金 日 成

今日の朝鮮革命の要請に即して
社会科学の役割をいっそう高めるために
朝鮮労働党中央委員会科学教育部の幹部たちとの談話
-1963年12月30日-


 私は、きょう、我が国の革命と建設において社会科学が解決すべき幾つかの問題について述べたいと思います。

 我が党がこれまでにも行ってきたし、また、これから先もつづけていかなければならない革命任務は、大きく2つに分けることができます。1つは共和国北半部での社会主義革命と社会主義建設であり、他の1つは南朝鮮革命と祖国の統一であります。

 我々はこれまでに、このような革命闘争と建設事業をおし進める過程で、既に多くのことをなし遂げました。我々が革命と建設において偉大な勝利と成果をおさめることができたのは、我が党が自己の正しい政策と路線をうちだし、その実行にあたって独創性を発揮したからであります。もちろん、我が党はこれまで、革命と建設を指導するうえでマルクス・レーニン主義の一般的原理を指針としてきたし、マルクス・レーニン主義創始者たちが提示したか、または実践に移したものを少なからず参酌しました。しかし、我々がなし遂げたことのうち、その大部分は我が党がマルクス・レーニン主義の普遍的真理を我が国の歴史的条件と民族的特性に即して創造的に適用し、独創的に解決したものであります。そして、一部の問題はマルクスやレーニンの段階では提起されず、また、時代的条件からして予見することもできませんでしたが、それを我々は自分の頭で考え、自分の力で解決しました。

 周知のように、マルクスは前独占資本主義の時代に生きていたのであり、したがって当時の社会関係を分析した基礎のうえで偉大なマルクス主義をうちだし、資本主義社会の弔鐘をうちならしました。しかしマルクスは、社会主義革命と社会主義建設を実践的に指導することはできませんでした。レーニンは、資本主義列強の政治的、経済的不均等発展の法則が支配する帝国主義時代のマルクス主義であるレーニン主義をうちだし、ロシアの労働者階級を立ち上がらせて十月社会主義革命を遂行しました。これは人類史の発展に新しい紀元を開きました。しかしレーニンも、社会主義建設は行うことができず、十月革命が勝利した後まもなく、惜しくも、早くこの世を去りました。スターリンは、レーニンの偉業を受け継いでソ連における農業の集団化をおこない、社会主義的工業化もおし進めました。しかし、スターリンも社会主義の完全な勝利を見ることができず、まして共産主義の建設には着手することもできずに世を去りました。

 したがって、我が国で社会主義革命が勝利したのちの時期における、革命と建設に関する理論的・実践的問題は、主として自分の頭で考えだし、創造的に解決していかなければなりませんでした。

 今もそうですが、今後はなおさらそうです。我々が社会主義の完全な勝利を達成し、しだいに共産主義に移行するためには、今後においてもマルクス・レーニン主義の一般的原理をひきつづき指針としなければならないが、多くの問題では、まだだれも歩んだことのない新しい道をみずから切り開いていかなければなりません。我々の革命と建設の実践的経験を我が国社会発展の合法則性に即して一般化、体系化して、革命の戦略と戦術をたてていくことが重要であります。

 社会科学の分野では、我々が既になし遂げた問題や新しく提起する問題を、マルクス・レーニン主義の唯物弁証法的方法論に基づいて、その正しさと創造性を理論的に論証し展開し、発展させなければなりません。そのようにしてこそ、今後いっそう前進する新しい方向を見いだすことができ、ひきつづき発展していくことができます。

 しかし、いまだに社会科学の分野では、我々が既に久しい以前に着目して提起した一連の問題についてさえ、理論的に展開し発展させたものがないではありませんか。

 工業管理における対人活動の重要性に関する問題にしてもそうであり、農業の企業的管理・運営方法の問題にしてもそうであります。『工業経営学』教科書を書くように指示しましたが、その執筆要綱を見ると、対人活動については一言もふれていませんでした。対人活動を基本的な活動とみなさなければならないと幾度も話しましたが、要綱からしてよくできていないので是正させました。社会主義的農業協同化を終えたのちの農民問題、農業問題の解決は、どこの国でもはじめて取り組んでいることで、非常に難しく複雑な問題であります。しかし我々は、社会主義農村問題を最も正しく解決できる立派な農業指導体系を既にうちだしています。ところが学者たちは、いまなお我々がうちだした新しい農業指導体系の正しさとその生命力について深く論証していません。

