金 日 成

社会主義建設における人民政権の当面の課題について
最高人民会議第2期第1回会議でおこなった演説 
1957年9月20日

 代議員の皆さん!

 こんにち、我々は、わが国の歴史発展の大きな転換期に際会しています。

 わが国の経済は、基本的に戦争の被害を克服し、新しい発展段階に入りました。

 都市ばかりではなく、農村においても社会主義的経済形態は決定的な勝利をおさめました。労働者階級の隊列が拡大し、国家・経済生活におけるその指導的役割が高まり、幾100万農民の社会経済的状態は根本的に変わりました。

 戦争によって疲弊した人民生活は、基本的に立ち直り、いま、我々は人民生活をいっそう向上させるために努力しています。

 勤労者は、人民経済のすべての部門で比類のない生産意欲と創意を発揮しており、高度の政治的熱意と積極性をもって国家生活に参加しています。

 全人民は、いつにもまして朝鮮労働党と共和国政府のまわりにかたく団結しており、朝鮮民主主義人民共和国の公民としての誇りをいっそう高めています。

 これらのことは、1957年度人民経済計画の遂行と最高人民会議の選挙にはっきりと示されました。勤労者は、今年度の上半期に国家計画はもちろん、みずから決議した増産課題まで超過完遂し、下半期の計画課題の遂行でも新たな生産成果を達成しています。

 朝鮮人民の英雄的闘争によって、共和国の国際的地位はかつてなく高まりました。朝鮮民主主義人民共和国は、偉大な社会主義陣営の光栄ある一員として、ソ連、中華人民共和国および人民民主主義諸国との不抜の国際主義的友好・協力関係を結ぶようになりました。共和国とインド、インドネシア、ビルマ、エジプト、その他アジア、アフリカ諸国人民との経済的・文化的連係は、ますます密接になっています。世界のすべての善意ある人々は、朝鮮人民に同情を示しており、我々の正当なたたかいを支持しています。

 こんにち、我々にとって最も重要なのは、既におさめた成果に少しもおごることなく、緊張した態勢を堅持し、人民大衆の団結を強め、大衆を新たな勝利へと奮起させることであります。

 同志の皆さん!

 解放後、朝鮮人民は、祖国の統一と民族の独立をめざすたたかいで、幾多の難関と試練をへなければなりませんでした。

 戦前の平和的建設の時期に、わが党と人民政権の指導のもとに北半部の人民は偉大な民主改革を遂行し、人民経済を復興発展させ、すべての愛国的勢力の団結を強めて共和国北半部に強力な民主基地を創設し、それを祖国の平和的統一の強固な物質的土台に築き上げる道に入りました。

 北半部における民主勢力の急速な成長と民主基地のいっそうの強化は、アメリカ帝国主義者と反逆者李承晩一味にとっては好ましくないことでした。朝鮮人民みずからが権力をにぎり、民主的な独立国家を建設することを望まなかった敵は、共和国に対する直接的な武力干渉の方法で民主勢力を押しつぶし、朝鮮人民を屈服させようとしました。

 敵によって強いられた戦争は、朝鮮人民にとって最も厳しい試練であったし、はかり知れない苦痛をもたらしました。しかし、朝鮮人民は、あらゆる難関をのりこえ、敵の武力侵略を撃退する英雄的な抗戦に立ち上がりました。アメリカ帝国主義をはじめ、16か国の侵略者とその手先、反逆者李承晩一味の武力侵略に反対する力にあまる戦いで、朝鮮人民と朝鮮人民軍は正義の中国人民志願軍と協同して、ソ連をはじめ、兄弟諸国人民の物心両面の援助のもとに輝かしい勝利をかちとり、敵の侵略から自己の主権と人民民主主義制度を守りぬきました。

 朝鮮人民は、このように苛烈な戦争においても屈せず、いかなる帝国主義侵略者も朝鮮人民を征服することはできないということを示しました。朝鮮人民は、この戦争でさらに強く団結し、鍛えられ、権力をにぎった人民の威力と人民民主主義制度の優位性をはっきりと証明しました。3年間の戦争は厳しいものでしたが、朝鮮人民はこの戦争の試練を通じて、祖国を立派に守り、朝鮮革命を完遂することができるという確信をもつようになりました。我々は、これを通じて革命の完全な勝利を達成することのできる貴い経験と教訓を得ました。

 3年間の戦争は、わが国の生産力を類例のないほど破壊し、人民生活を極度に疲弊させました。

 戦後3か年計画の期間に解決しなければならない基本問題は、疲弊した人民生活を最も短時日内に回復すると同時に、破壊された工業と農業の物質的・生産的土台を急速に復旧強化し、人民経済の将来の発展の自立的土台を築くことでした。都市と農村が廃墟と化し、人民経済のすべての部門があますところなく破壊され、人民大衆が生活の土台までも失った条件のもとで、これは極めて困難で複雑な課題でした。

