金 日 成

革命的団結はすべての勝利の保障である
1972年4月15日 

 尊敬するノロドム・シアヌーク親王とモニク・シアヌーク親王夫人!

 尊敬するイエン・サリ国内特使同志!

 親愛な同志と友人の皆さん!

 私はきょう、原稿を準備してきませんでした。私はもともと、このような宴席ではどのように話してよいのかわからず、また、こういう席でのあいさつの原稿を書いたこともありません。それで、きょうは皆さんに、私の心にあることを、そのまま話したいと思います。

 私はまず、我々の兄弟であり戦友であり、最も親しい友人であるノロドム・シアヌーク
王とモニク・シアヌーク親王夫人、そして、イエン・サリ国内特使とカンボジアの賓客がこの席に列したことを非常に光栄に思い、深い謝意を表します。

 私はこれまで幾度もノロドム・シアヌーク親王に、自分の誕生日を記念したことはなく、あるとすれば幾人かの同志と席をともにして、盃を一杯かわしただけだということを話しました。しかし、親王は盛大な宴会に参列するためではなく、親友として、知友として、兄弟として私の誕生日に盃の一杯でもくみかわそうと、このようにわが国を訪れました。

 私はきょう、いま一度ノロドム・シアヌーク親王とその一行を熱烈に歓迎します。

 朝鮮とカンボジア同国人民間の国際主義的友好と連帯は永久不滅でありましょう。

 カンボジア人民は、アメリカ帝国主義に反対して我々と同じ戦線で戦っています。

 カンボジア人民は、ノロドム・シアヌーク親王を首班とするカンボジア民族統一戦線とカンボジア王国民族連合政府の指導のもとに、短期間にアメリカ帝国主義侵略者を勇敢に打ち破り、カンボジア国土の10分の8を解放しました。これは、単にカンボジア人民の偉大な勝利であるばかりでなく、朝鮮人民の勝利でもあり、アメリカ帝国主義と闘う世界のすべての革命的人民の大きな勝利でもあります。

 私は、カンボジア人民がノロドム・シアヌーク親王と、親王の導く民族統一戦線と王国民族連合政府の指導のもとに、遠からずしてアメリカ帝国主義侵略者を撃破してカンボジアの全国土を解放し、平和的、反帝的、革命的な新しいカンボジアの建設をめざす闘いで必ず大きな勝利をおさめるものと確信します。

 朝鮮人民は、ノロドム・シアヌーク親王の指導するカンボジア人民の側にしっかりと立ち、カンボジア人民が完全な勝利を達成するときまで断固支持声援し、永久にカンボジア人民とともに闘っていくでありましょう。

 同志の皆さん!

 私の誕生日に同志たちがこのように一堂に会して祝ってくれるので、光栄に思うと同時に、申しわけない気もします。

 私は父母のもとで14歳まで過ごしましたが、それ以後は同志たちとともに生きてきました。地下闘争のときも武装闘争のときも、そして、解放後新しい祖国を建設するときも、私は常に同志たちの愛情につつまれて、きょう60のよわいを迎えることになりました。

私は, 私を助け育ててくれ、私とかたく手を握って闘ってきたすべての同志にあつい感謝をささげます。

 私がきょうまで、このように健康な身で国家と党の活動、革命活動ができたのは、ひとえに同志たちのおかげであります。地下闘争をしていた当時、多くの同志が敵の監視と追撃から私をかくまい、危険から保護してくれました。抗日武装闘争当時には筆舌につくしがたい難関が少なくありませんでしたが、そのつど同志たちは私を助け守ってくれました。特に、食糧不足で苦しんでいたとき、同志たちは、何としてでも私の健康を維持するためにすべてをつくしました。

 このような革命的同志愛と崇高な美風は、もっぱらマルクス・レーニン主義精神と共産主義的道徳から生まれるものです。私は、私自身の革命闘争過程をつうじて、革命的同志愛と革命的団結、これこそ我々のすべての勝利の要因であることを切実に体験しました。

 もちろん、父母の愛情も貴いものです。しかし、それは主として子どもの肉体的成長にそそがれるものです。

 同志たちの愛情は、思想を堅固をものとし、互いに励まし、闘争をつうじて革命的団結を強めて革命闘争を最後まで遂行できるようにする、最も貴い愛情であります。それで、私はきょうのこの機会をかりて、我々が40余年間の革命闘争の過程で、共産主義的道徳にもとづいて堅固なものにした革命的同志愛と革命的団結を最後まで固守することを、同志たちにいま一度呼びかけるものであります。

 革命的団結は、ひとりでになされるものではありません。革命的団結は、思想、意志の統一にもとづいてのみなされるものです。

 革命隊伍の思想、意志の統一をゆるぎなきものにするためには、思想闘争もおこない、さまざまな曲折もへるものです。後れた人には忠告もすれば叱咤もし、過ちをおかした人には批判もし処分も適用しなければなりません。忠告、警告、批判、処分、これらはすべて革命隊伍の思想、意志の統一を保障するために必要なものです。もし、我々がこのような闘争をつうじて隊伍の思想、意志の統一を確固と保障しないならば、いかなる活動の成果も期待できません。

