金 日 成

社会主義統計活動を改善するための若干の問題
朝鮮労働党中央委員会政治委員会でおこなった演説
-1969年10月21日-


 統計は、社会主義建設において極めて重要な役割を果たします。正確な統計がなくては正しい計画が立てられず、すべての活動を科学的に進めることができません。統計は、すなわち社会主義であります。社会主義は、厳密な計算と科学的な統計にもとづいてのみ成功裏に建設することができます。

 統計は、活動の結果を総合的かつ量的に反映します。それゆえ、経済幹部は、常に統計を掌握し分析する方法で活動を検討すべきです。

 相、管理局長をはじめ経済幹部は、毎月、生産統計を掌握し分析すべきであり、机の上に統計図表を作成しておいて活動すべきです。工場、企業所の支配人はどのような資材をどれくらい入手し消費したのか、製品をいくら生産し販売したのか、企業所原価と労働生産性の水準はどの程度であるのか、といった企業活動の実態を毎日、毎月統計的に掌握しなければなりません。

 社会主義経済は計画経済であり、社会主義経済を反映した個々の統計数字は密接な相互関係をもっています。それゆえ、統計資料を十分研究し正しく利用すれば、企業所における経営活動上の欠点と、それが人民経済全般に及ぼす影響を知り、企業所の活動を改善するための正しい対策を講ずることができます。

 現在、一部の経済幹部は、社会主義建設における統計の重要性をよく知っておらず、統計を正しく利用しようとしていません。そのため、生産指標一つ統計的に検討せず、おおざっぱなやり方で、なすこともなく走りまわるだけで、自分の活動上の欠陥がどこにあるのかもわかっていません。

 統計活動を決定的に改善すべきです。

 統計活動で最も重要なのは、統計の科学性と客観性を保障することです。統計資料が正確であってこそ、人民経済計画化の科学性が保障され、党の政策を正しく作成することができます。

 統計の科学性と客観性を保障するためには、統計活動において偽りの報告をする傾向をなくさなければなりません。

 いま一部の機関、企業所で偽りの統計を提出する傾向があります。農業部門と水産業部門にこのような傾向が少なからずあり、建設部門や採取工業部門でもそういう場合があります。

 近年、水産業部門の漁獲高は毎年50万~60万トンに達しているといいますが、実際上、勤労者に供給されている魚はそれほどの量にはなりません。捕った魚を多少腐らせたとしても、人民に供給される量が多くないのをみれば、魚類生産統計が誇張されたものであるというほかありません。

 農業部門では、穀物と野菜、果物などの生産統計にかなりの偽りがあります。果物などの場合、生産量が少なくても大量に生産したかのように報告するかと思うと、果物を腐らせたことにたいする責任追及を恐れて、量産しておきながら生産量を減らして報告する傾向もあります。特に、穀物生産量を誇張して報告する場合が少なくありません。穀物生産統計をみると、内閣事務局から提出される統計と国家計画委員会から提出される統計が異なり、道農業経営委員会から提出される統計も、また違っています。

 統計数字を抽象的に概算して提出する傾向もなくすべきです。

 昨年、平安(ピョンアン)南道龍岡(リョンガン)郡玉桃(オクト)里に行ってそこの管理幹部と話しあったとき、食肉の生産量について聞いてみると、大まかに計算して適当に答えていました。かれらは豚を何匹飼育したから食肉はだいたいどれくらい生産されたはずであり、そのうち国家に売り渡した量はどれくらいだから残りは農民が消費したはずだ、といった計算の仕方をしていました。かれらの話を聞いては、食肉をどれくらい生産したのか、農民が実際に肉を食べたのかどうかもわかりかねました。統計数字をこのように適当につくりだしてはなりません。

 偽りの統計報告を提出したり、統計数字を概算して不正確な資料を提出するならば、経済発展と国の経済管理に大きな混乱をまねくようになります。したがって、統計活動はあくまでも客観的におこなうべきです。いいかえれば、統計資料を作成するうえで数字を水増ししたり減らしたりせず、事実をそのまま正確に反映すべきです。

 統計の科学性を保障するためには、正確な統計資料を収集するとともに、統計資料を勝手に修正する傾向をなくさなければなりません。収集した統計資料をあの人、この人とめいめいの思惑で手直しすることは許されません。統計資料を手加減するのも、あくまで客観的におこなうべきです。

 偽りの統計報告を提出したり、統計資料を意のままに手直しするような傾向があらわれるのは、まだ幹部の頭のなかに官僚主義、功名主義、機関本位主義、地方本位主義などの思想が残っているからです。例えば、穀物予想収穫高の統計を誇張して提出するのは、地方幹部の官僚主義と功名主義に主な原因があります。統計は、幹部の活動結果にたいする客観的な評価となります。それゆえ、幹部の頭に古い思想の残りかすがあれば、かれらが個人の功名と自分の機関、企業所、自分の地方の狭い利益を前面におしたてて、成果を誇張するようになります。これは、資本主義から社会主義への過渡期にありうる現象であります。

