金 日 成

人民軍内における党の政治活動を強化するための課題
朝鮮労働党中央委員会総会での結語 
1958年3月8日

 このたびの党中央委員会総会では、人民軍内における党の政治活動を強化する問題を討議しました。総会でこの問題を討議したのは、人民軍内で党の方針に反する党の政治活動がおこなわれているとか、大きな問題があるからではありません。

 それではなぜ、人民軍内における党の政治活動を強化する問題を党中央委員会総会で討議したのでしょうか。

 人民軍内に党組織がつくられてから、党中央委員会政治委員会では各時期ごとに、人民軍内での党の政治活動の方向を正確に示しました。しかし、人民軍内の政治活動について党中央委員会総会で全般的に取り上げたことはありませんでした。このたびの総会は、人民軍創建10周年を契機に、人民軍内における党の政治活動を改善し、人民軍を強化する目的で招集されました。

 近年、帝国主義者は、ハンガリーの反革命事件を契機にして「反共」キャンペーンを強化し、わが国に対しても悪辣な政治攻勢を加えています。敵は、反党分子や政治的に不健全な連中を通じて、わが党内に反革命思想を流布しました。

 党代表者会議で批判されたように、反党分子は、修正主義を密輸入して、その毒素を国内にかなり伝播させました。修正主義の思想的影響は、一部の勤労者とインテリに及び、それが軍隊にも波及するようになりました。それで最近、党中央委員会常務委員会は、人民軍内における党の政治活動を点検しました。その結果、反党分子は、人民軍内にも修正主義の思想的毒素を少なからずまき散らしたことが判明しました。

 我々が長期間敵と対峙しており、今後も対峙していなければならない状況下で、反党分子が伝播した修正主義の毒素を一掃することは、極めて重要な問題であります。

 敵の奇襲を防止し、社会主義の獲得物を固守し、祖国を平和的に統一するためには、人民軍を強化しなければなりません。人民軍の強化では、最新の軍事技術で装備するのも重要ですが、さらに重要なのは、すべての軍人をマルクス・レーニン主義思想と社会主義的愛国主義思想で武装させることであります。もちろん、人民軍は、朝鮮労働党に忠実な党の軍隊であり、これからも党の指導のもとに、与えられた革命課題を立派に遂行するであろうことは疑いの余地がありません。しかし、我々は、人民軍を強化するための努力をつづけ、軍隊内での党の政治活動をたえず改善しなければなりません。

 このたびの点検を通じて、これまで人民軍内における党の政治活動が基本的には党の示した方向で正しくおこなわれてきたが、まだ党の要求する水準には達しておらず、いろいろと重大な欠陥をもっていることが明らかになりました。

 人民軍内における党活動の主な欠陥は、党員の党生活が健全におこなわれていないことです。

 党生活は、党員を教育する学校であります。党生活が健全におこなわれていれば、万事が順調に進み、それが健全におこなわれなければ、党員が誤りを犯すようになり、すべてが順調にいかなくなります。したがって、すべての党員は、積極的に党生活に参加し、党生活を通じて、みずからをたえず鍛練しなければなりません。

 ところがこれまで、軍隊の少なからぬ幹部は、党生活に正常に参加せず党の統制から離脱し、党性の鍛練を怠りました。ことに、連隊長以上の幹部は、初級党会議にもよく参加しませんでした。また、初級党会議では、幹部に対する批判が活発におこなわれませんでした。軍事委員会でも幹部の日常生活を知らないので、彼らの欠陥を適時に批判できませんでした。結局、幹部を批判し教育し、統制するところがなかったのです。

 少なからぬ将校は、かつては軍功も立て、わが党と我々の社会制度を守るために献身的にたたかいましたが、その後、党生活によく参加せずマルクス・レーニン主義的思想鍛練を怠ったため、しだいに自由主義が助長されて、党の組織規律と軍事規律に違反し、本務の遂行と軍事訓練に熱心に参加しなくなり、ついには、重大な誤りを犯すまでになりました。

