金 日 成

里党書記の任務について
里党書記におこなった演説 
−1974年1月14日− 


 同志のみなさん!

 きょう、この会場には、全国の里党書記がもれなく参加しました。わたしは、全国の里党書記が一堂に会した機会に、みなさんが活動と生活をどのようにおこなうべきかについてお話したいと思います。

 里党書記の任務は、きわめて重要であります。里党書記が役割を十分に果たしてこそ、農村のすべての仕事が順調にはかどります。

 里党は、わが党の基礎組織です。わが党は党細胞によって構成されており、里党組織は、わが党を構成している一つの大きな細胞であると言えます。したがって、里党組織を強化することが非常に重要です。有機体が健全であるためには、細胞が健全でなければならないように、わが党が強固であるためには、里党をはじめ党の基礎組織が強固でなければなりません。

 里党は、地域的にみても非常に重要な位置をしめています。わが国で里は、国の4千分の1にあたります。

 里には国の4千分の1にあたる地域と住民があり、土地や農業機械などの生産手段と各種の財産があります。里にはまた、学校、病院、託児所、幼稚園などの教育・文化・保健医療機関や各種の通信施設、便益サービス施設があります。里にあるこれらすべてにたいして責任を負う主人は里党組織であり、その責任者はほかならぬ里党書記であります。

 党中央委員会は、里党書記を信頼して、わが国の4千分の1の地域と住民と財産をまかせました。党中央委員会はさらに、国の4千分の1にあたる地域で国家権力が正しく行使されるように指導する責任を里党書記にゆだねました。

 里党書記が、里党組織をしっかりかため、それを正しく動かして、まかされたすべての革命課題を立派になし遂げなくては、わが党と主権を強めることも、我々のすべての社会主義勢力を強化することもできません。言いかえれば、里党組織を強化しなくでは、我々の革命勢力を強化し、わが国の社会主義制度を発展させることができないのです。

 里党書記がその任務を立派に果たすためには、国の4千分の1を巧みに運営していける能力をそなえていなければなりません。里党書記は、里内の党組織と党員、勤労者団体と大衆を指導するだけでなく、農業生産にたいする指導を立派におこなうのはもちろん、学校、病院、商店、便益施設などもすべて指導できなければなりません。つまり里党書記は、農村のあらゆる部門の活動を指導できる能力をそなえていなければなりません。

 こんにち、わが国の農村は、すべてたくましい竜馬にたとえることができます。

 わが国の農村は、じつに豊かで美しいところです。裏山には果樹園があり、ふもとには瓦ぶきの家が立ち並び、村の前には小川が流れ、潅漑用水のあふれる平野にはトラクターがエンジンの音を響かせています。わが国の農村は、文字どおり美しい一幅の絵を連想させます。

 美しい農村風景は、わが国のどこでも見ることができます。わが国でいちばん深い山奥といえる昌城に出向いてみても、谷間をぬけると前方に清い小川が流れ、山すそに瓦ぶきの家が並び、田畑でトラクターが作業をするすばらしい眺めが目の前にひろがります。朔州から昌城へ行く峠に登ると金富里という村が見渡せますが、腰を下ろして絵でも描いてみたくなるほどです。全く金富里は、昔仙人が住んだという仙境を思わせます。この美しさは、金富里にかぎったものではありません。わが国の農村はどこも美しく豊かで、いたるところが仙境だといえます。かつて、立ち後れ、貧しかったわが国の農村がこのように豊かで文化的な農村に変わり、白米に肉のスープを食べ、瓦ぶきの家に住みたいという農民の念願が現実となったのですから、なんと誇らしいことではありませんか。

 わたしは豊かで美しい農村を眺めるたびに、みちたりたさわやかな気持ちになります。

 わが国を訪れる外国人もみな、農村の美しい風景に感嘆しています。ある外国人は、朝鮮ではいたるところにそれぞれ趣を異にした美しい景色が展開されるので、それに見とれて車の長い旅にも疲れを感じないと語りました。アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパから来た外国人はみなこう言っています。

 この立派なわが国の農村は、ほかでもなくここに集まった里党書記のみなさんと管理委員長たちが先頭に立って建設したのです。みなさんは解放後、農村で土地改革のための闘争や農業協同化運動に参加し、農村での技術革命のためにもたたかってきました。みなさんは、農村で育ち、学んで、いまでは農村の立派な主人となりました。

 朝鮮人民は、長年の困難な闘争をつうじて日本帝国主義を打倒して国の独立を達成し、解放後には、地主、資本家階級を倒して、山うるわしく水清い美しい祖国の大地に、搾取と抑圧がなく誰もが幸せに暮らせる地上の楽園をきずきあげました。こんにち、わが国の農村は、いずこも豊かで文化的な農村となり、共産主義の高峰をめざして驀進するたくましい竜馬、チョンリマ(千里馬)になったと言えます。