 統計の科学性と客観性が保障できるように統計活動を一元化すべきです。

 統計活動を一元化するというのは、統計機関の体系を一元化し、国家統計機関の統一的な指導のもとに統計活動の唯一性を保障することを意味します。

 統計活動の一元化で重要なのは、国家統計機関の体系を正しく確立し、統計機関の役割を高めることです。

 現在、道・市・郡人民委員会内に統計部署がありますが、地方人民委員会の責任ある幹部は統計活動に関心がうすく、統計資料を十分に利用してもいません。特に、自分の地方にある中央直轄企業所の統計資料は見ようとさえしません。それゆえ、地方人民委員会から統計部署を分離して、地方に駐在する国家統計機関に変えるべきです。地方に駐在する国家統計機関は中央統計局に直属させ、その活動にたいしては地方で誰も干渉できないようにすべきです。

 大きな工場、企業所と省および中央機関にも統計部署を設けるべきです。3級以下の企業所には専任の統計員をおくべきです。

 このようにして、すべての単位に統計細胞をしっかりとかため、その役割を高めて整然とした一元化統計体系を確立しなければなりません。

 統計の一元化を徹底させるためには、統計機関の体系を一元化した基礎のもとで、統計活動が国家統計機関の唯一的指導のもとにおこなわれるようにすべきです。経済部門の統計活動を生産者に一任してはなりません。もし、地方経済にたいする統計は地方経済機関が掌握し、中央直轄企業所にたいする統計は当該の省が掌握するといったように統計活動をおこなうならば、統計の客観性は保障されず、全国的に正確な統計をとることができません。

 一元化統計体系では国家統計機関にすべての統計が集中されるようにし、統計活動にたいして中央統計局が直接責任を負うようにすべきです。国家統計機関は、国家的に要求されるすべての統計資料を適時に円滑に保障できるよう統計活動を確実におこなう一方、すべての機関、企業所が統計活動規定と統計規律を厳守するよう日ごろから監督すべきです。

 特に、省、管理局が下部の機関、企業所に不法な統計を要求できないようにすべきです。もちろん、省、管理局が下部の機関、企業所に必要な統計資料を要求することはできますが、その場合にも国家統計規律に違反してはなりません。

 統計の一元化とともに、統計の細部化も実現すべきです。

 もともと統計は、細部化されなければなりません。具体的で細分化された統計をとってこそ、実態を正確につかみ、細部計画化も円滑に実現することができます。

 全国的な意義をもつ統計はそれほど細部化する必要がありませんが、省、管理局と、工場、企業所では、展開された細部統計をもって活動すべきです。例えば、紡織工業管理局が管下に10個の企業所をもっているとすれば、そのすべての企業所の経営実態を具体的に反映した、展開された細部統計を掌握していなければなりません。

 統計活動で次に重要なのは、統計の時機性を保障することです。

 いくらよい統計資料であっても、時機を逸したものであっては、これといった意義がありません。統計を適時に掌握し分析してこそ、各時期の生産と建設でつまずいている問題はなんであり、どこに力を集中すべきかもわかり、活動を改善する対策も機動的に立てることができます。

 内閣や省、管理局が生産指導を正しくおこなうためには、生産統計を知らなくてはなりませんが、月間生産統計がおくれれば、それが効果的に使えなくなります。喉の渇いたときに水を飲んでこそおいしいものであるように、統計資料も緊要なときにあってこそ効果的に利用することができます。

 統計の迅速さを保障するためには、計算を機械化しなければなりません。

 計算の機械化は、統計計算の正確さを保障するためにも必要です。いまはそろばんで計算するので、多くの労働力を費やしながらも計算が不正確で多くの誤差が生じています。計算を機械化すれば、計算人員を減らしても計算の迅速さと正確さを保障することができます。

 現在、農業をはじめ、人民経済のすべての部門で技術革命を進めているだけに、事務部門でも当然、技術革新を起こすべきです。こうして、数十万に達する事務員の計算業務をらくなものにすべきです。

 計算の機械化はまず、国家統計機関の計算事務から導入すべきです。すべての市、郡にある統計機関の計算事務を一挙に機械化できなければ、中心郡から始めて漸次的に進めるべきです。

 工場、企業所でも計算の機械化を積極的に導入すべきです。中央統計局で平壌紡織工場にモデルケースとして計算の機械化を導入しましたが、その結果は上々です。これからすべての工場、企業所で計算をすべて機械化しなければなりません。

 全国的にすべての計算を機械化するには多くの計算機が必要とされます。いま統計機関で要求される計算機だけでも1万台を越え、国家計画委員会と財務省をはじめ、国家経済機関の計算業務をすべて機械化するためには、より多くの計算機が要求されます。それゆえ、計算機を量産するための対策を講じるべきです。同時に、外貨をかけてでも外国から計算機を少々取りよせるべきです。

