金 日 成

社会主義的医学は予防医学である
保健省の幹部との談話
-1966年10月20日-


 社会主義的医学、人民的医学は、ブルジョア的医学とは根本的に異なります。

 ブルジョア的医学は予防にはそれほど関心を払っていません。元々、資本主義社会では、人々が病気にかからないようにするための闘争が展開されることはありません。それは、予防が資本家の利害関係に反するからです。資本家は、より多くの薬を売ることに利害関係をもっているため、多くの人が病気にかかることを望み、むしろ病気を奨励します。

 しかし、社会主義的医学で基本をなすのは予防、すなわち勤労者が病気にかからないように前もって対策をたてることです。したがって、社会主義的医学はすなわち予防医学であるといえます。

 保健省では、各方面にわたって病気に対する徹底した予防対策を講じなければなりません。

 保健医療事業は、単に医薬品だけに頼ろうとせず、予防活動を正しく行い、勤労者が病気にかからないようにすることに重点をおくべきです。

 かつて保健医療部門には、ブルジョア思想に毒された者が居座って、人民の病気を予防する努力は行なわず、病気が発生した後に薬を使うことばかり考えていました。

 これは、根本的に社会主義的医学に反することです。人民が病気にかからないようにすること、これが、すなわち社会主義的医学であります。みなさんは、社会主義的医学のこの原理を明確に認識し、その貫徹のために努力しなければなりません。

 病気の予防で最も重要なのは、勤労者に衛生知識、すなわち身体鍛練の方法、食べ物を作ったり食べたりするときに注意すべき点などを正しく教えることです。刺激性の食物を多く食べたり、野菜をきれいに洗って食べないため、いろいろな病気にかかる場合が多いのですが、これはいずれも勤労者に衛生知識がが欠けているからです。

 衛生宣伝活動を決定的に強化し、保健医療事業ではここに主力をそそぐべきです。

 まず、勤労者の間で野菜をきれいに洗って食べるよう宣伝活動を活発に行なうべきです。今、衛生宣伝活動がゆきとどかず、野菜をきれいに洗って食べないために回虫の駆除が完全になされていません。

 朝鮮人は本来、生のあえ物を好むため、特に衛生に注意を払う必要があります。今、家庭でキムチを漬けるとき、野菜をおおざっぱに水洗いして漬けるため、寄生虫の卵が付着したままの状態になっています。そのため、キムチを食べると回虫か生じ、栄養もみな寄生虫に吸いとられてしまいます。

 勤労者の間で衛生宣伝を活発に行い、野菜をきれいに洗って食べるようにし、消毒剤で野菜や果実を消毒する方法を教えなければなりません。保健医療従事者が取り組めば、寄生虫の駆除くらいは十分にできることです。大衆的運動で寄生虫を駆除しなければなりません。

 衛生宣伝・衛生知識普及活動に青年学生を広く参加させることが大切です。社労青と綿密に組んで、医科大学と医学専門学校の学生はもちろん、社労青員、少年団員をみな動員し、衛生知識を人民のなかに広く普及するようにしなければなりません。我が国には医科大学が4つもあり、このほかにも医学専門学校がたくさんあります。これらの学校の学生を動員すれば、大きな衛生宣伝部隊になります。衛生宣伝は学生にとって立派な学習になります。医科大学の学生を机にばかり縛りつけておこうとせず、人民の間で衛生講義をさせれば、その過程で多くのことを学ぶことができるでしょう。

 また、すべての学校で学生に対する衛生知識普及活動を強化しなければなりません。こうして、学生をつうじて母親や家族の者に衛生宣伝をさせれば、勤労者の衛生知識が全般的に高まるでしょう。そして、この活動を一時的運動にとどめず、すべての勤労者が衛生をよく守るまで根気よくつづけなければなりません。

 この活動に女性同盟組織も積極的に動員すべきです。女性同盟では雑誌やその他の宣伝手段をつうじて、婦人たちに広く衛生宣伝を行なわなければなりません。そして野菜をきれいに洗って食べる運動と、水をわかして飲む運動も繰りひろげるべきです。婦人に子供の養育に必要な知識も教えるべきです。

