金 日 成

党、政権機関、人民軍をさらに強化し、社会主義大建設を
立派におこなって革命的大事変を成功裏に迎えよう
朝鮮労働党中央委員会第5期第10回総会での結語 
-1975年2月17日- 

 我々は数日にわたって、道党委員会責任書記と工場、企業所に派遣された3大革命グループの責任者たちから、思想、技術、文化の3大革命課題遂行のための指導状況について報告を聴取し、討論をおこないました。

 今回の総会では、3大革命課題遂行におけるこれまでの成果を総括し、欠陥を批判しました。総会がこれまで当然おさめられるより大きな成果をおさめることができなかった欠陥を見つけだし、今後3大革命課題をいっそう立派に遂行する問題について長時間討議したことは極めて重要な意義をもちます。

 今回の総会は、党中央委員会の委員や中央と地方の党および行政・経済活動家の党性を鍛える重要な契機となりました。我々はこれからも党中央委員会総会を、今回の総会のように活動家の党性、労働者階級性、人民性と指揮能力を高める契機にすべきだと思います。

 今回の総会の過程は、わが党が強化され、特に、党の組織生活が強められて、すべての活動で大きな成果をおさめることができるようになったばかりでなく、活動に内在する欠陥も適時に発見できるようになったことを示しました。党内に、欠陥をいちはやく発見し是正できる整然たる活動体系が確立されたことは、わが党の発展において大きな前進を意味します。

 どの国の党であれ、活動の過程には、成果がある反面、欠陥もあるものです。要は、欠陥をいちはやく見つけだし是正することです。もしも、自分の欠陥を知らず、自分の活動上の長短を見定めることができないならば、そういう党は活動で主観主義に陥り、最後には失敗をまぬがれません。

 わが党はこれまで、活動上の欠陥を適時に見つけだして是正し、正しく活動してきました。特に、近年わが党は、活動上の成果と欠陥をいちはやく見つけ、欠陥を是正するたたかいを力強く繰り広げています。これは、わが党の活動が着実におこなわれていることを示すものです。私はこれをたいへん満足に思っています。

 今年は、党創立30周年にあたる年です。我々は今年、党活動をいっそう強化し、各部門、各単位で革命課題を成功裏に遂行し、わが党創立30周年を勝利者の大祝典にしなければなりません。

 私はきょう総会をしめくくるにあたり、党、政権機関、人民軍をさらに強化し、社会主義大建設をいっそう立派におこなって、革命的大事変を成功裏に迎えることについて述べたいと思います。


  1 現情勢について

 現在の内外情勢については、最近おこなわれた在外大使会議で具体的に述べたので、ここでは簡単にふれたいと思います。

 こんにち、全般的情勢は、近い将来わが国で革命的大事変の起こる可能性があることを示しています。

 それは何よりも、帝国主義者が深刻な経済危機に陥っていることと関連しています。

 いま帝国主義者は、歴史上まれに見る深刻な経済危機に直面しています。食糧危機、原料危機、燃料危機が資本主義世界を襲っています。

 帝国主義者は、常に経済危機からの活路を侵略戦争に求めています。歴史的経験がそれを実証しています。第1次世界大戦も資本主義世界の経済危機が引き金となったし、第2次世界大戦の場合もそうでした。こんにち帝国主義者が深刻な経済危機に陥っている状況のもとで、第3次世界大戦が起こらないと断言することはできません。帝国主義者は、現在の危機を脱しようと再び無謀な世界戦争を起こすかもしれません。

 帝国主義者が新たな侵略戦争を引き起こす危険性はあらわれています。先日アメリカ国務長官キッシンジャーは、記者会見の席上、中近東の産油国が石油価格を引き下げないならば、それらの国に対する武力行使をも辞さないと公言しました。アメリカ大統領フォードも彼の発言を肯定しました。帝国主義諸国を襲っている経済危機のため世界的な大戦争や世界各地での局地戦争の勃発も考えられます。

 帝国主義者の無謀な侵略策動によって世界的な大戦争や局地戦争が起こるならば、それは朝鮮革命をいっそう促進するでしょう。

 最近の在外大使会議でも指摘しましたが、もし、帝国主義者によって大動乱が起こるならば、世界革命は大勝利をおさめるでしょう。第1次世界大戦の過程にロシアで社会主義十月革命が勝利し、第2次世界大戦後には、朝鮮、中国、ベトナムやヨーロッパ諸国で革命が勝利して多くの社会主義国が誕生し、多くの国が民族の独立を達成しました。動乱のなかで革命勢力が成長し、大きな勝利をおさめるのは、通例となっており、歴史の流れともなっています。

 現在の資本主義世界の経済危機によって、資本主義諸国で革命が起こる可能性もあります。

 資本主義諸国では、生存の権利と民主主義をめざす勤労者の大規模のストライキや大衆的なデモが頻発しています。資本主義諸国の勤労者が生存の権利と民主主義を要求してたたかうのは不可避的な現象です。

 資本主義諸国の反動的支配層は、経済危機から脱するため、人民に対する搾取と略奪をいっそう強めています。外電によれば最近西ドイツのある自動車会社では、一挙に1万名の労働者を解雇しました。アメリカでも失業者は史上最高の数に達しています。

 帝国主義者が経済危機からぬけだそうと勤労者に対する搾取と略奪を強化するならば、それだけ人民の闘争も激化するでしょう。ヨーロッパの資本主義国でも、アメリカでも革命が起こるかもしれません。アメリカだからといって、革命が起こらないと断定することはできません。全世界の労働者が毎年記念しているメーデーは、アメリカのシカゴの労働者が8時間労働制を要求して英雄的な闘争を展開した日にちなんでいます。

 資本主義諸国で革命が起こるならば、わが国の革命発展には有利な情勢が生まれるでしょう。

 資本主義世界の経済危機の深刻化にともない、第三世界諸国は天然資源を保護する闘争を力強く繰り広げています。

 昨年、第三世界諸国は原料および開発問題に関する国連特別総会と国連海洋法会議を開催して、帝国主義者の侵略と略奪政策に対抗し、国の天然資源を保護し、領海権と経済水域権を守るために強くたたかいました。第三世界諸国は、石油価格と原料価格の引き下げを要求する帝国主義者の圧力をはねのけて、勇敢にたたかっています。

 このように第三世界諸国が資源保護のためのたたかいにこぞって立ち上がっていることは、帝国主義諸国と第三世界諸国間の矛盾がさらに激化していることを示しています。またそれは、こんにち歴史の舞台に新たに登場した新兵勢力である第三世界諸国が現代の強力な革命勢力として帝国主義者に手痛い打撃を与え、自主的な発展の道に力強く前進していることを示しています。これは、わが国の革命発展にとって極めて好ましいことであります。

 一言でいって、こんにちの全般的国際情勢は朝鮮革命に極めて有利に進展しています。

 こんにちの全般的情勢を分析してみるならば、資本主義世界を襲っている経済危機が原因となって世界的な戦争が起こる可能性もあり、資本主義諸国で革命闘争が起こる可能性もあります。また、第三世界諸国で反帝闘争と自主、自立をめざす闘争がいっそう発展する可能性があります。

 こうした国際情勢は、南朝鮮にも影響を及ぼさざるをえません。南朝鮮は世界と隔絶しているのではなく、世界との連関のなかに存在しています。

 南朝鮮の経済は、アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者に従属した経済です。いま資本主義諸国の経済危機のあおりで、南朝鮮経済はいっそう破局的な状態に陥っています。

 南朝鮮かいらい一味は、いわば2本の紐で維持されている冠のような存在です。冠は2本の紐があってこそ頭にのっているものであって、紐が切れれば風に吹き飛ばされてしまいます。南朝鮮かいらい一味を支えるうえで、アメリカ帝国主義者が冠の一方の紐の役割を果たし、日本軍国主義者が他の一方の紐の役割を果たしています。つまり南朝鮮かいらい一味は、アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者に徹底的に依存しているのです。南朝鮮かいらい一味は彼らが金をつぎこまなければすぐ滅んでしまいます。

 アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者自身が深刻な経済危機にあえいでいる現状で、彼らが南朝鮮にひきつづき金をつぎこむことはできないでしょう。それとは逆に、彼らは南朝鮮に対する搾取と略奪をいっそう強めるでしょう。そうなれば、南朝鮮経済は日を追って衰退没落し、南朝鮮人民の生活は極度に零落するようになるでしょう。

 その過程で南朝鮮人民の革命的自覚は急速に高まるでしょう。南朝鮮人民は、南朝鮮かいらい一味の反民族的売国行為に対しても正しく認識し、アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者の侵略的正体をも見ぬくようになるでしょう。かつて、アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者が復興期にあったときには、南朝鮮の人びとのあいだにアメリカや日本に依存しようとする人がなきにしもあらずでした。しかし、アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者が経済危機に見舞われている現状では、もはや彼らに期待をかける人はいなくなるでしょう。

 南朝鮮人民の革命的自覚が高まるならば、南朝鮮での反ファッショ民主化闘争はいっそう激しくなるでしょう。人民の闘争が強化されるからといって、南朝鮮反動層が「政権」をおとなしく手放すようなことはないでしょう。彼らは人民に対する弾圧をさらに強化するでしょう。

 抑圧のあるところには抵抗があり、抵抗のあるところには人民の革命闘争が起こるものです。南朝鮮反動層が人民への弾圧を強めれば強めるほど、南朝鮮人民の革命闘争は激しくなるでしょう。

 急変する国際情勢の影響のもとで、わが国では戦争が勃発するいくつかの可能性があります。

 まず、資本主義世界の経済危機によって世界大戦か局地戦争が勃発する場合、わが国で戦争が起こる可能性があります。

 深刻な経済危機にあえぐ日本反動層と南朝鮮反動層は、世界大戦か局地戦争が起これば、それに乗じて共和国北半部を侵略するかもしれません。日本軍国主義者の第一の侵略対象は朝鮮民主主義人民共和国です。彼らがわが国に対する敵視政策をとりつづけているのも、共和国北半部まで手に入れるためです。日本反動層は全朝鮮を植民地化する野望を実現しようと、南朝鮮の手先をあやつって戦争を起こすかもしれません。

 もし、アメリカ帝国主義者が中近東で戦争を起こすならば、日本軍国主義者は朝鮮で戦争を起こすかもしれません。日本反動層は、アメリカ帝国主義者が中近東で戦争を起こす機会に乗じて一旗あげようとわが国を侵略しないともかぎりません。したがって、世界大戦か局地戦争が起これば、わが国でも戦争を覚悟しなければなりません。

 次に、南朝鮮人民の反ファッショ民主化闘争がもりあがり 朴正煕かいらい一味がいっそう深刻な危機に陥った場合、わが国で戦争が勃発する可能性があります。南朝鮮人民の闘争がもりあがるならば、朴正煕かいらい一味は人民の闘争を弾圧し、人民の耳目を他にそらすために最後のあがきとして戦争を起こさないともかぎりません。

 次に、南朝鮮人民が革命を起こし、我々に支援を求める場合、わが国で戦争が起こる可能性があります。

 こんにち資本主義世界をゆさぶっている経済危機のため、資本主義諸国で革命が起こることも考えられますが、その影響で南朝鮮でも革命が爆発するかもしれません。南朝鮮で革命が起これば、我々にはそれを支援する義務があります。南朝鮮人民が革命を起こして支援を求めるならば、我々は積極的に支援しなければなりません。そうなれば敵がそれを口実に、わが国で戦争を起こすことも考えられます。

