金 日 成

祖国統一問題と人民軍の課題
 朝鮮人民軍軍事・政治幹部会議でおこなった演説
−1957年11月27日− 


 1 祖国統一問題について

 こんにち、全般的国際情勢は、朝鮮人民の革命大業に有利に発展しています。植民地民族解放闘争は急速な盛り上がりを見せており、民族の独立を達成した国が増え、進歩的な道を歩む人民の数はますます増大しています。社会主義陣営の威力が日増しに強化されている反面、帝国主義勢力は弱体化しています。

 こんにちの情勢は、朝鮮とアジアの平和を守り、祖国の平和的統一をめざすたたかいを強化することを我々に求めています。

 我が党と共和国政府は、終始一貫、停戦を強固な平和に変え、南北朝鮮からすべての外国軍隊を撤退させていかなる外部勢力の干渉も受けることなく、朝鮮人民自身の力で祖国を平和的に統一するためにたたかい、そのための合理的な方案をいろいろと提起しました。

 しかし、かいらい李承晩一味は、我が方の正当な祖国統一方案をどれ一つとして受け入れませんでした。もちろん、そうだからといって、我々の努力が水泡に帰したわけではありません。我が方の正当な平和的祖国統一方案は、内外の広範な支持と賛同を得ています。我が方の祖国統一方案が、南朝鮮人民のなかに深く浸透すればするほど、南朝鮮人民はアメリカ帝国主義侵略軍を駆逐し、祖国統一のためにさらに積極的にたたかうでありましょう。いま敵は我が方の祖国紘一方案に顔をそむけていますが、いずれは、かれらもそれを受け入れざるをえなくなるでしょう。したがって我々は今後も、合理的な平和的祖国統一方案を提起し、その実現のためにひきつづき強力にたたかわなければなりません。

 朝鮮の平和的統一を実現するためには、我が国だけでなく、アジアの平和を守らなければなりません。

 日本軍国主義の復活は、アジアの平和を脅かす大きな要因であります。日本軍国主義の復活に反対してたたかわなければ、アジアの平和は守れません。したがって我々は、日本人民との親善関係を強化して、ともに日本軍国主義の復活に反対する共同闘争を力強く展開すべきです。これとならんで、東南アジア諸国との親善・友好関係を発展させなければなりません。

 祖国統一に有利な国際的環境をつくるうえで、社会主義陣営を強化することが重要であります。

 社会主義陣営を強化するには、社会主義諸国の団結を強めなければなりません。社会主義諸国の団結を強める問題は、こんにち新たに提起された問題ではありません。

 我が党は、社会主義諸国の団結を強めるため一貫して努力を傾けてきたし、いまも努力しています。昨年、ハンガリー事件によって国際情勢が極めて複雑になったときにも、我が党はマルクス・レーニン主義の純潔を守り、社会主義陣営の団結を強めるために積極的にたたかいました。我が党は、今後も社会主義諸国との団結を強めるためにひきつづき努力するでありましょう。

 社会主義陣営を強化するためには、個々の社会主義国が自国に課された国際主義的義務を忠実に遂行しなければなりません。社会主義陣営を強化しようとスローガンを叫ぶだけでは問題が解決されません。個々の社会主義国は、社会主義陣営のどの部分にも敵が攻撃を加えられないようにし、社会主義陣営を中傷し、分裂、離間を企む敵の策動を粉砕しなければなりません。

 朝鮮の共産主義者は、アメリカ帝国主義侵略者とかいらい李承晩一味の戦争挑発策動を粉砕して社会主義陣営の東方の砦を固守するとともに、共和国北半部の社会主義建設に力を注いで朝鮮革命を早急に完成するために積極的にたたかわなければなりません。同時に、党員と勤労者のあいだに、帝国主義者の流布するブルジョア反動思想が絶対に浸透しないようにしなければなりません。

 社会主義陣営を強化するためには、兄弟党が各党間の相互関係の規準を厳格に守ることが重要であります。兄弟党が、他の党の内部問題に干渉するようなことがあってはなりません。各党間の相互関係の規準に違反して他の党の内部問題に干渉すれば、兄弟党間の相互関係で複雑な問題が生じ、社会主義陣営の団結を弱める結果をまねきかねません。兄弟党は、各党間の相互関係の規準を厳格に守り、相互のあいだで提起される問題は虚心に協議して解決すべきです。兄弟党は、相互往来と接触を深めて経験や意見を交換し、学びかつ教え合わなければなりません。