 重工業の優先的な発展を保障しながら、同時に軽工業と農業を発展させるという党と政府の経済政策の大きな意義は、まさにこの困難な問題の成功的な解決を可能にしたことにあります。この経済政策を貫くうえで、動員しうる国内のあらゆる資源と兄弟諸国の援助を最も合理的に利用し、人民経済の復興、発展の基本的な環を正しくとらえ、そこに全力を集中することは極めて重要なことでした。

 工業部門で決定的な意義をもつのは、基本投資の方向を正しく定める問題でした。我々は、この問題を基本的に2つの方向で解決しました。第1に、重工業の復興建設で人民生活の改善と密接な関連をもつ部門に投資を集中し、第2には、資金を節約して短時日内に投資の効果をあげるため、古い企業所と設備の復旧に重点をおきながら、同時にそれらの企業所を新しい技術で復旧改造し、一部の工場を新設する方針をとりました。

 党と政府の正しい指導と労働者の献身的な生産闘争により、工業建設での我々の政策は成功裏に実現しました。その結果、戦後の短期間に、280余の大・中規模の企業所が新しい技術で復旧され、また、近代的設備をそなえた80余の大・中規模の企業所が新たに建設されました。我々は、はじめて機械製作工業をもつようになり、非常に立ち後れていた紡織工業を大々的に拡張し、原料、半製品としてしか利用できなかった豊富な地下資源を、少なからず完成品に加工することができるようになりました。

 3か年計画期間に工業総生産高は2.8倍に増大し、そのうち生産手段の生産は4倍、消費財生産は2.1倍にふえました。わが国の工業は今年1年間に、戦前の1946年から1949年までの4年間に生産したものよりも多い工業製品を生産するようになるでしょう。

 こうして、わが国の工業は、破壊された人民経済の復興と人民生活の向上に必要な資材、設備および一般消費物資を生産し、人民経済を今後いっそう高い水準へ発展させる生産的・技術的土台を築き上げました。

 戦後における農業の中心課題は、穀物生産を急速に増大させ、住民の食糧問題を解決することにありました。

 耕地面積の少ないわが国で穀物増産の基本的な環は、ヘクタール当たりの収穫高と土地の利用度を高めることにあると認め、国家はこれに基本的な力を注ぎました。そのため、国家はまず破壊された農業の物質的土台を復旧し、穀物生産を増大させるいろいろな技術的対策を立てました。農業への投資の圧倒的な部分を潅漑工事にふりむけ、化学肥料の施用量を急速にふやし、多収穫作物であるとうトウモロコシの作付け面積を大々的に拡張するなどの対策を講じました。

 このような対策は、農民の生産意欲を高め大きな成果をもたらしました。1956年度には穀物生産が戦前の水準を8%も上回り、不足していた食糧問題を基本的に解決することができるようになり、農民の収入は増え、その生活が改善されました。

 農業の協同化は、農業を急速に復興発展させるうえで決定的な役割を果たしました。もし、農業を協同化しなかったなら、農業発展のために国家がとった技術的・経済的対策を効果的に実現することができず、したがって、戦争による農業の被害は速やかに克服できなかったでしょう。農業を協同化せずには、戦後、速い速度で発展し、質的に変化する社会主義的工業と、極めて緩慢に復興する個人農経営との矛盾を解決することができなかったのです。

 党と政府の正しい協同化政策と、これに対する農民大衆の積極的な呼応と支持により、戦後に農業協同化運動は急速に発展し、現在では全農家戸数の85.5%が農業協同組合に加入しています。

 農業の協同化は、わが国の農村で起きた大きな革命でした。それは、農業の急速な復興を可能にしたばかりでなく、農業技術と農民の物質・文化生活およびその意識に、根本的な変革をもたらす基本的な前提条件をつくりだしました。

 こうして、わが国の農業は、その物質的な基礎を強化し、経営形態を改造することによって生産力をより急速に発展させうる強固な土台を築き上げました。

 工業と農業および人民経済のその他の部門の復興発展に伴い、人民の生活状態は著しく改善されました。

 1956年末には、勤労者の実質収入が戦前の水準を上回るようになりました。1956年度に、国営および協同経営商業における商品流通額は1949年度の2倍に増大しました。

 戦後、都市と農村に1340万平方メートルの住宅が新しく建設され、そのうち510万平方メートルの住宅は国家資金によって建設されました。

 3か年計画期間に5455の学校が復旧または新設され、1956年度からは初等義務教育制を実施できるようになりました。現在、各級の学校で学んでいる学生数が208万余名に達しています。

