新たな環境に即して工業の指導と管理を改善するために

1 新しい環境は、工業にたいする指導と管理の改善を要求する


 7か年計画の遂行と当面する来年度の6つの目標の達成において、機械工業部門には極めて重大な課題が提起されています。

 第4回党大会が示した7か年計画の中心的課題lは、人民経済各部門で全面的な技術改造を実現することであります。我々は、7か年計画期間に技術革命を力強くおし進めて社会主義的工業化を実現し、人民経済各部門を近代的技術で装備し、勤労者を骨の折れる労働から解放する歴史的な課題を遂行しなければなりません。そのためには、なによりもまず機械工業を急速に発展させ、近代的な機械と設備をさらに多く生産しなければなりません。機械工業の発展を優先させずして、人民経済の技術改造は考えられません。

 当面する6つの目標の達成も、結局は機械工業の役割に大きくかかっています。

 機械工業部門の工場のなかでも、特に、動力設備を製作している大安電機工場の責任は極めて重大であります。ほかの機械工場で性能のよい機械をいくら多く生産しても、大安電機工場で電動機、発電機、変圧器などの動力設備を生産、供給しないならば、それらの機械を動かすことはできず、したがって、電化、機械化、オートメ化を実現することができません。人民経済のどの部門でも、この工場で製作した動力設備を使用しないところはなく、それがなければ生産を進めることも、技術を発展させることもできません。大安電機工場は、技術革命遂行の最先端を進む斥候の役割を果たす工場だと言えます。

 全面的技術革命の遂行と関連して、機械工業部門にこのように重要かつ膨大な課題が提起されているだけでなく、現在我が国の社会主義工業は以前とは比較できないほどその規模が大きくなり、工業の技術装備も著しく強化され、工業部門間の連係も非常に密接になり複雑になっています。これは、我が国の工業が新たな発展段階に入っていることを示しています。工業発展におけるこのような新たな環境は、工業にたいする指導と管理の決定的な改善と工業生産にたいする技術指導の強化を切実に求めています。

 しかし、工業生産にたいする指導管理体系と活動家の活動方法は、いまなお立ち後れた工業を管理し指導していた当時の古い枠から完全には脱皮していません。

 これは、社会主義経済建設にたいする我が党の路線と政策を貫徹するうえで障害となっており、広範な勤労者大衆の高まった革命的熱意を十分に発揮できなくさせています。

 我が党の路線と政策はすべて正確であり、各時期に人民経済各部門に示した課題もすべて正しいものです。党の路線と政策を貫徹し、党の示した課題を実行しようとする党員と勤労者の熱意もまた、非常に高まっています。党員と勤労者の政治的熱意と生産的熱意は、世界のどの国にも見られないほど高いものです。このように党の路線と政策も正確であり、それを貫徹しようとする党員と勤労者の革命的熱意も高まっているにもかかわらず、経済幹部の指導がそれに追いついていません。各省、管理局では、工場、企業所にたいする指導と必要な条件の保障を円滑におこなっておらず、工場、企業所でも管理運営を正しくおこなっていません。

 まさに、各省、管理局の指導と工場、企業所の管理運営上の欠陥のため、我々は社会主義経済建設で当然達成できる成果も達成できずにいます。

 それでは、工業指導体系における大きな欠陥はなんでしょうか。

 工業にたいする指導と管理におけるさまざまな欠陥をまとめて見ると、一口に言って、工業部門には、まだチョンサンリ(青山里)精神、チョンサンリ方法が入っていないことです。

 なによりも工業部門には、上級機関が下級機関を援助し、上部の人が下部の人を援助する革命的な活動体系が確立されていません。

 上部から下部に行って援助するのは、チョンサンリ精神、チョンサンリ方法の基本的な要求の一つであり、これはこんにち、我が国の状況のもとで極めて緊切な問題であります。

 ほかの国のように工業発展の歴史が古く、工場、企業所の幹部の水準が高く、企業管理の豊かな経験があれば、下部に行って援助せずに上部に座って指示をおろすだけでも企業管理ができるでしょう。しかし、周知のように、我が国は工業発展の歴史が浅いため、工場、企業所に技術者や、経験と能力のある管理幹部が非常に限られています。このような状況のもとで企業管理と技術の水準が比較的高い省や管理局の活動家が工場、企業所に行って援助し、工場、企業所の幹部が職場や作業薇に行って援助するのは、企業の管理運営を改善し生産を急速に発展させるうえで極めて重要な意義をもちます。