 わが国の歴史をかえりみると、李朝封建時代の支配層は、事大主義に染まって派閥争いに明け暮れました。当時、朝鮮には、親清派、親露派、親日派などさまざまな派閥がありました。封建支配層が派閥争いに明け暮れ、腐敗堕落していたため、結局、国は滅びてしまいました。

 その後、民族主義運動時期にもさまざまな派閥がありました。民族主義運動者は、それぞれ「光復団」だの「興業団」だの「正義団」だのといった団体をつくり、各人各様に行動しました。そのため、朝鮮人民は、日本帝国主義者に国を奪われてすぐ闘争に立ち上がりましたが、当時の民族主義運動には成果がありませんでした。

 わが国の初期共産主義運動の状況も同じでした。当時は、えせマルクス主義者が横行し、それぞれジャガイモの印鑑をつくって「正統派」としての承認を受けようとモスクワのコミンテルンに出入りしました。コミンテルンでは多くの人が「正統派」を名のりでるので、真偽をはかりかねて朝鮮共産党をコミンテルンから除籍してしまいました。これこそ朝鮮民族の大きな恥であります。

 歴史的経験は、事大主義に陥っても国が滅び、派閥争いをしても国が滅びるということを示しています。

 朝鮮の若い新しい世代、真の共産主義者は、封建支配層や民族主義者のおかした過ち、そして、初期共産主義運動者、えせマルクス主義者のおかした過ちを繰りかえそうとはしませんでした。

 我々は、人民の力を信じ、人民大衆に依拠して自力で日本帝国主義を打ち破り、新しい社会を建設するという綱領をかかげて闘いました。我々はこのように、正確な闘争目標をうちだし、全人民を結集して闘ったため、こんにちのような偉大な勝利をかちとることができたのです。

 我々は抗日武装闘争をはじめるとき、いちはやく全民族的な反日統一戦線を結成する方針を示しました。

 抗日武装闘争初期の我々の状況は極めて困難でありました。当時、我々の敵は日本帝国主義者だけでなく、中国人反日部隊も我々に反対し、国内の多くの民族主義的な派閥も我々に反対しました。しかし、我々は全民族的反日統一戦線と国際的反日統一戦線を結成する方針に従って、すべての反日勢力と団結するために努力しました。

 我々は、力のある人は力を出し、知恵のある人は知恵を出し、財産のある人は財産を出し、全民族が力を合わせて日本帝国主義を打倒しようというスローガンのもとに、反日民族統一戦線運動を力強くくりひろげました。全民族的な反日民族統一戦線運動の偉大な流れのなかで、わが国の全人民は団結し、人民の団結した力に依拠して、我々は祖国解放の歴史的偉業を成就しました。

 日本帝国主義を打ち破り、祖国を解放したのちの、わが国の情勢は複雑を極めていました。

 日本帝国主義と戦うときには何もせずにいた英雄主義者と出世主義者は、国が解放されるとみな主人顔をして騒ぎだし、四方八方からさまざまな人物が集まりました。もちろん解放直後、各地から多くの人が集まったのはよいことでした。それで我々は、彼らと意見や理解に相違があっても団結する方針をとりました。これにもとづいて我々は、朝鮮共産党をすぐ朝鮮労働党に改組し、先進的な労働者、農民、勤労インテリをはじめ、広範な勤労者をわが党のまわりに結集しました。

 そして我々は、天道教とキリスト教などの各宗教団体と宗教人、それに各民族主義団体とも統一戦線を実現しました。その統一戦線は、こんにちまでも存在しています。

 このように、我々は党を大衆的政党に発展させ、統一戦線を実現して党のまわりに全人民をかたく結集したため、あれほど短い期間に土地改革と産業国有化をはじめ、民主諸改革を成功裏に実施し、朝鮮民主主義人民共和国を創建し、人民軍を建設することができました。

 もし、我々が解放直後、適時にこのような活動をおこなわなかったならば、わが国は既にアメリカ帝国主義者の植民地になっていたことでしょう。

 我々は、解放後の国の情勢を科学的に分析したうえで、機を逸することなく党を大衆的政党に発展させ、統一戦線を実現して全人民を党と政府のまわりにかたく結集することによって、全民族の団結した力でアメリカ帝国主義者の侵略を粉砕して彼らの鼻っ柱を打ち砕き、革命と建設で偉大な勝利を達成しました。

 同志の皆さん!