 戦争の厳しい試練と戦後の人民経済の復興を通じて、人民政権は強化され、人民の団結は強固になりました。

 朝鮮人民の歩んできた苦難にみちた闘争の歴史は、共和国政権が各階層人民の利益の徹底した擁護者であり、したがって、そのまわりに広範な人民大衆を結集してその熱意と積極性を高度に発揮させることのできる、わが国発展の現段階で最も民主的な政権形態であることを実証しました。

 これまで、我々は人民政権を強化するために各級主権機関の選挙をおこない、一部の行政区画を改め、国家機構を簡素化するなど、一連の重要な措置をとりました。これと同時に、国家機関で官僚主義をなくして活動家の大衆観点を確立するため、粘り強い闘争をくりひろげてきました。その結果、すべての政権機関が、人民に接近し、広範な人民大衆が国家活動に積極的に参加するようになりました。こうして、人民政権の役割と機能は高まり、全人民は党と政府のまわりにかたく団結しました。

 共和国北半部における各階層人民の統一戦線は、民主革命の任務を遂行する過程で形成され発展し、社会主義建設を通じて新しい政治的・経済的土台のうえに強化されました。

 共和国北半部に創設された民主基地は、厳しい試練にうちかち、いまでは政治的にも、経済的にも不敗の力に強化されました。これは、朝鮮人民の偉大な獲得物であります。

 同志の皆さん!

 解放後12年が過ぎたにもかかわらず、南朝鮮は依然としてアメリカ帝国主義の占領下にあり、その植民地に転落しています。朝鮮革命の複雑さと困難さの基本的原因はまさにここにあります。

 アメリカ帝国主義者は、南朝鮮に対する侵略を「援助」の名でおおい隠そうとしています。しかし、周知のように、南朝鮮に対するアメリカ帝国主義者の「援助」は、その軍事的侵略政策と無制限な略奪の手段にすぎません。

 アメリカ帝国主義者は、かいらい政府の財政を完全に手中におさめ、その予算をもっぱらアメリカ占領軍と膨大なかいらい軍およびファッショ的支配機構の維持費に当てています。南朝鮮は、ますますアメリカ帝国主義の債務奴隷に転落しており、予算の赤字は際限なく増えています。こんにち、かいらい政府の財政は、全くの破産状態に陥っています。

 アメリカ帝国主義者は、南朝鮮の産業を破綻させることによって、南朝鮮を彼らの商品市場に変えています。数多くの朝鮮人中小企業が破産し、残っている工場も大部分が満足に操業していません。1956年に、全工業設備の稼働率は60%にすぎませんでした。このように、民族資本はアメリカ独占資本の圧迫のもとに没落の一途をたどっています。労働者の賃金は、最低生活費の半分にもみたず、それすら何か月も過払いになるのが一般的現象となっています。1956年に、南朝鮮では失業者の数が110余万に達し、そのほかにも数100万の勤労者が半失業状態におかれています。

 アメリカ帝国主義者と反逆者李承晩一味の略奪政策により、南朝鮮の農業は極度に荒れ果てています。彼らが発表した公式資料によっても、南朝鮮の耕地面積は日本帝国主義支配の末期に比べて20万ヘクタールも減りました。1956年には、穀物生産が日本帝国主義支配当時に比べて約900万石も減り、南朝鮮は極度の食糧危機にみまわれています。農民は地主と高利貸しの過酷な搾取にあえぎ、「農地代価償還穀」「土地収得税」「水利税」、強制供出など、さまざまな形でその収穫の圧倒的部分を収奪されています。今年の春、南朝鮮で糧米の切れた農家は約100万戸に達しました。

 祖国の南半部に対するアメリカ帝国主義の侵略政策と反逆者李承晩一味の反動支配は、政治、経済、文化のあらゆる分野で全面的な破産に直面しています。アメリカ帝国主義者の恥知らずな略奪政策と、その手先李承晩一味の売国政策はこれ以外の結果をもたらすことはできません。

 アメリカ帝国主義者と李承晩一味は、直面した破局から逃れる道を、人民大衆に対する弾圧と略奪の強化と朝鮮で新たな緊張をつくりだすことに求めようとしています。しかし、このような策動は、彼らをますます深刻な破滅に追い込むでしょう。

 南朝鮮人民は、アメリカ帝国主義者と李承晩の支配のもとではもはや生きてゆけないことを悟っています。人民大衆のあいだで、共和国北半部へのあこがれ、北半部でのような人民の政治を要求する気運が日ましに高まっています。南朝鮮の労働者、農民をはじめ、すべての愛国的勢力が共和国北半部の社会主義建設に励まされ、アメリカ帝国主義者と反逆者李承晩一味に反対し、祖国の平和的統一をめざす闘争に立ち上がることは疑いありません。いかなる弾圧によっても、南朝鮮における愛国的勢力の成長を阻むことはできないでしょう。

 代議員の皆さん!

