金 日 成

ダオメー政府機関紙『ダオ・エクスプレス』社長との談話
−1974年9月19日−


 私は、あなたが我が国を訪問し、共和国創建記念行事に参加してくださったことに感謝しています。あなたは国慶節の行事に参加して、我々の祝日にいっそう光をそえてくれました。

 あなたは昨年我が国を訪問し、帰国後我が国について広く紹介し宣伝してくれました。あなたは、このたび再び来訪して、朝鮮人民の正義のたたかいを積極的に支持声援しています。私は、これにたいしてあなたに謝意をあらわします。

 あなたからいろいろな問題について質問をうけましたので、それらについてお話したいと思います。

 まず、朝鮮とダオメーの関係発展の問題と、第三世界諸国の団結の問題について簡単に話しましょう。

 朝鮮人民とダオメー人民は、帝国主義と植民地主義に反対し、自主権を守る闘争で互いに支持、協力しあい、友好関係を結びました。

 特に、1973年2月、朝鮮民主主義人民共和国政府とダオメー軍事革命政府が外交関係を結んだことは、両国の友好・協力関係の発展にとって画期的な出来事でした。

 朝鮮とダオメーのあいだに外交関係が結ばれて以来、ダオメー政府と人民は、朝鮮人民の祖国統一偉業をいっそう積極的に支持しています。ダオメーは今回の国連総会で、朝鮮問題にかんする我が方の決議案を積極的に支持しています。

 我々は、これをたいへん満足に思っています。帰国されましたら、貴国の元首と外相および政府の指導的幹部のみなさんに、我々のあつい感謝の気持ちを伝えてくれるよう望みます。

 あなたがいわれたように、朝鮮とダオメーの友好・協力関係をいっそう強めるためには、なおなすべきことがたくさんあります。

 なによりも朝鮮人民とダオメー人民が政治的により緊密に支持し協力しあう必要があると思います。

 両国人民は、かつて帝国主義者に抑圧され搾取されてきた人民であり、いまは共通の目的をもって新しい社会を建設するためにたたかっている人民です。過去の境遇の共通性と現在の闘争目的の共通性から、両国人民は真の平等と互恵の原則に立って支持しあい、緊密に協力していけるのです。

 今後、両国人民は頻繁に往来し、有益な経験も大いに分かちあい、正義の偉業を積極的に支持し励ましあうべきだと思います。そうすれば、我々は互いに理解を深め、友好をいっそう強めることができるでしょう。

 朝鮮民主主義人民共和国政府と朝鮮人民は、新しい生活の創造をめざすダオメー人民の正当なたたかいを、常に積極的に支持声援するでしょう。

 朝鮮人民とダオメー人民の友好を強めるためには、政治的に支持声援しあうとともに、経済、技術面での協力も積極的におこなわなければなりません。

 経済、技術面での協力を強めることは、国家間の友好を強めるうえで重要な意義をもちます。朝鮮民主主義人民共和国政府は、今後ダオメー共和国と経済、技術面での協力を強めるため積極的に努力するでしょう。

 かつて抑圧され搾取されてきた第三世界諸国が有無相通ずる原則に立って経済交流と技術協力を強めることは、強大国に頼らず国の経済をすみやかに発展させ、富強な自主独立国家を建設する重要な裏付けとなります。第三世界諸国は、政治的に団結するばかりでなく、経済、技術、文化のすべての分野にわたって緊密に協力しなければなりません。

 帝国主義者と植民地主義者は、人民の圧力と闘争に屈して多くの国の民族独立を承認したものの、その野望は変わっていません。かれらは、新植民地主義政策によって新興独立諸国を再び従属させようと策動しています。

 あなたがたも体験したように、帝国主義者と植民地主義者は、新興独立諸国を再び従属させるために転覆活動を頻繁におこなっています。このような状況のもとで、第三世界諸国は戦闘的な団結と協力を強め、既にかちとった民族の独立を強固にし、すみやかに国の繁栄をもたらさなければなりません。第三世界諸国が既にかちとった民族の独立を強固にし、すみやかに国の繁栄をもたらすためには、経済、技術面での協力と交流を活発にすることが極めて重要です。

 第三世界諸国はみな、互いに交流しあえるすぐれた経験や技術をいくつかずつはもっています。

 最近ペルーの記者と会見したときにも話したことですが、ペルーでは魚類の加工技術が進んでいるので、我々はペルーからそれを学ぶことができます。我々は、ダオメーからも立派な経験や技術を学ぶことができると思います。