 党中央委員会政治委員会では、既に、1954年に、人民軍に対する指導を強化する問題について討議したことがあります。当時は停戦が成立したからといって、一部の軍人が規律に違反し事故を起こし、将校のあいだに好ましくない傾向があらわれたため、規律と党生活を強化するよう強く要求しました。その後、人民軍の活動には多くの改善が見られましたが、いまなお、そうした欠陥は完全になくなっていません。部分的な現象ではありますが、将校のあいだには、まだ官僚主義と軍閥主義が残っており、解説と説得の方法で隊員を教育するのでなく、むやみに処罰することが多く、部下の指導を誤ってかなりの事故を発生させています。

 軍隊は集団的に生活し教育を受けているため、規律や党生活をはじめ、すべての面で地元の党組織より高い水準にあるべきですが、実情はそうでありません。軍隊内における反党反革命分子との思想闘争も活発におこなわれず、指揮官の水準も高いとは言えません。

 一口に言って、人民軍内に健全な党生活気風がなく主体性が確立されていないため、一部の指揮官と政治幹部が、党生活から遊離し、政治的感覚がにぶり、規律に背く行為があらわれました。

 これまでの人民軍内の党活動にあらわれた主な欠陥の一つは、マルクス・レーニン主義と社会主義的愛国主義の教育が力強くおこなわれなかったことです。

 軍隊内の思想教育活動が不十分であったため、修正主義者と分派分子が潜入して毒素をふりまくすきが生じました。人民軍内で党の求めるとおり、社会主義的愛国主義とマルクス・レーニン主義の教育を強化していたならば、そのような毒素は絶対に入ってこなかったでしょう。社会主義建設が急速に進捗しているこんにち、軍人を社会主義的愛国主義思想で武装させずには、社会主義制度を防衛する人民軍の本来の任務は忠実に遂行されません。

 それでは、これまでに総政治局が党の求める水準で正しく活動できなかったのはなぜでしょうか。

 それは、崔鐘学をはじめ、総政治局内の一部の幹部が思想的に動揺したからであります。彼らが動揺しはじめると、軍内部に潜んでいた反党分子がそれを奇貨として、軍隊内に修正主義的思想毒素をふりまきました。総政治局長は、それを断固退けるのではなくおじけずき、下部の一部の者は、修正主義の思想毒素が蔓延するのを放任しました。一方、反党分子と分派分子は、こうした事態を利用して反党的、修正主義的思想毒素を積極的に広めました。

 このような実情で、最近、人民軍内の党活動は、修正主義者および反党分子との思想闘争において全党と同一歩調をとることができませんでした。反党分子を粉砕し修正主義に反対し、マルクス・レーニン主義の純潔を保ち、革命活動の各分野に対する党の指導を確立するための全党の闘争において、人民軍内の党組織は消極的な防御にとどまり、積極的に足並みをそろえることができませんでした。これは極めて残念なことです。

 もちろん、将校と人民軍内の政治機関がすべて動揺したわけではありません。総政治局が正しい指導をおこなわなかったため、下部の人たちが積極的にたたかえなかったのだと考えます。軍人のなかには、闘争すべきかどうかを判断できずに沈黙していた人や、闘争の方法を知らないために大胆に抵抗できなかった人、まずやって見るべきだということで闘争を試みた人もいることでしょう。

 このたび、党中央委員会が、人民軍内における党の政治活動を点検したのは全く正しい措置でした。

 それでは、人民軍内の政治機関と党組織が、これまで党の政治活動で犯した欠陥を是正できるでしょうか。私は、十分に是正できると見ています。

 こんにち、我々が示す人民軍内における党の政治活動の方向は2つであります。1つは、政治生活、党生活を強化することであり、他の1つは思想教育活動を強化することであります。このたびの総会の基本精神がこれです。今後、人民軍ではこの方向に従って、党の政治活動を改善すべきです。
 何よりも、人民軍内の党組織体系を改め、党生活を強化しなければなりません。