 わが国で戦争が起これば、それはとりもなおさず革命的大事変となるでしょう。我々はこうした判断にもとづいて、わが国で近い将来革命的大事変が到来しうるとみています。

 しかし、革命的大事変はおのずから到来するのではありません。我々はそれを促進するために極力努めなければなりません。

 革命的大事変を促進するためには、南朝鮮の革命勢力を強化し、南朝鮮の革命闘争をいっそうもりあげなければなりません。

 革命的大事変を促進するためにはまた、対外活動を積極的におこなって、第三世界諸国との団結を強化しなければなりません。第三世界諸国が団結するならば、帝国主義者の経済危機をさらに激化させ、彼らを滅亡に追いこむことができます。

 こんにち第三世界諸国の人民は団結した力で帝国主義者に抗し、天然資源と領海権、経済水域権を守る闘争を力強く繰り広げています。我々は、資源保護のための第三世界諸国人民の闘争を積極的に支持し、彼らとの団結を強化することによって、資本主義世界の経済危機をさらに激化させなければなりません。

 我々はまた、世界各国労働者階級との連帯をさらに強化しなければなりません。

 革命的大事変を促進するためには、国際的に団結できるすべての勢力との団結を強化し、反帝闘争を強くおし進めなければなりません。

 我々は帝国主義に反対する世界各国人民と団結し、各国共産党、労働者党と団結すべきです。例え、反帝的立場が強固でなく革命性の弱い勢力であっても、すべて獲得して反帝統一戦線を拡大し、帝国主義者を最大限に孤立させ、弱体化させなければなりません。

 こうして世界革命を促進し、わが国における革命的大事変を早めなければなりません。

 我々は国際情勢の急激な変化に伴って、近い将来に予見される革命的大事変を成功裏に迎えるため、すべての力量をしっかり準備しなければなりません。


  2 党をさらに強化するために

 革命的大事変を成功裏に迎えるためには、何よりもまずわが党を強化しなければなりません。

 わが党は、朝鮮の労働者階級と勤労者大衆の前衛部隊であり、朝鮮革命の参謀部であり、朝鮮人民の指導的力量であります。革命闘争と建設事業を成功裏に進め、敵とのたたかいで勝利するためには、革命の参謀部である党を強化しなければなりません。

 党の強化において最も重要な問題は、すべての幹部と党員をわが党の革命思想、チュチェ思想で武装させることです。我々はこれを党を強化する第一の課題としています。

 全党を唯一思想で武装させるのは、マルクス・レーニン主義党建設の基本的原則であります。党内にはただ一つの思想だけが存在すべきです。党内にさまざまな思想が存在するならば、隊列の思想、意志の統一と団結を実現することができず、そのような党は事実上一つの党とはいえません。それゆえ、マルクスやエンゲルス、レーニン、スターリンは労働者階級の党を創立したのち、党隊列の思想、意志の統一を実現するために大きな力をふりむけました。

 わが党の唯一思想は、チュチェ思想です。チュチェ思想は、革命と建設の最も正しい指導思想です。チュチェ思想は、マルクス・レーニン主義の原理をわが国の現実に創造的に適用したばかりでなく、現代の革命的要請を的確に反映した独創的な思想であります。それゆえ、こんにち世界のすべての進歩的な人民は我々のチュチェ思想を学ぼうとしています。我々は幹部と党員をわが党の革命思想、チュチェ思想で武装させることによって、わが党を一つの思想、意志でかたく団結した強力な党につくりあげなければなりません。

 党を強化するためには次に、党生活を強化しなければなりません。

 党生活の強化は、わが党を生気はつらつとした強力な戦闘的組織にするための基本的要求であります。人間が健康であるためには、人体を構成しているすべての細胞が健全で、その機能を円滑に果たさなければならないように、党が強力であるためには、党を構成しているすべての党員と党細胞が健全で、活発に動かなければなりません。これは事物発展の弁証法です。もし、党を構成しているすべての党員と党細胞が動かず、その一部だけが動くならば、そうした党は行動の統一を保障できず、強力な党となりえません。したがって、党を強化するためには、党員のあいだで唯一思想教育を強化すると同時に、党生活を強化して、全党が呼吸をともにし、一心同体となって活動するようにしなければなりません。

 党は革命をおこなうために存在するのです。活動しない党は革命闘争においてなんの役にも立ちません。我々が党を組織したのは、党員を動かし、彼らの前衛的役割を高めて革命と建設を成功裏に遂行するためでした。すべての幹部と党員が常に活発に活動し、各自の任務を十分に果たしてこそ、党が指導的機能を立派に果たすことができます。

 幹部と党員が常に活動し、その役割を果たすようにさせるためには、党生活を強化しなければなりません。党生活を強化してはじめて、党員は党組織から任務を分担され、その実行状況について組織の点検をうけ、さらに新たな任務をうけて、それをなし遂げるために常に活動するようになります。

 党員にとって党生活は政治的生命であります。党生活から遊離した党員は老化した党員であり、政治的生命を失った死せる党員です。人体の細胞が病気にかかったり腐ったりすれば、薬で治療するか手術をして摘出しなければならないように、政治的な病気にかかった党員に対しても必要な対策を立てなければなりません。党組織は党生活をとおして古いものを捨て去り、新しいものを極力発展させ、たえず新陳代謝をしなければなりません。そうしてはじめて、党組織はたえず活動し、健全に発展できます。

 党生活で重要なのは、すべての党員が党の規約にもとづいて生活するようにさせることです。

 党員は、党生活で民主集中制の原則を守らなければなりません。党生活では、高い党員と低い党員の区別がありません。党員は誰もが党の規約にある党員の義務に精通し、それを生活の規範とし、党の規約にもとづいて自分の生活を常に検討すべきです。

 党員は、いかなる部門、いかなる単位で働こうとも党組織の指導と統制のもとに活動し、生活しなければなりません。かつて、一部の人はみずからを老幹部、特殊な存在と自任し、党組織の統制や批判をうけようとしませんでした。一部の活動家のあいだには、党の指導や統制を快く思わなかったり、ひそかに排斥する傾向があらわれ、仕事がうまくいかないと、党会議や党学習会が多いためであるかのようにいう人も少なくありませんでした。こうしたことは、いずれも党員にあるまじき行為です。

 わが党は政権党である以上、すべての部門、すべての単位の活動を指導し、統制しなければなりません。わが党の指導をぬきにしては、いかなる活動も円滑におこなうことができません。いかなる部門、いかなる単位でも党委員会の集団指導を十分に保障しなければなりません。つまり、すべての活動を党委員会の集団的討議をへて実行すべきです。党委員会の集団指導は、民主集中制の原則にもとづいて実現されなければなりません。なんぴとも職権を乱用したり、活動で独断専行することがあってはなりません。活動で独断専行するのは党の組織生活原則に反する行為です。

 すべての部門、すべての単位で党委員会の集団指導を強め、すべての活動家が党委員会の決定に従って活動するようにしなければなりません。そうすれば活動において行動の統一性を保障し、政治活動を優先させて行政・経済活動を円滑に保障するという党の方針も正しく貫くことができます。

 党生活は厳しい批判の雰囲気のなかでおこなうべきです。

 批判のない党会議は、党生活でなんの意味もありません。批判を強化するということは、けっして欠陥をつくりだして批判することではありません。過ちを指摘することだけが批判だと考えてはなりません。過ちは過ちとして、また成果は成果として指摘するのが批判です。

 事物の運動・発展の過程には必ず肯定と否定があるものです。肯定的な側面のみで、否定的側面のない事物現象などありえません。すべての事物の運動過程には、成長するものがある反面、衰退するものがあり、よい側面がある反面、悪い側面もあります。活動においても成果がある反面、欠陥もあり、勇敢に前進する人がいる反面、他人の足をさらって前進を妨げる人もいます。このように事物の運動過程には必ず相反する両側面があるものです。これは事物の発展法則であります。

 党員の党生活過程にも肯定的な側面と否定的な側面があります。したがって党会議では、党生活の長所は長所として、欠陥は欠陥としていずれも評価すべきです。こうした批判があってこそ、欠陥は是正し、長所は生かして党生活を発展させることができます。

 党会議ではまた、個別的な人の独断専行を許さないようにし、すべての党員が自分の意思を十分に発表できるようにしなければなりません。党会議で沈黙を守り、自分の意見を発表しない人は党員の資格がありません。党員は誰でも、党会議に参加して成果と欠点を明確に指摘しなければなりません。こうして、党生活で肯定と否定がはっきりと識別されるようにすべきです。

 党生活で学習は非常に重要な位置をしめます。学習を強化することは党生活の基本的要求です。

 私は革命闘争をはじめた当初から、学習は革命家にとって最も重要な任務の一つであるといいました。学習を強化することについては、抗日武装闘争の時期にも強調し、解放後にも強調しつづけてきました。

 党員は、学習を一つの革命活動とみなすべきです。学習は仕事の余暇におこない、暇がなければしなくてもかまわないものと思うのは誤りです。幹部や党員が学習をおこなうことなしには、朝鮮革命を速やかに前進させることができません。革命と建設をおし進めて社会を早く発展させるためには、すべての活動家が事物現象を科学的に分析できる知識と能力を所有しなければなりません。革命と建設に必要な知識や技術は一朝一夕に習得できるものではなく、長期にわたる実践と地道な学習によってのみ身につけることができるのです。また幹部と党員は学習を熱心におこなってこそ、時代の発展に立ち後れず、大衆を教育し導いていくことができます。

 活動で過ちをおかす人は、その大多数が組織生活に誠実に参加せず、学習を怠り、自己満足に陥っている人たちです。活動家が活動で過ちをおかさないようにするためには、党生活にまじめに参加し、熱心に学ばなければなりません。

 幹部が党と国家の仕事を正しくおこなうためには、日ごろから党の政策を学習し、国際情勢を研究し、技術学習もおこなわなければなりません。ところがいま一部の活動家は、仕事が忙しいということを口実に通信も論文も読まず、甚だしい場合は党機関紙の社説さえ精読しません。党機関紙の社説はいずれも党の指針にもとづいて書かれたもので、そこには党の新しい方針と党の主張が反映されています。したがって、すべての活動家は、党機関紙の社説を欠かさず読まなければなりません。

 一部の活動家は、水曜講演会や土曜学習をはじめ集団的な学習にもよく出席しませんが、これではいけません。水曜講演会、土曜学習をはじめ党学習会には、誰もがもれなく出席し、まじめに学ばなければなりません。朝鮮革命を完成し、世界革命の最終的勝利をめざしてたたかう我々共産主義者が、学習を怠ってよいものでしょうか。ことに我々は、社会主義・共産主義建設で前人未到の道を独創的に切り開いているのです。こうした状況のもとで、幹部や党員が党の路線と政策を深く学習しないならば、朝鮮革命の進むべき方向とその遂行方途を明確に知ることができず、そのため革命活動で同一歩調をとることができなくなります。学習を怠る人は例外なく党政策の実行で落伍者になり、規律違反者になります。

