金 日 成

社会主義建設の新たな高揚のための問題
党・国家・経済機関・大衆団体責任幹部協議会でおこなった演説 
1958年9月25日

 1 農業協同組合の統合と里行政機構の改編について

 わが国では、既に農業の協同化が成功裏に完成しました。こうした状況のもとで、農業協同組合をさらに強化するためには、社会主義農業発展の要請に照らし、小規模の協同組合を統合しなければなりません。

 現在の農業協同組合は規模が小さく地域的に分散しているため、農業生産の急速な発展に支障をきたしています。

 一つの里にいくつもの協同組合が組織されているのは、土地の合理的な利用と農業の多角的な発展、田畑潅漑の大々的な導入、特に、農業機械化の実現と労働力の合理的な組織に障害を与えています。

 またこれは、各協同組合が所有している耕地の肥沃度と面積の格差によって、組合経営の発展と組合員の生活水準に甚だしい不均衡をもたらしています。

 これはまた、農村でかなりの浪費をもたらしています。各協同組合がそれぞれ生産・文化施設を建設するため、里全体として見れば不必要な建設を多くすることになります。それに、一つの里に協同組合がいくつもあれば、多数の管理職員を必要とするため、労働力の浪費が多く、またすべての組合に有能で堅実な管理幹部を配置するのも難しいことです。これまでの経験は、組合の管理幹部が堅実で、党政策を正しく把握し、創意を発揮して活動する協同組合は急速な発展を遂げ、そうでないところでは発展速度がいたって緩慢であることを示しています。

 このような不合理さは、地域的に分散している小規模の協同組合を一定の規模に統合せずには克服できません。

 信川郡セナル農業協同組合と平原郡三峰農業協同組合、龍川郡チョンジン農業協同組合、咸州郡朝陽農業協同組合、吉州郡双龍農業協同組合、鉄原郡白鷺山農業協同組合をはじめ、既に里単位に統合された協同組合は、その発展で早くも優位性を示しています。

 こんにち、農業協同組合を里単位に統合することは、機の熟した要求として提起されています。大部分の組合員と管理幹部が統合の必要性を認め、協同組合の里単位の統合を提起しています。

 主体的、客観的に機の熟した現実的要求に即応し、農業協同組合をさらに発展させるため、組合員の意思を尊重しながら、現在の組合を里単位に統合し、村落別に分場あるいは作業班を適切に組織すべきです。

 農業協同組合の里単位の統合と関連し、里の行政機構を改編すべきであります。

 農業協同化が完成したこんにちでは、里人民委員会の役割は有名無実になりました。農業に対する生産的指導の権限は、個々の農業協同組合がもつようになり、里人民委員会はその指導権を失っています。したがって、里人民委員会の機構を農業の発展に即応し、合理的に改編しなければなりません。

 今後、里人民委員長が農業協同組合の管理委員長を兼任する方向で、里人民委員会の機構体系を改編すべきです。改編される里人民委員会には、管理委員長を兼ねる里人民委員長1名、生産担当副委員長1名、生産指導員2名、簿記係長1名、統計員1名をおけばよいでしょう。

 里人民委員会の簿記係長は、農業協同組合の全財産の簿記計算だけでなく、生産計画の作成と、決算分配の計算をおこない、統計員は、里内の人口統計と労働者、事務員の食糧配給関係、冠婚葬祭にかかわることなど、里の行政事務に当たるべきです。

 邑と労働者区では、農業協同組合のみを統合し、行政機構は、そのままにしておくべきです。

 農業協同組合の統合と関連して、農村消費協同組合商店と信用協同組合、農村診療所は、農業協同組合に移管し、組合自体で管理運営するようにすべきです。

 農村消費協同組合商店の農業協同組合への移管に伴い、商品の卸売価格は2通りに定めるべきです。農業協同組合商店向け商品の卸売価格は、国営商店向けのそれより多少高くしなければなりません。

 消費組合商業網体系を改編し、国営商業網体系と農業協同組合商業網体系だけを残し、消費協同組合の常設機構は、中央から地方にいたるまで、いっさい廃止すべきです。

 郡には、国家小売商店や卸売および買付け商店をおき、組合員の便宜をはかって数個の里単位に郡買付け商店の分店を一つずつ設け、契約買付けをするなど、買付けを常時おこなうようにすべきです。