 こんにち、わが国の情勢は、祖国の統一をめざす朝鮮人民に有利に発展しています。

 我々は、祖国の平和的統一を達成し、はかり知れない苦痛をなめている南朝鮮同胞を救い出すために、いっそう粘り強い闘争を展開しなければなりません。これは。全朝鮮人民に課せられた最も重要な革命任務であります。

 祖国の平和的統一を実現するためには、何よりもまず朝鮮で強固な平和が保たれなければなりません。

 停戦協定のすべての条項は厳格に守られなければならず、停戦を強固な平和にかえなければなりません。停戦協定を破棄し、朝鮮で新たな緊張をつくりだそうとする敵の策動を徹底的に暴露し粉砕しなければなりません。

 朝鮮からすべての外国軍を撤退させ、南朝鮮がアメリカの核基地化されるのを許してはなりません。

 南北間で軍備競争をおこなうのではなく、兵力を縮小すべきであります。我々は、南北朝鮮の兵力を、それぞれ10万あるいはそれ以下に減らすことを南朝鮮当局にかさねて提案します。このような措置は、朝鮮で強固な平和を維持する実質的な保証の一つとなり、何よりもまず過重な軍事費負担による南朝鮮人民の苦痛を軽減することになるでしょう。

 また我々は、南北朝鮮間の通商と人民の自由を往来、通信および文化交流のための具体的な措置を一刻も早くとることを重ねて提案します。まず、南と北にそれぞれ一定の地点を選んで、そこで互いに物資を交易する方法を講ずることが必要であると考えます。

 我々は、朝鮮問題の平和的調停のために、南北朝鮮の代表を参加させる関係諸国の国際会議を開くことを要求します。

 以上で述べたことは、祖国の平和的統一を実現するため最も緊急に、真っ先に解決されなければならない問題であると、我々は考えます。

 こうして、わが国は平和的に、いかなる外国の干渉もうけることなく、朝鮮人民自身の民主主義的な意思にもとづいて統一されるべきであります。南北朝鮮ですべての政党の自由を活動が保障される条件のもとで、いかなる外部の圧力や束縛もうけることなく、一般、平等、直接の原則で秘密投票による全国的な選挙をおこない、南北に分断されている祖国を統一しなければなりません。

 平和的統一に関する我々の提案は、全朝鮮人民の一致した念願を反映しており、したがって、それは彼らの熱烈な支持をうけています。

 しかし、敵は、わが国の平和的統一を妨げるためにあらゆる策動をおこなっています。

 ただ、長期にわたる困難な闘争を展開してのみ、朝鮮人民は敵の策動を退けて祖国統一をめざす偉大な闘争で勝利をかちとることができます。このためには、北半部の民主基地を強化して祖国統一の強力な物質的力量に変え、労働者、農民をはじめとする南朝鮮のすべての愛国的勢力を結集して、アメリカ帝国主義者と反逆者李承晩一味に反対する闘争に立ち上がらせなければなりません。

 こんにち、共和国北半部の民主基地は、祖国の平和的統一を促進する決定的な力量となっており、朝鮮におけるすべての情勢変化の基本的な要因となっています。我々の課題は、全人民を立ち上がらせて民主基地を政治的、経済的に強化することであります。

 共和国北半部の人民は、朝鮮労働党第3回大会で基本方向がはっきり示された第1次5か年計画を遂行することによって、民主基地の経済的土台を強化しなければなりません。我々は、わが国の歴史上はじめての5か年計画を遂行することになります。

 5か年計画の基本課題は、共和国北半部で社会主義の経済的基礎をいっそう強固にし、人民の衣食住問題を基本的に解決することであります。

 工業生産力を発展させて、今後、人民経済のすべての部門を近代技術で装備し、より大規模の基本建設をおこなうことのできる社会主義的工業化の土台を築かなければなりません。5か年計画の期間に農業の集団化を完成し、人民経済のすべての分野で社会主義的経済形態をいっそう強固にしなければなりません。

 住民の食糧問題を完全に解決し、その他の食品の供給を急速に増大させなければなりません。人口一人当たりの織物生産を17メートル以上に高めて、衣料問題を基本的に解決すべきであります。勤労者の住宅条件を改善するため、5年間に720余万平方メートルの住宅を国家資金で建設し、農村では20万棟以上の文化住宅を建設しなければなりません。

