金 日 成

パナマ記者代表団との談話
−1974年9月1日−


 私は朝鮮人民と朝鮮民主主義人民共和国政府を代表して、あなた方を熱烈に歓迎します。

 あなた方は、パナマの記者として我が国を訪問したはじめてのお客さまです。それで我々は、あなた方を政府代表団のように非常に貴重なお客さんとして迎えました。

 あなた方の我が国訪問は、朝鮮人民とパナマ人民の友好・団結を強化するうえに大きく寄与するでしょう。私は、あなた方の我が国訪問を契機に、両国人民の関係がいっそう好ましく発展するものと確信します。

 私は、あなた方が我が国を訪問し、祖国の統一と社会主義建設をめざす朝鮮人民のたたかいを励ましてくれたことにたいし、深い感謝の意をあらわします。また、我が国と朝鮮人民にたいし、そして私にたいするあなた方の好意あるお言葉に感謝します。

 私はきょう、パナマ人民の使節であるあなた方に会い、親しい友人となったことをたいへんうれしく思います。

 あなた方はいろいろな問題について質問しましたが、それにたいし、かいつまんでお答えしようと思います。

 まず、我が国の教育政策について話しましょう。

 教育政策について話す前に、我が国の歴史的条件について簡単にふれておきましょう。そうすれば、あなた方が我が国の教育政策を正しく理解できると思うからです。

 あなた方もご存知のように、我が国は地理的に大きな国のあいだにはさまれた小さな国です。かつての我が国の歴史は多くの紆余曲折がありました。事大主義に毒された封建支配層は、国の発展について考えるのではまく、いくつもの党派にわかれ、それぞれ大国を後ろ楯にして党派争いに明け暮れました。ある党派はあちらの大国を、また、ほかの党派はこちらの大国を後ろ楯にして、互いに権力争いをおこないました。こういうありさまだったので、朝鮮人民は政治知識や科学技術知識を習得し、国の発展をはかる条件をもつことができませんでした。

 腐敗しきった無能な封建支配層が党派争いに明け暮れた結果、我が国は1910年に日本帝国主義者の餌食となり、朝鮮人民は日本帝国主義の支配のもとに、36年間の植民地奴隷生活を強いられました。

 朝鮮人民は、日本帝国主義の植民地支配を一掃し、祖国の解放をめざす闘争を勇敢にくりひろげ、ついに1945年、日本帝国主義を打倒して民族の独立をかちとりました。

 朝鮮人民は、ほぼ半世紀にわたる植民地奴隷生活の苦い体験をとおして、2度と帝国主義者に国を奪われてはならないというかたい決意をいだくようになりました。我々は、我々の世代に分断された祖国を統一し、富強な国を建設して次の世代に譲り渡すつもりです。

 次の世代に帝国主義の抑圧と搾取を受けさせないようにするためには、かれらを国の頼もしい主人公に育てあげなくてはなりません。

 かつて我が国には、民族幹部がいくらもいませんでした。自主独立国家を建設するためには、自国人民と自民族のために奉仕する民族幹部が必要です。幹部がすべての問題を決定づけます。自己の民族幹部を育成しないことには、国の富強発展をなし遂げることができません。

 富強で文化的な国を建設するためにはまた、全人民の政治・文化水準を高めなければなりません。特に、小さい国が政治的自主性を保ち、経済的自立をなし遂げ、国防における自衛を実現するためには、全人民が政治的にめざめ、高度の科学技術を所有しなければなりません。

 それため、朝鮮労働党と共和国政府は、解放当初から人民教育事業と民族幹部養成事業を、新しい社会建設の最も重要な課題としてうちだし、これに大きな力をそそいできました。

 我々は、国の経済状態がまだそれほど豊ではなく、いろいろと困難な条件があるにもかかわらず、青少年の教育事業に第一義的な力を入れています。我々はいま、未来のためにすべてをつくしています。我々は、かつて植民地支配のもとで学ぶ権利を奪われ、あらゆる苦痛をなめましたが、育ちゆく新しい世代には、そのような苦痛をなめさせず、幸せな暮らしをさせるためにたたかっており、次の世代を搾取と抑圧のない新しい社会の堂々たる主人公に育てあげるために努力しています。