 社会主義農村建設にかんする党の路線と政策も明確にうちだされています。我々には、社会主義農村建設の綱領である『わが国における社会主義農村問題にかんするテーゼ』があり、各時期ごとに党が示す農村建設にかんする具体的な方針もあります。

 要は、ここに集まった里党書記のみなさんがこのたくましい竜馬を駆ってどう進むか、党の路線を貫くためにどうたたかうかにあります。いかに立派を竜馬でも、乗り手がしっかりせず、乗りこなせないようではなんの役にも立ちません。乗馬の心得のない人が馬に乗れば、けられるか落馬するのかおちでしょう。これと同じように、里党書記が竜馬を駆る能力に欠け、自分の役割を立派に果たせなければ、社会主義農村建設を力強くおし進めていくことができません。すべての里党書記が竜馬を駆る能力をそなえて、その役割を立派に果たすとき、農民と全人民によりよい生活をもたらし、無階級社会をきずき、社会主義の完全な勝利を実現することができます。

 ところが現在、すべての里党書記がそうした能力をそなえているかといえば、そうとは言えません。里党書記のなかには竜馬を駆る能力をそなえた人もいれば、ロバに乗る能力しかない人、甚だしくはロバにも乗れず、やっと子牛に乗る程度の能力しかない人もいます。

 いま、一部の里党書記は、与えられた任務と役割を満足に果たせず、活動と生活において少なからぬ欠陥を露呈させています。

 一部の里党書記は、国家の規律を厳格に守っていません。現在、農村における国家規律の違反者は、主として里党書記をはじめ、里の幹部です。里の幹部が先に立って国家規律に背くので、ほかの人もそれにならっています。里の幹部自身がこういうありさまですから、ほかの人が国家の規律に違反するのを見てもそれと強くたたかえないのです。

 里党書記をはじめ里の幹部のなかには、権力を乱用する人も少なくありません。かれらが国家規律をよく守らず、それに背くのも、主として権力の乱用に起因しています。里担当の社会安全員は制服の権威を、里党書記は党の権威を、協同農場管理委員長は「長」の権威を振りかざしています。

 一部の里の幹部は、農村の商店によい品物が入荷すると農場員よりも先に買い込んでしまうそうです。また、自分を特権的存在と思い込み、他人とは違った生活をしてもかまわないものと思っている幹部もいます。これは間違った考えです。幹部が自分を特権的な存在と考えるならば、大衆から浮き上がって大衆のなかに入ってゆけず、結局は自己に課された革命任務を十分に果たすことができません。

 里党書記は、活動と生活上の欠陥を直ちに改め、その任務と役割を立派に果たして、わが党の基礎組織である里党をさらに強化し、チョンリマの農村を正しく導いていかなければなりません。

 里党書記が里党組織を強化し、チョンリマの農村を正しく導いていくためには、まず、高度の革命性と階級性をそなえなければなりません。

 我々が党を組織したのは、共産主義建設の闘争を成功裏に進めていくためです。里党をはじめ、党の各基礎組織は、社会主義・共産主義建設をめざしてたたかうわが党の戦闘単位であります。したがって、この戦闘単位の責任者である里党書記は、誰よりも高い革命性と労働者階級性を身につけていなければなりません。

 里党書記は、マルクス・レーニン主義とわが党の革命思想で武装し、たえず自分自身を鍛えることによって、すべてを労働者階級と革命の利益に服従させ、いかなる逆境にあっても革命的原則を守り、困難にうちかつことのできる真の革命家にならなければなりません。

 里党書記はまた、革命闘争と建設事業において大衆の先頭に立たなければなりません。幹部が先頭に立って大衆を正しく指導するならば、万事が順調にいくものです。昨年、わが国で豊作をおさめた要因の一つは、協同農場の末端幹部が大衆の先頭に立って献身的にたたかったことにあります。里党書記は、実践闘争のなかでたえず自分自身を鍛え、党および国家活動、経済建設などすべての活動で大衆の先頭に立つよう積極的に努力すべきです。

 里党書記がその任務と役割を十分に果たすためには、次のような準則に従って活動し生活しなければなりません。

 第1に、里党書記は、党生活に積極的に参加しなければなりません。

 里党書記が、革命性を発揮し、革命的原則に徹し、革命闘争と建設事業の先頭に立ち、一生涯党と革命に忠実であろうとするならば、党生活に積極的に参加すべきであります。

 党員が党生活に参加しないのでは、党組織でなにが討議、決定され、どんな活動をおこなっているのかもわからず、党の意図どおり活動し生活することができません。

 党員は入院して病床にふせっているとき以外は、いつどこにあっても党生活をつづけなければなりません。党生活に参加しない党員は、党員の資格がありません。わが党の規約には、正当を理由もなく6か月以上党生活に参加しない党員は除名することになっています。すべての党員が党生活に積極的に参加してこそ、わが党の戦闘力を強め、自分自身を革命的に鍛えることができます。