 商業網体系の改編は、道商業管理局の役割をさらに高めることを求めています。道商業管理局は、その管下の商店で商品流通を適時に保障するよう対策を講じるべきです。

 里行政機構と商業流通、保健医療部門の活動体系を合理的に改編すれば、数万名の国家機構定員労力を縮小することができ、これは人民経済各部門の労働力不足の解消に大きな助けとなるでしょう。

 協同組合の統合とそれに伴う里行政機構と消費組合商店、信用協同組合、診療所などの管理運営体系の改編は、大きな政治的・経済的意義をもつ重要な事業であります。したがって、各級党組織は、この事業の重要性を人民大衆のあいだに広く宣伝し、その実行でわずかの偏向も犯さないよう、党の指導を細部にわたっておこなうべきです。

 各級党組織と政権機関は、何よりも組合員のあいだで思想啓発活動を広くおこなわなければなりません。こうして、すべての組合員が、協同組合統合の必要性と利点を正しく認識し、この事業に積極的に参加するようにし、一部の管理委員長が地位と功名にこだわって統合に反対する傾向や、富裕な組合と経済基盤の弱い組合の統合であらわれうるさまざまな否定的傾向を未然に防ぐようにすべきです。

 道党組織は、年内に協同組合の統合を成功裏に終える措置を講ずるべきであります。

 道党組織は、道人民委員会と協力し、この事業を道の実情に応じて指導するための委員会を組織し、活動家に具体的な実務講習を与えて、市、郡に派遣すべきです。また、市や郡、里には、協同組合の統合事業を進める準備委員会を組織すべきです。協同組合の統合事業を指導するため、道に組織された委員会と市・郡・里準備委員会の活動家は、組合員に対する思想啓発活動をおこなう一方、各組合の共同財産を正確に掌握し、牛や豚などを屠殺するような不正行為を事前に防ぎ、今年度の決算分配で共同ファンドを正しく蓄積するようにすべきです。

 道党組織は、里行政機構と党組織の改編問題を研究し、合理的で具体的な案を提出しなければなりません。

 2 地方産業を発展させる対策について

 党中央委員会1958年6月総会後、わずか3か月余りの期間に全国的に944の地方産業工場が新設されました。

 来年度に地方産業部門では、多額の国家投資なしに地方の資材と労力、技術で927億円(ウォン)分の製品が生産される見込みです。これは、重工業を優先的に発展させながら、同時に軽工業と農業を発展させるわが党の経済建設の基本路線をいっそう確実に貫徹し、人民生活をより急速に向上させる重要な保証となります。

 我々は、実にすばらしいことに着眼し、立派な仕事に着手しました。地方産業の発展によって、人民経済各部門に必要なセメントや鉄材が増産され、人民の衣食問題はさらに改善されました。もし、わが党が6月総会で地方産業を発展させる政策を提示せず、地方産業工場を全人民的運動で建設しなかったならば、重工業をひきつづき速い速度で発展させながら、こんにちのように一般消費物資を大量生産できなかったでしょう。

 来年度に、数十億円の国家投資によって復旧改造した軽工業省管下の各工場で600億円分の商品生産を予定していますが、それより投資額のはるかに少ない地方産業部門で927億円分の製品を生産するということは、地方産業の優位性を明確に示す事例となります。

 6月総会の決定を貫徹する過程で、地方の党、行政機関幹部の創意と積極性はさらに高まり、企業管理方法と技術を修得し、生産組織と企業管理に対する経験をつむようになりました。6月総会当時までは、地方の党、経済機関の幹部たちが軽視し、関心さえ払わずに放置していた原料、資材、設備、技術が、いまではすべて利用されています。こうして、輸入しなければ解決できないと言われていたベアリングをはじめ、数百種の新しい製品が地方産業工場で自力で生産されるようになった結果、社会主義建設をより高い速度で進めることができるようになりました。

 工場が皆無もしくは皆無にひとしかった農村地帯に社会主義工業基地が創設され、労働者階級の陣地が拡大、強化されています。解放前までも、三水、甲山と言えば、人間の住めない山奥として知られていました。しかし、党中央委員会6月総会以後、両江道には多くの地方産業工場が新設され、現在79の地方産業工場で4615名の労働者が働いています。これは、各郡に7つの工場と420名の労働者がいることになります。