 すべての幹部と党員は、学習の重要性を深く認識し、学習を積極的におこなうべきです。

 党生活で重要な問題の一つは党性を鍛えることです。

 党性鍛練に努めるのは、党員の最も重要な義務です。党性に欠けた党員は完全な党員とはいえません。

 党性とは、一言でいって領袖と党に対する忠実性であります。党性は言葉ではなく、領袖と党中央が提示した課題と党の決定を実行する実践活動をつうじてあらわれなければなりません。

 党性は党生活をとおして鍛えられます。党員が党性を鍛えるためには、党から与えられた革命課題をいかに忠実に実行したか、党政策の実行にあたって不遜なふるまいはなかったかといったことを常にみずから検討しなければなりません。だがひとりでは、自分の欠陥や過ちに気づかないことがままあるものです。しかし、党生活に参加するならば、党員の助言によって自分では気づかなかった欠陥を残らず知り、いちはやくそれを是正することができます。党会議に出席して他人が批判されるのをそばで聞く過程でも大いに刺激され、立派な教育をうけることができます。例えば、ある党員が党に対し不忠実な行動をしたことについて党細胞会議で批判されたとすれば、自分もそうした行為をしたことがないかをかえりみるようになり、自分としてはこれまでよいことだと思っていたことが、じつは間違いであったと悟ることもあります。

 いま一部の幹部は、党会議にもよく参加せず、四方八方出歩いていますが、そういうことでは党性を鍛えることはできません。幹部がいつも自動車を乗りまわしているようでは、誰も彼を批判することができません。運転手が批判するわけにもいかず、家庭で夫人が批判するわけにもいかないでしょう。党性は、もっぱら自分を批判してくれる党員たちのいる自分の党組織で、党生活をする過程でのみ鍛えられるのです。それゆえ幹部と党員は、党生活に積極的に参加して、たえず党性を鍛えなければなりません。

 党を強化するためには、幹部と党員を革命的世界観で武装させなければなりません。

 かねがねいっていることですが、人びとの革命観は何回かの教育で一朝一夕に確立するものではありません。革命観は、搾取階級と搾取制度が悪いことを知り、それを憎むことから形成されはじめるのです。階級的に目覚め、敵に対する憎悪心をいだくようになったのちは、敵を打倒するためにたたかおうという革命的決意をかため、革命闘争の進め方もしだいに知るようになり、それからは実践闘争に移るようになります。人びとの革命観は、こうした過程をへて完全に形成され、実践闘争のなかでさらに発展していきます。

 私は幼いころ、日本帝国主義者が朝鮮人民を抑圧、搾取し、さげすむのをしばしば目撃し、亡国の民の悲しみを骨身にしみて体験しました。その過程で日本帝国主義を憎むようになり、必ずや日本帝国主義を打倒して国の独立をたたかいとるという決意をかためるようになったのです。

 私はまた、共産主義者を自称する人たちが人民を革命組織に結集するために力をそそぐのではなく、三々五々、党派をつくってはそれぞれコミンテルンの承認をうけようと奔走するのを見ました。私は、彼らのようなやり方では革命ができないと考えました。それで私は青年たちを集めて、革命闘争を立派におこなえばコミンテルンもおのずと認めるはずなのにどうしてコミンテルンの承認をうけようと訪ねまわるのか、誰かの承認をうけて革命闘争をする必要はない、と言いました。私はそのときから、革命闘争で絶対に事大主義に陥らないで自主性を堅持しようと心に決めました。

 我々は抗日武装闘争の時期に、難関を克服する過程で自力更生の革命精神をいっそう確固と身につけるようになりました。抗日武装闘争の時期、我々は遊撃根拠地で自力で爆弾を製造しました。初期には遊撃隊員のなかに爆薬をつくれる人がいませんでした。我々は学生時代に学んだ知識をたよりに研究を重ね、多くの人の知恵と創意を集めてついに火薬製造法を発見し、延吉爆弾の製造に成功しました。

 我々は革命闘争過程で難関や試練に直面するたびに、人民大衆のなかにはいって彼らから力と勇気を得、革命的意志と勝利の信念をかためました。

 祖国解放戦争の時期、困難な状況に処したとき、我々は人民軍軍人のなかにはいり、彼らと語りあう過程で新たな力と勇気を得たし、楽元機械工場の10名の党員の党細胞会議に参加して大いに励まされました。戦後の復興建設の時期、アメリカ帝国主義と南朝鮮かいらい一味が狂気じみた「北進」騒ぎを繰り広げ、大国主義者と分派分子がわが党に反対して策動した困難をときにも、我々は労働者階級と農民のなかにはいって力と勇気を得ました。

 幹部が正しい革命観を身につけるためには、必ず人民大衆のなかにはいらなければなりません。人民大衆のなかにはいってはじめて力と勇気を得、革命観を確立し、それをさらに発展させることができます。

 人びとの革命観をうちたてるうえで、革命的な書物と文学・芸術作品は大きな影響を及ぼします。私は学生時代に政治書籍も多く読み、ゴーリキーや魯迅の作品をはじめ、文学作品も多く読みました。そのとき読んだ『鉄の流れ』という小説から深い感銘をうけたものです。私は抗日武装闘争のとき、難関にぶつかるたびにその小説の内容を想起しては力と勇気を得ました。いうまでもなく抗日武装闘争の時期に我々が体験した苦難の行軍は、『鉄の流れ』の内容よりもはるかに厳しく困難を極めたものでした。しかし、学生時代に読んだ『鉄の流れ』のような文学作品が我々の革命的決意と意志を育むうえで大きな働きをしたことはたしかです。

 党員と勤労者の革命観の確立に役立つ立派な文学・芸術作品をつくることが大切です。

 これまでつくられた革命伝統テーマの作品を見ると、主として銃を撃ちあって戦闘をするとか、敵の武器を奪うとか、深い積雪のなかを行軍するといった場面にかぎられ、主人公の多様な生活を描いたものは多くありません。文学・芸術作品をそういうふうにつくってはなりません。抗日遊撃隊が厳しい闘争をおこなったのはたしかですが、年中戦闘や行軍ばかりしたわけではありません。遊撃隊にも生活はあったのです。抗日遊撃隊員の生活には、同志愛、人民との関係をはじめ、さまざまな側面があります。数年前の劇映画『遊撃隊の五兄弟』には、抗日遊撃隊員の生活が比較的リアルに描かれています。生活をリアルに描いていない文学・芸術作品は、人びとの革命観の確立にそれほど役立ちません。

 抗日武装闘争の過程には、党員や勤労者が革命観を身につけるうえで手本となる感動的な事実が少なくありませんでした。しかしいま、そうした資料を掘り出して文章にしたものが多くありません。革命伝統にかかわる資料を極力発掘して、党員と勤労者の革命教育に寄与する小説、映画などさまざまな文学・芸術作品を多く創作すべきです。

 幹部や党員にしっかりとした革命観をうえつけるためには、革命伝統教育を強化しなければなりません。

 わが党の歴史は栄光にみちています。わが党は今年創立30周年を迎えます。わが党が創立されたのは30年前ですが、わが党の歴史的根源は遠くそれ以前にさかのぼります。我々が打倒帝国主義同盟を結成したときから数えれば、わが党はほぼ50年の歴史をもっています。

 私が打倒帝国主義同盟を組織したのは、華成義塾にかよっていた1926年でした。私はその年の10月10日に同志たちを集めて、打倒帝国主義同盟を組織する計画を討議し、その1週間後に打倒帝国主義同盟を正式に組織しました。それ以来、わが党の栄えある根源が形成されたといえます。

 わが国の共産主義運動は、わが党の歴史よりもさらに長い歴史をもっています。社会主義十月革命が勝利したのち、わが国ではじめて共産主義運動が発展しはじめたときから計算すれば、わが国の共産主義運動史は50年をはるかにこえます。しかしわが党の歴史は、打倒帝国主義同盟が組織されたときからみるべきです。1925年に創立された朝鮮共産党は分派分子によってつくられ、日ならずして破壊されたので、それをわが党の起原とみなすことはできません。

 わが国最初の真の共産主義的革命組織として誕生した打倒帝国主義同盟は、その後反帝青年同盟、朝鮮共産主義青年同盟に発展し、我々はこれらの革命組織で育成され鍛練された青年共産主義者を中核として朝鮮人民革命軍を組織し、抗日武装闘争を展開しました。朝鮮人民革命軍が正式に組織されたのは1932年4月25日ですが、我々が抗日武装闘争をおこなうためにはじめて革命的武装組織をつくったのは?倫会議の直後でした。我々は?倫会議後、武装組織である朝鮮革命軍を組織し、武装闘争の最初の試みとして朝鮮革命軍のグループを各地に派遣しました。そのとき金亨権同志を責任者とする武装グループを朝鮮国内に派遣して活動させました。朝鮮革命軍の活動は抗日武装闘争の出発点となりました。

 我々は抗日武装闘争の過程で貴重な闘争経験と革命業績をつみ、わが党の栄えある革命伝統をきずきあげました。わが党の革命伝統は、豊かな内容をもち、党員や勤労者を革命的世界観で武装させるうえで極めて貴重な教科書となっています。

 幹部と党員を革命観で武装させるためには、革命伝統教育とともに、階級的教育、革命教育を強化しなければなりません。

 幹部と党員のあいだで階級的教育、革命教育を強化してこそ、彼らは階級の敵の本性を明確に認識し、いかなる逆境にあっても敵と断固たたかうことができます。革命観の確立していない人は、革命闘争過程の難関と試練をのりこえることができません。

 祖国解放戦争の一時的後退の時期、多くの人がおとなしい羊のように従順に「治安隊」にひきたてられて無惨に虐殺されたのは、彼らが革命観で武装していなかったためです。

 我々は後退直前、幹部たちに、後退してもすぐまたもどってくることを告げ、侵入してくる敵との具体的な闘争任務まで与えました。しかし、かなりの人たちが安閑と家のなかにいて、敵にとらわれ虐殺されました。もし敵と戦えないのなら、斧をさけ、米の2斗ほどももって、山の中を歩きまわっていておりてきたとしても、死ぬようなことはなかったはずです。

 我々は、かつての戦争時期の苦い教訓を忘れてはなりません。幹部と党員はその日その日を無為にすごすことなく、革命観を確立するため積極的に努力し、革命的大事変を迎える思想的準備をしっかりととのえなければなりません。

 次に、党の規律を強めなければなりません。

 党の規律の強化で重要なのは、すべての党員に同一の規律を適用することです。党の規律を適用するうえで、地位の高い党員と低い党員の区別はありえません。党の規律は誰にも同じく適用されるべきです。

 党の規律はまた厳格でなくてはなりません。党の規律を厳しく立てるというのは、けっして、机をたたき、人をののしり、官僚主義的にふるまうことではありません。党の規律は、党組織から与えられた任務を厳格に遂行させる強い要求とならなければならず、それが党の規律の出発点とならなければなりません。党組織は活動家のあいだで、党から与えられた任務を値踏みしたり、その実行を怠る傾向と強くたたかい、党から与えられた任務を他人に押しつけて自分は身を引くといった受売り行為をする傾向があらわれないよう統制を強めなければなりません。

 現在、党の任務遂行に対する党組織の要求度は強くありません。しばしば党組織は、幹部と党員の党の任務遂行状況を第一の基準にして彼らの活動を評価するのではなく、二次的な問題を大きくとりあげています。もちろんさ細な欠陥でもいちはやく批判して是正させなければなりませんが、作風上の欠陥はあくまでも欠陥の一側面にすぎません。