 里党書記は、党生活に誰よりも模範的に参加しなければなりません。里党書記は、党生活に参加しないようなことが一度でもあってはなりません。里党書記は、党生活において模範となるばかりでなく、里内のすべての党員を党生活に積極的に参加させるとともに、社会主義労働青年同盟員や農業勤労者同盟員、女性同盟員もそれぞれ組織生活に積極的に参加するよう指導しなければなりません。

 党生活に積極的に参加するのは、党員の神聖な義務です。里党書記は、党生活に誠実に参加してたえず党性を鍛え、自分自身をしっかりと革命化、労働者階級化しなければなりません。

 第2に、里党書記は、党学習に積極的に参加しなければなりません。

 いま大学を出た一部の活動家は、党学習会では別に学ぶことがないといって、よく参加しないとのことです。これは非常に思いあがった態度です。

 学識のある人であれ、ない人であれ、例外なく党学習会には参加しなければなりません。党員が党学習会に参加するのは、党の革命的な組織規律です。

 党員が党学習会に積極的に参加しなくては、政治意識水準を高めることも、党政策や内外の情勢を敏感にうけとめることもできません。党学習会に欠かさず参加すれば、昨日まで理解できなかった問題をきょう改めて理解できるようにもなり、また、ある講師の講義になかった新しい話をほかの講師から聞くこともできます。

 里党書記は、党学習に熱心に参加して、わが党の革命思想、チュチェ思想で武装し、政治意識水準をたえず高めていかなければなりません。

 第3に、里党書記は、生産労働に積極的に参加しなければなりません。

 里党書記は党活動を立派におこなうとともに、生産労働にも熱心に参加して、大衆に模範を示すべきです。しかし、いま一部の里党書記は、党活動が忙しいということを口実に生産労働によく参加していません。

 もちろん、里党書記は多くの会議に参加し、党学習会の指導にもあたるので他の人より暇がないのはたしかです。だからといって、里党書記が生産労働からぬけてはなりません。もし、里党書記が会議のため昼間生産労働に参加できなかったならば、夜寝られなくてもその日の仕事は必ずその日のうちにしなければなりません。夜も時間がなくてできなかった場合は、翌日の生産労働でもっと熱意を発揮し、前日の分を埋めあわせるべきです。

 みなさんも劇映画『赤い扇動員』を見たと思いますが、映画の主人公は、昼間会議や講習会に参加したときは夜を徹してその日の自分の分を、ときには立ち後れた人が残した分まで草取りをします。

 かつて、抗日遊撃隊の指揮官や政治幹部は、冬に行軍をするとき、隊伍を率いて隊員よりよけい歩き、人一倍苦労しても、宿営地に着くとまっ先にノコやオノで木を伐ってたき火をたき、隊員の寝床の面倒までみ、かれらが眠ったあとで眠りについたものです。

 里党書記は、抗日遊撃隊の指揮官や政治幹部の活動作風を見習って、困難な仕事の先頭に立ち、生産労働に積極的に参加して社会主義建設で前衛的役割を果たさなければなりません。

 第4に、里党書記は、国家と社会の共同財産を愛護しなければなりません。

 現在、国家と社会の共同財産を粗末に扱い、浪費する人が少なくありません。

 里党書記は、国家と社会の共同財産を愛護するうえで模範となるべきです。

 里党書記はまず、農業機械や農機具を大切に管理する気風をうち立てるべきです。里党書記は、手クワや除草機を使ったあとは水できれいに洗って倉庫に納め、トラクターを使ったあとはきちんと掃除して車庫に入れなければなりません。里党書記は、農業機械や農機具をこのように取り扱う習慣をしっかりと身につけなければなりません。

 かつて、抗日遊撃隊の指揮官は、武器や戦闘機材をいつもきちんと管理しました。かれらは、いつも磨きのかかった武器をもち、銃弾をさびつかせるようなこともありませんでした。かれらがこのように模範を示したので、隊員もみな武器や戦闘機材をきちんと手入れし、いつでも敵と立派に戦うことができました。