 第1次5か年計画の遂行は、長いあいだの人民経済の立ち後れをなくし、国を立ち後れた農業国から工業・農業国に変え、社会主義建設で大きな前進をもたらすでしょう。

 党と政府は、5か年計画の基本的課題にもとづいて、重工業の優先的発展を保障しながら、同時に軽工業と農業を発展させる政策をひきつづき実行するでありましょう。

 我々は、国の自立的経済土台をしっかりと築き上げ、それにもとづいて、ソ連、中華人民共和国をはじめ、社会主義陣営諸国との経済的・技術的協力を強化しなければなりません。

 工業部門では重工業を優先的に発展させるが、社会主義的工業化の土台を築き、人民の衣食住問題を解決するうえで緊要を部門に重点をおき、これにもとづいて一般消費物資の生産を急速に発展させなければなりません。原料生産を半製品生産に、半製品生産を完成品生産に転換させ、全般的に加工工業を発展させ、技術装備を強化し、製品の品目をふやし、その品質を決定的に高めるべきであります。こうして、工業の植民地的後進性を一掃し、工業の自立的土台を強化しなければなりません。

 国家は、鋼材の供給を保障するための金属工業、化学肥料と人造繊維の生産を中心とする化学工業、セメント生産をはじめとする建材工業および機械製作工業を発展させ、燃料・動力基地をひきつづき拡張し、豊富な地下資源を広く開発してその精錬加工を強化するでありましょう。

 機械製作工業は、重工業の中核であり、技術発展の基礎であります。こんにち、重工業、軽工業、農業、運輸、逓信など人民経済各部門の機械製作工業に対する要求度は大きいものがあります。機械製作工業は、品質のよいいろいろな機械設備と部品を大量に生産して、人民経済各部門の技術発展を促進しなければなりません。こんにち、機械製作工業は、中小機械製作工業の発展に重点をおき、国内で大量に必要な電気機械、鉱山設備、農業機械、建設機械、船舶、軽工業用加工機械や各種部品の生産に力を注ぐべきであります。

 一般消費物資の生産では、紡織工業をいっそう高い水準に発展させ、食品加工業の発展を促進すべきであります。三面が海に囲まれているわが国において、水産業を発展させることは食生活問題の解決に重要な意義をもちます。漁獲高を急速に増大させ、特に、水産物の加工を決定的に改善すべきであります。

 工業の高い発展速度をひきつづき保たなければなりません。わが国の情勢と革命の発展は、工業生産の発展速度をゆるめることを許しません。ここで決定的な意義をもつのは、工業の技術装備を強化し、先進技術をとりいれる問題であります。我々はまだ、日本帝国主義者から引きついだ工業の技術的な立ち後れを完全に一掃していません。生産の高い発展速度を保ち、加工工業をいっそう急速に発展させ、製品の品目をふやしてその品質を高めるなど、すべての問題が主として技術の発展にかかっています。いまや古い技術によっては、工業を前進させることができません。

 すべての工業部門で絶えず技術的改造をおこない、生産工程を機械化し、新しい生産方法をとりいれなければなりません。技術の発展では、労働者と技術者の創意を奨励してその創案による先進的な生産方法を広く普及する一方、ソ連をはじめ、先進諸国の発達した技術を積極的に学び、大胆に人民経済にとりいれるべきであります。

 工業の高い発展速度を保つうえで、既存企業所の生産的潜在力を積極的に動員し、各企業所の復旧、改造および新設を正しく組み合わせ、投資の効果を最大限に上げることは極めて重要な意義をもちます。我々は工業建設を進めるにあたって、まだ十分に復旧していない企業所を完全に復旧し、既存の企業所の完備、改造、拡張に重点をおきながら、これに一部の企業所の新設を組み合わせる方針をとるでありましょう。このようにすれば、資金を合理的に利用することができ、生産の高い発展速度を保ち、工業発展の基本的課題を保障することができます。

 農業での中心課題は、農業の協同化を完成して協同経営を強化し、穀物生産をひきつづき増大させ、工芸作物の生産を一定の水準にまで引き上げることであります。

 1961年度には、穀物生産を370万トン以上にふやし、工芸作物では綿花、亜麻などの繊維作物と油脂作物の生産に重点をおくべきです。同時に、畜産業、養蚕業、養蜂業、果樹栽培業などを広くおこなって農業を多角的に発展させなければなりません。

