金 日 成

人民軍の中隊を強化しよう
 朝鮮人民軍の中隊長、中隊政治指導員大会でおこなった演説
−1973年10月11日− 


 同志のみなさん!

 きょうのこの大会には、1211高地と大徳(テドク)山、月飛(ウォルビ)山、白頭山、そして海岸と領海、領空をはじめ、前線地帯と後方の各哨所から集まってきた中隊長と中隊政治指導員が参加しました。私は、祖国の哨所を守って勇敢にたたかっているなつかしいみなさんに会えたことをたいへんうれしく思います。

 本大会に参加した中隊長、中隊政治指導員は、すべて、祖国と人民のため、党と革命のために前線と後方で昼夜をわかたずたたかってきた人たちであります。みなさんは、夜を日についで哨所を守るかたわら、軍人の教育でも多くの汗を流し、苦労をしています。中隊長、中隊政治指導員のみなさんの苦労を思うとき、みなさんに「千金万両」を与えても惜しくありません。私のどのような言葉をもってしてもみなさんの労苦を十分にたたえることはできないでしょう。

 私は、祖国と人民のため、党と革命のために困難をものともせず勇敢にたたかっている中隊長、中隊政治指導員のみなさんに、党中央委員会と共和国政府、全朝鮮人民の名において、そして、我々と40余年間ともにたたかってきた戦友たちの名においてあつい感謝を送るものであります。

 みなさんは、その発言で最高司令官の健康を願うといいましたが、私はそれに謝意を表するとともに、私もまた、みなさんが健康な体で立派にたたかうことを願ってやみません。

 「独不将軍」ということわざがありますが、これはひとりでは将軍になれないという意味です。この言葉のように、ひとりでは最高司令官になれません。軍隊あっての最高司令官であって、軍隊のない最高司令官などありえません。かつての抗日武装闘争時代には、ともに戦った戦友や同志たちが、私を朝鮮人民革命軍の司令官に推し、こんにちではみなさんと人民軍のすべての軍人が、私を朝鮮人民軍最高司令官に推しました。

 最高司令官がすこやかであるためには、人民軍の全軍人がすこやかで、人民軍が精強でなければなりません。みなさんが健康な体で各自の哨所を頼もしく守ってこそ、国と人民が安泰であり、党と政府が強固であり、そうであってこそ、最高司令官も健康でありうるのです。私はみなさんが健康な体で祖国の哨所をゆるぎなく守り、すべての革命任務を立派に果たすことによって、「党中央委員会を生命を賭して守ろう!」というスローガンを確実に実行するよう期待します。

 私はここで、人民軍の中隊を強化するためのいくつかの課題について述べようと思います。

 中隊は、人民軍の細胞であります。

 周知のように人間の体は細胞からなりたっており、細胞の働きによって生命活動が営まれます。したがって、人間が健康であるためには、すべての細胞が健全で順調に働かなければなりません。もし、人体内のある細胞が健全でなければ、その部位に炎症やはれ物などが発生して、不快感を起こしもすれば、発熱することもあります。これは、人体生理学上の原理であります。

 我々は、有機体の細胞にたとえて党の基礎組織を党細胞と名づけました。我が党は、党細胞によって構成されています。したがって、党を強化するためには、なによりも党の基礎組織である党細胞を強化し、その機能と役割を最大限に高めなければなりません。もし、ある党細胞が腐敗するか機能を果たさなくなれば、全党の強化に支障を与えるようになります。これもまた科学的な原理であります。

 人民軍の場合も同様です。人民軍を構成している細胞は中隊であります。中隊は、人民軍の基礎組織であり、基本的戦闘単位であります。中隊で人民軍の基本的大衆が生活し、軍事・政治訓練をおこなっています。中隊にはまた、党の基礎組織である党細胞が組織されています。このような中隊が集まって大隊、連隊、師団、軍団、集団軍を構成し、人民軍を構成しています。したがって、人民軍における中隊の位置と役割は極めて重要であります。

 人民軍の強化いかんは、中隊の強化いかんに大きくかかっています。人民軍の全中隊が、政治的、軍事的に強化されれば、人民軍は比類なく強化され、逆にある中隊が戦闘力を失うか、役割を果たさなくなれば、それが、大隊、連隊、師団の強化に支障を与え、ひいては全人民軍の強化に影響を及ぼしかねません。

 一部の人は戦争で1個中隊くらい失っても大したことはないと考えていますが、それは間違いです。戦争で1個中隊を失うのは、人間にたとえれば腕か脚にはれ物ができるのと同じことです。そうしたはれ物が大きくなれば、腕か脚を切断せざるをえなくなり、ひいてはもっと大がかりな手術が必要になることもあります。敵との戦いで中隊を失えば、大隊、連隊、師団の戦闘力が弱まり、ひいては人民軍の全般的戦闘力を弱めるようになります。

 中隊の位置がこのように重要であるため、人民軍の強化にとって中隊の強化が極めて重要なのであります。

 中隊の重要性からして、戦闘では敵の中隊を掃滅することがまた重要であります。戦闘で一挙に敵の大部隊を掃滅することはできなくても、いたるところで多くの中隊を撃滅すれば敵に大きな打撃を与えることができます。敵の中隊をいたるところで撃滅するのは、人間の全身にはれ物を発生させるのと同じことです。はれ物が身体の1、2か所にできる程度ならそれほど支障はありませんが、脚にも腕にも、腰にもはれ物ができるといったふうに満身創痍になれば、全身がうずいて自由に動くこともできず、ついには命を落とさないともかぎりません。戦闘で、連日敵の師団ないし軍団の中隊を数個ずつ掃滅していけば、すぐさまその師団や軍団の戦闘力を失わせ、しまいには敵の全軍を壊滅させることができます。

 中隊長、中隊政治指導員は、中隊の重要性を明確に認識し、力と知恵をつくして中隊の強化につとめなければなりません。

 中隊には、中隊長、中隊政治指導員以下、副中隊長、特務長、小隊長、副小隊長、分隊長、兵士がいます。中隊を構成しているこれらの軍人は、それぞれ重要な役割を果たしています。もし、小隊長や分隊長が軍務に忠実でなければ、中隊長や中隊政治指導員がいくら努力しても中隊を強化することはできません。中隊内の全軍人が、政治的、思想的に、軍事技術的に十分準備されていてこそ、中隊は健全な細胞になれるのであります。

 私は、中隊長、中隊政治指導員とともに中隊を構成している副中隊長、特務長、小隊長、副小隊長、分隊長、兵士の全員が、党の軍事路線に従って中隊の強化に邁進するものと期待しつつ、人民軍の全中隊の軍人にあいさつを送ります。

