金 日 成

アルゼンチン記者代表団の質問にたいする回答
-1974年9月18日-


 問 チュチェ思想は、ラテンアメリカにも適用されると思います。チュチェ思想の創始者として、金日成主席はこれについてどのようにお考えになりますか。


 答 各国の人民がどのような思想を活動指針とし、実践闘争に適用していくかは、かれら自身の意思によって決定されるべき問題です。

 チュチェ思想は朝鮮革命の要求から発し、また朝鮮革命の歴史的経験に基づいて我々が提示した朝鮮革命の指導思想です。朝鮮労働党と我が共和国政府の路線と政策はすべてチュチェ思想に基づいており、チュチェ思想を具現しています。チュチェ思想の正しさと生命力は、我が国での革命と建設の全過程をとおして、既に十分に立証されています。朝鮮人民はチュチェ思想を朝鮮革命の唯一の指導指針とし、確固不動の信念としています。

 こんにち、チュチェ思想は朝鮮人民だけでなく、世界の多くの国の人民、特に第三世界人民のあいだに大きな共感を呼び起こしています。それは、我々のチュチェ思想が自主性を求める世界人民の共通の志向と念願に合致するからだと考えます。ラテンアメリカ人民がチュチェ思想に共感するとすれば、それもやはりこのような理由からでしょう。

 朝鮮人民とラテンアメリカ人民は、多くの面で共通点をもっています。朝鮮人民とラテンアメリカ人民は、いずれもかつて帝国主義者から侵略され略奪され、民族の解放と独立をめざして長期にわたる困難な闘争を展開してきました。朝鮮人民とラテンアメリカ人民は、いまも帝国主義者の侵略と干渉策動に反対してたたかっており、自主の旗のもとに搾取と抑圧のない新しい社会を建設するためにたたかっています。このように過去の境遇と、現在の闘争目的と志向の共通している朝鮮人民とラテンアメリカ人民が、共通の思想感情をもって一つの革命思想に共感を示すのは自然なことだと思います。

 あなたはチュチェ思想がラテンアメリカにも適用されるといいましたが、ラテンアメリカ人民がチュチェ思想を自国の革命と建設に適用するかいなかは、もっぱらラテンアメリカ人民自身が決定すべき問題だと考えます。

 ただここで一つ強調したいのは、我々のチュチェ思想とそれを具現する過程で蓄積された朝鮮革命の具体的な経験が、必ずしも他の大陸、他の国の人民にすべてそのままあてはまるものではないということです。具体的な実情が国によってそれぞれ異なるだけに、各国の人民は、すべての問題を自国の具体的実情と自国の革命の要求に即して解決していくべきです。チュチェ思想もやはり、各国の人民がこのような自主的立場に立って創造的に適用するときにのみ、その優位性と生命力を十分に発揮することができると考えます。


 問 金日成主席が革命と建設を指導される全期間に得られた長大の経験はなんでしょうか。


 答 我々が革命と建設を指導する過程で得た最も重要な経験は、主体性を確立することが、革命と建設におけるすべての勝利と成果の決定的な裏付けとなるということです。

 我々は、朝鮮人民の革命闘争と建設事業を指導する全過程で、すべての分野に主体性を確立するため根気よくたたかいました。

 主体性を確立するというのは、革命と建設にたいして主人としての態度をとるということです。言いかえれば、それは他人への依頼心をすて、自力更生の革命精神を発揮し、自分の問題はあくまでも自分自身が責任をもって解決していく自主的立場と、革命と建設で提起されるすべての問題を自国の実情に即して解決していく創造的立場を堅持することを意味します。

 我々は革命と建設を指導するうえで、常に朝鮮人民の利益、我々の革命の利益から発して、すべての路線と政策を独自に決定し、自力更生の原則で革命と建設のすべての問題をみずからが責任をもって自力で解決していく原則を堅持しました。我々はまた、マルクス・レーニン主義の一般的原理と他国の経験をうのみにするのではなく、我が国の歴史的と民族的特性に即して創造的に適用する原則を堅持しました。

