金 日 成

朝鮮労働党中央委員会1959年2月総会での結語
 −1959年2月25日−


 このたびの総会では、工業製品の品質向上の問題、交通運輸事業改善の問題など極めて重要な問題が討議されました。

 私はそのうち、改めて強調すべき若干の問題について述べたいと思います。


 1 工業製品の品質向上について

 工業製品の品質向上の問題は報告に明確に指摘されているので、簡単にふれようと思います。

 私が常に強調しているように、人民生活の向上は我が党活動の最高原則であります。こんにち、我々が、商品の品質向上をはかるのも、結局は人民の生活水準を高めるためであります。

 現在、我が国における生産は、量的には少ないものではありません。織物の例をあげると、今年1億5000万79メートルの生産を予定しています。これだけあれば、人口一人当たり15メートルずつゆき渡りますが、これは少ない数字ではありません。

 また、ほかの例をあげましょう。今年のセメント生産量は200万トンで人口一人当たり200キログラムになります。銑鉄は、約80万トンで人口一人当たり80キログラムです。数量のうえから見て、これらは少ないものではありません。

 問題は量的にのみ多く生産すべきではなく、製品の品質を高めて、人民がより良く、より有効に使用できるようにすることです。そうすれば、人民生活はさらに向上します。

 人口一人当たり15メートルの織物を生産するとしても、昨年と同じものを生産するなら、人民の要望を満たすことはできません。それよりも上質の服地やオーバー地を生産し、メリヤスにしても子供用のもの、婦人の好みに合うもの、いろいろのカラーや模様入りのものを生産すべきであって、同じものばかり生産したのでは用をなしません。

 現在では、製品の品質向上に必要な条件がととのっています。もちろん、我が党がこの課題を示したのは、いまがはじめてではありません。我々は常に生産量の増大とともに、製品の品質を高めるために努力してきました。そして、品質向上の物質的・技術的土台が確立されたこんにちにおいて、この課題はさらに切実で現実的なものとなりました。こんにちでは、我々がきずきあげた生産力に依拠して努力さえすれば、早急に品質を高めることが可能となりました。

 製品の品質を急速に高めるのは、人民生活を急速に向上させることを意味し、我が国の経済土台を速やかに強化することを意味します。したがって、品質向上の問題がこのたびの総会で重要な問題として討議され、全党的な課題となったのであります。

 生産力の発展にともない、今後、品質が次第に向上することは間違いありません。しかし、我々がいまこの問題を強調しているのは、より立派に、より速く前進するためです。

 継続前進、継続革新するのは、国の工業化を促進し、社会主義建設をいちだんと高い段階に引き上げるための闘争であります。

 我々は現在、社会主義の高峰をめざして前進しています。工業化を早め、社会主義建設を促進するためには、技術革命と文化革命を遂行し、思想闘争をおこなわなければなりません。これなしには、速く前進することも、社会主義の高峰をきわめることもできません。

 製品の品質を高める問題もやはり、思想闘争なしには解決されません。製品の品質が改善されない基本的な原因は幹部の古い思想観点にあるのです。

 人々のあいだにはまだ、おおざっぱにつくって使い、適当に暮らし、なおざりに仕事をする悪習が残っています。朝鮮人は、もともと鋭くて団結力が強く、清潔を好む民族ですが、半世紀にわたる日本帝国主義支配の時期に、なおざりに仕事をする習慣が身につきました。

 元来、朝鮮人は、郷土と祖国を愛する愛国主義精神の強い民族でした。ところが亡国の36年間に、日本帝国主義者の抑圧と搾取にひしがれて、なにごとにも愛着心をもたず、適当にその日暮らしをしてきました。そのため、祖国の山川草木を愛する精神が薄れ、それをおろそかにする弊害が生じたのです。人々は、小銭が手に入ると、酒を飲んで涙と溜息まじりの退廃的な流行歌をうたい転々と渡り歩きました。かれらは年中、借金に追われていました。農業を営んでは負債を返し、また借金しては酒を飲みました。そのうち、人々の頭には、亡国の民の境遇をかこち、いいかげんに仕事をし、適当に暮らそうとする思想が生まれるようになりました。