 現在、人民軍各部隊の党活動は、政治部の唯一的な指導を受ける体系になっているため、党生活の指導に一連の欠陥があらわれています。

 第1の欠陥は、政治部が上級機関だけに拘束され、集団的な指導と統制下におかれていないことです。

 政治部長がすべて有能で政治水準が高ければ、隊内の党活動と政治活動を能動的に指導できるでしょうが、いまはそうでありません。人民軍が創建されて10年しかたっておらず、ことに軍隊内の党員が戦前にはおこなわなかった党生活を戦時中にはじめたので、政治部長の党生活の経験は極めて未熟をものです。現在、少なからぬ政治部長は、上部の指示を正確に把握せずにそのまま下部に示達しています。総政治局の活動も正しくおこなわれていません。総政治局が党中央委員会の決定を受けたなら、その具体的な実行対策を立ててから下部の党組織に示達すべきですが、それがなされていません。

 このように、政治部長の水準が低いうえに、ひとりで党の政治活動を計画し実行するので、仕事が順調に運びません。

 第2の欠陥は、党生活を通じて党員の将校を日常的に教育し鍛練させるように、党組織体系が確立されていないことです。

 これまで人民軍には、初級党組織しかありませんでした。人民軍の現状では、初級党組織だけですべての党員の党性を十分に鍛えることはできません。

 もちろん、わが党の組織体系は、初級党組織を基礎にしており、党員はすべて初級党組織で党生活をおこなうようになっています。したがって、将校も当然、初級党組織で教育と統制を受けなければなりません。ところが現在、多くの党員の将校がいろいろな口実をもうけて初級党会議にもよく参加せず、党員の下士官や兵士は、将校を辛らつに批判していません。その結果、多くの将校が政治生活から遊離し批判も受けずに生活しています。そして、何かの問題が起きると、党委員会にいって批判を受けるようになります。

 人民軍内の初級党組織が、党員の党生活を掌握し統制できるほどに強化されておらず、また、政治機関が党の示した方向に従って活動を独自に指導できる水準に達していない状況下で、現在の党組織体系は実情に合致しません。人民軍内における党の政治活動が満足におこなわれない主な原因の一つがここにあります。

 人民軍内における党の政治活動を強化するため、人民軍全般に党委員会制を設けるべきです。

 人民軍としては、人民軍党委員会を設け、党中央委員会常務委員会の指導のもとに活動するようにし、軍団と師団、連隊にもそれぞれ党委員会を組織すべきです。また、大隊には初級党委員会を組織し、中隊には初級党組織を設けるべきです。

 党委員会は、党の積極分子でかためるべきです。党委員会を少人数で構成すべきでなく、多くの党員を参加させて集団指導を円滑におこなえるようにしなければなりません。

 人民軍党委員会には、集団軍や軍団からも参加し、総政治局の勤務員や政治幹部、軍事幹部も加わるべきです。連隊党委員会には、連隊長と政治担当副連隊長を必ず加えるべきです。

 過去には、連隊党委員会に連隊長と政治担当副連隊長が入りませんでしたが、これは間違っています。連隊長と政治担当副連隊長が党委員会の活動を知らないで職務を遂行できるでしょうか。連隊長が連隊党委員会の委員に入っていなければ、連隊党委員会がある仕事を計画しても、彼はそれを考慮に入れずに仕事を組織する場合があると思います。そうなれば、党委員会の計画は実行できなくなります。それゆえ、党委員会には、部隊の責任幹部が必ず入っていなければなりません。

 党委員会の責任者としては、党歴と能力に従って政治部長か部隊長がなり得ると思います。

 人民軍内の党委員会は、2つの機能を果たさなければなりません。

 第1に、人民軍内の党委員会は、政治機関の活動を指導すべきです。

 例えば、反革命との闘争を強化すべき党中央委員会の決定が示達されたなら、従来のように総政治局長が独断で、ああせよ、こうせよと指示するのでなく、まず人民軍党委員会で集団的にその実行対策を討議すべきです。そうして決定がなされたら、それにもとづいて総政治局長が活動を進めるべきです。総政治局長には、党委員会の決定を実行する義務があるのみです。