 党組織は党員の活動と生活を評価するにあたって、正面と側面、背面を見分けなければなりません。ところがそれをよく見分けられないために、革命任務をいかに遂行したかという根本的な問題を正面においてみるのではなく、作風上の問題を正面においています。党組織はこのような問題のとらえ方をしてはなりません。

 党の規律は、あくまでも党を強化し、欠陥のある党員を教育して助ける原則で適用すべきです。

 党の規律を強化するからといって、欠陥のある党員をみだりに解任したり、社会的にほうむるようなことをしてはなりません。もちろん、党に反対する反党反革命分派分子や異分子を厳しく処罰するのは別問題です。それらの者を除いた党員に対しては、教育し助ける目的で党の規律を適用すべきです。

 党の規律の強化で重要な問題は、すべての党員が党の規律を自発的に守るようにすることです。

 人間が病気にかからないように予防医療をほどこすように、党の規律を強化するにあたっても、幹部と党員が規律に違反しないように予防対策を請じなければなりません。幹部と党員のあいだで学習と党性鍛練を強め、チュチェの革命観を確立していけば、党の規律に違反する行為を防ぐことができます。党組織は、彼らが党の規律を自発的に守るよう、日ごろから教育を強めなければなりません。

 党を強化するためには次に、党の活動方法を改善しなければなりません。

 党機関は、党活動、対人活動をおこなう機関です。党組織は、対人活動、すなわち幹部との活動、党員との活動、大衆との活動をおこなわなければなりません。党組織が対人活動、特に、幹部との活動を着実におこない、彼らが党の政策を貫徹するため積極的に活動するようにさせるならば、政権機関の活動も経済機関の活動もすべて順調に運ぶでしょう。それゆえ、党活動の基本は、あくまでも対人活動となるべきです。

 党の活動方法を改善するためには何よりも、行政的活動方法を一掃し、党活動を徹底的に抗日遊撃隊式におこなれなければなりません。

 行政的活動方法というのは、ある仕事が提起されると形式的に会議を開き、組織計画書を採択するとか、決定書や命令書などを作成して下達する方法で活動することをさします。一部の活動家は、会議を開いて組織計画書を採択することを組織活動といっていますが、それは組織活動ではありません。問題は会議で組織計画書を採択することにあるのではなく、党員と勤労者が各自の任務を明確に知り、その遂行に自発的に参加するようにさせることです。

 党員と勤労者を革命課題の遂行に自発的に参加させるためには、まず提起された革命課題の学習をおこない、解説対話、講演などもおこなって、彼らがその革命課題の内容と重要性、自分のなすべきことをはっきりと認識するようにさせるべきです。こうした認識段階をへたのち、実行対策を討議し、任務分担を正しくおこない、決定書を採択しなければなりません。少なからぬ党組織はこうするのではなく、上部から課題が与えられると、なんの解説もおこなわず、いきなり会議を招集して計画書を採択します。それで参会者は、会議で何が討議され、自分にどんな任務が分担されたのかもよく知らないありさまです。それは組織活動とはいえません。

 党活動はけっして行政的方法でおこなってはなりません。党活動は、活動家が大衆のなかにはいって党の政策を解説し、すべての人が党政策を正しく認識し、各自に与えられた課題を立派に実行するよう組織し動員する方法でおこなわなければなりません。こうした活動方法が党の活動方法であり、抗日遊撃隊式の活動方法であります。

 党活動で行政的方法を一掃し、徹底的に党活動を抗日遊撃隊式に切りかえるべきです。こうして、党中央委員会をはじめ、各級党組織はまず幹部を動かし、幹部は党員を動かし、党員は大衆を動かし、1人が10人、10人が100人、100人が1000人を教育し動かす方法で、すべての人を党政策の実行へと奮起させなければなりません。

 党組織は、また行政代行をしてはなりません。

 行政代行とは、党活動家が行政・経済機関の活動家をさしおいて、彼らの活動を代行することをいいます。これは党の活動方法ではありません。いうまでもなく、社会主義建設を正しく指導することは政権党の重要な革命課題です。しかし、党は行政・経済活動を代行するのではなく、この部門の幹部と党員、大衆との活動をとおして行政・経済活動を指導しなければなりません。党が行政・経済活動を代行するのだったら、行政・経済機関を設ける必要はありません。党活動家は、絶対に行政・経済活動を代行するようなことをしてはなりません。

 行政代行をなくすうえで、党の経済担当部署の活動方法を改善することが極めて重要です。

 党の経済担当部署の本務は、党の政策を解説宣伝し、党政策の実行状況を監督し、その実行過程にあらわれる偏向を正す意見を提起し、党の経済政策を最後まで実行するよう幹部を教育することです。党の経済担当部署は、経済活動に対する指導において、この4つの活動範囲をこえてはなりません。党の経済担当部署はあくまでも党活動をおこなう部署となるべきであり、党の経済担当部署の活動家は当該部門の幹部と党員の母親となって、彼らが立派に仕事をするよう教育し、導かなければなりません。母親は、子どもに登校のときにはどの道を行き、大通りを横断するときには何に注意し、学校に行っては先生にあいさつをし、授業中には先生のお話を注意深く聞き、昼食をとるときにはまずお湯を飲まなければならない、といったことを一つひとつ言ってきかせます。そして下校してからはよく勉強したのか気を配り、理解できないことがあればじゅんじゅんと説いて教えます。党活動家は母親が子どもの世話をし、教育をするように、行政・経済機関の活動家を正しく援助し、教えなければなりません。

 しかし、いま党の経済担当部署の活動家は、行政・経済機関活動家の母親の役割を果たすのではなく、彼らの仕事を代行し、果ては党の権威を笠にきて資材を分配するようなことまで代行しています。こうしたことは党の活動方法とは全く縁遠いものです。

 党が経済活動を代行するならば、党の経済政策が正しく実行されなくてもそれを適時に見極めることができず、あらわれた欠陥を是正する人もいなくなります。そのうえ、党の経済担当部署の活動家が行政代行をおこなえば、行政・経済機関の活動家に対する発言権も失うようになります。

 党の経済担当部署が行政代行をおこなわず、行政・経済機関の活動家を懇切に教え、指導するならば、すべての部門の仕事が円滑に運ぶでしょう。行政・経済機関の活動の成否は、要するに党の経済担当部署が彼らの仕事をいかに援助し、指導するかにかかっています。

 かつての抗日武装闘争のときにも、各部隊の任務遂行いかんは、政治幹部と指揮官の活動の手配の仕方にかかっていました。例えば、偵察班を派遣するさい、政治幹部や指揮官がなんの研究もせず、いきなりどこへ行って何を偵察してくるようにと任務を与えて送りだしたときは、戦闘任務を満足に遂行できなかったばかりでなく、何らかの事故を起こしたりしました。しかし、偵察班を派遣するとき、偵察過程に遭遇しかねない状況とそれを克服する方途を具体的に教えて派遣したときは、過ちをおかさず、戦闘任務を立派に果たしました。これと同様、党の経済担当部署が行政・経済機関の活動家を正しく教育し、彼らに活動方法を具体的に教えるならば、行政・経済活動はうまくいくでしょう。

 党活動で重要な問題の一つは、党組織が勤労者団体との活動を正しくおこなうことです。

 党組織は勤労者団体にためらうことなく仕事をまかせ、勤労者団体をとおして非党員大衆との活動をおこなうべきです。現在、党組織が勤労者団体に仕事をまかそうとせず、その仕事まで代行するので、勤労者団体がその役割を十分に果たせないのです。

 非党員労働者に対する党政策の解説宣伝活動は職業同盟組織にさせるべきです。いまのところ、職業同盟の活動家はチョンリマ(千里馬)作業班の称号を授与するために巡回する以外にはこれといってなすことがないそうですが、そういうことでは職業同盟の固有の性格を生かすことができません。社労青もちかごろは多少活発に活動していますが、つい最近までにしても年寄りじみて活気がありませんでした。抗日武装闘争当時、遊撃根拠地では大衆組織が非常に大きな役割を果たし、農民協会、反日会などの大衆組織の威信はたいへんなものでした。しかしいまは、勤労者団体の役割がそれほど高くありません。それは、党組織が勤労者団体を尻に敷いて独断専行し、その活動を代行しているためです。

 党組織は、職業同盟、農業勤労者同盟、社労青、女性同盟組織に非党員大衆との活動をまかせ、勤労者団体が大衆との活動を正しくおこなうよう積極的に援助しなければなりません。

 勤労者団体組織に大衆との活動を正しくおこなわせるためには、勤労者団体の指導機関を構成するうえであまり高い水準の要求をださないようにすることです。勤労者団体の指導機関は、党員と非党員を適切にとりあわせてかためるべきです。そうしてはじめて、勤労者団体の活動家が各階層の大衆のなかにはいり、対象の特性に即応して人びとを教育することができます。現在、勤労者団体の活動家はそのほとんどが党員であるため、彼らは党活動家と同じ言葉づかいをしており、勤労者団体らしいところがありません。

 いま新興独立諸国をはじめ、世界の多くの国の人びとが、我々の青年活動の経験に学ぶため少なからずわが国を訪ねてきます。こうした状況のもとで、我々は青年活動をいっそう立派におこなうべきです。そして、我々の青年活動の経験を他の国の人たちに正確に知らせるために経験集を立派に書くべきです。

 我々の経験によれば、政権を掌握するための革命闘争の段階では中核青年で共青を組織する必要がありますが、労働者階級が政権をとったのちには、共青を別個に組織するのは好ましくありません。青年は新しいものに敏感で前進することを好むので、中核青年だけで組織をつくるならば、それに参加できなかった青年が彼ら同士で別個の組織をつくって青年運動を分裂させるおそれがあります。また組織に加入できなかった一部の青年は、先進分子の隊列に参加できず落伍者扱いをうけるくらいなら酒でも飲んで思う存分遊んでみようと、非行に走らないともかぎりません。

 解放直後のわが国の青年運動の実態からしても、当時は共青組織のほかにキリスト教青年会とか白衣青年同盟などさまざまな青年組織が出現し、青年運動は四分五裂して統一できない状態にありました。それで我々は共青を主動的に解散し、民主青年同盟を組織して各階層の青年を一つの組織に結集しました。生活は当時の我々の方針が全く正しかったことを示しています。もし、我々が民青を組織しないでさまざまな青年姐戦を放置しておいたならば、有産階級の政党や宗教団体の後進がひきつづき育ち、わが国に党派が存続するようになったでしょう。しかし我々は、適時に青年組織を一つに統合することによって、さまざまな党派や宗教団体の跡目をたちきってしまいました。

 実践をとおして実証されたように、革命が勝利したのち青年運動の統一を保障し、すべての青年を新しい社会の建設に積極的に引き入れるためには、各階層の青年を参加させる大衆的な一つの青年組織をつくるのか理想的です。これは、我々が青年活動で得た極めて貴重な経験です。

 各階層の青年を一つの組織に結集し、教育に努めるならば、成長の早い人は先に立って進みながら中核的役割を果たし、そうでない人はあとからでもついていくでしょう。立ち後れた青年が悪いことをせず、ついていくだけでもかまいません。

 社労青組織は、青年を全般的に教育すると同時に、中核分子を育てあげなければなりません。社労青組織は、青年のなかから着実に活動する中核分子を掌握し、系統的に育てなければなりません。

