金 日 成

朝鮮民主主義人民共和国は在日朝鮮同胞の真の祖国である
 第1次帰国船で祖国に帰った同胞との談話
−1959年12月21日− 


 帰国に当たって、みなさんは苦労を多くされたことと思います。私はみなさんの帰国をたいへんうれしく思い熱烈に歓迎します。

 いま、日本からの帰国同胞を迎え、全国が祝日のようにわきかえっています。長いあいだ別れ別れになっていた同胞が再会し、一緒に暮らせるようになったのは喜びにたえないことです。みなさんの歓迎に出た人も泣き、みなさんも泣いたそうですが、それは感激の涙、喜びの涙にほかなりません。

 過去、在日同胞は、国なき民として悲惨な運命にありました。さげすみと貧困に苦しめられても、かれらに手をさしのべる人は誰一人いませんでした。しかしいまでは、事情が違います。こんにち、在日同胞には、真の祖国−朝鮮民主主義人民共和国があります。祖国は在日同胞の民族的権利を擁護してたたかっており、かれらの生活に深い関心を払っています。在日同胞には祖国があり、かれらは朝鮮民主主義人民共和国の堂々たる海外公民であります。

 海外に在住する同胞が祖国に帰るのは当然のことであり、祖国がかれらを受け入れるのも当然のことであります。祖国の人民には、在日同胞をあたたかく迎える義務があり、在日同胞には祖国に帰る権利があります。祖国がなかったとき、同胞たちが方々に離散して暮らすのはやむをえないことでしたが、祖国があり、主権があり、党があるこんにちでは、海外に離散していた同胞が帰国して祖国の人民とともに暮らすのは当然のことです。

 みなさんは、これまで異国で生活しながら民族的蔑視とさげすみを体験したので、祖国がいかに貴いものであるかを痛感したはずです。私も以前、日本帝国主義者に国を奪われ他国で生活しましたが、一番なつかしいのは祖国でした。

 我々は、外国で生活している同胞の帰国を熱烈に歓迎し、かれらを祖国に連れ戻すため積極的に努力しています。

 みなさんは、祖国に帰るために勇敢にたたかい、ついに勝利しました。在日同胞の帰国事業は、朝鮮総聯と在日同胞の勇敢な闘争、それに日本人民の積極的な支持によって実現しました。

 在日同胞の帰国実現は、我が党と人民の大きな勝利であります。それはまた、すべての社会主義国の勝利であります。世界史上、海外の同胞がいわゆる「自由世界」から社会主義社会に集団的に移住した実例はありません。国が南北に分断されている朝鮮の実情で、在日同胞が共和国北半部の社会主義祖国に集団的に帰国することは、我が党と人民の勝利であるばかりでなく、すべての社会主義国の勝利を意味します。

 在日同胞の共和国北半部への帰国実現は、朝鮮民主主義人民共和国こそが真の同胞愛から出発し海外同胞の民族的権利を擁護し、かれらの生活に深い関心を払っていることを示し、かいらい李承晩政権の売国的反民族行為を全世界人民の面前に余すところなく暴露するものです。

 在日同胞の帰国実現は、南朝鮮人民とすべての海外同胞に大きな政治的影響を及ぼしました。帰国事業の実現は、海外同胞に大きな希望と確信を抱かせ、かれらが過去のようにあてもなく寄る辺もない人間ではなく、堂々たる祖国をもつ公民であることを自任できるようにしました。在日同胞の帰国実現はまた、我が国の国際的権威を高め、海外同胞を我が党と共和国政府のまわりにかたく結集させるようにしました。

 これまでみなさんは、日本でいろいろと苦労し、民族的権利擁護のためにたたかいましたが、これからは祖国の人民とともに、社会主義建設のために献身すべきです。祖国のために献身し、祖国を立派に建設するのは、みなさんの一致した心情だと思います。