 地方産業が発展し、農村地帯に労働者階級の隊列が増えることによって、直接、彼らをとおして農民大衆に政治的影響を与える可能性がさらに大きくなり、市や郡機関所在地の労働者、事務員の扶養家族を広く生産に参加させて社会主義建設者につくり、彼らの物質・文化生活水準を著しく向上させることができるようになりました。

 党中央委員会1958年6月総会の決定を貫徹する過程で達成された成果は、何を意味するでしょうか。それは、6月総会の決定が、わが国の経済状態の正確な分析にもとづいてうちだされた最も正しい政策であることを確証し、同時に、党の正しい指導のもとに勤労者の創造的熱意がかつてなく高まっていることを示しています。

 6月総会の決定を貫徹する活動には欠点もあり、早急に解決すべき問題もかなりあります。

 現在、新設された地方産業工場がすべて円滑に運営され、その生産能力を十分に発揮しているとは言えません。少なからぬ工場が、まだ整備の段階にあるので経済的基盤は弱く、地元の自然経済的条件の合理的な利用による生産の多角的な組織がなされていません。また、工場の管理幹部の政治・実務水準はまだ低く、工場内に秩序と規律が確立されていません。

 こうした実情にてらして、各級党組織の重要な課題は、新設された工場の運営を短時日内に正常化し、生産を漸次機械化し、製品の品質を高め、原価を引き下げ、品目を増やす方向で指導を強めることです。

 各級党組織は、すべての党員と勤労者に6月総会決定の正しさを認識させ、足踏織機で織物を織り、手工業的方法でクリンカーを生産することが、わが国の社会主義建設の促進に、いかに大きな寄与をなすかを明確に認識させ、彼らに地方産業工場で働く誇りをもたせるべきであります。

 工場の管理幹部の政治・実務水準を高める対策を講ずるべきであります。各級党組織は、その実情に即して工場の管理幹部の講習を組織し、党政策と工場の管理運営知識を教え、短時日内に十分な企業管理能力を所有させるべきです。

 新設された地方産業工場を短時日内に経済的に強化するため、工場がある程度の生産施設を改造、拡張し、文化・衛生施設を備えるまで、半年ないし1年間は国税を賦課すべきではありません。

 生産では、標準操作法を厳守させるべきであります。そのためには、軽工業省、金属工業省、化学工業省、機械工業省が、各道に標準工場を1つずつ建て、道内のすべての地方産業工場がその模範にならうようにしなければなりません。

 道では、牛車、農機具、ベアリングや各種の建材生産をさらに発展させるべきです。こんにち、農業生産の急速な増大につれ、農村の輸送問題を解決することは、極めて重要な課題となっています。道・市・郡党組織は、各郡に牛車、ベアリングを生産する工場を建設し、牛車をはじめ、各種の運輸手段を自力で確保できるようにすべきです。牛車は、在来式に作らずに手軽く堅固で、荷物を多く積んでも牛が楽に引けるよう、ベアリングを使ってよく作らなければなりません。

 地方産業工場は、主として婦人労力で運営すべきです。労働力が足りないのに、地方産業工場で男性労力を多く採用すれば、大工場の生産増大に支障をきたすようになります。したがって、地方産業は、婦人労力と農村の季節労力を利用する原則で運営すべきです。男性労力を必要とする建材工場、製鉄工場などでは、主として農閑期に農民の労力で生産を保障するようにすべきです。

 地方産業工場の運営体系は、道と郡で管理運営するのを、それぞれ区分すべきであります。道として重要な意義をもつ工場だけを道が管理運営し、その他小規模の工場はそれぞれの郡が責任をもって管理運営すべきです。

 急速に発展する地方産業工場に対する系統的な指導を保障するため、道人民委員会に地方産業管理局を設けて道営工場の運営と郡営工場の指導に当たらせ、郡営工場が3つ以上ある郡人民委員会には、地方産業管理部を設けて、直接、郡営工場の運営に当たらせるべきです。また、市、郡党委員会には産業部を設け、市、郡内の国営・道営・郡営工場を責任をもって指導し統制すべきです。