 勤労者団体の活動で押しつける活動方法をなくさなければなりません。いま行政的に押しつけるのは、党組織にかぎらず、勤労者団体も押しつける方法で活動しています。勤労者団体組織はそうした古い活動方法を一掃し、固有の性格に即して非党員大衆を教育してわが党のまわりにかたく結集し、生産扇動を活発におこなって同盟員を社会主義建設に極力動員しなければなりません。

 党を強化するためには、党中央委員会をはじめ、各級党委員会をしっかりかためるべきです。

 いま党委員会は、党と革命に対する忠実性を基本にして構成されているのではなく、しばしば職務本位に構成されています。党委員会を職務本位に構成するのは誤りです。そのようにしたのでは、活動と生活で模範的とはいえず、前衛的役割も果たせない人が党委員会にはいるおそれがあります。政治的参謀部であり集団的指導機関である党委員会を、株式会社のようにあちこちの部門から一人ずつよりぬく方法で構成してはけっしてなりません。

 党中央委員会の委員には、領袖と党と革命にかぎりなく忠実を人、言いかえれば気高い革命観と高度の党性、労働者階級性、人民性を身につけた人、党から与えられた革命課題を忠実に実行する人だけがなれます。党中央委員会委員というのは最も気高い称号であるので、十分な資格のある人だけが党中央委員になれます。

 党中央委員会ばかりでなく、道党委員会、郡党委員会など各級党委員会も、職務本位とせず、あくまで党と革命に対する忠実性を基本にして構成しなければなりません。党委員会に部門別の幹部がみなはいらなくても、彼らを党委員会の問題討議に参加させる必要のあるときにはオブザーバーとして参加させればよいでしょう。

 党委員会を職務本位に構成しない方針だからといって、すでに選出された委員をみだりに解任してはなりません。党委員会委員の資格のそなわっていない人は解任するのではなく、批判と教育によって委員の資格をそなえるようにすべきです。

 今回の総会で党中央委員会委員たちに批判が加えられましたが、それはけっして彼らの威信をそこなわせるためではありません。このたびの批判の目的は、一部の中央委員の欠陥を是正させ、彼らを党に忠実な活動家に育成することにあります。

 総会で批判された中央委員や欠陥のある中央委員は、みずからを冷静に検討し、欠陥を是正するために極力務めなければなりません。

 党中央委員会の委員は、総書記を中心に一心同体となってかたく団結しなければなりません。そうして、総書記が「ア」と言えばいっせいに「ア」といい、「イ」と言えば「イ」と言わなければなりません。党中央委員会の委員は、このように発言においても、また行動においても同一歩調をとらなければなりません。

 党中委員会委員はまた、すべての面で前衛の役割を果たすよう、気高い革命観と高度の党性を身につけるため積極的に努力すべきです。党中央委員会の委員は、誰よりも党学習会や党生活に熱心に参加し、党の規律を自発的に守らなければなりません。こうして、すべての党中央委員が200万党員と5000万朝鮮人民の期待にそむかぬよう模範的に活動し、みずからの水準をさらに高めるべきであります。


  3 人民政権機関をさらに強化するために

 我々の人民政権機関は、労働者、農民、兵士、勤労インテリの利益を代表し、擁護するプロレタリアートの独裁機関であります。人民政権機関を強化するということは、階級闘争の武器をいっそう鋭いものにし、プロレタリアート独裁の機能をさらに高めることを意味します。

 プロレタリアート独裁を強化することは、社会主義・共産主義建設の運命を左右する根本的問題であります。

 レーニンは、ソビエト政権プラス全国の電化は共産主義であるという定義づけをおこないました。レーニンの言ったソビエト政権とはほかならぬプロレタリアート独裁のことであり、それは労働者階級の政権が階級闘争とプロレタリアート独裁の機能をひきつづき強化しなければならをいという意味です。電化という言葉は、技術革命をおこなって電化、オートメ化を実現し、人びとを骨のおれる労働から完全に解放し、社会の物質的富をより多く創造しなければならないという意味です。共産主義にかんするレーニンの定義をこのように解釈するのが正しいのではないかと思います。

 共産主義社会を建設するためには、階級闘争をつづけ、プロレタリアート独裁を強化しなければなりません。

 社会主義社会における階級闘争は、思想革命と法の適用が正しく組み合わされてはじめて成功裏に進められます。党は、思想革命、思想戦を力強くおし進め、人民政権機関は法的統制を強化しなければなりません。

 搾取階級と搾取制度が一掃されたあとも、人びとの頭には長いあいだ個人主義、利己主義など古い思想の残りかすがくすぶっており、階級闘争かつづくので、人民政権機関は必ず法的統制と規律を強化しなければなりません。

 人民政権機関の機能と役割を高めるためにはまず、わが国社会主義憲法にもとづいて各種の法規範と規定を制定し、すべての人がそれを厳守するよう法的統制を強化しなければなりません。

 我々の社会には、労働者、農民、勤労インテリをはじめ各階層の人びとがおり、彼らの出身階級も同じではありません。複雑に構成されている社会の全構成員を統一的に動かし、彼らに集団的で組織的な生活をさせるためには、人びとの行動を規制する法規範と規定がなければなりません。

 数十万の人民軍が一糸乱れず行動することができるのは、軍事規範と規定があるからです。人民軍には立哨のさいに守るべき衛兵規定があり、内務生活で守るべき内務規定があり、戦闘のさいに守るべき戦闘規定があり、行軍のさいに守るべき行軍規定があります。人民軍ではすべての生活と活動をこうした規定にもとづいておこなうので、規律と秩序が厳格に保たれるのです。

 軍隊に軍事規定があるように、国家には法規範と規定がなければなりません。国家はプロレタリアート独裁の武器であるので、法規範と規定があってこそ社会の全構成員を管理し、統一的に動かすことができます。

 すべての公民が義務的に守るべき最も基本的な法規と行動準則は憲法です。最高人民会議第5期第1回会議で制定されたわが国の社会主義憲法は極めて立派な憲法です。すべての党員と勤労者は、社会主義憲法を深く学習し、それを遵守すべきです。

 社会主義憲法は国家の基本法であるので、すべての部門、すべての単位では、社会主義憲法にもとづいて具体的な活動規範と活動準則を新たに制定すべきです。例えば、土地管理法、財政管理法、住宅管理法、航行法、河川管理法など、各部門の法規範と規定を制定しなければなりません。そして、これらの法規範と規定をすべての人が遵守するよう統制しなければ、仕事を無責任におこなったり、国家財産を粗末に扱って使いものにならなくする現象を防ぐことができません。

 現在、人民経済各部門では経済管理を手ぎわよくおこなっていませんが、工場、企業所の管理運営にかんする規定を正しくつくり、その実行に対する統制を強めて企業管理を正規化、規範化しなければなりません。

 党は行政活動をおこなうべきではありませんが、中央人民委員会、政務院をはじめ、人民政権機関は行政活動をさらに強化すべきであり、法規範と規定を正しくつくり、それにもとづいて法的統制を強化すべきであります。

 新たな法規範と規定を制定すると同時に、従来の古い法規範と規定を社会主義憲法と発展する現実の要求に即して改正しなければなりません。北朝鮮人民委員会当時の法規は、我々に現在のような立派な憲法もなく、国家管理の経験もなかったときに制定したものなので、少なからず外国の法規を模倣しています。したがって、そうした法規範は、こんにちの社会主義の現実と社会主義憲法の基本的原則に即応しません。中央人民委員会法制委員会は、既存の法規範と規定を現実に即して改正すべきです。

 法律と規定を正しく制定すると同時に、すべての人がそれを遵守するようにさせるべきです。

 我々は、すべての党員と勤労者に法を尊重、擁護させ、遵守させる闘争を強く繰り広げなければなりません。何よりも、党中央委員会の委員や党活動家、そして党員が国家の法と規定を模範的に遵守すべきです。

 最近、人民政権機関の法的統制が非常にゆるんでいます。国家の決定や命令、指示がとどこおりなく下達されず、満足に実行されていません。その主な原因は、これまで党組織が行政・経済活動を代行し、すべての活動で独断専行したことにあると思います。党中央委員会の幹部をはじめ、党活動家自身が行政・経済活動を代行し、国家の法令や決定に少なからず違反しました。そのため、自然に法がなまぬるいものになってしまったのです。

 最近遵法性がゆるんできたのはまた、党組織が活動家や党員に対し国の法律を遵守するよう教育せず、党の統制を強化しなかったところに原因があります。

 党員と勤労者のあいだで遵法性を高めるため、党は思想革命、思想戦を力強く展開し、人民政権機関は法の適用を強化しなければなりません。

 次に人民政権機関を強化するためには、中央人民委員会と政務院をはじめ、人民政権機関を、党性が強く、党に忠実な人でかためなければなりません。

 従来、党機関に勤務していて処分をうけたとか、規律に違反した活動家を人民政権機関に転出させることが少なくありませんでしたが、これは誤りです。これまでそうしたことをしたため、人民政権機関を強化するため党機関の活動家を政権機関に移しても、彼らは自分に何か過ちがあって転出したのではないかと誤解しています。

 党の信頼をうけて人民政権機関で働く活動家は、誰よりも法規を自発的に遵守し、それをあくまで実行するために努めなければならないはずです。しかし、政権機関の一部の活動家は法規を積極的に実行しないばかりか、自分白身が法規に違反するようなことが少なくありません。こうしたことをなくさなくては、人民政権のプロレタリアート独裁の機能を強化することはできません。

 人民政権のプロレタリアート独裁の機能を強化するためには、中央人民委員会と政務院の省や委員会、それに検察所、裁判所などの法的統制機関を、労働者階級出身の点検ずみの活動家と革命的に鍛えられたインテリ、人民軍で長年鍛えられた優秀を中核分子でかためなければなりません。人民政権機関を点検ずみの鍛えられたすぐれた中核分子で構成することによって、法の適用を強め、階級闘争をさらに深化させていかなければなりません。

 次に、人民政権機関は活動を慎重におこなわなければなりません。

 いま人民政権機関は指示書を乱発しています。政務院事務局はなにかにつけて事務局指示書を下達しており、政務院の各省、委員会もそれぞれ指示書を出しています。

 政務院の事務局、省、委員会が指示書を乱発するのは慎重さを欠いた活動態度であり、官僚主義的な活動方法のあられれです。こうした官僚主義的活動方法を一掃しなければなりません。

 法は厳格でなくてはならないものなので、どこでも法的文書を乱発するようではいけません。

 社会主義憲法によって法的効力をもつ決定は、中央人民委員会と政務院のみが採択して下達することができます。政務院の省や委員会には、その部門の活動と関連した政務院の決定や指示の実行方法にかんする指示書を作成して下達する権限しかありません。今後、政務院は、決定書や指示書を作成、下達する権限を政務院総理に限定し、省や委員会がそれぞれ命令し、決定書を下達するようなことがないよう厳しく統制しなければなりません。

 政務院は社会主義憲法にもとづいて、省や委員会の職能を正しく規定しなければなりません。

 現在、政務院の省や委員会はみずから職能を定めているので、政務院の仕事まで自己の職能に加え「第2政務院」のように行動しています。今後、政務院は省や委員会の職能を政務院全員会議で承認し、省や委員会が規定された職能の範囲をこえないように厳しく統制すべきです。