 我が国にも外国に提供できるすぐれた経験や技術があります。例えば、水利化の経験をあげることができます。我が国では農業の水利化が立派にできています。我々はこれをたいへん誇りに思っています。我々は、水利化の経験を第三世界諸国に提供することができます。

 現在、第三世界に属する国は百余りありますが、これらの国がすぐれた経験と技術を一つずつ出しあっても、百余りの立派な経験と技術を得ることができます。第三世界諸国はこれだけを交換しても、大きな問題を解決することができます。こんにち第三世界諸国は、主に2つの面で強大国に依存しています。その1つは強大国から資金を借りることであり、もう1つは技術の提供をうけることです。第三世界諸国が、互いに教えあい援助しあって、経済、技術面での協力を強めるなら、強大国に頼らなくても国の繁栄をもたらすことができます。

 我が国の経験は、人民が団結し力を合わせれば、不可能なことはないということを示しています。

 戦後、我が国は非常に困難な状態におかれていました。戦争によって、我が国ではすべてが廃墟と化しました。このような状況のもとでは、人民が力を合わせないことには生きていくことができませんでした。そこで我々は、国の工業化はなされてはいませんでしたが、農村で協同化をおこなうことにしました。我が国ではまず、生活の苦しい貧農で農業協同組合が組織されました。近代的な機械はなくても、農民が一つに団結したので大きな力が生まれ、協同経営の優位性がはっきりとあらわれました。我々は、農業の水利化も農民の力を合わせておこないました。

 もちろん、これは我が国の経験です。しかし、貧しい人たちも力を合わせれば大きな力を発揮し、大きな事業をなしうるということは、世界的な範囲でも適用しうる経験だと思います。

 第三世界諸国が団結し、互いに力を合わせれば大きな事業をなし遂げることができ、国の経済と文化、科学と技術を早く発達させることができます。

 第三世界諸国は、資源を保護するたたかいにとどまらず、経済、技術面での協力も強め、一日も早く富強を国を建設すべきです。こうして、かつて世界で主人のようにふるまっていたごく少数の強大国にかわって、これからは第三世界の人民が世界の主人としての役割を果たさなければなりません。

 朝鮮民主主義人民共和国政府は、第三世界諸国と団結し、経済、技術面での協力を強めることを対外政策の重要な原則としています。

 我が共和国政府と朝鮮人民は、これまでと同様、今後も反帝・自主の旗を高くかかげて第三世界の人民と団結し、経済、技術面での協力を強めるため積極的に努力するでしょう。

 次に、解放をめざしてたたかうアフリカ人民にたいする我々の立場を簡単に話しましょう。

 こんにち、アフリカ大陸では自主の旗のもとに、植民地主義のいっさいの残りかすを終局的に一掃し、新しい社会の建設をめざす人民のたたかいが力強くくりひろげられています。かつて帝国主義、植民地主義の抑圧のもとに苦しんでいたアフリカの多くの国の人民が、既に独立をかちとって自主的発展の道を歩んでおり、国際舞台に登場して重要な役割を果たしています。

 特にこんにち、アフリカ大陸では植民地主義の鎖を断ち切って民族独立をかちとるための民族解放闘争がかつてなくもりあがっています。ギニア・ビサウ、モザンビーク、アンゴラの人民は、長期の武力闘争をとおしてポルトガル植民地主義者に決定的な打撃を与え、偉大な勝利をかちとりました。

 アフリカ諸国人民のはげしい民族解放闘争によって、アフリカ大陸における帝国主義の植民地支配体制は終局的に崩壊しつつあります。この闘争をとおしてアフリカ人民は日ましにいっそう目覚め、偉大な革命勢力に成長しています。

 アフリカ諸国人民の反帝反植民地主義闘争は、帝国主義の従属から抜けだして民族独立をかちとり、新しい社会を建設するための正義の闘争であり、帝国主義、植民地主義の最後の生命線を断ち切る聖なるたたかいです。アフリカ諸国人民の正義の解放闘争は、こんにち世界の反帝革命偉業の遂行に大いに貢献しています。

 我々は、アフリカ諸国人民が反帝・自主の旗のもとにかたく団結し、力強くたたかって、必ず帝国主義と植民地主義のないアフリカ、自由で繁栄する新しいアフリカを建設するものと確信しています。