 新設された地方産業工場の資金問題は、一定の収入が得られ次第、みずから解決することを原則とすべきです。しかし、それが不可能な場合は、中央銀行から短期融資を受けることができます。それによってもなお資金が不足すれば、国家予算から一部を受けることができます。国家は、地方産業建設投資額を道別に正確に配分すべきです。

 地方産業工場の機械化水準を高めることが重要です。そのためには、現存工場の設備を有効に利用し、来年度に各道に建設される総合機械工場を十分利用するようにすべきです。

 地方産業を急速に発展させるため、国家計画委員会では、1959年度の人民経済計画を国営部門と地方産業部門に区分し、別々に作成しなければなりません。これとあわせて、軽工業省と建設建材工業省では、今後、地方産業工場に切り替えた方が有利な、小規模の工場を地方産業部門に移管すべきです。

 道党組織は、国営工場の副業生産を責任をもって指導、統制すべきです。6月総会では、国営工場が副産物で生活必需品を生産するよう特に強調したにもかかわらず、この実行状態は極めて緩慢であります。それゆえ、国営工場の副業生産指標は各道地方産業計画に含め、その生産を地方党組織が強く統制すべきです。

 3 農業生産を急速に発展させるために

 農業増産の鍵は、潅漑、肥料、深耕、密植にあります。各級党組織と農業部門の幹部は、保守主義と消極性をなくし、ヘクタール当たりの収量を高めるうえで提起されるこの鍵を掌握し、農業生産を増大させるため積極的に努力すべきであります。

 まず各級党組織は、1959年から1961年のあいだに全人民的運動を展開し、70万ヘクタール以上の畑潅漑を施し、新しく30万ヘクタールの水利完全田を作り、合計100万ヘクタールの潅漑面積を拡張すべきです。このようにすれば、急傾斜地を除くすべての耕地に全面的な潅漑システムを確立することになります。

 全面的な潅漑システムの確立は、先祖の永年の宿望を、我々の世代になって実現する光栄ある事業であります。耕地面積が限られ、毎年ひどい日照りがつづくわが国では潅漑システムの確立なしには、多収穫を期待することができません。

 潅漑システムを全面的に確立することは、もちろん非常に困難な課題です。しかし、我々には、この困難な課題をなし遂げうる条件と可能性があります。強力な重工業基地があり、これまで平南潅漑工事とオジドン潅漑工事をはじめ、大小規模の潅漑工事をおこなった豊富を経験があり、3年間の祖国解放戦争で鍛えられ、党中央委員会のまわりに一致団結した100余万の党員を根幹とする人民大衆があります。問題は、党組織と農業部門の幹部が大衆の底知れない力を信じ、彼らを正しく奮起させることにあります。

 各級党組織は、地方工業をさらに発展させ、潅漑工事に必要なセメントや鉄材、揚水機などの機材類を自力で解決するための大衆的運動を起こすべきであります。

 農業生産で革新を起こすためには、潅漑とともに深耕、密植を確実に保障しなければなりません。農業部門の党員と組合員に、作物別の深耕、密植に関する技術知識を普及し、すきをはじめ、農機具を深耕、密植用に改良すべきです。

 次に、自給肥料の生産を力強く展開しなければなりません。

 農業生産で収量を高めるためには、深耕、密植とともに自給肥料の生産を増やさなければなりません。しかし、一部の農業部門の幹部は、化学肥料にのみ依存して、自給肥料の生産をおろそかにし、これを極めて形式的、消極的におこなっています。

 各級党組織は、自給肥料の生産で早急に消極性をなくし、ヘクタール当たり50トン以上の自給肥料を生産する運動を大衆的に力強く展開すべきであります。

 自給肥料は、農村でいくらでも生産できます。草やワラを腐らせて堆肥をつくり、あるいは家畜を飼育して良い厩肥をつくることもでき、焼土や草木灰、糞土などをつくることもできます。山間部では多くの腐植土がつくれるし、海岸地帯ではヒトデ、海草、魚の内臓などで肥料をつくることができます。農業部門では、可能なすべての条件を利用し、いろいろな方法で自給肥料を大量に生産すべきです。

 わが国の土壌は、50%以上が酸性化しています。これを改良するには、年間30万トン以上の消石灰が必要です。各級党組織は、農民を動員して石灰石を採掘する対策を講ずるべきです。