 現在、我が国は発展途上にあります。アメリカ帝国主義者が引き起こした戦争のために、我が国のすべてのものが破壊され、灰となりました。アメリカ帝国主義者は戦争当時、共和国の北半部地域に1平方キロメートル当たり18個の爆弾を投下しました。かれらは、我が国を廃墟にし、朝鮮は100年かかっても立ち上がれないだろうと広言しました。しかし、我々は停戦後、人民経済復興発展3か年計画を完遂して人民経済の各部門で戦争前の水準を早急に回復しました。社会主義的工業化の基礎づくりを中心課題とした第1次5か年計画も工業総生産高のうえで2か年半繰り上げて完遂しました。

 こうして、過去には立ち後れ、さらに戦争によって破壊された人民経済を急速に復興発展させ、人民生活もかなり向上させました。しかし、みなさんは、祖国の建設が終わったものと考えるべきではありません。我々はまだ裕福だとは言えません。衣食住に不自由しないという程度です。朝鮮人民の生活水準は、日本帝国主義支配当時は下男の水準だったとすれば、解放後は貧農の水準になり、いまでは中農の水準に達したと言えます。朝鮮人民の生活は、まだ富裕中農の水準だとは言えません。現在、我々は、人民生活を富裕中農の水準に高めるために努力しています。

 我が国の社会主義制度は、世界で最も優れた社会制度です。我が国では、誰もが職業をもち、働くことができます。労働年齢に達した人はすべて、国家が能力と体質に通した職場を保障します。国家は、労働能力のある人に職場を斡旋するばかりでなく、労働能力喪失者、身寄りのない老齢者、父母のない子供たちの生活も責任をもって保障します。そのため我が国では、日本や南朝鮮でのように職場を求め歩く失業者や、物乞いをして歩く人が一人もいません。

 我が国では、国家がすべての勤労者に衣食住の条件を保障しています。数日前、南朝鮮の大邱(テグ)で住居のない38歳の女性が路頭で凍死したということですが、ここではそのようなことがありません。

 我が国では、すべての人に学ぶ条件を保障しています。人民学校から大学まで、すべての学生が無料教育を受けています。特に中等義務教育が実施され、すべての児童・生徒が中学校まで国家の恩恵によって学んでいます。専門学校の学生と大学生にも国家から衣服と奨学金が支給されています。以前は金のある者しか学べませんでしたが、いまでは誰でも学ぶことができます。ですから、みなさんは子女の教育について心配する必要はありません。

 我が国は、人口の割合からいって世界的に学生の数が一番多い国です。人口の4分の1は学生です。このように多くの学生を無料で学ばせるのは、なにも国が裕福だからではありません。人口の4分の1にあたる学生に無料教育を施すので、国家の負担は莫大なものです。しかし、新しい世代に教育を施してこそ、過去、立ち後れていた祖国を早急に発展させることができるため、重い負担を覚悟して学ばせているのです。

 我が国では、労働者、農民をはじめ、すべての勤労人民に、政治的自由と権利を保障しています。すべての勤労者は、主権機関の選挙に直接参加することができ、各級主権機関の代議員に選挙されることもできます。

 現在、我が国には、きわだってよい暮らしをする人もいなければ、暮らしに特に困るといった人もいません。誰もが就職の心配、衣食住の心配を知らずにひとしく安定した生活をしています。

 我が党の方針は、すべての人にひとしく立派な生活を保障することです。したがって、経済も、すべての人に衣食住をひとしく保障する方向で発展させています。資本主義諸国ではぜいたくな品物を多く作っていますが、我が国ではそういったものの生産はもう少し後に回すつもりです。

 我々は、まだぜいたくで派手な生活をする段階ではありません。我が国は、日本帝国主義の植民地的支配から解放されて15年にしかならず、戦争が終わって何年もたっていません。我々は、ぜいたくで派手な生活をするのではなく、富強で発展した国を建設すべきであり、今後、人民生活をより向上させるために国の経済土台をしっかりときずかなければなりません。我々は、このような精神で人民を教育しています。

 みなさんのなかには祖国に帰って、すべてが建設されているのに何をまた建設するのかと言っている人もいるそうですが、発展した富強な祖国を建設するためにはまだまだです。工場や住宅を建設するだけではだめです。