 党活動で掌握すべき最も重要なことは、第1に幹部事業であり、第2に経済管理活動であり、第3に権力機関の活動であります。里党書記は、党活動で最も重要な問題の一つである協同農場の経済管理、特に、財政管理を掌握して指導すべきです。協同農場の財政管理を指導すべき主人である里党書記が、協同農場の資金を勝手に使ったり、金銭関係であいまいなところがあってはなりません。金銭関係のきれいでない人は、共産主義者にはなれません。

 里党書記は、協同農場の金を借用したり、国家と社会の共同財産を着服するようなことがあってはなりません。もし、里党書記がそのようなことをすれば、ほかの者までそれを真似るでしょう。こうなってしまっては、協同農場をうまく運営できなくなります。

 里党書記は、協同農場の資金支出に直接手を出したり、みだりに干渉したりすべきではありません。協同農場の資金の支出は、管理委員長と会計責任者が全面的に責任をもっておこなうべきです。里党書記は、里党委員会で協同農場の財政管理について討議し承認すればよいのです。

 第5に、里党書記は、国家の法律や規定を模範的に遵守しなければなりません。

 わが党は政権党なので、党活動家自身が国家のすべての法律と規定を自覚的に守らなければなりません。里党書記は、国家が森林の乱伐を禁じればそれに従い、また、道路ぞいの土地を掘り取るのを禁じればそれに従うべきです。かりに、上部から誤った規定が示達されたとしても、それにものいいをつけたり、けちをつけたりしてはなりません。そのような場合、里党書記は正当な意見を組織的に提起すべきであります。

 里党書記は、人に先んじて国家のすべての法律と規定をよく守らなければなりません。

 第6に、里党書記は、党員と人民を愛さなければなりません。

 里党書記は、党員と人民にていねいを態度で接し、かれらに敬語を使わなければなりません。里党書記は人を呼ぶ場合、名前や職名に必ず「トンム(さん)」または「同志」をつけるべきです。管理委員長にたいしては「管理委員長トンム」、細胞書記は「細胞書記トンム」と呼ぶべきです。

 里党書記は、党員や人民に乱暴な言葉を使ったり、むやみになじったりしてはなりません。過ちをおかした人にたいしても、机をたたいて罵詈雑言をあびせるのではなく、じゅんじゅんとさとすべきです。人をどなりつけてばかりいると癖になり、しまいには傲慢な人間になってしまいます。党活動家や政治活動家にそうした癖がついてしまうと、正しい政治活動はできません。

 里党書記は、言動をつつしみ、礼儀をわきまえなければなりません。里党書記は、誰かに失言をした場合にはそれをわび、他人の足を踏んだり押したりして失礼をことをした場合には「すみません」とあやまるべきです。このような礼儀作法はさ細なことのようであっても、人間関係を親密にしていくうえではたいへん重要なことです。里党書記の言動は、いついかなるときでも教養があって、礼儀正しいものでなければなりません。

 党員と人民を愛するからといって、かれらが過ちをおかしても批判せず、原則を無視して放置してはなりません。党員と人民を愛するということは、常に、かれらと接触し、かれらが誤りをおかせば、その場でさとし、よいことをすれば褒め、誰もが党に忠実な人間になるようにすることを意味します。いま一部の活動家は、他人の過ちを見ても批判せず、要領よくつきあいながら「お人好し」ぶっていますが、そうすることが善人なのではありません。

 里党書記は、党員や人民が活動や生活で過ちをおかした場合は適時にさとし、立派をことをした場合は褒め、よいことはよい、悪いことは悪いと公正に指摘すべきです。里党書記は、原則にのっとって、すべての党員と人民を愛し、かれらをわが党のまわりにしっかり結集しなければなりません。

 第7に、里党書記は、労働者階級の立場に徹しなければなりません。

 わが党は、労働者階級の利益を守ってたたかう党です。それゆえ、里党書記は、常に労働者階級の立場、かつて搾取され抑圧された人びとの立場にしっかり立ち、労働者階級の利益を守って断固たたかわなければなりません。

 わが国の農村において、資本主義制度はすでに久しい前になくなりました。しかし、いまだに農村にはブルジョア思想の残りかすが少なくなく、国家と社会の財産を横領し、労働者、農民の主権を侵し、社会主義制度を誹謗中傷する者がいます。里党書記は、農村におけるブルジョア思想の残りかすを一掃するために努力し、社会主義制度を傷つけようとする行為とは厳しくたたかわなければなりません。労働者階級の利益を侵す行為とたたかわない里党書記は、里党書記としての資格がありません。

 労働者階級の立場を守るということは、プロレタリアート独裁政権と社会主義制度をさらに強固にし、大衆のあいだで党の権威と威信を高め、党が大衆の行く手をさし照らす灯台となり、党を常に、星のように輝かせるためにたたかうことを意味します。里党書記は、このような階級的立場を守るため積極的に努力しなければなりません。