 我々は次代の教育において、学校教育、社会教育、家庭教育を結びつける方針を堅持しています。我々は次代の教育で、学校教育だけを重視しているのではありません。もちろん、青少年の教育で第一に重要なのは学校教育です。しかし、学校教育だけでは次代の教育を円滑におこなうことはできません。学校教育とともに、社会教育、家庭教育が正しく結びつけられてはじめて、青少年を革命的に教育し、立派な民族幹部に育成することができるのです。

 学校教育、社会教育、家庭教育をおこなううえで、我が党は、社会主義教育学の原理にもとづき、青少年が帝国主義に反対し、社会主義祖国を熱烈に愛する、社会主義的愛国主義精神を身につけるよう教育することに基本をおいています。これが我々の重要な教育路線です。

 社会主義教育学で重要な問題は、次の世代が帝国主義に反対し、革命にたいして主人としての態度をとるように教育することです。これとともに、育ちゆく新しい世代が、社会主義祖国をかぎりなく愛し、民族の文化遺産や伝統のなかから、古く腐りきったものは捨てさり、有益なものは現実の要求に即して生かすように教育することが重要です。

 また社会主義教育学は、新しい世代が祖国と人民のために喜んで働き、人民がきずきあげたすべての財貨を愛護し、立派な社会の建設に必要な科学知識と技術を身につけるために積極的に努力するよう教育することを要求しています。

 一言でいって、社会主義教育学の基本原理は、人々を「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という集団主義精神をもち、祖国と人民のためにすべてをささげてたたかう社会主義的愛国主義者に、新しいタイプの共産主義的人間に教育することです。

 これが、青少年教育で我々の堅持している基本的な政策であるといえます。青少年教育にたいする我が党の方針は、我々が書いたほかの本をごらんになれば、さらによく理解できると思います。

 我が国では、我が党の教育政策を貫いて、青少年教育と民族幹部養成事業で多くの成果をおさめました。

 解放直後、我々には民族技術幹部がいくらもいませんでしたが、いまでは60万に達する大学卒業者と高等技術学校卒業者をもっています。

 かつ日本帝国主義者は、朝鮮人に何の技術も教えませんでした。解放直後我が国には、大学を卒業した人は数十人しかいませんでした。日本帝国主義支配当時、我が国に大学はソウルに一つしかありませんでした。そのたった一つの大学にさえも、文科や法科のようなものがあっただけで、技術学科はありませんでした。それで、かつて我が国には弁護士や医者が少々いただけで、民族科学技術人材はいませんでした。

 我々は解放後、わずかしかいないインテリをたいへん貴重な存在として大切にしました。かれらは裕福な家庭の出身ではありましたが、日本帝国主義の民族的差別のなかで教育をうけたため、反帝意識と民族的革命性をもっていました。それで我々は、かれらを広く包容して、民族と人民のために奉仕するように教育しました。

 我々の教育を受けたインテリは、新しい祖国の建設に積極的に参加し、特に、民族技術幹部養成事業で多くの仕事をしました。こうして、こんにち我々は民族幹部の大部隊をもつにいたったのです。

 いま我々は、自己の民族幹部で教育事業をすすめ、工場、企業所を運営し、国家と社会を立派に管理しています。我々は、このような成果を非常に誇らしく思っています。我々がおさめたこのような成果は、我が党と共和国政府の正しい教育政策の輝かしい勝利です。

 我々は今後、我が党の教育政策をいっそう徹底的に貫くために積極的に努力するつもりです。

 いま我が国では11年制の義務教育を実施しています。これは、1年間の就学前義務教育と10年間の学校義務教育をほどこす最も高い水準の義務教育です。

 我々は11年制義務教育の実施を通じて、育ちゆくすべての新しい世代を、完成した中等知識を身につけた社会主義・共産主義建設者に立派に育成しています。

 我々は、育ちゆく新しい世代の教育事業に深い関心を払うとともに、勤労者の一般知識水準と文化・技術水準を高める事業にも大きな力をそそいでいます。

 我が国で絶対多数の成人は、かつて日本帝国主義者のあくどい植民地支配のために、科学や技術を学ぶことができませんでした。

 かつて、系統的な教育をうけられなかった年輩の人は、既に勤労者学校を終え、現在は工場、企業所にある勤労者中学校で学んでいます。我々は、かれらにすべて中学卒業程度以上の知識を身につけさせるつもりです。