 我々は数千年来立ち後れた状態にあった祖国を富強、繁栄の社会主義国に建設しなければなりません。それに分断された祖国を統一し、きょう、こうしてみなさんと会えたように、南朝鮮の人民もみな一緒に暮らせるようにすべきです。したがって、我々にはなすべきことが山積しています。みなさんも知識のある人は知識を、力のある人は力を出して祖国の建設に貢献しなければなりません。

 みなさんも、こうした覚悟で日本から帰国したものと思います。党と政府は、みなさんのそうした決心が実を結ぶよう、十分な条件を保障することでしょう。

 みなさんは、希望と能力に応じて職業の保障を受けることができます。一部の人は、日本で一定の職業もなかったし、特別な技術ももっていないということで職場の心配をしているようですが、その必要はありません。技術のない人も体質と趣味に応じて職業を選択し、職場で学びながら働けばよいのです。

 日本で教育部門に携わっていた人は、希望に従ってその部門で働くことができます。現在、我が国では、全般的9年制技術義務教育を実施する準備をしており、人民学校から大学にいたる各級学校がひきつづき増えています。そのため多くの教員が必要です。

 作家・芸術家たちは、各自の希望どおり文芸活動をつづけることができます。作曲家は作曲をし、詩人は詩を書くことができます。我が国では、資本主義社会でのように作家・芸術家が失業者になったり、作品が売れなくて口すぎもできないといったようなことはありません。我が国の作家・芸術家は、才能を十分に発揮できる条件をすべて保障されています。

 日本から帰国した学生は、国家から奨学金や学用品、衣類などを支給されて学ぶことになります。

 商工業者にもあらゆる生活条件が保障されるでしょう。かれらが持ち帰った財産は、国家の法的保護を受け、なんの損害も生じないでしょう。かれもが持参した金額は、銀行に預金するなり各自が保管して使用することもできます。設備類は、国家に売り渡すなり、生産協同組合に持参加入してその出資額に相当する配当金を受け取ることもできます。国家は、帰国した商工業者に住宅を提供するはずです。本人が希望すれば、個人住宅を建てることもできるし、それに必要な資材は国家が保障します。

 現在、我が国に私営商工業者はいません。以前の私営商工業者はすべて自発性の原則で生産協同組合や国営の工場、企業所に入って働いています。こうして、こんにちかれらは栄誉ある社会主義勤労者として誇りをもって働き生活しています。企業家や商人も労働するようになれば、その階級構成も変わり、改造されます。

 日本から帰国した商工業者も希望と能力に応じて職場を選択することができます。商業を営んでいた人は商業機関で働き、企業を経営していた人は工場、企業所や生産協同組合で働くことができます。

 日本で政治活動をおこなっていた人は、それをつづけることができます。それらの人は、職業同盟、民主青年同盟、女性同盟をはじめ、勤労者団体や経済機関、政権機関などで働くことができます。日本で政治活動をしていた人は、朝鮮革命のために働いた功労が大きいため、当然優遇されるでしょう。かれらは、中央党学校や人民経済大学で学ぶこともできます。

 我が国の労働者、事務員は、8時間働き、残りの時間は学習と休息に当てています。我が党は、学習を最も重要な革命課題としています。現在、祖国では、全党、全人民、全軍が学習しています。我が国では、働きながら学ぶ条件が十分に保障されています。したがって、みなさんは工場で働くにしても、農場で働くにしても、働きながらたゆみなく学ばなければなりません。

 我々は、日本で祖国のためにたたかって犠牲になった人の遺族を革命家の遺族として見守り、かれらを優先的に学ばせ立派に育成するでしょう。我が国では、革命家の子女は革命家遺児学院で国家の特別な配慮のもとに学んでいます。日本から帰国した革命家の遺族もここで学ぶことができます。