 いいかげんに仕事をし、適当に生きていこうとするのは、日本帝国主義者が植えつけた思想です。かれらは朝鮮人に、祖国と山河を愛する愛国主義ではなく、酒色にふけり流行歌に憂き身をやつす退廃的で絶望的な思想を吹き込みました。これは、危険な敗北主義思想です。人々のあいだに残っているこうした思想毒素を根こそぎにし、かれらを社会主義的愛国主義思想で武装させなければなりません。

 社会主義的愛国主義は、山川草木を愛し、自分の村、郡、道を、さらには祖国を愛し社会主義陣営全体を愛する精神であります。

 少なからぬ人々には、これらのすべてが、自分自身と朝鮮人のものであるという精神に欠けています。それで、木や芝生を植えておいても折ったり踏みつけたりするのです。樹木や芝生が自分自身とすべての人と国のために有益なものであることを考えません。かれらのあいだで一本の草木も自分のもの、国のものであり、自分の幸せ、子々孫々の幸せのためのものであるという思想をたえず培わなければなりません。

 かつて、日本帝国主義支配当時には奴隷の生活を強いられたが、手中に政権を握っているこんにちでは、工場、農村、公園、学校、劇場がすべて我々自身のもの、朝鮮人のもの、朝鮮人民のものであります。家を一軒建てるにしても自分のもの、人民の家だという観点に立って使用に便利なように、念を入れて堅固に清潔に建てなければなりません。鉄道で荷物を運ぶ場合も、それが国家のもの、人民のものであるということを認識し、遺失、破損しないように適時に、正確に輸送し、1メートルの織物を織るにしても国のため、人民のために美しく丈夫に織らなければなりません。

 かつては、家を建てるのも金持ちのために建て、織物を織るのも資本家のために織ったものです。そこで働く者にとっては、金持ちや資本家が立派な家を構えて暮らそうと、また飽食しようとしまいと関知するところではなかったし、織物が長持ちしようがしまいが、賃金さえもらえればよかったのです。

 こんにちでは、商業を営むのも、人民に奉仕するという観点に立たなければなりません。我々の商業は金もうけが目的ではありません。衣服、履物、豆腐、大豆油、みそ、しよう油など、すべての生活必需品を実用的で、おいしく、安くつくって常に人民に供給するためであります。

 人民に奉仕する精神さえ強ければ、どんな仕事をしても、なにをつくっても丹念に実用的につくるはずです。結局は、思想問題に帰着します。

 したがって各級党組織は、製品の品質を高めるための闘争を思想闘争と並行させ、勤労大衆を社会主義的愛国主義思想、人民に奉仕する精神で教育する活動と結びつけて進めるべきです。

 製品の品質向上において第2に重要な問題は、勤労者の技術・文化水準を高めることです。

 技術がなければ、いくら製品の品質を高めようとしてもそれは不可能です。我が国では工業が非常に速いテンポで発展しているため、従来の技術だけでは追いつけません。すべての人が一つずつ技術を修得すべきです。一つでなく、二つ、三つの技術を学ぶべきであり、多く学ぶほど結構なことです。

 最も重要なのは、自分の仕事に精通することであります。労働党員は、党規約に明記されているように、自分の仕事に精通しなければなりません。そのためには、必ず技術を修得すべきです。

 大学教員、技師、技手、人民のなかに埋もれている技術者から技術を学ぶべきです。技術を修得するためには、学校教育、労働の過程、余暇などあらゆる方法と可能性を利用する積極的な対策を講じなければなりません。そして、すべての人が技術を所有し、技術に無知なことをもっとも恥ずべきこととみなすようにすべきです。誰でも食事をとる「技術」はもっています。これと同じように、すべての人が生産技術を修得すべきです。そうすれば、国を急速に発展させることができます。

 我が国は立ち後れています。我々は貧しく立ち後れていたため、他人より速く前進しなければなりません。そのためには技術を学ぶべきです。

 我が国の技術はまだ、すべての面で立ち後れています。製品の品質を向上させるためにも技術が必要であり、新しいものを作るためにも技術が必要です。それゆえ、すべての人が技術を身につけるために努力すべきです。