 また、たとえ下部に技術者が多く、能力のある管理幹部が多いとしても、省、管理局の活動家が工場、企業所に行って援助するのは切実に必要なことだと考えます。なぜなら上部から下部に行って援助するのは、下部の人たちの仕事に大きな助けとなるだけでなく、上部の幹部自身にも非常に有益であり、また切実に必要だからです。幹部が下部に行って現実を詳しく把握すれば、自分がおろした命令や指示の適否を知ることができ、具体的な実情に即して正しく生産指導をおこなうことができます。また、技術者もしばしば生産現場に行って労働者を助け、機械を扱い直接製品をつくってみれば、本で学んだ知識や技術が実際の生産活動にどのように適用されるかを知り、それを生きた知識として身につけることができます。特に、我が国のように下級機関の活動家の水準が低く、上級機関の活動家も現実と結びついた生きた知識を身につけていない状況のもとでは、活動家が当然下部におりて行くべきであります。

 元来、上級機関が下級機関を援助し、上部の人が下部の人を積極的に援助して、すべての仕事がスムーズに運ぶようにするのは、共産主義者の基本的な活動方法の一つであり、既に、抗日武装闘争期から適用してきた、我が党の伝統的な活動方法であります。我が党は、これまですべての幹部が下部に行って下部の活動家を積極的に援助するよう繰り返し強調してきたし、特に、昨年には江西(カンソ)郡青山里にたいする指導をつうじて、上部から下部へおりて行ってどのように援助すべきかについて、実践的模範まで示しました。

 しかし、青山里にたいする党中央委員会の指導がおこなわれてからほぼ2年になる現在も、工業部門の幹部はチョンサンリ方法を受け入れず、いまなお従来の活動方法に固執しており、思い切って下部におりて行こうとしません。

 省や管理局が、工場、企業所を正しく指導し援助するためには、幹部が直接生産現場に出向いて、設備の台数やその技術状態、資材供給状況、技術文書や工具・ジグの準備状況などを具体的に調べなければなりません。もし、設備が不備の状態にあれば、それをどのように整備補強し、手元にない資材はどのように補給し、未完成の技術文書はいつまでどのように完成させ、不足する工具・ジグはどうととのえるかというように方途を見出し、対策を講じなければなりません。このように現地に行って問題点を発見し、それを適時に解決してこそ、生産指導だと言えます。

 しかし、省、管理局の幹部は多くの場合、事務室にこもって不要な文書いじりに時間を費やしています。かれらの仕事といえば、主として工場、企業所に機械的に計画数字を割り当て、資材伝票を切り、下部の人から統計を受けとり、かれらが持ってきた書類に決裁印を押すことです。一部の幹部は、それさえいやがって、訪ねてくる下部の人にも会おうとせず、果ては決裁印も自分で押さず他人に任せているとのことです。

 下部に行って何が隘路かを調べ、それを解決し援助するのが指導であって、机の前に座って、電話でどなりつけ、計画数字を割り当て、統計を受けとり、書類に決裁印を押すことは決して指導とは言えません。

 これまで省や管理局が工場、企業所にたいする生産指導を正しくおこなわなかったというより、生産指導をしなかったというのがより正確でしょう。その結果、省、管理局は、工場、企業所の生産活動に援助を与えるのではなく、かえって混乱を与えることさえありました。