 私はまた、中隊を援助し指導する大隊、連隊、師団、軍団、集団軍の幹部にもあいさつを送り、今後中隊を強化するための指導でより大きな成果をおさめるよう期待します。

 中隊を強化するためには、なによりもまず中隊長と中隊政治指導員の役割を最大限に高めなければなりません。

 中隊長と中隊政治指導員は、人民軍の細胞責任者であります。つまり、中隊長は人民軍の細胞である中隊の責任を軍事的に負い、中隊政治指導員は中隊の責任を政治的に負っています。中隊長と中隊政治指導員は、兵士を直接教育、訓練するとともに、政治生活、内務生活をはじめ、すべての生活を兵士とともにします。また、中隊長と中隊政治指導員は、戦時には兵士とともに同じ塹壕で戦います。したがって、中隊の強化いかんは、中隊長と中隊政治指導員の役割に大きくかかっています。かれらが、隊員を立派に教育、訓練し、軍人が兵器と戦闘技術機材を愛護し、内務生活を健全におこなうようになれば、そういう中隊は精強であり、戦闘で常に勝利するものです。しかし、中隊長と中隊政治指導員が、隊員の教育を怠り、中隊を整然と管理しないならば、そういう中隊は無気力になり、戦いで失敗をまぬがれません。

 抗日武装闘争当時、私はいつも警護中隊とともに生活し、隊員を教育もし訓練もおこなわせ、中隊をきちょうめんに管理させました。それで、警護中隊は常に正規軍と変わらぬ面貌を保ち、性能のよい兵器を携帯し、戦いでは必ず勝利したものでした。朝鮮人民革命軍の他の部隊の経験をみても、中隊長と中隊政治指導員が、隊員を立派に訓練し、中隊をきちんと管理した部隊は戦闘力がすぐれていました。しかし、中隊長と中隊政治指導員が隊員の教育を怠り、中隊の管理に力を入れなかった部隊は、食糧や弾薬の不足に悩み、敵と戦って追い立てられる場合もありました。これらのことは、中隊の強化いかんが中隊長と中隊政治指導員の役割に大きくかかわっていることを示しています。

 人民軍のすべての中隊長と中隊政治指導員は、中隊の強化のためにその役割をいちだんと強めなければなりません。

 中隊において、中隊長は長兄であり、中隊政治指導員は長姉であるといえます。したがって、中隊長と中隊政治指導員は、長兄ないし長姉の心情をもって中隊の軍人を教育し、世話をやかなければなりません。

 中隊長は、中隊の軍人に実の弟のように接し、隊員が誤りをおかした場合は厳しく、しかし、事理を正して諭さなければなりません。中隊政治指導員は気立てのやさしい長姉のように、中隊の軍人にあたたかく親切に接しなければなりません。もし、ある隊員が誤りをおかして中隊長から強く批判されたとすれば、中隊政治指導員はかれに会って、中隊長に批判されたからといって感情を害するな、君にこれこれの欠陥があるのは事実ではないか、だから批判をうけたのは君の発展にとって有益なことだった、ぼくも力をかすから力をあわせて欠陥をなおそう、といったふうにじゅんじゅんと言い聞かせるべきです。中隊政治指導員がこういうふうにするのでなく、中隊長が隊員をしかるとき、そばで、油をそそぐようなことをすれば、隊員は中隊長と中隊政治指導員を慕おうとせず、中隊には信頼するにたる人がいないといってホームシックにかかるようになるでしょう。

 中隊政治指導員が長姉の心情で軍人に接してこそ、かれらが中隊政治指導員を訪ねてきて、胸のうちを明かすものです。中隊政治指導員は、隊員が訪ねてきてその気持ちを訴えるとき、話を最後まで聞いて、大きな欠陥はよく諭して直ちに是正させ、プライバシーは必ず守ってやらなければなりません。

 中隊長と中隊政治指導員は、軍事的任務の遂行でも、また軍人の教育でも足なみをそろえるべきです。中隊長が中隊政治指導員をさしおいて独断で行動してはならず、また、中隊政治指導員が中隊長をしりめに意のままに行動してもなりません。中隊長がある隊員を厳しく批判したとすれば、中隊政治指導員はその隊員に会って気持ちをほぐし、欠陥を早く是正するよう諭すといったふうに歩調をあわせるべきです。このように、中隊長と中隊政治指導員が足なみをそろえてこそ、中隊の全般的活動が順調に進められるのです。

 中隊長と中隊政治指導員がその役割を円滑に果たすためには、気高い共産主義的・戦闘的道徳品性を身につけなければなりません。

 中隊長、中隊政治指導員が、共産主義的・戦闘的道徳品性を身につけることは、中隊をかため、その戦闘力を高めるうえで極めて大きな意義をもちます。中隊長、中隊政治指導員が、共産主義的・戦闘的道徳品性を身につけてこそ、日常生活や戦闘の困難な状況下でも中隊の軍人に模範を示し、軍人が集団的英雄主義を発揮して革命任務を遂行するよう、かれらを導くことができます。したがって、中隊長、中隊政治指導員は、次に述べるような気高い共産主義的・戦闘的道徳品性を身につけるためにつとめなければなりません。

 第1に、中隊長、中隊政治指導員は、勇敢でなければなりません。中隊長、中隊政治指導員が勇敢でなく卑怯であれば、軍人はかれらを慕いません。そうなれば、中隊長、中隊政治指導員は中隊を正しく導くことができず、敵と戦っても勝つことができません。したがって、中隊長、中隊政治指導員は戦場で砲声がとどろき、少々胸がふるえることがあっても、それを克服して勇敢さを発揮し、困難なときには人に先んじて突き進むべきであります。中隊長、中隊政治指導員は、日常生活や戦闘においてけっして卑怯であってはならず、勇敢でなくてはなりません。

 第2に、中隊長、中隊政治指導員は、強靱な意志をもたなければなりません。強靱さに欠け、意志が薄弱であっては、些細な困難にもしりごみしてしまいます。意志の薄弱な人はなにごともなしえません。中隊長、中隊政治指導員は、軟弱さを排撃し、いかなる困難や試練をも克服する強靱な意志をつちかうことに大いにつとめなければなりません。

 第3に、中隊長、中隊政治指導員は、なにごとによらず責任感を高めなければなりません。中隊長、中隊政治指導員は、党と最高司令官にたいし人民軍の一細胞の責任を負っており、多くの軍人の生命にたいし責任をもっていることを常に忘れてはなりません。中隊長、中隊政治指導員は、なにごとであれ無責任にいい加減にする傾向を一掃し、すべてのことを強い責任感をもっておこなわなければなりません。

 第4に、中隊長、中隊政治指導員は、規律を厳格に守らなければなりません。中隊長、中隊政治指導員は、出勤時間と訓練時間を厳格に守ることからはじまり、軍事規定の要求するすべての規律を模範的に守るべきです。そうしてはじめで、隊員に規律の遵守を強く要求できるのであって、そうでなくては規律の遵守を隊員に要求できません。中隊長、中隊政治指導員にはいささかも無規律な傾向があってはならず、規律と所定の秩序を自発的に守らなければなりません。