 病気の予防は一人でできるものではなく、広範な大衆の参加を得てはじめて成功裏に行なうことができます。いつも言っていることですが、大将一人で戦はできぬという言葉どおり、革命は大衆を離れて一人では絶対にできないものです。保健医療事業も大衆を奮起させることなしには成果的に行なうことができません。社会主義社会における保健医療事業は、必ず社会主義的方法で進めなければなりません。ところが、かつて保健省の幹部は、保健医療事業に大衆を参加させようとしませんでした。党では保健医療事業を大衆的運動として行なうよう再三強調しましたが、それを実行せず、病気を治せないのは国家が医薬品を供給してくれないからだといいました。

 保健医療部門では、まだブルジョア思想が一掃されていません。日本脳炎の予防事業一つをとってみてもそれがよくわかります。日本脳炎のワクチンを大量生産するよう指示したところ、保健省の幹部は費用か多くかかるので困難だといいました。だとすれば、費用がさほどかからない蚊帳を量産して家庭ごとにゆき渡るようにしなければならないはずですが、それもしませんでした。このようなことを正しく手配りしなかったため、我が国ではまだ日本脳炎が完全に消滅していません。

 保健省ではこれまでのこのような欠陥を改め、病気の予防事業を決定的に強化しなければなりません。

 大衆を動員して、大衆的に病気を予防することから円滑に行なわなければなりません。水をわかして飲む運動、野菜をきれいに洗って食べる運動、はえ、蚊、しらみ、ねずみなどの有害動物を撲滅する運動を広範に繰りひろげるべきです。まず、モデルケースをつくって方式講習を行なう方法で、すべての勤労者に衛生知識を広く普及しなければなりません。

 特に、子供の病気の予防に深い関心を払うべきです。

 すべての里で住民が病気予防運動を起こし、病気のない里をつくる運動を繰りひろげなければなりません。

 この住みよい世の中で、人民を病に苦しませるようなことがあってよいものでしょうか。今日、我が国には飢える人も、衣服をまとえず凍え死にする人も、家がなくて屋外で寝る人もいません。このような立派な制度のもとで、人々が病気にかかって苦しんでもよいものでしょうか。保健・衛生事業を大衆的運動として活発に繰りひろげ、一人も病気にかからないようにすべきです。

 これとともに、鉱泉水や温泉をさらに広く利用するようにしなければなりません。我が国には質のよい鉱泉水や温泉が多いのですが、保健省ではこれを有効に利用せず、医薬品ばかり使おうとしています。解放直後から、我が国に豊富な鉱泉水や温泉を積極的に利用する対策をたてるようにと何度も強調してきましたが、いまだに実行されていません。

 鉱泉水は酸度の高い人にも低い人にも効き目があります。他の国では、鉱泉水をびん詰めにして外国にまで輸出しています。我が国に豊富な鉱泉水や温泉をいろいろと利用して病気の治療にも役立て、予防事業も大衆的に行なうようにしなければなりません。

 薬草の栽培も広範に行なわなければなりません。

 製薬工業がまだ発展していないため、医薬品の需要を国内で充足させることができない現状にあって、薬草栽培は特に重要な意義をもっています。

 かつて我々の先祖は、数千年来、東医薬だけで病気を治し、健康な身体で暮らしてきました。霊神丸、清心丸、敗毒散のような生薬は胃炎や感冒によく効く薬です。したがって今後、製薬工業が発展しても、このような生薬の生産はひきつづき発展させなければなりません。医薬品の不足についてはよく口にしながらも、自分の手で薬草を植えようとはしません。

 診療所をはじめ、すべての保健医療機関で薬草をたくさん栽培し、生薬の需要を自力でまかなうようにしなければなりません。

 薬草は我が国のどこでもよくできます。甘草(カンゾウ)をとってみても、朝鮮でよくできる薬草です。それで綾羅島に甘草を植えてみるようにと、以前に言ったことがあります。至るところで甘草を栽培するようにすべきだと思います。

 薬草栽培を発展させるために、それを立派に行なう保健医療機関のモデルケースをつくつて、それを普及する必要があります。すべての診療所と郡病院に薬草を栽培させる一方、一道に2、3の薬草栽培の手本をつくつて方式講習を行なうようにすべきです。

 薬草の栽培は、保健医療機関だけでなく、青少年を動員してでも行なわなければなりません。学校では裏山に薬草を栽培し、それを買い付け機関に売るようにすべきです。学校でこのようなことを適切に行なえば、学校の経費の足しにもなるでしょう。

 このように大衆的方法でオウギ、白キキョウ、オケラをはじめ、勤労者の健康に有益な薬草をたくさん栽培するようにすべきです。

出典:金日成著作集 20巻

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