金 日 成

祖国統一の3大原則について
 北と南の高位級政治会談に参加した南朝鮮側代表との談話
−1972年5月3日、11月3日− 


 1 祖国統一の3大原則について

 きょう、あなたと会えたことをうれしく思います。

 民族の分裂によって長い間別れていた同胞同士がこうして合ってみると非常に懐かしく、感慨無量です。

 あなたは、民族の統一問題を協議するため万難を排してやって来たとのことですが、それは極めて勇敢で大胆な行動です。南朝鮮当局が北と南の政治会談に参加することを決心し、あなたを代表として派遣したのは非常に立派なことであり、我々はこれを熱烈に歓迎します。

 私は昨年の8月6日の演説で、南朝鮮の民主共和党を含むすべての政党、大衆団体および個別的人士といつでも接触する用意があることを言明しました。私のこの演説があってから数日後、南朝鮮側が南北赤十字団体間の会談を開こうという反応を示してその予備会談がはじまり、これが発端となって北と南の高位級政治会談が成立しました。

 長い間隔絶していた北と南の接触と対話の扉が開かれ、高位級代表が直接合って虚心坦懐に意見を交わせるようになったのは、祖国統一問題の解決にとって大きな前進を意味します。

 いま、全民族はひとしく祖国の統一を望んでいます。こんにち、朝鮮民族にとって祖国を統一すること以上にさし迫った問題はありません。祖国の統一を一日でも遅らせ分裂を持続させるならば、朝鮮民族は列強の玩弄物となり、2つの民族に永久に分裂しないともかぎりません。

 民族を特徴づける最も重要なしるしは言語と文化生活の共通性であります。同じ血筋を分けた人々であっても、言葉と文字が異なり、文化と風習が異なれば同一民族だとはいえません。ところが、我が国が長い間分断されていたため、既に北と南とでは言葉はもちろん文化や生活様式も変わりつつあります。民族の分裂が長引けば長引くほど、言語と生活様式の違いはますます大きくなるでしょう。

 解放後、北半部には文字改革を主張する一部の人がいましたが、私はそれに反対しました。祖国が統一されていない状況のもとで文字改革を行えば、朝鮮民族は永久に2つに分かれてしまうおそれがあります。それで、私はそのとき、言語学者たちに文字改革をするなら祖国が統一されてからすべきであって、それまでは絶対にすべきでないといっておきました。祖国が分断されている状態でどちらかの一方が文字改革を行うならば、北と南がそれぞれ異なる文字を使うようになり、そうなれば結局、朝鮮民族は完全に2つの民族に分裂しかねません。

 我々は、朝鮮民族が永久に2つの民族に分かれるのを容認することはできません。我々は一日も早く祖国を統一し、統一した祖国を次代に譲り渡すべきです。民族の分裂に終止符を打ち祖国を統一すれば、我が国は5千万の人口と輝かしい民族文化、威力ある民族経済をもった、何人も侵すことのできない強大国になれます。

 祖国の統一を実現するためには、統一問題解決の基礎となる根本原則を正しく立てなければなりません。これが最も重要な問題です。双方の合意をみた根本原則があってこそ、北と南が祖国の統一をめざして共同で努力し、その過程で提起される諸問題を成功裏に解決していくことができます。

 私は、我が国の統一問題は必ず外部勢力の干渉をうけることなく自主的に、民族の大団結をはかる原則に基づき、平和的方法で解決すべきだと認めます。


 第1に、祖国の統一は外部勢力に頼ったり、外部勢力の干渉をうけることなく、自主的に実現すべきです。

 祖国の統一問題を民族自決の原則に基づき、自主的に解決するのは、共和国政府が一貫して堅持している原則的な立場です。

 外部勢力に頼ったのでは祖国統一問題の解決は不可能です。朝鮮の統一問題は全面的に我が国の内政問題です。民族の内部問題を自分で解決せず、外部勢力に頼って解決しようとするなら、それは民族の恥です。

 いま、一部の人は、列強のなんらかの保障をとりつけて国の統一問題を解決しようとしていますが、それは大きな誤りです。帝国主義列強は我が国の統一を望みません。もともと、帝国主義列強は国と民族が一つに団結すれば支配するのが難しくなるので、分裂に期待をかけ、何としても他国と他民族を分裂させようとします。それゆえ、祖国統一問題は、絶対に列強に頼って解決しようとすべきではありません。民族同士が接触し、対話を行えば十分誤解と不信を解消し、民族の団結と統一が達成できるのに、何のために列強の力を借りる必要があるでしょうか。

 我々は、朝鮮の内政に対する外部勢力の干渉を絶対に許してはなりません。いかなる外部勢力も朝鮮の内部問題に干渉する権利がなく、外部勢力の干渉のもとでは、祖国統一問題を朝鮮民族の念願と利益に即して解決することができません。我が国の統一問題はいかなる外部勢力の干渉もうけることなく、ただ朝鮮民族自身の力によって解決しなければなりません。

 あなたは南朝鮮当局も外部勢力の干渉に反対し、アメリカと日本を介入させずに国の統一問題を自主的に解決する考えだとして、絶対にアメリカや日本の手先にならないと誓いましたが、それが本心であればたいへん立派なことです。

 外部勢力の干渉を排撃して、祖国の統一を自主的に実現するためには、事大主義に強く反対しなければなりません。

 私はいつも活動家たちに、人が事大主義に走れば愚か者になり、民族が事大主義に染まれば国を滅ぼし、党が事大主義に陥れば革命と建設を台無しにするといい聞かせています。人間が自主的な存在となるためには、他人を頭から崇拝する事大主義に走っては決してなりません。

 地理的にみて、我が国は大国に挟まれているため、人々の間には歴史的に事大主義がはびこっていました。事大主義は解放後、新しい社会の建設をめざす朝鮮人民の前進運動を妨げました。それゆえ我々は、これまで事大主義に反対する闘争をねばり強くくりひろげてきたのです。