 第5に、中隊長、中隊政治指導員は、高度の組織性をもたなければなりません。中隊長、中隊政治指導員に高度の組織性が欠けていれば、中隊内に非組織的で無政府的な傾向が生じかねません。組織の規律を自発的に守り、なにごとにおいても組織活動を綿密に進め、中隊内に些細な非組織的傾向も生じないようにすべきであります。

 第6に、中隊長、中隊政治指導員は、忍耐力がなければなりません。中隊長、中隊政治指導員は、事がうまく運ばなかったり、腹立たしいことがあってなにかをひっくり返してしまいたいような衝動にかられても、こらえなければなりません。また中隊長、中隊政治指導員はなにごとにおいても焦ってはなりません。

 第7に、中隊長、中隊政治指導員は、常に楽天的に生活し、戦わなければなりません。中隊長と中隊政治指導員の表情一つひとつが兵士たちに大きな影響を及ぼします。特に、戦場での表情は兵士の士気を大きく左右します。兵士は、中隊長と中隊政治指導員が憂いに沈んだり暗い表情をしたりすれば、戦いが失敗したものと思い、勇気を失って座りこんでしまうようになります。しかし、中隊長と中隊政治指導員が、たとえ死に直面しても悲観することなく楽天的に戦うならば、兵士も死を恐れず勇敢に戦うものです。したがって中隊長と中隊政治指導員は、いかなる苦境にあっても悲観することなく楽天的に生活し、戦わなければなりません。

 第8に、中隊長、中隊政治指導員は、同志との団結につとめなければなりません。中隊長、中隊政治指導員がでくのようにコチコチで、ひとり、人とかけはなれていたのでは、同志たちと親しむことも、団結することもできません。中隊長、中隊政治指導員は、いつでも同志たちとよく交わり、親切でなければなりません。なにか食べ物があっても兵士と分けあって食べ、兵士が難関にぶつかれば、かれらとともに克服していかなければなりません。こうしてこそ、兵士は、中隊長や中隊政治指導員をいっそう慕うようになり、中隊内の同志的団結が強まります。中隊長、中隊政治指導員は、個人主義的傾向に陥ることなく、同志たちとの団結につとめなければなりません。

 第9に、中隊長、中隊政治指導員は、労働者階級の革命性を身につけなければなりません。中隊長、中隊政治指導員は、党と人民のために断固たたかうべきであり、革命の利益を侵そうとするいっさいの反動的傾向と妥協することなくたたかわなければなりません。

 第10に、中隊長、中隊政治指導員は、党と革命にあくまでも忠実でなければなりません。党と革命にたいする忠実性は、党の路線と政策を貫徹するための党組織の決定と上部の命令、指示の実行にあらわれます。したがって、中隊長、中隊政治指導員は、党組織の決定と上部の命令、指示を忠実に実行する習性をつちかわなければなりません。

 中隊長、中隊政治指導員は、10の品性、すなわち勇敢さ、強靱さ、責任感、規律性、組織性、忍耐力、楽天性、団結性、革命性、忠実性を所有しなければなりません。もちろん、中隊長、中隊政治指導員の身につけるべき共産主義的・戦闘的道徳品性には、このほかにもまだあるでしょう。しかし、上述した10項目が共産主義的・戦闘的道徳品性の最も重要な内容であるといえましょう。中隊長、中隊政治指導員は、この10項目を指針として自分の一つひとつの行動を常に検討してみなければなりません。このようにして、すべての中隊長、中隊政治指導員が、人民軍の指揮官としての品格をしっかりと身につけるべきであります。

 中隊長、中隊政治指導員は、すべての活動と生活で率先垂範する革命家的気風を示さなければなりません。

 中隊長、中隊政治指導員が率先垂範することは、中隊を強化し、戦闘の勝利を保障する極めて重要な条件の一つであります。中隊長と中隊政治指導員が、体をきれいにし、身なりを端正にし、規律と秩序を厳格に守り、学習と訓練で模範を示せば、中隊の全軍人が中隊長と中隊政治指導員に見習うことでしょう。中隊長、中隊政治指導員が率先垂範するのは、特に戦時にいっそう重要になります。戦いにのぞんで突撃を敢行する場合、中隊長と中隊政治指導員がしんがりで命令するだけでは、兵士が突撃をためらいます。中隊長と中隊政治指導員が先頭に立ってこそ、兵士もそれにつづいて勇敢に突撃するものです。

 中隊長、中隊政治指導員の率先垂範が重要であることは、抗日遊撃隊の経験がよく示しています。当時、朝鮮人民革命軍の部隊は、冬季に行軍して宿営地に到着すれば丸木を伐ってたき火をたいたものでした。しかし、終日深い雪のなかを行軍したあとで丸木を伐り倒すというのはたやすいことではありませんでした。それで、部隊が宿営地に到着すると、中隊長と中隊政治指導員が先におのをとって木を伐ったものです。中隊長が宿営地の周辺に歩哨を立たせるために出かければ、中隊政治指導員が先におのを手にし、中隊政治指導員が歩哨勤務を組織しに行けば、中隊長が先におのを手にしました。このように、中隊長と中隊政治指導員が率先垂範したため、隊員も疲労をものともせず先を争って木を伐ったものです。抗日武装闘争当時、中隊長、中隊政治指導員は、戦闘でも常に隊員の先頭に立つことによって、勝利を保障したのであります。

 人民軍の中隊長と中隊政治指導員はいずれも、朝鮮人民革命軍の指揮官や政治幹部のように、すべての活動と生活で隊員に模範を示し、困難を前にしては真っ先にそれにぶつかっていく革命的気風を確立しなければなりません。

 中隊長、中隊政治指導員はまた、革命的同志愛にもとづく団結を強化するため積極的に努力しなければなりません。

 革命的同志愛にもとづく団結は、人民軍の不敗の力の源であり、すべての勝利の裏付けであります。私がいつもいっているように、革命は、けっしてひとりでできるものではありません。革命に勝利するためには、革命闘争に多数の人が参加し、かれらのあいだに統一と団結が保障されなければなりません。革命活動に参加する人たちの真の統一と団結は、革命的同志愛によって裏打ちされるのです。

 同志という言葉は、同窓生や同郷の友、飲み友達などをさす言葉ではありません。それは、思想と志をともにし、革命のため、社会主義・共産主義のためともにたたかう人たちのあいだで交わされる呼称です。

 同志愛は、親の愛や妻子の愛、親友間の愛より深く、貴重なものです。かつての小説には、父と子の愛情、母と子の愛情、夫婦愛などの人間関係がかなり扱われています。しかし、人間関係で最も貴重なのは革命的同志愛です。

