金 日 成

党員にたいする階級的教育を強化することについて
 朝鮮労働党中央委員会総会でおこなった報告
−1955年4月1日− 


 1 現段階における朝鮮革命の性格と我が党の基本任務

 みなさん!

 我が国が日本帝国主義の植民地支配から解放されて、すでに10年近くなります。

 ソ連軍が北朝鮮に進駐し、アメリカ帝国主義侵略軍が南朝鮮を占領したときから、南北朝鮮は民主主義と反民主主義の、相異なる2つの路線を進むようになりました。しかも、ソ連軍は共和国北半部から撤退しましたが、アメリカ軍はひきつづき南半部を占領しているため、朝鮮革命は複雑な性格をおびるようになりました。したがって、我が党の闘争任務も、南北朝鮮のそれぞれ異なる実情にもとづいて規定されたのであります。

 共和国北半部では、労働者階級をはじめ、全勤労大衆の利益を代表し擁護する人民政権がうち立てられ、土地改革や産業国有化などの民主的諸改革が実施され、労働者階級の指導する労農同盟にもとづく全勤労人民の政治的統一と団結が強化されました。

 こうして北半部では、反帝反封建民主主義革命の課題が完全に遂行されました。共和国北半部は、植民地・半封建社会から新しい人民民主主義社会に変わり、しだいに社会主義へ移行する過渡期に入るようになりました。北半部の人民は、我が党の指導のもとに過渡期の任務を遂行しながら、我が国の革命の根源地としての民主基地を政治的、経済的、軍事的に強化しました。

 これは、アメリカ帝国主義者およびその手先、売国奴李承晩一味との3年間の祖国解放戦争で朝鮮人民の歴史的な勝利を保障し、革命の獲得物を敵の侵害から守りぬく偉大な力となりました。

 だが、解放10周年を迎えようとするこんにちまで、アメリカ帝国主義者はひきつづき南朝鮮を占領しており、国土と民族は二分され、南の半分は完全にアメリカ帝国主義の植民地に転落し、新たな戦争挑発のための軍事基地に変わっています。

 祖国の分裂は、アメリカ帝国主義者と李承晩一味の抑圧下にある南朝鮮人民ばかりでなく、全朝鮮人民にとってはかりしれない苦痛と不幸になっており、我が国を富強な統一独立国家に建設するうえで、その基本的な障害となっています。

 こうして朝鮮人民には、アメリカ帝国主義侵略勢力と、その勢力を植えつけ、かれらの同盟者となっている南半部の地主、買弁資本家、親日・親米派、民族反逆者などを打倒し、南半部の人民を帝国主義的および封建的抑圧と搾取から解放し、祖国の民主主義的統一と完全な民族独立を達成しなければならない反帝反封建民主主義革命の課題がそのまま残されています。

 世界帝国主義の元凶であるアメリカ帝国主義が、我が国の南半部を占領し、南朝鮮がその植民地に転落している状況のもとで、我々は祖国の統一のために、長期の困難な全民族的闘争をくりひろげなければなりません。

 朝鮮革命の原動力は、朝鮮の最も先進的な階級である労働者階級をはじめ、その最も信頼すべき同盟者である農民と、そして帝国主義と封建勢力に反対する広範な小ブルジョアジーであり、少なからぬ民族資本家も反帝反封建闘争をともに進めることができます。

 党は、南北朝鮮のすべての愛国的民主勢力を我が党と共和国政府のまわりに結集し、広範な人民大衆から反動勢力を孤立させ、人民大衆が共和国北半部の人民民主主義制度を支持し、アメリカ帝国主義および売国奴李承晩一味との決定的な闘争へ立ち上がるようにしなければなりません。そして、朝鮮革命の根源地である共和国北半部の民主基地を政治的、経済的、軍事的に強化し、それを朝鮮の統一独立をかちとるための決定的な力に変えなければなりません。

 民主基地を強化するために、我が党は、共和国北半部で人民民主主義革命が勝利した結果、優位を占めるようになった社会主義的経済要素と民主建設の諸成果を強固にし発展させ、労働者と農民の同盟をますます強化して、北半部で漸次、社会主義を建設しなければなりません。