 解放後にあったことを一つ話しましょう。解放直後に共産主義者を自称する人々のなかにも事大主義に染まった連中が少なくありませんでしたが、当時ソウルにいた朴憲永(パクホンヨン)は、我が国を外国の加盟共和国にするという間の抜けたことをいいました。これは南朝鮮人民に非常に悪い影響を与え、統一問題の解決に大きな障害をつくりだしました。彼の言葉を聞いた一部の人は、我が国が再び外国に従属させられはしまいかと憂慮しました。それで私は、人民の前で演説したとき、我々はソ連式でもアメリカ式でもない、朝鮮民族の利益にかなった朝鮮式の民主主義社会を建設すると言明しました。

 戦争後、我々が農業協同化方針を示したとき、それに言いがかりをつける人が少なくありませんでした。一部の人は、工業の発達したヨーロッパ諸国でもまだ農業協同化が全面的に実施されていないのに、工業が完全に破壊された朝鮮でどうして農業の協同化ができるのかといいました。事大主義者は大国の人のいうことはよく聞き入れるので、私はレーニンの言葉を引用して彼らに論駁しました。レーニンは、単に農民の土地と農機具を統合した共同経営でさえも個人農経営に比べ、はるかにまさっていると指摘しています。それで私は、我が党の農業協同化方針はレーニン主義に合致するものであり、我が国の現実的要求から提起されていることだ、どうして工業化の実現後に農業の協同化を行う道だけが協同化の正しい道だというのかといってやりました。結局は、彼らも我々の主張が正しいことを認めました。

 事実、当時農民は協同化をおこなって力を合わせないことには、生きていけない状態にありました。戦争によって農業が甚だしく破壊され、農民には役牛も農機具もあまりありませんでした。富農にしても境遇は同じでした。こうした実情から我々は、農民が自発性の原則に立って協同組合を組織し、力を合わせ共同で経営を運営するようにさせました。朝鮮人は昔から力を合わせ、互いに助けあうことをよしとしてきました。朝鮮人民は昔から村に祝いごとがあれば相互扶助をおこない、いろいろと助け、その家を訪ねてお祝いの言葉を述べ、喜びを分かちあう立派な風習をもっています。戦後、我が国に近代的農業機械はあまりありませんでしたが、生活そのものが農業協同化を切実に要請し、農民が協同化方針を積極的に支持したので、我々は農業協同化を短期間に、比較的スムーズに実現することができました。

 我々は、外国と経済関係をもつ場合も、事大主義的傾向を徹底的に排撃し、自主的立場を堅持してきました。

 我々は、経済的に他国に束縛されるようないかなる関係も許しませんでした。あくまでも民族経済を保護する原則、完全な平等を保障する原則に立って外国と経済関係を結び発展させてきました。発達した社会主義諸国との貿易において、我が国に必要な原料を提供してくれれば、その国に必要な原料を提供し、我が国の機械を買い取る条件でのみ、その国の機械を買い入れることにしています。我が国の技術発展水準がまだそれほど高くない状況のもとで、発達した国々との経済関係においてこのような原則を守らないならば、我が国はその国にひきつづき原料を提供し、加工品を買い入れざるをえなくなります。このようになれば結局、我が国には穴だらけの山しか残らなくなります。我々が子孫に穴だらけの山を譲り渡すわけにはいかないではありませんか。

 我々は経済的に他国に従属せず、自立するため実に大きな努力を払いました。自立的民族経済を建設して経済的に自立しないならば、国の対外的権威を高めることも、国際舞台において発言権を確保することもできません。経済建設分野で自主的な政策を実施し、自立的民族経済を建設しておいたので、いかなる人もあえて我々に圧力を加えることができません。

 かつて事大主義は、文学、芸術分野にも濃厚にあらわれ、我々はそれとの強い闘争をくりひろげました。

 一部の作家、芸術家は、ヨーロッパの文学と芸術を崇拝し、朝鮮人の好みにあわないばかりか、朝鮮人の理解できないような作品を創作しました。ひところ、詩人はプーシキンを、音楽家はチャイコフスキーを崇拝し、歌劇をつくつても、イタリアのオペラを模倣しました。事大主義が甚だしいあまり、一部の美術家は風景画にしても、我が国のうるわしい山河ではなく外国のものを描きました。祖国解放戦争のとき、私がある病院に行って見ると、病院の壁には、雪に覆われた大木の下を熊が歩いているシベリアの風景画がかかっていました。それで私は、そこの幹部に、我が国には金剛山、妙香山をはじめ名山が多いのに、なぜ朝鮮の麗しい山河を描かず、あんな絵を描いてかけたのか、あのような絵が人民の教育に何の役に立つのかと強く批判したものです。

 朝鮮民族は輝かしい文化をもって、長い間三千里錦の山河で暮らしてきました。朝鮮民族はこれからも、麗しい祖国の地で暮らすべきであって、シベリアやヨーロッパへ行って暮らすわけにはいきません。したがって、我が国の文学、芸術はあくまでも祖国を愛する愛国主義精神で人民を教育するものとなるべきです。国際主義も愛国主義をはなれては成立しません。自国を愛さない人は国際主義に忠実でありえません。朝鮮人はヨーロッパ風の芸術作品を好まず、自分の気にいらない芸術作品を鑑賞しようともしません。朝鮮人が好まず、朝鮮人の民族的情緒にあわない芸術作品は不必要です。そこで私は、社会主義リアリズム文学、芸術とは、民族的形式に社会主義的内容をもったものであるという定義を下しました。

 我々は、事大主義に反対するたたかいを、人々の頭に残っている事大主義思想を一掃する思想闘争、理論闘争の方法でおこないました。我々は事大主義に反対する長期にわたる闘争をつうじて、革命と建設の各分野で事大主義を一掃し、自主性を堅持することができました。

 祖国統一問題の解決にあたって、自民族の力に頼らず、他人に頼ろうとする事大主義的な傾向にあくまでも反対すべきです。我々はただ、朝鮮民族の団結した力によって祖国を自主的に統一しなければなりません。


