金 日 成

在日朝鮮同胞が祖国に帰るのは当然の民族的権利である
−1959年1月10日− 


 朝日両国人民は、相互に往来し親善をはかるべきです。日本は、我が国の隣邦です。朝日両国人民は隣同士の間柄ですからむつまじく暮らし、反目などしてはなりません。過去に朝鮮人民が反対したのは、日本帝国主義者であって、日本人民ではありません。いまも朝鮮人民は、日本軍国主義者は敵とみなしますが、日本人民を敵視していません。

 朝日両国間に国交関係が樹立されていないことに気を遣う必要はありません。両国間の国交問題は時機が到来すれば解決されるでしょう。日本政府が我が国にたいして非友好的態度をとっている現況下では両国間の国交樹立は不可能であり、また、こういう状況で国交が樹立されたとしても、それは無意味です。朝鮮と日本との国交樹立は急を要する問題ではありません。重要なのは両国人民間の親善関係を発展させることです。

 国交があれば人民間の親善関係が結ばれ、それがなければ親善関係が結ばれないというものではありません。もちろん、国交も樹立され、人民間の親善関係も深まれば、それに越したことはありません。しかし、国交がなくても人民間の親善ははかることができます。今後、国交関係のいかんにかかわりなく、朝日両国人民は相互に往来し、文化も交流すべきです。

 平和を守るための朝鮮人民と日本人民の闘争は密接なつながりをもっています。したがって両国人民は、平和のための闘争において支持しあい、連帯すべきです。

 日本軍国主義の復活は、全般的なアジアの平和と安全にとって脅威となるだけに、朝鮮人民は日本軍国主義の復活に反対する日本人民の闘争を積極的に支持しています。また、「日米安全保障条約」の改悪に反対する日本人民の闘争を極力支持しています。今後、「日米安全保障条約」の改悪と日本軍国主義の復活に反対する日本人民のたたかいがさらに盛り上がるものと確信します。

 朝日両国間の貿易関係については、それを発展させる必要があるとみています。朝鮮と日本は距離も近いので、必要な商品を交易することは両国人民にとって有益でしょう。

 日本との国交がなくても貿易は可能だと思います。現在、我が国は国交のないインド、ビルマ、アラブ連合、スイス、イギリス、西ドイツをはじめ、多くの国と貿易をおこなっています。ところが、隣国の日本とは貿易関係がありません。これは全的に、我が国にたいする日本政府の非友好的な態度に起因します。

 次に、「韓日会談」について簡単に述べましょう。

 「韓日会談」は、侵略者と売国者間の密談であります。かいらい李承晩一味は、朝鮮人民の利益を代表できないアメリカ帝国主義者のかいらいであり、岸(信介)を頭目とする日本の反動層は、アメリカ帝国主義者の指示と後押しのもとに、海外侵略の野望を実現しようと妄想している連中です。「韓日会談」は、こういう連中の密談であるため、朝日両国人民の意思や利益とは全く無縁のものです。それゆえ、我々は「韓日会談」に断固反対しています。

 これまでの「韓日会談」の経過を見ると、日本反動政府のかいらい李承晩にたいする要求はすべて不当なものであり、また、李承晩一味がこの不当な要求をめぐって取り引きしているのは、朝鮮人民の意思に背くものです。かれらが、「韓日会談」に上程している諸「議題」は、朝鮮人民の意思に全く反する不法なものです。

 「文化財問題」をとってみてもそう言えます。日本軍国主義者が過去に朝鮮から略奪していった文化財は当然、朝鮮人民に返還されるべきです。ところが日本の反動層は、朝鮮の文化財の略奪行為を正当化しようと試みています。かれらが、朝鮮から略奪していった文化財の一部をかいらい李承晩一味に引き渡そうとするのも犯罪的な行為です。朝鮮人民の利益を代表できないかいらい李承晩一味に文化財を引き渡せば、それは朝鮮人民のために利用されることはないでしょう。

 我々は、日本軍国主義者と南朝鮮かいらい一味が、「漁業問題」で論議している「李承晩ライン」を認めません。それは、李承晩が勝手につくりあげたもので、人民の意思を反映したものではありません。したがって、朝鮮人民は、誰も「李承晩ライン」なるものを認めていません。

 「韓日会談」は、日本軍国主義者と南朝鮮かいらい一味との「会談」ではありますが、それを操っているのはアメリカ帝国主義者です。かれらは、アジア地域で日本軍国主義者と南朝鮮かいらい一味、それに蒋介石かいらい一味を糾合して軍事同盟をつくり、日本軍国主義者をその頭目に仕立てようとしています。アメリカ帝国主義者は、まず、日本軍国主義勢力と南朝鮮かいらい一味を提携させる目的で「韓日会談」をおこなわせています。