 次に、人民経済計画と国家予算の法律化を徹底させなければなりません。

 活動家には人民経済計画をいい加減に作成し、いい加減に実行する悪癖があります。以前、内閣全員会議が人民経済計画を承認したときにはそうしたことがありませんでした。その当時は人民経済計画を実行せずにはいられませんでした。しかし近年、人民経済計画を法律化しないので、一部の活動家のあいだには、人民経済計画を実行しなくてもかまわないように考える正しくない傾向があらわれています。

 元来、人民経済計画や国家予算は、最高人民会議の法令として採択しなければなりません。わが国がまだ統一されていない実情で、人民経済計画や国家予算を最高人民会議の法令として公開しないにしても、中央人民委員会の政令や政務院の決定として法律化し下達すべきです。そうしてはじめて、計画作成者も慎重に作成し、計画実行者も責任をもって実行するようになります。国家計画を必ず法律化し、誰もそれを任意に変更できないようにし、国家計画を遂行できなかったときには、法によってさばく厳格な秩序をうち立てなければなりません。


  4 人民軍をさらに強化するために

 革命的大事変を成功裏に迎えるためには、党、政権機関とともに人民軍を強化しなければなりません。

 人民軍は、労働者、農民の利益を擁護し、社会主義制度を防衛する革命軍隊です。

 人民軍がその使命をまっとうするためには、党の軍事路線にもとづいて全軍幹部化を確実に実現しなければなりません。

 もし、わが国で戦争が起こるならば、全人民が戦わなければなりません。全人民が武器をとって決起するとき、人民軍は陣頭に立って戦うばかりでなく、多くの幹部を派遣して人民武装力、つまり労農赤衛隊、赤い青年近衛隊を指揮しなければなりません。そのためには人民軍を幹部化しなければならないのです。

 ところが人民軍はまだ、党の幹部化方針を貫徹しているとはいえません。人民軍は全軍幹部化をさらにおし進めて、すべての軍人が現代戦を巧みに指揮できるようしっかり準備しなければなりません。特に、わが国の地形条件と朝鮮人の体質に適した戦法を身につけるためにたゆみなく努力すべきです。それと同時に、指揮官を党性、革命性、労働者階級性、人民性の強い人でかためなければなりません。党性、革命性、労働者階級性、人民性に欠けた人は指揮官の資格がありません。

 人民軍は党の全軍幹部化方針を貫き、いったん有事のさいには兵士から将官にいたるまで、すべての軍人が1クラス以上の高い職務を担当できるようにすべきです。すなわち、兵士は分隊長、分隊長は小隊長、小隊長は中隊長、中隊長は大隊長、大隊長は連隊長、連隊長は師団長、師団長は軍団長の職務を担当できるようにすべきです。このように人民軍を幹部化して全人民が戦えるよう準備するならば、いかに現代兵器とすぐれた技術で装備した敵と戦っても十分勝利することができます。

 人民軍を強化するためにはまた、全軍現代化の方針を貫かなければなりません。人民軍を我々の兵器と我々の軍事技術によっていっそう現代化する闘争をひきつづき力強くおし進めなければなりません。

 人民軍の幹部化、現代化を実現するためには、次のような5大方針を貫徹しなければなりません。

 第1に、人民軍軍人は、強靭な革命精神を所有すべきです。

 人民軍軍人は、みな党と人民のため、社会主義制度のため、祖国の統一のために、帝国主義と地主、資本家階級と断固たたかう強い革命精神をもたなければなりません。つまり人民軍軍人は、党性、革命性、労働者階級性、人民性をしっかりと身につけなければなりません。そうすれば人民軍の戦闘力はいちだんと高まるでしょう。

 第2に、人民軍軍人は、巧みな戦術を所有しなければなりません。

 人民軍の指揮官と兵士は、敵を包囲して掃滅することも、奇襲突撃して掃滅することもでき、大部隊戦と小部隊戦を組み合わせることもでき、機動戦や砲兵戦も巧みにできなければなりません。また神出鬼没の戦術、敵を迅速に包囲、掃滅する戦術、敵を分散させて各個撃破する戦術をはじめ、さまざまの巧みな戦術を習得すべきです。そうして攻撃戦や防御戦など、すべての戦闘を立派に指摘できる能力をつちかうべきです。

 第3に、人民軍軍人は、鋼のような体力をもたなければなりません。

 現在、人民軍軍人の肉体的準備状態は上々です。軍人たちは寒い冬の日にも上着を脱いで駆け足や拳法をおこない、零下10度のときでも冷たい海に飛びこんで泳ぎ、川をこえ、高層建築物の壁をよじのぼり、綱を伝って山と山のあいだを移動する訓練を容易にやっています。これは、軍人の肉体的準備状態が極めてすぐれていることを示しています。

 現代戦は、すべての軍人が肉体的に十分にそなえられることを求めます。特に、山や川が多く、三面を海にかこまれているわが国の場合、軍人が強靭な体力をそなえることなしには、敵と戦って勝利することができません。それゆえ軍人は、鋼のような体力を所有するためにたゆみなく努力しなければなりません。

 第4に、人民軍軍人は、百発百中の射撃術を所有すべきです。

 軍人が百発百中の名射手になるためには、各自の武器に精通し、射撃術をたえずみがかなければなりません。人民軍軍人は自分の武器に精通するばかりでなく、各種兵器を操作できなければなりません。歩兵銃射手は機関銃や発射筒も使いこなせなければならず、歩兵は戦車も操縦できなければなりません。こうして、すべての軍人が一発で敵兵一人を倒す百発百中の名射手、各種兵器を扱える万能射手にならなければなりません。

 第5に、人民軍の隊内に鉄の軍事規律を確立しなければなりません。

 規律は軍隊の生命であり、戦闘勝利の重要な裏付けであります。規律のない軍隊は戦闘で勝利することができません。人民軍の隊内に自覚的で革命的な規律を確立すべきです。人民軍の規律を強化するためには、すべての軍人が軍事規定と教範を義務的に守り、軍事命令に無条件服従しなければなりません。人民軍軍人は絶対に軍事機密をもらしてはならず、いかに困難な状況のもとでも命をとして軍事機密を守らなければなりません。また軍人は、対民衆規律を自覚的に守らなければなりません。軍人は、人民の利益を積極的に擁護し、一粒の米、一条の糸でも人民の財産をおかしてはなりません。

 人民軍のすべての軍人が、強靭な革命精神、巧みな戦術、はがねのような体力、百発百中の射撃術を所有し、人民軍の隊内に鉄の軍事規律を確立するという5大方針を貫くならば、人民軍の威力はくらべようもなく強化されるでありましょう。

 国の防衛力を強化するためには、人民軍を強化すると同時に、全人民の武装化を実現しなければなりません。

 全人民の武装化を実現することは、国防力の強化においてわが党が一貫して堅持している方針であります。わが国の人口が少ない実情において、これ以上正規軍を増やすことはできません。それゆえ、いったん有事のさいには、全人民が戦いに決起できるよう全人民の武装化を実現しなければなりません。全人民が戦う準備をととのえているならば、いかなる敵もあえてわが国を侵すことができず、たとえ敵が攻撃してきたとしても恐れるにたりません。全人民の武装化を実現するならば、我々はいかなる敵と戦っても必ず勝利することができます。

 全人民の武装化を実現することは、先の祖国解放戦争の教訓にてらしてみても切実な問題です。祖国解放戦争のとき人民軍が一時的に後退を余儀なくされたのは、全人民の武装化を実現できなかったことと大きなかかわりがあります。もしあのとき、我々が全人民を武装させていたなら、後退をしなかったでしょう。

 全人民の武装化を実現するためには、第1に全人民に銃をもたせ、第2に全人民が銃を撃てるようにしなければなりません。

 全人民にゆきわたる銃を準備したからといって、全人民の武装化が完成するものではありません。銃があっても撃てなければ無用の長物です。かねがね言っていることですが、撃てない銃はこん棒にも劣ります。それゆえ、全人民の武装化を実現するためには、銃を大量に生産して全人民を武装させると同時に、全人民が銃を巧みに扱い、上手に射撃ができるようにしなければなりません。

 ところが工場、企業所では軍事訓練を満足におこなわず、幹部は軍事訓練に誠実に参加していません。一部の工場、企業所の党書記は、人民経済計画の遂行に忙しいという口実で軍事訓練を適時に組織していませんが、それは誤りです。

 軍事訓練をおこなうのは党の全人民武装化方針を実現するための措置であるので、誰もそれに違反する権利はなく、ただ実行する義務があるのみです。工場、企業所では、四半期ごとに人民経済計画を10日ほどくりあげて遂行し、そのあいだに軍事訓練をおこなうべきです。

 軍事訓練を正常化することなしには射撃術の上達は期待できません。人民軍に6、7年服務して除隊した人の場合でも、何年かたてば射撃術がにぶります。軍事訓練を正常化し、たえず射撃術をみがいてこそ、射撃が上達します。全人民の武装化を成功裏に実現するために、武器を大量に生産し、軍服と靴を十分に準備すると同時に、軍事訓練を正常化しなければなりません。

 各級党組織と社労青組織は、仕事を綿密に手配して人民経済計画を早期完遂し、より多くの時間をみつけて軍事訓練をおこなうようにしなければなりません。

 次に、軍需工業の発展に大きな力を傾けるべきです。軍需工業部門の重要な課題は、兵器と戦闘技術機材の質を高めることです。軍需工業部門関係者は、性能のすぐれた現代兵器と戦闘技術機材をより多く生産する闘争を力強く展開しなければなりません。そして戦時にも兵器を順調に生産できるよう資材の予備を蓄えるべきです。

 次に戦時生産準備を着実におこなうべきです。

 戦時下にあっても製鋼工場、化学工場、非鉄金属工場で安全に生産ができるよう対策を講じなければなりません。鋼鉄、火薬、非鉄金属なくしては、戦争の勝利を保障することができません。また、戦争が起これば全国のすべての工場、企業所が戦争物資を生産できるよう、万端の準備をととのえるべきです。こうして、いったん有事のさいには全人民が武装し、全国の工場、企業所が戦争の勝利のために奉仕するようにしなければなりません。

 全人民が戦争予備物資を蓄えるために取り組まなければなりません。人民経済各部門で節約運動を強化し、食糧、燃料油、ゴム、非鉄金属、火薬など各種の戦争予備物資をより多く蓄えなければなりません。少なくとも数年間は使える予備物資を蓄えなくては戦争準備ができたとはいえません。

 次に、戦時の大衆生活必需品を保障する対策を講じなければなりません。

 戦時の大衆生活必需品を保障する方途は、地方産業工場を大々的に設けることです。

 現在マッチ工場は一つしかありませんが、戦争が起これば破壊されかねません。そうなればマッチが切れて人民生活に支障をきたすようになります。それゆえ有事のさいに、現在の大きなマッチ工場が操業できなくなってもマッチを供給できるよう二重に手配をすべきです。つまり、中央直轄工業部門の工場だけに依存しようとせず、各地に地方産業工場を多く建設し、一か所の工場が破壊されても大衆生活必需品の生産供給に支障がないようにすべきです。この問題についてはしばしば強調してきましたが、まだ十分に実行されていません。

