新たな環境に即して工業の指導と管理を改善するために

3 来年度の生産準備を綿密に進めるために


 今度調べたところ、大安電機工場では来年度の生産準備も十分におこなわれていません。

 敵との戦闘で勝利するためには、あらかじめ戦闘準備を十分におこなわなければならないように、生産で成果をあげるためには生産準備を綿密におこなわなければなりません。

 生産準備を綿密におこなうこと、言いかえれば設備を適時に点検し、部品と資材と設計を先行させるのは、生産組織における一つの法則です。炭鉱や鉱山で掘進を先行させるのが法則だとすれば、機械工業やその他の工業部門では、設備を整備し、予備部品と資材および設計を先行させるのを法則として仕事をすべきです。いかに複雑な状況にぶつかっても生産をひきつづき正常化し生産計画を間違いなく質的に遂行するためには、各工場、企業所で少なくとも一か月分の資材の予備と三か月分の予備部品をととのえ、設計などすべての技術準備を、必ず生産に先行させるべきです。

 しかし現在、経済部門の幹部がこの原則を守らないため、生産の上がり下がりがひどく、生産計画が満足に遂行されていません。

 大安電機工場でも、これまで多くの場合、生産準備を先行させる原則からはずれて目前の生産にのみ没頭し、次の生産準備はほとんどおこなわないまま新しい課題の遂行に着手しています。そのため月初め、四半期初め、年初には資材や設計が間に合わないため生産を正常化できずに時間を費やし、月末や四半期末、年末になって設計が完成し、資材が入ってくれば「突撃」するのが通例でした。こうなるから労働者は仕事に追いまくられ、機械を酷使しながらも、生産計画は満足に遂行できず、製品の品質も向上させることができませんでした。

 敵との戦闘過程では突撃も必要です。しかし、このような方法で突撃をしたのでは、決して、戦果を上げることはできません。敵陣を成功裏に突破するためには、まず出発陣地をかため万端の戦闘準備をととのえてから敵陣に接近し、決定的な瞬間に突撃に移行すべきです。ところが、みなさんは、出発陣地もかためず戦闘準備もせずに突撃にばかり駆りたてています。したがって、本当に突撃すべき時には疲労こんぱいして、へたばってしまうのです。

 大安電機工場の来年度の生産準備状況は、極めて不十分な状態にあります。大安電機工場には来年度に中小型発電機の量産に入る課題が提起されていますが、これは単なる生産目標であって、その遂行に必要な生産準備は何一つなされていません。設備の整備もできておらず、部品や資材も蓄えがなく、設計も完成していません。

 来年度の生産準備がこのように遅れたのは、全的に機械工業総局と工場の幹部が仕事の手配を綿密におこなわなかったことに原因があります。

 機械工業総局の幹部は、もし大安電機工場に中小型発電機の生産課題を新たに与えようとするなら、少なくともことしの下半期からその準備を本格的に進めるべきでした。工場の幹部に、来年度には新たな品目の生産に入るから、設備はどのように補強し、設計や資材、ジグ、工具、部品はいつまでどう準備せよというように課題を与え、工場自体で解決の困難な問題は総局で解決する対策を講ずるべきでした。ところが、機械工業総局の幹部はこのような段取りは何一つせずにいて、年末になって来年度に中小型発電機をいくら生産せよと官僚主義的に押しつけています。これは、例えて言えば、軍事指揮官が戦闘にあたって、火砲も、砲弾も支給せずに、敵陣を砲撃せよと命令するようなものです。

 生産準備が順調になされていないことについては、工場の幹部も責任を負わなければなりません。工場の幹部は当然、来年度の生産を見通して工場の生産能力を検討し、設備や部品が不足する場合には、工場で生産できるものは工場で生産し、それが不可能なものは総局に提起して解決するようにすべきです。また、設計士が不足するなら、その補充対策も講じ、資材を十分確保するため、ほかの工場との契約も結び、既に契約したものがあれば、早く受け取るよう仕事の手配もおこなわなければなりません。ところが、こうした仕事の手配はせずにいて、新年度が目前に迫ったいまとなって、立て旋盤が足りない、プレスをどこに移さなければならない、労働力の補充を受けなければならない、機械工業総局でなになにを解決してほしいなどと忙しく走りまわっています。これは、まるで娘を嫁にやると言いながら、その準備は何一つせずにいて、婚礼の日になって新婦をみこしに乗せてからやれポソン(朝鮮の足袋)がない、なにがないと騒ぐようなものです。

 今後二度とこのような活動方法を繰り返してはなりません。

 ことしは、既に手遅れになりましたが、これからでも来年度の生産準備を急がなければなりません。これから20日間ほど生産に少々支障があっても、手間をかけて設備の補強や補修に力を入れ、部品や工具、ジグなども集中的に生産し、資材の予備も十分に蓄えなくてはなりません。これとあわせて、設計陣容をととのえて来年度の生産に必要な設計を早く完成し、労働者の技術熟練度を高める対策も講じ、来年度の生産計画を超過遂行するための政治活動も集中的に進めるべきです。来年度の生産準備を今月中に完了できない場合には、来年の1月に入ってもつづけ、なんとしてもすべての生産準備を完了してから、生産に着手すべきです。