 総政治局は、人民軍党委員会所属の部署であります。人民軍党委員会は、常任機関ではなく、選挙された指導機関であるため、そこで決定された問題を総政治局が実行しなければなりません。つまり、従来は総政治局長がひとりで考え、独断専行していたものを、これからは党委員会が集団的に討議して対策を立て、下部の活動も党委員会が集団で監督し統制するようになります。また、人民軍党委員会では、総政治局の活動を批判するようになるので、総政治局を監督する機関がさらに一つ生まれたことになります。

 軍団、師団、連隊の党委員会も、このような方法で活動しなければなりません。

 第2に、人民軍内の党委員会は、幹部の党生活の指導と統制を強化すべきです。

 党委員会に軍事幹部と政治幹部が入って、そこで幹部問題、幹部の党生活の問題、戦闘・政治訓練の問題をはじめ、あらゆる問題が集団的に討議されるようになるので、これからは軍事幹部も党活動に参加し、すべての人が党の統制を受けるようになります。党委員会を正しく構成し、そこに幹部を参加させて日常的に教育と批判をおこなえば、彼らの党生活を改善することができます。

 これまで軍団政治部長は、集団軍政治部の統制を受けましたが、月に1、2度集団軍に行く程度だったので、集団軍では彼らが活動と生活をどのようにおこなっているか把握できませんでした。しかし、軍団に党委員会が組織されれば、事情は変わります。軍団党委員会は、政治部長や軍団長の党生活を正確に把握できるので、彼らに対する党の統制を強化できます。幹部は、これからは初級党組織からも党委員会からも統制を受けるようになります。こうなれば、幹部が安逸に流れ思想的に立ち後れるような場合は適時に是正させ、すべての幹部を立派に活動させることができます。

 人民軍内の党委員会制は、幹部を大切にし保護するすぐれた制度です。現在、人民軍内の党員の大部分は将校であります。将校は若いときに入隊した人たちであり、祖国解放戦争の時期に多くの戦闘に参加し、洛東江まで進撃し、悪戦苦闘して後退してきた人たちです。彼らは、祖国の高地を血潮をもって守りぬいたわが党の貴重な財宝です。こういう人たちを大切にし立派に教育するのは、党組織の重要な任務です。彼らを適時に教育せず放任しておき、誤りを犯してから悪者扱いにして追い出すならば、人民軍の大事な幹部源泉がなくなるでしょう。このたび、軍隊内の党組織体系を改編する主な目的の一つが、将校を党生活にもれなく参加させ正しく教育することにあります。

 次に、軍人のあいだで思想教育活動を強化しなければなりません。

 私はこの機会に、人民軍の思想教育を強化する問題と関連して、軍隊内の党政治幹部と軍人が正しく認識すべきいくつかの問題について、先に述べたいと思います。

 何よりも、人民軍がわが党の軍隊でなく、「統一戦線の軍隊」であるという、修正主義者たちの詭弁に対して正しい見解をもつべきです。

 党代表者会議や第324軍部隊でも述べたことですが、人民軍は創建当初からわが党の軍隊です。人民軍は、朝鮮労働党が組織し、党の示す革命任務と課題を遂行するためにたたかう軍隊であります。

 人民軍内には、労働党組織だけが存在し、他の党組織の存在は許されません。軍隊内に統一戦線はありえません。人民軍は、朝鮮労働党によってのみ指導されます。朝鮮労働党は、わが国で人民民主主義革命を指導したし、社会主義革命を指導しています。人民軍は、朝鮮労働党の導く革命偉業の実現を保障する武力です。これは、いつになっても変わるものではありません。

 もちろん、人民軍の具体的な闘争課題は、各時期における党の闘争方針に従って変わることがあります。しかし、人民軍が朝鮮労働党の軍隊であるという事実だけは変わるものでありません。我々は、人民軍が、常に、わが党の指導によってのみ行動できるという原則を絶対に変えることはできません。

 人民軍が「統一戦線の軍隊」であるというのは、わが党に対する冒涜であります。これは、人民軍を階級闘争から後退させ、党の指導のない無力な存在にし、わが党を武装解除しようとするものです。