 人間関係で革命的同志愛がなによりも貴重であるというのは、長い革命闘争の過程で形成された我々の人生観であります。私は、これまで両親の愛よりも同志の愛を多くうけてきました。私が父の愛をうけたのは14歳までで、その後はひたすら同志たちの愛情につつまれて生きてきました。私は、革命運動を開始したときからこんにちまで、多くの同志と苦楽をともにしてきました。特に、かつて地下運動と抗日武装闘争のとき、多くの同志が困難や危険をおかして私を助け、保護してくれました。我々はこのような革命闘争の過程をとおして、同志愛がなによりも貴重であることをはっきり体験しました。それで、私はさまざまな愛に順序をつけるときは、いつも同志愛を一番とし、次に、親の愛、妻子の愛、友人の愛としています。

 しかしある人たちは、親の愛や妻子の愛を同志愛の上におきます。このような人は、同志愛がどれほど貴いものであるかを知らないのです。親の愛がいかに深くても同志愛より深いものではありません。多くの場合、親は子を生み育てるだけであって、我が子と革命の道で苦楽をともにするわけではありません。したがって、親の愛や妻子の愛が、革命の道で生死、苦楽をともにする同志たちの愛より貴いはずはないのです。

 いま南朝鮮の反動層は、共産主義者は親も兄弟も知らない人間だと非難していますが、これは我々を中傷するためのものです。共産主義者は、親の愛や妻子の愛を否定しないばかりか、それを同志愛と結びつけることによって最も深い真の愛とならしめています。

 共産主義者は、同志愛を貴ぶだけでなく、同志的信義にもあつい人たちです。我々は、解放直後の極めて困難な国情のもとでも、抗日革命闘争に参加して犠牲になった同志への信義を守って、真っ先に万景台革命学院を設立し、その子弟をひきとって教育しました。現在では、解放後祖国の完全な統一、独立を実現し、社会主義の獲得物を守るため勇敢にたたかって倒れた同志たちの子弟もひきとって教育しています。我々共産主義者が同志的信義にあついのは、同志愛を貴んでいるからです。

 人民軍を創建した当時、我々には同志が多くいませんでした。人民軍の創建後こんにちにいたるまで革命闘争をつづける過程で革命の同志が著しく増え、我が人民軍は、革命的同志愛にもとづき一つの思想、一つの意志によってかたく団結した不敗の革命隊伍に成長しました。これは、我が党の光栄であり、朝鮮人民の光栄であり、祖国の光栄であります。革命的同志愛にもとづいて団結した不敗の人民軍があるがゆえに、祖国はさらに隆盛発展し、朝鮮人民は自己の運命をよりいっそう強く党にゆだねるようになるでありましょう。我が党は、革命的同志愛にもとづいて統一団結した不敗の人民軍をもっているがゆえに、あらゆる階級の敵を容赦なく粉砕して朝鮮革命の全国的勝利を達成し、世界革命により立派に貢献することができるのであります。我々は、革命的同志愛にもとづいて団結した偉大な力、不敗の人民軍をもっていることを無上の光栄としています。

 しかし、我々は、けっしてこれに自己満足してはなりません。

 中隊長、中隊政治指導員は、革命的同志愛の伝統的美風をさらに発揮させ、革命的同志愛にもとづく中隊内軍人の団結をひきつづき強化すべきであります。

 中隊長、中隊政治指導員は、隊員との関係をたんなる上下関係としてではなく、まず同志的関係として見なければなりません。人民軍の軍人は、兵士、将校、将官の別なく誰もが革命のために銃をとって戦う革命の戦士であり、敵との戦いで生死、苦楽をともにする革命の同志であります。したがって、人民軍の軍人間の関係は、なによりも同志的関係としてなりたちます。まさにここに、我が人民軍が資本主義諸国の軍隊と区別される特徴の一つがあります。

 我々は、この大会に参加した中隊長、中隊政治指導員と我々の関係も、たんなる上級と下級間の関係とは見ていません。みなさんは、苦難にみちた革命の道で我々とともに戦うことを誓った同志であり、革命の戦友であり、真の兄弟であります。

 人民軍がかかげている上下一致、将兵一致のスローガンも、すべての軍人が革命的同志愛の気高い美風を大いに発揮するとき、立派に実現されます。中隊長、中隊政治指導員は、革命的同志愛の美風が全中隊にみなぎるようにして、将校と兵士、上級と下級が真に一心同体となるようにしなければなりません。

 中隊長、中隊政治指導員が、革命的同志愛を発揮させ、同志的団結を強化するためには、同志の欠陥を適時に批判し是正させなければなりません。中隊長、中隊政治指導員が、同志的団結の強化を口実に、軍人の欠陥をかばったり、批判を避けたりしてはなりません。同志の欠陥を批判しないのは、同志を愛することではありません。

 我々は同志が誤りをおかせは、それを見逃すことなく厳しく批判し、ときには処罰も加えます。こうして、かれらが我々との同志的関係をもちつづけ、革命の花を咲かせつづけるようにしています。こうすることこそ、真に同志を愛することであります。

 中隊長、中隊政治指導員は、中隊内の軍人に欠陥があらわれれば直ちに批判し、是正させることによって、革命的同志愛にもとづく思想、意志の団結を不動のものとしなければなりません。こうして、我が人民軍が、一当百の軍隊として不敗の威力をいかんなく発揮するようにしなければなりません。

 次に中隊を強化するためには、中隊内の軍人を我が党のチュチェ思想で武装させ、中隊内に党の唯一思想がみなぎるようにしなければなりません。

 我が党のチュチェ思想は、長年の革命闘争過程で創造されたマルクス・レーニン主義的革命思想であります。チュチェ思想は、革命と建設で提起されるすべての問題を自分の頭で考え、判断し、自力で解決することを要求し、すべてを自国の革命と自国人民の利益に服従させることを要求しています。

 我が党のチュチェ思想は、政治における自主、経済における自立、国防における自衛の原則に具現されています。

 我が党は、常に自主性の原則に立ってすべての路線と政策を決定し、自力でそれを貫徹しています。解放直後、内外の情勢が複雑かつ困難を極めていた時期にも、党は土地改革をはじめ、民主諸改革を実施する独創的な方針をうちだし、短期間のうちに正しく実行しました。

 我が党は、国際関係分野における問題も自主性の原則にもとづいて解決しています。数日前、イスラエル侵略者がエジプトとシリアへの大規模な武力侵攻を開始したとき、我が党は世界のどの国よりも先にエジプト人民とシリア人民の正義の戦いを無条件支持する手紙を送りました。エジプトとシリアの人民がイスラエル侵略者に奪われた領土を奪還するために戦うのは当然のことであり、マルクス・レーニン主義の原則にも合致するものであります。したがって我が党と人民は、中近東戦争にたいする他国の態度にはかかわりなく、自主的な立場からエジプトとシリア人民の闘争を積極的に支持声援しているのです。我々は、チリの軍事ファシスト一味が反動的軍事クーデターを起こしてアジェンデを殺害し合法的な人民統一政府をくつがえしたときにも、自主的な立場から、もはやチリとの国家関係を維持する必要はないと判断し、チリ駐在の我が国大使館を撤収する措置をとりました。このように、我が党が自主路線を貫徹しているため、共和国の国際的権威と威信は日ましに高まっているのです。