 石灰石や泥炭を多く生産するためには、埋蔵量の多い地帯に採取事業所を設け、技術者を配置してここに動員された農民を正しく指導するようにすべきです。また、工場、企業所では、各種の採取機械類を生産、供給すべきです。

 次に、土壌の分析を正確におこなわなければなりません。

 土壌を分析して、耕地の性質、耕土の深さ、土壌の構成や酸度、リンやカリの含有量などを明確に知らなければ、科学的施肥体系と土地改良対策を正確に立てることができません。したがって、わが党は、土壌の分析を正しくおこなうようひきつづき強調してきました。しかし、これが正しくおこなわれていません。工場と鉱山、大学などにある土壌分析設備が有効に利用されておらず、特に、農業科学院がその役割を十分に果たしていないため、この1年間、ようやく大同郡一つの郡の土壌分析がおこなわれたにすぎません。

 この状態では、100年かかっても全国の土壌分析を終えることは不可能です。土壌分析を促進するための革命的対策を講じなければなりません。

 各級党組織は、工場、企業所、鉱山、大学にある分析設備を有効に利用し、数か月内に土壌分析を完了すべきであります。また、土壌分析結果にもとづいて客土作業をおこなって土壌を改良し、肥料を合理的に施し、適地適作の原則を守って、穀物を増産すべきです。

 来年度から密植を広く取り入れることになるので、あらかじめ優良種子を多く確保することに深い注意を払わなければなりません。各農業協同組合では、必ず試験圃場を作り、多収穫試験と優良種子の採種を計画的におこなうべきであります。

 次は、畜産業の発展に大衆の力を正しく動員しなければなりません。

 兎飼養運動を大衆的に広くおこなうべきです。各級学校の生徒と各機関、企業所の労働者、事務員の扶養家族に兎を多く飼養させ、来年度に兎の肉は4万トン、毛皮は2300万枚以上生産するようにすべきです。こうすれば、栄養価の高い兎の肉を人民に供給し、子供たちに毛皮のオーバーを着させることができます。

 農家100戸当たり母豚を20頭以上飼育するようにして畜産土台を強化し、牛や羊を飼育し、養蜂にも深い関心を払うべきです。

 畜産業の発展で基本問題は、強固な飼料基地を確保することです。1959年に、すべての組合で30ヘクタール以上のくずの山と放牧地を造成する運動をさらに力強く展開しなければなりません。これとともにサイレージと乾草の生産計画を必ず遂行すべきです。

 次に、養蚕業をさらに発展させなければなりません。

 各級学校の生徒と各機関、企業所の労働者、事務員の扶養家族を動員して、ヒマ蚕を飼う大衆的運動を起こし、1959年には3万トン以上のヒマ蚕繭を生産できるようにすべきです。そのために、ヒマ蚕飼育の技術知識普及活動を広く組織するとともに、道路周辺や山すそ、畑のくろ(水田・畑などの「畔−あぜ」)など、すべての空閑地にヒマ(トウゴマ)を植え、必要な蚕卵の確保対策を講じなければなりません。

 桑畑の面積を計画的に拡張するとともに、桑の苗木生産を保障し、柞蚕林を造成、整理し、蚕室や改良蚕具の準備を十分におこなうべきです。

 次に、各級党組織は農機具の改良に積極的に取り組まなければなりません。

 1959年度の農業生産課題を遂行するためには、先進的な改良農機具や農業機械を決定的に取り入れ、除草、脱穀、運搬、飼料粉砕などの作業を機械化する対策を講じなければなりません。各道に2、3の農機具総合工場と各郡に農機具修理工場を設置し、農作業が手軽にできる農機具や運搬手段を自力で生産供給するようにすべきです。

 先進農機具を取り入れるため、技術講習や先進農機具展示会などを広く組織し、農機具と運搬手段を改良するための大衆的な創意考案運動を展開しなければなりません。

 各級党組織が、潅漑、深耕、密植、肥料生産と種子確保、農業機械の改良、農業の機械化に力を入れ、人民大衆の知恵と力を正しく引き出すならば、1、2年内に農業生産では大きな変化が起こり、耕地面積の拡張なしにも、近い将来、より高い穀物生産目標を達成することができるでしょう。