 こんにち、人民政権が強力で、革命が力強く前進しているのは、朝鮮革命の導き手であるわが党が、みずからの軍隊、人民軍をもっているからです。

 人民軍を党の指導から引き離そうとする者は、すべて反党・反革命分子です。彼らの目的は、わが党が革命課題を遂行できないようにし、朝鮮革命を挫折させることです。我々は、人民軍をわが党から切り離そうとするあらゆる思想傾向と策動に反対して強くたたかわなければなりません。

 次に、抗日武装闘争の革命伝統を継承する問題を正しく認識しなければなりません。

 反党分派分子は、抗日武装闘争の革命伝統に反対しましたが、わが党が抗日武装闘争の革命伝統を継承して何が悪いのでしょうか。長いあいだ日本帝国主義植民地支配下にあった朝鮮人民の歴史に継承すべき闘争の伝統がないならば、それは極めて恥ずべきことと言わざるをえません。帝国主義者の侵略を受けた他国の人民はすべて解放闘争をおこなったのに、朝鮮人民は日本帝国主義侵略者に国を奪われても腕をこまぬいていただけだとすれば、それは決してよいことではありません。しかし、我々は、抗日武装闘争の栄えある伝統をもっています。ありもしない闘争伝統をあると主張するなら間違っていますが、伝統のあるものを継承するのは決して悪いことではありません。

 他の国々は早くからブルジョア革命をへて資本主義的発展の道を進みましたが、わが国はそれをなしえなかったことを、私は、常々残念に思っています。中国では、康有為、梁啓超などがブルジョア改革運動をおこないました。わが国では金玉均がそのような運動を起こしたと見るべきですが、一部の学者は、深く研究もしないで彼に親日派の烙印を押しました。周知のように、日本は東洋でいちばん早く資本主義的発展の道に入りました。それゆえ、金玉均は、資本主義日本を利用してわが国を開化しようと試みました。ところが、そのうち、わが国が日本に侵略されるようになったので、彼は結局、親日派ときめつけられたのです。彼が親日派かどうかは、今後さらに研究を深めるべき問題だと考えます。

 わが国における資本主義的改革としては明確をものはありませんが、共産主義運動は10月社会主義革命の影響のもとに、他の国々に後れをとらず早くから発展しました。わが国の共産主義運動は、初期には、もちろん、本質的な弱点をもっていました。それは、共産主義運動の隊列内に分派が発生したことでした。分派分子の策動によって共産党は破壊され、革命運動は大きな損失をこうむりました。

 しかし、1930年代に入って、日本帝国主義者の武力弾圧がいっそう過酷になったとき、朝鮮の真の共産主義者たちは少しも屈することなく、武器をとって日本帝国主義に反対する遊撃闘争を展開しました。これは、朝鮮人民にとって非常に光栄なことです。

 抗日武装闘争は、朝鮮共産主義者の指導のもとに展開された闘争であり、抗日遊撃隊は、労働者、農民からなる朝鮮人民の革命的武力でありました。抗日遊撃隊は、日本帝国主義を打倒して祖国の独立を達成し、解放された祖国に人民政権を立て、地主の土地を没収して農民に分与し、労働者に8時間労働制を実施するためにたたかいました。抗日遊撃隊はまた、闘争の初期からソ連、中国人民との国際主義的連係を強め、武力でソ連を擁護しました。朝鮮共産主義者が抗日武装闘争を通じて中国革命を支援した事実については、中国人も高く評価しています。

 祖国解放のために、国際共産主義運動の発展のために朝鮮共産主義者の展開した勇敢な抗日武装闘争が国際的に高く評価されているのに、何のために朝鮮人がこれを光栄としないで反対するのでしょうか。他に野心をもっているものでなければ、誰も抗日武装闘争の伝統を否定することはできません。抗日遊撃隊は、マルクス・レーニン主義的な革命軍であり、「独立軍」や「義烈団」「義勇軍」と比較すべきものでありません。