 農業の発展にとって、潅漑工事を大々的に進め、土地保護のために河川整理および堤防工事をおこなうことは極めて重要な意義をもちます。したがって、農業への基本投資は、ひきつづき、これらの事業に集中しなければなりません。潅漑・河川堤防工事にあたっては、大規模の対象には国家が投資をおこない、小規模の対象には協同組合や農民の自己資金を広く動員すべきであります。

 こんにち、農業の発展は、決定的に協同組合の組織的・経済的強化にかかっています。既に組織された協同組合を強化し、その収益性を高めないことには、農業の協同化を完成することができません。

 農業協同組合は、社会主義的な経営形態であります。社会主義的経営は、計画なしには運営できません。協同組合は、生産だけでなく分配、交換、消費にいたるまで、すべての経済活動を計画化しなければなりません。計画的生産、計画的分配、計画的消費−−これが協同経営を強化する道であり、農業を発展させる道であります。

 農業を社会主義的に改造するためには、経営形態だけでなく、農業技術と農民の意識までも改造しなければなりません。そうすれば、農業の社会主義的改造を完成し、協同経営をさらに発展させることができます。

 農業協同化で決定的勝利を達成した条件のもとで、農業の技術的改造は極めて切迫した課題となっています。我々は、先進的な営農技術を広くとりいれ、農業を機械化しなければなりません。

 農業の機械化は、わが国の農業の特殊性にてらして、ヘクタール当たり収穫高と土地の利用度を高めることに重点をおき、工業の発展と協同組合の経済的強化に伴って順次に、そして中断することなく進めなければなりません。まず簡単にできる小機械化を実施し、畜力機械を広範にとりいれる一方、農業を順次、近代技術で装備しなければなりません。

 農業の技術的改造とともに、農民の意識を社会主義的に改造しなければなりません。農民の意識は、彼らの社会経済的状態に比べて著しく立ち後れています。農民の階級的教育を強化し、農村の文化建設を積極的に進め、衛生保健事業を改善しなければなりません。こうして、農民の思想・意識と生活慣習からいっさいの立ち後れたものをなくし、社会主義的意識と高い教養をもった社会主務的勤労者に育成しなければなりません。

 人民生活を向上させるためには、工業と農業の発展に即して商品流通を改善すべきであります。5か年計画の期間に、国営および協同経営商業の小売り商品流通額を2倍以上に増大させ、商業網をさらに拡張し、商品供給体系を改善して住民の増大する需要を十分みたすようにしなければなりません。特に、都市と労働者地区への食品供給をひきつづき強化すると同時に、農村に対する各種の工業製品、農業機械および建設材料の供給を急速にふやすべきであります。

 農民の生産意欲を高める方向で買付けを幅広くおこない、商品の源泉をあらゆる面から拡大しなければなりません。農業が協同化された条件のもとで、買付けをいっそう計画的におこない、ここで国家買付け機関と消費組合の役割を高めなければなりません。

 貿易を活発におこなわなければなりません。ここで重要な課題は、輸出資源を極力開発してその品目をふやし、品質を高めてより多くの外貨を獲得することであります。貿易機関の機能と職員の実務水準を向上させるために特別の注意を払うべきであります。

 第1次5か年計画期間に、人民の物質・文化水準は著しく向上するでありましょう。

 人民生活の向上は、人民経済の発展水準に依拠して段階的に解決されなければならず、社会主義的蓄積と正しく結びつかなければなりません。社会主義的蓄積を増大させることなしには、人民経済を発展させることができず、したがって、人民生活を系統的に向上させることもできません。国家は、蓄積を系統的に増大させながら、同時に消費ファンドをふやし、人民の物質・文化生活水準を絶えず向上させるために努力するでありましょう。

 教育・文化事業をひきつづき発展させて勤労者の文化水準を高めなければなりません。解放後、民族幹部の養成では少なからぬ成果が達成されました。その結果、国家管理の分野ばかりでなく、人民経済のすべての分野で近代的企業所を管理運営できる人材をもつようになりました。しかし、これは膨大な社会主義建設の要請に比べて見れば、極めて不十分なものです。

 社会主義を建設するためには、さらに多くの科学・技術幹部を養成しなければならず、すべての勤労者の一般文化水準を急速に高めなければなりません。このために、国家は高等および中等技術教育を発展させる一方、5か年計画期間には中等義務教育制を実施することを予定しています。これは、もちろん困難な事業であります。しかし、これを実施しないことには、わが国の経済的および文化的な立ち後れを早急になくすことはできません。

 教育事業は、生産と密接に結びつかなければならず、勤労者を先進技術と科学知識で武装させて有能な社会主義建設者に養成することに基本をおくべきであります。

 文学・芸術をひきつづき発展させて勤労者の文化生活をいっそう豊かなものにしなければなりません。今後も、朝鮮人民の悠久な文化遺産を継承し、ひきつづき先進国のすぐれた文化の成果をとりいれながら、新しい生活に即した朝鮮人民の民族文化を発展させなければなりません。

