金 日 成

党活動の改善について
道・市・郡党委員長および人民委員会委員長におこなった演説 
1958年3月7日

 私はきょう、党活動について述べたいと思います。

 先ごろ、党中央委員会組織指導部は、郡党委員会に農業部と産業部、その他の多くの部署を新設したいという意見を提出しました。我々は、それに反対しました。ところが、その後また、郡党委員会の定員を少し増やしたいという申し出がありました。党中央委員会常務委員会では、提起された意見を討議し、それらの意見が、すべて正しくないという結論に達しました。

 郡党委員会の活動体系が、まだ確立していないように見うけられます。このような視点から欠陥を探すべきではないかと思います。

 党内の各部署がその活動を正しくおこなっていない欠陥は、地方の党組織にのみ存在するのではありません。私が2年間、党活動を全的に担当し、党中央委員会の各部署の活動を分析したところによれば、一部の部署は宙に浮いていました。それを知ってからは、すべての部署がそういうことなく、足を地にしっかりとつけて活動するようにしました。

 党中央委員会の各部署のこれまでの活動状況はどうだったでしょうか。少なからぬ活動家は、明確な目的もなしに、ただ事務室に座って、勝手に人を呼びつけてあれやこれやと干渉しました。その結果、何一つとして正しく処理できませんでした。

 かつて一時は、指導員が、党政策も明確に知らずに活動しました。指導員が、党中央の意図や常務委員会の意図さえ知らずに出歩いていたので、下部に行っても正しい指導ができず、ただ欠陥を暴くのみでした。空のふろしきを持って行っては、誤りや欠陥をあばき、それをいっぱい包んで持ち帰りました。それから何日か閉じこもって、何を改めよ、何を増産せよ、何をどうせよといった文書や、果ては、他人の家庭生活まで心配するいろいろな「指令書」や「決定書」などを作成して矢継ぎ早に下達しました。

 このように指導員が宙に浮いて歩き回っているので、党政策を学習する時間がなくなり、また戻ってからは不必要な各種決定書を作成するので、実務に追われて党政策を研究する時間がないのです。それで、彼らは党の意図と政策を明確に知ることができませんでした。

 そこで党中央委員会常務委員会は、第3回党大会以後、特に8月総会以後、党の活動体系を思い切って改編しました。

 党の活動体系を改めるに当たって示した主な課題は、第1に、党中央委員会のすべての活動家に常務委員会の意図を十分に認識させることでした。指導員が党の意図を知らなくては、地方に行って正しい指導をおこなうことができません。

 党中央委員会委員長の言うことと指導員の言うことが同じでなければなりません。各自が自分勝手なことを言ったのでは、党の声を聞き分けることができません。委員長の言うこと、副委員長の言うこと、指導員の言うことが、すべて同じでなければなりません。党中央委員会の活動家ばかりでなく、道党や郡党、初級党組織の活動家にいたるまでのすべての党活動家の言うことが同じでなければなりません。

 各級の党活動家が、党中央委員会常務委員会の意図と党の政策を明確に認識してこそ、それを正しく実行することができます。そこでまず、党中央委員会で委員長、副委員長が、直接部長や課長、指導員を集めて党の組織路線、反革命との闘争方針、工業政策、農業政策、基本建設政策など党の路線と政策を、各人が理解できるように解説することを制度化しました。このようにしてからは、新聞や講演原稿にも同じ声が反映され、すべての活動が党の意図と政策に立脚して進められるようになりました。

 第2に、指導方法の改善を主な課題として示しました。指導に当たる場合は、かつてのように欠陥をかき集めて持ち歩くのではなく、見つけた欠陥は現地で是正するよう援助し、その過程で得たよい経験だけを持ち帰るようにしました。