 我が党は、自衛の原則に立って祖国と人民を防衛し、革命の獲得物を守るため、国防力の強化にも大きな力をそそぎました。解放後、我が党は、なにもない状況のもとでもためらうことなく平壌学院と中央保安幹部学校を設立し、優秀な青年を集めて人民武力建設に必要な幹部を養成し、そうした準備にもとづいて人民軍を創建しました。我が党が人民軍を適時に創建し、強化発展させたため、祖国解放戦争でアメリカ帝国主義侵略者を撃破し、歴史的な勝利を達成することができたのです。我々の国防力がこんにちのように強化されたのは、もっぱら党の自衛的軍事路線を確実に貫徹した結果であります。

 かつて一部の不純分子は、自衛を唱えたのでは他国の援助をうけることができないといって、党が提起した自衛の軍事路線に反対しました。自衛とは、自力で自分を守るという意味です。我が党の自衛的軍事路線は、我々に必要な一部の兵器を他国から援助してもらうことを排除しません。我々にない一部の兵器を他国の援助によって充足しても、自力によって朝鮮革命と民族の利益を防衛すれば、それは自衛であります。党は、不純分子の策動を適時に粉砕し、自衛の軍事路線を堅持しました。

 政治における自主、経済における自立、国防における自衛の路線は、朝鮮人民の実践闘争をつうじて、その正しさと生命力がはっきり証明されています。こんにち世界の多くの人がチュチェ思想を具現した我が党の自主、自立、自衛の路線の正しさを認識し、これを積極的に支持しています。

 チュチェ思想は、我が党の唯一の指導思想であります。我が党には、ただチュチェ思想が存在するのみです。チュチェ思想以外の思想潮流は党内において絶対に許されません。

 人間にたとえれば、我が党はチュチェの血統をもった党だといえます。党内にはチュチェ型の血液だけが必要であって、他の型の血液がはいりこんでは絶対になりません。人の体内に輸血をするとき、血液がA型の人にはそれにあった血液を輸血すべきであって、B型の血液を輸血すれば、発熟したり、死にいたることもありえます。これと同様にチュチェの血統をもつ我が党内には、チュチェ型の血液のみが循環すべきであって、事大主義型の血液や修正主義型の血液が混入すれば、我が党は革命的な党になれず、自己の存在そのものも維持できなくなります。一人の体内にはただ一つの型の血液のみが存在するように、一つのマルクス・レーニン主義党内には一つの指導思想だけが存在すべきであります。これは、マルクス・レーニン主義党建設の根本原則であります。

 マルクス・レーニン主義党内にただ一つの指導思想のみがあってこそ、党が健全に発展し、革命闘争を勝利に導きうるということは、我が国の初期共産主義運動の経験がよく示しています。我が国の初期共産主義運動が失敗した主な原因は、共産主義運動の隊伍が一つの革命思想、マルクス・レーニン主義的な指導思想にもとづいて統一団結できなかったところにあります。

 我が国の初期共産主義運動の隊伍内には、M・L派、火曜派その他さまざまの分派が生まれて派閥争いが絶えませんでした。結局、初期共産主義運動は失敗に帰したのであります。我々は、我が国の初期共産主義運動のこの苦い教訓をけっして忘れてはなりません。

 我々は、マルクス・レーニン主義党建設の原則と我が国の革命運動の経験をふまえて、すでに久しい前に、党の唯一思想体系の確立を最も重要な課題として提起し、全党と全人民を我が党の指導思想であるチュチェ思想で武装させるためたゆみない努力を傾けてきました。その結果、こんにち我が党は、不敗の党に強化されました。今後も全党、全人民をチュチェ思想で武装させる活動を不断に深めていくべきであります。

 人民軍の細胞である中隊内に党の唯一思想体系を確立するのは、中隊強化の基本的な保障であります。

 中隊内には、我が党の唯一の指導思想であるチュチェ思想のみが存在すべきであり、それに反する他の思想が絶対にあってはなりません。中隊内にチュチェ型の血液のみが循環してこそ、中隊が健全に発展することができます。もし、中隊内に我が党のチュチェ思想に反するブルジョア思想や事大主義、教条主義、修正主義などの不健全な思想潮流が混入するならば、そのような中隊は崩壊してしまいます。

 一部の人は、軍人に新式の銃をかつがせれば、軍隊の戦闘力が強化されると考えていますが、これはたいへんな誤りであります。革命軍である我が人民軍の戦闘力を強化する基本的な保障は、兵器や技術よりも、すべての軍人を我が党のチュチェ思想でかたく武装させることにあります。中隊のすべての軍人をチュチェ思想で武装させてこそ、中隊は強力な戦闘力をもった隊伍になり、その使命をまっとうすることができるのです。中隊長、中隊政治指導員は、中隊の軍人を我が党のチュチェ思想で武装させることを政治・思想教育の基本的課題とし、チュチェ思想教育を着実におこなうべきであります。そうして、すべての軍人をチュチェ思想でかたく武装させ、中隊内に党の唯一思想がみなぎるようにしなければなりません。

 中隊でチュチェ思想教育を強化する一方、共産主義教育に力を入れなければなりません。

 共産主義教育での基本は、階級的教育であります。中隊で階級的教育を強化し、すべての軍人が、地主、資本家と搾取制度を心から憎み、搾取階級と搾取制度を徹底的に打倒するという革命的自覚をもつようにすべきであります。

 また、中隊で社会主義的愛国主義教育を強化して、軍人が社会主義祖国を熱烈に愛し、社会主義制度の防衛に献身するようにしなければなりません。

 次に、軍事訓練を強化すべきであります。

 現代は、軍事科学技術が高度に発達した時代であります。軍事科学技術の発達にともなって軍隊の装備が近代化され、軍人の技術水準もかつてなく向上しました。

 こんにち、我が人民軍の装備も近代化され、軍人の技術水準も著しく向上しました。もっとも人民軍は、アメリカ帝国主義侵略軍と比較して航空機、原爆、航空母艦のようなものは少ないか、または持っていません。だからといって、人民軍が敵と戦って勝てないという根拠はありません。戦争の勝敗は、けっして原爆や航空母艦、航空機などによって決定されるものではありません。

