金 日 成

卓球選手との談話
−1975年3月17日− 
 
 きのう私は、第33回世界卓球選手権大会に参加し、勝利して帰ってきたわが国卓球選手団の活動をおさめた記録映画を見て、皆さんと話がしたくてこのようにきてもらいました。

 今回の世界卓球選手権大会には、世界チャンピオンをはじめ、52の国と地域からやってきた多数の名選手が参加しました。

 わが国からは、昨年北京で開かれた5カ国卓球競技大会で1位をしめた朴英順選手と2名の男子選手が参加しました。

 皆さんは、今回の世界卓球選手権大会で、チュチェの祖国の栄誉を全世界に輝かせるため、実に立派に健闘しました。

 特に、朴英順選手は、世界卓球選手権大会にはじめて参加し、世界卓球界の強豪をみごとにしりぞけて断然1位の栄誉をかちとり、優勝カップと王冠、それにチャンピオンサッシュを授与されました。

 私は、皆さんがわが党の体育政策を高くかかげて、チュチェ朝鮮のスポーツマンらしく強靭な革命精神と不屈の闘志をいかんなく発揮し、世界卓球選手権大会で勝利して帰ってきたことを非常にうれしく思います。私は、党中央委員会と共和国政府と私自身の名で皆さんに感謝の意を表します。

 朴英順選手は、今回の世界卓球選手権大会でイギリス、フランス、ハンガリー、南朝鮮、ソ連、中国の選手たちを次々と破り、1位の栄誉をかちとりました。

 インド人民をはじめ世界各国の人びとは、わが国の朴英順選手が連戦連勝するのを見て熱烈に応援したそうですが、これは、弱年の選手が世界卓球界の強豪たちを負かすのが痛快であったからです。インド首相も、わが国の選手が世界卓球界の強豪たちをみごとにうちまかし、1位の栄誉をかちとったことを喜ばしく思い、わが国の卓球選手たちを招いて会見したとのことです。

 朴英順選手の競技を見ると、彼女には、抗日遊撃隊員のように強靭な意志と不屈の闘志をもって、最後の1点まで攻撃をゆるめない長所があります。

 朴英順選手は、このたびの卓球選手権大会の競技の全過程で、第1セットと第2セットはほとんど負けました。しかし、少しもあわてたり気を落としたりせず、最後の1点までひきつづき強打をあびせ、世界卓球界の強豪をみなうちまかしました。もし、彼女が第2セットまで落としたからと自信を失い、意気消沈してしまったなら、今回の世界卓球選手権大会で勝利することはできなかったでしょう。朴英順選手は、第2セットまで先取されても少しも失望することなく、相手の戦術とテクニックを見きわめ、その弱点を利用して決定的な攻撃を加えたので、毎回勝利することができたのです。

 朴英順選手が、第33回世界卓球選手権大会で抗日遊撃隊の革命精神をもって刻苦奮闘し、世界卓球界の強豪たちをうちまかした興味しんしんたる話は、一つの小説を連想させます。

 まぎれもなく、朴英順選手は抗日遊撃隊の革命精神をそのまま受けつぎ、スポーツ活動で強靭な意志と不屈の闘志を発揮したわが国スポーツマンの模範であり、わが党の体育政策を高くかかげてチュチェの祖国の栄誉を全世界に輝かせたスポーツ英雄です。

 皆さんは、今回の世界卓球選手権大会で得た経験を十分に生かして、わが国のスポーツをさらに発展させるため大いに努力すべきです。

 何よりも、すべてのスポーツマンは抗日遊撃隊の不屈の革命精神を身につけなければなりません。

 もちろん、スポーツ技術をさらに練磨することも必要ですが、それよりも重要なのは、強靭な革命精神と不屈の闘志を身につけることです。いかにスポーツ技術がすぐれていても、抗日遊撃隊の強靭な革命精神で武装せず、不屈の闘志をもっていなければ競技で勝利することはできません。

 我々は、党中央委員会第5期第10回総会で、人民軍の幹部化、現代化を実現するため、すべての軍人が不屈の革命精神、巧みな戦術、鋼鉄のごとき体力、百発百中の射撃術を身につけ、人民軍内に鉄のような軍規を確立するという5大方針を示し、不撓不屈の革命精神と不抜の闘志を身につけることを第一の課題としてうちだしました。