 第2に、思想と理念、体制の相違をこえて民族の大団結をはかるべきです。

 我が国の統一問題は、一方が他方と勝敗を決するという問題ではありません。朝鮮の統一問題は、外部勢力によって分裂させられた民族の団結をなし遂げ、民族の自主権を実現する問題です。したがって、祖国の統一を実現するためには、どうすれば北と南の間の団結をなし遂げ、民族の大団結をはかることができるかというところから出発すべきです。

 民族の大団結をはかるためには、北と南がそれぞれの思想と体制を超越すべきであり、互いに相手側を敵視する政策をとってはなりません。

 現在、我が国の北と南には相異なる思想と体制が存在しています。こうした状況下で双方が自分の思想と体制を相手側に強要しようとしてはなりません。我々は南朝鮮に、社会主義体制と共産主義思想を強要するつもりはありません。南朝鮮当局者も「勝共統一」をしようとしたり、我々に共産主義をやめるよう強要してはなりません。すなわち、「反共」のスローガンを捨てるべきです。

 北と南は団結の妨げとなる敵視政策を捨て、共通点を探すためともに努力すべきです。もし双方が共通点を見いだそうとせず、互いに敵視して、過去のことをもちだして非難しあい是非を論じあうならば、北と南の隔たりはしだいに大きくなり、祖国の統一はさらに遅れるでしょう。こうなれば結局、祖国と民族に対して重大な罪を犯すことになるでしょう。

 北と南が心から団結しようという念願から共同で努力するならば、共通点はいくらでも見いだすことができると思います。我々は祖国の統一を早めるため、そのような共通点を見つけるため大きな努力を傾けてきました。

 最近、南朝鮮当局者は、「自助」「自立」「自衛」ということをいっていますが、我々はここにある程度の共通点を見いだすことができるとみなしました。南朝鮮当局者の唱える「自助」「自立」「自衛」は、我が党と共和国政府の自主的な政策と共通点があるのではないかと思います。北と南の間に存在する共通点を1つひとつ見いだし、それに基づいて団結をはかるならば、祖国の統一を早めることができるでしょう。

 民族の大団結を達成するうえで重要な問題は、北と南の誤解と不信を解消することです。

 我が国は長い間分断されていたため、北と南の間には相違点も多く、相互間の誤解や不信も多く生じています。互いに、誤解と不信をいだいている状況下では民族の真の団結は達成できません。一家庭にしても夫婦間の深い信頼がなければなりたちません。夫婦の間でも互いに信頼しないならば円満な生活を営むことはできず、ついには離婚するようにまでなります。北と南は、相互間の誤解と不信を解消するため積極的に努力しなければなりません。

 北と南の誤解と不信を解消するためには、北と南の当局者と多数の人士がひんぱんに接触し、真剣に話し合わなければなりません。互いに接触して、どんな問題でも腹蔵なく真剣に話し合えば、誤解を解消し、信頼を深めることができます。

 あなたとの今回の対話をつうじても、既に北と南の誤解がかなり解消されました。北と南との間で対話をするのなら、もう少し早くすべきだったと思います。

 我々はこれまで、南朝鮮の当局者がアメリカ帝国主義と日本軍国主義の手先となって国を売り渡そうとしていると考えていましたが、あなたは、そのようなことは絶対にないだろうといいました。あなたは、南朝鮮当局が日本軍国主義者を南朝鮮に再び引き入れることも、アメリカや日本の手先となって国を売り渡すこともないだろう、これを是非信じてほしいと幾度もいいました。したがって我々はあなたの言葉を信じ、これまで抱いていた不信の念をなくすことができます。

 南朝鮮当局者は、我々が「南侵」しようとし、南朝鮮を「赤化」しようとしていると誤解していたとのことですが、我々には「南侵」の意思も、南朝鮮を「赤化」する考えもありません。我々は、これまで「南侵」する意思がないことを再三明らかにしてきましたが、きょうこれについて改めてあなたに明確に話しておきます。「赤化」についていえば、我々は南朝鮮を「赤化」する意図もなければ、我々が「赤化」しようとするからといって南朝群が「赤化」されるものでもありません。したがって、これまであなたがたが「南侵」とか「赤化」とかいっていだいていた誤解は、これで解消できると思います。このように接触と対話をつうじて、誤解を解消し、信頼を深めるならば、例え、思想と理念が異なり、体制と信教の違いはあっても、それを超越して民族の大団結を達成することができます。

 民族の大団結を達成するうえでまた重要なのは、北と南が互いに相手側を誹謗中傷しないようにすることです。

 団結し、合作するためには、互いに尊重すべきであって、誹謗中傷してはなりません。現在のように互いに相手側をひきつづき誹謗中傷するならば、北と南が接近することはできず、かえって隔たりを大きくするようになるでしょう。したがって、まず北と南は互いに非難し、誹謗中傷するのをやめるべきです。

 民族の大団結を達成するうえで、北と南の間の経済合作を実現する実現する問題も極めて重要です。

 共和国北半部には豊かな資源があり、発達した重工業があります。南朝鮮は以前からある程度の軽工業の基礎をもっています。北と南が経済的に合作し、有無相通ずれば、当面の経済問題をより立派に解決し、外国の資本を引き入れなくても自力で民族経済をすみやかに発展させることができます。北と南が合作して民族経済を発展させれば、我が国は日本やその他の発達したといわれる諸国よりもいっそう豊かな国になるでしょう。

 対外関係分野においても、北と南が共同で進むべきであります。そうすれば、朝鮮民族の団結を誇示することができます。

 私は、北と南がひとしく民族を愛し、祖国を統一しようという立場に立てば、思想と体制、政見と信教の違いがあっても、民族の大団結をはかることができると思っています。現在、思想と体制が異なる国々や諸民族も親善関係を結び、親しくつきあっているのに、1つの血筋を引いた同じ民族同士が、思想と体制が異なるといって団結し、合作できない理由はありません。