 計算の機械化を保障するため、内閣が仕事の手配を適切におこなうべきです。計算機の生産対策を講じる一方、計算機の修理基地をととのえ、必要な技術者を育成する措置をとるべきです。

 中央統計局長が提起した生計調査問題について簡単に述べようと思います。

 資本主義社会で実施する生計調査は搾取階級に奉仕しますが、社会主義社会でのそれは人民の生活向上に寄与する目的でおこないます。生計調査を正しくおこなってこそ、その資料にもとづいて賃金の引き上げや物価の切り下げといった、人民生活の向上に必要な正しい措置をとることができます。生計統計資料は、生活必需品と副食物の生産を合理的に組織するためにも必要であり、商業部門で住民への商品供給活動を円滑におこなうためにも必要です。

 昨年、我々は、平壌市のある食料品商店に立ち寄って副食物の販売状況を調べたことがあります。その商店では1日たまごを3千個出すときは一つ残らず売れるが、5千個を出すと全部は売れないとのことでした。これは住民の購買力が低いことを示しています。住民にたまごを十分に買わせるためには、値段を少し引き下げなければなりません。もし、たまごの値段を10チョンに引き下げ、各所帯当たり1日3個ずつ買ったとすれば、1か月のたまご代は9ウォンになります。

 いま野菜1キロ当たりの値段が10チョンですが、これも少し引き下げるべきです。1日の所帯当たり野菜供給量を2.5キロとみて、その値段を1キロ当たり5チョンに引き下げても、一か月の野菜代は3ウォン75チョンになります。食肉を所帯当たり1日250グラムずつ供給すれば、食肉1キロの値段を2ウォン50チョンとみても1か月では18ウォンかかります。その他、食用油、みそ・しょう油、果実、菓子類も食べなければならないので、1か月1所帯当たりの平均副食物代は50ウォン程度かかります。それゆえ、勤労者の生活を円滑に保障できるよう住民の購買力を高めるためには、消費財の価格を引き下げ、賃金を引き上げなければなりません。

 賃金の引き上げと消費財価格の引き下げをどの程度にするかを正確に見積るためには、毎年、生計調査を正しくおこなって住民の購買力がどの程度であるかを知らなくてはなりません。

 生計調査は、地区別、住民階層別におこなうべきです。その結果得られる生計統計資料は全国的な代表性とともに地域的な代表性ももつものでなくてはなりません。

 統計活動にたいする党の指導を強化すべきです。

 一元化統計体系を確立したからといって統計の客観性が十分に保障され、統計活動がスムーズに運ぶわけではありません。統計活動を改善するためには、党組織が統計機関の活動に常に深い関心を払わなければなりません。

 もちろん、党組織が統計機関の活動にみだりに干渉してはなりません。特に党組織が統計機関に押しつけて、やたらに統計数字を手直しさせるといった現象があっては絶対になりません。だからといって、党組織が統計機関の活動を関心の外においてはなりません。

 党組織は統計活動家陣容を堅実な人でかため、かれらにたいする教育活動を強化すべきです。

 統計資料は重要な国家機密であり、統計活動家は常に国家の機密資料を取り扱っています。それだけに、統計活動家陣容は党性と責任感の強い人でかためるべきです。特に中央統計局は、全国的な統計資料が集計されるところであるため、立派な人でかため、かれらを定着させるべきです。地方党組織においても統計活動家を定着させ、かれらを他の活動に動員することがないようにすべきです。

 統計活動家は党性が強いだけでなく、専門知識がなければなりません。東海地区と西海地区に高等統計専門学校を一つずつ設け、統計活動家を養成するのがよさそうです。統計活動家陣容をただちに大学卒業生で全部かためられない状況下にあって、このような措置が必要です。

 統計活動家の社会的待遇を改善すべきです。現在、統計活動を軽視し、統計員をいやしい人のように見下げる傾向がありますが、これではいけません。元来、社会主義社会にいやしい職業などありません。我々は統計活動を重要視し、統計活動家を尊敬すべきです。統計活動家に計画活動家と同じ社会的待遇を適用するのがよいと思います。

 党組織は、統計活動の物質的条件を十分にととのえることにも深い関心を払うべきです。

 統計機関は、国家の重要な機密機関であります。それゆえ、統計機関を建物を選ばずに収容しようとせず、庁舎を好適な場所に立派に建てるべきです。そうしてこそ、統計活動の秘密と安全を保障することができます。

 国家計画に組みこんで中央機械計算所を近代的に建設し、地方にも機械計算所をととのえるべきです。そして、地方統計機関に自動車を提供して統計用紙の運搬や活動家の給養活動用として利用できるようにすべきです。

出展:「金日成著作集」24巻


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