金 日 成

作家、芸術家のあいだで古い思想の影響を一掃する
たたかいを力強くおし進めることについて
作家、芸術家におこなった演説 
−1958年10月14日− 


 これまで、我が国の作家、芸術家は、党の正しい指導とあつい配慮のもとに、社会主義的文学・芸術を発展させる活動で大きな成果をおさめました。党中央委員会は、これを喜ばしく思い、作家、芸術家の業績を高く評価しています。

 私はきょう、作家、芸術家のあいだで、古い思想の影響を一掃するたたかいを力強くおし進める問題について述べたいと思います。

 こんにち、我が国では古い生産関係の社会主義的改造が完成された結果、都市と農村で社会主義的生産関係の全一的な支配が確立し、社会主義建設の革命的大高揚が起こっています。人民経済の各部門では、連日革新と躍進が起こり、あいついで前進と飛躍を遂げています。

 社会主義制度が全面的に確立されたこんにち、勤労者のあいだでブルジョア思想の影響を一掃し、かれらを共産主義思想で武装させるのは、我々の基本的な任務であり、緊切な課題であります。共産主義教育を強化しなければ、勝利した社会主義制度の強化も共産主義の建設も不可能です。

 こんにち、大多数の作家、芸術家は、我が党の思想で武装し党中央委員会のまわりにかたく団結し、党と人民のために、社会主義・共産主義建設のために知恵と力を傾注しています。しかし、いまなお一部の作家、芸術家には、我が党の思想、共産主義思想とは縁遠い古い思想の影響が少なからず残っています。

 作家、芸術家にある古い思想の影響は、なによりも個人主義・利己主義、功名主義の行動にあらわれてます。一部の作家、芸術家は、その作品が評価され受賞者にでもなれば喜びますが、そうでないと気分を悪くします。

 そのような実例は、「舞踊の大家」を自任するある芸術家に見出すことができます。

 党は、芸術家を愛し大事にするので、彼女に多くの指導と助言を与えました。彼女は、当然、党と人民のためにさらに努力すべきでした。しかし彼女は、金銭と称賛と受賞には嬉々とするのですが、そうでないときは不平を並べとやかく言いました。甚だしくは、自分の作品にたいする論評を新聞に出してくれないといって、公然と党に不平を持ち込むまでにいたりました。

 彼女は自分の右に出る者がいないかのように思い上がり、自分を売り出そうとするあまり、自分がいなければ朝鮮の舞踊は発展できないかのように言っているそうです。我が国では、党の配慮のもとに文学・芸術部門の有能な後続部隊が育っており、新人芸術家がめざましい発展を見せています。彼女がいなくても立派な舞踊作品はいくらでも創作できるし、舞踊を発展させることができます。舞踊を神秘化し特定の人にしかできないという考え方は、非常に間違っています。共産主義者は、神秘性を認めません。舞踊とは、人々の思想、感情と生活を芸術的律動で形象化したものです。それゆえ、神秘なものはなにもありません。誰でも躍動する現実を深く研究し努力するなら、立派な舞踊作品をつくることができます。

 個人の利益や名声を当てにする傾向は、この舞踊家に限らず他の芸術家たちにもあらわれています。

 称賛や賞だけ望むのは、共産主義思想とは無縁の個人主義・利己主義の純然たる商売人的な態度であります。こんにち、我が国の社会主義社会で党と革命の利益よりも個人の利益や功名を優先させる行動は、絶対に許されません。朝鮮人民は、党と革命のために踊り、歌う芸術家を愛しますが、資本主義かぶれの芸術家、言いかえれば、個人の利益や栄達のために踊り、歌う芸術家は愛しません。人民から愛されない芸術家は我々には不必要です。

 作家、芸術家に残っている古い思想の影響は、党の指導を誠実に受けようとしない自由主義的行動にもあらわれています。

 一部の作家、芸術家には、党の指導と正当な批判をけむたがり、党の指導をよく受け入れようとせず、ほしいままにふるまう無規律な現象が見られます。

 舞踊劇『白香(ペクヒャン)伝』に多くの欠陥があり、この作品にたいする観衆の評判もよくないので、党では意見を述べました。舞踊劇『白香伝』の振付は、当然、党の正しい指摘と大衆の意見を謙虚に受け入れ、自分の作品を検討すべきであります。ところが、彼女はそうしようとはせず、党の意見に不満を抱き、党の文芸政策と指導を非難しています。