 共産主義教育の幾つかの原則的問題についても既に幾度も述べており、学校で児童に教える共産主義教育読本もつくるように指示しましたが、まだできておりません。

 経済学、歴史学、語文学をはじめ、社会科学の各分野にわたって、理論的に解明を要する問題は非常にたくさんあります。

 我々は、すべての分野にわたって前進の方向を明らかにしておかなければなりません。今の段階で理論的に発展させなければ、これ以上前進することはできません。

 経済学の分野において、都市と農村の差をなくす問題は理論的に解明できることであり、実践的にも実現の可能性が見えています。精神労働と肉体労働の差をなくす問題も、どんな条件のもとで可能であるかを理論的、実践的に深く研究し解明しなけれはなりません。

 歴史学の分野においても、まだ解明を要する問題がたくさんあります。我が国における資本主義の生成、発展の問題も完全に解明すべきであります。この問題は、社会発展の合法則性に基づいて一つ一つ解明し、それを理論的に発展させていかなけれはなりません。歴史学では資本主義の生成、発展に関する問題だけでなく、古朝鮮問題、奴隷制社会の問題、人種問題なども解明しなければならず、また、実学者たちについても正しい評価を下すべきであります。党史の草稿もできあがったそうですが、早く完成しなければなりません。

 言語学の分野では、朝鮮語を発展させるうえで基本的問題となる語彙の整理を積極的におし進めなければなりません。朝鮮語をどのような方向に発展させるべきでしょうか。まだ祖国が統一されていない条件を考慮して段階を定め、まず語彙の整理からはじめるようにし、将来、国が統一されたのちには、文字の形態に関する問題も解決しなければならないでしょう。我々がつくった『朝鮮語辞典』をみると、そこには漢語のほうが多いようです。新しく単語をつくるときには、固有朝鮮語の語根に基づいてつくり、朝鮮語を発展させなければならないのに、今、多くの場合、漢字をまぜて新しい言葉をつくつています。文字の形態にしても、現在のものをそのまま使うかどうかという問題を研究してみるべきです。朝鮮語の発音はよくできているけれども文字の形態には少々欠点があります。

 我が国の統一問題についても理論的な研究が必要であり、教育学の分野においても理論的、実践的に解明すべき問題がたくさんあります。

 こうしたいろいろな問題を新たに理論的に開拓していくためには、科学者や大学教員との活動を正しく行うことが極めて重要であります。

 ところが、今、我々は科学・教育部門の活動家を教育して思想的に武装させ、かれらをふるい立たせる活動を正しく行っていません。

 これまで、我々は主として科学者を養成する仕事を行ってきたし、かれらが戦後の復興建設や社会主義基礎建設で提起される諸問題を研究し解決するようにはかってきました。しかし、これからは事情が違います。自然科学者であれ、社会科学者であれ、科学者との活動をいっそう強化して、我が国の革命と建設で提起される多くの新しい理論的・実践的問題を創造的に解決していかなければなりません。

 そのためには、科学研究分野で主体性を確立することが非常に重要であります。主体性を確立してこそ、科学研究事業を党の要求する方向で正しく進めることができます。事実、この数年のあいだに科学研究事業でおさめたすべての成果は、主として主体性を確立する闘争の過程で達成されたものであります。ビナロンの研究成果は、まさにそのことを物語っています。

 我々は、科学者を党のまわりにかたく結集し、我が党のチュチェ思想で武装させる活動をひきつづき強くおし進めなければなりません。こうしてすべての科学者が、我々は朝鮮の国土で生きている、我々は我が党の思想、我が党の理論で生きており、今後も生きるであろう、事大主義や教条主義は我々とは無縁だ、という思想で武装するようにしなければなりません。

 もしも我々が、科学者や大学の教員を我が党の思想で武装させる仕事を軽視したり、正しく進めることができないならば、科学研究事業そのものも満足にできないのはもちろん、我々の新しい世代を革命に有益な人材に教育することもできなくなるでしょう。学生を真の革命的なインテリに育てあげるか否かは、かれらを指導する科学者や教員に大きくかかっています。

 科学者や教員を我が党のチュチェ思想で武装させるばかりでなく、かれらを組織的にいっそう鍛えあげなければなりません。

 今、我が国には、女性科学者があまりいません。女性科学者を多く養成し、彼女たちを発展させなければなりません。

 社会科学の分野に提起される課題をより円滑に解決する目的から、我々は社会科学院を科学院から分離して別に設けました。今後おりをみて、社会科学部門の仕事と関連する会議を一度開こうと思います。言語学者とも話し合い、百科事典編さんの問題と関連して、自然科学者や社会科学者とも話し合ってみたいと思います。そしてそのとき、社会科学部門に提起される具体的な課題について少し詳しく話そうと思います。

出典:金日成著作集 17巻

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