 実例を一つあげましょう。

 昨年、機械工業総局では、電動機の需要もよく調べずに、大安電機工場に10馬力電動機を100台製作する課題を与えました。工場では、その課題を受けて原材料として受け取った珪素鋼板を全部10馬力電動機の規格通り切断して、その製作に着手しました。ところがその後、機械工業総局の幹部たちがこれを検討し直してみると、10馬力電動機は100台でなく50台あれば足り、そのかわり5馬力電動機が約20台緊急に必要だということがわかりました。それで機械工業総局では、この工場に5馬力電動機20台を早急に製作するよう再び課題を与えました。しかし、この工場では、既に珪素鋼板を全部10馬力電動機用に切断してしまったため、ほかに珪素鋼板の手持ちがなくて5馬力電動機は製作できませんでした。これは職場長や支配人の責任ではありません。これは、全的に機械工業総局の幹部が上部に座って計画をいい加減に立て、生産を官僚主義的に指導した結果であります。

 省、管理局の幹部は、このように上部に座って官僚主義的に仕事をするばかりか、ときおり下部に行っても、生産者のなかに入って具体的に実情を調べ、問題点を解決するのではなく、工場を一まわりして帰ってくるため、下部の人たちの仕事には少しの助けにもなりません。

 工場、企業所の幹部も、職場や作業班に行って、下部の人たちを助けるために努力していません。支配人が生産指導を正しくおこなおうとすれば、工場の活動を全般的に掌握して指導しながら、しばしば労働者や技術者のなかに入って意見も聞き、設備状態や資材供給状況なども調べ、隘路があれば適時に解決してやらなければなりません。ところが、支配人が現場には行かずに、資材を引き取るために飛びまわったり、事務室に構えて伝票にサインするといった二次的な仕事に多くの時間を費やしているため、工場内の実情もよく知らずにすごす場合がしばしばあります。

 支配人が工場内の実情にうといので、省、管理局の会議などに行って、相や管理局長から生産状況を聞かれると、「うまくいっています」と答えて、事実と合わない資料を報告します。そうすれば、下部の実情にうとい相や管理局長は、それを真に受けて提出された資料を機械的にまとめて、国家計画委員会と内閣に報告します。こうして結局、全国的に事実と合わない資料が結合され、したがって、実情に合わない計画が作成されるようになります。これは相や管理局長または支配人のうち、誰かが下心があって仕事を失敗させるために故意にしたせいではなく、かれらが下部におりて行かず生産指導を正しくおこなわなかったため、具体的実情を把握していないことが原因です。

 次に、工業にたいする指導と管理における大きな欠陥は、幹部がすべての活動に政治活動を優先させるという党の要求を貫徹していないことであります。

 生産の主人は生産者大衆であり、生産にたいして誰よりもよく知っているのも生産者大衆であります。したがって、生産を発展させ、生産活動で成果をおさめる最も重要な裏づけは、党員と勤労者のあいだで政治活動を活発に進めて、かれらの思想・意識水準を高め、自発的熱意をふるいおこすことであります。すべての活動に政治活動を優先させ、広範な勤労大衆が革命課題の遂行に自発的に参加して知恵と才能のかぎりを尽くすようにするのは、資本主義にたいする社会主義の決定的な優位性であり、社会主義経済制度の本質にもとづく要求であります。

 しかし、工業部門の幹部はまだ、この真理を明確に認識していません。いま省、管理局の幹部にせよ工場の幹部にせよ、主として行政的方法、官僚主義的な方法にたよっており、党組織や勤労者団体組織に依拠して政治活動を活発に進め、党員とすべての労働者を動かそうとはしていません。

 きょうの会議で批判されたように、これまで工場の管理運営で多くの欠陥が生じましたが、これには、もちろんいろいろ原因があります。工場の管理機構上の不備にも原因があり、ほかの工場の無責任さから資材や連帯生産製品を順調に受け取れなかったことにも原因があります。しかし、これまで工場の管理運営でいろいろな欠陥が生じた主な原因は、党組織と幹部が党員と勤労者にたいする政治活動を正しくおこなわなかったため、かれらを政治的、思想的に動員できなかったからです。