 アメリカ帝国主義者は原爆をもっているからと居丈高になっていますが、少しも恐れることはありません。我が人民軍は、原爆よりさらに強力な人民の団結した力に確固と依拠しており、世界人民の強い支持声援をうけています。アメリカ帝国主義者は、第2次世界大戦以後、世界人民の圧力によって原爆を使用できずにいますが、これからも使えないでしょう。

 航空機も問題視することはありません。先の祖国解放戦争のとき、アメリカ帝国主義者は航空機をもって蛮行をほしいままにしましたが、朝鮮人民を屈服させることはできなかったし、ベトナム戦争でも無数の航空機を出動させ7、8年間もじゅうたん爆撃を加えましたが、ベトナム人民を屈服させることはできませんでした。いまでは、かれらが意のままに航空機を我が国の領空に侵入させることはできません。我々の勇敢な航空兵は、敵機が我が国の領空を侵犯しさえすれば、一撃のもとに撃墜することができます。また、我々が各種の対空兵器を効果的に利用して侵入する敵機をそのつど撃墜するならば、敵は自由に航空機を侵入させることができなくなるでしょう。

 アメリカ帝国主義者は、ことあるごとに航空母艦をくりだしては大言をはいていますが、それも恐れるに足りません。航空母艦を済州(チェジュ)島沖に出動させるとしても、敵機はせいぜい黄州(ホワンジュ)の上空あたりまで飛来できるくらいで、それ以上の侵入は困難でしょう。航空機の飛行時間には限度があり、長距離飛行して爆撃したのでは帰投することができません。敵が共和国北半部の領空深くまで航空機を侵入させるには、航空母艦を元山沖まで出動させざるをえませんが、その場合には我々はなんとしてでもそれを撃沈するでありましょう。

 上述したように、敵は、原爆や航空機、航空母艦などをもってしては革命軍である人民軍を屈服させることができません。我々が戦争に対処する準備に万全を期せば、技術的優位を誇る敵と戦っても十分勝利することができます。問題は、我々が戦争の準備をいかにととのえるかにかかっています。

 戦争で勝利するためには、なによりも政治的・思想的準備を十分にととのえなければなりません。人民軍の全軍人が、高度の党性、労働者階級性、人民性を所有し、勇敢さと犠牲的精神、強靱な革命的意志をもってこそ、戦いで勝利することができます。

 政治的・思想的準備とともに肉体的準備もしっかりとととのえなければなりません。体が強健であってこそ、行軍や水泳、障害物の克服も立派におこなうことができます。虚弱な体ではなにごとも満足にできません。人民軍の全軍人は、いかに困難な環境や状況をも十分に克服できる強い体力を所有しなければなりません。

 軍事技術的にも十分な準備をととのえなければなりません。いかに勇敢な軍人であっても、兵器を操作できなければ、敵と戦えません。人民軍の全軍人は、兵器と戦闘技術機材に精通し、それを巧みに扱えなければなりません。

 人民軍が敵と戦って勝利するためには、すべての軍人が政治的・思想的準備、肉体的準備、軍事技術的準備をすべて十分にととのえなければなりません。軍人が、肉体的、技術的に準備できていても、政治的・思想的準備に欠けていれば、いかに強健な体力や高度の技術を所有していても役に立ちません。また軍人が、政治的、思想的に、軍事技術的に準備できていても、肉体的準備がともなわなければ、「脚の折れた武将座して見えを切る」のたとえどおり、欲は大きくても戦場にのぞんでは思いどおりに戦えません。また軍人が、政治的、思想的に、肉体的に準備できていても、軍事技術的な準備に欠け、手榴弾や地雷などの扱い方を知らず、射撃も下手であっては、敵を撃滅することができません。それゆえ、人民軍の軍人は誰をとわず3つの準備、すなわち、第1に政治的・思想的準備、第2に肉体的準備、第3に軍事技術的準備に万全を期さなければなりません。

 人民軍のすべての将校、下士官、兵士が、政治的、思想的に、肉体的に、軍事技術的に十分な準備ができていれば、我が人民軍は一当百にまさる一騎当千の革命軍になれます。そうなれば南朝鮮のかいらい軍はいうに及ばず、アメリカ帝国主義侵略者や日本軍国主義者が襲ってきても、徹底的に掃滅することができます。

 私はきょう、党の総書記、最高司令官として、中隊長、中隊政治指導員のみなさんに、中隊のすべての軍人を政治的、思想的に、肉体的に、軍事技術的に十分準備させるよう訴えます。

 軍人を政治的、思想的に、肉体的に、軍事技術的にしっかりと準備させるためには、政治・思想教育と軍事訓練をいちだんと強化しなければなりません。政治・思想教育を強化することについてはすでに強調したので、軍事訓練を強化することについてのみ述べようと思います。

 軍事訓練でなによりも重要なのは、我が国の実情と現代戦の要請にふさわしい主体的な軍事学にしっかり依拠することであります。外国の軍隊の戦闘規定や戦法は我が国の実情に適しません。したがって人民軍は、あくまでも我が国の具体的な実情と現代戦の要請に応じた主体的な軍事学に依拠して軍事訓練を実施すべきであります。こうして、すべての軍人が百発百中の射撃術を習得し、険しい山や大きな川、絶壁、湿地などの障害物を立派に克服し、厳寒にも十分に耐えられるようにしなければなりません。

 まず、体育訓練を強化すべきであります。軍人は強健な体力と強い意志を所有してこそ、いかに困難な状況のもとでも軍事的任務を立派に遂行することができます。

 最近ある空挺隊の落下訓練中、一隊員が落下傘が開かなくて800メートルの上空から墜落したにもかかわらず、無事だったとのことです。それを天命だという人もいましたが、天命などというものはありえません。天が生命を与えたので、死をまぬがれたのではありません。かれが死ななかったのは、意志が強く身体が強健で、日常の訓練で落下動作を完成していたからです。もし、かれが心身ともに弱く、落下動作が未熟であったなら、とうてい助からなかったでしょう。

 中隊では、鉄棒、平行棒、障害物克服など各種目の体育訓練を強化し、すべての軍人に強健な体力を所有させるべきであります。

 水泳の訓練にも力を入れるべきです。我が国は、三面が海にかこまれ、川や湖もいたるところにあります。したがって、すべての軍人が水泳に上達しなければなりません。軍人は水泳が巧みであってこそ、遠くの海まで出撃して敵の航空母艦を撃破し、海戦中に艦艇が破損しても泳いで帰隊することができます。

 数年前、一隻の小型船が航海中に難破したことがありましたが、乗組員は別状なく全員無事に生還しました。そのとき航空機まで動員して、数日間捜索に全力をつくしましたが、ついに発見できませんでした。ところが、かれらは泳いで8日目に祖国へ帰ってきたのです。かれらが困難にめげず激浪を乗り切って祖国のふところにいだかれたのは、全員が意志強固で勇敢なうえに水泳が巧みであったからであります。意志が強く、勇敢で体力の強健な人はたやすく死ぬものではありません。