 かつて、おこなわれた党の点検も、点検と言えば人が驚くので、その呼び方を党の集中指導と改めました。以前には、指導のために出向いて講演や解説などをおこなって援助するのではなく、審問や内偵の方法で点検をおこないました。このような活動作風は内閣事務局にもあったし、またかつて朴永彬もそうしたやり方で党の点検をおこないました。彼は、権泰同のような人を洋服店に行かせて、誰が洋服を何着あつらえたかということまで調べさせました。このような調査にもとづいて、誰それが洋服を何者あつらえたのだから不正行為を働いたに違いないと言って、当人を呼びつけて高飛車に罪状を自白するよう厳しく追及するやり方をしました。党活動をこのようなやり方でおこなったので、大衆と遠ざかり、人々は党の点検と言えば震え上がりました。また、このような人に追従しないと首があぶないので、へつらう者があらわれるようになり、へつらわれる者はいっそう偉ぶって党の権威をふり回すようになったのです。

 そこでわが党は、1955年4月総会で官僚主義と党の権威をふり回すことに反対して強くたたかうことを提起しました。その後、ひきつづき、たたかった結果、こんにちでは、党の活動方法が基本的に改められました。

 それでは、集中指導は、どのようにおこなうべきでしょうか。

 例えば、指導グループがある工場を指導するため派遣されたとすれば、まず党の工業政策について講演をおこない、党中央は何を求め、何をしようとしているのか、その遂行方途は何かを認識させることから始めるべきです。

 党中央の意図を認識した党員は、自分の活動をみずから検討するようになります。党員は、自分の活動で党の要求にそわないものは何か、その誤りの責任は誰にあるかを率直に打ち明けるでしょう。こうして、みなが自己批判と相互批判を真剣におこない、すべての欠陥をさらけ出して、その原因を究明することになります。

 指導のため派遣された人は、党員大衆の見つけた欠陥を彼ら自身が改めるよう援助し、改める方途も党員たちとともに現地で見出すべきです。そうしてこそ、党の指導だと言えます。このような活動方法は、以前のように欠陥をあばいて持ち帰り、多くの決定書を作成して下達する活動方法よりははるかにまさっています。このような指導であってこそ、下部党組織の活動を実際に援助することになります。

 党活動家は、かばんを抱えてみえを張るため歩き回るのではなく、大衆相手の講演もおこない、朝起きては、主人の家の庭も掃き、大衆と食事をするなど、生活をともにしながら、彼らの心中も知り、誤りがあれば適時に正してやるべきです。

 省党の活動でも多くの改善がもたらされました。近ごろ、一部の閣僚が省党の活動に多くの改善が見られると言っていますが、正しい評価だと思います。

 以前に省党では、基本的な問題を度外視し、二義的な欠陥を取りあげて責任のなすり合いに時間を費やしました。その結果、多くの仕事をしながらも、何をしたのか分からないありさまでした。しかし、いまでは明確な目的をもって、党政策にもとづいて集中的に活動するので、立派な意見も多く出され、全党員が党決定の貫徹に積極的に参加しているとのことです。

 ここ2年のあいだ、党活動では確かに大きな転換が起きています。しかし、党の幹部事業では、いまなお重大な欠陥が持続しています。幹部の理解と育成、配置などが系統的に正しくおこなわれていません。

 そこで、今年のはじめに、党中央委員会常務委員会と組織委員会では、この問題を慎重に討議しました。ひきつづき部長会議でも討議しました。数回にわたる討議のすえ、党の幹部事業には、確かに重大な欠陥があるという結論を得ました。

 すべての活動の成果は、幹部によって決定されます。幹部事業を系統的に正しくおこなうか否かは、革命の前途を左右する基本的な問題であります。

 ところが、これまで党の幹部事業はどのようにおこなわれたでしょうか。多くの場合、幹部を十分に理解せず皮相的に取り扱いました。そして、各部門のすべての幹部に関心を払わず、郡党委員長クラスの幹部に注意を払うのが関の山でした。工場の多くの経済幹部と行政幹部については、ほとんど関心を払いませんでした。大体において、この部門の幹部は、履歴書を見てこれといった問題点がなければ、登用して配置しました。特に、過去に革命活動や獄中生活を少しでもした経歴があれば、頭から信じたものです。しかし、実際においては、ある人は革命運動に参加したのは昔のことで、長いあいだ革命活動から遠ざかって商売をしたり飲み屋を経営したりしました。また、革命活動をおこなっていたあいだも党の正しい指導を受けられなかったので、セクト主義や地方主義、家族主義がどんなものであるかもよく知りませんでした。いまでも数十年前に一緒に活動していた人同士で行き来しながら、悪巧みをしている者がいます。こうした連中を十分に検討せずに登用配置した結果、党に多大な損失をもたらしました。