 共産主義を信奉するか、民族主義を信奉するか、それとも資本主義を信奉するかは、民族の大団結を達成するうえで障害とはなりえません。我々は南朝鮮の民族主義者や資本家に反対しません。南朝鮮の資本家のほとんどは民族資本家です。我々は以前から、民族資本家に対しては保護政策をとってきました。我々は国の統一のため、民族主義者や民族資本家を含む南朝鮮の各階層と団結し、合作するでしょう。


 第3に、祖国の統一は武力行使によらず、平和的方法で実現すべきです。

 我々は同じ民族として、北と南がたたかってはなりません。我々は、何としてでも分断された祖国を平和的に統一しなければなりません。祖国の平和的統一が実現されず、朝鮮で再び戦争が起これば、朝鮮民族は大きな災難をこうむるでしょう。

 現在、列強も自分ら同士ではたたかいを避け、仲よくしようとしています。最近アメリカ大統領ニクソンが中国を訪問しましたが、彼は今後一世代の間はたたかわずに平和を維持すべきだといいました。彼は中国の万里の長城に遊んで、いかなる障壁も世界の人々を引き裂いてはならないともいいました。

 ニクソンの中国訪問の結果発表された中米共同コミュニケをみると、アメリカはこれまで認めなかった平和5原則を認めました。アメリカが平和5原則を認めたのはよいことです。もちろん、アメリカがそれをどのように行動に移すかは見守るべきです。帝国主義者は言動の一致しない場合が多いので、ニクソンが中国で語ったことが本心かどうかはよくわかりません。

 『労働新聞』はニクソンの中国訪問について論評し、彼が万里の長城を見て語ったことが本心からでたものであれば、なぜ我が国の中心部に設けた軍事境界線をなくそうとせず、MPのヘルメットをかぶったアメリカ兵を撤収しようとしないのかと書きました。この論評は正しいと思います。

 現在、列強もたたかいを避け、仲よくしようとしているのに、ましてや同じ民族同士がたたかってよいものでしょうか。我々は同じ民族同士でたたかってはならず、祖国を平和的に統一すべきです。

 北と南がたたかわずに祖国を平和的に統一するためには、何よりもまず双方が軍隊を縮小しなければなりません。私は双方の軍隊を大幅に縮小すべきであると、既に何度も公の演説で主張しました。

 軍隊を減らせば、北と南の間の緊張をやわらげ、軍事的負担も軽減することができます。現在、北と南の軍事的負担は非常に膨大なものです。

 我々は双方が努力して、我が国を北と南に分断している軍事境界線もなくさなければなりません。

 現在のように、軍事境界線を隔てて双方の大兵力が対峙している状況のもとでは、戦争の危険を免れることはできません。現状では、軍事境界線一帯のある連隊長や師団長の過ちによってどこか一か所で銃声がおこれば、双方が撃ちあいをはじめ、そうなれば戦争になるおそれがあります。これは極めて危険なことです。

 今後、北と南が十分に協議して互いに武力を行使しないことを保障し、それを実践に移せば軍事境界線一帯にある双方の軍事施設と軍事要員が不必要となり、軍事境界線そのものもなくすことができるでしょう。

 現在、北と南がそれぞれ自衛を主張していますが、互いに相手側に反対するための「自衛」をしてはなりません。北と南は、力を合わせて外国の侵略に反対する自衛をしなければなりません。

 我が共和国の自衛は、あくまでも朝鮮民族に対する外国の侵略に反対する自衛です。我々は、我が国と我が民族に対する外部勢力の侵略を絶対に許すことができません。

 アメリカ帝国主義者が共和国の領海に武装情報収集艦プエブロ号を侵入させたとき、人民軍水兵はそれを拿捕しました。これは、祖国防衛の使命を担っている人民軍の当然の自衛的措置でした。ところが、アメリカ帝国主義者は、我々に謝罪するかわりに、航空母艦エンタープライズ号をはじめ、おびただしい武力を東海の海域に投入して我々を威嚇しました。これは、朝鮮民族の自主権に対する乱暴な蹂躙であり、重大な挑発行為でした。我々は、アメリカ帝国主義者の脅迫と圧力に少しも屈しませんでした。彼らが武力を大々的に動員して戦争を引き起こそうとしたため、我々は彼らと断固戦う決心をしました。我々が脅迫と圧力に屈しなかったので、彼らは戦争を起こすことができずにひきさがりました。もしあのとき、アメリカ帝国主義者が戦争を起こしたとすれば、朝鮮民族はもう一度戦争にみまわれ、こんにちこうして北と南の当局者が一堂に合して平和的な会談を行うこともできなかったでしょう。

 もしも今後、外国侵略者が朝鮮を侵略する場合、北と南は力を合わせて侵略者を撃退しなければなりません。全朝鮮民族が力を合わせれば、いかなる侵略者をも十分打ち破ることができます。

 我々は共同の努力で北と南の間の軍事的対峙状態をなくし、緊張を緩和して朝鮮で二度と戦争が起きないようにし、祖国を平和的に統一しなければなりません。

 我々は、このたびの話し合いで北と南の間の重要な共通点を見いだし、最も原則的な問題について合意をみました。

 外部勢力の干渉を排除して自主的統一を実現し、思想と理念、体制の相違を超越して民族の大団結をはかり、分断された祖国を武力行使によらず平和的方法で統一するという3つの原則は、祖国の統一問題を解決する出発点となり、基礎となります。

 この3つの原則にもとづいて祖国の統一問題を解決しようということについてあなたも賛成し、また南朝鮮最高当局者も賛成するであろうということなので、我々は祖国統一の3大原則について完全な合意に達したということができます。

 私はきょうの話し合いをつうじて、北と南の間に祖国統一の3大原則について合意をみたことを非常に満足に思います。

 北と南が共同で協議し、見解の一致をみた祖国統一の3大原則は、祖国統一問題を朝鮮民族の志向と要請に即して解決する最も正しい原則です。我々は、必ずこの3大原則に基づいて祖国の統一を達成しなければなりません。あなたはこの3大原則に基づいて行動すると誓いましたが、そうすれば、統一問題の解決で提起される他の問題も成功裏に解決し、朝鮮民族の統一をすみやかに実現することができるでしょう。