 マッチ工場を設けるのは、さほどむずかしいことでもありません。現在ある地方産業工場に小さな建物を増築し、簡単な設備をそなえればよいのです。

 戦時に鉛筆、万年筆、歯ブラシ、歯磨粉、石けん、インク、紙、タバコ、各種容器など順調に生産できるよう二重、三重、四重と幾重にも手配すべきです。みそ、しよう油などは切れたら家庭でしこんで食べられますが、石けんや歯ブラシなどは自分の手でつくることができません。石けんや歯ブラシはとるに足らないもののように思われがちですが、そうしたものがなければ人民の生活を不自由なものにします。地方産業工場を大々的に建設し、各地で鉛筆や万年筆をつくり、インクや歯ブラシもつくるようにすべきです。

 地方産業工場を設けるには、資金や資材がいくらも要りません。幹部に熱意さえあれば、地方産業工場を十分立派にととのえることができます。地方産業総局の幹部たちは老化したせいなのか、仕事に熱を入れていませんが、熱意をだして働くようにしなければなりません。

 地方では、有事のさいに消費物資に対する住民の需要を自力でみたせるよう、地方産業工場を大々的に建設する運動を力強く繰り広げなければなりません。

 戦時に農業を営めるよう、肥料生産対策も請じなければなりません。戦争が起こるならば、現在の肥料工場は操業不能になりかねませんが、そうなれば肥料供給が中断されます。それゆえ肥料生産も二重に手配すべきです。地方ごとに自力で肥料を生産してほどこせるよう、小規模の肥料工場を大々的に建設すべきです。

 道路整備に力を入れるべきです。道路を立派に整備することは人民経済のために必要であるばかりでなく、戦争にそなえるためにも切実に必要です。道路がよくなくては、戦時物資を迅速に運ぶことができず、軍隊の機動を速やかに保障することができません。全人民的運動を起こして、道路整備と道路建設を力強くおし進めるべきです。


  5 社会主義大建設をより立派におこなうために

 社会主義大建設をおし進めるためには、党中央委員会第5期第8回総会の方針どおり、基本建設、工業、農業、輸送、水産の5つの部門にひきつづき大きな力をそそがなければなりません。昨年党が「70日間戦闘」を直接指導したところによると、5つの部門をひきつづき掌握して力強くおし進めていくならば、今年6か年計画を指標別には完遂できなくても、金額のうえでは完遂できる見通しです。

 社会主義建設のすべての部門で一大高揚を起こすためには、採掘工業を確固と優先させなければなりません。

 これまで国家経済機関の幹部が経済活動に対する指導にあたって、採掘工業を優先させる原則を厳守しなかったため、採掘工業は加工工業に先行していません。機械工場をはじめ、各種の工場が多く建設されましたが、採掘工業が先行していないため、原料が不足がちで、それらが真価を発揮していません。採掘工業部門が鉄鉱石を十分に供給できないため、溶鉱炉がその能力を完全に発揮しておらず、石炭が不足して火力発電所やセメント工場もフルに稼働していません。第1次加工工業でも第2次加工工業でも原料が隘路となっているのが現状です。わが国に石炭がないのではありません。わが国には石炭が無尽蔵にあります。我々は、石炭の上にあぐらをかいて石炭の心配をしています。採掘工業が加工工業に確固と先行していないのは、これまで採掘工業部門への投資があまりなされず、必要な設備を多く供給できなかったことに起因します。採掘工業に投資を少ししかしないことについて昨年も批判しましたが、まだ経済幹部は是正していません。

 社会主義経済は、計画経済であり、均衡経済です。社会主義社会では人民経済の各部門が互いにかみあっています。それゆえ、社会主義経済では人民経済各部門間の均衡を正しく保たなければなりません。

 採掘工業を早急に発展させ、採掘工業を加工工業に確固と優先させるという党の方針を貫徹しなければなりません。これが今回の総会を契機に解決すべき最も重要な問題の一つです。

 採掘工業を速やかに発展させるためには、何よりも掘進とはく土を確固と優先させなければなりません。掘進とはく土を優先させるのは採掘工業の基本的法則といえます。軍隊が大部隊の攻撃戦闘のさい、まず砲撃をおこなって進撃路を開いてから歩兵をくりだすように、採掘工業ではまず掘進とはく土をおこなわなくては石炭や鉱石を採掘することができません。

 採掘工業部門ではまた、設備を大型化、高速度化しなければなりません。

 採掘工業部門では、設備の大型化、高速度化をはかることなしには、生産の急速な増大を期待することができません。非鉄金属鉱石などはこれまで高品位のものだけ採掘したので、いまでは低品位のものしかありません。低品位の鉱石を従来のように消極的な方法で採掘したのでは、急増する鉱石の需要をみたすことができません。それゆえ、採掘工業部門では決定的に設備を大型化、高速度化して、大量採掘、大量処理しなければなりません。

 採掘工業部門では、自己の機械生産基地と工作・動力基地を強固にきずき、採掘設備の大型化、高速度化に要する各種機械設備を多く生産しなければなりません。そして、機械工業部門では、大型掘削機と高速度削岩機をはじめ、大型設備と高速度設備を多く生産して採掘工業部門に送るべきです。

 採掘工業部門では、採掘設備の大型化、高速度化と同時に、運搬の空中ケーブル化、コンベヤー化、パイプライン化を積極的におし進めるべきです。

 次に、輸送部門に大きな力を入れなければなりません。

 現在速やかに発展する工業に輸送が追いついていません。輸送がとどこおって、石炭をはじめ、燃料や原料を人民経済各部門に適時に供給できません。

 輸送の緊張をほぐすためには、何よりもまず鉄道運輸を速やかに発展させなければなりません。

 鉄道運輸を速やかに発展させるうえで重要なのは、鉄道の電化を積極的におし進めることです。鉄道を電化してこそ、鉄道の輸送能力と通過能力を高め、より多くの貨物を運搬することができます。わが国で生産している電気機関車は蒸気機関車にくらべほぼ3倍もの貨物を運搬することができ、速度もはるかに速いのです。それゆえ、鉄道の電化は鉄道を3倍増設するのと同じことです。鉄道運輸部門では鉄道の電化をひきつづき力強くおし進めるべきです。

 鉄道の電化とともに、レールを重レールに、枕木を良質のものにかえ、駅の構内線をのばし、60トン積みの重貨車を多く生産しなければなりません。そうしてこそ、鉄道電化の威力を発揮させ、より多くの貨物を運ぶことができます。

 鉄道を電化してより多くの貨物を輸送するためには、人民経済各部門で鉄道部門を積極的に支援しなければなりません。鉱業部門では銅を増産して鉄道電化に必要な銅を保障しなければなりません。鉱業部門が保守主義と経験主義を打破し、設備を大型化、高速度化するならば、鉄道の電化に必要な銅は十分増産できるでしょう。車両工場では鋼板かなくて60トン積みの重貨車を多く生産していませんが、金属工業部門で60トン積みの重貨車生産用の銅板を円滑に保障すべきです。

 鉄道では、貨物の積み下ろし作業を速やかに機械化すべきです。

 鉄道運輸部門で貨物の積み下ろし作業を機械化することなしには、貨車の回帰日数を短縮することができません。私は解放直後から鉄道運輸部門で貨物の積み下ろし作業を機械化するよう強調し、党中央委員会総会でも再三決定書を採択しました。しかし、鉄道運輸部門では、まだ党の決定を貫徹していません。

 貨物の積み下ろし作業の機械化はそれほど複雑でむずかしいことでもありません。貨物駅と企業所の構内線にクレーンをすえつければよいのです。そして、貨物列車がはいってくればクレーンでいちはやく貨物をおろし、運びだす貨物を積みこめはよいのです。

 鉄道運輸部門で集中輸送システムを広く導入すべきです。

 集中輸送システムは、貨物列車が途中の駅で貨物をおろさないで目的地まで行く輸送システムです。集中輸送システムを広く導入すれば、石炭、鉱石などの多量貨物を迅速に運搬することができ、鉄道の緊張をほぐすことができます。それゆえ、私は最近、集中輸送システムを広く導入するようしばしば強調し、列車の編成方法についても具体的に話しました。

 鉄道運輸部門における列車編成をみると、石炭を積んだ貨車を数両、木材を積んだ貨車を数両、小口貨物を積んだ貨車数両というように、さまざまな貨物を積んだ貨車を混成編成しています。そのため貨物列車を駅ごとに停車させなければならず、駅で貨車を切り離したり、連結するのに多くの時間を費やします。列車編成をこのようにしたのでは、貨車の回帰日数を短縮することができず、多くの貨物を運ぶことができません。

 列車編成は、集中輸送する貨物と各駅輸送する貨物をわけておこなうべきです。多量貨物は集中輸送できるよう列車を編成すべきです。例えば、石炭を興南肥料工場に輸送するとすれば、石炭を積んだ貨車だけで列車を編成して興南肥料工場まで直行させるようにすべきです。このように、石炭や鉱石など多量貨物は集中輸送し、小口貨物は各駅輸送にすべきです。

 鉄道運輸と同時に、海上運輸を速やかに発展させなければなりません。

 最近わが国は、社会主義諸国だけでなく資本主義諸国、新興独立諸国とも対外貿易をさかんにおこなっていますが、これに輸送が追いついていけないのが現状です。海上運輸を速やかに発展させることなしには、対外貿易輸送を円滑に保障することも、輸送の緊張を解消することもできません。

 海上運輸の速やかな発展をはかるためには、大型貨物船を多く建造しなければなりません。

 船舶工業部門では、1万トン級以上の大型貨物船を第1段階では年に10隻ずつ、次の段階では年に20隻ずつ建造するたたかいを繰り広げるべきです。こうして近い将来、1万トン級以上の大型貨物船を100隻以上保有しなければなりません。そうして、はじめて対外貿易を広くおこなうことができます。

 1万トン級以上の大型貨物船を多く建造すると同時に、中国、香港、日本など近国との貿易や国内輸送用の5000トン級、3000トン級、1500トン級の貨物船も多く建造すべきです。

 大型貨物船を多く建造するために造船所を充実させ、鋼板など船舶の建造に必要な各種設備と資材を適時に十分供給すべきです。

 海上運輸の発展のためにはまた、港湾建設を立派におこなうべきです。

 港湾建設では新たに大きな港湾を建設しようとばかりせず、現在の港湾を充実させるべきです。現在わが国には、東海岸に清津港、金策港、新浦港、元山港をはじめ、大きな港が多く、西海岸にも海州港、南浦港など港が少なくありません。これらの港を整備するならば、輸送能力と通過能力をいちだんと高めることができます。それゆえ、現在の港での貨物の積み下ろし作業を機械化し、荷積み場を近代化しなければなりません。

 新たな港湾も建設しなければなりません。大同江は大型船舶も航行できるので、川の沿岸に港を建設し、この川を利用して貨物を大量に輸送しなければなりません。大同江沿岸に港を建設するのはさほど骨のおれることではありません。埠頭を建設し、貨物の積み下ろし施設を設ければよいのです。

 次に、機械工業をこれからも大いに発展させなければなりません。

 技術革命は、すなわち機械革命であり、工業革命であります。人民経済各部門を機械化、オートメ化して勤労者を骨のおれる労働から解放し、物質的富をより多く生産するためには機械工業を発展させなければなりません。

 機械工業部門では特注設備と大型機械の生産を増大させ、船舶工業と採取工業の発展と農業の近代化に要する各種機械設備をより多く製作して、勤労者を骨のおれる労働から解放するための3大技術革命の遂行に極力寄与すべきです。