 里党書記は、常に階級的自覚を高めなければなりません。いま、敵はわが国の社会主義制度を破壊しようと策動しており、我々は資本主義制度に反対してたたかっています。これは、誰が誰をという厳しい階級闘争です。この闘争は、労働者、農民が資本主義制度をくつがえして社会主義制度を樹立するか、それとも地主や資本家が資本主義制度を維持するかという厳しい階級闘争であります。わが国では、このような階級闘争がまだ終わっていません。したがって、我々は、常に階級的自覚を高めなければなりません。里党書記は、政治、経済、文化、軍事のすべての問題をたんに実務的にではなく、あくまで労働者階級の立場に立ってとらえなければなりません。

 里党書記は常に、労働者階級の立場に立って考え、行動し、階級闘争の立場にしっかり立たなければなりません。里党書記は、労働者、農民の主権を擁護し、地主、資本家制度に反対し、社会主義制度を侵食する者と断固たたかう高度の階級的自覚をもっていなければなりません。

 第8に、里党書記は、生活を政治的、文化的に営まなければなりません。

 里党書記は、いつも身なりを端正にし、家もきれいに手入れしなければなりません。

 里党書記は、映画も義務的に見るべきです。一部の人は、まるでひま人が映画を見るもののように思い、映画を見る人をあざ笑っているそうですが、それは間違っています。映画は、大衆に思想的・文化的教育を与える重要な手段の一つであります。特に、わが国の映画は、教育的価値が非常に大きいといえます。したがって、里党書記は映画をたくさん見るべきです。

 里党書記は毎日、新聞に目をとおすべきです。党活動家は、どんなに忙しくても『労働新聞』の社説は欠かさず読まなければなりません。活動家のなかには新聞の社説も読まない人がいるそうですが、それではいけません。

 里党書記は、ラジオや有線放送を聞き、テレビも見なければなりません。

 こうして、里党書記は常に、世の中の動き、党の呼びかけや要求、国内の出来事はもちろん、外務省や朝鮮中央通信社の声明などもよく知っていなければなりません。

 里党書記は、ただ農作さえうまくいけばよいのだと考えてはなりません。里党書記がその役割を十分に果たすためには、情勢にも明るくなければならず、政治、経済、文化、軍事分野の深い知識を身につけ、文化的な生活をしなければなりません。

 第9に、里党書記は、官僚主義に陥ってはなりません。

 党機関は、権力をふりかざす機関ではなく、党書記の地位は官職ではありません。しかし、いまなお一部の里党書記は、党機関を権力をふりまわす機関とはきちがえて官僚主義的に行動しています。ある人は、党書記をなにか大きな官職ででもあるかのように考えて尊大になり、もったいぶっています。こういう人は食事に招かれたときにも、大きなお膳がまず自分の前におかれないと満足しません。里党書記は、そういうもてなしをされても辞退すべきです。里党書記は、自分の前に大きなお膳がすえられたとしても、それを年配の人にすすめなければなりません。

 幹部に登用される以前は質素に暮らし、言動も謙虚だったのに、幹部に登用されてからは歩き方や言葉づかいまで違ってくる人がいます。地位の高い幹部の場合、登用されるとすぐに高級乗用車を要求し、大きな家をくれといいだします。また、以前はていねいを言葉で電話をかけていた人が幹部に登用されると、受話器をとるなり下部の人をしかりとばし高慢な言葉づかいをします。

 地位の高い低いにかかわりなく、傲慢な態度で電話をかけてはなりません。電話では互いに相手の顔を見ることができないだけに、謙虚に応答しなければなりません。幹部は電話で話をする場合、まず、ていねいにあいさつをして言葉づかいに注意し、用件のすんだあとは親切にあいさつして受話器をおかなければなりません。

 幹部がまず自分に大きなお膳があてがわれることを願い、言動が傲慢になり、大きな家や高級乗用車を要求するといったようなことは、すべて官僚主義のあらわれです。幹部にこのような官僚主義の体臭があってはなりません。

 わが党は、あくまでも官僚主義に反対しています。我々がいちばんきらうのは、幹部の官僚主義的体臭です。官僚主義に陥った幹部は、それを一掃するため積極的に努力すべきであります。特に、里党書記は、官僚主義的体臭をなくすため大いに努力しなければなりません。