 人民軍は、15年間にわたって不屈の闘争を展開した、光栄ある抗日遊撃隊の革命伝統を継承した軍隊であります。我々は、既に抗日武装闘争当時、祖国解放後には抗日遊撃隊を根幹にして人民の軍隊を組織する目標を立てていたし、解放後人民軍を組織するときに、人民軍は抗日遊撃隊の輝かしい伝統を継承することを宣言しました。

 抗日遊撃隊では、指揮官と隊員は、飢えもともに忍び、かがり火のそばで枕をともにし、隊員が負傷すれば、指揮官が背負って歩きながら戦いました。抗日遊撃隊はまた、常に人民を愛し、人民に依拠して戦いました。このように、上下が骨肉のように愛しあい、人民とかたく団結して戦った抗日遊撃隊の立派な伝統を人民軍が継承して何が悪いのでしょうか。

 抗日遊撃隊の伝統を継承するということは、決して抗日武装闘争の参加者だけが人民軍の根幹になるべきだということを意味しません。いうまでもなく、人民軍を組織する当初は抗日武装闘争の参加者が根幹になりました。しかし、人民軍は抗日武装闘争の参加者が軍隊に多数いるかいないかにかかわりなく、抗日武装闘争の革命伝統を継承しなければなりません。この革命伝統の継承において最も重要なのは、抗日遊撃隊の不屈の闘争精神を継承することであります。

 アメリカ帝国主義者との苛烈な戦争をおこなっていた祖国解放戦争当時、人民軍の軍人は、かつて抗日遊撃隊は後方も兵器の供給もない困難を状況下においてさえ、強大な日本帝国主義と戦って勝利したのに、こんにち、大砲、機関銃のような近代兵器と大部隊をもってアメリカ帝国主義に勝てないはずがないという、確信をもって勇敢に戦いました。人民軍軍人が発揮したこうした革命精神はどこから生まれたのでしょうか。それは、ほかならぬ抗日遊撃隊の闘争精神を継承したからであります。

 人民軍が抗日遊撃隊の伝統を継承したからこそ、アメリカ帝国主義侵略者との3年間の戦争で勝利し、祖国解放戦争を通じて優秀な幹部を数多く育成できたのです。そして、抗日遊撃隊に根源をおく人民軍は数十万の大軍に成長しました。そればかりでなく、人民軍は、アメリカ帝国主義を撃破した立派な戦闘経験をもつ強力な軍隊になりました。

 人民軍は、抗日遊撃隊の革命伝統をあくまで継承し、アメリカ帝国主義に反対する祖国解放戦争で得た貴い経験を十分に生かさなければなりません。

 人民軍内における党の政治活動で解決すべき重要な問題は、軍人の教育活動で教条主義を一掃することです。

 軍事教育において教条主義に反対しなければなりません。

 軍事教育において教条主義に反対するというのは、社会主義諸国に共通の軍事記号などを無視するとか、外国の先進的な軍事科学・技術の導入をやめるということでは決してありません。アメリカをかしらとする帝国主義は、社会主義諸国の共通の敵であるため、有事の際には社会主義諸国の軍隊が共同で帝国主義と戦うこともありえます。したがって、社会主義諸国軍隊間の軍事学的統一化をはかる必要があります。例えば、軍事記号などを統一し、わが国でつくった地図を外国人が見てすぐわかるようにし、また、外国製の地図を朝鮮人が見てわかるようにすべきです。わが国の軍事記号をソ連や中国のものと異なったものにする必要はありません。兵器の規格も社会主義諸国が同一の弾薬を使用できるようにすべきです。軍事記号や兵器の規格を外国のものと統一化するのは教条主義ではありません。

 我々は、外国の先進的な軍事科学と軍事技術も学ばなければなりません。

 我々が反対するのは、外国の戦法や軍事教範をそのまま受け入れることです。軍事訓練においてわが国の特殊性を考慮せず、外国のものをそのまま模倣するならば、それは教条主義であります。山の少ない国では平地における射撃規定だけで足りるのですが、山の多いわが国の場合は、それだけでは不十分です。我々には、山上からの下射ち規定や山の下からの上射ち規定も必要です。部隊の組織編制も外国のものを機械的に真似てはなりません。ある国の砲兵編制では平地射撃が基本をなしているため直射砲が多いのですが、山地の多いわが国には曲射砲が多くなければなりません。