 基本建設部門では建設を集中化する党の方針を貫かなければなりません。現在、建設を分散しすぎているので、資材と労働力を合理的に利用できません。建設部門では資材と労働力を分散させずに、主要建設対象に集中させなければなりません。

 軽工業部門では製品の質を決定的に高め、これまでにきずいた軽工業の土台を効果的に利用するため大いに努力しなければなりません。

 我々は、ここ数年のあいだに紡織工場、メリヤス工場、被服工場、製靴工場、食品工場など各種軽工業部門工場を多く建設し、穀物加工工場もほとんどすべての道に建設しました。すでに建設した軽工業部門の工場、特に、穀物加工工場を完全に稼働させるならば、人民生活をいちだんと高め、国家歳入も少なからず増やすことができます。

 社会主義大建設を力強くおし進めるうえで最も重要なのは、企業管理でテアン(大安)の事業体系を確立することです。

 国家経済機関の活動家は、テアンの事業体系についてしばしば口にしながらも満足に取り入れていません。これは党性の欠けたあらわれであり、党に忠実でない態度です。国家経済機関の活動家は、企業管理においてテアンの事業体系を確立するため積極的に努力しなければなりません。

 テアンの事業体系を確立する活動は政務院から先にはじめるべきです。政務院副総理と政務院の相や委員長は、テアンの事業体系にもとづいて経済活動を指導する確固とした決心をもつべきであり、テアンの事業体系に反する傾向とは容赦なく思想闘争をおこなうべきです。

 計画の一元化システムは、チョンサンリ(青山里)精神とテアンの事業体系を具現した最もすぐれた計画化システムであります。我々は地方と各企業所に国家計画委員会直属の計画機関と計画部署を設け、整然とした計画の一元化システムを確立しました。国家経済機関の幹部は、計画の一元化システムを正しく活用して計画化を正しくおこなうのか当然ですが、そうしていません。計画の一元化を正しく実現しないので、計画化と人民経済の指導においてさまざまの欠陥があらわれています。計画の一元化を徹底させていたならば、500万個の生産能力をもつベアリング工場を建設したにもかかおらず、100万個のベアリング生産計画を立てるようなことはなかったはずであり、多くの機関車を修理せずに放置しておきながら、古い機関車を輸入しようと提案するようなこともなかったはずです。

 社会主義大建設をいっそう力強くおし進めるためには、行政・経済活動に対する党の指導を強化しなければなりません。

 我々は、経済活動に対する党の指導を強化し、経済指導機関の党組織が広く生産者大衆の意見をくみ上げることができるよう、政務院の省や委員会に、当該部門の幹部と、工場、企業所で生産に直接参加している労働者を組み合わせて党指導委員会を構成し、その運営方法についても教えました。もし、これまで政務院の省や委員会に党指導委員会を正しく構成し、着実に運営していたなら、党内に民主主義が十分に発揮され、党指導委員会が生産者大衆の意見に大いに耳を傾け、経済活動に対する党の指導を正しくおこなうことができたでしょう。しかし、政務院の省や委員会の党指導委員会を正しく構成できなかったばかりか、それを円滑に運営することもできませんでした。今後、政務院の省や委員会の党指導委員会は、当該部門の幹部と工場、企業所で働いている労働者をとりあわせて構成し、それを着実に運営して経済活動に対する党の指導を決定的に強化すべきです。

 政務院にも党指導委員会を組織して政務院の活動の指導にあたらせるべきです。政務院党指導委員会が政務院の活動で提起されるすべての問題を討議決定し、政務院にまねして法律化すべきものは法律化して執行させるならば、すべての活動が手落ちなくおこなわれ、行政・経済活動に対する党の指導がさらに強化されるでしょう。

 最後に、3大革命グループ運動について簡単にふれたいと思います。

 社会主義・共産主義を成功裏に建設するためには、必ず思想、技術、文化の3大革命を遂行しなければなりません。

 わが党はかなり以前に3大革命のスローガンをうちだし、それを遂行するたたかいを繰り広げてきました。ところがこれまで党組織は、3大革命を遂行する闘争を強力におし進めませんでした。それで我々は3大革命を推進するため、1972年の秋、テストケースとして党組織から選抜された優秀な活動家と知識のある大学生で指導グループを組織し、軽工業部門の工場に派遣しました。その結果、彼らは立派な成果をあげました。党中央委員会政治委員会は、3大革命グループ運動をいっそう深化発展させることに決定し、3大革命グループを工場、企業所、協同農場をはじめ、人民経済各部門に派遣しました。

 3大革命グループ運動をはじめて2年たちましたが、その間多くの成果が達成されました。思想、技術、文化の3大革命遂行で大きな前進が遂げられ、全般的社会主義建設で大きな成果が達成されました。もし、我々が3大革命グループ運動を繰り広げなかったならば、農業生産も高めることができず、工業生産でもこんにちのような成果は望めなかったでしょう。

 わが党の示した3大革命のスローガンは極めて立派なスローガンです。

 我々は、今後も3大革命グループ運動を力強くおし進めていかなければなりません。

 3大革命グループ運動を力強くおし進めるためには何よりも、党組織が3大革命グループ運動に対する指導を正しくおこなわなければなりません。

 これまで一部の党組織は3大革命グループ運動を正しく指導せず、3大革命グループの活動を積極的に援助しませんでした。もし、これまで党組織が3大革命グループを十分援助し、3大革命グループ運動に対する指導を正しくおこなっていたならば、思想・技術・文化革命の遂行でより大きな発展がもたらされたでありましょう。

 党組織は、3大革命グループ運動を自己の活動とみなして積極的に援助し、3大革命グループと協力して思想、技術、文化の3大革命課題を徹底的に実行しなければなりません。

 3大革命グループ運動を力強くおし進めるためにはまた、党および行政・経済機関の幹部が闘争対象となるべきではなく、この運動の先頭に立つべきです。幹部は3大革命グループの意見を謙虚に受け入れ、彼らの創意的意見が実現するよう助力しなければなりません。

 党中央の親衛隊、近衛隊にふさわしく、3大革命グループは党政策に反する行為、主人らしさの欠けた形式的な活動態度、口先ばかりで党の政策をよく実行しない傾向に対して鋭い闘争を繰り広げなければなりません。3大革命グループは古い思想に毒されることなく、高度の革命性を堅持しなければなりません。

 我々が、党、政権機関、人民軍を強化し、社会主義大建設を力強くおし進め、我々の革命基地を政治的、経済的、軍事的にいっそう強化するならば、いかなる嵐をもつきぬけて革命的大事変を成功裏に迎えることができます。

 私は、皆さんが党中央委員会のまわりにいっそうかたく団結し、3大革命の旗を高くかかげ、全党員と勤労者の先頭に立って党の路線と政策を貫くために勇敢にたたかい、迫りくる革命的大事変を主動的に迎え、朝鮮革命の完全な勝利と世界革命の全般的な勝利に大いに寄与するよう望んでやみません。


注  釈

 苦難の行軍 金日成将軍の率いる朝鮮人民革命軍主力部隊が、抗日武装闘争時期の1938年12月初から100余日にわたり、おり重なる難関と試練をのりこえて南牌子から鴨緑江沿岸の国境地帯へ進出した歴史的な行軍。
 日本帝国主義者は、行軍の途についた朝鮮人民革命軍の主力部隊を包囲、攻撃する目的で膨大な兵力を動員した。間断なくつづく苛烈な戦闘と零下40度の酷寒、背丈をこす積雪と食糧の欠乏などは朝鮮人民革命軍の前進に大きな難関をつくりだしたが、いかなる難関や試練も朝鮮人民革命軍の行く手をさえぎることはできなかった。金日成将軍は、朝鮮人民革命軍隊員の革命的闘志を鼓吹する一方、すぐれた用兵術で敵を撃破しつつ部隊の行軍を勝利へ導いた。

 打倒帝国主義同盟 1926年10月17日、金日成主席によって結成された組織。(略称「トゥ・ドゥ」)
 打倒帝国主義同盟は、チュチェの革命偉業を勝利へ導くための前衛組織であり、朝鮮で初の真の共産主義的革命組織であった。
 打倒帝国主義同盟は、朝鮮の解放と独立をなし遂げ、朝鮮に社会主義・共産主義を建設し、さらには世界における共産主義の勝利をめざしてたたかうことを綱領としてかかげた。
 打倒帝国主義同盟の結成は、朝鮮革命の新たな出発を告げる歴史的な宣言であった。「トゥ・ドゥ」の結成により、朝鮮人民の革命闘争は事大主義、教条主義などあらゆる古い思潮と決別し、自主性の原則にもとづいて前進する新しい時代を迎えるようになり、朝鮮共産主義運動と民族解放運動は正確な闘争目標と戦略・戦術をもって力強く展開されるようになった。
 打倒帝国主義同盟の結成はまた、朝鮮における新しい型の革命的党建設の起点となり、まさに「トゥ・ドゥ」から朝鮮労働党の栄えある根がおりはじめた。

 華成義塾 朝鮮の民族主義者が独立軍の幹部養成を目的に設立した2年制の政治・軍事学校。所在地は樺甸県の樺甸であった。この学校の教育内容は民族主義で一貫され、軍事教育が基本であった。軍事教練は旧式軍隊のものを踏襲していた。
 金日成主席は、1926年6月、華成義塾に籍をおき、朝鮮革命の新しい闘争の道を探求した。
 金日成主席は、朝鮮革命の新しい闘争の道を切り開くためには、朝鮮革命の前衛組織を結成しなければならないと認め、革命同志の糾合からはじめて綿密な準備をととのえたあと、1926年10月17日、樺甸で打倒帝国主義同盟を結成した。

 卡倫倫会議 1930年6月30日から7月2日にかけて、金日成主席の指導のもとに長春県卡倫で開かれた共青および反帝青年同盟の幹部会議。
 金日成主席は、会議で『朝鮮革命の進路』と題した歴史的な報告をおこなった。
 主席はこの報告で、チュチェ思想にもとづいて朝鮮革命の性格と任務を科学的に規定し、抗日武装闘争路線と反日民族統一戦線路線、革命的党の創立方針をうちだした。?倫会議は、チュチェ思想の創始とチュチェの革命路線の誕生を告げる歴史的な会議であった。

 金亨権(1905・11・4~1936・1・12) 金日成主席の叔父。熱烈な革命闘士、不屈の共産主義者。
 金亨権同志は、朝鮮における反日民族解放運動の卓越した指導者である実兄金亨稷先生の指導のもとに、早くから祖国解放のため鴨緑江をまたにかけて精力的な革命活動を繰り広げた。
 その後、共青の活動にたずさわっていた金亨権同士は、1930年7月、金日成主席によって結成された朝鮮革命軍に参加し、1930年8月には朝鮮革命軍の一グループを率いて国内に進出し、豊山、徳城、利原、北青、洪原一帯で日本警察と数回にねたる戦闘をおこなって敵に甚大な打撃を与える一方、広範な人民のあいだで活発な政治活動を展開した。1930年9月・裏切者の密告によって洪原で日本警察に逮捕され、15年の長期刑を言い渡された。
 その後、監獄と公判廷で不屈の闘争を展開し、獄死した。
                                                
出典:『金日成著作集』30巻 

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