 里党書記が官僚主義に陥ると、自分の役割を十分に果たすことができません。里党書記は、官僚主義を一掃し、党と人民に忠実に仕える人民の忠僕とならなければなりません。

 第10に、里党書記は、わが党のチュチェ思想に反するあらゆる古い思想と強くたたかわなければなりません。

 里党書記は党中央委員会と国家から、わが国土の4千分の1の地域の党員と人民を指導する責任をまかされています。それゆえ、里党書記は、誰にもましてわが党のチュチェ思想をしっかり身につけ、主人としての立場を堅持し、責任をもってすべての仕事にあたらなければなりません。里党書記は、わが党の政策を貫くためにねばり強くたたかい、わが党の革命思想、チュチェ思想に反するブルジョア思想、封建思想、修正主義、事大主義をはじめ、あらゆる反動的思想に反対して断固たたかうべきであります。

 わが党内には、わが党の革命思想、チュチェ思想が存在するのみで、それに反するほかの思想は絶対に存在することはできません。我々は、全党をわが党の唯一思想で武装させなければなりません。

 里党書記は、わが党の唯一思想に反するあらゆる古い思想と強くたたかって、里内にわが党のチュチェ思想がみちあふれるようにすべきであります。


 これ以外にも、里党書記が活動と生活で留意すべき問題は少なくないと思います。しかし、以上で述べた10項目が最も重要なことです。里党書記は、この10項目の準則にもとづいて活動と生活を正しくおこなわなければなりません。

 里党書記は、自分の活動と生活を正しくおこなうと同時に、里党委員会の機能と役割をあらゆる面から高めるべきです。里党書記一人の力では、里党組織に提起される革命課題を立派に遂行することはできません。

 里党委員会の機能と役割を高めるためには、里党委員会をしっかりかためなければなりません。里党委員会は、党員のうち、高度の階級的自覚をもち、わが党のチュチェ思想をあくまで擁護し、社会主義制度を強化するために献身する中核分子で構成すべきです。里党委員会は、必ず民主主義的原則にもとづいて選挙しなければなりません。

 里党委員会をかためるとともに、その運営を正常化すべきです。一部の人は、里党委員がたびたび開かれるので農作業にさしつかえると言っていますが、これは正しくありません。もちろん、農繁期に会議をあまりたびたび開いては農作業に支障をきたすでしょう。それで党は、農繁期には会議をひかえ目に開くようしばしば強調してきました。しかし、農繁期でも里党委員会は定期的に運営しなくてはなりません。

 我々は、いかに忙しくても党中央委員会政治委員会と書記局会議は定期的に運営しています。知っている道でもたずねながら行け、というように、一人で決心できる問題でも多くの人が集まって話しあえばよい意見がたくさん出るものです。

 里党書記は、里党委員会を定期的に開いてすべての問題を集団的に討議し、正しい決定を採択しなければなりません。

 里党書記は、里党委員会の決定を実行する活動を手際よく手配すべきです。里党委員と党員に任務を分担し、かれらが大衆のなかにはいって大衆を動かし、里党委員会の決定を実行するようにしなければなりません。

 里党書記が、里党委員会をかため、その運営を正常化し、活動を綿密に手配するならば、里党組織に提起されるすべての革命課題をとどこおりなく遂行することができるでしょう。

 里党書記は、戦争へのそなえも十分にするよう、深い関心を払わなければなりません。

 現在、我々は世界反動の元凶アメリカ帝国主義者と直接対峙しています。敵は我々が警戒心をゆるめ居眠りするのを待っており、侵略の機会を狙っています。我々が警戒心をゆるめて眠りに陥るならば、敵は直ちに攻めこんでくるでしょう。

 我々は戦争を望まず、またけっして先に戦争を起こすようなことはしません。しかし、敵が攻めてくれば、我々は戦わざるをえません。敵の侵略策動がつづいている以上、わが国ではいつまた戦争が起こるかわかりません。それゆえ、我々は絶対に平和ムードにとらわれてはならず、敵のいかなる不意の侵攻にも対処できるよう、戦争へのそなえを十分にととのえていなければならないのです。

 戦争にそなえるうえで何よりも重要なのは、人民を政治的、思想的にしっかり準備させることです。

 我々は、戦前に人民を革命的に十分教育しておかなかったため、一時的後退のさいに多くの損失をこうむりました。当時、少なからぬ党員と人民は、闘争精神に欠け、戦う方法さえ知らなかったため、弾もこめられていない猟銃をもった「治安隊」になんの抵抗もできずに引き立てられ、無残に虐殺されました。この苦い教訓を忘れることなく、人民を政治的、思想的にしっかりと準備させなければなりません。

 里党書記は、党員と人民が敵に幻想をいだくことなく、敵がい心に燃えて敵とあくまで戦う思想的自覚をかためるように教育しなければなりません。

 人民を革命的に教育するうえで重要なのは、抗日パルチザン参加者の回想記の学習を強化することです。回想記の学習は、人民に敵がい心を植えつけるためにも、革命闘争の経験のない人びとに革命烈士の闘争経験を学ばせるためにも有効です。里党書記は、回想記の学習会をたびたび開き、すべての勤労者が、かつて革命烈士は敵といかに戦ったか、自分だったらそのような状況のもとでどう戦うかといったことを考えるようにしなければなりません。

