金 日 成

新しい環境にふさわしく郡人民委員会の活動を改善するために
道・市・郡人民委員会委員長講習会でおこなった演説 
1957年7月12日

 私はきょう、郡人民委員会の活動を改善するための若干の問題について述べようと思います。

 1 新しい環境にふさわしく郡人民委員会の活動体系と活動方法を改めるために

 こんにち、郡人民委員会の活動において何よりも重要な問題は、変化した新しい環境と状況にふさわしく活動体系と活動方法を改善することであります。

 現在、郡人民委員会が活動する環境と条件は、過去とは多くの面で異なっています。農業協同化運動が急速に進み、全国的に農民の85%以上が既に協同組合に加入しています。農民の90%以上が協同組合に加入した郡もかなりあり、ある郡では農民の100%が協同組合に参加しました。いまでは事実上、農業協同化が基本的に終わったと見るべきです。

 農業が基本的に協同化された状況下で、人民委員会は当然、変化した新しい状況に即して活動体系と活動方法を改善すべきです。ところが現在、各級人民委員会の活動状況を見ると、個人農を対象にしていた過去の活動体系と活動方法をそのまま踏襲しています。

 里人民委員会の活動に対しても同じことが言えます。いま里には専任の活動家が多過ぎます。里に、人民委員会の委員長と書記長、各農業協同組合に管理委員長と簿記長、それに農産技師または農産技手がいます。1つの里に平均5つの農業協同組合があると見ても、里党委員長まで合わせると、里に専任の活動家が20名近くいることになります。

 戦前は、里に専任活動家が1名しかいませんでした。里人民委員会書記長が専従の場合は、委員長が非専従であり、里人民委員長が専従の場合は、書記長が非専従でした。もちろん、現在の里の規模は戦前に比べて大きくなりましたが、里に農業協同組合が組織され、各協同組合に管理職員がいる以上、里人民委員会に専従の活動家を2、3名もおく必要はありません。

 ところが現在、郡人民委員会委員長は、里人民委員会の専任活動家の人員を減らそうとしていません。これはいまなお、郡人民委員会委員長が個人農を対象にしていた過去のように、すべての活動を里人民委員会を通じておこない、農業協同組合を対象にして活動しようとしないことを示すものです。

 農業協同組合が組織され、そこに各々管理職員がいる以上、郡人民委員会は、農業生産と関連した経済活動は直接協同組合を対象におこなわなければなりません。例えば、郡人民委員会で農業生産についての統計が必要な場合、それを里人民委員会を通じて受けるべきでなく、協同組合から直接受けるべきです。こうすれば、早く統計を受けることができるし、里人民委員会の負担も減らせるでしょう。現在、農業生産計画も郡人民委員会が里人民委員会に通達し、里人民委員会がそれをまた各協同組合に割り当てていますが、こうした活動方法は決定的に改めるべきです。

 郡人民委員会が、直接、農業協同組合を対象にすれば、里人民委員会に専任活動家を幾人もおく必要はありません。里人民委員会に委員長か書記長を1名おき、里人民会議の招集など農業生産以外の仕事を担当させるべきです。今後、里人民委員会には、戦前のように、委員長か書記長のうちの1名だけを専従させるべきです。

 郡人民委員会の活動において重要なのは、計画経済を正しく実施することであります。

 過去の農村は、個人農経営が支配していたため、計画経済の実施は不可能でした。それで郡人民委員会は、農民に具体的な農業生産計画を与えず、概略的な生産目標だけ与えました。個人農経営当時は、そうするほかはありませんでした。しかし、農業が協同化された現状では、計画経済の実施が極めて切実な問題となっています。

 個人農経営当時は、農民各自が自分の生活に責任を負いましたが、農業協同組合が組織されたこんにちでは、農業協同組合管理委員会と政権機関である郡人民委員会が農民の生活に責任を負っています。したがって、郡人民委員会が立派に活動すれば、人民生活が豊かになるし、郡人民委員会が仕事を怠れば人民生活は向上しません。

 郡人民委員会が郡民の衣食住などの生活を豊かにしようとすれば、必ず計画経済を実施し、農業、商業、教育、保健医療をはじめ、各部門の活動を総合的に計画化しなければなりません。

 ところが現在、郡人民委員会は、過去、個人農を対象にしていたときのように、具体的な計画もなしにおおざっぱに仕事をしています。現在計画があるとすれば、穀物収穫高や家畜頭数など若干の計画数字があるのみです。農業協同組合で、穀物はどれだけ生産し、豚は何匹飼い、食肉、野菜、果実はどれだけ生産するという具体的な計画がなく、買付けの種類、数量、その売り先などや郡内の人口、購買力などを正しくとらえて、どんな商品をどれだけ供給するという計画がないのです。河川整理や土地改良はどのようにおこない、今後、農業機械の改良や農村の機械化はどのように進めるという展望計画もありません。

 郡人民委員会がこのように無計画に仕事をしているのは、道・市・郡人民委員長が、計画化に対する認識に欠けており、特に、社会主義経済法則に従って、必ず計画経済を実施しなければならないという確固たる観点に立っていないことに大きな原因があります。

 郡の経済運営を計画化し、すべての仕事を計画的におこなうためには、これを担当する郡人民委員会の計画部署をよく整え、その役割を高めなければなりません。ところが現在、郡人民委員長は数名しかいない計画部署の職員に、多くの仕事を兼任させて雑多な任務を与え、肝心の計画作成を円滑におこなえなくしています。ある道人民委員長は、郡人民委員会に計画部署をおく必要があるかと言って、計画部署の機構を拡張するかわりに、ほかの部署の人員を増やして欲しいと言っているそうですが、これを見ても道人民委員長や郡人民委員長が計画化の重要性をよく知らず、必ず計画経済を実施しなければならないという明確な認識に欠けていることがわかります。