 祖国統一の基本原則について合意に達した条件のもとで、今後はどうすればこの原則を具現して全民族を一つに結合し、祖国を統一するかという具体的な方途を見いださなければなりません。祖国統一の具体的な方途は、あくまでも祖国統一の3大原則に基づいて見いだすべきです。北と南が自主、民族大団結、平和統一の3大原則に基づいてよく研究し、真剣に協議すれば、祖国統一の正しい実現方途を見いだすことができるでしょう。

 祖国の自主的平和統一をめざす合理的な方途を模索するためには、北と南の間の政治協商をさらに発展させ、接触と対話をより活発に行うべきです。

 今回の北と南の高位級代表の会談をもって、政治協商は既に開始されたとみなすことができます。双方の政治協商がはじまったので、今後それをさらに発展させ、立派な結実をもたらすようにしなければなりません。

 今回はあなたが平壌に来たので、答礼として次回は我が方の代表をソウルに派遣するつもりです。北と南の代表がしばしば行き来するうちに相互の信頼が深まり諸条件が成熟すれば、最高位級の会談も実現可能だと思います。

 これから北と南の代表がひんぱんに行き来し、大いに対話を行うべきです。

 解放後、30年近い分裂によって生じた北と南の誤解と不信を、1、2度の接触と対話をつうじてすべてなくすことはできません。1、2度の話し合いによっては、祖国統一問題を解決する具体的な方途をすべて見いだすこともできません。今回の会談をつうじて、北と南が互いに誤解していた根本的な問題を解決し、重要な共通点を見いだしましたが、祖国統一のためには、さらに解決を要する幾多の問題が残っています。

 これは、北と南の代表のひんぱんな接触と真剣な協商によってのみ解決することができます。

 北と南の間の対話と協商においては、互いに誤解している問題をはじめ、祖国統一の途上で提起されるすべての問題を上程して協議しなければなりません。どのような問題であれ異議があれば腹をわって話しあうべきであって、腹のなかにかくしていては問題は解決されません。例え、小さな誤解でも生じれば、直ちにもちだして話しあい解決すべきです。

 北と南の間の対話は、あくまでも相互の理解を深め、共通点を探しだし、団結を強める原則に基づいて行うべきです。祖国統一の方途を見いだすうえで、我が方とあなたがたの主張が異なることもあるでしょう。それゆえ、その主張の是非をめぐって論争することもありえます。しかし、論争はあくまでも共通点を探しだし、団結と統一を達成するための論争となるべきであって、分裂のための論争となってはなりません。

 北と南の関係を正しく調整し、祖国統一における諸問題をスムーズに解決するため、北と南の共同委員会といったものを組織し、運営するのがよいと思います。

 共同委員会を組織して実際的な調整活動を行うべきであって、ただ一般的な対話にのみ頼っては、民族の団結と祖国統一事業において大きな前進は望めません。

 共同委員会は、北と南の当局がそれぞれ任命する高位当局者を共同委員長とし、必要なメンバーを含めて組織すればよいでしょう。空路を利用すれば平壌−ソウル間の往復に時間はかからないので、あなたがたが平壌に来たり、こちらからソウルに行ったりして共同委員会の運営ができるはずです。

 共同委員会を組織すれば、そこで調整すべき問題がいろいろとあります。共同委員会は、北と南が互いに相手側を誹謗中傷しないようにする問題、軍事的衝突を防止する問題など、北と南の関係において提起される諸問題を適時に協議して調整すべきです。共同委員会では、互いに自己の意思を強要しようとせず、提起される問題を団結の目的にてらして相互理解に到達するまで真剣に協議すべきです。

 平壌−ソウル間に直通電話を設け、電話をとおして提起される問題をその都度協議することもできるでしょう。祖国統一の妨げとなったり、誤解の原因となりうる、ささいな問題でも生じれば、即時電話で確かめ、協議して直ちに解決すべきです。

 今回、北と南の間で合意に達した祖国統一の3大原則は、全朝鮮民族が共同で実現すべき統一綱領となります。私は祖国統一の3大原則を世界に発表し、全朝鮮民族と世界の人民に知らせるのがよいと思います。

 祖国統一の3大原則の発表は、朝鮮人民を教育するためにも、世界の人々に朝鮮民族の団結を誇示するためにもよいことです。北と南の間に合意をみた統一綱領が発表されれば、内外の全同胞は、我々が分断された祖国を自主的に、民族大団結の原則にもとづいて平和的に統一しようとしていることを知って、一致した見解をもつようになり、各階層の人民は大いに励まされるでしょう。民族共同の統一綱領が発表されれば、世界の人民は、朝鮮民族が団結した偉大な民族であることを知り、朝鮮の統一に反対する外部勢力は、朝鮮民族を永久に分裂させようとしても、それは絶対に不可能であることを明確に認識するようになるでしょう。

 祖国統一の3大原則をいつ、どのような方法で発表するかということは、今後の対話の過程で討議するのがよいでしょう。あなたがソウルに帰って南朝鮮当局で討議し、北と南の代表が再会して合意したのちに発表すればよいでしょう。

 あなたはせっかく平壌に来たのですから、もう一日留まって我が方の幹部と話しあうのがよいと思います。

 あなたが我々を訪ねて来たのは、愛国的な行動です。人間だれしも愛国者になるべきであって、売国奴になってはなりません。人は、一日を生きても祖国と民族のために有益なことをしてこそ光栄あり、生きがいがあるものです。

 北と南の間の今回の会談は成功裏に行われたといえます。私はあなたが今後、たびたび平壌に来るよう望みます。


 2 北と南の合作を実現するために

 私は、南朝鮮側の代表と再会できたことをうれしく思います。前回は南朝鮮側から代表が一人で来ましたが、今回はみなさんがいっしょに来ました。北と南のあいだでこのように接触を重ねれば、祖国統一問題の解決に大いに役立つものと思います。