 水泳の訓練を強化してすべての軍人が大きな川や海を少しも恐れることなく、水上を何日でも泳げるようにすべきであります。軍人に水泳を教えるためには、プールを建設しなければなりません。1211高地のような高山に駐屯する部隊ではプールの建設が困難でしょうが、そうでないところでは十分プールがつくれるはずです。

 中隊は、行軍訓練をさかんにおこなうべきです。

 行軍能力は、戦闘の勝敗を左右する重要な条件の一つです。人民軍が敵と戦うためには、敵に接近しなければならず、必要に応じては後退もしなければなりません。そのためには、山を越え、川を渡り、絶壁を克服し、湿地帯も通過しなければなりません。中隊は行軍訓練を強化し、すべての軍人がいかに行軍路が遠く険しくても、機動性を保障するようにすべきであります。

 行軍訓練は、歩兵だけでなく、すべての軍種、兵種の部隊がおこなわなければなりません。

 戦車兵も行軍になれていなければなりません。戦車兵が、自分たちは戦車に乗って戦うのだから、徒歩訓練の必要はないと考えるなら、それは誤りです。もちろん、戦車兵は戦車に乗って戦うのが基本です。しかし、戦闘中に戦車が使えなくなれば、歩兵とともに銃を取って戦わなければなりません。したがって、戦車兵も平時に行軍訓練をさかんにおこなうべきであります。

 航空兵の場合も同じです。航空兵が歩くのを嫌って、飛行場への往復にまで車を利用しようとしてはなりません。航空兵だからといっていつも飛行機に乗っているわけにはいきません。もし、航空兵が戦闘中敵中に降下すれば、いち早く身を避け、人民を組織して遊撃闘争を展開しなければなりません。航空兵も徒歩訓練に力を入れ、いかなる状況のもとでも敵と立派に戦えるように準備すべきであります。

 機械化歩兵も車に乗ろうとばかりせず、行軍訓練を多くおこなうべきであります。もちろん車を利用すれば、苦労せず迅速に移動できるでしょう。しかし、戦時に車が破損したり、利用できなくなった場合には歩くほかありません。広大な砂漠や平野をもつ国では機械化部隊を基本にして戦えるでしょうが、我が国ではそうすることができません。我が国は、いたるところに高地があり、くぼ地があり、湿地帯があります。特に我が国には、山が非常に多いのです。したがって軍人は、戦時にトラックや装甲車を利用して敵と戦おうとばかり考えてはいけません。我が国で戦争が起きれば、車に乗って移動しながら戦う場合より、徒歩行軍しながら戦う場合のほうが多いでしょう。したがって、軍種や兵種の別なく、平時に行軍訓練を強化すべきであります。

 乗用車を利用している指揮官の場合も歩く訓練を十分にする必要があります。急を要するときには車を利用すべきですが、そうでないときには歩くのがよいでしょう。車に乗りつけていて、急に歩くことになると非常に骨がおれ、思うように歩けないものです。人民軍の指揮官は登山もし、徒歩訓練にも力を入れ、有事のさいに立派に戦闘を指揮できるようにならなければなりません。

 行軍訓練で特に重要なのは、夜間行軍の訓練を多くおこなうことです。軍人が平時に夜間行軍の訓練を怠れば、戦闘行動のときに苦労し、大きな損失をこうむりかねません。先の祖国解放戦争のさい、夜間行軍訓練の不十分な一部の軍人は、幾日も眠れずに行軍したとき、居眠りをして落伍した例もあります。抗日武装闘争時代に私も体験したことですが、何日も眠らずに夜間行軍をつづけるのは並大抵のことではありません。夜間行軍のさい眠気に負けてはなりません。兵士もそうですが、とりわけ指揮官は居眠りをしてはなりません。指揮官はいかなる不意の状況に遭遇しても、即刻それに対応しなければなりません。それゆえ指揮官、兵士のいずれをとわず、すべての軍人が夜間行軍訓練を多くおこない、何日も眠らずに行軍できる能力をつちかわなければなりません。

 耐寒訓練を強化すべきであります。耐寒訓練を強化して軍人が寒さに負けないようにすることは、戦争の準備で極めて重要な意義があります。平時に耐寒能力をつちかわなければ、戦闘時に凍傷者が生ずるおそれがあります。もし、戦闘のさいに多くの凍傷者が出れば、そのような中隊は戦闘任務をまっとうすることができません。今後我々は酷寒の冬期に戦闘を多くおこなって、敵にせん減的打撃を加えるべきであります。いま、日本軍国主義者は我々と戦う目的で、数個師団を北海道に送って耐寒訓練にあたらせているそうです。日本軍国主義者がいくら耐寒訓練をつんで侵略してきても、我々が耐寒訓練を十分にしておけば、いくらでも敵を撃滅することができます。

 我が国には、耐寒訓練に適した地帯がたくさんあります。前線地帯の平康(ピョンガン)、准陽(ヘヤン)などは耐寒訓練の適地です。かつて、日本帝国主義者は抗日遊撃隊の「討伐」を目的に、平康で耐寒訓練をしたとのことです。北方駐屯部隊は、長津(チャンジン)、赴戦(プジョン)などで耐寒訓練をおこなえるでしょう。今後すべての部隊、すべての区分隊が耐寒訓練に力を入れるべきであります。こうして、いかなる厳寒のもとにあっても、軍人が手足の凍傷にかからず戦闘任務を立派に遂行できるようにしなければなりません。

 射撃訓練にも力を入れなければなりません。軍隊は、どの兵種をとわず射撃術に長じていなければなりません。射撃にたけていてこそ多くの敵を掃滅することができます。命中率を高めるには兵器の性能もよくなくてはなりませんが、それより、なお射撃訓練を強化することが重要であります。特に夜間射撃訓練に力を入れるべきであります。将来戦争が起きれば、人民軍部隊は夜間戦闘を多くおこなわなければならないだけに、軍人は夜間射撃が巧みでなければなりません。歩兵部隊や狙撃部隊は、昼間行動より夜間行動を主とするため、人一倍夜間射撃が巧みでなければなりません。航空兵や水兵も夜間の射撃に上達しなければ、敵により大きな打撃を加えることができません。すべての中隊が、射撃訓練、特に夜間射撃訓練を強化し、すべての軍人に昼であれ夜であれ百発百中する射撃術を所有させなければなりません。

 本大会には、技術兵種区分隊の中隊長、中隊政治指導員も多数参加しているので、技術兵種訓練について若干述べようと思います。砲兵、戦車兵その他の技術兵種の中隊長、中隊政治指導員は、区分隊の戦闘力を強化するため、兵種の特性に応じて戦闘訓練を正しく組織すべきであります。

