、未来を愛し、継続革新、継続前進するようにすべきです。

 思想教育活動における基本は、人々を党にたいする忠実性で教育することです。

 党にたいするかぎりない忠実性は、共産主義者の最も基本的な品性です。党にたいする忠実性は高い党性、労働者階級性、人民性にあらわれなければなりません。いいかえれば、党にたいする忠実性は、党と革命のため、労働者階級と人民のため、自己のすべてをささげてたたかう気高い品性にあらわれなければなりません。人々を党にたいする忠実性で教育してこそ、かれらは党と革命のため、労働者階級と人民のためすべてをささげてたたかうことかできます。いかに高い文化・技術知識を身につけたとしても、党にたいする忠誠心に欠けていては、なんの役にも立ちません。我々には、革命理論で武装し、高い科学技術知識を身につけただけでなく、党にたいする高い忠誠心をもって党と革命のため、労働者階級と人民のためすべてをささげてたたかう人が必要なのです。したがって、社会主義教育では、人々を党にかぎりなく忠実であるよう教育することに第一義的な関心を払うべきです。

 社会主義教育でいま一つの重要な問題は、すべての人の文化・技術水準を高めることです。

 社会主義・共産主義を建設するたたかいは、資本主義の包囲のもとですべての問題を独自に解決していく極めて困難なたたかいであるため、革命闘争と建設事業において自主的立場を堅持し、創造的精神を高く発揮しなければなりません。そのためには、すべての人が高い文化・技術知識を身につけなければなりません。すべての人が高い文化・技術知識を身につけてこそ、発達した資本主義諸国の技術にたいする幻想をなくし、事大主義と教条主義を一掃し、主体的な立場に立って革命闘争と建設事業を自国の実情に即して創造的に遂行していくことができます。文化・技術水準が低いと、他国のものを機械的に取り入れるようになりますが、文化・技術水準が高ければ創意性を発揮して、革命闘争と建設事業で提起されるすべての問題を自力で解決していくことができます。

 社会主義教育においては、思想教育と文化・技術教育を統一的にとらえていくべきです。

 社会主義・共産主義を建設するためには2つの要塞、すなわち思想的要塞と物質的要塞を占領しなければなりません。そのためには、思想教育を軽視し、文化・技術教育一面のみを強調してもならず、文化・技術教育を軽視し、思想教育一面のみを強調してもなりません。我々は、社会主義・共産主義社会を成功裏に建設するため、すべての人を思想的に改造する事業と、かれらの文化・技術水準を高める事業をともに力強くおし進めなければなりません,

 社会主義教育で特に重要なのは、革命の交代者である新しい世代を熱烈な革命家、共産主義者に育てあげることです。朝鮮革命の代をついでいく次代を熱烈な革命家、共産主義者に育てあげるか否かは、我々の革命偉業を代をついで最後まで完遂するか否かという根本的問題です。

 革命闘争は長期性をおびる困難なたたかいです。革命の標的は変わっていませんが、世代はたえまなく変わっています。我々の革命偉業はなし遂げられておらず、我々はまだ祖国を統一していません。いま我々は、帝国主義の元凶であるアメリカ帝国主義者と直接対峙して、革命闘争と建設事業を進めています。祖国の領土の半分は、いまだにアメリカ帝国主義者によって占領されており、南朝鮮はあらゆる反動層の巣窟となっています。南朝鮮にアメリカ帝国主義者が残っており、反動層が残っているかぎり、我々はいっときもたたかいをやめることはできません。我々は祖国を統一し、革命を最後まで完遂しなければなりません。革命の交代者を立派に教育してこそ、革命をつづけることができ、祖国を統一して社会主義・共産主義偉業を最後まで完遂することができます。

 我々は、抗日革命闘争の初期、既に革命が長期性をおびることを予見し、革命の代をつぐ次代の教育に深い関心を払いました。1930年代初、モデルケースとして孤楡樹に三光学校を建て、青年を無料で学ばせ、社会主義的教育を実施して多くの青年を革命家に育てあげました。そのとき、三光学校で学んだ青年はほとんどが革命闘争に身を投じ、革命闘争に参加できなかったとしても、反動の道へ走った青年は一人もいませんでした。

 経験は、革命の代をつぐ次代にたいする教育に力を入れてこそ、かれらを熱烈な革命家、共産主義者に育てることができ、革命偉業を最後まで完遂できるということを示しています。したがって、我々は革命の交代者にたいする教育事業に特別な関心を払い、かれらを熱烈な革命家、共産主義者に育てあげなくてはなりません。

 社会主義教育を正しくおこなうためには、教育事業にたいする党の指導を強化しなければなりません。

 革命と建設において党の指導的役割をたえず高めるのは、すべての勝利の決定的な裏付けです。労働者階級の党の指導的役割を高め、社会主義国家のプロレタリアート独裁の機能を強化せずには、共産主義へ進むことができません。

 革命と建設にたいする党の指導的役割と、社会主義国家のプロレタリアート独裁の機能を否認するのは修正主義です。

 マルクスは、資本主義から共産主義への過渡期にプロレタリアート独裁が不可欠であることを指摘しています。レーニンは、プロレタリアート独裁に関するマルクスの理論を擁護、固守し、ソビエト政権プラス電化イコール共産主義という命題を示しました。

 我々は、マルクス・レーニン主義創始者たちの命題を正しく認識し、それを固守し発展させなければなりません。 レーニンの命題でいうソビエト政権とは、プロレタリアートの独裁を意味し、電化とはたんに発電所を多く建設するということではなく、技術革命を遂行してすべての生産工程をオートメ化することを意味します。

 社会主義・共産主義を建設するためには、党の指導的役割を高めてプロレタリアート独裁を強化し、人々の思想・意識を改造するとともに、技術革命を遂行して重労働と軽労働の差、農業労働と工業労働の差、精神労働と肉体労働の差をなくさなければなりません。

 我々は今後も、ひきつづき社会主義教育にたいする党の指導を強化し、すべての学生・生徒を知・徳・体の兼備した有能な共産主義建設者に育てあげるべきです。

 我々は社会主義教育をさらに立派におこなって、すべての人を共産主義的に教育改造し、みなが共和国北半部の社会主義制度を強化発展させ、祖国を統一し、世界の革命的人民と団結して、全世界で帝国主義を完全に打倒し、搾取と抑圧のない新しい社会を建設するため献身的にたたかうようにすべきです。

 我々は、共和国北半部に社会主義教育制度のモデルをつくり、南朝鮮人民に社会主義制度の優位性を実物によって示すべきです。

 我々は、社会主義教育を立派におこなうときにのみ、社会主義制度をさらに強化発展させ、社会主義祖国を擁護、防衛することができ、すべての人を革命化、労働者階級化、共産主義化して社会主義・共産主義偉業をさらに力強く促進できるということを、労働者階級と全人民にしっかりと認識させ、社会主義教育をさらに強化発展させなければなりません。私はこのような趣旨から、我が国で長いあいだ社会主義教育を実施する過程でおさめた豊富な経験にもとづいて作成した『社会主義教育に関するテーゼ』を党中央委員会総会に提起するものです。

 私は、みなさんが『社会主義教育に関するテーゼ』の討議に積極的に参加し、テーゼにもとづいて、これまでの自己の活動を検討、総括し、社会主義教育を改善強化することによって、社会主義・共産主義建設をさらに強力におし進め、祖国統一の偉業を早めるため積極的にたたかうものと確信します。

出典:「金日成著作集」32巻


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