 登用を誤った実例として、元司法省副相の朴k淑や元検事総長・趙誠模などをあげることができます。最高裁判所所長・黄世煥もかつて永興農民組合で少し活動したということで登用したのですが、司法部門の仕事に多くの弊害を及ぼしました。

 このような人たちを、革命を失敗させようとして故意に登用したのではもちろんありません。よいことをしようとしたのが、結果的に大きな誤りを犯したのです。その原因は何でしょうか。それは、党の幹部事業の体系がまだ確立されていないからです。

 我々は、幹部に対する理解がまだ不十分です。率直に言って、党中央委員会の部長たちが自分の管下の活動家についてよく知りません。知っていることと言えば、その人の外貌がどうか、誰の鼻が大きいか小さいかといったようなことを知っている程度です。重要なのは、その人の頭に何があり、彼が何を考え、誰のために働こうとしているのかを知ることです。

 正直なところ、産業部長に工場支配人のうちから党のため水火をもいとわず働く党性の強い人を何人くらい保証できるかと聞けば、すぐには恐らく一人も名指しできないでしょう。産業部長だけが、そうなのではありません。協同経営部長は、もっと自信がないでしょう。なぜこうなのでしょうか。それは、下部の人たちと接触せず、呼吸をともにせず、彼らを理解しないからです。一緒に仕事をしたことも、つき合ったこともなく、履歴書や評定書だけで幹部を正しく理解することはできません。

 幹部事業をこのようにおこなったため、隊列内に悪い連中が入り込んだのも気付かず、彼がどういう悪事を働いたかも知ることができませんでした。

 そこで我々は、党中央委員会各部署の1957年度の活動を総括する際、幹部事業の改善を第1の課題として提起したのであります。

 党中央委員会では、幹部事業体系を改めました。党中央委員会幹部部を廃止し、各部署で、その部門の幹部事業を直接おこなう新しい体系を立てました。

 我々は、党中央委員会各部署の第一の活動が幹部事業であることを強調しました。幹部がすべてを決定します。すべての幹部が、健全で思想水準が高く、党性が強く、ひとしく党政策を支持すれば、社会主義革命と社会主義建設も、祖国の平和的統一も成功裏に実現します。幹部事業が正しくおこなわれなければ、何ごとも順調にいきません。それゆえ、我々は、これまでもそうでしたが、特に、こんにちでは幹部事業を非常に重視しています。

 党中央委員会の各部署はいまからでも、管下の幹部を理解する仕事に着手すべきです。

 産業部は、金属工場、化学工場、そのほかの工場の幹部をすべて理解しなければなりません。どの工場の支配人の党性と思想水準はどの程度で活動能力と知識水準はどうか、彼が党の決定と指示をどのように実行し大衆との関係はどうか、活動を正しくおこなっているかどうかなどについて知っているべきです。

 また作風に欠陥のある人がいれば、それを正してやり、知識や技術が劣っていればそれを補充するよう同志的な援助を与えるべきです。産業部では何よりもまず、こうした活動を正しくおこなうべきです。もちろん、産業部が管下の幹部たちを単独で全部扱うのは難しいと思います。それゆえ、活動範囲を分けて、一部の幹部は道党が扱うようにすればよいでしょう。

 産業部は、工場の幹部だけでなく、省の幹部についても理解すべきです。相の活動状態や副相の考えていること、彼らの長所と欠点、党性の程度、下部に対する指導状況、彼らに必要な援助などについてすべて知っているべきです。

 他の部署でも、このような方法で管下の幹部について知っていなければなりません。

 もし、党中央委員会の各部署が以前からこのように活動していたなら、最高人民会議常任委員会で露呈されたような重大な欠陥は未然に改めることができたはずです。以前には、最高人民会議常任委員会を指導する党の部署がありませんでした。党の統制からはずされていたため、金?奉は大統領だの王様だのと言って自分のところで働く技術秘書たちを宮女と称し、常任委員会が党より上位にあるといろいろ勝手なことを言ったものです。結局、常任委員会を無法地帯に変えたのであります。