 人民委員会の計画部署は、軍隊で言えば参謀部の作戦局と同じであります。軍隊に作戦局がなければ、戦闘を正しく計画し組織できないのと同様に、人民委員会に計画部署がなければ、行政・経済活動を正しく指導することはできません。変化した新しい環境にふさわしく計画経済を実施し、郡のすべての活動を計画化するためには、郡人民委員会の計画部署を強化し、その役割を決定的に高めなければなりません。

 郡人民委員会は、特に、農業部門の計画化に大きな力を入れるべきです。

 郡人民委員会の幹部は、農業協同組合が計画経済を円滑に実施できるように協同組合の計画作成を十分に援助しなければなりません。郡人民委員会計画部署の職員は、農業協同組合に出向いて、穀物をどれだけ生産するため土質に応じてどの畑にはどんな作物を植え、大水や干ばつの被害防止のため、どこに堤防を築き、井戸はいくつ掘り、貯水池はどこにつくるべきだということ、耕地整理は今年何ヘクタール、翌年には何ヘクタールおこない、畜産は何をどのようにし、果樹園はどこに何ヘクタール造成して、いつから果物をどれくらい生産するということ、また半農・半漁協同組合の場合は、漁獲量や漁具の準備など具体的な内容を盛り込んだ計画を正しく立てるよう援助すべきです。農業協同組合では、年間計画だけでなく、5か年計画のような展望計画も立てなければなりません。今年、国では計画部門の職員を2千名ほど動員して農業協同組合の計画作成を援助する計画です。

 各農業協同組合の計画が正しく作成されれば、全国的な農業部門の計画化が円滑に実現できます。農業生産計画は、中央がつくって道、郡をへて各協同組合におろす方法もあるし、逆に協同組合の方から順次上の方へと案を上申する方法もあります。最も望ましいのは、計画を下の方から順次上の方へあげることです。そうすれば、計画が具体的実情に即した現実的なものとなります。ところが、まだ農業協同組合の運営水準が低いため、当面の計画と展望計画を自力で正確に立てることができません。したがって、郡人民委員会は、計画部門の職員を協同組合に派遣して展望計画や当面の営農計画を立ててやり、組合が立てた計画を総合して郡の計画を作成すべきです。

 郡人民委員会は、農業生産計画だけでなく、商業をはじめ、他部門の計画も具体的に立てなければなりません。郡人民委員会委員長のうちで、自分の郡の消費組合商店における商品の売上高や必要な商品の種類、数量を具体的に知って.いる人がほとんどいません。郡人民委員会委員長は、住民の需要と購買力がどの程度なので水産物や工業製品はどれくらい必要であるがを熟知し、商品供給計画を正確に立てなければなりません。また、郡で運搬すべき物量はどれだけあって、それに必要な荷車の台数や他の運搬手段の必要量などを正確に見積るべきです。

 労働力の計画も必要です。現在国の労働力はたいへん不足しています。新しい工場、企業所が多く建設されていますが、労働力の源泉が枯渇しているため、必要なところに必要なだけの労働力を提供できないでいます。今年の上半期だけでも、工業部門に新たに3万〜4万名の労働力が必要とされていますが、源泉がなくて補充できませんでした。労働力の問題は、今後さらに逼迫するでしょう。増大する工業部門の労働力需要を満たすため、人民経済各部門の労働力の組織を合理的におこない労働力の浪費をなくし、特に農村で労働力を合理的に管理し、その一部をさいて工業部門に組織的に進出させるべきです。

 現在、農村では労働力の組織と管理をなおざりにしているため、おびただしい労働力の浪費をまねいています。郡が農村の労働力を無計画に動員して浪費する現象もかなりあります。ある郡では、設計や資材の準備もなしに工事に着手し、多くの農村労働力を動員して遊ばせています。しかし、こうしたことを正確に掌握して統制する人がいません。郡人民委員会委員長は、農村労働力を正確に掌握し、それを計画的に利用するよう統制し、全般的な労働行政を徹底して計画化しなければなりません。

 郡人民委員会は、保健医療事業や教育事業も計画化すべきです。年間の学生数の増大に伴う教室や教員の増加、学校の補修や教具・校具の準備なども計画化しなければなりません。

 このように農業をはじめ、各部門の事業の計画化を徹底させるならば、郡人民委員会が郡全般の事業を掌握して正しく指導し、郡の戸主としての役割を十分に果たすことができるのです。

 郡人民委員会委員長は、計画事業の重要性を正しく認識し、すべての仕事を計画化し、計画経済を正確に実施するために努力しなければなりません。

 2 農村における搾取行為を一掃すること.について

 いまや、農村におけるいっさいの搾取行為を一掃すべきときがきました。ところが、道・市・郡人民委員会委員長は、このたたかいを積極的に進めていません。

 農村で搾取行為を一掃するためには、農業協同組合を組織することだけでは不十分です。生産分野で協同経営を組織し発展させるとともに、流通および信用分野でも協同経営を発展させなければなりません。生産と流通、信用分野でともに協同経営を発展させなければ、農村における搾取行為を一掃し、社会主義制度を確固と樹立することができません。

 農村での搾取行為を一掃するうえで、消費協同組合を強化し、商品流通を円滑に保障することが重要です。

 農村で生産した農産物を適時に買い上げて都市に送り、都市の商品をとどこおりなく農村に送って都市と農村間の商品交流を円滑におこなえば、労農同盟を強め国家資金の回転を早め、人民生活も向上させることができます。

 都市と農村間の商品交流を強化するため、昨年、消費協同組合の組織体系を改編して、農村の消費協同組合が農村に商品を供給すると同時に、農民の生産した農産物を計画的に買い上げて郡・市に送る仕事もおこなうようにしました。今年の1月に、党中央委員会常務委員会は、商業問題を全面的に討議し、農業が協同化された状況に即応して、農産物買付けを強化し、商品供給を改善するための決定書を採択して通達しました。