 北半部に社会主義を建設してはじめて民主基地を強化し、祖国の統一独立を促進することができます。

 北半部の社会主義勢力は、統一後も破壊された南半部の経済を復興発展させ、将来、全国的規模で社会主義を建設するさいの主導的勢力となるでしょう。

 北半部で社会主義建設の課題を遂行するためには、党のまわりに結集したすべての勤労人民の創造的な熱意を引き出し、かれらの革命的自覚を高めなければなりません。

 北半部における社会主義建設は、各分野にわたる厳しい階級闘争をともなうようになります。このことは、党員にたいする階級的教育を強化すべき任務を提起しています。


 2 現段階における党内の階級的教育強化の必要性

 みなさん!

 アメリカ帝国主義と反逆者李承晩一味に反対する我々の革命闘争は、祖国の統一と完全な民族独立のための全民族的闘争であるとともに、我が国の労働者階級をはじめ、全勤労大衆の社会的解放をめざす厳しい階級闘争であります。

 アメリカ帝国主義侵略者に反対し、祖国の完全な統一独立をめざす長期の闘争と、北半部における社会主義の基礎建設を成功裏に進めるためには、すべての党員をマルクス・レーニン主義の革命思想で武装させ、その階級的自覚を高めて、かれらを勤労大衆の先頭に立ってたたかう徹底した革命闘士に鍛えあげなければなりません。党員と勤労大衆を先進的なマルクス・レーニン主義の思想で武装させなければ、そして、旧社会から受け継いだ資本主義的思想の影響を人々の頭から一掃しなければ、新しい社会を建設することはできません。

 社会主義は勝利し、資本主義と帝国主義は必然的に滅亡するという革命的信念と、革命的な楽天主義で党員を武装させ、社会のあらゆる客観的現象を科学的に分析することのできる革命闘士に党員を鍛えあげることによって、我々は長期の闘争で勝利者となることができます。

 祖国が日本帝国主義の支配から解放された後、北半部に実現した新しい政治・経済・文化生活を通じて、また、我が党がおこなったマルクス・レーニン主義の思想教育を通じて、朝鮮人民には、新しい先進的な思想・意識と道徳的風格が形成され発展しました。この新しい先進的な思想・意識と道徳的風格は、これまで我々がおさめたすべての勝利の重要な要因となりました。

 これまで我が党がおこなった思想教育活動にはある程度の成果がありましたが、しかし、少なからぬ欠陥や弱点もありました。

 こんにち、我が党が当面している国の内外の状況、特に共和国北半部における社会主義基礎建設の任務は、党内でいっそう具体的な内容と目的志向性をもってマルクス・レーニン主義教育をおこなう必要性を提起しています。

 第1に、我々は長期にわたって敵と対峙しており、まだ内部に資本主義的要素が残っている状況のもとで、また、敵が武力侵略の企図を依然として捨てていないばかりか、あらゆる欺瞞と目に早えない方法をもちいて腐りきった資本主義思想を浸透させ、北半部にひそんでいる反動的要素と結託してさまざまな破壊・謀略行為を企んでいる状況のもとで社会主義建設を進めています。

 資本主義から社会主義へ移行する歴史的過程は激しい階級闘争をともないます。スターリンが述べているように、いまだかつて滅びつつある階級が自発的に歴史の舞台からしりぞいたためしはなく、滅びつつあるブルジョアジーが、その生存を固守するために最後のあがきをしなかったためしは、歴史にありません。

 共和国北半部でおこなった民主改革によって一掃された地主階級や買弁資本家、親日分子、民族反逆者、その他の反動分子は、過去のかれらの地位を取り戻そうとする妄想を捨てず、その搾取者としての本性を放棄していません。

 また、長いあいだ植えつけられてきた古い社会の思想の残りかすや慣習、伝統などは、人民大衆の頭からまだ完全に一掃されずに残っています。

 これらはすべて、社会主義の建設に支障をきたすものであり、それが公然あるいは非公然に、意識的にあるいは無意識的に、政治、経済、文化の各分野で否定的な影響を及ぼさないわけにはいきません。