 もし、以前から党中央委員会に行政部のような部署があって、常任委員会、裁判所、検察所、内務省や軍隊内の幹部を理解していたなら、こんにちのような事態は発生しなかったことでしょう。

 幹部事業を正しくおこなえば、わが党が強化され、分派も生まれず、例え、分派が生じてもそれを直ちに知ることができ、党の中核分子を見分けることができます。

 幹部事業を改善するため、党中央委員会の幹部部を廃止することにしました。

 これまでは、党中央委員会に幹部部が別個に存在していたため、他の部署では幹部事業に関心を払いませんでした。そして、幹部が必要となれば、いろいろと注文をつけて幹部部が幹部を任命してくれるのを待つのみでした。幹部の倉を持っているわけでもない幹部部が、要望どおりの人をすぐに配置できるでしょうか。これは無理な相談です。各部署では、他に頼らずに、必要な幹部をみずから養成して登用すべきです。これから、各部署では幹部事業を直接担当すべきです。そして、組織指導部では、各部署の幹部事業を総合し、党機関の幹部と勤労者団体の幹部を責任をもって扱うべきです。

 道・市・郡党でも、このような体系で幹部事業をおこなわなければなりません。

 次に、郡党委員会の活動について述べたいと思います。

 郡党の活動を検討してみると、確かに郡党委員会の活動が正しくおこなわれていないことがわかります。

 郡党委員会が、すべての活動を一手に引き受けておこなおうとするので、人手不足の問題が起こるのです。郡党委員会の活動を完全に党活動へと転換させる必要があります。

 党活動とは何でしょうか。党活動の一つは、党の内部活動であり、他の一つは行政・経済活動の指導であります。

 郡党委員会が、当該単位の活動を党の活動方法で指導せず、すべての活動の実行者となろうとするので、人手不足をきたして多忙をきわめ、仕事のわりには成果があがらないのです。それゆえ、郡党委員会の活動の基本的方向を正しく認識する必要があります。

 郡党委員会は、党の内部活動、党の内部生活を組織するとともに、行政・経済活動全般に対する指導をおこなうべきです。それでは、郡人民委員会はどのような活動をおこなうべきでしょうか。郡人民委員会は、経済・文化活動をおこなう行政機関です。このように郡党委員会と郡人民委員会の活動方向をそれぞれ明確に区分しなければなりません。

 既に述べたように、郡党でも党中央委員会のように、多くの部署を設けるとか、その定員を増やす問題は提起されません。郡党委員会には、組織部と宣伝部以外の部署を設ける必要がありません。

 工場や企業所の多い郡では、郡党に産業部を設けていますが、これも将来、再考慮の余地があると思います。郡党産業部は、どのような仕事を担当しているのでしょうか。郡党産業部は、工場党組織が取り扱う問題にいたずらに干渉し宙に浮いています。

 農業部の場合も同様です。もし、皆さんの意見どおり、郡党委員会に農業部を設ければ、党活動はおこなわず、いつも協同組合管理委員会に出かけて農作業に対する不要な干渉をおこなうようになるでしょう。

 工場や農村の党組織の活動において、生産と遊離した活動は考えられません。社会主義建設において生産と遊離した革命課題はありえません。したがって、工場や農村の初級党組織は、生産の問題を直接掌握して主動的に指導すべきです。

 それでは、郡党委員会はどのような活動をおこなうべきでしょうか。郡党委員会は、組織部と宣伝部を正しく動かして管下の初級党組織をよく援助しなければなりません。初級党組織を援助して工業と農業がいずれも順調な発展を遂げるようにしなければなりません。郡党委員会は、初級党組織を直接指導する党機関であります。したがって、郡党委員会の活動の中心は、初級党組織の指導におかなければなりません。