 第1次5か年計画の遂行は、非常に膨大で困難な課題であります。全人民が緊張した生産闘争をくりひろげ、多くの難関にうちかってこそ、5か年計画を成功裏に遂行することができます。

 人民経済のすべての部門で厳格な節約制度を実施し内部の源泉を動員するのは、5か年計画の遂行で中心的な問題であります。いっさいの浪費現象とたたかい、生産原価と建設原価を絶えず引き下げ、厳格な経済計算制にもとづいて経済を管理運営しなければなりません。

 朝鮮労働党中央委員会の1956年12月総会決定の実行を通じて高まった勤労者の増産・節約運動を発展させなければなりません。これは、5か年計画遂行の重要な保証であります。

 社会主義経済建設を成功裏に進めるとともに、民主基地を政治的に強化しなければなりません。

 人民政権を強化して国家社会制度を強固にすることなしには、共和国北半部での社会主義建設を保障することはできません。人民政権は、朝鮮人民の手ににぎられた社会主義建設の強力な武器であります。

 共和国政権は、創建以来、全人民を奮起させて歴史的な意義をもつ大きな事業をなし遂げ、平和的建設の時期においても、また戦時においてもその優位性を十分に示しました。しかしこれは、決して国家機関の活動に欠陥がないということを意味するものではありません。我々は、国家活動を改善するためにたゆみない努力を傾けるべきであります。

 人民政権を強化するためには、国家機構を縮小し、すべての国家機関の活動水準を絶えず向上させなければなりません。国家機関の活動家の責任感を高め、官僚主義的な活動方法に反対してひきつづきたたかわなければなりません。現地指導を強化して国家事業を直接大衆と討議し、大衆の熱意と創意にもとづいて難関を克服し、大衆の切実な要求を適時に解決する人民的な活動方法を発展させるべきであります。このようにして、人民大衆を国家活動に積極的に参加させ、人民政権と大衆との結びつきを強め、社会主義的民主主義を高度に発揮させなければなりません。

 広範な人民大衆の民主主義を高度に発揮させるとともに、敵に対する国家の独裁機能を強めなければなりません。反革命に対する独裁を強めることなしには、社会主義建設も人民大衆の民主主義的権利と自由も保障することができません。

 我々は、敵と直接対峙しています。南朝鮮に居座っているアメリカ帝国主義者と反逆者李承晩一味は、絶えず共和国北半部に対する破壊・謀略活動をおこなっています。我々の成果が大きければ大きいほど、敵の破壊活動はますます悪辣になってきています。特に、敵は我々の隊列を分裂させ、我々の内部のさ細な否定的現象をも、その破壊的目的に利用しようと企んでいます。

 このような情勢のもとで、我々の隊列の団結を強め、すべての力を敵とのたたかいに向けなければなりません。いっさいの反革命分子と敵対的要素を一掃し、敵のスパイ、破壊・謀的活動をそのつど暴露し、粉砕しなければなりません。我々の隊列に敵対的要素が入り込めないようにし、敵に足場を与えてはなりません。

 労農同盟にもとづく民主的政党、大衆団体および各階層人民のゆるがぬ統一と団結は、国家の強力な政治的基盤であり、我々の不敗の力の源泉であります。

 祖国統一民主主義戦線を強化して、民主基地を鉄のように団結した革命力量に築き上げなければなりません。そうすれば、いかなる難関に直面しても少しも動揺することなく、団結した力で難関をのりこえて勝利を達成することができます。

 そのためにはまず、人民民主主義制度の基礎である労農同盟を強化しなければなりません。解放後、共和国北半部では人民政権がうち立てられ、土地改革をはじめ、民主的改革が遂行された結果、労農同盟は強固な政治的・経済的基盤をもつようになり、これは先の戦争の試練に立派にうちかちました。しかし、労働者階級は、農民を社会主義の道に導き、社会主義的勤労者に改造することによって、彼らを最終的に自己の側にしっかりと結集させることができるのです。農業協同化で決定的な勝利をおさめたこんにち、わが国における労農同盟はゆるぎない強固なものになったと言えます。

 農業に対する社会主義的工業の指導的役割を高め、農業の協同化を完成して社会主義的農業を発展させ、農村での搾取を最終的に一掃し、農民の物質・文化生活水準を高め、古い思想・意識を改造するための党と政府のすべての施策は、労農同盟を強化し、この同盟における労働者階級の指導的役割を高めることになるでしょう。