 我々はまた、すべての勤労者に一つ以上の技術を学ばせています。こうして、立ち後れていた我が国の科学技術水準をすみやかに高める考えです。

 勤労者や幹部の科学技術水準が低いと事大主義が生まれます。ほかの国よりも科学技術が遅れているとおのずと他人を見上げ、発達した国を崇拝するようになるものです。

 また、民族文化・芸術が発展していないと、他国の文化・芸術をとり入れるようになり、帝国主義の文化的浸透を防ぐことができなくなります。我々は帝国主義者がはびこらせるさまざまな腐りきったブルジョア反動文化と生活様式が、我が国に浸透しないように徹底的に警戒しています。

 帝国主義の文化的浸透を防ぐためには、主体的な民族文化・芸術を創造し発展させなければなりません。主体的な民族文化・芸術は、民族的な形式に社会主義的内容がもりこみ、人民大衆の政治・文化生活に立派に寄与するものとならなければなりません。

 社会の全般的な政治・文化水準を高めるうえで、幹部を教育する問題が非常に重要です。

 革命の指揮メンバーである幹部の政治・思想水準と技術・実務水準が高くてこそ、革命と建設を力強くおし進め、勤労者の全般的な文化・技術水準を高める問題も円滑に解決することができます。

 昨日、人民経済大学を参観さらたそうですが、我が国にはそのような大学がいくつもあります。我々はそこで、国家・経済機関の幹部と、工場、企業所の管理幹部を養成または再教育しています。

 我が国にはまた、党幹部の養成と再教育を目的とする高級党学校があり、地方には共産大学があります。そして勤労者団体の幹部を養成する学校や、国際関係大学、軍事大学があります。我が国には、このように、一般大学以外にも、各部門の幹部を養成または再教育する大学がたくさんあります。

 我々はこのような大学で、幹部を我が党の革命思想と政策で武装させており、国家・経済機関、工場、企業所を我が国の実情に即して管理運営するために必要な知識を与えています。

 我が国にはまた、すべての人民が学習するシステムがあります。

 我が党は学習を一つの革命活動とみなしています。我々は、「革命家にとって学習は第一の義務である」というスローガンのもとに、全党、全人民、全軍が学習する革命的学習気風をうちたてています。我が国には、すべての活動家が毎日仕事をおえたあと2時間以上学習をする制度があります。それに、毎週水曜日には講演会を催し、土曜日には半日を集団学習にあてています。また、すべての幹部は1年に1カ月ずつ、職場に籍をおいたまま学校で再教育をうけます。

 このように、全国と全人民がすべて学習しているので、我が国人民の政治・思想水準と文化・技術水準は急速に向上しています。

 我々は、学校教育事業を強化し、全人民が学習するシステムをしっかりたて、近い将来、インテリの隊列を百万に増やそうとしています。

 我々はいま、すべての人民を労働者階級化するためにたたかっていますが、将来はかれらをすべてインテリ化する計画です。勤労者をインテリ化するというと、小ブルジョア化するかのように聞こえるので、我々はこの言葉をあまり使っていません。しかし、いま我々のいうインテリとは、旧社会の階層としての小ブルジョア的インテリのことではなく、労働者階級の革命的なインテリをさしているので、すべての勤労者を労働者階級化する状況のもとでは、インテリ化するという言葉を使ってもさしつかえないと思います。

 いま我々は、国家が責任をもってすべての人民に勉強をさせる教育政策を実施しています。その結果我が国には、国家と社会の恩恵で託児所、幼稚園で保育している子供の数が350万に達し、人民学校から大学にいたる各級学校で学んでいる学生・生徒は、450万にもなります。これは働きながら学ぶ人を除いても、人口の半数以上が国家の負担で教育をうけていることを意味します。人口の半数以上を国家の負担で教育するので、教育事業に割りあてられる財政支出は莫大な額にのぼります。しかし我々は、これを負担とは思わず誇りに思っています。いまのところは少々力にあまっても、将来の見通しは非常にすばらしいものです。

 我が党によって教育された我が人民は、2度と帝国主義者に従属されないでしょうし、搾取と抑圧の社会へ逆もどりすることはないでしょう。また我が人民は、事大主義にもそまらず、だれもが大きな民族的誇りと自負をもって、社会主義建設に主人らしく参加するでしょう。人民の積極的な闘争によって、我が国はいっそう富強な社会主義国家となり、祖国の自主的平和統一は必ず実現するでしょう。