 初級党組織に出向いてどうすべきでしょうか。

 例えば、内務機関の初級党組織に出向くとしましょう。このような機関の党組織を指導するため、郡党に必ず法律に通じた人がいなければならないでしょうか。そうでもありません。内務機関の指導で大切なのは、党の要求する遵法性とプロレタリアート独裁の機能を正しく保障し、これに対する党の政策と原則をすべての内務員に徹底して認識させることです。要は、内務員が反革命との闘争を正しくおこなうよう指導することであります。内務機関の党組織では、党員がこの活動をどのようにおこなうかによって、党生活状況を評価すべきです。このように、内務員の党生活を指導する過程で中核が育成され、積極分子と消極分子、堅実を人とそうでない者とを判別することができるでしょう。したがって、郡党には内務機関の活動を専門に担当する部署をおく必要はありません。

 また、人民学校の党活動を指導するとしましょう。人民学校の活動で大切なのは、人民教育事業を正しくおこない、児童に対して党の求める社会主義的愛国主義教育を立派におこなうことであります。これが正しくおこなわれているかどうかを、党が点検し指導すればよいのです。したがって、郡党に人民教育事業を担当する部署も別に設ける必要がありません。

 工場や農村の初級党組織を指導する場合でも、原則には変わりがありません。郡党委員会は、工場と農村の党組織がわが党の工業政策と農業政策を正しく実行するよう具体的な指導と援助を与えなければなりません。

 生産部門の初級党組織を指導する場合、その活動状況は当然、生産の問題と結びつけて評価するようになります。初級党組織で人を評価する際にも、主として彼の生産活動を基準にします。したがって、郡党の活動家は、直接現地に行って幹部の生産参加状況を調べる過程を通して彼らを詳しく知るとともに、党員を党の経済政策の実行へ奮起させるべきです。

 これが、郡党委員会が、経済指導分野でなすべき党活動であり、政治活動であります。郡党は、郡人民委員会で働く100余名の行政・経済活動家を正しく動かし、郡内のすべての党組織と党員を奮起させればよいので、郡党委員会に産業部や農業部など、多くの経済部署を設ける必要はありません。

 それでは、党中央委員会に多くの部署を設けるのはなぜでしょうか。それは、党中央が党の政策を作成、研究し、各省と中央機関に対する政策的指導をおこない、党政策の実行状況を監督し、道や郡で扱わない幹部を扱うためであります。党中央委員会のように郡党委員会や初級党組織でもそれぞれ政策の作成に当たるべきでしょうか。そうあってはなりません。各級の党委員会がそれぞれ自分の政策をうちだすとすれば、どれが党政策であるのかわからなくなり、またそれを実行する人もいなくなるでしょう。

 郡党は、道党の活動方法をそのまま受け入れてはなりません。道党は、郡党より活動範囲が広いので、現地に直接出向いてすべての機関を指導することはできません。したがって、道党委員会は決定書を採択して下達します。

 郡党委員会は、道党委員会の決定書を受け取れば、それに似通った郡党の決定書を機械的に作成しますが、このように文書いじりばかりするので、郡党の活動家は事務室に閉じこもるようになるのです。郡党委員会は、道党の決定書に似た決定書ばかり作成せずに、上級党の決定にもとづき初級党組織に出向いて直接指導に当たるべきです。

 例えば、内務機関の活動を強化する道党の決定書を受け取ったとしましょう。道党委員会は、管下に数十の内務機関があるので、いちいち尋ねて行ってそれを指導することはできませんが、郡党はそれが可能です。郡党の管下には、郡内務署が一つあり、その下に分駐所がいくつかあります。いくつもない内務機関を相手に改めて決定書を作成する必要はありません。郡党委員会では、決定書を作成するのではなく、内務署や分駐所に直接出向き、道党の決定書にもとづいて党員と話し合ったり、仕事を手配し指導する方が効果的です。
 また、他の例として、春のすき起こしと種まきを適時に保障することについての道党委員会の決定書が下達されたとしましょう。この問題の重要性にてらし、今度は郡党委員会総会または郡党活動者会議を開くことができます。しかし、この場合でも、もう一つの長文の決定書を作成することはやめて、簡単な会議録をつくって道党委員会の決定書を下部に浸透させ、その実践へと党員を動員する任務分担を具体的におこなう方がよいでしょう。