 朝鮮民主主義人民共和国政府と朝鮮人民は、自由と解放をめざす諸国人民のたたかいを支持声援することを対外政策の重要な原則としており、気高い国際主義的義務とみなしています。

 私は、朝鮮民主主義人民共和国政府と朝鮮人民の名で、民族の独立をかちとり、植民地主義の残りかすを一掃し、国の自主的発展をめざすアフリカ諸国人民のたたかいを断固支持し、かれらにかたい戦闘的連帯を送ります。

 あなたは、朝鮮人民が社会主義建設で輝かしい成果をおさめる要因となった、チュチェ思想について話してほしいといわれました。チュチェ思想にかんする我々の文章が既にたくさん発表されているので、それについて長々と話す必要はないと思います。

 あなたが正しく指摘したように、チュチェ思想は新しい生活を創造するたたかいで朝鮮人民に輝かしい成果をもたらした決定的な要因です。

 チュチェ思想は、朝鮮革命の指導思想であり、社会主義・共産主義建設をめざす朝鮮人民のたたかいで確固とした指導指針となっています。我が党のすべての路線と政策はチュチェ思想に根ざしており、チュチェ思想を具現しています。朝鮮人民はチュチェ思想でしっかり武装し、チュチェ思想を唯一の指導指針としてたたかったので、歴史的に極めて短い期間に帝国主義の植民地支配の後遺症と長いあいだの立ち後れを一掃し、偉大な社会経済的変革をなし遂げることができました。

 チュチェ思想は、革命と建設の主人は人民大衆であり、革命と建設をおし進める力もまた人民大衆にあるという思想です。言いかえれば、自己の運命の主人は自分自身であり、自己の運命を切り開く力も自分自身にあるという思想です。

 革命と建設の主人は勤労人民大衆です。勤労人民大衆はただみずからの闘争によってのみ、侵略者と圧政者を打ち倒して自由と解放をかちとることができ、豊かで文化的な新しい生活をきずくことができます。

 勤労人民大衆には、自然と社会を改造する力があります。自然を征服して物質的富をつくりだすのも勤労人民大衆であり、古い社会をくつがえして新しい社会を建設するのも勤労人民大衆です。この世に勤労人民大衆よりも力があり知恵のある存在はありません。

 革命闘争と建設事業は、勤労人民大衆があらゆる従属から抜けだし、自然と社会の真の主人として自主的で創造的な生活を享受するための闘争であり、勤労人民大衆が自己の運命を切り開くための事業です。勤労人民大衆は革命の主人としての自覚をもって自己の運命を切り開くたたかいに立ち上がるとき、底知れない知恵と創造力を発揮し、革命と建設を非常に早いテンポで前進させることができます。勤労人民大衆が革命の主人としての自覚をもって、革命と建設に主人らしく参加することを要求するチュチェ思想が、新しい生活の創造をめざす朝鮮人民の闘争を力強くおし進める推進力に、朝鮮人民のすべての勝利を確固と裏付ける指導指針になっている根拠はまさにここにあるのです。

 チュチェ思想が社会主義建設にどのように具現されているかという質問でしたが、それについて簡単に話しましょう。

 チュチェ思想を具現するうえで大切な問題は、思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛の原則を貫くことです。

 人間のすべての活動を規制するのはその思想・意識です。したがって、社会主義建設で勤労人民大衆の自覚的熱意と創造的積極性を余すところなく発揮させるためには、勤労人民大衆が革命の主人としての自覚をもって革命闘争と建設事業に主人らしく参加するようにする問題、言いかえれば、思想において主体性を確立する問題がまず解決されなければなりません。

 我が党は、勤労人民大衆をチュチェ思想で武装させ、かれらが主体的立場にしっかりと立って、革命闘争と建設事業に主人らしく参加するようにさせることに第一義的な関心を払ってきたし、いまもそうしています。

 個々の国の人民が自己の運命の真の主人となるためには、自主的な政権をもち、政治において確固と自主性を堅持しなければなりません。貴国の元首が政治的自主性を強調しているのは極めて正しいことだと思います。個々の国の人民は、自国の革命の利益と自国の実情に即してすべての路線と政策を決定しなければなりません。外国の圧力や指示によって動く政権は、自国の人民の運命にたいして責任を担っている政権とはいえず、政治的に自主性のない国は、事実上、自主独立国家とはみなせません。