 4 労働力不足を解消するために

 こんにち、経済の急速な発展に伴い、労働力事情は非常に緊張しています。これを解決するためには、労働力の予備を極力見つけだし、特に、婦人労働力を多く採用しなければなりません。

 党組織は、現在、家庭婦人を大衆的に職場に進出させる活動を十分におこなっていません。したがって、婦人の就業率は極めて低い状態にあります。特に、省や局では、人民経済各部門に婦人を広く採用するための内閣決定第84号を確実に実行していません。わが国の事務員のうち、婦人の占める比重は18%にすぎません。婦人で十分な軽労働部門や事務および技術部門に健康な男子労力を採用し、国の労働力事情をさらに緊張させています。

 現在、労働行政で最も重大を欠陥の一つは、経済機関の幹部が、千里馬を駆って疾駆する勤労大衆の創意を正しく考慮するのではなく、従来の古い作業基準量にもとづいて労働力を計算していることです。勤労者が従前の3〜4倍に生産性を高めている状況下で、古い基準によって労働力を計算してはなりません。生産性が向上しているにもかかわらず、古い基準量によって労働力を計算するのは、経済機関の幹部の活動にあらわれている保守主義と消極性の代表的な表現です。労働力を古い基準量にもとづいて必要以上に多く割り当てれば、生産部門の人は作業の機械化水準を高めるために創意を発揮せず、国家に大きな負担と損失を与えることになります。

 各級党組織と計画機関、労働行政機関は、労働行政活動を正しくおこない、人民経済の増大する労働力需要を円滑に保障すべきであります。

 各級党組織と労働行政機関は、人民経済各部門で労働生産性を高めるための対策を講じるべきです。労働生産性を向上させるためには、建設場や工場で作業工程を機械化し、新たな生産方法を積極的に導入し、勤労者のあいだで新しい技術を修得する運動を力強く展開し、彼らの技術熟練度をたえず向上させるべきであります。そうすれば、人民経済の各部門でたえず新たな作業基準量がつくられます。

 各級党組織と労働行政機関は、労力の増加なしにより多く生産するための党政策を深く研究し、それを貫徹しなければなりません。国家計画機関と労働行政機関は、労働力の計算方法を検討し、人民経済各部門の労働力需要を計算し直し、それにもとづいて労働力を補う必要のある部門に限って補充すべきです。

 人民経済の各部門で婦人労力を多く採用するように努力すべきです。

 党機関で婦人活動家の比重を高めると同時に、国家・経済機関で婦人の比重を高めるべきです。特に、商業流通・教育・保健医療機関で婦人の比重を大幅に高めなければなりません。

 婦人を職場に進出させ、その比重を高めるためには、婦人たちに対する思想教育を強化し、彼女らが労働を最も神聖な義務とみなし、労働に自発的かつ誠実に参加するようにすべきです。

 各級党組織は、まず、高等教育、中等教育を受けて家庭にいる婦人たちの職場進出に力を入れるべきです。現在、都市には、高等教育、中等教育を受けた多数の婦人が生産から遊離して家庭に閉じこもっています。彼女らは、発展する社会の現実を知らず、政治生活から遊離し、政治的、思想的に極めて立ち後れています。

 婦人を生産に広く参加させることは、その政治的立ち後れを防ぐばかりか、国の緊張した労働力問題を解決し、商品生産を増大させて人民の物質的需要をより円滑にみたし、勤労者の生活を向上させる重要な一環となります。それゆえ、各級党組織は、家庭に閉じこもっている婦人たちに強く働きかけて職場に積極的に進出させ、人民経済の各部門で内閣決定第84号が貫徹されるようにすべきです。

 事務機関と出版・報道機関の機構体系をつづけて検討し、機構を統合すべきものは統合し、縮小すべきものは縮小する方法で労働力の予備を多く見つけだすべきであります。また、各級学校の教員のあいだで、多クラス担当運動を展開し、保健医療機関で仕事の能率を高める方法で労力を縮小する社会的運動を展開しなければなりません。

 省や中央機関などの事務機関では、勤務規律を強め、仕事の能率向上に努めるとともに、千里馬を駆る勢いで進む勤労者の意気込みに歩調を合わせ、毎日2時間以上超過勤務する運動をおこなうべきです。