 この決定書が通達されて半年以上経ちましたが、郡人民委員会委員長はいまも穀物生産さえあげればすむものと考え、商業に関心を払わず、農産物の買いつけも十分に指導していません。

 数日前、黄海南道の現地指導の途中碧城郡のある農村の消費協同組合商店に立寄って見ると、そこでは大根のきりぼしを売っていました。農村の商店で大根のきりぼしを売っているのが納得できなかったので聞いてみると、郡がそれをキログラム当たり150円で買い上げ郡機関所在地で売ろうとしたのだが売れなかったため、農村商店に送り返しキログラム当たり5円でもよいから売れという指示があったと言うのです。これを高く買い上げたのも間違っていますが、農村商店に送り返して買いつけ価格より安く、しかも売手の農民にそれを再び買わせたのは全く話になりません。郡人民委員会委員長が仕事を立派に組織して、それを野菜の出回りのよくない炭鉱や鉱山、工場地区に回せば、値段も当たり前にもらえるし、労働者の副食物の解決にも助けになるでしょう。大根のきりぼしをキログラム当たり150円で買い上げて5円で売らざるをえなくなったのは、郡人民委員会委員長が農村の消費協同組合の仕事に関心を払わず、仕事を正しく組織しなかったことに原因があります。

 農業協同組合が生産した食肉、野菜などの農産物や畜産物を都市と労働者地区で直売する課題も正しく実行していません。まだ、都市や労働者地区に農産物直売店を設けたところがありません。

 郡人民委員会委員長が農産物買上げと販売を円滑に組織しなかった隙に乗じて、私営商人が農民から農産物を安く買いたたき、労働者、事務員に高く売りつけています。これは、農村で搾取行為を一掃して社会主義を建設しようとするわが党の政策に反することです。こうした搾取行為を放任するのは、結局、資本主義を容認するのも同然です。

 現在、各郡人民委員会委員長は自郡の農村市場も満足に掌握し管理していません。そのため、悪徳商人が農民と労働者、事務員を搾取するのに農村市場を利用しています。

 市のたつ日には、多くの人が市場に集まります。ある人はほうきなど細かい物を持ってきては副食物と交換し、一部の農民は酒やアメなどを求めるために鶏や野菜をもってきます。ところが市場には、農民が持参した農産物をはかる秤や升がなく、それを買い上げて需要者に売る消費組合商店や国営商店、買いつけ機関もありません。そのため、個人が市場で秤や升ではかってやって手数料をとっており、商人が農民の品物を安く買いたたき、よそで高く売って暴利をむさぼっています。農民は、市場に持ってきた鶏や野菜などが売れなくなると持ち帰るわけにいかず安く売るのですが、こうした機会に悪徳商人が農産物を安値で買いたたき、都市で高く売るのです。結局、商人は市場を通じて農民や都市の労働者、事務員を搾取しています。

 このような搾取行為をなくすためには、農村市場に消費組合商店や国営商店、買付所を設け、秤などの度量衡器を備えつけなければなりません。そうすれば、農民が持参した農産物の売り残りがあればそれを商店や買付所に売って必要なものを買い、商人の中間搾取を防ぐことができます。

 農村で搾取行為を一掃するためにはまた、信用協同組合を広く組織しなければなりません。

 いま農村には、高利貸行為がかなりあらわれています。ごく一部ではありますが、農業協同組合員のなかにも高利貸しをする人がいるとのことです。高利貸行為は、咸鏡南道や平安南道、その他のすべての道に見られます。

 農村にまだこうした高利貸行為が残っているのは、農民に生活資金を貸付ける機関がないことと大きな関係があります。農民が生活しているうちに急にお金が必要な場合があります。それで農民銀行の設立当初、そこで農民の貯金も受け入れ、貸付けもおこなうようにしました。ところが、職員たちに経験がなく農民銀行を正しく運営できなかったため、現在農民銀行は、農村の基本生産資金を出納する役割しか果たしていません。結局は、農民に生活資金を貸付ける機関がないことになり、資金が入用の場合やむを得ず利子のつく金を個人から借りるようになるのです。

 農村の高利貸行為をなくすためには、農民を対象にする信用協同組合を新しく設立すべきです。農民銀行は、国営の農業銀行に改め、農村の各里には信用協同組合を新設すべきです。信用協同組合を組織して、農民の貯金も扱い、生活資金も貸付ければ農村の高利貸行為を一掃することができます。農業銀行は、国営金融機関として国営農牧場や農業協同組合に農業発展資金を融資し、同時に信用協同組合に対する指導と資金援助もおこなうべきです。

 農村の搾取行為を一掃するためには、農業協同化を完成する一方、都市における私営商工業の社会主義的改造を早めなければなりません。

 郡機関所在地には、私営手工業者が多く住んでおり、半商・半農もかなりいます。私営手工業者には生産協同組合をつくらせ、地元の原料で日用必需品を大量に生産するようにすべきです。郡機関所在地で半商・半農を営んでいる人は、生産・販売協同組合をつくって生産も、販売もおこなうようにするのがよいでしょう。

 まだ協同組合に加入していない人に対しては、自発性の原則を厳守し、協同経営の優位性を示して進んで協同組合に入るようにすべきです。そして1、2年内に社会主義的改造を完成するようにしなければなりません。

 3 農業協同組合の強化について

 農業協同化が完成されつつあるこんにちの農村で重要な問題は、これまでに組織された農業協同組合を強化することであります。

 農業協同組合を強化発展させるためには、何よりも組合の経済土台を強化しなければなりません。これなくしては、組合員の生活を向上させることも、協同経営の優位性を発揮させることもできません。