 製品の品質向上において第3に重要なのは、規律と秩序を強化することであります。

 現在、生産工程で標準操作法を守らない欠陥がしばしば生じています。標準操作法も固定不変のものでなく、技術の発達にともないたえず変わります。技術の発達にともなって新たな標準操作法をつくり、それにもとづいて新しいものをつくるべきです。

 いったん標準操作法を定めたならば、すべての仕事をそれに従っておこなう規律と秩序を確立すべきです。そうしないで、各自が自発的に標準操作法を守るものと思ってはなりません。

 標準操作法を守り、製品の品質を高めるためには、検査制度や法的制裁も必要です。製品検査を生産機関だけに任せるのは不適当だと考えます。製品検査の厳正を期するために生産機関自体でもおこない、最終検査は内閣直属の製品検査機関がおこなうようにすべきだと思います。そうすれば、検査制度が製品の品質向上に役立つでしょう。

 品質向上をふくむいっさいの生産問題を党組織の統制下におくべきです。現在、党活動家は生産に深く立ち入っていません。多く生産しようと一般的なアピールはしますが、なにをどのようにおこなうべきかは具体的に知りません。党活動家が生産を掌握して充実した指導をおこなうためには、当該部門の技術を必ず知らなければなりません。

 最近、工場党委員長たちと談話した際にも強調したことですが、技術を神秘視してはなりません。原理を知り、生産工程を理解する程度なら何か月もかかりません。

 旋盤を例にとるならば、それを操作するのはさほど難しいことではありません。機械工場に配置された除隊軍人たちは、数日を出ずして3級工、半年たてば5級工、およそ一年もたてば6級工、7級工になります。

 党活動家は、生産の門外に立って官僚主義的に、多く生産せよ、立派に作れ、品質を高めよなどと、号令をかけるだけではいけません。

 郡党委員長たちは、地方産業工場などにはあまり出向かないのが現状です。その理由は、地方産業をよく知らないからです。かれらは、農業協同組合にはしばしば出かけます。それは、農業については冷床苗や綿の栄養つぼなど、少しは知っているからです。知っているところには興味があるからある程度出かけますが、知らないところへは出向こうとしません。

 党組織は、工場の状況や生産工程をすべて把握すべきであり、機械の性能なども知らなければなりません。郡党委員長、工場党委員長、工場党オルグはすべて技術を修得すべきです。そうすれば、生産を掌握し、それにたいする実質的な党の統制を加えることができるし、問題が提起されたときは意見を述べ、批判もできます。


 2 交通運輸事業の改善について

 我が国の生産力は、著しく向上しています。物流量だけでも、戦前に比べておよそ4倍に増えています。しかし、鉄道はそれほど拡張されていません。自動車輸送も戦前より増大しましたが、需要に比べてかなり立ち後れています。

 こうした状況にてらして、輸送問題の打開は、党に課された困難かつ重要な課題であります。運輸部門で転換を起こさないならば、人民経済計画は実行できません。

 鉄道、自動車、水上運輸で革新を起こす重要な環は技術の改造にもありますが、まずは政治・思想教育を強化することにあります。したがって、運輸部門で党の政治活動を強化し、党組織の役割を強めることがなによりも重要です。

 鉄道部門の党組織を地元の党委員会に移管しましたが、地元の党委員会は鉄道に全く無関心です。党組織はこのような態度を直ちに改め、鉄道を掌握しなければなりません。

 党組織は、鉄道従業員のあいだで政治・思想教育を強化すると同時に、運輸部門に残っている官僚主義や無秩序を一掃するための闘争を強化すべきです。鉄道部門に官僚主義が濃厚にあらわれています。官僚主義が最も多く残っているのが鉄道部門です。自動車運輸部門にも官僚主義がかなり残っています。もちろん、鉄道には厳格な唯一管理制と命令体系が必要であり、軍隊のような規律と秩序が要求されます。しかしそれは、官僚主義的にふるまえということではありません。命令と官僚主義は縁遠いものであります。鉄道には命令体系が確立されているので、官僚主義が許されるものと思いがちですが、そうではありません。命令は命令、規律は規律であって、官僚主義は許されません。