 我が党と共和国政府は、完全な平等と相互尊重の原則に立って外国との政治関係を発展させており、社会主義建設で提起されるすべての問題を自己の定見によって、朝鮮人民の利益と我が国の実情に即して解決する原則を堅持しています。我々は、外国の経験を取り入れる場合にも、我が国の革命と人民の利益にかなうものたけを選び、我が国の実情に即して受け入れる原則を堅持しています。言いかえれば、我々はなんでも一度味わってみて気にいれば呑みくだし、気にいらなければ吐き出してしまう原則を堅持しています

 政治的自主性とともにまた、経済における自立性を保障することが重要です。経済は社会生活の物質的な基礎です。政治的に完全な自主性を保つためには、必ず経済的に自立しなければならず、経済的に自立するためには、多面的に発達し、みずからのしっかりした原料基地をもち、そして現代技術で装備された民族経済を建設しなければなりません。我々は、自国の資源と技術、人民の労働によって国と人民の経済生活を自力でまかなえる経済を建設するという自立経済建設路線を貫いた結果、かつて立ち後れた植民地農業国であった我が国を、極めて短い期間に自立的経済の強固な土台をもつ社会主義工業国にかえました。

 国防における自衛を保障することは、自主独立国家の不可欠の要求です。帝国主義者の侵略から国の自主権と人民の安全を守る自衛的な防衛力をもたない国は、完全な自主独立国とはいえません。我々は、国防における自衛路線を堅持し、人民軍の幹部化と現代化、全人民の武装化、全国土の要塞化を実現するたたかいを強力に進めて、祖国の安全と自主権を立派に守れる鉄壁の防衛力をきずきあげました。

 植民地的従属から解放された国が自主独立国家を建設するためには、必ず政治における自主、経済における自立、国防における自衛の路線を堅持しなければなりません。そうしなければ、再び帝国主義者に従属させられる恐れがあります。

 2つに分裂し、それぞれ異なった道を歩んでいる我が国の南半部と北半部の現実がそのことをよく示しています。

 自主の道ではなく、外部勢力依存の道を歩んできた南朝鮮は、完全に米日帝国主義者に従属させられてしまいました。

 アメリカ帝国主義者から莫大な「援助」をうけている南朝鮮は、現在、60億〜70億ドルもの外国の債務を背負いこんでいます。これほど多額の債務を背負っているのですから、帝国主義者に従属させられるのは当然です。南朝鮮は、アメリカ帝国主義者がドルをくれなければたちまち軍隊さえ維持できなくなるありさまです。それで南朝鮮当局者は、アメリカ軍の南朝鮮長期駐留を哀願しているのです。

 このような南朝鮮をどうして独立国だといえましょうか。「国家」というのは名ばかりであって、実際には国家ではありません。南朝鮮は外国の軍事基地であり、商品市場であり、新植民地主義のくびきをかけられた従属「国家」です。

 南朝鮮には自立的民族経済がないので、人民は非常に苦しい生活をしています。南朝鮮では失業者の数が数百万にのぼり、絶対多数の人民が飢えと貧困にあえいでいます。南朝鮮の人たちの表現をかりると、南朝鮮の社会は「富益富、貧益貧」の社会です。これはごく少数の富める者はますます高み、絶対多数の貧しい人々はますます貧しくなるという意味です。人民を塗炭の苦しみにつき落としている南朝鮮当局者を、どうして民族的良心のある人間といえるでしょうか。

 南朝鮮とは異なり、自主路線を堅持している朝鮮民主主義人民共和国は、完全な政治的自主性と自立的民族経済、そして自衛的な国防力をもった堂々たる独立国です。自立的民族経済のゆるぎない土台をもっている我が国は、外国の債務を背負っていません。あなたの我が国訪問は2度目なのでよくわかると思いますが、我が国には「富益富、貧益貧」という現象はありません。我が国ではすべての人民がみなひとしくよい暮らしをしており、誰もがみな衣食住の心配をせずに、思う存分働き、無料教育をうけ、無料治療の恩恵にあずかっています。

 我が国の南半部と北半部の全く異なる現実は、南北がそれぞれ異なった政策を実施することによってもたらされたものです。我が国の現実は、新興独立国が外部勢力依存の道を歩めば再び帝国主義者に従属させられ、これとは反対に自主の道を進めば、独立を守り民族の繁栄をもたらすことができることを示しています。第三世界諸国の人民が新植民地主義のくびきをかけられることなく国の自主的発展を遂げるためには、必ず政治における自主、経済における自立、国防における自衛の革命路線を堅持しなければなりません。