 彼女のこうした行動は、偶然のものではありません。彼女は久しい以前からブルジョア思想に毒されており、彼女の驕慢な行動はすべてそこに根をおいています。

 我々は、彼女がブルジョア思想の影響を一掃し、党と革命のため、人民のために奉仕する芸術家になることを願って、13年間も忍耐強く教育してきました。しかし、彼女は党の信頼と配慮に背き、党が望む道とは全く違う道に走りました。彼女のブルジョア思想の影響を一掃し、改造するためには、文学・芸術部門の人たちが原則的で同志的な援助を与え、強い思想闘争を展開しなければなりません。

 自由主義的行動は、劇映画『炎』を制作する過程でもあらわれました。

 この映画は、社会主義建設に献身する労働者階級を冒涜する内容の、誤った作品です。作家、芸術家は、自分の文章や作品が人民大衆にいかに大きな影響を及ぼすかを銘記し、強い責任感をもたなければなりません。ところが、劇映画『炎』のシナリオ作家は、数年前にすでに批判された他の作品の素材をそのまま『炎』に写しかえました。これは良心に反する極めて無責任な態度です。これにたいして、党では事前に批判を与えましたが、映画創作スタッフは党の意見どおりに修正せず、そのまま映画を制作しました。これは、党にたいする正しくない態度であります。

 作家、芸術家のあいだにあらわれている無規律な行動は、たとえ部分的なものであるにせよ、これは党の統一、団結の強化と、作家、芸術家のあいだでの党的思想体系の確立に少なからぬ支障をきたしています。

 このような行動に強く反対し、文学・芸術部門で革命的規律と秩序を確立しなければなりません。

 厳格な革命的規律と秩序は、マルクス・レーニン主義党の生命だといえます。百万の党員が党中央の指導のもとに一致した行動をとってこそ、我が党は、労働者階級の前衛部隊、先鋒部隊としての役割を立派に果たし、革命活動を正しく指導することができます。党隊列の一致した行動が保障されなければ、党はその役割を果たすことができず、革命活動を順調におこなうことができません。他のすべての部門と同じように、文学・芸術部門においても党の指導を強化すべきです。作家、芸術家は、党に依拠して活動し、党の指導を誠実に受け入れるべきであります。

 次に、作家、芸術家のあいだにあらわれている家族主義的傾向を指摘すべきだと思います。

 我々は早くから、作家、芸術家のあいだに家族主義的傾向があることを知り、党組織で教育し是正させるようにしました。ところが一部の作家、芸術家のあいだには、いまも家族主義的傾向が依然として残っています。作家、芸術家のあいだで他の重大な欠陥が是正されていないのも、一部の作家、芸術家が家族主義の枠から抜けきれず、欠陥をかばい合っていることに主な原因があります。

 いかに親しい間柄でも、党の思想に反する行動をとる人とはたたかうべきであります。不純な思想の持ち主と友人関係を結ぶべきでなく、友人に不健全な思想的要素があらわれれば直ちにさとし改めさせるべきです。飲食店などで仲間同士集まっては酒をくみ交わし、他人を中傷する癖を捨てさるべきです。自己批判で家族主義の枠から脱皮すると決意した人がいますが、当然そうあるべきです。

 それでは、作家、芸術家のあいだで、いまなお古い思想の影響が一掃されず、思想的に異質化した人まであらわれるようになった主な原因はなんでしょうか。

 それはなによりも、文学・芸術部門の党組織が、作家、芸術家のあいだでブルジョア思想の影響を一掃する思想闘争を強く展開しなかったためです。

 これまで文学・芸術部門の党組織は、林和(リムホ)、李泰俊(リテジュン)などの反動作家とはよくたたかいました。しかし、この闘争は、作家、芸術家に残っているブルジョア思想の影響を一掃する闘争と密接に結びつけておこなわれませんでした。文学・芸術部門の党組織は、この部門にまざれ込んだ反動作家を一掃するたたかいをおこなうとき、当然作家、芸術家たちのブルジョア思想の影響にも警戒心を高め、それと強くたたかうべきでした。しかし、数人の反動作家とのたたかいに終わり、作家、芸術家たちのブルジョア思想の影響を一掃するたたかいには、それほど関心を払いませんでした。