 祖国を平和的に統一するためには、共和国南半部の人民がアメリカ帝国主義とかいらい李承晩一味に反対するたたかいを強化することが重要であります。南半部の人民は、南朝鮮からアメリカ帝国主義者を駆逐し、祖国を統一するためひきつづき力強くたたかわなければなりません。

 共和国北半部で社会主義建設を立派におこなうのは、祖国の平和的統一を達成する重要な裏付けであります。

 共和国北半部で社会主義建設を立派におこなえば、北半部を朝鮮革命の強固な根拠地につくりあげ、我々の革命勢力を全面的に強化することができます。共和国北半部に社会主義制度を確立し、強固な自立的民族経済を建設して人民生活を向上させればさせるほど、全人民が我が党のまわりにかたく結集し、我々の革命勢力はさらに強化されるでしょう。

 我々が社会主義建設を立派におこなえば、南半部人民の革命闘争にも大きな励ましとなるでしょう。

 南半部の人民は、共和国北半部と南半部の現実を比較し、北半部では、労働者、農民をはじめ、勤労人民が政権の主人となった社会制度をうちたて、搾取と抑圧がなく、すべての人が平等かつ自由に豊かな生活を営んでいる反面、南半部では搾取制度が維持され、地主、資本家、高利貸し業者の搾取行為によって人民生活がますます零落していることをはっきりと知るでありましょう。

 我々は抗日武装闘争の時期に、ソ連で搾取と抑圧のない社会主義制度をうちたて、社会主義を建設していることに大きなあこがれをいだいたものです。まして、同一民族の南朝鮮人民が、共和国北半部の社会主義建設の成果にあこがれをいだかないわけはありません。したがって、共和国北半部で社会主義建設を立派に進めるのは極めて大切なことであります。

 我々は、戦後わずか4年のあいだに社会主義経済建設で大きな成果をおさめました。戦後、我が国の経済は、非常に速いテンポで発展しています。3か年計画期間に工業総生産高は毎年平均42%ずつ成長しました。このように速いテンポで経済が発展した例は、ほかのどの国にもありません。

 最近、我が国の人がある外国を訪れ、3か年人民経済計画の遂行状況と5か年人民経済計画の展望について話したことがありました。そのとき、その国の人たちは、その話を信じようとしませんでした。かれらは、共和国を訪問して、5〜6年はかかるといわれた平南潅漑工事を1年半余りで完成した朝鮮人民の無尽蔵の力と闘争精神を目のあたりにした自国の人たちの話を聞いてはじめて、そのことを認めたのです。実際に、我が国の社会主義建設は、外国人には想像もできないほどの速さで進められています。

 主要工業製品と穀物の人口一人当たり生産量も急速な成長を見せています。昨年度人口一人当たりの生産量は、穀物は320キログラム、織物は9メートルに達しています。また、電力、銑鉄、セメント、化学肥料、カーバイド、金、銅、鉛などの人口一人当たり生産量も急速に伸びました。魚類の人口一人当たり生産量は47キログラムに達しています。

 我が国において食料問題はおおむね解決されました。今後、住宅を多く建てれば、人民の住宅問題も解決されるでしょう。

 工業と農業総生産額のうち工業が占める比重は非常に高まりました。1956年度の工業の比重は60%でした。これは、かつて立ち後れた植民地農業国であった我が国が、戦後数年にして工業・農業国の水準に達したことを示しています。我々は今後、工業をさらに発展させて5か年計画末には、工業と農業総生産額のうち工業の比重を約70%に引き上げなければなりません。こうなれば、我が国は遠からず社会主義工業国に変わるでありましょう。

 我々が戦後短期間のうちに社会主義建設で大きな成果をおさめることができたのは、第1に党の路線と政策が正しかったからであります。

 我が党は、マルクス・レーニン主義の一般的原則を我が国の具体的な実情に合うよう創造的に適用して、すべての路線と政策をたてました。それゆえ、我々はなんの偏向もおかすことなく、社会主義建設を急テンポで進めることができたのです。