 我が党の指導のもとに、朝鮮人民が進めてきた栄えある革命闘争の歴史は、思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛を実現する闘争の過程であったといえます。チュチェ思想の正しさとその偉大な生命力は、既に朝鮮人民の革命的実践をとおして実証されています。

 我が党と人民は、これまでチュチェ思想を具現して社会主義建設で偉大な成果をおさめたように、今後もひきつづきチュチェ思想を具現して、我が国で社会主義・共産主義建設をいっそう力強くおし進めていくでしょう。

 次に、我が国の統一問題について簡単に話しましょう。

 分断された祖国を統一することは全朝鮮人民の最大の民族的悲願であり、一刻も延ばすことのできないさし迫った課題です。我が国の南半部と北半部の全人民は、国の統一をひとしく熱望しており、祖国の自主的平和統一をめざして力強くたたかっています。

 祖国統一問題にかんする朝鮮民主主義人民共和国の立場は、既に世に広く知られています。我々は国の統一問題を、いかなる外部勢力の干渉もうけることなく朝鮮人民自身の手で、自主的に、民主主義的原則にもとづき、平和的な方法で解決することを主張しています。これは、我が共和国政府が祖国統一のたたかいで一貫して堅持している確固たる立場です。

 祖国の自主的平和統一をなし遂げるためには、なによりも朝鮮にたいするいっさいの外部勢力の干渉をやめさせなければなりません。

 アメリカ帝国主義者は、我が国が日本帝国主義の植民地支配から解放されてからこんにちまで、ほぼ30年ものあいだ南朝鮮を武力で占領しており、我が国の内政に無法な干渉をおこなっています。これは、我が国の統一を妨げる基本的な障害であり、我が民族のすべての不幸と苦痛の根源です。「国連軍」の帽子をかぶって南朝鮮を占領しているアメリカ帝国主義侵略軍を南朝鮮から追いだし、我が国にたいするアメリカ帝国主義の内政干渉をやめさせることは、祖国の自主的平和統一のための先決条件であり、全朝鮮人民の一致した要求です。

 アメリカ帝国主義者とともに我が国の内政に干渉している外部勢力は、日本軍国主義者です。日本軍国主義者は、南朝鮮をかれらの商品市場に、植民地にかえようとする目的から、アメリカ帝国主義の「2つの朝鮮」政策に積極的に追随しており、我が国にたいする再侵略の策動を悪らつに強行しています。それゆえ、朝鮮の自主的統一を実現するためには、南朝鮮からアメリカ帝国主義侵略軍を追い出すとともに、日本軍国主義者の南朝鮮再侵略策動を徹底的に粉砕しなければなりません。

 我が国にたいする外部勢力の干渉をやめさせるためには、南朝鮮の反動層は外部勢力に依存してはならず、国と民族を売る行為をやめるべきです。南朝鮮の反動層が外部勢力にすがらず、売国的反民族行為をおこなわなかったならば、南北朝鮮人民の団結した力によって、アメリカ帝国主義は既に南朝鮮から追い出されているはずであり、我が国にたいする外部勢力の干渉にもかなり前に終止符がうたれていたことでしょう。

 分断された祖国を民主主義的原則にもとづき、平和的な方法で統一するためには、南朝鮮社会の民主化を実現しなければなりません。こうして、南朝鮮で人民の民主主義的な権利と自由が保障され、すべての政党、大衆団体、それに個々の人士が政治活動を自由にできるようにしなければなりません。

 祖国の統一を民主主義的原則にもとづき、平和的な方法で実現するということは、南北朝鮮全人民の自由意思によって民主主義的な南北総選挙を実施し、統一的な中央政府を樹立する方法で国の統一を実現することを意味します。しかし、南朝鮮で現在のようにひどいファッショ支配がしかれ、民主主義が完全に抹殺されている状況のもとで、南朝鮮の人民が自分の意思を自由に表明し、民主主義的な南北総選挙を実施することはとうてい不可能です。南朝鮮社会の民主化を実現することは、分断された祖国を民主主義的原則にもとづき、平和的な方法で統一するための重要な条件であり、南朝鮮人民の最もさし迫った要求です。

 我々は国土が分断された当初から、祖国を自主的に、民主主義的原則にもとづいて、平和的な方法で統一するためにさまざまな合理的方案を示し、たゆみなくたたかってきました。我が党と共和国政府のねばり強い誠意ある努力によって、北と南の対話がはじまり、1972年7月には祖国統一をめざす我々の根本的立場を明らかにした南北共同声明が発表されました。