 主体性を確立する闘争で、我々は勤労人民大衆をチュチェ思想で武装させることに第一義的な関心を払いました。その結果、朝鮮人民のあいだでは事大主義と教条主義が克服され、民族の自負と自主意識が高まり、自力更生の気風が高度に発揮されました。勤労人民大衆がチュチェ思想で武装し、主体的立場にしっかりと立ってすべての仕事に主人らしく参加することにより、革命闘争と建設事業には偉大な奇跡と革新が起こりました。

 我々は、思想において主体性を確立するとともに、革命と建設のすべての分野にチュチェ思想を具現しました。

 政治分野にチュチェ思想を具現したのが我が党の自主路線です。

 我が党は革命と建設で提起されるすべての問題を自己の定見に基づき、朝鮮人民の利益と我が国の実情に即して独創的に解決していく原則を堅持してきました。

 我が党は、対外活動の分野でも自主性を堅持しました。我々は、国の大小をとわず、完全な平等と相互尊重の原則に立って他国との友好・協力関係を発展させ、独自の判断と信念に基づき、我々の実情に即してすべての対外活動をおこないました。

 我が党の自立経済建設路線は、経済建設の分野にチュチェ思想を具現したものです。

 我々は自力更生の革命精神を発揮し、主として自国の技術と資源、自国の民族幹部と自国人民の力に依拠して国の経済を発展させる原則を堅持しました。こうして我々は、現代技術で装備され、総合的に発展した自立的民族経済を建設し、立ち後れた植民地農業国であった我が国を社会主義工業国に発展させました。

 我々は国防建設の分野で自衛の方針を堅持しました。我が党の自衛的軍事路線が貫徹された結果、こんにち我が国は、いかなる侵略者をも十分撃破し、革命の獲得物と人民の安全をゆるぎなく守れる自己の強力な防衛力をもつようになりました。

 思想において主体性を確立し、革命と建設のすべての分野にチュチェ思想を具現した結果、我が国は完全な政治的自主権と強固な自立的民族経済と、強力な国防力、さん然たる民族文化をもつ発展した社会主義国家になりました。

 革命と建設の指導で我々が得たいまひとつの経験は、大衆路線を貫くことが極めて重要であるということです。

 革命と建設の主人は人民大衆であり、革命と建設をおし進める力もまた人民大衆にあります。革命と建設は、その主人である人民大衆が自覚的熱意と創意性をもって積極的に参加してこそ、成功裏に遂行されます。

 したがって我が党は、革命と建設の指導において、革命的大衆路線の貫徹に深い関心を払いました。

 我が党は常に大衆の力を信じ、大衆の力に依拠して提起された革命課題を遂行する原則を堅持しました。我が党は大衆のなかにはいって党の路線と政策を解説し、大衆の革命的熱意と創造的積極性を引き出して革命課題を遂行しました。

 我々は、社会主義建設で厳しい難関と試練に直面したときにも、勤労人民大衆を信頼し、大衆のなかにはいり、大衆とひざを交えて難関を打開し、革新を起こす方途を真剣に相談しました。このような過程で、勤労人民大衆は党の意図を把握し、党の路線と政策の貫徹をめざして集団的革新運動を起こしました。

 勤労人民大衆のエネルギーと知恵は、実に底知れないものです。勤労人民大衆さえ動員されれば、なし遂げられないことはありません。我々は人民の高い革命的熱意と創造的積極性に依拠し、革命と建設の困難で膨大なすべての課題を成功裏に遂行することができました。大衆に依拠し、広範な大衆を奮起させる革命的な方法ですべての問題を解決したところに、我々が革命と建設で大きな成果をおさめた重要な秘訣の一つがあります。

 我々のすべての勝利は、我が党のチュチェ思想の偉大な勝利であり、我が党の革命的大衆路線の輝かしい勝利です。

 我々の経験は、思想において主体性を確立し、それを革命と建設のあらゆる分野に具現し、人民大衆の創造的熱意と才能を十分発揮させるなら、かつてはいかに立ち後れていた国でも短期間に富強な新しい社会を建設し、国と民族の繁栄を遂げることができることを示しています。

出典:金日成著作集 29巻

(注)金日成主席の「アルゼンチン記者代表団の質問に対する回答」は、(1)ラテンアメリカ人民のたたかいと、朝鮮人民とラテンアメリカ人民の連帯(2)第三世界諸国間の連帯(3)朝鮮の統一についてと、ここで紹介しているチュチェ思想についての質問にたいする回答がなされている。

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