 南北共同声明が発表されたのち、祖国統一をめざす事業にはある程度の前進がありました。これまでは、朝鮮民族が南北に別れて、互いに会うことさえできなかったのに、こんにちでは代表が往来し会見しているのですから、このこと自体がすでに一つの前進を意味します。北と南の代表が往来し、しばしば会って顔もなじませ意見も交換すれば、祖国統一のために提起される多くの問題が解決されるでしょう。

 我々は是が非でも、一日も早く祖国を統一しなければなりません。我々が祖国を統一できずに分断を長びかせるならば、朝鮮民族は永久に2つに分裂するおそれがあります。

 朝鮮民族は、絶対に2つに分裂してはなりません。朝鮮人は、遠い昔から一つの国土で単一民族として暮らしてきました。朝鮮民族は同じ血筋を引いており、同一の文化と歴史をもっています。朝鮮民族は、強い民族性と民族的自尊心をもっています。日本帝国主義者が36年ものあいだ我が国を占領し、「内鮮一体」を云々して朝鮮人の姓氏まで日本式に改めさせようと策動しましたが、ついに朝鮮人を日本人にすることはできませんでした。このような朝鮮民族がこんにちにいたって、どうして2つに分裂することができましょうか。我々は絶対に民族の分裂を許してはならず、我々の代に必ず祖国を統一しなければなりません。

 祖国統一にたいする念願は、北半部の同胞にせよ南半部の同胞にせよ、すべて同じことでしょう。あなたがたも祖国の統一を願うがゆえに、こうして我々を訪ねて来たのだと思います。

 にもかかわらず、南朝鮮の言論界では南北共同声明が発表されたのちも、「対話のある対決」「対話のある競争」などという言葉が使われています。対決とか競争というのは文字どおり勝敗を争うという意味ですが、そうすれば勝つ方と負ける方がおのずと生じます。外国や他民族と競争をするなら話は別ですが、同じ民族同士で対決し競争すべきではありません。同じ民族同士で対決し競争したのでは、民族の団結もなしえず、祖国の統一も実現することができません。

 北と南は対決し競争するのではなく、合作しなければなりません。合作とは、力を合わせ共同で仕事をすることを意味します。北と南の対話はすでに開始されているので、いまとなっては合作の時点にいたったと思います。北と南は対話にとどまらず、もう一歩前進して合作を実現しなければなりません。

 北と南が合作すれば、その過程で民族の力がいっそう大きくなり、祖国統一の基礎がしっかりとかためられることでしょう。双方が合作すれば、我々の前に横たわるあらゆる難関を立派に克服し、民族最大の悲願である祖国統一偉業の達成を早めることができます。

 北と南は、経済分野から合作を実現すべきです。

 北と南が経済合作からはじめて仕事を一つひとつ共同でおこなえば、互いに誤解を解消し理解を深めることができます。口先だけで信頼するといっても、誰がどんな下心をもっているのか知るすべがありません。実際に仕事をともにおこなっていけば、誤解していた問題も解け、信頼感が深まり、民族の団結がなし遂げられるでしょう。

 我が国は、人口も多く天然資源にも恵まれています。北と南が合作すれば、我が国の民族経済を急速に発展させ、我が国を富強な国に変えることができます。北と南が経済的に合作すれば、人民生活の問題もより立派に解決し、人民に他にひけをとらない豊かな暮らしをさせることができます。

 北と南とのあいだに経済的に合作できる可能性は十分にあります。北と南は、地下資源も共同で開発し、分業と交易も発展させ、科学技術の研究成果も共同で利用することができます。

 共和国北半部には、地下資源が非常に豊富です。特に、鉄鉱石が無尽蔵に埋蔵されています。

 過去、日本帝国主義者は我が国の資源を大量に略奪していきましたが、それはスイカの皮をなめて行ったようなものです。我々の探査員は、日本人がなにも出てこないといったところで鉄鉱石の大鉱脈を発見しています。最近、价川(ケチョン)一帯でも数億トンの埋蔵量をもつ鉄鉱石の鉱脈を発見し、黄海南道でも数十億トンの鉄鉱石の埋蔵量を確保しました。豊山(プンサン)をはじめ、北部内陸地帯にも膨大な鉄鉱石が埋蔵されています。探査員たちが初歩的に探しだした鉄鉱石の埋蔵量だけでも100億トン以上になります。

 我が国の鉄鉱石は、品位も非常に高いものです。その鉄含有量はすべて35%以上です。我が国の鉄鉱石は、世界的にも品位がすぐれているといえます。我が国の鉄鉱石は、いま日本人からうらやましがられています。

 北半部は、鉄鉱石だけでなく、鉛、亜鉛、銅などの鉱物資源にも恵まれています。日本帝国主義者は、我が国にはニッケル鉱が全くないといっていましたが、我々はそれを自力で探しだし、各種の合金鋼を大量に生産しています。

 いま南朝鮮で工業を建設するといっていますが、それに必要な原料をいかに保障するかが問題になると思います。外国から輸入することもできますが、我が国に無尽蔵な原料をさしおいてわざわざ遠い外国から輸入する必要はないでしょう。北と南が力を合わせ国内の無尽蔵な地下資源を開発すれば、外国から原料を輸入しなくても金属工業と機械工業をはじめ、各部門の工業を発展させることができるでしょう。

 自国の原料に依拠した機械工業を発展させれば、国の経済力を強化することができます。我々は、解放直後から機械工業を発展させるため積極的に努力し、こんにち我々の機械工業は非常に高い水準に達しています。機械工業を発展させ、鉄で機械をつくって輸出すれば、外国との経済関係も平等の原則で保ち、人民生活も向上させることができます。現在、我々は、自動車、トラクターをはじめ、各種の機械製品をかなり輸出していますが、我が国の機械を求める国が少なくありません。