 我が国の教育政策について具体的に語ろうとすれば、このほかにも多くのことを語ることができます。しかし、これで基本的に、あなた方の質問に答えたことになると思います。

 次に朝鮮の統一問題について話しましょう。

 朝鮮人民は、アメリカ帝国主義の南朝鮮占領により国が南北に引き裂かれたときからこんにちにいたるまで、ほとんど30年間、祖国の統一をめざしてたたかってきました。

 我が国での祖国統一のための闘争は、愛国者と売国奴のあいだの闘争です。我々は国の完全な独立と統一のために積極的にたたかっていますが、南朝鮮当局者は国土の半分をひきつづき帝国主義者にゆだね、分裂を永久化しようと策動しています。統一は愛国であり、分裂は売国です。

 私はあなた方の前で、南朝鮮当局者を誹謗したり、かれらの過去をあばいたりするつもりはありません。しかし、ありのままをいえば、南朝鮮当局者の売国行為は、既に解放前にはじまっています。我々が日本帝国主義侵略者とたたかっていたとき、南朝鮮当局者は民族を裏切り、日本帝国主義の軍隊で将校をつとめていました。

 我々は、こんにち南朝鮮当局者が祖国の統一を妨げ、南朝鮮をアメリカ帝国主義者と日本軍国主義者に売りわたすのを許すことができません。朝鮮人民は、分裂主義者のあらゆる策動を断固粉砕し、必ずや祖国統一の偉業をなし遂げずにはおかないでしょう。

 祖国統一の問題にかんする我が共和国政府の立場は明白です。我々は、国の統一問題をいかなる外部勢力の干渉もうけることなく、自主的に民主主義的原則にもとづいて平和的方法で解決することを主張しています。これは我々の一貫した立場です。

 我々はこれまで、国の統一問題を自主的に平和的に解決するための具体的な提案を数多く示し、その実現をめざしてあらゆる努力をつくしました。

 最近我々がうちだした祖国統一方案のうち最も代表的なものは、昨年の6月に発表した祖国統一の5大方針です。我々の祖国統一の5大方針は、北と南の軍事的対峙状態の解消と緊張の緩和、北と南の多面的な合作と交流の実現、北と南の各階層の人民と各政党、大衆団体の代表からなる大民族会議の招集、高麗(コリョ)連邦共和国の単一国号による南北連邦制の実施、単一の高麗連邦共和国の国号による国連加盟を基本内容としています。

 我々が示した祖国統一の5大方針は、全朝鮮人民の意思と念願を正しく反映した最も正しい方針であり、心から国の統一を願う人であれば、誰にも受け入れられる最も合理的な方針です。それゆえ、南北の全人民はもちろん、世界の広範な人民が我々の方針を積極的に支持し歓迎しています。

 しかし、アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者、そして南朝鮮当局者たちは、我々の正しい祖国統一方針に必死になって反対しています。

 アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者は朝鮮の統一を妨げ、我が国の北と南を「2つの朝鮮」として永遠に分断しようと策動しています。それは、我が国の分裂を永久化してこそ、南朝鮮を永久にかれらの軍事基地、商品市場として確保することができるからです。

 南朝鮮当局者は、1972年に南北共同声明をとおして祖国を自主的、平和的に統一することを全民族の前におごそかに誓ったにもかかわらず、アメリカ帝国主義者と日本軍国主義者のテコ入れのもとに、その誓いを踏みにじり、民族分裂策動をいっそう強化する道に踏み出しています。かれらは、アメリカ帝国主義者の「2つの朝鮮」政策に追随し、朝鮮の北と南が別々に国連に加盟することを主張しています。これは、我が民族の分裂を固定化し永久化しようとするものです。

 南朝鮮当局者は、一方では「2つの朝鮮」でっちあげ陰謀を積極的におし進めながら、他方では南朝鮮人民にたいするファッショ的弾圧をいつにもまして強化しています。かれらは、こうして崩壊に瀕した支配体制を少しでもさらに維持しようとしているのです。

 南朝鮮当局者のこのような策動は、人民の強い抵抗にぶつからざるをえません。内外の分裂主義者の民族分裂永久化策動と南朝鮮反動のファッショ化策動に憤激した南朝鮮人民は、それに反対する闘争に勇敢にたちあがりました。