 鉄道にはいまも、日本人の使い古した作風がそのまま残っています。鉄道部門の指導機関には、労働者出身の幹部が多数登用され、鉄道規定も改正しましたが、官僚主義はなくなっていません。命令体系や司令体系があるからといって、むやみに抑えつけるやり方ではいけません。

 鉄道部門には、互いに尊敬し、愛する革命的同志愛が欠けているように思われます。下部に無関心な態度が各面にわたってあらわれています。鉄道部門に、互いに愛し、協力し合う気風を確立すべきです。

 鉄道には、厳格な秩序と規律が必要です。軍隊のような規律を確立すべきです。鉄道は、時計の針のように正確かつ精密に動かなければなりません。そのためには、秩序と規律が厳格に守られなければなりません。

 運輸事業を改善するためには、技術水準の向上が重要です。我が国の鉄道はいま、技術水準が高くありません。特に技術者がたいへん不足しています。多くの技術者と熟練工を戦争で失い、停戦後、新規に入ってきた労働者たちにはまだ未熟な点がたくさんあります。また学校を出たばかりの人たちは、仕事に熟達していません。したがって、鉄道従業員の技術熟練度の向上が非常に切実な問題となっています。

 輸送問題解決のためには、なすべきことがたくさんありますが、なかでも決定的な対策は鉄道の電化であります。

 現在、鉄道では国内炭を使用していますが、火力が弱く蒸気圧が上がらないとか、なにがどうのと、苦情が多く出ています。こうした問題を打開して輸送量を増やすためには、鉄道を決定的に電化しなければなりません。

 鉄道の電化は、第3回党大会でも提起されたし、党中央委員会常務委員会でも討議を重ねた問題です。我々は万難を排して、鉄道の電化を強力におし進めなければなりません。

 鉄道部門では第1次5か年計画課題を完遂したと言えます。実際のところ、鉄道では第2次5か年計画が出されるまで、これ以上遂行すべき課題がありません。そのため、本総会で第2次5か年計画までの鉄道建設方向を示すことにしたのです。

 鉄道建設は、第2次5か年計画期間に電化の完成を目標にして進めるべきです。鉄道部門のすべての労働者、技術者は、電気機関車をはじめ、鉄道の電化に必要な設備を自力で生産するための予備を積極的に見つけださなければなりません。

 我々が検討したところ、現在、鉄道で使っている石炭の3分の1をもって火力発電所を運営すれば、そこで生産される電力で鉄道をすべて電化することができます。そうすれば、3分の2の石炭を節約し、貨物の輸送量を増やし、従業員を減らし、多くの問題が解決されます。

 鉄道の電化を終えても、輸送能力が不足します。そのため複線を増やし、水上輸送もさらに発展させるべきです。特に現在、水上運輸の発展がいっそう必要となりました。実際において、これまで水上運輸を発展させることができませんでした。これには、もちろんある程度の困難もありましたが、問題は大胆に取り組まなかったところにあります。今後は水上運輸を積極的に発展させて、鉄道の負担を軽減させるべきです。

 我々が水路の建設に当たって、水上運輸を念頭においていたなら、多くの問題が解決されたはずです。しかし、それを考慮せずに水路を建設したため、運河の建設以上に困難な工事をおこなったにもかかわらず、それを水上運輸に利用できないでいます。例えば、安州(アンジュ)潅漑工事の際、潜管などを橋梁式に設置したなら船舶通行が可能なはずです。

 我が国は、河川運輸の発展に必要な条件に恵まれています。大同江、鴨緑江、清川江、豆満江など、すべての河川を効果的に利用すべきです。積極的に取り組めば、水路の開拓は可能であるし、特別な船舶を建造して浅瀬をさかのぼるときは曳航し、下りは流れを利用することができます。大きな水路を建設するときは、運河に利用できるようにすべきです。河川運輸を発展させるために各面から努力しなければなりません。