 アメリカ帝国主義者が、日本と李承晩、蒋介石のようなかいらいを集めて「三国軍事同盟」をつくりあげようとするのは、極めて無謀な行為です。かれらは、アジア人同士を戦わせて対アジア侵略の野望を容易に実現し、さらには、社会主義諸国にたいする侵略の野望を実現しようと策しています。したがって、「三国軍事同盟」をつくるのは、アジアと世界の平和にたいする重大な脅威となります。朝鮮人民と日本人民はともに、これに断固反対しなければなりません。

 次に、在日朝鮮同胞の帰国問題について述べましょう。

 在日朝鮮同胞が祖国に帰るためにたたかうのは、全く正当なことであります。また、日本の各社会団体と各階層人民が、在日朝鮮同胞の帰国運動を支援しているのも当然なことだと思います。

 私はまず、帰国実現をめざす在日朝鮮同胞のたたかいを支援している、日本の各社会団体と各階層の人民に謝意を表します。

 朝鮮人民は、単一民族として強い民族愛をもっています。朝鮮人民が日本帝国主義者に国を奪われたときは、民族が離散してもやむをえなかったのですが、政権を握ったこんにち、同胞が海外で民族的な蔑視と迫害を受けているのを座視することはできません。現在、日本に在住する朝鮮人の生活は困窮状態にあります。日本政府は在日同胞が朝鮮民族だということで、かれらになんらの生活条件も保障していません。我々は、国内人民の生活が向上すればするほど、同胞が海外で苦労していることにいっそう心を痛めており、たとえ一膳の食を分け合うようなことがあっても、かれらが一日も早く帰国することを望んでいます。

 我々は在日同胞のみならず、南朝鮮で苦痛にあえぐ兄弟たちをも、傍観してはいません。現在、南朝鮮には400余万の失業者と数10万の孤児がいます。最近、共和国内閣では、南朝鮮の失業者と孤児に救済物資を送り、寄るべのない孤児をすべて引きとって養育する決定を採択し、それを南朝鮮かいらい政府に通達しました。しかし、かれらは、これにたいしてなんらの回答もよこしていません。

 我々は同胞愛にもとづいて、在日同胞を共和国に帰国させるよう日本政府に要求しました。しかし、日本政府は、まだこれに応じていません。現在、朝日両国間に国交はありませんが、日本政府が朝鮮人を祖国へ帰すのに、難点はないと思います。日本政府は、在日朝鮮同胞を祖国に帰すべき責任をおっています。

 在日朝鮮同胞が祖国に帰るのは、誰も奪うことのできないかれらの当然の民族的権利であります。したがって、日本政府は早急に在日同胞を祖国に帰さなければなりません。

 我々は、帰国を希望する在日同胞をすべて受け入れる準備ができています。住宅建設も進んでいるので、帰国する同胞に住宅条件を十分に保障することができます。農村が復興して人民の食糧問題が完全に解決し、工場も復興して消費物資にたいする人民の需要を基本的に満たせるようになりました。したがって、数10万の在日同胞が帰国しても、国がかれらの生活を保障できない状態ではありません。

 就業問題も心配ありません。現在、我が国の工場と農村では労働力の不足に悩んでいます。在日同胞が帰国したら、すべての人に能力と体質に合う適切な職場を保障するでありましょう。

 子女の就学も問題ありません。我が国では、すでに全般的中等義務教育制が実施され、すべての新しい世代が無料で中等義務教育を受けています。我々は学校を増設しなくても、在日同胞の子女数10万を受け入れて就学させることができます。

 一言でいって、在日同胞が帰国して安定した職業を得て幸福な新しい生活を享受し、子女を学校に入れられるよう、すべての条件を保障する準備ができています。したがって、我々には、在日同胞の帰国にあたって少しも問題になることはありません。

 在日朝鮮同胞の帰国実現問題は、日本政府の誠意いかんにかかっています。日本政府が人道的立場に立って、在日朝鮮同胞を祖国に帰すために努力するならば、かれらの帰国問題は容易に解決されるでしょう。

 日本政府は在日朝鮮同胞の帰国を認めるばかりでなく、かれらが安全に帰国できるよう必要な措置を講じなければなりません。これは、日本政府が履行すべき当然の道義であり、義務であります。帰国する在日同胞の安全について、日本の領海では日本政府が責任をとり、共和国領海に入ってからは共和国政府が責任をおうべきです。

 我々は、日本に在住する朝鮮同胞が、祖国に自由に往来できるようになるべきだと考えます。現在、日本政府は在日朝鮮同胞の祖国への自由往来を許可していませんが、これも朝鮮民族を敵視する態度です。

 在日朝鮮同胞の帰国を実現させるためには、日本人民の支持が重要です。日本人民はかれらの帰国運動を極力支持、共鳴し、その帰国を実現させるべきです。

 いまアメリカ帝国主義者のさしがねで、日本と南朝鮮の反動層が在日朝鮮同胞の帰国を妨害していますが、朝鮮人民と日本人民がねばり強くたたかうならば、かれらの帰国は必ず実現するでしょう。

 出典:『金日成著作集』13巻(抜粋)


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