 我々の示した自主、平和統一、民族大団結の三大原則を基本内容とする南北共同声明が発表され、北と南の協商が実現したことは、祖国統一をめざす朝鮮人民のたたかいにおいて画期的な出来事でした。そのため、南北朝鮮の全人民はもとより、全世界の人民がこれをたいへん喜び、大きな希望と期待をかけて南北協商を注視しました。

 しかし、南朝鮮反動層の売国的反民族行為と民族分裂永久化策動によって、祖国統一の前途には新たな厳しい難関がつくりだされました。南朝鮮の反動層は、大勢の圧力と日増しに高まる南朝鮮人民の統一の気運に押されて我々との協商の場にでてはきたものの、協商では全く誠意を示さず、我々の示した合理的な提案をどれ一つとして受け入れませんでした。かれらは、かえって協商の幕裏で民族分裂永久化の策動と売国的反民族行為をつづけ、ファッショ化政策と戦争挑発策動をいっそう強化しました。そのために、北と南の協商は開始後3年になるこんにちまで、これといった進展を遂げていません。

 あなたは北と南の協商の結果についてたずねましたが、南朝鮮反動層の策動のために、北と南の協商が祖国統一の根本問題を解決するうえでまだ進展がなく、大きな難関に直面しているとしても、我々は協商の過程で尊い成果をおさめました。

 北と南の協商過程をとおして、祖国の統一をめざす我が共和国政府の正当な立場と、祖国の統一を妨げる南朝鮮反動層の謀略策動が全世界にいっそうはっきりと示されました。南朝鮮人民と世界の人民は、朝鮮で誰が真に国の統一を願い、誰が分裂を求めているのか、誰が真の愛国者であり、誰が売国奴であるかをいっそうはっきりと知るようになりました。

 北と南の協商過程をとおして南朝鮮の人民はいっそう革命的にめざめ、祖国の統一を妨げる南朝鮮反動層に反対する闘争に敢然と立ち上がるようになりました。そして、朝鮮人民は、祖国の統一をめざすたたかいで、世界のますます多くの人民から支持と共感を得るようになりました。

 祖国統一のたたかいで、朝鮮人民の前途には依然として大きな障害と難関が横たわっています。しかし、全世界の進歩的人民の積極的な支持声援のもとに、南北朝鮮人民がかたく団結してねばり強くたたかうならば、祖国統一の歴史的偉業は必ず成就されるでしょう。

 次に、我が国の社会主義建設について話しましょう。

 朝鮮労働党と我が共和国政府は、社会主義建設で3つの革命課題、すなわち思想革命、技術革命、文化革命の課題をうちだし、その実現のためにたたかっています。

 社会主義・共産主義を成功裏に建設するためには、必ず思想的要塞を占領する闘争と物質的要塞を占領する闘争をともに力強くおし進めなければなりません。歴史的経験は、物質的土台をきずくたたかいだけでは社会主義・共産主義を成功裏に建設することができないことを示しています。

 我が党は、以前から思想革命、技術革命、文化革命のスローガンをうちだし、思想的要塞と物質的要塞をともに占領するたたかいを力強く進めてきました。

 我々のおこなっている思想革命は、人々の頭に残っている古い思想を根こそぎにし、人々を革命化、労働者階級化するたたかいです。

 我々は思想革命をおこなううえで、組織生活をとおして勤労者を教育することに大きな力をそそいでいます。

 我が国では、すべての勤労者が一定の組織に加わって組織生活をおこなっており、組織生活をとおして思想的鍛練をおこなっています。青年は社会主義労働青年同盟の組織生活をおこない、女性は女性同盟の組織生活を、学校にかよう子供たちは少年団の組織生活をおこなっています。そして、党員は党生活をし、労働者は職業同盟の組織生活を、協同農民は農業勤労者同盟の組織生活をおこなっています。

 組織生活における基本は学習です。現在我が国では、すべての勤労者が熱心に学習しています。

 学習でいちばん大切なのは、すべての勤労者が我が党の唯一思想、チュチェ思想で武装することです。朝鮮革命を立派におこなうためには、すべての勤労者が朝鮮革命の指導思想である我が党の唯一思想、チュチェ思想で武装しなければなりません。もし、我が党内に、我が党の思想で武装せず、ほかの党の思想をもった人がいるなら、そういう人は我が党の人とはいえないでしょう。こんにち我が国の勤労者は誰でもチュチェ思想で武装しており、我が党のまわりに一つの思想、一つの意志でかたく団結しています。