 共和国北半部は、水産資源にも恵まれています。

 我が国の東海には、毎年500万〜600万トンのメンタイが群をなして押し寄せてきます。これは科学者の推測した数字であって、実際にはどれぐらいかはっきりしていません。メンタイの盛漁期には、魚群の幅が3キロ、長さは5キロに及び、その厚さは推定しようもないそうです。このように、大量のメンタイが群をなして押し寄せてくるのに、現在、我々はせいぜい60万トンしか水揚げできないのです。これは、押し寄せてきたメンタイを10%しか捕っていないことを意味します。科学者の見解によれば、メンタイは50%まで捕ってもその資源は減らないとのことです。ですから、我が国の東海でメンタイを毎年250万トン水揚げしてもかまわないわけです。南北の漁民が力を合わせ共同で漁獲をすれば、大量のメンタイを捕ることができます。こうすれば、すべての漁民の生活を向上させることができます。

 北と南が経済分野で分業をするのも必要だと思います。こちらではなにを生産し、南朝鮮では、なにを生産するといったように、分担して経済を発展させるならば、互いに多くの負担を減らすことができ、経済的に有利な点が多いでしょう。

 文化分野でも、北と南の合作を実現すべきです。

 文化分野で北と南の合作を実現すれば、単一民族としての朝鮮民族固有の民族的特性を保存し、民族文化を統一的に発展させることができます。

 北と南は、言語学分野で合作を実現し、民族語を統一的に発展させるべきです。現在、北と南の人たちが接触し言葉を交わしても互いに通じない単語がかなりあり、そのために誤解をまねくことさえあります。

 北と南のあいだに言語生活での開きが大きくなれば、民族の分裂を防ぐことができません。我々は、言語生活の違いのため朝鮮民族が互いに異なる民族に分裂するのをあくまでも防がなければなりません。

 北と南の言語学者は合作して、北と南のあいだに言語と文字の統一性を保障する研究および調整活動を進めなければなりません。双方の言語学者が一堂に会して協議するならば、我が国の言語と文字のすぐれた点を生かし、ひきつづき発展させることができるでしょう。

 北と南は、科学分野においても交流と合作を実現すべきです。我が国の北と南には、才能のある科学者がたくさんいます。ある科学分野では、南の学者より北の学者の方がまさっていることもあり、またある科学分野では北の学者よりも南の学者の方がまさっていることもあります。したがって、双方の学者が力と知恵を合わせれば、科学研究分野で大きな成果を達成し、我が国を近代的な工業国に急速に発展させることができます。

 我々は、スポーツ分野でも合作すべきです。北と南がスポーツ分野で合作を実現すれば、国際競技に参加して立派な成果をあげることができます。我々のスポーツマンは、単独で国際競技に参加しても立派な成績をあげて帰ってきます。もし、北と南が単一チームをつくって国際競技に共同で参加するならば、覇権を握ることができるでしょう。もともと朝鮮民族は、強い闘志をむつ民族です。これは、世人の広く知るところです。我々のスポーツマンが国際競技に参加した結果をみると、技術で勝つときよりも闘志で勝つ方が多いのです。我々は今後、オリンピックをはじめ、国際スポーツ競技に双方から優秀な選手を選抜し、単一チームをつくって参加するようにすべきです。

 北と南は、経済と文化分野で合作するだけでなく、政治分野においても合作すべきです。

 経済的合作と文化的合作は当然、政治的合作へと発展しなければなりません。また、政治的に合作してこそ、経済分野の合作も、文化分野の合作も円滑におこなうことができます。

 あなたがたの事物を考察する方法と、我々の事物を考察する方法とが異なるだけに、合作を実現するうえで互いに意見を異にする点がありうると思います。あなたがたは個々の問題を切り離して孤立的に考察しますが、我々はすべての事物が互いに関連しており、互いに作用するという観点から問題を考察します。政治、経済、文化、軍事など、社会の各分野が互いに関連しており、互いに作用するなかで発展するのは社会の運動法則です。いかなる社会的問題も他の問題との関連のなかで考察しなければ、正しく解決することはできません。政治問題を解決するためには、経済、文化の問題を解決し、経済、文化の問題を解決するためには政治問題を解決しなければなりません。

 北と南が政治的に合作できなければ、経済、文化の分野で合作しようとしても、それは効果的に実現しません。

 現在、南北赤十字団体の会談で討議されている、南北に離散した家族と親戚を捜す問題にしても、一見して簡単に解決できる問題のようですが、南北間に政治的不信が存在する状況下では、簡単に解決されない問題であります。

 南北赤十字会談のさい、南朝鮮代表のなかに北半部に親戚のある人がいたそうです。こちらからかれに、親戚がここにいるが会ってみてはどうかといったところ、あとで会うといって会わなかったそうです。これは、かれが北半部にいる親戚に会うことを避けているからだと思います。現在、南朝鮮には北半部にいる親戚に会うことを避けたり、北半部に親戚がいることをかくす人もいると思います。このような現状にあって、南北赤十字団体の力だけでは南北に離散した家族や親戚を捜すこともできず、自由に対面させることもできません。それゆえ我々は、南北に離散した家族と親戚を捜す問題が順調に解決されるには、必ず南北間の政治的合作が実現しなければならないと考えます。

 北と南の緊張緩和と軍備縮小の問題も政治的合作を実現してはじめて解決できます。

 もちろん、南北共同声明には、北と南が武力を行使せず、祖国統一を平和的な方法で実現する問題が明示されています。南北が武力を行使しないことについては共同声明で発表しましたが、今後戦争が起こるのではないかという憂慮から双方が戦争準備をひきつづき進めています。あなたがたは、アメリカの援助で大砲をひきつづき購入しており、我々は自力で大砲をひきつづき生産しています。こうした状態がつづくかぎり、我が国での緊張は緩和されません。現在、我が国には軍隊が多く、人民の軍事費負担は莫大なものです。外国の侵略から我が国を防衛するには南北の軍隊が合わせて20万もあれば十分だと思います。政治的に合作すれば、北と南との信頼を深めて緊張を緩和し、南北の軍隊をそれぞれ10万程度に縮小して人民の軍事費負担を軽減することができます。