 わが国の人民民主主義制度のもとでは、労働者、農民とともに個人企業家、商人その他の階層が政権に参加しており、統一戦線の構成部分をなしています。共和国の企業家、商人は、北半部での民主革命の遂行だけでなく、社会主義建設においても労働者階級をはじめ、すべての勤労者とともに前進しています。

 人民政権は、経済の発展と人民生活の向上に役立つ企業家、商人の合法的な企業活動を支持し、各種の協同組合およびその他の形式を通じて、自発性の原則にもとづき、彼らを次第に社会主義的勤労者に改造する方向で新しい生活の道を開いています。政府は、今後もこの方針を堅持するでありましょう。

 対外政策の分野における最も重要な課題は、ソ連、中華人民共和国をはじめ、社会主義陣営諸国との国際主義的友好と団結を強化することであります。

 帝国主義者は、社会主義諸国間の団結を破壊するため、ありとあらゆる陰謀をこらしています。我々は、帝国主義者の策動に驚戒心を高め、その反動的な宣伝を徹底的に粉砕しなければなりません。

 朝鮮人民は生死をわかつ闘争経験を通じて、プロレタリア国際主義の旗印の偉大な力を体得しました。朝鮮人民は、あくまで、この旗印に忠実であるでしょう。

 朝鮮民主主義人民共和国は、社会制度を異にする諸国間の平和共存に関するレーニン的原則を堅持し、我々とよい関係を保とうとするすべての国と友好的な関係を結ぶために努力するでありましょう。

 植民地主義に反対し、民族独立と平和のためにたたかうすべての国と友好関係を結ばなければなりません。我々は、インド、インドネシア、ビルマ、エジプト、シリアなど、アジア、アフリカ諸国との連帯を強め、相互主義にもとづいて経済的および文化的連係を発展させるために努力するでありましょう。

 日本と正常な関係を結ぶために努力すべきであります。これは、両国人民にとって互いに有益であるばかりでなく、アジアの平和を強固にするうえにも貢献することになるでしょう。

 朝鮮人民は、常に平和を望み、戦争に反対しています。

 ソ連、中華人民共和国をはじめ、社会主義諸国の積極的な努力によって、最近、国際緊張は一般的に緩和の方向に向かっています。しかし、アメリカ帝国主義者をかしらとする侵略的な西方列強の軍備競争と戦争準備政策により、世界の平和はひきつづき脅威をうけています。

 我々は、全世界の平和愛好人民との連帯を強め、強固な平和を保つためにひきつづきたたかうでありましょう。朝鮮人民は、朝鮮で新たな緊張をつくりだそうとするアメリカ帝国主義者と反逆者李承晩一味の策動を粉砕し、敵のいかなる挑発行為をも許すことなく、それに反対してたたかうことによって、アジア、ひいては、全世界の平和維持のために貢献するでありましょう。

 代議員の皆さん!

 祖国の平和的統一と完全独立をめざす朝鮮人民の闘争は正義のたたかいであります。

 こんにち、朝鮮人民は、帝国主義の侵略に反対し、民族の独立を達成するたたかいで最終的勝利を強く確信しています。

 朝鮮人民は、かつての植民地的奴隷ではありません。朝鮮人民は、自己の手に主権をにぎっており、強力な民主基地をもっています。朝鮮人民のすべての闘争は、わが国の立派な革命伝統を受け継ぎ、苦難にみちたたたかいを通じて鍛えられた朝鮮労働党によって導かれています。このような人民は、いかなる力をもってしても征服することはできません。

 共和国北半部を占領し、朝鮮人民を奴隷化しようとした敵の武力侵略は恥ずべき敗北に終わりました。我々の社会主義建設を破壊し、民主勢力の成長を押さえつけようとする敵のあらゆる策動は、失敗を繰り返しています。我々の隊列を内部から切り崩し、分裂をつくり出そうとしたさまざまな反革命分子と反党分派分子の陰謀は、暴露され、粉砕されました。朝鮮人民は幾多の難関と試練に直面しましたが、それを英雄的に克服しました。

 歴史の教訓は、正義のたたかいに立ち上がった朝鮮人民の前進を阻む力はどこにもなく、我々にとって克服できない難関はありえないことを示しています。

 朝鮮人民は、必ず祖国の統一をなし遂げるでありましょう。全国の人民が統一した国土で、豊かで美しく幸せな生活を営む日は必ず来るでありましょう。勝利は、祖国の統一と社会主義をめざす朝鮮人民のものであります。

 ともに、朝鮮労働党と共和国政府のまわりにいっそうかたく団結し、偉大な勝利に向かって勇敢に前進しましょう。
                                                
出典:『金日成著作集』11巻


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