 勤労者の教育で重要な問題の一つは、すべての人が労働を愛し、労働の結果を大切にするようにさせることです。労働は社会の物質的富を創造する、極めて神聖で栄誉あるものです。それで我々は、すべての人が労働を好み、労働規律を自覚的に守り、労働のたまものである社会主義の獲得物を熱烈に愛し、極力保護するように教育しています。

 いま我が国では、思想革命とならんで技術革命も成功裏に進められています。

 労働者階級の政権に課された重要な課題は、帝国主義と資本主義の抑圧と搾取から解放された勤労者を骨のおれる労働からも完全に解放することです。

 我が党第5回大会は、勤労者を骨のおれる労働から解放するための三大技術革命の課題をうちだしました。我が党のうちだした三大技術革命の課題は、重労働と軽労働の差、農業労働と工業労働の差を著しく縮め、女性を家事の重い負担から解放することです。

 我々は既に、三大技術革命の課題遂行で大きな成果をおさめました。骨のおれる労働が最も多い部門である採掘主業と水産業、林業部門で機械化と総合的機械化が広く取り入れられ、労働者は少なからず重労働から解放されました。

 農業部門でも技術革命が力強くおし進められています。我が国の農村では、既にかなり前に水利化が実現し、農村の電化も立派に完成しました。いまでは農業の機械化と化学化を完成するたたかいが強力にくりひろげられています。我が国の農村で脱穀や製粉、精米作業は既にかなり前にすべて機械化されました。今年の春は多くの水田に機械で田植えをおこない、いまはまた機械で収穫をおこなう準備を積極的に進めています。現在我が国の農村には、トラクターが耕地面積百ヘクタール当たり平地で4台、中間部と山間部では3台がゆきわたっています。

 農村技術革命が成功裏に進められた結果、我が国では毎年豊作をむかえています。今年は、昨年よりもはるかに多い穀物が生産されるものと見込んでいます。我が国では食糧を自給自足しており、穀物の一部は人民生活を向上させるため畜産業にふり向けられています。

 女性を家事の重い負担から解放する技術革命の課題も着々とはかどっています。女性に男性と同等の政治的権利を与えるだけでは、女性解放問題を完全に解決したとはいえません。人口の半分をしめる女性に男性と同等の権利を与えるばかりでなく、社会主義建設に積極的に参加できるいっさいの条件を十分に保障しなければなりません。そうしてこそ女性の真の解放が実現し、女性を労働者階級化することができます。

 こんにち我が国では、女性が社会主義建設と社会・政治生活に積極的に参加できるよう、女性を家事の重い負担から解放する仕事に大きな力をそそいでいます。国では、都市と農村のいたるところに託児所や幼稚園をたくさん建て、350万の幼児を国と社会の負担で保育しています。こうして女性の育児の負担を軽くしています。これとともに、農村の水道化が活発に進められていますが、これが完成すれば、我が国の女性は水かめを頭にのせて運ぶ仕事から永久に解放されるでしょう。

 文化革命の課題も成功裏に遂行されています。

 いま我が国では、1年間の就学前義務教育と10年間の学校義務教育を与える11年制義務教育を実施しています。11年制義務教育の実施によって、我が国の育ちゆくすべての新しい世代が国家の恩恵で完全な中等一般教育をうけられるようになりました。

 我々は、すべての勤労者の一般知識水準を中学卒業程度以上に高めるために努力しています。我々は、かつて学べなかった40代以上の人もすべて勤労者中学にかよわせて、中学卒業程度の知識を身につけるようにさせています。また我々は、すべての勤労者が1つ以上の技術を学ぶようにしています。こうして、かつて技術文明から立ち後れていた我が国勤労者の技術・文化水準を早急に高める考えです。

 我々は、民族幹部の養成に大きな力を傾け、既に60万以上の技術者、専門家を養成し、近い将来その隊列を百万に増やそうとしています。現在我が国には140余の各種大学があるので、技術者、専門家の隊列を百万に増やす目標は遠からず達成されるものと思います。我々はいま、すべての勤労者を労働者階級化するためにたたかっていますが、ゆくゆくはかれらをすべてインテリ化するつもりです。言いかえれば、すべての勤労者を高い文化・技術知識をそなえた社会主義・共産主義建設者にしようというのです。