 政治的合作を実現してこそ、経済・文化・軍事分野のすべての問題が解決されるだけに、我々は経済的合作と文化的合作にとどまることなく、政治的合作の実現へと進まなくてはなりません。

 政治的合作は、けっしてむずかしい問題ではありません。我々のあいだには、政治的に合作できない理由はありません。南北朝鮮に存在する体制の違いは、けっして政治的合作を不可能にする理由にはなりません。

 南朝鮮には社会主義を恐ろしいものと間違って考えている人が一部いるようですが、社会主義はけっして恐ろしいものではありません。

 我々が社会主義を建設しはじめたのは戦後からです。私は、1955年4月に発表したテーゼで社会主義を建設する課題を提起しました。

 社会主義の建設は、戦後の我が国の現実から提起されたさし迫った要求でした。3年間の戦争によって都市と農村は廃墟と化し、工業と農業はことごとく破壊されました。戦争によって貧農と手工業者はもとより、農村の中農や富農もほとんど破産し、都市の商工業者も破産、投落して手工業者や小商人同様の境遇に転落しました。一言でいってかれらは互いに力を合わせなければ生きていけない状態にあったし、協同化を切実に求めました。このことから我々は、都市と農村で個人経営を協同化する方針をうちだし、これをあくまで自発性の原則にもとづいて実行しました。我々は、農村の富農と都市の私営商工業者を収奪の方法で清算したのではなく、社会主義的協同経営に引き入れて社会主義的勤労者に改造しました。

 我々は戦後、役牛、農機具、労働力の不足する困難な状況のもとでも農業協同化を実現し、農民の力を合わせて潅漑工事を大々的におこない、農業を急速に発展させることができました。

 共和国北半部に樹立された社会主義制度の優位性については、多く話すつもりはありません。今後南朝鮮の人々が北半部に来て直接現実を見て体験すれば、社会主義制度がけっして恐ろしいものではなく、すぐれた制度であることを理解するようになるでしょう。それゆえ、南北が政治的に合作し団結できない理由はありません。

 北と南の政治的合作を実現するためには、南北連邦制を実施するのが合理的であると考えます。

 我々の考えている南北連邦制は、北と南に現存する政治体制を当分間そのまま維持しながら、一つの統一国家を形成しようというものです。北と南の諸政党、大衆団体の代表と各階層の代表、著名な人士が広範に参集して最高民族会議を組織し、そこで民族の発展をはかる重要な問題を共同で討議、決定し、対外的に一つの国号をもって活動すれば連邦制になるでしょう。連邦国家の国号は、世界に広く知られている高麗(コリョ)という名を生かして高麗連邦共和国とすればよいでしょう。南北連邦制が実施されれば、北と南の連係と合作があらゆる分野にわたって全面的に実現し、朝鮮民族の対外的権威も高まるでしょう。

 単一民族である我々がどうして対外的に2つの国家として活動する必要があるのでしょうか。私は、我が国が分裂した状態で北と南が別々に国連に加盟することには絶対に賛成できません。

 今後、連邦制について具体的な問題をもっと論議すれば、より合理的な合意点に到達するものと思います。

 北と南の政治的・経済的・文化的合作を実現することについては、あなたがたも異議がないといっていますが、そうだとすれば、それを早く実行に移すために努力すべきです。

 北と南の合作を実現するうえで重要なのは、相互の誤解と不信を解消することです。うわべでは笑顔をつくり、内心では互いに誤解と不信をいだくようでは、問題の解決は望めません。双方ともに誤解と不信を解消してこそ、北と南の合作が早急に実現できると思います。

 我々は、南朝鮮当局が、アメリカ軍を撤退させ、日本を引き入れないといっている以上、あなたがたを信じようと思います。問題は、南朝鮮側が我々に誤解と不信をいだいていることにあります。同じ同胞同士が会ったのですから、誤解のある問題があれば、腹蔵なくうちあけて話しあうべきです。異議のある問題は腹のなかにかくしておいて、あらかじめ準備した演説文でも読みあげて帰ったのでは、誤解は解消されません。誤解を解消するためには、虚心坦懐に対話をおこなわなければなりません。

 北と南のあいだの団結を達成し、合作を実現するためにはまた、互いに非難し相手側を誹謗中傷することをやめなければなりません。我々は、我が方にたいする南朝鮮当局の誹謗中傷に忍耐をもってこたえています。あなたがたが心から我々との合作を願うならば、反共宣伝を中止すべきです。我々も南朝鮮側と合作しようとする以上、あなたがたを誹謗するようなことはしないでしょう。

 前回、私は南朝鮮側代表に会ったとき、北と南の関係を正しく調整し、祖国の統一を実現するうえで提起される問題をスムーズに解決するため、北と南の共同委員会といったものを組織し運営するのが望ましいといいましたが、このたびは南北調節委員会を構成するようにすべきです。私の考えでは、調節委員会の構成で大きな問題はないと思います。調節委員会を早急に構成し、立派に運営すべきです。

 調節委員会は、空論に終始せず、北と南の関係を正しく調整し、祖国統一の実現において提起される諸問題を一つひとつ着実に解決しなければなりません。調節委員会が構成されれば、信頼のしるしとして双方の軍隊を縮小し、政治犯を釈放し、政党活動の自由を保障する措置を講ずることが好ましいと思います。

 我々が北と南のあいだの扉を開いた以上、閉ざしてはなりません。もし、扉を閉ざすようなことになれば、朝鮮民族はもちろん、世界の人民も我々を非難するでしょう。

 我々が、北と南のあいだの扉を開き、仕事にいったん取り組んだ以上、てきぱきとことを運んで朝鮮民族の栄誉を全世界に輝かさなければなりません。

 祖国統一の実現は、早ければ早いほどよいのです。統一を遅らせて有益なことはなにもありません。我々は、共同の努力をつくして、祖国の統一を早急に実現しなければなりません。

出典:『金日成著作集』27巻 


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