 農業協同組合を経済的に強化するための第一義的な課題は、潅漑施設を多く建設することです。潅漑施設を多く建設すれば、干ばつや洪水の被害を受けずに農業を安全に営み、穀物生産を急速に高めることができます。

 わが国にはまだ、水利の不完全な田が多く残っています。黄海南道などは水利の不完全を田が多く、今年の春に日照りがつづいたので、まだ、田植えが終わっていないところもあるとのことです。

 春に雨が降らず日照りがつづくのは、わが国の気候の特徴だと言えます。したがって、穀物の収量を高めるためには、潅漑工事を大々的におこなって水利の不完全な田をなくさなければなりません。

 わが党第3回大会では、国家的な大規模の潅漑工事をひきつづき強力に進める一方、国の支援のもとに協同組合が自力で潅漑工事を多くおこなう方針を示しました。潅漑工事を進めるに当たってはこの方針を貫くべきであります。

 わが国には、中小潅漑工事を広く進めることのできる有利な条件が備わっています。農業の大部分が協同化され、中小潅漑工事に必要な設備と資材を供給できる経済的土台もあります。

 中小潅漑工事を広くおこなうためには、各道に潅漑建設企業所を別個に設ける必要があります。これまで潅漑工事は、中央の潅漑水利建設局が一手に引き受けておこないましたが、ここでは平南潅漑のような大規模の潅漑工事だけを推進し、小さなものはあまり進めようとしません。したがって、潅漑水利建設局は、国家的な大規模潅漑工事だけを担当し、農業協同組合でおこなう中小潅漑工事は、潅漑建設企業所が受け持つようにすべきです。そうすれば、協同組合で農民自身がおこなう潅漑工事を積極的におし進めることができます。

 新設される潅漑建設企業所は、道人民委員会の指導をうける独立採算制機関として、農業協同組合が自分の資金と労働力で進める潅漑工事を、手数料をとって技術指導や委託設計をしたり、協同組合の力では遂行困難な対象を引き受けて工事をおこなうべきであります。

 潅漑工事とあわせて河川整理に力を入れなければなりません。

 過去に日本帝国主義者は、わが国で河川整理を全くおこないませんでした。そのため、ひとたび長雨か大水に見舞われると、多くの土地が流失します。実際のところ、毎年新たに得る耕地よりも大水で流失する方が多いのです。

 咸鏡南道の北青郡や新浦郡などでは、川床が田畑より高いのを多く見かけます。こういうところでは、河川整理から先におこなうべきです。

 第1次5か年計画期間に、国の全地域で河川整理を大々的におこない、大小の河川をすべて整理しなければなりません。川床の高くなったところでは、川底をさらい、土砂の流れるところには砂防林を造成して洪水の被害をこうむらないようにすべきです。

 土地の利用度を高めるために積極的に努力しなければなりません。

 わが国は、耕地面積が限られているため、穀物を増産するためには土地の利用度を高めなければなりません。特に畑地の利用度を高めることが大切です。わが国の総耕地面積190万ヘクタールのうち、田は50万ヘクタールそこそこで、あとの140万ヘクタールは畑です。したがって、穀物増産のためには、水田とともに、畑地の利用度を高めることが極めて大切です。

 現在、わが国で土地利用度の最も高いところは、咸鏡南道の北青郡です。最近、郡党委員長たちが北青郡に行って見て多くのことを学んだと異口同音に言っていますが、皆さんも講習会が終わりしだい一度行って見るべきだと思います。

 北青郡では、トウモロコシ畑に間作として大豆、ジャガイモなどを植え、ヘクタール当たり3〜4トンの穀物を収穫していますが、これは他の地方に比べて非常に高い水準です。すべての郡が北青郡の模範に習い、作物の配置を適切におこなってヘクタール当たりの収量を高めるように努力すべきです。

 北青郡では畑ばかりでなく、山も合理的に利用しています。そこでは、山を開墾して立派な果樹園を造成しました。北青郡のようにすれば、平安南道や黄海南道、黄海北道の小山はすべて果樹園に変えられるし、わが国で果樹園を造成できないところはほとんどありません。農学者たちの話によれば、白頭山一帯を除くわが国の全地域で果樹栽培が可能だとのことです。白頭山にも、黒豆の木の実のような野生果実があります。それゆえ、適地適作の原則に従って、いろいろな果樹を栽培すれば、わが国の山はすべて有効に利用できます。

 現在のわが国の果樹園面積は1万5千ヘクタールほどですが、第1次5か年計画期間にそれを10万ヘクタールに拡張する予定です。

 いま、果樹園造成の熱意が非常に高まっています。計画もまだ通達しないのに、咸鏡南道では新たに2万ヘクタールの果樹園を造成すると言い、咸鏡北道では吉州都だけで2千ヘクタールをつくると言っています。咸鏡北道全体の現有果樹園面積が500ヘクタール程度なのに、吉州都だけで2千ヘクタールを造成するというのはたいへんなものです。いたるところで山に果樹園を造成し、山を有効に利用するために力強くたたかわなければなりません。

 穀物の収量を高めるためには、先進的営農方法を積極的に導入すべきです。

 わが国の耕地面積は限られていますが、穀物と工芸作物の需要はひきつづき増大しています。こうした状況下で農産物の需要を満たすためには、穀物のヘクタール当たり収量を高めなければならず、そのためには営農方法を決定的に改善しなければなりません。

 現在、営農方法が立ち後れています。なかでも黄海南道と黄海北道が最も後れています。このたび黄海南道延安郡に行って農民と話し合って見ましたが、そこでは冷床苗も満足に導入しておらず、田植えを早める課題も実行していません。甚だしくは、農民が並木植や小株密植という言葉すら知らないありさまです。