 そればかりでなく、北半部地域で敵の政治的・経済的基盤が基本的になくなり、愛国的民主勢力が団結し、南半部人民の革命的な自覚がしだいに高まってゆき、敵がますます孤立状態に陥るにつれて、アメリカ帝国主義者と反逆者李承晩一味は、北半部の社会主義建設の成果を破壊しようとあらゆる策動をおこなっています。かれらは、共和国北半部にひきつづきスパイ、破壊・謀略分子などを送り込んで、国家・軍事機密をさぐり、工場、製造所、鉄道および農村などでスパイ・謀略工作をおこない、殺人、放火などあらゆる方法で、共和国北半部の社会主義建設を妨害しようと狂奔しています。

 敵は、思想的に堅実でない動揺分子や過去の生活が潔白でない者を、その破壊活動に利用しようと企んでいます。アメリカ帝国主義者の雇用スパイ朴憲永(パクホンヨン)、李承Y(リスンヨプ)一味とその他の破壊・謀略分子の摘発、処断は、共和国北半部にたいするアメリカ帝国主義者と李承晩一味の卑劣で凶悪な敵対行為をあばく実例であります。

 アメリカ帝国主義者とそのかいらい李承晩一味は、かれらの宣伝手段とさまざまな方法を総動員して、デマと中傷の限りをつくしています。このような事実は、我が国の北半部から反動的要素がまだ完全に一掃されていないために、我が隊列内の一部の落後分子に敵の影響の及ぶおそれがあることを示すものです。

 党内と全人民のなかで階級的教育を強化することによってのみ、人民を反動思想の侵害から守り、共和国北半部における社会主義建設を遂行することができます。

 第2に、過去の我が国の発展の特殊性のため、我が党の基本大衆である労働者、農民の階級的自覚は十分でありません。

 朝鮮の労働者階級は、階級として形成された当初から反日民族解放運動の先頭に立ってたたかい、十月社会主義大革命の勝利と、ソ連における社会主義建設の成果に励まされながら、反日民族解放闘争の栄えある指導者として出現しました。特に8.15解放後、朝鮮の労働者階級は、党および国家建設のあらゆる分野で、指導的階級、中核的部隊としての自己の任務を輝かしく遂行し、また、いまも遂行しています。

 しかし、朝鮮の労働者階級は、まだ若く大規模の革命運動をとおして鍛えられ洗練されていません。我が国の労働者階級の隊列は、8.15解放以後に急速に成長しはじめ、特に戦後の復興期に大量に増大しました。そして、その大部分は農民と都市小市民の出身であります。

 このような事情から、労働者階級のなかに、いろいろな立ち後れた思想・意識が浸透するようになりました。こんにち、一部の労働者のなかに、安逸に流れ、不健全で、規律を乱す現象があらわれ、国の主人らしくない行動をする者がいるのは決して偶然ではありません。

 農民のなかにも少なからぬ思想的変化が起こりました。

 日本帝国主義支配の全期間を通じて、朝鮮の農民の大多数は、植民地略奪者と封建的地主の鞭のもとに苦しみ、日本帝国主義者と地主、資本家などから二重、三重の略奪を受けて、生活状態は労働者のそれと同じように惨めでした。このため朝鮮の農民は、労働者階級の闘争に励まされて、日本帝国主義と地主に反対する闘争をくりひろげてきました。朝鮮の農民は、こうした状況のもとで8.15解放を迎えたのであり、解放後、人民政権によって土地改革がおこなわれ、これによって長期にわたる封建的搾取から解放され、無償で土地の分配を受けました。それゆえ広範な農民は、朝鮮労働党と共和国政府の施策を積極的に支持し、人民政権に積極的に参加して、民主改革と民主建設の大業において進歩的な役割を果たし、その生活は著しく改善され向上しました。

 ところが、一部の農民は生活が豊かになるにつれて、日本帝国主義植民地支配者と地主から搾取と抑圧を受け、ひどくいやしめられた過去の惨めな生活境遇をいつのまにか忘れきっています。農民のなかには、階級敵にたいする警戒心と憎しみがうすれ、国家の利益よりも個人の利益を先に考える傾向が少なからずあらわれています。