 作家、芸術家のあいだでブルジョア思想の影響が一掃されていない原因はまた、かれら自身が古い思想の影響から脱皮するために努力しなかったところにあります。これまで作家、芸術家は、自分の思想生活を進んで検討し古い思想の影響をなくすたたかいを真剣におこないませんでした。

 作家、芸術家の隊伍をかためるため、かれらのあいだであらゆる古い思想の影響を一掃する思想闘争を強力におし進めるべきです。

 文学・芸術部門の党組織は、なによりも作家、芸術家のあいだで個人主義・利己主義、功名主義、自由主義、家族主義に反対する思想闘争を強くくりひろげるべきです。

 作家、芸術家は、ブルジョア思想の影響を一掃する思想闘争に積極的に参加しなければなりません。すべての作家、芸術家は、自分の顔の傷を鏡に映して見るように、党政策を規準にしてその活動と生活を謙虚に検討し批判しなければなりません。.

 思想闘争は、決して特定の人を革命隊伍から追い出したり、社会的に葬るためのものではありません。闘争なくして発展はありえません。強い思想闘争を通じてのみ、作家、芸術家の思想生活と創作活動で前進を遂げることができます。作家、芸術家のあいだで思想闘争を展開せよというのは、作家、芸術家を大切にするからであり、これはかれらにたいする党の大きな信頼と配慮のあらわれであります。作家、芸術家は、党の意図を明確に理解し、このたび党中央委員会が全党員に送った手紙の討議と結びつけて真摯な思想闘争をおこなうべきです。

 そして、ブルジョア思想の影響とのたたかいを一時的なものとしてではなく、古い思想の影響が完全に一掃されるときまでたゆみなく、強力に展開しなければなりません。

 作家、芸術家は、思想闘争と同時に、工場や農村など躍動する社会主義建設場に出かけ、現実から学び、自己を鍛えるべきであります。感受性の強い作家、芸術家が、躍動する現実のなかに入れば、党政策の貫徹と社会主義建設のために献身している勤労者から多くを学ぶことができるはずです。

 作家、芸術家は、工場や農村に出かけ、勤労者から党と革命にたいする限りない忠実さと不屈の革命精神を学ぶ一方、かれらに我が党の政策を積極的に宣伝しなければなりません。こうすることが、党と人民に奉仕する道なのです。

 作家、芸術家は、安逸と怠惰を一掃し、さらに緊張して働き生活すべきであります。

 いま全人民が創造の熱意に燃えており、社会主義建設のすべての部門では連日革新と飛躍が遂げられています。労働者階級は、自力で廃墟のうえに近代的な高炉を建て、鉄を生産する英雄的偉勲を立てています。全国が革命的大高揚に沸き返っているいま、作家、芸術家が酒を飲んで暇をつぶすのは恥ずべきことです。

 こんにちの情勢は、作家、芸術家のこのような生活を許しません。祖国の南半部には、依然としてアメリカ帝国主義者が居座っており、我々はまだ祖国を統一していません。アメリカ帝国主義侵略者のてこ入れのもとに、その手先は共和国北半部にたいする侵略戦争の準備に狂奔しています。我々は、祖国統一のためにさらに多く建設し、さらに早く前進しなければなりません。

 すべての作家、芸術家は、社会主義の時代、革命の時代の文芸戦士らしく緊張して生活し、創作活動で革新を起こすべきであります。

 最後に、作家、芸術家が、党中央委員会を政治的、思想的に強く擁護すべき問題について簡単にふれたいと思います。

 党員は、誰もがみな党中央委員会を強く擁護すべきであります。すべての党組織と党員は、党政策を非難し、党中央委員会に反対する傾向にたいしては容赦なくたたかい、これを党中央委員会に報告することを義務とすべきであります。文学・芸術部門の党員と作家、芸術家は、陰で党を非難し、うやむやな態度をとる人には、絶対に見逃すことなく適時に決定的な打撃を加えるべきです。

 党中央委員会科学・学校教育部と教育文化省、作家同盟は、作家、芸術家のあいだで党内の思想、意志の統一を破壊し、陰で党政策を非難する行動と強くたたかわなければなりません。

 私は、作家、芸術家が、古い思想の影響を一掃して我が党の思想で武装し、党の文芸政策を貫徹するたたかいで大きな成果を達成するものと確信します。                  

 出典:『金日成著作集』12巻


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