 この春、南朝鮮で「全国民主青年学生総連盟事件」なるものが起こりましたが、それ一つをみても南朝鮮の人民がいかに勇敢にたたかっているかが十分にうかがえます。

 南朝鮮の青年学生と人民の激しい闘争に恐れをなした南朝鮮の反動層は、「反共」の看板のもとに、それに野獣じみた弾圧を加えました。南朝鮮当局者は、今年の4月から3カ月あまりのあいだに、青年学生をはじめとする2800余名の南朝鮮の各階層人民を逮捕、投獄し、そのうちの多くの人に「共産主義者」という不当な口実のもとに死刑を宣告する蛮行をはたらきました。

 いま南朝鮮では、学生、知識人、宗教家をとわず、南朝鮮の現執権者に反対する人は誰でも弾圧の対象となり、「反共」の犠牲となっています。あなた方もご存知のことと思いますが、南朝鮮の反動層は、かれらに反対する詩を書いたという理由で、詩人金芝河(キムジハ)を軍事裁判にかけ、無期懲役をいい渡しました。かれらは1971年の「大統領選挙」の時、新民党の「大統領候補」であった金大中(キム・テジュン)も、かれらの売国政策に反対したという理由で、白昼日本から拉致したうえ、裁判にかけて弾圧しています。最近南朝鮮の反動層は、カトリック教の司教池学淳(チハクスン)という人まで逮捕しています。

 いま南朝鮮の反動層は、我々と関係をもっているという口実で多くの人を過酷に処刑していますが、かれらは我々とは何の関係もない人であり、共産主義者でもありません。かれらは、祖国の統一と南朝鮮社会の民主化を要求する愛国者であり、南朝鮮の平凡な青年学生、知識人、宗教家です。

 南朝鮮の各階層人民と人士が、南朝鮮の反動層に反対してたたかっているのは、決して我々の指図によるものではありません。我々がいつもいっているように、抑圧のあるところには抵抗があり、抵抗のあるところには必ず人民の革命闘争が起こるものです。南朝鮮当局者が「反共」の看板のもとに人民を過酷に抑圧し弾圧する状況のもとで、革命闘争が起こるのは合法則的であるといえます。

 こんにち南朝鮮人民が展開している闘争は、民族の永久分裂を防ぎ、祖国の統一を早めるための愛国的闘争であり、南朝鮮社会の民主化の実現をめざす正義の闘争です。

 いま世界の多くの国で、南朝鮮反動層のファッショ的弾圧騒ぎを糾弾し、逮捕、投獄された南朝鮮の青年学生や各階層の人士を救うための運動が広くくりひろげられています。アメリカ、日本をはじめ、資本主義国の出版物、さらには資本主義国の首相たちまで、時代の流れに逆行する南朝鮮反動層のファッショ化策動に抗議し、それを糾弾しています。

 我々は、南朝鮮人民の反ファッショ民主化闘争を積極的に支持します。我々は南朝鮮人民の愛国闘争を支持声援することを、崇高な民族的義務であるとみなしています。

 南朝鮮で反ファッショ民主化闘争が勝利し、民主人士が政権の座につけば、朝鮮人民は、共和国北半部の社会主義勢力と南朝鮮の民主勢力が力をあわせ、全朝鮮的な統一政府を樹立する方法で国の統一をすみやかに実現することができるでしょう。

 次に、チュチェ思想が第三世界の人民の独立と社会経済的発展をめざす闘争に、どのような影響を及ぼすだろうかという質問でしたが、それについて簡単にお答えします。

 我々のチュチェ思想が第三世界の人民の革命闘争に影響を及ぼすというよりは、それが世界の人民のあいだで、特に、第三世界の人民のあいだで大きな共感を呼びおこしているとみるのが正しいでしょう。

 チュチェ思想が、いま世界の広範な人民のあいだで大きな共感を呼びおこしているのは、なによりもチュチェ思想が、自主性を求める世界の人民の志向と念願にかなっているからだと思います。

 こんにちの時代は人民が自主性を求める時代です。こんにち社会主義国の人民はもちろん、資本主義諸国の人民も自主の道を進もうとしており、特に長年、帝国主義者に搾取され抑圧されてきた第三世界の人民は、自主の旗を高くかかげて進んでいます。

 チュチェ思想は、朝鮮革命の必要から発し、そして朝鮮革命の経験にもとづいて我々が最初にうちだした思想ではありますが、世界の人民の志向と念願にも全面的にかなっている思想です。

 また、チュチェ思想が第三世界人民のあいだで大きな共感を呼びおこしているのは、それが第三世界の人民に新生活の創造をめざす闘争の最も正しい道を示しているからだと思います。