 各級党組織は、このようにして緊張した労働力問題を解決するよう、労働行政に対する党の指導を強化しなければなりません。

 5 外貨獲得運動を全人民的運動として展開することについて

 わが党は解放後、日本帝国主義から受け継いだ工業の植民地的跛行性をなくし、強力な自立的民族経済を建設するため、重工業を優先的に発展させる路線を堅持してきました。その結果、こんにち重工業は、国の経済発展と国防力の強化において大きな役割を果たしています。しかし、重工業はまだ、人民経済各部門で必要な生産手段を円滑に保障しておらず、したがって、生産の機械化水準は低い状態にあります。

 重工業、特に、機械製作工業を急速に発展させるためには、外国から近代的な機械設備を大量に輸入しなければならず、そのためには多くの外貨が必要です。

 各級党組織と国家・経済機関の活動家は、より多くの外貨獲得とその節約運動を力強く展開すべきであります。

 何よりも輸出源の探求を全人民的運動として展開し、外貨を少しでも多く獲得するため、積極的に努力すべきであります。

 わが国には、多くの外貨獲得の源泉があります。ヒマやヒマワリの種子、落花生、玉ネギ、カボチャの種子、果物類、キュウリ、トマト、スイカなどの農産物や、ワカメ、するめ、カキ、ノリなどの各種水産物も輸出することができます。また、ツバキ、ドングリ、キノコ、それに鶏、キジ、アヒルの羽毛、豚毛なども輸出できます。このようなものは、見た目には大したものでありませんが、収集して輸出すれば多額の外貨になります。

 しかし、少なからぬ党組織と経済機関の幹部は、大口の外貨源にのみ関心を払い、どこにもあるような小口の外貨源に対しては関心を払わず、外貨になる各種の貴重な資源の保護、増殖に努めていません。

 各級党組織は、こうした傾向と強く闘うと同時に、経済機関に国家から示達された輸出品生産計画を指標別に、質量ともに遂行させるべきです。各級党組織はまた、すべての党員と大衆に、外貨を多く獲得すれば、人民経済をより急速に発展させ、人民生活をさらに向上させることができるということを十分に認識させ、彼らが一個のリンゴや玉子でも多く輸出して、より多くの外貨を獲得する運動に自発的に参加するようにすべきです。

 貿易部門の活動家の責任感と役割を強めなければなりません。

 外貨の獲得とその節約において貿易部門の活動家の任務は、極めて重要であります。しかし、党中央委員会6月総会の決定貫徹に当たって、貿易部門の活動家は積極性が非常に不足しています。彼らは、みずから外貨源泉を探求してより多く輸出するために奔走し、滞貨商品の輸出方途を見つけるために努力しようとせず、安易な方法で輸出品が手元にあれば売り、相手が買わなければそれまでだといった無責任で消極的な態度をとっています。

 各級党組織は、貿易部門の活動家の党性をさらに鍛え、彼らを、党と国家に対して負っている責任をあくまで遂行する立派な活動家につくりあげるべきです。

 輸出品生産で厳格な規律と秩序を確立し、貿易計画を必ず遂行するよう党の統制を強化すべきであります。

 わが国の貿易は、兄弟諸国に限らず、社会制度の異なる国々との経済的連係と協力を強化する基本形態、重要な手段となります。したがって、外国との貿易契約を履行することは、とりもなおさず、その国の経済発展と関連し、国際的義務となる責任ある事業であります。

 ところが現在、貿易部門と生産部門の活動家の責任感の欠如のため、ソ連をはじめ、兄弟諸国、そしてインド、ビルマなど多くの国との貿易契約を正確に履行できず、国の国際的権威を少なからず傷つけています。1958年度の輸出計画は、9月20日現在、金額上82.2%遂行されましたが、現物指標別には、わずか43.1%しか遂行されていません。

 各級党組織は、輸出品生産に対して強い規律を確立し、国家・経済機関の生産計画遂行状況は輸出品生産計画の遂行状況によって評価することを原則とすべきです。また工場、企業所と農業協同組合に輸出品生産専門の職場と作業班を組織し、輸出品生産を質量ともに確実に保障するようにし、貿易計画を達成できず、国家に少しでも政治的・経済的損失を与えた機関、企業所に対しては、相応の法的責任を負わせるべきであります。