 そのためには、生産計画を少し調整しなくてはならないでしょう。緊急に生産準備をしなければならない部門には、今月の残りの期間の生産課題を与えないか、または手加減して与えるべきです。しかし、ほかの企業所と契約を結んだ国家的に緊急に必要な設備の生産はつづけるようにし、生産をつづけながらも来年度の生産準備に支障のない職場や作業班には計画どおり生産課題を与えるべきです。

 今年度の計画はこのように調整するとしても、生産準備が来年の1月まで持ち越される場合、1月の生産課題をどうするかが問題です。来年度の生産計画は、既におりているのですから、これを減らすことはできません。したがって、私の考えでは、来年度の生産計画を12か月に配分せずに11か月に配分して与えた方がよいと思います。こうすれば、1月は生産準備にあてて、それを終えてから生産に着手しても、来年度の生産計画は問題なく遂行できるでしょう。

 もしそうせずに、準備もなしに新年度の生産に着手するならば、設計がないか、設備や資材、部品がまにあわないため、最初の月から計画を遂行できず、そうなれば、その翌月もひきつづき計画を遂行できなくなるでしょう。しかし、あらかじめ生産準備を綿密におこない、すべての予備を十分に蓄えて新年の生産に入れば、初日から計画を必ず遂行できるでしょうし、生産は完全に正常化できるでしょう。したがって総体的に見れば、当面の生産にとらわれて準備もなしに新年に入るよりは、いま生産が少々減っても、徹底的に生産準備をして新年に入った方がはるかに有利です。

 これは、我々の長期にわたる闘争の経験が如実に物語っています。かつて、抗日パルチザン闘争の時、我々は日帝侵略者と戦闘を交えるたびに勝利をおさめましたが、その主な原因の一つは、まさに、あらかじめ戦闘準備を立派におこなったことにあります。当時、我々は一度戦闘を組織するにあたっては、あらかじめ敵情偵察も綿密におこない、隊員のあいだで政治活動も進め、給養活動を十分におこなって、隊員に給食と休息も十分に与える一方、弾薬などもあらかじめ十分に補給しました。このように、万端の準備をととのえてから戦闘に入ったため、隊員は常に勇気百倍して、敵とたたかい勝利したものです。また、戦闘で一度勝利すれば隊員の士気はさらにあがり、敵から大量の武器や弾薬、食糧をろ獲するので、次の戦闘では、さらに大きな勝利をおさめることができました。生産もこれと少しも違うところがありません。

 いまから工場の幹部と全従業員が一心同体となって緊張して仕事に取り組み、早急に来年度の生産準備を成功裏に終えるようにすべきです。

 特に工場の幹部は、この期間に設備の整備、部品生産、設計作業などを質的に保障するよう仕事の手配と政治活動を正しくおこなわなければなりません。ややもすれば、緊張した作業を進めるなかで品質を落とすような欠陥があらわれないとも限りません。部品などは数量上では計画どおり生産したとしても、そのなかには不合格品もありうるし、機械や設備の点検補修を終えたとしても、10日ほど稼働してすぐ使えなくなることもありえます。設計もとり急いで線の引き方を一つ誤れば、国家に多大な損害を与えることになります。みなさんは、こうしたことを肝に銘じ、事後検査制度を確立しなければなりません。

 いまみなさんは、もう一度点検する運動を展開しているとのことですが、大変よいことです。ことわざに“知っている道でも尋ねながら行け”というのがあります。自分のおこなった仕事でも、もう一度調べて見て、少しでも疑わしい点があれば、ほかの人に聞いて間違いがないようにすべきです。

 機械工業総局の幹部は、この工場で来年度の生産準備を短時日内に質的に完了できるよう十分に援助しなければなりません。何日か工場に滞在しながら、工場の技術者とともに機械や設備のいっせい点検をおこない、ある機械は増設する、ある機械は老朽したから補修するといったように一つ一つ指示を与えるべきです。設計の作成も助け、工具やジグ、部品なども、どんなものをどれほど生産せよと課題を与え、資材も1か月分の蓄えをもつように対策を立てるべきです。

 おわりに生産文化と生活文化をさらに向上させる問題についてふれたいと思います。

 私は紡織工場に行って、紡織は芸術だと言ったことがありますが、今度この工場に来て見ると、電気機械の生産こそ一つの芸術であります。大安電機工場は極めて精密な電気設備を生産しているだけに、どの工場よりも生産文化を高めなければなりません。そうでなければ上質の電気機械を生産することは不可能です。

 生産文化を高めるためには何よりもまず、個人生活、家庭生活、村づくりから文化水準を高めることです。

 身なりをととのえ、家、村をきれいにすることが、工場での製品の品質向上となんの関係があるのかと考える人がいるかも知れませんが、もしそう考えるなら大きな誤りです。自分の身だしなみさえきちんとできず、自分の家や村をきれいにできない人が、どうして自分の機械や職場、工場をきれいにすることができ、また自分の職場もきれいにできない人がどうして良質の製品を生産することができるでしょうか。自分の身なりをきれいにできる人であってこそ、一つの製品をつくっても、きれいで質のよいものをつくり、設計を一つ作成してもまともに作成することができます。反対に自分の身なりや周囲を不潔にしている人は仕事もそのように雑にするにきまっています。