 我々が抗日革命闘争の時期、手に武器をとって強盗日本帝国主義を打倒し祖国を解放することができたのも、先の祖国解放戦争のとき世界「最強」を誇っていたアメリカ帝国主義者と戦って勝利することができたのも、強靭な革命精神をもって勇敢にたたかったからです。

 周知のように、日本帝国主義侵略者を打倒し、祖国を解放するための抗日武装闘争は、世界史上類例をみない最も困難な闘争でした。当時、日本帝国主義者は、「大海の一粟」のような抗日遊撃隊がどうして「大日本帝国」に勝てるのかと大言壮語し、降伏しろと説教しました。しかし、抗日遊撃隊員は、千万べん死すとも敵を討とうという不撓不屈の革命精神をもって、最後の血の一滴が残るまで犠牲的に戦い、爪先まで武装した強盗日本帝国主義を打倒して祖国解放の聖なる偉業を達成しました。

 先の3年間の祖国解放戦争のときにも、人民軍と人民は、抗日遊撃隊の革命精神を受けついで敵と勇敢に戦い、世界「最強」を誇っていたアメリカ帝国主義の鼻っ柱をへし折りました。

 スポーツ競技でも同じことがいえます。このたび朴英順選手が世界卓球界の強豪たちをみごとにうちまかして優勝カップを手にすることができたのも、10回倒れれば10回立ち上がり、100回倒れれば100回立ち上がった抗日遊撃隊員のように、不撓不屈の革命精神をもって最後まで闘志戦を繰り広げたからです。

 すべてのスポーツマンは、抗日遊撃隊の不撓不屈の革命精神と不抜の闘志を身につけるため積極的に努力すべきです。

 これとともに、巧みで多様な戦術を身につけるために努力しなければなりません。スポーツマンは、相手の戦術とテクニック、弱点を見きわめ、それに適した巧みな戦術とすぐれたテクニックをもって常に主導権を握り、大胆かつ忍耐強く競技を運営しなければなりません。

 また、スポーツマンは、鋼鉄のごとき体力をそなえなければなりません。いかにテクニックがすぐれていても、体が強健でなければ、スタミナに欠けて競技で自分のテクニックを十分に発揮することができません。したがって、スポーツマンは、身体鍛練に励み、鋼鉄のごとき体力をそなえなければなりません。

 特に、スポーツマンは、小さな成果に自己満足してはなりません。私が抗日武装闘争の時期からよくいっていることですが、最後に笑う者が勝利者なのです。

 朴英順選手は、今回の世界卓球選手権大会でおさめた成果にいささかも自己満足することなく、今後、優勝カップを完全に手にするまで、ひきつづき訓練を強化すべきです。

 今回の大会で獲得した優勝カップを完全に手に入れるためには、今後、世界卓球選手権大会でつづけて2回優勝しなければなりません。

 朴英順選手は今後、1977年と1979年に開かれる第34回、第35回世界卓球選手権大会でも必ず1位となり、優勝カップを完全に獲得し、記念としてそれをわが国の博物館に永久に保管できるようにしなければなりません。

 朴英順選手は、外国の選手よりも若いので将来性があります。

 卓球をするためには動作が機敏で目がきかなければなりませんが、女性は25〜26歳まで卓球競技で自分のテクニックを十分に発揮することができます。

 朴英順選手はいま18歳なので、努力をつめば、今後数年間は世界の卓球界で覇権を握りつづけることができるでしょう。

 今回の世界卓球選手権大会では朴英順選手が個人戦で優勝しましたが、今後、後進をたくさん育てて団体戦でも必ず優勝しなければなりません。

 今回の世界卓球選手権大会に参加した男子選手は、予選でアメリカ選手をしりぞけ、2番目の競技で敗退したそうですが、今後さらに訓練をつんで優勝カップの獲得をめざすべきです。

 スポーツを大衆化しなければなりません。

 スポーツを大衆化してこそ、すべての勤労者の体力増進をはかり、スポーツ選手の後進を多く養成し、わが国のスポーツをさらに発展させることができます。わが国の芸術が「世界最高峰の芸術」として名声をはせているのも、芸術を大衆化したからです。