 いま兄弟党、兄弟諸国は、一致して、社会主義建設における我が党の路線と政策の正しさを認めています。特に重工業を優先的に発展させながら、同時に軽工業と農業を発展させる経済建設の基本路線は全く正しいと言っています。

 第2には、全人民が、社会主義建設で革命的熱意と創造的積極性を高度に発揮したからであります。

 かつて、朝鮮人民は、国を奪われ、みずからの政権をもたなかったために、植民地的奴隷生活を強いられました。そのため朝鮮人民は、自分たちの党、自分たちの祖国、自分たちの制度を愛する精神が非常に強いのです。

 最近、我が国を訪れた外国人たちは、一部の国では反政府暴動が起き、情勢が複雑で悲鳴をあげているのに朝鮮では主権機関の選挙をおこなっていると言って、たいへん驚いています。また外国人たちは、我が国の大学生が社会主義建設に参加して大きな成果をあげていることを目撃し、非常に感嘆しています。

 しかし、我々は、すでにおさめた成果に決して満足すべきではありません。我々は、社会主義建設をさらに強力におし進めるべきであります。

 なによりも、生産関係の社会主義的改造を早急に完成しなければなりません。そうすれば、反動勢力の足場となる経済的基盤を一掃し、革命勢力をいちだんと強化することができます。我々は、共和国北半部で社会主義的改造を勝利のうちに完成し、搾取と抑圧のない社会主義制度を確立しなければなりません。

 生産関係の社会主義的改造を完成すると同時に、自立的民族経済の建設を強力におし進めなければなりません。自立的民族経済を建設すれば、国の経済的基盤を強化し、人民生活を急速に向上させることができます。


 2 人民軍の課題について

 人民軍は、南朝鮮にアメリカ帝国主義侵略軍と地主、資本家の利益を擁護するかいらい軍がいるかぎり、共和国北半部が常時敵の侵略の脅威にさらされていることを肝に銘じ、常に警戒心を高め、戦闘力と戦闘準備を強化すべきであります。

 我が党は、祖国の平和的統一をスローガンにかかげ、その実現のためにたたかっています。祖国を平和的に統一するためにも、人民軍の戦闘力が強くなくてはなりません。人民軍の戦闘力が弱ければ、敵は我々に襲いかかってくるでしょう。したがって、党が平和的祖国統一のスローガンをかかげればかかげるほど、人民軍は戦闘力と戦闘準備を強化しなければなりません。

 人民軍の戦闘力と戦闘準備を強化するためには、人民軍を幹部軍隊につくりあげなければなりません。

 いつも言っていることですが、いったん有事の際には全人民が武器をとらなければならず、そのときには、人民軍の軍人は全員が指揮官にならなければなりません。したがって、人民軍を幹部軍隊につくりあげるのは極めて重要なことであります。

 さきの祖国解放戦争当時、我々に幹部が多かったなら、人民軍を直ちに数10個師団に増やし、アメリカ軍はおろか、どのような強敵の攻撃を受けても後退しなかったでありましょう。この教訓を忘れてはなりません。

 我が国には、有事に銃をとって戦える人はいくらでもいます。労働党員だけが銃をとっても100万名になります。我々には民青員も多いし、女性同盟員や職業同盟員も大勢います。

 すべての軍人は、戦闘・政治訓練を強化して兵器と戦闘技術機材に精通し、幹部軍隊に鍛えあげなければなりません。そうしてこそ、有事の際に人民軍を現在の数倍に拡大して部隊の戦闘力を高め、敵と戦って勝利することができます。

 次に、軍人の思想教育を強化しなければなりません。

 人民軍は、労働者、農民をはじめ、勤労人民の利益を守って戦う人民の軍隊であります。人民軍は、政治的・思想的優位によって敵の技術上、数量上の優位を打ち破らなければなりません。そのためには、人民軍の軍人にたいする思想教育をたえず強化しなければなりません。