 郡党委員会は、新しい部署を設けようとばかりせず、現在の組織部と宣伝部の役割を高めるべきです。郡党の組織部と宣伝部は、初級党組織の委員長と管理委員長、そして、党員としばしば会って、彼らの党性を鍛え、彼らを理解し、党の中核を育成し、初級党組織を強化することに関心を払うべきです。郡党は、党組織を通じてすべての活動を統制しなければなりません。人民委員会、内務機関、検察所、裁判所などの機関を統制外におくならば、そこでの活動が順調におこなわれるはずがありません。

 それでは、どのように統制すべきでしょうか。行政活動を党の統制下におくということで、事務室で怒鳴りつけてばかりいてはなりません。郡党の組織部、宣伝部の指導員や部長、そして、郡党の副委員長や委員長が、人民委員会や内務機関、裁判機関にしばしば出向き、党会議を開いて党決定の実行状況と、実行されていない場合はその理由を討論させ、党員の意見を総合して以後の対策を講じるべきです。このような方法で統制すべきです。

 郡党委員会がおこなうべき第1の活動は、幹部を理解し党の中核を育成し初級党組織を強化することであります。これがこんにち、郡党委員会の活動のうち最も重要なことです。この活動が順調にいけば、すべての活動が順調に運びます。党活動の鍵はここにあります。皆さんがこの活動を円滑におこないさえすれば、農業や工業生産は言うに及ばず反革命との闘争も順調に運ぶでしょう。

 郡党委員会の活動で第2に重要なのは、党政策を貫徹することであります。党政策を正確に貫徹するためには、まず党政策の本質を明確に認識しなければなりません。党政策を深く研究し、それを大衆に解説し浸透させて、大衆が党政策を明確に把握するようにしなければなりません。

 次に、党政策の実行状況を監督しなければなりません。党政策を大衆に深く浸透させ、その実行状況を監督する活動を正しくおこなえば、党政策を正確に貫徹することができます。

 郡党委員会の活動で第3に重要なのは、思想教育を強化することであります。党員に対するマルクス・レーニン主義の思想教育と社会主義的愛国主義教育を正しくおこなわなければ、党組織を強化することはできません。党の戦闘力を強める問題も、社会主義の獲得物を守る問題もすべて党員の思想教育いかんにかかっています。したがって、わが党は、人民軍と内務機関、都市と農村を問わず、どこでも党員の思想教育の強化を求めています。

 郡党委員会や他の党機関の活動において、まえに述べた3つの活動を正しくおこなうことが重要です。そうすれば、他のすべてのことが順調に運ぶでしょう。

 再三、強調しますが、郡党委員会の活動で重要なのは第1に、幹部を理解し党の中核を育成し党組織を強化することであり、第2に、党政策を正確に貫徹するための組織・指導活動をおこなうことであり、第3に思想教育を正しくおこなうことであります。

 郡党委員会が組織部と宣伝部をもって、この方向で活動できるでしょうか。十分できます。郡党では、党員証課と文書課に一人か二人残って必要な文書の整理をおこない、残りの人はすべて下部の指導に当たらせるべきです。

 許カイの残した官僚主義がまだ一掃されていないようです。この際、党の活動体系を徹底的に改めるべきです。郡党委員会は、不必要な人を多くおかずに、30名なら30名で、それなりに能力のある人でかためるべきです。この人たちが計画を立てて下りてゆき、1、2か所か3か所ぐらい初級党組織を指導し経験を交換すれば、郡内の初級党組織の実態を明確に知るとともに、人々の性質や考えていることまで知ることができるでしょう。

 党活動家は、すべて組織者となり、宣伝員、扇動員となるべきです。組織部から行っても扇動活動や教育活動ができなければならず、宣伝部から行っても組織活動や幹部の理解ができなければなりません。仕事の区分をつけて、自分は宣伝活動しか知らないとか、自分は組織活動しか知らないと言うようではいけません。これは、革命家らしくないことです。かつて、我々が地下工作をしたときは、党の組織活動や宣伝活動はいうに及ばず、どんなことでもしたものです。党活動家は、このような革命家となるべきです。