 私はきょう、長い演説をするつもりはありません。前もって原稿を用意してくれば、演説をもっと短くすることができたはずですが、そうできませんでした。

 私は、きょうこの席をかりて、さらに二言、三言述べようと思います。

 朝鮮革命の前途は、まだ遠く険しいものがあります。我々は既にかちとった勝利に少しも自己満足することはできません。

 こんにち、我々には、分断された祖国を統一し、共和国北半部の社会主義制度をさらに強化すべき重大な革命課題が提起されています。

 我々が祖国統一の険しい道を勇敢に切り開き、共和国北半部で社会主義を成功裏に建設するためには、党の唯一思想にもとづいて全党と全人民の統一団結をさらに強化しなければなりません。党の唯一思想にもとづいて団結し、団結し、さらに団結しよう、きょう私が皆さんに言いたいのはこのことであります。

 我々は、マルクス・レーニン主義者であります。マルクスは『共産党宣言』に「万国の労働者、団結せよ!」と書きました。団結は、我々のすべての勝利の保障であります。我々は、すべての革命勢力をかたく団結させることによってのみ、革命の最終的勝利をかちとることができるのであります。

 朝鮮革命の最終的勝利をかちとるためには、全党が団結し、全軍が団結し、全民族が団結し、党と政権機関をはじめ、すべての部門の活動家がかたく団結しなければなりません。

 我々はまた、国際的規模で世界のすべての友人と団結しなければなりません。きょう、私は皆さんに、全世界の労働者階級と、抑圧され搾取される被抑圧民族、そして、世界のすべての進歩的人士との国際主義的団結を強化するため積極的に努力するよう呼びかけるものであります。

 同志の皆さん!

 これで私の演説を終えたいと思います。

 ただいまから祝杯をあげましょう。

 私はまず、朝鮮人民の親しい友人であり、兄弟であり、戦友であるノロドム・シアヌーク親王とモニク・シアヌーク親王夫人、そして、イエン・サリ国内特使とカンボジアの賓客の皆さんの健康のために乾杯することを提起します。

 次に、共和国北半部を希望の灯台として仰ぎ、地下と山中、そして鉄窓のなかで敵のあらゆる弾圧と迫害にも屈することなく、勇敢に闘っている南半部の革命同志の健康のために乾杯することを提起します。

 そして、日本で米日反動層の弾圧と破壊・謀略策動を粉砕しなから、祖国を擁護し、民族的権利を守るために力強くたたかっている総聯活動家とすべての在日同胞の健康のために乾杯することを提起します。

 前線哨所と海岸沿線には、人民軍と人民警備隊の兵士たちが立っています。彼らは、わが党と祖国と人民のために、あらゆる困難を克服しながら昼夜をわかたず、警戒心をもって哨所を守っています。人民軍と人民警備隊の将兵、社会安全員が祖国の哨所を頼もしく守っているため、人民は社会主義建設を成功裏におし進めることができるのです。私は、人民軍と人民警備隊の将兵、社会安全員、労農赤衛隊員と赤い青年近衛隊員の健康のために乾杯することを提起します。

 炭鉱と鉱山、林産と水産部門は、わが国人民経済において骨のおれる仕事がいちばん多い部門であります。私は、この部門に従事する英雄的労働者階級と機械工業、金属工業、化学工業、軽工業をはじめ、人民経済の各部門で経済建設と国防建設のために昼夜をわかたず奮闘しているわが国のすべての労働者階級の健康のために乾杯することを提起します。

 わが国の農村は大いに発展したとはいえ、いまなお農村には骨のおれる仕事が少なからず残っています。わが党は、農民を骨のおれる労働から解放し、農民にも労働者階級と同じく一日8時間労働をさせるため積極的に努力していますが、農民を骨のおれる労働から完全に解放するにはなお相当な時日がかかるものと思います。現在、農民はあらゆる難関をのりこえ、食糧増産のために力強く闘っています。私は、全人民に食糧を十分に供給するため積極的に闘っている社会主義的勤労農民の健康のために乾杯することを提起します。

 私は、わが党の示した社会主義教育学の原理を具現して次代を真の共産主義者に育てている教養員と教員の健康のために、科学研究分野に従事する科学者と、革命的文学・芸術作品を創作するために努力している文化人と芸術家の健康のために乾杯することを提起します。

 私は、60歳になるきょうまで、同志たちの愛情につつまれて生きてきました。私は皆さんとともに、朝鮮革命の勝利を達成し、世界の被抑圧人民の解放を実現し、帝国主義を完全に撃滅するための革命闘争に余生をささげることを誓い、今後とも同志たちから大いに愛されることを望みつつ、同志の皆さんの健康のために乾杯することを提起します。


<注釈>−李朝封建時代 1392年から1910年、日本帝国主義が朝鮮を植民地として占領するときまで存在した朝鮮最後の封建王朝の支配時代をいう。

 −「光復弾」「興行団」「正義団」 1910年代の後半期、中国東北地方で朝鮮の民族主義運動者によって組織された反日武装団体。これらの団体は、日本帝国主義に反対して闘うことを標榜したが、隊伍の統一はもちろん、他の反日団体との共同歩調をとることもできず、人民の支持を得られなかったため日本帝国主義侵略者に大きな打撃を与えることができなかった。

 −天道教 わが国で近世に発生した宗教の一つ。天道教は、「人すなわち天」という基本教理のもとに「輔国安民」「地上楽との建設」をとなえ、社会を救うためにはすべての人が自己修養につとめて道徳的に完成されなければならないと主張する。天道教は、人間を愚昧にし、その階級意識と闘争精神を麻痺させることに利用された。
                                                
出典:『金日成著作集』27巻


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