 自動車運輸について言えば、今後その台数が増大するでしょう。農村向けだけでも2万5000〜3万台のトラックを送る予定ですが、これは少ない数字ではありません。このほかに、軍隊や工場、企業所が多くのトラックを保有しています。

 自動車運輸で大きな難点は燃料問題です。現在、代用燃料などについて騒ぎ立てていますが、これといった目新しい対策はありません。科学院と運輸部門の人々は、代用燃料の解決策の研究に力を入れるべきです。代用燃料を解決せず、何10万トンのガソリンを輸入に頼ることは困難です。外国からガソリンを購入することはもちろん可能です。しかし、輸送が間に合いません。したがって、国産の代用燃料を必ず解決しなければなりません。

 自動車運輸と関連していま一つ重要な問題は道路管理であります。現在、これが、うまくおこなわれていません。道人民委員会や郡人民委員会は、道路にたいして甚だ関心が足りません。戦時中に整備、拡張した道路が雨期に破損しても放置しています。

 農村に機械を導入しようとすれば、道路をよく管理し、新しい道路をさらに建設すべきです。そうすれば、農村で運搬作業を機械化することができます。

 まず、平壌市内とその周辺の道路を舗装しなければなりません。自動車通行の多い平壌−南浦間の道路舗装も今年から着手すべきです。

 郡でも自力でセメントを生産して道路を舗装することができるはずです。農閑期に、破損しやすいところをコンクリートで舗装し、擁壁などが崩れないようにすべきです。こうして、道路を立派に建設しなければなりません。


 3 党活動について

 この総会に郡党委員長と重要工場、企業所の支配人および党オルグが参加したので、この機会に、党活動についてもふれる必要があると思います。

 さきに述べた製品の品質向上の問題や運輸問題など、すべての問題は思想活動にかかっています。思想が堅実であれば製品の品質もよくなり、技術も速く修得し、秩序も整然と確立され、運輸事業も順調にいくでしょう。

 思想活動を強化しなければ、党も人民政権も強化できず、社会主義建設を立派におこなうことも、勝利の信念を固くすることもできません。

 このように重要な意義をもつ思想活動は、党組織の遂行すべき仕事です。ところが、道党委員長や郡党委員長はこの活動をおろそかにして、いまも行政を代行し、それに没頭しています。

 党組織は、行政を代行したり行政のしんがりについて回ってはなりません。党組織は、大衆のなかに党政策を浸透させ、大衆を動かして党政策を貫徹し、すべての活動を政治的に指導し保障すべきです。

 工場党、初級党、郡党、道党組織など、すべての党組織の第一の課題は党を強化することです。革命を遂行するためには、党を強化し、大衆を党のまわりに結集しなければなりません。大衆を獲得しなければ、党の強化も革命の遂行も不可能です。大衆を党のまわりに団結させ大衆を動かしてこそ、革命活動を展開することができるのです。

 革命活動は、特別なものではありません。人民軍に服務する人は祖国防衛の責任を遂行し、内務機関に服務する人は反革命分子を鎮圧して社会秩序を維持し、工場で働く人は物資を多く生産し、農村で働く人は農業生産を増やし、科学・教育・文化部門で働く人はその部門の事業を発展させるために努力することが、とりもなおきず革命活動であります。

 ところが、我々の党活動はどうなっているでしょうか。党活動が逆になっています。党を強化せず、大衆の獲得もなしに経済活動をおこなおうとしています。党を強化することなく、また大衆を党のまわりに結集せずには、経済活動を順調に進めることができません。党の意図に従って大衆を動かす政治活動を優先させなければ、革命の遂行は不可能です。

 党規約に明記されているように、党員の第一の任務は、党を強化し、党政策を宣伝することであります。党隊列の統一団結を強め、党政策を大衆に浸透させ、それを大衆自身のものにすれば、すべての問題が解決されます。

 党中央委員会は、昨年1月に、党を強化するため幹部事業、すなわち、幹部にたいする徹底した理解と教育を党活動の第一義的課題として示しました。しかしまだ、幹部事業には大きな変化が見られません。