 こんにち第三世界の人民には、既にかちとった民族独立を強固にし、国の繁栄を遂げるべき課題が提起されています。ここでまず問題となるのは、資本主義への道を進むべきか、社会主義への道を進むべきかということです。第三世界諸国が資本主義への道を進むならば、再び帝国主義者に従属される恐れがあります。そのために、いま第三世界の多くの国が社会主義を志向しています。

 第三世界諸国が社会主義への道に進むためには、社会主義国の経験に学ぶことが必要です。しかし、社会主義諸国の経験が第三世界諸国にそのままあてはまるというものではありません。それゆえ、第三世界諸国が社会主義の道を進もうとする場合、社会主義諸国の経験を自国人民の利益と自国の実情に即して適用すべきです。いわば、主体的立場が求められるわけです。

 チュチェ思想とは、革命と建設の主人は人民大衆であり、革命と建設をおしすすめる力も人民大衆にあるという思想です。

 個々の国の革命の主人はその国の人民自身です。個々の国の人民は自国の革命にたいして主人としての態度をとり、革命と建設で提起されるすべての問題を、自国人民の利益と自国の実情に即して自力で解決していくべきです。

 我々の経験によると、社会主義建設において他国の経験をうのみにするのは極めて有害です。これは、あたかも人が物を食べるとき十分にかんで食べれば消化がよくでき、かまずに丸のみすれば消化不良にかかるのと同じだといえます。食べ物をかんでみて、消化できそうなときは飲み込み、そうでないときは吐きだしてしまわなければならないように、他国の経験も自国人民の利益と自国の実情にかなったものは取り入れ、そうでないものは取り入れるべきではありません。

 我々は、我が国を訪れた外国の人々から、我々の経験を話してほしいと言われる場合にも、我々の経験が他国の実情にあわないこともありうるので、あくまでも参考として、自分の国の実情にあう経験を創造すべきだといっています。

 革命と建設で自主性を堅持し、自国人民の利益と自国の実情に即した正しい路線と政策をたてるというのは、けっして容易な問題ではありません。

 朝鮮人民は、チュチェ思想を指導指針とし、チュチェ思想を政治、経済、軍事、文化のすべての分野に具現して、革命と建設で偉大な勝利をおさめました。朝鮮人民が新生活の創造でおさめた偉大な勝利は、チュチェ思想の正しさと生命力を明白に示しています。

 第三世界諸国が、既にかちとった民族の独立を強固にし、政治で確固と自主性を確固と堅持するためには、経済的に自立しなければなりません。第三世界諸国が経済的自立を達成するうえで需要なのは、これらの国のあいだで経済・技術協力を強めることです。

 我々は、第三世界諸国が政治的に団結するばかりでなく、経済的、技術的にも協力しあうことを主張します。

 いま第三世界諸国は、資源保護のためのたたかいを力強くくりひろげています。最近開かれた原料および開発問題にかんする国連特別総会では、第三世界諸国が団結して資源保護のためのたたかいをくりひろげ、今回ベネズエラで開かれた第三回国連海洋法会議では、2百海里領海権問題と経済水域権問題を討議しました。このように第三世界の人民が、自国の領土と領海の資源を保護するためにたたかっているのは、非常によいことです。

 発展途上にある第三世界諸国は、帝国主義者の略奪から自国の資源を守るばかりでなく、豊富な資源を積極的に開発して、国の富強発展と人民生活の向上のために有効に利用すべきです。ここで、第三世界諸国が互いに有益な経験や技術を交流しあい、経済的に互いに協力しあうことが非常に重要です。

 第三世界諸国は豊富な資源をもっているばかりでなく、互いに交流しあえる経験や技術も少なからずもっています。

 最近ペルーの記者にあったときにも話したことですが、ペルーでは魚の加工技術が発達していますから、我々はペルーからその技術を学ぶことができます。また我々は、アラブ諸国から原油精製技術も学ぶことができます。

 我が国にもほかの国に提供できるすぐれた経験や技術があります。例えば、我々は水利化の経験などを第三世界諸国に提供することができます。我が国では農業の水利化が、既に完成しています。我々はこれを非常に誇りに思っています。

 第三世界諸国は、まだ発展途上にありますが、いずれもすぐれた技術をいくつかずつはもっています。

 現在世界には、発展途上にある第三世界の国が百カ国余りありますが、各国が立派な経験や技術を一つずつ出しあって互いに交流するとしても、百種類の立派な経験や技術を所有することができ、10ずつ交流しあえば千種類の有益な経験や技術を所有することができます。ですから、第三世界諸国が経済・技術協力を強化すれば、大きな仕事をなし遂げることができ、強大国に依存しなくても短期間に国の経済的自立を遂げることができます。