 今後、抗日武装闘争の経験をたくさん活字にし、勤労者の革命的教育に広く利用しなければなりません。

 革命的な小説も人びとの革命的自覚を高め、思想と意志を鍛えるうえで大きな影響力を及ぼします。わたしは吉林監獄にとらわれていたころ、『鉄の流れ』という小説を読んで深い感銘をうけましたが、それは、その後困難を革命闘争をたたかいぬくうえで大きな助けになりました。『鉄の流れ』はロシアの国内戦争当時、ある部隊が苦しい試練にうちかち敵の包囲を突破していくという内容です。我々が抗日武装闘争の時期におこなった苦難の行軍は、『鉄の流れ』に書かれてあるものよりも幾倍も厳しい戦いでした。昨年、抗日武装闘争期にあった苦難の行軍を描いた音楽舞踊叙事詩劇を見ましたが、この作品は、人びとを革命的に教育するうえできわめて有意義を作品です。このような革命的芸術作品をつうじて人民を立派に教育しなければなりません。

 戦争にそなえるにあたって次に重要なのは、物質的準備をよくととのえることです。

 我々は党がうちだした全人民武装化、全国土要塞化、全軍幹部化、全軍現代化の方針をひきつづき徹底的に貫かなければなりません。

 我々は、すでに全人民の武装化に必要な武器を十分準備してあります。戦争が起きれば、全人民に武器を与えることができます。里党書記は、里内の労農赤衛隊と赤い青年近衛隊の隊伍をかためて戦闘訓練を強化し、不断にその戦闘力を高めなければなりません。

 里党書記はまた、食糧などの戦争物資を十分備蓄することにも大きな関心を払うべきです。

 里党書記は、戦争に対処する準備に万全を期し、いったん戦争が起これば里内の全武装隊伍と人民を率い、人民軍を支援して戦い、郷土をしっかりと守らなければなりません。

 戦争の過程では、常に前進ばかりするわけではありません。軍事戦略上の必要から一部の地域を敵にあけ渡す場合もあれば、一部の部隊がやぶれてやむなく退却せざるをえない場合もあります。そうした例は、戦史にいくらでも見られることです。それゆえ、里党書記は、戦時にいかなる不測の事態に直面しても人民を立ち上がらせて郷土を守りぬく覚悟をかためなければなりません。

 我々は抗日武装闘争期に、1932年から35年まで4年間も遊撃根拠地を守って戦いました。当時、我々の武器は貧弱をもので、すべてが欠乏していましたが、根拠地の人民をふるいたたせて敵の気違いじみた侵攻をしりぞけ、遊撃根拠地をしっかりと守りぬきました。里党書記は、抗日武装闘争期のこのような闘争経験に学ばなければなりません。

 わが国には、どの地方にも、根拠地をつくって敵の侵攻を迎えうつことのできる有利な地帯があります。黄海南道にも森林におおおれた高い山や深い渓谷が少なくありません。そのような地帯に根拠地をきずくならば、何年でも戦うことができるでしょう。

 里党書記は、敵がいつなんどき侵入してきても勇敢に迎えうつ覚悟をかため、戦争へのそなえに万全を期さなければなりません。

 次に、農業部門のいくつかの当面の課題について述べたいと思います。

 我々は、このたびの全国農業大会で『わが国における社会主義農村問題にかんするテーゼ』の課題を実現するたたかいでおさめた偉大を成果を総括し、それをふまえて農村技術革命をさらに力強くおし進め、近い将来わが国の農業を完全に工業化する歴史的な課題をうちだしました。

 農業の工業化は、社会主義の完全な勝利を実現するうえできわめて重要な問題であり、また非常にむずかしい問題でもあります。

 我々は、農村テーゼの方針にそって農村の技術革命を力強く進めた結果、すでに農村で水利化と電化を完成し、農業の機械化と化学化の実現でも多くの成果をおさめました。今後、我々がもう少しがんばれば、アジアでまっ先に農業の工業化を実現することになるでしょう。