 また、インテリの階級的自覚も足りません。もちろん、少なからぬインテリは、日本帝国主義支配当時に労働運動の影響を受けて、日本帝国主義に反対する革命の隊列に加わり、解放後、祖国と人民のために奉仕する過程で、特に民主改革と民主建設を通じて、また、祖国解放戦争を通じて、そのマルクス・レーニン主義的思想・意識を非常に高めました。

 しかしながら、まだ一部のインテリは、かつての日本帝国主義の経済・文化機関につかえていたときの古いブルジョア的習慣、とりわけ、自由主義的傾向や不健全でふしだらな習性を完全に一掃しておらず、新しいものに敏感でなく、発展しつつある新しい現実についていけないでいます。そればかりでなく、一部のインテリは、自分が祖国と人民のために奉仕するのだということを忘れて主人らしく仕事をせず、日本帝国主義支配当時の雇われ根性を捨てきっていません。

 第3に、かつて、日本帝国主義に反対する民族解放闘争の時期に、朝鮮の勤労人民にはその前衛部隊としての革命的党がありませんでした。

 かつて長いあいだ、我が国の革命運動のなかには、M・L派、火曜派、北風派、コミュニスト・グループなどの分派分子がいて、労働運動を四分五裂させる罪悪行為をおこない、労働運動に弊害を及ぼしました。我が国の勤労者は党がなかったため、マルクス・レーニン主義の教育を受けることができず、組織的な革命闘争を通して訓棟を受けることもできませんでした。

 日本帝国主義者は、朝鮮勤労大衆の革命的意識を麻痺させるため、先進的思想の普及を凶暴に弾圧し、特に革命的マルクス・レーニン主義の思想と理論にたいして、悪辣なデマと中傷と非難の限りをつくしてきました。また、日本帝国主義によって意識的にゆがめられた「マルクス主義の書物」が流布されて、我が国のインテリ層の思想に悪い影響を及ぼしました。日本帝国主義のこのような反動的宣伝の毒素は、こんにちまで人民大衆の頭から完全にぬぐいさられていないばかりでなく、一部の立ち後れた党員もいまだにこの影響から完全にぬけだしていません。

 このような事情は、歴史的にいって、朝鮮の勤労大衆のなかにマルクス・レーニン主義の思想と理論が広く普及しなかった主な原因となりました。

 第4に、我々は、我が党の歴史が浅く、その質的構成がまだ低い水準にあることを念頭におかなければなりません。

 我が党は、約10年の歴史しかもっていない若い党であります。8.15解放後、我々の闘争が比較的有利であった状況のもとで、労働者階級、勤労農民、勤労インテリのなかから多くの先進分子が我が党に入党するようになりました。

 党員は、5年間の平和的建設、特に去る3年間の困難な戦争を通して鍛えられ洗練されましたが、戦争過程で多くのすぐれた党員が犠牲になり、党員総数の50%近くは、その後補充された新入党員であります。また、党員総数の約60%は農民出身からなっています。

 党員の多くは、小商品経済と直接あるいは間接に結びついています。このような小商品経済とのつながりから生まれる小ブルジョア的思想・意識は、我々の革命活動と思想戦線に否定的な影響を及ぼさざるをえません。

 このような事情から、こんにち党員の多くが、実践活動を通じて鍛練されておらず、思想的にも、理論的にも十分に準備されていません。

 第5に、これまで幹部と党員の階級的自覚を高めるための党内の思想・政治教育が多くの場合、形式的におこなわれました。

 人間の意識は、その発展において経済的条件より遅れるものであることをマルクス・レーニン主義は教えています。北半部にうち立てられた人民民主主義制度のもとで、労働者、農民の経済状態は著しく変わりましたが、かれらの思想・意識はまだ立ち後れており、過去の封建的、ブルジョア的思想の残りかすと因習は完全に一掃されていません。