 砲兵訓練の基本は、命中率を高めることにあります。砲兵が、砲弾を目標に命中できなければ砲兵とはいえません。みなさんの使っている砲弾は非常に高価なものです。以前は砲弾1発が雄牛1頭に値するといわれましたが、いまみなさんが保有している砲弾一発は、10頭の雄牛を出しても買えないものです。砲兵は、砲撃訓練を強化して命中率を最大限に高め、貴重な砲弾を浪費することのないようにすべきであります。砲兵はまた、火砲に精通し、故障は独力でただちに直せるようにならなければなりません。

 戦車兵の訓練で重要なのは、湿地を巧みに克服することであります。我が国には、かなり多くの湿地があります。特に夏季には田んぼに水が引かれているので、平地はほとんどが湿地となります。戦車兵は、大道路だけで訓練すべきでなく、湿地における訓練を強化し、いかにすれば湿地を容易に克服できるかを常に研究しなければなりません。

 通信兵の訓練も強化すべきであります。戦時における通信兵の役割は極めて重要であります。先の祖国解放戦争のさい、一部の通信兵は、技術水準が低く、通信器材も完備していなかったため、各自の役割を十分に果たすことができませんでした。通信兵は訓練の質をさらに高め、さまざまな方法と手段を用いて指揮通信を円滑に保障できるようにしなければなりません。軍需工業部門では、より高性能の通信器材を大量生産して人民軍に供給すべきであります。

 次に、給養活動を改善すべきであります。

 給養活動で重要なのは、軍人への食肉の供給を正常化することであります。人民軍の全部隊が軍人への食肉供給を正常化できるように冷凍庫を増設するとともに、既存の冷凍設備を十分に整備すべきであります。

 部隊内の経理施設も充実させるべきであります。洗濯所、衣服修繕所、靴修繕所、理髪店などを完備し、軍人の生活にいささかの不便もないようにすべきであります。また、現有製靴工場の能力を高め、軍人に靴を十分に供給できるようにしなければなりません。

 飲料水問題も円滑に解決すべきであります。いま農村では、大衆的運動で水道化をおし進めていますが、人民軍でも水道化の実現に積極的に取り組んで、すべての軍人に浄化された水を供給すべきであります。

 後方総局の責任幹部をはじめ、給養部門の働き手は、常に兵士に十分な食事と休息をとらせ、訓練で成果をあげられるよういっさいの条件をととのえなければなりません。中隊長、中隊政治指導員も兵士の生活に深い関心を払わなければなりません。

 同志のみなさん!

 こんにち、全般的な国際情勢は、朝鮮革命に有利に進展しています。

 日とともに、世界のますます多くの国の人民が、我が党の祖国統一方針を積極的に支持し、朝鮮人民の革命闘争にかたい連帯を表明しています。特に、我々がこの6月に提示した祖国統一の5大綱領を支持する世界の進歩的人民の声がさらに高まっています。

 最近アルジェリアで開催された第4回非同盟諸国首脳会議は、アメリカ帝国主義と南朝鮮反動層の「2つの朝鮮」策動を糾弾し、祖国の自主的平和統一をめざす朝鮮人民の闘争にかたい連帯を表明しました。第4回非同盟諸国首脳会議では、朝鮮の内政にたいするあらゆる形の外部勢力の干渉にピリオドを打ち、南朝鮮を占領している外国軍隊を撤退させ、「国連韓国統一復興委員団」を解体するとともに、朝鮮の国連加盟は、朝鮮の完全な統一が実現されたのち、または南北連邦制が実施されたのち、単一国号によってなされなければならないという決議を全会一致で採択しました。また今回の国連総会では、国連で朝鮮問題を討議する場合、朝鮮民主主義人民共和国の代表を無条件参加させるとの決定を全会一致で採択しました。これらのことは、朝鮮革命にたいする支持者、共鳴者が急速に増加し、全般的情勢が日を追って朝鮮人民に有利に変わっていることを明らかに示しています。

 こんにちアジア、アフリカ、ラテンアメリカの多くの国の人民が朝鮮人民に積極的な支持を寄せているのは、我が党がチュチェ思想にもとづいて正しい路線と政策を実施し、自主的に進んでいるからであります。世界の進歩的人民は、すべて主体的に生きることを望み、自主的に進もうとしています。こんにち世界情勢発展の重要な趨勢は、小さい国が自主性にもとづいて団結することであります。

 こうした情勢のもとで、我々が革命と建設のすべての分野で主体性を確立し、自主、自立、自衛の原則を貫くならば、朝鮮革命により有利な国際的環境がつくられ、祖国統一の歴史的偉業を早めることができます。

 人民軍の全将兵は、祖国統一の歴史的偉業を完遂し、革命の全国的勝利を達成するため、常に万端の準備態勢をととのえ、警戒心を高めて哨所を守らなければなりません。

 我々が長期間敵と対峙しているため、倦怠感を覚える軍人もありえますが、倦怠感と安逸は絶対に禁物であります。数日前、中近東戦争が勃発するや、南朝鮮の反動層はまたも「非常警戒令」を発しました。かれらが「非常警戒令」を乱発するからといって、こともなげに平然としていてはなりません。曇天がつづけば雨が降るものです。かれらが、「非常警戒令」を反復しつつ、いつの日か我が方に攻めこんでこないともかぎりません。したがって、人民軍軍人は、常に高い警戒心をもって敵の動きを注視しなければなりません。

 祖国の統一問題は結局、南朝鮮で革命が起こり、我々の支援のもとに南朝鮮人民が政権を掌握したとき、平和的に解決されるのであります。平和統一のスローガンを唱えるだけでは問題が解決されません。

 いま南朝鮮の青年学生は、反動層のあの厳しい弾圧のもとでも反ファッショ民主化闘争を強力に展開しています。抑圧のあるところには抵抗があり、抵抗のあるところには革命が起きるものです。南朝鮮の人民と青年学生によって、南朝鮮には今後必ず決定的な革命闘争が起きるでしょう。

 中隊長、中隊政治指導員は、中隊の戦闘準備を強化するために奮闘しなければなりません。すべての部隊と区分隊は、敵の侵略や挑発をたちどころに退けられるよう防御体制を完成し、各軍種、兵種間の協同行動、部隊相互間の協同行動を強化すべきであります。特に、すべての部隊が戦闘・政治訓練を強化し、いかなる場合にも戦闘任務を立派に遂行できるよう準備をととのえていなければなりません。人民軍が戦闘力を全面的に強化し、常時万端の戦闘準備をととのえていれば、祖国の統一はさらに早く実現するでありましょう。

 私は、中隊長、中隊政治指導員のみなさんが中隊を強化し、党の軍事路線を貫徹するうえでより大きな成果を達成するよう期待するものです。

出典:『金日成著作集』28巻


ページのトップ


inserted by FC2 system