 郡党委員会は、農村事業を指導するだけに、宣伝部で働いても組織部で働いても、誰もが農業知識を身につけなければなりません。冷床苗のつくり方、肥料の施用量、畜力除草機の使用法などをすべて心得ていなければなりません。農業知識がなければ宣伝活動ができません。ところが、宣伝活動家の方が農業を知りません。農村で活動する人が冷床苗の知識もなしに歩き回っていて、それについて尋ねられたら何と答えるつもりでしょうか。不必要な決定書など作成しようとせず、経済と技術について学ぶべきです。

 道党委員会も官僚主義的にふるまい、不必要な多くの決定書を下部に送っています。中央から送られる決定書も多いので、道党ではできるだけ下部に送る決定書の数を減らすべきです。決定書を多く作成しようとせず、下部に直接行って指導をおこなわなければなりません。

 種まきの指導を例にあげましょう。種まきは時日を争うので総がかりでおこない、党組織が奮起すべきです。郡党では、事務室で決定書やアピールを作成することに追われて種まきの時期を逸すべきではなく、直接農村に出向き初級党委員会か初級党総会を開いて中央と道の要求を知らせ、何をいつまで、どのようにしようという仕事の手配をおこない、現地での指導を強化すべきです。

 次に、郡党委員会と郡人民委員会の活動上の連係について述べようと思います。

 郡人民委員会は行政的には道人民委員会に属しますが、党関係では郡党の指導を受けます。

 郡人民委員会は、郡党委員会に対して自己の活動上の責任をとる行政機関であります。したがって、郡人民委員会は、すべての活動を必ず郡党と協議すべきです。郡人民委員会が道人民委員会の指示を受ければ、郡人民委員長はそれを実行するため必ず郡党委員長と協議しなければなりません。

 郡党委員長は結論をくだしにくい問題であれば、郡党執行委員会の討議にかけるべきです。郡党執行委員会では、問題解決の方向と方途を討議し任務分担をおこなわなければなりません。

 郡人民委員長は、郡党執行委員会の決定に従って、それを実行し、郡党委員長は初級党組織と党員を奮起させ、党決定の実行状況を監督すべきです。郡党委員会と郡人民委員会の活動上の連係がこのように保たれれば、郡人民委員会と郡党委員会の仕事がいずれも順調に運ぶでしょう。

 現在、地方人民委員会の活動が正しくおこなわれていません。道人民委員会と郡人民委員会に商業と教育・保健医療事業を担当させていますが、どれ一つとして正しくおこなっていません。例えば、市人民委員会の中心課題は都市経営事業と商業ですが、これを満足におこなっていません。人民委員会は、農業にのみかかずらうべきではなく、経済・文化建設で重要な位置を占める商業と教育・保健医療事業にも責任を負うべきであります。

 党機関は、行政活動を代行すべきではなく、その活動内容をよく知り、人民委員会の活動状況の報告を受け、それを常に指導し統制すべきです。現在、郡党では卵の生産状況まで調べるために立ち回っていますが、これは郡人民委員会と里人民委員会の仕事に属します。

 党活動の中心は、幹部の理解、党中核の育成、党組織の強化、党政策の宣伝とその実行の掌握および統制などにおくべきです。党機関がこれらの活動に中心をおかず、行政部署の役割を果たしていては、成果をおさめることができません。党中央委員会では各部署の活動方向と活動範囲を明確に区分したため、いまでは行政部署の役割を果たすようなことはなくなっています。党活動と行政活動を混同してはなりません。

 党機関が活動方向を明確に定めなければ、いろいろなことに干渉し、結局、何一つとしてなし遂げられません。党中央委員会の部署は、省のように自己の活動について国家に直接責任を負う独自の機関ではありません。自己の活動について内閣に責任を負う省機関は独自の機能にもとづいて決定を採択し、命令や指示を与えることもできます。しかし、党中央委員会の部署は独自の機関ではなく、党中央委員会の活動を保障するための一つの機構であります。したがって、これらの部署は、決定を採択したり命令をくだす権限はなく、党政策と党常務委員会の決定を実行する活動を組織し、その実行状況に対する党の監督をおこなうのであります。現在、部署の名義による文書としては組織部通報課で出す通報書があるのみですが、これは党機関の活動上の長所と短所を知らせ経験を一般化するためのものです。