 なによりも、軍人のあいだで社会主義的愛国主義教育を強化すべきであります。

 こんにち、国の実情は、すべての軍人が社会主義的愛国主義思想をしっかり身につけることを切実に求めています。周知のように共和国北半部では、社会主義革命が強力におし進められ、搾取の根源がほとんどなくなりました。農村では、すでに全農家の90%以上が協同化され、社会主義経済体制に組み入れられています。残りの10%が協同化されれば、共和国北半部の農村には搾取の根源が完全になくなります。都市に残っている少数の商工業者もすべて社会主義的勤労者に改造されつつあります。遠からず、共和国北半部では搾取階級が一掃され、社会主義制度が全面的に確立されるでありましょう。この社会主義制度をゆるぎなく防衛するためには、人民軍の軍人みずからが、徹底して社会主義的愛国主義思想を身につけなくてはなりません。

 今後、敵は共和国の社会主義制度を破壊し、資本主義制度を復活するためにさらに悪辣に策動するでしょう。したがって、軍人を社会主義的愛国主義思想で武装させなければ、社会主義制度をかたく守ることはできません。ソ連人民がファシスト・ヒトラーと戦って勝利したのも、社会主義的愛国主義思想でしっかり武装していたからであります。

 ところが現在、人民軍の軍人を社会主義的愛国主義思想で武装させる教育活動は十分におこなわれていません。最近の人民軍の新聞を見ても、社会主義的愛国主義教育にかんする記事はそれほど見あたりません。

 人民軍は、軍人に社会主義制度の優位性を深く認識させて、共和国の社会主義制度を守って断固たたかい、我が国に共産主義社会を建設するという思想的決意をかためるようにしなければなりません。

 すべての軍人が、地主、資本家を憎むように教育することが大切であります。

 ここにいるみなさんは、かつて地主から搾取され、抑圧されてきたため、地主の本性についてはよく知っているはずです。しかし、新しい世代は地主についてよく知りません。いま軍隊に入隊する若い兵士も、かれらが6、7歳のころに土地改革が実施されて地主が一掃されたので、地主についてはほとんど知りません。

 人民軍は、階級的教育を強化して、軍人が地主、資本家を憎み、資本主義制度に反対して強くたたかうようにしなければなりません。このようにして、人民軍を労働者、農民をはじめ、勤労人民の利益と社会主義制度を力強く擁護し、防衛する徹底した階級の軍隊に鍛えあげなければなりません。

 軍人に党にたいする限りない忠実性を植えつけなければなりません。いま、軍人のあいだで党にたいする忠実性の教育を立派におこなっていますが、今後ともこれに力を入れなければなりません。

 我が党の指導をぬきにしては、革命と建設の勝利について考えることはできません。我が国に社会主義・共産主義社会を建設する歴史的大業は、ただ我が党の指導によってのみ成功裏に遂行されるのです。

 人民軍は我が党によって指導される党の革命的武力であるがゆえに、人民軍の軍人は当然、我が党を力強く擁護、防衛し、党のためにすべてをささげる覚悟ができていなければなりません。人民軍は、軍人のあいだで党にたいする忠実性の教育を強化して、すべての軍人が党中央委員会のまわりにかたく結集し、党のために献身的にたたかうようにすべきであります。

 教条主義、事大主義、修正主義に反対する思想教育を強化しなければなりません。

 これまで活動家は多くの教条主義的誤りをおかしましたが、その原因は2つあります。1つは、活動家が、進んだ国のものであれば、何でもうのみにしていることにあります。外国のすぐれた経験でも、我が国の実情に合わないことがあります。いま1つの原因は、活動家が、事大主義に毒されていることにあります。事大主義とは大国を崇敬するということですが、我が国は古くから事大主義が濃厚でした。事大主義に毒された人は、自国のものはすべて悪く、他国のものはすべてよいと言って、頭からそれを受け入れるようになるのです。

 人民軍は、教条主義と事大主義を一掃し、軍事分野のすべての問題を我が国の実情に即して解決し、外国の進んだ経験も我が国の具体的な実情と朝鮮人民の利益に合うように受け入れるべきであります。

 いま修正主義者は、社会主義建設においてマルクス・レーニン主義の一般的原則を否定しています。したがって、修正主義に反対する闘争も強力に展開しなければなりません。

 私は、みなさんが祖国の統一を早めるために、人民軍に提起された課題を立派に遂行するものと確信します。

 出典:『金日成著作集』11巻


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