 第20回オリンピック競技大会で2.8国防体育団の射撃選手がスモールボア・ライフル競技で優勝できたのも、人民軍の軍人のあいだで射撃術を高める訓練を強化したからです。外国の卓球の経験をみても、スポーツを大衆化することがきわめて重要です。中国人が卓球に強いのも、以前からそれを大衆化しているからです。

 中国では久しい前から卓球が大衆化されていますが、わが国ではそうでありませんでした。

 私は11歳のとき、父の教えに従ってわが国で学ぶため、平壌に帰ってきて彰徳学校にかよいました。そのとき、多くの中学校を見てまわりましたが、卓球台のある学校は一つもありませんでした。そればかりか、バスケットボールやバレーボールの施設もありませんでした。当時わが国の青年が多少スポーツをしたとすれば、サッカー、テニス、野球などにすぎません。

 ところが、父が日本帝国主義警察に逮捕されたという知らせをうけて、再び中国に行ったところ、そこでは卓球が大衆化されていました。吉林毓文中学校にしても、学年別に卓球台が数台ずつありました。このように、中国では以前から卓球を大衆化したので、それを発展させることができたのです。

 スポーツ部門の活動家は、スポーツを大衆化する党の方針にそって、スポーツ競技をたびたび催して優秀な選手を選抜すべきです。

 体育教員を多数養成して学校に配置し、各道の体育専門学校の事業をさらに発展させなければなりません。

 これとともに、学校に体育器具を十分にそなえるべきです。

 バスケットボール、バレーボールなど各種の体育器具をそなえ、すべての学生・生徒に運動をさせるべきです。

 特に、学校に卓球台をたくさんそなえ、すべての学生・生徒に日常的に卓球をやらせるべきです。

 卓球を大衆化し、しばしば競技を催して優秀な選手を選抜し、専門団体で5年ほど訓練させれば、すぐれた卓球選手を多数養成することができます。

 我々のいう英雄主義は、個人英雄主義ではなく、集団的英雄主義であります。スポーツを大衆化して、朴英順選手のようなスポーツ英雄をより多く育てるべきです。

 朝鮮体育指導委員会と社労青中央委員会、教育委員会では、スポーツ大衆化の抜本策を講じ、わが国のスポーツをさらに発展させなければなりません。

 スポーツ部門の幹部事業に力を入れるべきです。

 スポーツ部門の幹部はスポーツ界の出身でかためるべきです。

 門外漢という言葉がありますが、これは家庭内の出来事は他人にはわからないという意味です。スポーツについての知識がない人にスポーツ部門の活動を指導させてはなりません。

 我々の抗日武装闘争の経験からしても、そういうことがいえます。我々が抗日武装闘争をおこなうとき、遊撃戦の経験があったり、それを教えてくれる人があって遊撃闘争をはじめたのではありません。我々は、抗日遊撃隊を組織して約1年のあいだ日本帝国主義者と戦う過程で遊撃戦法をあみだし、射撃法も学び、『遊撃隊動作』という本をつくって、隊員たちに遊撃戦術について一つひとつ教えました。そうして、じょじょに遊撃戦術を発展させ、射撃術を向上させる方途も考えだしました。

 スポーツ部門の場合も同じことです。スポーツ選手のなかからスポーツ部門の幹部を選抜してこそ、彼らが選手に、世界のスポーツ発展の趨勢、自分自身の経験、スポーツ技術などについてわかりやすく教えることができます。また、選手生活をした人がスポーツ部門の活動を指導してこそ、選手の思想生活について具体的に把握し、彼らを正しく教育することができ、選手に訓練の条件を十分に保障してやることができます。

 したがって、スポーツ部門の幹部事業においては、対外活動を担当する幹部だけ対外活動の経験者でかため、その他の幹部は選手生活をした人でかためるようにすべきです。

 きょう私は皆さんに、第33回世界卓球選手権大会でわが国の選手団がおさめた成果と、今後わが国のスポーツをいかに発展させるべきかという問題について話しました。

 私は、皆さんがきょう私の示した課題を貫徹し、わが国をスポーツ王国につくりあげるものと確信します。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』30巻 

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