 一部の農民が立ち後れた営農方法を固執するのを放任してはなりません。農業協同組合が組織された今こんにちにおいて、先進的営農方法を導入しない傾向とはたたかうべきです。古いものとの闘争なくしては、先進的営農方法は導入できません。

 平安南道粛川郡の一例をあげて見ましょう。今年のはじめ、粛川郡の農業協同組合活動者会議に参加したことがありますが、その会議である老人が発言しました。老人は、自分たちの協同組合で最初、苗の並木植えと畜力除草機を導入するとき、青年は全部賛成しましたが、老人はみな反対したとのことです。しかし、その老人は、青年たちといっしょになって並木植えと畜力除草機の採用を主張しました。彼は他の老人たちからあれこれと非難されましたが、党の方針が正確で青年たちのやっていることが正しかったので、自分の主張を曲げずに、青年たちとともに並木植えを導入し、畜力除草機で草取りをしたとのことです。その結果、収穫が大幅に増えたのを見て、他の老人たちも並木植えがすぐれていることを認識するようになったと言います。

 先進的営農方法を導入する過程で、一部の立ち後れた農民が、古い経験を固執することもあるでしょう。しかし説得し、よく教え、実物で先進的営農方法の優位性を示せば、誰でもそれを受け入れるようになるでしょう。すべての協同組合が、先進的営農方法を導入するために積極的に努力すべきです。

 営農方法を改善するとともに、農業を機械化するために努力しなければなりません。

 いま農民は、機械化を切実に求めています。農民のこうした要望はいちだん高いものと見るべきです。農民自身が機械化を求める以上、この問題は絶対におろそかにできません。党は農業機械化の実現をいま非常に重視しています。

 農業の機械化は、農村の具体的実情と国の経済状態を考慮して漸進的方法で積極的に進めるべきです。

 可能なすべての条件を利用して、簡単にできる小機械化もおこない、畜力農業機械も広く導入すべきです。このようにしなから順次、わが国の条件に合う近代的な農業機械を大量に生産しなければなりません。

 我々は農業機械化のため、既に大きな農業機械工場を建設しておきました。ところが最近、農業機械工場に行って見たら、まだわが国の実情に合う新型のすさの一つも作っておらず、農業機械の種類も増やしていません。農業機械工場とは名ばかりで、トウモロコシと稲の脱穀機しか作っていません。これでは、農業の機械化を順調に進めることができません。

 立派な農業機械工場を建設しておきながら、わが国の条件に合う農業機械を製作できないのは、この部門の人たちが大衆のなかに入っていかず、特に農民の骨の折れる労働を軽減しようという精神に欠けているためです。

 農業機械の製作者が農村に行って農民と話し合い意見も聞けば、創意に富んだ立派な意見が多く出されるでしょう。あるところでは、農民が自力で荷車を自動荷下ろしができるように改造し、仕事を楽にしなから多くの労働力を節約しています。農民の創案によるこうしたものをさらに研究し完成するだけでも、新しい農業機械を多く作れるはずです。問題は働き手たちに、農業の機械化を急ぎ、農民の骨の折れる労働を軽減しようという熱意と努力が欠けていることにあります。

 農業協同組合を組織することで、農村における社会主義革命が終わるものと考えてはなりません。経営形態を社会主義的に改造するだけでなく、農業を機械化し農民が楽に仕事のできる条件をつくらなければなりません。そうしてこそ、共産主義の第1段階に入ったと言えます。すべての人が、農業の機械化に対する正しい認識をもち、機械化を促進するために積極的に努力すべきです。

 農業協同組合の経済土台を強化するためには、農業を多角的に発展させなければなりません。

 農業協同組合の昨年度の分配状況を見ると、農家当たり平均、穀物は1トン616キログラム、現金は9542円ずつゆき渡りましたが、これは組合の経済土台が1955年度に比べて著しく強化されたことを示しています。しかし、我々はこれに満足してはなりません。党はすべての組合で農家当たり穀物は2トン、現金は1万5千円以上に分配を高める目標を立てています。この目標を達成するためには、潅漑をおこない土地利用度を高め、機械化を実現して穀物を増産する一方、農業を多角的に発展させて現金収入を増やさなければなりません。

 農業を多角的に発展させるためには、山をひかえているところでは山の幸をとって暮らし、海をひかえているところでは海の幸をとって暮らす原則に従って、副業を発展させなければなりません。

 山をひかえているところでは果樹栽培を盛んにおこない、海をひかえているところでは水産業を発展させ、畜産業の可能をところでは牛、豚、兎などを多く飼育し、養蜂の可能をところでは養蜂を大々的におこなうべきです、このように経営を多角的に発展させれば、組合の経済土台を強化し、組合員の現金収入と購買力を高めて生活を向上させ、協同経営の優位性をいかんなく発揮させることができます。

 次に、農業協同組合の政治的強化に力を入れなければなりません。

 農業協同組合を政治的に強化するためにはまず、組合員に対する思想教育を強めるべきです。農村で社会主義革命を完成するためには、経営形態を社会主義的に改造し、技術を発展させるとともに、農民の思想・意識を社会主義的に改造しなければなりません。

 農民に階級的教育を強化して、地主と搾取制度を憎み、社会主義制度の破壊をねらう階級敵の策動に対して断固たたかうようにすべきです。これと同時に、組合員が、組合の主人としての自覚と社会主義勤労者の高い誇りをもって、協同経営の発展と自分自身の幸せのために熱心に働くようにすべきです。

 農業協同組合の管理運営において民主主義を高度に発揮させなければなりません。民主主義の原則に従って組合を管理運営すれば、すべての組合員が発言権をもって組合の仕事に主人らしく参加し、組合の共同財産を着服・浪費したり、働かずに遊んで暮らそうとする傾向と強くたたかうことができます。