 それでは、産業部、農業部などの経済部署はどんな仕事をすべきでしょうか。党中央委員会の経済部署は、何よりもまず、党の政策と党常務委員会の決定を研究して当該部門に浸透させるべきです。党政策を浸透させるための講演原稿を準備して直接講演に出向くか、該当する省に課題を与えて省が自分で党政策を浸透させる活動をおこなわせるべきです。

 そして、党の政策が正しく実行されるよう党の統制と監督をおこなうことが大切です。経済部署は、それぞれの部門での党政策実行状況を監督するとともに、活動を発展させる対策的意見を党常務委員会に提出すべきです。

 郡党委員会もこのような方向で活動し、郡人民委員会との連係を保つべきです。郡党委員会は、自己の党活動と郡人民委員会の行政活動を混同せず、党活動を正しくおこなうべきであります。

 次に、農村初級党組織の課題について述べたいと思います。

 農村初級党組織の課題は第1に、他の部門の党組織と同じく、党員の党性をたえず鍛えて党の隊列を強化するとともに、広範な大衆を党のまわりにかたく結集することであります。このことについては既に多くの機会に述べているので、これ以上触れないことにします。

 第2に、現段階における農村党組織の主な課題は、穀物の増産を主としながら、同時に工芸作物栽培と畜産業を発展させる方向でひきつづき農業生産を増やし、農民の社会主義教育を強化することであります。

 農村党組織がこの仕事を立派におこなえば、農業の基盤を強化して農民の生活水準をいちだんと向上させ、その思想・意識を社会主義的に改造して農村の社会主義建設を促進させることができます。

 第3に、反革命との闘争を強化することが重要です。反革命との闘争は、すなわち社会主義の獲得物を守る闘争であります。この闘争は一時的なキャンペーンとしておこなうのではなく、日常的におこなうべき重要な政治的課題であります。

 第4に、農村の商品流通と財政金融活動を正しくおこなうことです。そうしなければ、農村に残存する搾取行為とたたかうことも、それを根絶することもできません。消費協同組合、信用協同組合、農民銀行などは、搾取行為をなくすうえで重要な役割を果たします。したがって、党組織は、これらの機関の活動に関心を払うとともに、搾取行為との闘争に民青、女性同盟などの大衆団体を立ち上がらせなければなりません。

 第5に、農村の文化革命を立派におこなうことが大切です。これには多くの問題が包括されます。義務教育の実施、農民の文化・技術水準の向上、衛生事業の改善、特に住宅、浴場、クラブ、託児所、診療所の建築問題などがあります。農民の知識水準を全般的に人民学校卒業程度にまで引き上げなければなりません。これは簡単なことではありません。しかし、農村党組織がこの活動を掌握して粘り強く努力すれば、それは十分に可能であります。

 私の考えでは、初級党組織が以上のいくつかの課題を正しく遂行すればよいと思います。

 農村の党組織は、このたびの党代表者会議で決定された問題、特に党内の統一を強化する活動をキャンペーンとしてではなく、日常的におこなうべきです。特に、幹部と党員にセクト主義、地方主義、家族主義の害悪を明確に認識させるべきです。そして、誰もがこのような害悪行為を働く者を憎み、党内で野心をいだいて悪巧みをする者とは容赦なくたたかうようにすべきです。このことが非常に大切です。

 そして、今回の党代表者会議で採択された5か年計画の意義と党の提起している今後の発展の見通しを大衆に正しく認識させることが大切です。もし、党員と人民がこれを正しく認識すれば、彼らは輝かしい未来をめざし、確固たる信念と楽天的態度をもって力強く前進するでしょう。

 各級党組織は、党代表者会議の文献を深く研究し浸透させることに全力をつくすべきであります。

 皆さんの活動で成果をあげることを期待します。
                                                
出典:『金日成著作集』12巻


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