 日本にいる朝鮮人の孤児や身寄りのない老人が帰国すれば、孤児は学院で学ばせ、身寄りのない老人は養老院で穏やかな余生が送れるようにするでしょう。我が党は、同胞を見守り世話をやくことを、みずからの民族的義務としています。

 我が党は、南朝鮮の孤児や失業者もこちらで受け入れ、かれらの生活条件や職場を保障したいと南朝鮮当局に提案しました。しかし李承晩一味は、我が党のこの提案を「宣伝」だとして受け入れていません。我が党が南朝鮮で職を求める失業者と物乞いして歩く孤児を受け入れるというのは、決して「宣伝」のためではなく、真の同胞愛に根ざしたものです。きょう、みなさんがこうして祖国に帰った事実は、この同胞愛に根ざした提案が決して「宣伝」でないことを示す好例になると思います。

 我々は、南朝鮮で苦労している失業者が北半部に来ればあたたかく迎え入れ、かれらに職場を保障するでありましょう。共和国北半部には開発しなければならない地下資源も多く、社会主義建設でなすべきことも多いので、南朝鮮から数十万の失業者が来ても、すべての人に職場を保障することができます。

 日本の反動層は、我々が在日同胞をどれくらい受け入れられるか疑問視しているそうですが、我々は60万の在日同胞がすべて帰国するとしても受け入れることができます。我々は在日同胞をいくらでも受け入れることができるし、かれらに職場と安定した生活を保障することができます。海外同胞を受け入れて安定した生活を保障するのは、我が国の社会主義制度においてのみ可能であります。

 日本からの帰国同胞は、首都や地方でそれぞれ働くことになりますが、我が国ではどこで働こうと心配することはありません。

 我が国には、いたるところに工場、企業所があり、文化施設があります。また、どこにも電気が引かれ、立派な住宅があります。したがって、地方での生活も首都に劣らず便利です。帰国同胞が地方に配置されて働くことになっても、自分の技術と能力を十分に発揮できるし、落ちついた生活をすることができます。

 我々は、事情により帰国できず、日本に残る同胞にたいしても無関心ではありません。我が党と共和国政府は、在日朝鮮公民の民主主義的民族権利を擁護し、かれらの生活条件を保障するためにひきつづき努力するでありましょう。それに、在日同胞の子弟教育のために教育援助費と奨学金をひきつづき送るはずです。我々には、在日朝鮮人学生を教育する義務があります。

 こんにち在日同胞には、帰国の道が開かれました。しかし、敵はこれを阻もうと悪辣に策動しています。最近、かれらは、在日同胞の帰国を妨害するためにテロ団を繰り出して目にあまる策動を弄したばかりか、帰国船の爆破までも企みました。我々は、敵の策動にたいして警戒心を高めるべきであり、帰国船にたいする保護に万全を期さなければなりません。警戒心がゆるめば事故が発生します。

 祖国の統一は、こんにち朝鮮人民に課された最大の民族的課題であります。

 我々は祖国の統一を早めるために、共和国北半部で社会主義建設をさらに立派に進めなければなりません。そうしてこそ、北半部の革命基地を強化し、祖国統一の革命的大事変を成功裏に迎えることができます。

 朝鮮の統一問題は、南朝鮮からアメリカ帝国主義者を追い出す問題と結びついています。世界の革命勢力が強化され、アメリカ帝国主義が随所で窮地に追い込まれれば、南朝鮮におけるかれらの地盤は揺らぎ、朝鮮の統一はそれだけ早く実現することでしょう。したがって、共和国北半部の革命勢力を強化するとともに、国際革命勢力を強め、それとの連帯を緊密にするために努力しなければなりません。

 朝鮮は、必ず統一するでありましょう。帝国主義が滅亡するのは、歴史発展の法則です。かつては強大に見えた日本帝国主義もついには敗退しました。アメリカ帝国主義者の滅亡も遠くはないでしょう。

 我々は祖国統一の革命的大事変を勝利のうちに迎えるために、万全の準備をととのえなければなりません。

 ともに力を合わせて社会主義祖国を立派に建設しましょう。        

 出典:『金日成著作集』13巻


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