 党および政権機関、経済機関、大衆団体の幹部を詳しく理解して、たゆまず教育し、かれらを通じて100万の党員をすべて党に忠実な戦士に育成し、党員各自が大衆活動を巧みにおこない、かれらのあいだで常に前衛的役割を果たすようになれば、党と大衆との結びつきが強まり、党の戦闘力は強化されるでしょう。

 我が党は、共産主義思想で完全に武装した人たちだけで組織されたのではありません。したがって、幹部を詳しく理解し、党員にたいするマルクス・レーニン主義教育をたえずおこなうことは、特に重要であります。

 周知のように、我が労働党は、共産党と新民党の合同によって創立されました。新民党は、共産主義を全面的に支持するとは言えない、小ブルジョアジーの政党でした。したがって、すべての労働党員が共産主義者であると見ることはできません。こうした事情にてらして、我が党の党員を正しく教育して、すべて共産主義者につくることが必要です。

 にもかかわらず、党組織は、党員との活動、大衆との活動、かれらにたいする教育活動をなおざりにして、行政活動、経済活動に没頭しています。

 党活動は、対人活動であります。党組織の活動の中心は、党および政権機関、経済機関、大衆団体で働いている党員の党性を鍛え、マルクス・レーニン主義教育を強化し、すべての党員を党中央委員会のまわりにかたく団結させ、広範な大衆を獲得し、大衆を革命課題の遂行に決起させることであります。

 咸鏡北道人民委員会委員長が、労働者と事務員に野菜を十分に供給せよという、党の指示を実行しなかったのも、かれにたいして党の思想教育を十分におこなわなかったからです。これによって我々は、党活動家が経済活動のためにかけまわるより、幹部を十分に理解して正しく配置し、かれらを党の決定や指示であれば水火をいとわず献身する、党性の強い革命幹部に教育することがいかに重要であるかを知ることができます。

 したがって、各級党組織は、党を強化する活動に重点をおいて幹部と党員を教育し、大衆に党政策を浸透させ、かれらを党のまわりにかたく団結させることを党活動の基本にしなければなりません。

 だからといって、党組織が経済活動をするなというのではありません。党組織が経済活動から退くことはできません。こんにち、経済活動は朝鮮革命の重要な課題です。したがって、党組織は経済活動を掌握し、それを統制しなければなりません。

 経済活動にたいする党の統制とは、党政策を研究してそれを大衆に浸透させ、経済課題を実行させて、その実行のいかんを監督し、正しくおこなわれているものは奨励し、誤りは是正してやることを意味します。党組織は、行政活動を引き受けて、計画を樹立するようなことをしてはなりません。こういう仕事は、政権機関や経済機関の人たちに遂行させるべきです。

 党活動は、1955年4月総会、第3回党大会、特に1956年の反分派闘争以後に大きな転換をもたらしました。しかしまだ、党活動をおこなわずに行政を代行し、形式的に活動する悪弊が残っています。これを徹底して是正すべきです。

 これと同時に、党活動の方法を改善することが大切です。党活動は、人民政権機関や軍隊でのように行政式、命令式の方法でおこなってはなりません。党活動の基本的方法は説得と教育です。説得と教育をぬきにした党活動などは考えられません。

 党活動家は、常に大衆のなかで生活しなければなりません。党は、人民大衆の生き生きとした創造的生活のなかに深く入ってこそ、常に勝利することができます。大衆のなかに入ってかれらと苦楽をともにし、かれらを教えるばかりでなく、かれらから学び、大衆との結びつきを強めるのは、我が党の基本的な要請であります。

 党活動家は、大衆に依拠し、かれらに党政策の正しさを確信させ、大衆が自発的に党の指導を受け入れて党に従うように、かれらを動員する能力を身につけなければなりません。党活動は事務室に座って官僚主義的にふるまい人を呼びつけたり、または命令書や指示文を作成して下達するなどの方法では成果が得られません。

 党活動家は、日常的に大衆に会って話し合い、かれらの要請や希望を知り、それにもとづいて大衆工作をおこなうべきです。そうすれば、党が大衆の信望をかちえることができ、大衆が党政策を貫くための闘争に進んで参加するようになります。これが党活動の方法であります。