 第三世界諸国は経済・技術協力を強め、政治的自主性とあわせて、経済的自立を一日も早くかちとるべきです。そして、かつてはいくつかの強大国が世界で主人顔をしていましたが、これからは世界の絶対多数をしめる第三世界の人民が世界の主人となるべきです。

 最後に、パナマ運河と運河地帯での完全かつ実際的な自主権と合法的権利をかちとるための、パナマ人民の闘争にたいする朝鮮民主主義人民共和国政府の立場について話しましょう。

 朝鮮民主主義人民共和国政府と朝鮮人民は、パナマ運河と運河地帯にたいするアメリカ帝国主義者の占領に終止符をうち、完全かつ実際的な自主権と合法的権利をかちとるためのパナマ人民の闘争を全面的に支持します。

 パナマ人民は、パナマ運河と運河地帯を取り戻すためにたゆみない闘争を展開してきました。特に最近パナマ人民は、パナマ運河と運河地帯にたいするアメリカ帝国主義者の植民地的支配と略奪に終止符をうち、合法的権利をかちとるため、大衆的なたたかいを力強くくりひろげています。

 パナマ運河と運河地帯での自主権と合法的権利をかちとるためのパナマ人民の闘争は、領土保全をなし遂げ、国の自主権と民族の尊厳を守る正義の闘争です。

 我々は朝鮮人民の名で、パナマ人民の正義の闘争にかたい連帯を送ります。

 朝鮮とパナマは、地理的には遠く離れていますが、朝鮮人民は常にパナマ人民の闘争を大きな関心をもって注視してきました。

 1968年にオマール・トルリホス・ヘルレラ将軍が政権をにぎって以来、パナマ共和国政府はパナマ人民の利益にかなった進歩的な政策を実施しています。

 パナマ共和国政府は土地改革をはじめ、教育体系の民主化、電気部門の国有化、農業協同組合の組織、アメリカ帝国主義独占体と国内の大資本家の利潤獲得の制限など、一連の措置をとりました。パナマ共和国政府がとったこれらすべての措置は、民族独立と自主権を守り、国の繁栄をめざす極めて進歩的な措置です。

 特に、パナマ人民が自主性を主張しているのは非常によいことです。これは両国人民のあいだに、思想と立場のうえで共通点があることを示しています。。パナマ共和国政府は2百海里海洋権を主張していますが、これも我々の立場と同じです。

 我々は、パナマ共和国政府がとったすべての革命的な措置と、パナマ人民の勇敢な闘争を積極的に支持します。

 我々はまた、オマール・トルリホス・ヘルレラ将軍の自主的な政策を全面的に支持し、高く評価しています。

 朝鮮人民は、パナマ人民の勝利を自分自身の勝利のように思っています。朝鮮民主主義人民共和国政府と朝鮮人民は、勇敢なパナマ人民がオマール・トルリホス・ヘルレラ将軍のまわりにかたく団結し、遠からず完全な民族独立と自主性をかちとるものと確信します。

 いまアメリカ帝国主義者は、パナマ人民の独立と自主権を侵しているばかりでなく、朝鮮人民の独立と自主権をも侵しています。

 朝鮮人民とパナマ人民は、共通の敵に反対してたたかっており、共通の目的と理想をめざしてたたかっています。朝鮮人民は共通の敵に反対する闘争で、常にたたかうパナマ人民の側に確固と立ち、パナマ人民の正義の闘争に積極的な支持と声援を送るでしょう。

 私は今後、両国人民が、友好・団結をいっそう強め、帝国主義に反対する共同闘争で肩を組んで進むことを望みます。

 あなた方の質問にたいする回答はこれくらいで終えたいと思います。私の話を熱心に聞いてくださったことに感謝します。

 あなた方は、朝鮮人民とパナマ人民のあいだに親善の虹の橋をかけた使節です。私は改めて、あなた方の我が国訪問を熱烈に歓迎します。

 今後も、我々両国人民が互いにより頻繁に行き来できるよう、ともに努力しましょう。

 今後あなた方が再び我が国を訪問されることを望みます。
                                                                                                                                                    

出典:「金日成著作集」29巻


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