 農業協同組合で民主的な管理原則を貫き、管理職員が組合員の意思を抑圧できないようにし、組合の業務と財産の管理状況を定期的に組合員に知らせるべきです。

 農業協同組合を政治的に強化するためには、農村の党組織と勤労者団体を強めて、その役割を高めることが重要です。

 現在、農村の党組織と勤労者団体は、中核的大衆との活動を満足におこなっていません。このたび、黄海南道と平安南道の現地指導を通じて調べたところによれば、一部の党組織は、中核的大衆を党のまわりに結集して農村で中核の役割を果たすように指導、援助する活動を満足におこなっていません。一部の地方には、農村の「有志」を援護したり、労働点数を多く稼いだ人であれば、階級的な考慮を払わずに無条件に模範組合員としておしあげる正しくない傾向があらわれています。もちろん、労働点数を多く稼ぐことはよいことです。しかし、そういう人が、必ずしも、わが党の農村中核になるのではありません。

 農村におけるわが党の中核は、かつての反日闘争参加者、土地改革当時、地主とのたたかいに積極的に参加した人、祖国解放戦争当時、勇敢に戦った人、そして、愛国烈士の遺族と戦死者の遺族、人民軍留守家族たちであります。これらの人々を党のまわりに結集し、彼らが農村で中核的役割を果たせるようにしてこそ、わが党の農村陣地を強化し農業協同組合を発展させることができるのです。

 昨年の冬、平安南道文徳郡上八里のある農業協同組合に行って見ると、組合がよく整い仕事も順調に運んでおり、農民の生活も高い水準にありました。その組合では昨年、1作業日当たり穀物を11キログラムずつ分配したと言っていました。それで聞いてみると、そこの組合管理委員長は、かつては下男暮らしをした60の高齢者で、解放後、土地改革の際は先頭に立ってたたかい、協同組合にも真っ先に加入したわが党の中核でした。このように、党の中核が管理委員長をしている組合では、仕事も順調に進み、組合員も立派な暮らしをしています。ところが、農村の「有志」や都市の「背広姿の紳士」が管理委員長をしている組合では仕事がスムーズに運ばず、組合員も困難な生活をしています。

 党組織は、長年の階級闘争を通じて鍛えられた人たちと愛国烈士の遺族、戦死者の遺族、人民軍留守家族が協同組合で中核の役割を果たすように指導し援助すべきです。党組織は、いくらかの知識があって口の達者なものを組合の管理幹部に登用するようなことがあってはなりません。こうしてこそ、生まれたばかりの農業協同組合を政治的に強化し、農業の社会主義的改造で得た勝利を発展させることができるのです。

 農業協同組合を強化するためにはまた、農村の文化革命を遂行しなければなりません。

 農村の文化革命を遂行せずには、協同組合を経済的に強固にする活動も、農民の思想・意識を高めて協同組合を政治的に強化する活動も成功裏に進められません。

 こんにち、農村文化革命の遂行で焦眉の問題は、勤労者階級出身で知識のある人材を多数育成することであります。

 農民を社会主義意識で武装させ、全般的文化水準を高めることは、1、2回の演説や何回かの講習で実現できるのではありません。この問題を円滑に解決するためには、それを担当できるレベルにある幹部が必要です。ところが農村の現状を見ると、幹部の知識水準が極めて低いのです。

 かつて土地改革に参加したか、農村で中核の役割を果たしていた青年のうち、知識層はほとんど軍隊に入隊したか、工場や都市に出ており、農村には大体知識水準の低い人たちが残っています。現在の農村には、100〜200戸からなる農業協同組合に中学卒業の青年は3、4名しかおらず、多くて7、8名程度です。それも大部分が女子です。

 これまで農村の、知識があって階級成分のよい人たちは抜てきしてよそに回し、農村陣地をかためなかったのは大きな誤りでした。強い階級意識と高い文化水準を備えた、準備のできた人材がなければ、社会主義農村建設は順調に進みません。

 最近、除隊軍人を多数農村に派遣する措置をとったので、事情は多少よくなると思います。しかし、これに満足してはならず、知識を身につけたわが党の中核で農村陣地をかためるために努力しなければなりません。

 貧農の子弟で、ある程度の知識を備えた青年たちを農村に多く派遣して定着させ働くようにすべきです。いまなお一部の青年は、農業を卑しみ、農村に定着しようとしません。青年に対する教育を強化し、彼らが農村に根をおろして、すべての活動において主動的役割を果たすようにすべきです。

 農村学校の教員も、農村に育ち勉強した貧農出身の子弟を配置すべきです。そうすれば、地主と搾取制度を憎み、社会主義制度を擁護する精神で学生を教育することができます。地主の息子が教壇に立てば、地主が悪いということが言えず、学生に正しい階級的教育をおこなうことができません。

 農村にいる愛国烈士の遺族、戦死者の遺族、人民軍留守家族の子弟が十分に教育を受けられるよう、各方面から援助すべきです。農村の現状は、人手の多い家庭の子弟はほとんど初級中学校か高級中学校にあがっていますが、愛国烈士の遺族や戦死者の遺族、人民軍留守家族の子弟は家に人手が足りないため、人民学校卒業後はほとんど上級学校にゆけず、協同組合で働いています。各協同組合では、党の中核と勤労者大衆の子弟が学べるようあらゆる援助を与えるべきです。勤労者大衆の子女が知識を身につけて農村の中核となり幹部になれば、協同組合を強化し健全に発展させることができます。

 4 教育事業と保健医療事業に対する指導を強化し、農村建設を立派におこなうことについて

 現在、郡人民委員会委員長は、教育事業に大きな関心を払っていません、このまえ、郡党委員長たちにも話したことですが、郡人民委員会委員長が学校を指導する場合は、校舎を建設し教室に雨が漏らないかを確かめる程度で、教員が生徒たちをどのように教えているかは知ろうともしていません。