 部隊の組織編制、訓練、軍事戦法などの問題では当然、自国の実情を念頭におくべきです。軍事教育において社会主義諸国間の軍事学的な共通性を正しく保障すると同時に、わが国の特殊性を十分に生かすべきです。

 軍人の政治教育においても、教条主義に徹底的に反対しなければなりません。

 いうまでもなく、軍人には、マルクス・レーニン主義の一般的原理を教えるべきです。そして、すべての軍人をマルクス・レーニン主義の世界観で武装させるべきです。しかし、マルクス・レーニン主義の一般的原理を朝鮮革命にどのように適用するかは、わが党の歴史と路線と政策から学ばなければなりません。マルクス・レーニン主義の一般的原理を学び、外国の経験を参考にするのはよいことですが、それをうのみにしてはなりません。

 軍隊では一時、外国に流布されていたある経済理論の問題をもって講演や討論をおこなったとのことですが、それが果たして人民軍に必要なものでしょうか。人民軍では軍人にそんなものを講義すべきでなく、わが国農業の発展や経済建設状況を十分に教えるべきです。

 人民軍内の政治教育の方向については、党が早くからそれを明示しています。人民軍内の政治機関と政治幹部は、党の政治教育方向に従って軍人の思想教育を強化しなければなりません。

 軍隊内の政治教育において重要なのは、すべての兵士と将校を社会主義的愛国主義思想で武装させることであります。

 こんにち、朝鮮人民の最大の敵は、南朝鮮を占領しているアメリカ帝国主義者とそれと結託した地主、買弁資本家、反動官僚です。したがってこんにち、朝鮮革命の重要な任務は、南朝鮮からアメリカ帝国主義者を駆逐し、地主、買弁資本家、反動官僚およびその「政権」を打倒することです。朝鮮革命の最大の原動力は、北半部の社会主義勢力であります。共和国北半部で社会主義革命を早く完成して社会主義勢力を各方面から強化し、それをかたく防衛しなければ、朝鮮革命の全国的勝利は達成できません。したがって、人民軍では社会主義的愛国主義教育を強化し、すべての兵士と将校を朝鮮人民の不倶戴天の敵、アメリカ帝国主義者とその手先に反対し、わが国の社会主義制度を守るため生命を賭してたたかう不屈の革命家に育成しなければなりません。

 軍人を社会主義的愛国主義精神で武装させるためには、各時期に示される党の路線と政策をそのつど、彼らに浸透させるべきです。

 軍人が党の路線と政策を知らなくては、それを貫徹することも、それを擁護して断固とたたかうこともできません。ところが現在、人民軍では党中央委員会の決定が通達されても、それを研究し実行する対策を正確に立てず、多くの場合、党中央委員会の決定を総政治局長の訓令をもっておきかえているため、軍人は党中央委員会の決定内容をよく理解していません。これは非常に間違っています。人民軍でも他の部門と同様に、党中央委員会の決定を掘り下げて学習し、その実行対策を正確に立てなければなりません。

 もちろん、党中央委員会の決定のなかには、直接、人民軍に該当しないものもあると思います。しかし、軍隊では党の決定をもれなく研究し、実行対策を立てるべきです。

 例えば、春のまきつけを適期におこなう決定などは、軍事問題とは別段関係がありません。しかし、人民軍は、敵の侵害から人民の生産闘争を守る責任を担っているだけに、党がいま何を求めているかを軍人に教えなければなりません。

 実例として、1956年12月総会の決定をもう一つあげてみましょう。総会決定の基本精神は、増産し節約しようというものです。したがって、軍隊では、軍人がこの決定に従って物質的な面において、さらに多くを節約し、質素に生活するようにすべきです。