 一時、我が党内に官僚主義と行政的活動作風の弊害が生じたのは、一定の歴史的根源があったからです。それは、我が党が大衆工作の経験に乏しいうえに、創立当初から政権党であったし、また「党博士」をもって任じた許(ホ)カイが、党内に官僚主義的活動作風を伝播したからであります。それで活動家たちは、許カイのように押しつけるのが党の活動方法であり、また、当然そうあるべきものと理解していました。鉄道省政治局では、許カイが党にいなくなると、「党博士」がいないので党活動に支障をきたすだろうと語ったそうです。ところが、かれが党にいなくなったので、我が党の活動を正常な軌道に乗せることができたのです。

 かつての抗日武装闘争当時、我々は、党活動を常に党員の自発性と意識性にもとづいて進めました。説得と教育によって隊員を訓練し鍛えました。当時は、独裁機関も営倉もありませんでした。歩哨勤務中に半道ほども行けば敵陣に寝返ることができるような状況下で、強制的なやり方では活動できませんでした。自覚にもとづく規律と革命思想で教育され武装した人だけが、敵に屈せず困難な闘争を最後までたたかいぬくことができるのです。

 行政的、命令的方法では、思想、意志の団結を期することも、大衆を革命闘争に決起させることも不可能です。道党委員長、郡党委員長、工場党委員長、工場党オルグおよび我が党のすべての幹部は、この真理をよく認識し、党の活動方法を決定的に改めるべきです。

 ここ数年間に、我が党の活動方法は著しく改善されました。しかしまだ、行政的、命令的なやり方が残っています。これを根こそぎにしなければなりません。

 党活動家のなかには、党の権威を濫用する人がいます。党機関は、権威をふりかざすところではありません。党は、意識的な人たちの自発性の原則にもとづく組織です。したがって、ここでは権威の濫用などありえず、高い人と低い人が存在しません。党規約に明記されているように、党員には上級党員と下級党員といったものはありません。党機関を権力機関だと思ったり、党活動家が権威をふり回すのは、古い思想要素のあらわれです。

 私は党中央委員会に出勤して執務するようになってから、党の権威を濫用しないように特に強調しました。これをなくすため、「点検」を「点検」と呼ばずに「集中指導」と改めるようにしました。以前は、党の指導員たちが下部の点検に出張すると、欠陥ばかり暴いて持ち帰りました。「欠陥包み」をかかえて帰らないと、無駄骨を折ったと叱責したものです。それで指導員たちは、欠陥を多く見つけようと懸命になりました。このような人が、最も立派な党活動家だと評価されました。

 私は以前に、こうした「欠陥包み」をたくさん受け取りました。もともと、そのすべてに目をとうすことは不可能でしたが、ときおり、あるものを読んで見ると、まさに、党が解散寸前の状態といった感じでした。

 人民軍の場合も同様でした。人民軍の点検報告書を読むと、人民軍が全く崩壊するかのように書いてあるのに、人民軍はいまも健在であります。

 党活動家は、もちろん、欠陥を見つける能力もなければなりません。しかし、要は欠陥を発見することではなく、それを是正させ活動を正すことです。欠陥を暴いて非難し騒ぎ立て、人を傷つけたり立ち直れなくするのではなく、人を救い活動を改善することが重要です。

 現在、党中央委員会には、以前のように「欠陥包み」を抱えて歩く現象や党の権威を濫用し高慢にふるまう傾向はなくなりました。しかし、まだ下部の党機関には権威をふり回そうとする人がいます。党機関で働いている人を他の機関のポストにかえようとすると、たいてい喜びません。なにか官職から外されたように考えるのです。これは、全く正しくありません。どこで働こうと、それは党から与えられた任務を遂行することなのです。党機関で働く人は、党内部生活を組織する人であり、他の機関で働く人は、党から任された革命課題を遂行するのです。

 党機関は、仕事に不手際があったからといってわめき立て、人をやりこめたりしてはなりません。党機関は、仕事に偏向がないように方向を示して仕事を組織し、下部の活動家たちを愛し教え、援助すべきです。そうすれば、人々が党機関を尊重し党活動家を尊敬し、助言や教育を受けるためすすんで党機関を訪ねてくるようになるでしょう。