 私は昨年2月に、平安南道价川郡党代表者会議に参加しましたが、そのとき高級中学校の校長が、郡党委員会と郡人民委員会に学識のある人が多いにもかかわらず、年に一度も学校の事業を指導しないという発言をしました。价川郡だけでなく、他の郡の場合も事情は同様です。

 郡人民委員会委員長は、しばしば学校に出向いて授業参観もおこない、教員が生徒をよく教育しているかどうかを点検すべきです。また生徒たちが、どのように学習し、思想状態はどうかなども知らなくてはなりません。生徒のなかに悪さをするものがいれば、誰の悪影響を受けたかを確かめ、是正策を立てるべきです。

 郡人民委員長は、学校管理にも深い関心を払うべきです。高級中学校と専門学校は道人民委員会の担当ですが、人民学校と初級中学校は郡人民委員会が責任をもって管理することになっています。郡人民委員会委員長は、学校の教育条件を十分に保障し、学校を秩序正しく管理運営するように指導すべきです。

 次に、保健医療事業を正しく指導しなければなりません。

 いま人民委員会委員長は、保健医療事業を満足に指導していません。一部の人民委員会委員長は、保健医療事業を強化するようにというと、病院を増設しベッドを増やしてくれという要請から先に出します。もちろん、それも必要です。しかし、病院を増設しベッドを増やそうとすれば、医薬品や医師も十分に満たせなくてはなりません。医薬品も医師もいない状態で、ベッドを並べ病院の看板をかかげるだけでは全く無意味です。したがって、病院やベッドの増設よりも、こんにちの経済状態を考慮してすぐできるものから先に手かけるべきです。

 保健医療事業で何よりも重要なのは、人民の疾病の予防事業を全大衆的運動で力強く展開することです。

 予防事業の強化については、人民保健医療事業の改善強化に関する党中央委員会1956年8月総会の決定にも具体的に示されています。ところが現在、人民委員会委員長と保健医療従事者は、党の決定を正しく実行しておらず、予防事業をおろそかにしています。

 町や村の衛生美化に大きな関心を払うべきです。農村に行って見ると、清掃もきれいにおこなわず、井戸や便所などの管理も満足におこなっていません。人民委員会委員長は人民の生活に責任を負っているだけに、こうしたところにも関心を向け、井戸にはふたをし便所を清潔にするように教育と仕事の組織を正しくおこなわなければなりません。

 現在、一部の農村に伝染病がはやっているとのことですが、これは衛生防疫活動が不徹底であったためです。農民が衣服の洗濯や入浴もきちんとおこない、住宅の内外を清潔にすれば、伝染病は十分予防できます。こういう活動には資材や労働力が多くかかるわけでもありません。さきの祖国解放戦争のとき、アメリカ帝国主義者の細菌兵器の使用によって一部地域に発疹チフスが発生しましたが、そのとき前線の高地でもドラム缶を使って軍人が風呂にも入り消毒もおこなって伝染病を防ぎました。戦争の困難な状況下でさえ、それができたのに、こんにちの農村に浴場などの衛生施設を整えられない理由はありません。

 保健医療事業が正しくおこなわれないのは、一言でいって郡人民委員会委員長がこれをおろそかにし、正しく指導しないからであります。郡人民委員会委員長は、こうした欠陥を早急に改め、人民保健医療事業を改善すべきであります。

 次に、農村建設を正しく指導しなければなりません。

 現在、農村建設を正しく指導するところがありません。そのため、農村に住宅を建てる場合も、計画的に実用的なものを建てずに、分散的におざなりの建て方をしています。平安南道大同郡では、農民が大道路のわきに不格好な家を無秩序に建てていますが、郡人民委員会の幹部たちはそれを見て放任しています。農村の道路建設もおざなりにやっています。道路修理をするなら、人手がかかってもよそから土や砂利を運搬してきて敷くべきですが、道路わきの畑のへりの土を掘って敷く安易な方法でおこなっています。雨で耕地が流されないように、畑のへりを整理して芝生を植えるか石垣をつくる代わりに、畑のへりを掘って耕地をだめにしています。

 農村建設においては当然、郡人民委員会委員長が主人となるべきです。郡人民委員会委員長は、住宅、道路、植樹区画などの計画を立て、郡づくりを立派におこなうために努力すべきです。

 いまでは農民の生活にゆとりができたので、いたるところで住宅を建てようとしています。黄海南道信川郡セナル協同組合では、今年60所帯の住宅を新築すると言っています。国では、第1次5か年計画期間に20万所帯の住宅建設用資材を農村に供給する予定です。農民が自力で建設するのと国が建設する分を合わせれば、5か年計画期間に農村に数10万所帯の住宅を新築することになります。したがって、農村建設を従来のようになるがままに任せてはなりません。郡人民委員会委員長が農村建設を正しく指導すれば、5か年計画期間に農村の住宅問題を基本的に解決し、郡機関所在地も立派に整えることができます。

 農村で自動車通行のはげしい大道路のわきに住宅を建設しないよう、住宅建設区域を適切に定めるべきです。農村道路がまだ舗装されていないため、自動車のほこりが多くて道路わきに住宅を建てるのは不適当です。住宅は道路から少し離れた山の麓に建てれば、外観もよく住み心地もよいでしょう。こういう点も考慮して宅地をあらかじめ設定し、住宅をところ構わず無秩序に建てないように統制すべきです。

 道路も無秩序に作ったり、不必要に広くしないようにすべきです。耕地に食い込むのも考慮せずに道路を作ったり広くしたりする現象が多いのですか、そうしてはなりません。農村は自動車の往来がそれほど多くないので、道路を広く作る必要はありません。許可なしに道路を広くしたり、新設することがないようにすべきです。