 もし、党組織と幹部が、党員と労働者のあいだで党政策教育、革命伝統教育、共産主義教育を強化し、その他、いろいろな方法で政治活動を活発に進めて、かれらがすべての問題を党の立場、国家的な立場に立って考察し、任された革命課題を必ず遂行せずにはおかない真の革命家としての態度をつちかったならば、かれらは決して企業の管理運営に生じた欠陥を傍観しなかったはずであり、それを是正するために積極的にたたかったはずです。一部の党員と労働者が仕事において積極性と共産主義的態度に欠け、欠陥を見ても積極的にたたかわないのは、幹部が政治活動を正しくおこなわないところに原因があります。

 我々は一日も早く祖国を統一し、全朝鮮に社会主義・共産主義社会を建設するためにたたかっています。この革命大業は何人かの力だけでは決して実現できるものではなく、すべての人が力を合わせてはじめて実現できるものです。したがって、我々は党員と勤労者のうちに一人の落伍者も残しておいてはならず、すべての人を共産主義的に教育改造して真の革命家に育てあげなければなりません。こうして、すべての人が革命家としての高度の自覚をもって仕事をするようにすれば、生産も順調に伸び、企業管理運営上の欠陥もすべて適時に是正できるでしょう。

 工業の指導と管理でのもう一つの欠陥は、中心の環に力を集中せず、仕事を広げすぎ、力を分散させていることです。

 すべての活動で中心の環をしっかりととらえ、それに力を集中するのは、勝利と成果の重要な裏づけであります。特に、設備も限られており、労働力と資材も不足がちで技術者も多くない状態で、設備、労働力、資材、技術陣などを中心の環に集中するのは、社会主義経済建設を力強くおし進めるための最も緊切な課題であります。それゆえ、我々は、既に数年前、黄海(ホワンヘ)製鉄所の指導をおこなった時に、中心の環をしっかりととらえ、それに全力を集中するよう強調し、青山里を指導したさいにもこの問題を重ねて強調したのです。

 しかし、機械工業部門の活動家は、その後も相変らず、あれも中心の環だ、これも中心の環だといって、中心の環を明確にとらえることができず仕事を広げすぎ、力を方々に分散させています。

 例をあげれば、機械工業部門の活動家は、設計が間にあわず大安電機工場で電気機械の生産が遅延しているにもかかわらず、技術者を方々に分散させて、どの設計も完成させていません。特に、中小型発電機の生産を急速に増大させるという党中央委員会総会の決定が示達されたのちも、技術陣を集めて中小型発電機の設計を集中的におこなう対策を全然立てませんでした。これらのことは、工業部門の幹部と工場、企業所の管理幹部が、党政策の実行で革命的展開力と積極性に欠け、党の方針どおり活動方法を革命的に改善するために努力していないことを物語っています。

 工業部門にチョンサンリ精神、チョンサンリ方法が正しく入っておらず、経済指導と企業管理で多くの欠陥が生じているのは、この部門の幹部が活動方法を改善するため積極的に努力しないことにも原因がありますが、工業管理機構と指導体系が不合理な点にも重要な原因があります。

 現在の工業管理体系は、上部が下部を責任をもって援助するようになっているのではなく、上部は主に命令と督促をし、苦労は下部だけがする仕組みになっており、責任も上部は回避し、下部がいっさい負うようになっています。そして、上部の幹部は、給料を多く受け取りながらも仕事は少なくし、責任は負わずにすみ、下部の人は給料は少なく受け取りながら仕事は多くし、責任はより多く負うようになっています。生産に不手際があって処分を受けるときには、いつでも下部の人たちが受け、上部では処分を受けないようになっています。現在の工業管理体系はまた、すべての企業活動を行政的、技術的にのみ指導するようになっており、党的、政治的には指導できないようになっています。この体系は、生産者大衆が企業管理に広く参加できないようになっており、すべての企業活動が行政責任者一人の裁断と指示によっておこなわれるようになっています。

 一言でいって、現在の工業管理体系には、資本主義の残りかすが多く残っています。このような管理体系を存続させたのでは、社会主義的工業を正しく指導し管理することができず、生産を急速に発展させることはできません。いまや、欠陥の多い我々の工業管理体系を改編すべきときがきました。                         



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