 私は、軍部隊を視察するさいにはいつも炊事場から見ることにしていますが、炊事場が不潔な部隊は戦闘も上手でありません。また、指揮官が頭にくしをいれず、ひげもそらず、服装も端正でない部隊に行って見ると、必ず生活に不健全なところがあり、このような部隊は戦闘力も強くありません。

 我々は今度、大安電機工場に来てみなさんの文化・衛生水準が高くないのを見て、みなさんのつくった機械の精密度に疑問をいだかざるをえません。この工場の労働者のなかには身なりに構わない人も多く、全般的に住宅や村も清潔にしていません。一部の人は、綿入れの上衣もきちんと着ずに肩に羽織って歩いたり、理髪や入浴も適時にしないとのことです。立派な家に住みながら、垣根もつくらず、手入れも満足にせず、村や町も清潔にしていません。工場の内部も手入れがゆきとどいていません。少々努力すれば、清掃車ぐらいは自力でいくらでもつくれるはずなのに、それをつくって使おうとせず、方々にごみたまりをつくっています。こんな状態でどうして良質の製品が生産できるでしょうか。

 かつて、抗日パルチザンたちは、あのような困難な状況のもとでも、常に身なりを端正にしたものです。かれらは、水がなければ雪をとかしてでも必ず洗面し、どんなに忙しくても欠かさず散髪やひげそりもしました。また、常に服装もきちんと着用し、ほころびたり、焚火でこがしたりすれば、すぐ繕って着ました。行軍途中に服が破れれば、緊急な場合を除いては行軍を停止して服を繕ってから行軍しました。まさに、このようにしたため抗日パルチザンはどんな危急な状況のもとでも、常に整然たる秩序を保ち、活気があり、戦闘でいつでも勇猛をはせることができました。

 工場の幹部は、従業員やその家族の日常生活で文化・衛生水準を高める問題を決しておろそかにせず、常に深い注意を払わなければなりません。そして、誰もが服をきれいに洗濯して端正に着て歩き、住宅や村を清潔にしなければなりません。家ごとに垣根もつくり、庭も通りもきれいに手入れをして木や花も植え、工場の裏山には、りんご、桃、すもも、ぶどうなどの果樹も多く植えるようにすべきです。

 工場の幹部は、仕事の手配を手ぎわよくおこなって、冬の間にできることから先に早く片づけ、春になって衛生美化活動を本格的に進めるようにすべきです。

 みなさん!

 今度我々は、工場の管理運営上の欠陥を具体的に見つけだし、それを是正する対策もすべて立てました。しかしみなさんが、これで欠陥はすべてわかった、欠陥の是正策もすべて立てたと言って万歳を唱えて、それを実践するために取り組まないならば、仕事で成果をおさめることはできません。我々の活動家には、初めのうちは騒ぎ立てるが、いくらも立たないうちに熱がさめて静まりかえるよくない習性がありますが、こうした傾向は徹底的になくさなければなりません。みなさんは、党中央委員会の指導グループとともに活動における欠陥を見つけだし、それを是正する対策を立てた時の意気ごみを、今度我々が提起した課題を必ず遂行し、過去の管理運営における欠陥を完全に一掃する時まで堅持するようにしなければなりません。

 特に幹部たちが、活動方法と活動作風を決定的に改めなければなりません。

 いうまでもなく、このたび我々は、過去の間違った工場管理機構を改編し、新たな管理機構をつくりあげました。しかし、機構を改編したからといって万事がひとりでにうまくいくと考えるのは間違っています。いくら機構を改編しても、幹部が古い活動方法と活動作風を改めず、新しい体系の要請どおり仕事をしないならば、工場の管理運営の改善は期待できません。

 責任範囲が不明確で下部におりていけないようになっていた古い枠は打ち壊され、障害物は取り除かれました。いまでは、幹部が意識的に下部におりて行く気風を確立するために努力することが重要です。幹部は、下部に出向いて計画を立て技術準備も助け、資材の供給も上部が責任をもつ、徹底した下部援助の気風を確立すべきであります。

 今度の指導過程でみなさんも多くのことを学んだはずであり、また、我々もみなさんから多くのことを学びました。我々は、大安電機工場にたいする指導をつうじて、今後、我が党が工業を正しく指導し、工業生産にたいする党の指導を強化するための多くの大事な資料と教訓を得ました。したがって、指導はみなさんにとってのみ必要であったのではなく、我々にとっても切実に必要なものでした。

 我々はみなさんから学んだ事柄をもって我々の活動上の欠陥を是正するために努力し、みなさんは指導を受ける過程で見つけだした欠陥を是正し、学びとった教訓を生かすために努力すべきであります。

 私は、今度、我々が示した新しい工業管理体系を貫くためにみなさんが力強くたたかい、党のうちだした来年度の6つの目標達成をめざすたたかいの先頭に立って進むものと確信します。



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