 郡機関所在地を立派に整えなければなりません。

 黄海南道、黄海北道をはじめ、一部の地方では、郡人民委員会委員長が郡機関所在地に高層建築を建てることばかり考え、階数の低い住宅の建設を禁じているため通りが閑散としています。載寧郡では、農業機械賃耕所も郡機関所在地におかず近郊に建てました。そのため、いまだに郡機関所在地の建設が進んでいません。郡所在地は、都市ではなく、農村地域の中心地です。郡所在地に大きな工場、企業所がない場合は、高層建築を多く建てる必要がありません。高層建築を建てることばかり考えずに、空地に階数の低い住宅を整然と建設し、郡機関所在地を早急に整えなければなりません。

 今後、農村建設が大々的におこなわれる条件では、郡に建設協同組合を組織し、農業協同組合に建設作業班を設けるべきです。建設協同組合は、郡にいる大工や左官、石工で組織して郡機関所在地の建設対象を受け持ち、農業協同組合の建設作業班は、農民の住宅の修理や新築をおこなうようにすべきです、このように郡に建設陣容を整えておけば、郡の建設技術の向上と、地元資材の利用にも便利でしょう。農村建設に必要な設計は、道で標準設計を作ってやるべきです。

 5 人民政権機関の強化について

 道・市・郡人民委員会委員長の活動において最も重要なのは、人民政権機関を強化することです。

 人民政権は、解放後の民主改革の闘争と去る祖国解放戦争の過程でかつてなく強化発展し、その優位性をいかんなく発揮しました。人民は実生活を通じて、人民政権が人民に奉仕する最もすぐれた政権であることを強く確信しています。

 人民政権の強化において、地方政権機関の機能と役割を高めるための、1952年2月演説は重要な意義をもちます。この演説があったのち、政権機関の幹部のあいだで反官僚主義闘争が力強く展開され、人民政権機関の活動では大きな成果が達成されました。しかし、まだ政権機関の幹部のあいだには、大衆の声に耳を傾けずその利益を犯し、大衆のなかに入って彼らととけあうのでなく押しつけ、形式的な活動をおこなうなどの現象が、かなりあらわれています。

 こんにち、人民政権の強化において重要なのは、政権機関の幹部たちが官僚主義に反対し、人民との結びつきを密接にすることであります。人民政権が人民と密接な連係を保てば、大衆が何を考え何を求めているか、活動での欠陥は何であり、長所はどういうものかを知ることができます。

 政権機関の幹部は、常に下部に行って、里人民会議や協同組合管理委員会の会議にも参加し、農業協同組合の農産計画の立案や決算分配などの仕事も援助し指導すべきです。また、大衆の求めるもののうちから正否を識別し、誤りは諭すべきです。

 人民政権を強化するためには、政権機関幹部の党性を高めなければなりません。

 党性とは、党に対する忠実性であります。政権機関幹部の党性は、党の政策と決定を正しく認識し、大衆のなかに深く浸透させ、その貫徹を正しく組織するところにあらわれなければなりません。人民政権は、わが党の路線と政策の実行者であるので、政権機関の幹部は党政策を離れては一歩も前進できず、また党組織を離れては片時も生活してゆけません。政権機関の幹部は、誰よりも党性が強くなければなりません。

 現在、政権機関の一部の幹部は、党政策をよく知らないか、それを正しく実行しておらず、甚だしくは党政策に反する行動をとる場合さえあります。これは、幹部に党性が欠如していることを示すものです。政権機関の幹部のあいだで党性を高めるための闘争を強めるべきです。

 人民政権を強化するためにはまた、政権機関の幹部たちが経済知識を身につけなければなりません。

 政権機関の幹部に経済知識がなければ、社会主義経済を正しく指導管理できません。郡人民委員会委員長は、経済計画の立て方や下部で立てた計画の検討の仕方も知らなければなりません。ところが、郡人民委員会委員長をはじめ、政権機関幹部の経済知識は極めて低い水準にあります。一部の幹部は、生産物の原価とは何か、それがどのように構成されるのかもよく知りません。そのため、商品の値段が高いのか低いのか、経営の収支バランスがとれるのかどうかも知らないありさまです。

 過去の郡守は人民から税金を取り立てるだけでこと足りたので、経済知識はなくても務まりました。しかし、こんにちの郡人民委員会委員長は、経済知識がなくては仕事か務まりません。こんにちの環境は、かつて郡守がおさまっていたときとも、また解放後個人経営が支配していたときとも異なります。個人経営が、社会主義経営に改造され、全郡が一家の経済のようになりました。現在、郡には数10の農業協同組合と地方産業工場、多くの消費協同組合商店と農村市場、それに学校と病院がありますが、これらはすべて郡人民委員会委員長が指導しなければなりません。したがって、郡人民委員会委員長は、工場の支配人が工場を管理運営するように、郡内の農業と地方産業、商業、教育、保健医療をはじめ、すべての部門を計画的に管理運営できなければならず、そのためには必要な経済知識を所有すべきです。

 今後、政権機関幹部の講習会もしばしばおこない、政権機関の幹部が経済知識を身につけられるよう書籍も多く出版して配布すべきです。

 私がきょう、皆さんに述べようとしたのは以上のとおりです。皆さんは、これにもとづいて各自の仕事を検討し、今後さらに立派に仕事をすべきです。

 このたびの講習会では、反革命との闘争を強める問題、幹部の党性と階級意識を高める問題、その他経済問題をはじめ、多くの問題を扱うことになります。

 私は皆さんが、この講習会に熱意をもって参加して多くを学び、それを各自の活動に正しく生かして人民委員会の活動に新たな転換をもたらすよう望みます。
                                                
出典:『金日成著作集』11巻


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