 全人民に学習をさせるのは、我が国の文化革命の基本方針だといえます。いま我が国では、事実上すべての人民が学習をしています。我々は全党、全人民、全軍が学習しようというスローガンをかかげてたたかっており、幹部が学習で先頭に立っています。党と国家経済機関の活動家や工場、企業所の管理幹部は、毎日仕事を終えたのち2時間以上学習し、毎週水曜日には講演会に参加し、土曜日には半日、集団的に学習をおこなっています。そればかりでなく、すべての幹部が思想・技術・文化水準を早く高めるために、職場に籍をおいたまま毎年1か月間、学校で義務的に勉強しています。このように、我々は全人民が学習する体系を徹底的にうちたてました。

 我が国の社会主義建設がこのように順調にはかどっているのは、なによりも我が党の路線と政策が正しいからです。

 党と政府が正しい革命路線をうちだし、人民が明確に前途を見通せるようにすることは極めて大切なことです。我が国の人民はすべて、我が党が示した路線と政策によって自己の進むべき道をはっきりと見通しています。我が国の労働者、農民、勤労インテリ、青年学生、女性をとわず、すべての人民が革命の前途と自己のなすべきことを十分に認識しており、輝かしい未来への確信と勝利の信念にあふれて、党の路線と政策を貫くため献身的にたたかっています。

 我々が革命と建設で輝かしい成果をおさめているいま一つの主な要因は、勤労人民大衆に依拠し、勤労人民大衆を奮い起こして革命と建設を力強くおし進めているところにあります。

 我々は、常に人民のなかにはいっていき、人民と団結することを重要な問題として提起しています。人民のなかにはいれば、かれらからよいことを多く学び、また勇気を得ることもできます。我々は、人民のなかにはいって人民から学ぶばかりでなく、人民に教えもします。このような過程をとおして、我々は人民と団結し、かれらを革命闘争と建設事業に奮起させています。

 こんにち、帝国主義者が第三世界諸国の進歩的な政権を転覆しようと露骨な破壊・謀略策動をおこなっている状況のもとで、党と政府が人民大衆との団結を強めるのは極めて重要なことです。帝国主義者の破壊・謀略策動を粉砕するためには、敵にたいする警戒心を高めると同時に、人民をしっかりと団結させなければなりません。国家が人民を統治しようとするだけでは、問題は解決されません。統治という言葉そのものが、人民の政権にとっては適当でないとみるべきでしょう。国家は人民を統治するのではなく、人民と団結しなければなりません。

 勤労人民大衆があらゆるものの主人であり、すべてを決定するというのが、我々のうちだしたチュチェ思想の基礎です。すべての問題は「神」や英雄によって決定されるのではなく、勤労人民大衆によって決定されるのです。勤労人民大衆に依拠し、勤労人民大衆のなかにはいってかれらを奮い起こしてこそ、帝国主義者と反動層の策動をはねのけて民族の独立と自主権をゆるぎなく守り、あらゆる障害と難関をのりこえて革命と建設を力強くおし進めていくことができます。

 あなたの質問と関連した話はこれくらいにしたいと思います。

 私は、あなたが今後とも朝鮮とダオメーの友好関係をいっそう強めるために、ひきつづき努力してくれるよう望みます。

 あなたの我が国訪問は2度目なので、我々はもう旧知の間柄となりました。私は、ダオメーにあなたのような立派な友人がいることをたいへんうれしく思います。

 あなたは朝鮮の宣伝者になりました。私もこれからダオメーの宣伝者になろうと思います。我々は互いに支持し協力しあい、共同の偉業をめざして積極的にたたかいましょう。

 私は、我々両国の友好関係をいっそう強化発展させるために、ダオメーの国家元首と平壌で会うことを望んでいます。貴国の元首が朝鮮を訪問されれば、朝鮮人民は心から熱烈に歓迎するでしょう。

 最近トーゴの大統領が我が国を訪問しましたが、朝鮮人民はかれを非常に熱烈に歓迎しました。

 私とトーゴの大統領が会った期間は短いものでしたが、そのあいだに我々はお互いの理解を深め、親しい友人になりました。私はアフリカの多くの国の元首を親友としています。

 私は、ダオメーの国家元首とも親友になることを望んでいます。

 我々の希望をダオメーの国家元首に伝えてくださるよう望みます。

出典:「金日成著作集」29巻

(注)ダオメー【Dahomey】 アフリカ西部のベナン共和国の旧称。


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