 我々は、外貨獲得のための全人民的運動をくりひろげて今年度の輸出計画を必ず遂行するだけでなく、今年度の計画に比べ、ほぼ2倍に増大する来年度の輸出計画を必ず超過遂行すべきであります。

 6 科学者、技術者の教育を強化することについて

 こんにち、社会主義工業と協同化した農業は、各種の困難かつ複雑な科学・技術上の問題を多く提起しています。生産と建設で一大高揚を起こすため昼夜を分かたず闘っている勤労者は、科学者、技術者たちが社会主議建設の高揚に歩調を合わせ、現実的にゆきづまっている科学・技術上の問題を適時に解決してくれることを求めています。

 しかしこれまで、科学研究部門の活動家たちは、科学・技術に対する神秘化と保守主義、消極性に陥り、さし迫ったこの現実的要請を解決できませんでした。科学者、技術者のあいだには、主観主義、利己主義、形式主義などの古い思想が多くあらわれており、自発性と責任感、党性に欠けた傾向がかなりあらわれています。

 最近、科学・教育関係者の協議会が開催された以後、この部門の活動である程度の前進はありましたが、それはまだ第一歩を踏みだしたにすぎません。いまなお、一部の科学者は、神秘主義のとりこになり、国の現実的要請とは、かけ離れた問題の研究に時間を浪費しています。一部の教員や文化人は、仕事は少なくして多くの報酬を望む利己主義思想を一掃しておらず、一部の技術者は古くて立ち後れた自分の技術に固執しながら、党によって育成された勤労者の創造的力を信頼せず、陰に陽に我々の前進を阻んでいます。

 科学者と技術者に対する思想教育を強化しなければなりません。

 科学者と技術者の思想教育における重要な問題の一つは、現実の体験をとおして彼らを教育することです。

 現実にうとく、大衆の千里馬を駆る意気込みに恐れをなし、後ろでぐずついている科学者、技術者は、生産現場に送って前進する現実を体験させ、労働を通じて思想・意識を改造させることが必要です。長期間、現実から遠ざかっていたため、発展する現実についていけない科学者、技術者は、1、2年間、工場や農村に派遣して、労働者、農民と生活をともにしながら、彼らの革命性を学ぶようにすべきです。こうして、彼らが古い思想・意識を改造する一方、自分の知識と技術を労働者、農民に教えるようにすべきであります。

 党組織は、科学研究部門の活動家たちが、党の路線と政策を幅広く掘り下げて学習し、それを自分の骨とし肉とし、活動の確固たる指針とするとともに、保守主義や消極性、利己主義を一掃し、活動において革命的熱意と創造的積極性を遺憾なく発揮するようにしなければなりません。
 党組織はまた、すべての科学者、技術者、教員、文化人たちが、社会主義制度下で労働は最も神聖なものであることを十分認識するよう、彼らに対する教育を強化すべきです。こうして、彼らのあいだで労働をさげすみ嫌う、小ブルジョア思想と利己主義を根こそぎにしなければなりません。

 各級党・国家・経済機関の幹部は、これまでの成果に自己満足せず、緊張した動員態勢を堅持するとともに、安逸と保守主義、停滞に反対して積極的に闘うべきであります。

 現在、党・国家・経済機関の幹部には、極めて重大な責任が負わされています。

 わが党は、外国が3回の5か年計画によって到達した経済発展水準を、2回の5か年計画で追い越し、彼らとともに共産主義社会を建設する雄大な闘争綱領をうちだしています。各級党組織と幹部が、千里馬を駆る勢いで進む大衆を正しく組織し、保守主義と消極性、自己満足と安逸に反対し、創意性と積極性を発揮して闘うならば、党が示した目標は十分達成できるでありましょう。

 私は、党・国家・経済機関の幹部が、高度の責任感をもって革命的に仕事をし、社会主議建設で新たな高揚を起こすことを期待するものです。
                                                
出典:『金日成著作集』12巻

<参考>柞蚕(さく‐さん) ヤママユガ科の大形のガ。体と翅は黄褐色で白斑がある。幼虫は緑色で、ナラ・クヌギなどの葉を食べて成長、ヤママユに似て褐色を帯びた繭を作る。原産地は中国。日本では長野県で飼育。−広辞苑第6版より引用。


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