 農業部門の活動家は農村テーゼの方針どおり、一日も早く農業の総合的機械化と化学化を実現し、農業を工業化するため積極的にたたかわなければなりません。

 農業部門では何よりも、トラクターやトラックなど近代的農業機械を効果的に利用するため積極的に努力すべきです。

 国家では農業の総合的機械化を実現するため、毎年大量のトラクターとトラックを農村に供給しています。しかし、一部の地方では耕地整理や道路工事を怠ったので、トラクターやトラックをたくさんもっていなから、それを効果的に利用できず、使用年限もみたせないありさまです。農業部門の活動家は、耕地整理と道路工事をよくおこなって、トラクターとトラックの利用度を高め、それらを長持ちさせるようにしなければなりません。農村の道を石で舗装するなり、砂利を敷いて地固めをするなりして、雨が降ってもトラクターやトラックがぬかるみにはまらないようにすべきです。

 各道に部品工場を完備し、トラクターやトラックの部品を量産して農村に供給しなければなりません。こうして、トラクターとトラックの修理および整備をそのつどきちんとおこない、その利用度を高めなければなりません。

 農業部門では、トラクターやトラックなどの近代的農業機械を効果的に利用するとともに、牛車のような在来の農機具もよく利用すべきです。いま農業部門の一部の人は牛車をよく使おうとしませんが、それではいけません。今後トラクターやトラックなど近代的農業機械をどしどし農村に送って、すべての農作業が機械化されるようになるまでは、在来の農機具も効果的に利用しなければなりません。

 農業部門の当面の重要な課題は、今年の営農準備をぬかりなくおこなうことです。

 各協同農場では、今年の農業生産計画を正しく立てなければなりません。里党書記は、管理委員長を助けて、農業生産計画の作成で適地適作、適期適作の原則を貫かなければなりません。

 協同農場では消石灰と堆肥をたくさんつくって、土が凍るころ田畑に運び出さなければなりません。いま少なからぬ農村では、石炭不足のため消石灰を十分に生産できないといっていますが、国家計画委員会と農業委員会では消石灰の生産に必要な石炭を円滑に供給すべきです。

 今年、畜産業にも力をそそいで、畜産物生産で新たな革新を起こさなければなりません。

 果樹園をよく管理しなければなりません。いまこの仕事がなおざりにされているので、果物の収穫がきわめて低調です。果樹栽培面積1ヘクタールから少なくとも20〜30トンの収穫をあげなければなりません。協同農場では現在の果樹園を立派に保護し、よく手入れして果物の生産を大幅に高めるべきです。

 植樹運動を大々的におこなうべきです。山に木をたくさん植えなければ土砂崩れや洪水を防げず、木材の問題も解決できません。すべての協同農場で、毎年10ヘクタールずつ植樹するという党の方針を必ず実行しなければなりません。

 協同農場では、河川もよく整理しなければなりません。わが国は降雨量が多いので、毎年河川を整理して水はけをよくしておかなければなりません。いま協同農場では河川整理をなおざりにしていますが、それは間違っています。すべての協同農場では、毎年春に小水路の底をさらい河川を整理することを慣例化しなければなりません。

 今年、農村の文化住宅の建設に大きな力をそそいで、近代的な住宅をたくさん建てなければなりません。最近、平壌市近郊の農村に1棟2世帯の2階建て文化住宅が建てられましたが、以前のろく屋根の文化住宅よりも外観や屋内構造がすぐれています。すべての郡にそうしたモデル住宅を一棟ずつ建てて、それを広く普及すべきです。

 人民がこれまで農業部門でなし遂げたことは農業を工業化する第一歩にすぎません。農業を工業化するには、まだまだすべきことがたくさんあります。したがって、里党書記と協同農場の管理幹部は、協同農場の活動全般を掌握して、すべての仕事をより積極的におし進めなければなりません。道・市・郡党委員会は、協同農場にたいする指導を正しくおこなわなければなりません。

 農業部門の活動家は、何よりも今年度の営農で成果をおさめるため大いに奮闘しなければなりません。農業部門のすべての党員と勤労者は今年さらに奮起して、6か年計画の穀物生産目標を必ず達成しなければなりません。党中央委員会は今年の営農を終えて、年末にまた農業大会を開くことを予定しています。わたしは、このたびの全国農業大会に参加したすべての人が、6か年計画の穀物生産目標達成のたたかいで落伍者になることなく、ひきつづき革新を起こして、次の農業大会に再び参加する栄誉を担うよう望むものです。

 我々は『わが国における社会主義農村問題にかんするテーゼ』の方針にそって、農村で思想革命、技術革命、文化革命をひきつづき力強くおし進めて、一日も早く農業を工業化し、都市と農村の差、労働者階級と農民の階級的差のない無階級社会をきずかなければなりません。こうして搾取と抑圧に苦しむ南朝鮮人民と、新しい社会の建設をめざしてたたかうアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国人民に、わが国社会主義制度の優位性をさらにはっきりと示さなければなりません。

出典:『金日成著作集』29巻


ページのトップ


inserted by FC2 system