 農業協同化に関する党の政策も軍人に教えるべきです。そうすれば、彼らは党が農村をどのように社会主義的に改造し、農村の階級関係と農業にどんな変化が起きているかを知るようになります。いま一部の軍人が、協同経営制度の優位性をよく理解していないのも、彼らに党の政策を十分に解説しなかったからです。

 現在、農村で進行中の社会主義協同化運動は、鋭い階級闘争であります。農業協同化が進むにつれて階級闘争はさらに激化しています。農村での階級闘争の影響が軍隊に及ばないとは断言できません。人民軍も社会からかけ離れた存在ではないので、階級闘争の影響が軍隊に波及しないとは限りません。農業協同化を嫌う一部の人の影響が部隊に浸透することもあり、また都市の一部の不純な商人の影響が部隊に入って弊害を及ぼす恐れもあります。それゆえ、これに警戒心をもって当たり、軍人のあいだでわが党の協同化方針をもって教育活動を活発におこなうべきです。そして、すべての軍人が、生命を賭して社会主義制度をあくまで守るかたい決意をもつようにすべきです。

 次に、人民軍幹部たちの同志的団結を強化し、すべての軍人を党中央委員会のまわりに結集するために積極的にたたかわなければなりません。

 幹部たちが、同志的に愛しあい、団結することが極めて大切です。人民軍の幹部は、すべてがともに戦った戦友たちです。彼らが団結できない理由は何もありません。

 我々の団結は、原則的な団結、思想的な団結とならなければなりません。ともに戦った戦友たちが、愛しあい助けあうようにというのは、欠陥に対して批判せず、黙認するか妥協せよというのでは決してありません。同志を心から愛するならば、その欠陥を厳しく批判し教育すべきです。そうあってこそ、真の団結がなされるのです。ある人は批判を叱責として受けとめ、恐れていますが、それは日常的な教育と鍛練が足りないからです。

 過去に私といっしょに戦ったある人は、会議で何の批判も与えずに帰すと、かえって不満足に思いました。批判に慣れると、それを恐れず驚きもしません。幹部は、すべてそうなるべきです。もちろん、批判を受ければ、気分はよくないでしょう。しかし、批判すべきことは批判してこそ、欠陥のある人を救うことができます。
 人民軍内の党員と将校の大部分は、祖国解放戦争で勇敢に戦った人たちです。そのような人を一人でも失うということは心痛の限りです。それゆえ、軍隊内で同志たちの欠陥はいち早く諭し、批判してやる気風を確立すべきです。そうすれば、革命同志相互間の原則的な団結がなし遂げられます。

 我々の団結は、党中央委員会を中心とする団結であり、党を擁護するための団結です。もし、自分のまわりに人々を集めようとする人がいるなら、それは極めて危険なことです。党委員会は、すべての幹部と軍人が、党に限りなく忠実であるよう教育し、常に党中央委員会のまわりに彼らをかたく団結させなければなりません。

 党がなければどんな革命課題も遂行できず、党は、革命の頭脳である党中央なしには存在しえません。軍隊内における党の政治活動を強化して、人民軍のすべての軍人と幹部が党中央委員会のまわりにかたく団結し、党中央に最大の忠誠をつくすようにしなければなりません。



<注釈> 金玉均(キムオッキュン・1851〜1894) 1884年のブルジョア改革の指導者。
 金玉均は両班出身であったが、封建制末期の先覚者として国の文明開化をめざして尽力した。彼の活動した19世紀後半期は、封建制度の危機が、その極に達した時期であり、ブルジョア改革が、機の熟した要求となっていた。
 彼は腐り切った無能な保守派政権を打倒し、国政を改革して自主的な国家の土台を築くことを熱望した。
 金玉均を中心とした開化派は、1884年12月政変を起こして反動保守派政権を打倒し、一時、政権の奪取に成功した。しかし、外部勢力の干渉と改革担当者の社会的・階級的制約により政変は失敗に帰した。
 しかし、彼の開化思想と実践活動は、朝鮮最初のブルジョア改革の試みとして進歩的役割を果たした。
                                                
出典:『金日成著作集』12巻


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