 党活動家は、党政策を深く研究し大衆を正しく動員し、仕事を立派に組織する能力を身につけ、組織者、教育者の役割を遂行すべきです。そうすれば、かれらに相談を持ちかけたり、聞いて見たり、訪ねてきたくなるでしょう。

 道党委員長は、道人民委員長が自分の仕事の正否や問題設定の可否などについて、すすんで聞きにくるほどにならなければなりません。“知っている道でも尋ねながら行け”という朝鮮のことわざどおり、道人民委員長は自分の仕事に間違いはないと思っても、道党委員長と協議するのはよいことです。このように、互いに意見を交わし、助けあい、協議すれば、万事が順調に運ぶでしょう。

 だからといって、党組織は訪ねてくる人ばかりを相手にして、かれらに助言や援助を与えるだけの活動に終始してはなりません。党組織は、革命課題を実践するため大衆の先頭に立って仕事を組織し、かれらを動員し、その実行を監督する組織者、前衛の役割を果たさなければなりません。

 党活動家は、仕事では大衆の先頭に立つ旗手となり、人との関係では母親の立場に立たなければなりません。愛情をもってやさしく見守る母親を、したわない子はいないものです。間違いを犯さないように、常に諭し見守ってやる母親を尊敬しない子供はいません。

 ところが党組織は、活動家を援助し教育するうえで母親の役割を十分に果たしていません。党の権威を濫用し、抑えつけることがしばしばあります。何かあると、党性がない、思想が健全でないと言って脅かします。党性がないと言われれば、誰でもおびえて萎縮します。このように活動してはなりません。

 工場党委員長、郡党委員長は、威信が低落すると思って威勢をはる場合がありますが、そういう考えは間違っています。党政策を深く研究して大衆のなかに浸透させ、活動の方向を正しく設定して大衆を動かし、大衆を教えるばかりでなく、かれらから学び、かれらと苦楽をともにする活動作風を所有すれば、大衆は自然とみなさんをしたい、尊敬するようになるでしょう。

 また党活動で重要なのは、功名主義を排撃することです。党活動家に功名は不必要です。革命家にとって、人民に十分奉仕し、党政策の正しさを人民に確信させ、かれらから愛されること以上に貴く光栄なことはありません。これは、党活動家にとって勲章を授与されたり新聞に載ったり、また称賛を受けることよりも立派なことであります。

 革命の利益になり、人民に認めてもらえればそれでよいのです。みなさんの活動は、郡内の協同組合の仕事の進展、人民生活の改善、生産の増大、人民の文化・技術水準の向上など共産主義への前進の早さによって評価されるべきです。充実した仕事をしようとせず、功名のためになにか仕事をするとか、革命の利益はどうなろうと上部の機嫌をとるために欠陥を隠そうとするのは、革命家の品性ではありません。

 功名主義は、小ブルジョア思想のあらわれであり、仕事を駄目にします。したがって、功名主義に断固反対しなければなりません。党活動家は功名を立てて自分をめだたせようとすべきでなく、党と人民に忠実な革命戦士の手本を示すべきです。仕事においては、人民の先頭に立って自己犠牲的にたたかう革命闘士の手本となり、生活においては素朴かつ謙虚で人のためにつくし助ける誠実な人間の手本となるべきです。みなさんがこのように活動し行動するならば、すべての党員と人民から信頼され尊敬されるでしょう。

 1955年4月総会において党官僚を批判し、人民軍内の軍閥思想と内務機関内の警察思想を批判し、教条主義を排して主体性を確立する闘争を展開して以来、党活動で転換がもたらされました。しかし、我が党の活動にはまだ、作風や方法のうえで少なからぬ欠陥が残っています。これを一掃するため努力すべきであります。

 私は、このたびの総会を契機にして、党活動方法と活動作風を決定的に改め、工業と農業生産において国家課題を日別、月別、四半期別に超過遂行し、製品の品質向上で一大革新を起こすものと確信します。 

 出典:『金日成著作集』13巻


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