 ところが、我が党の思想活動は、しばしば実情を深く考慮せずにおこなわれており、現段階で提起されている政治的・経済的・軍事的任務に十分こたえていません。

 まだ多くの党組織は、社会主義的イデオロギーの影響力の弱化はとりもなおさずブルジョア的イデオロギーの影響力の強化を意味する、というレーニンの言葉を明確に理解していないため、党員大衆にたいする階級的教育を第一義的な任務と認めていません。

 我が党の党組織は多くの場合、新しい型のマルクス・レーニン主義党である我が党の最高目的が祖国の統一にあるだけでなく、全国的な範囲での社会主義社会の建設、ひいては共産主義社会の建設にあることを個々の党員に十分解説していません。また、人間による人間の搾取に反対する気高い社会主義思想でかれらを教育し訓練することに、十分な関心を払いませんでした。

 多くの党組織では、党の統一戦線政策を考慮するということで、各時期と各段階における党の課題や国の内外で起こる出来事の階級的本質を十分に党員に教えず、また、かれらの階級的自覚を高める教育活動を極めておろそかにしました。

 これまでに、共和国北半部で実施された民主改革が厳しい階級闘争の環境のなかでおこなわれたこと、アメリカ帝国主義者と李承晩一味に反対して戦われた祖国解放戦争が激しい階級闘争のあらわれであったこと、現段階において共和国北半部で進められている社会主義建設もまた、階級闘争の環境のなかでおこなわれていること、党の任務を遂行するための我々のすべての活動がいずれも階級闘争の具体的な側面の反映であること、などを全党員にはっきりと理解させることができませんでした。

 その結果、多くの党員は、我々が進んできた道がどのような道であり、我々の進むべき道がどのような道であるかを明確に認識しておらず、我が国における社会主義の基礎建設が自分たちになにを要求しており、党と国家にたいして自己の果たすべき義務がなんであるかという認識が徹底していません。

 我が国の発展の特殊な条件のために、また、これまでの我が党の階級的教育が不十分であったために、一部の党員と幹部のあいだには、思想や行動のうえで革命の利益に背くよくない現象が少なからずあらわれています。

 第1に、それは、一部の党員が朝鮮革命の性格と基本的任務、その発展の見通しと遂行の方法を正確に理解していないところにあらわれています。

 一部の党員には、我が国の統一独立の事業にたいする信念が足りず、特に朝鮮革命の前途について、漠然とした考えしかもっていない現象が見うけられます。もちろん、我が国の南半部が世界帝国主義の元凶であるアメリカ帝国主義者に占領されているために、闘争が長期性と複雑さ、困難さをおびるようになったことは疑いありません。しかし、我々マルクス主義者は、帝国主義は必ず滅びるものであり、帝国主義の滅亡が早いか遅いかという問題は、我々の闘争いかんにかかっていることを片時も忘れてはなりません。

 アメリカ帝国主義者と李承晩一味がいま、我が国の南半部で我がもの顔にふるまっているのは、全朝鮮人民がまだ完全に団結していないからです。もし、朝鮮人民が一つにかたく団結するならば、我々はいかなる敵とも戦って勝利することができます。

 それにもかかわらず、一部の党員は革命的な意識が低いため、我々の最後の勝利にたいして確信をもつことができず、祖国の統一独立を達成するための我が党の政策に無関心であり、それを実践するための闘争に積極的に参加していません。

 第2に、党員の一部には、革命の利益、党と人民の利益よりも自分一個人の利益を重んじる傾向があります。

 一部の党員のなかには、入党するとき党の綱領と規約を承認し、党の決定や指示であれば水火もいとわずその任務を遂行し、党の利益のためには生命までもささげてたたかうことをおごそかに誓ったにもかかわらず、実際の行動となると党と革命の利益よりも自分一個人の利益を重んじ、甚だしい場合は、党と革命に害を及ぼしてまで個人の利益を追求する者さえいます。

 このような事実は、今度の穀物買付けに露骨にあらわれました。党と政府の決定によっておこなわれた穀物の買付けは、農民の直接的利益をはかり、戦後の人民経済を復興建設するための重要な事業としてうちだされたにもかかわらず、農村の一部の党員は党の呼びかけに積極的に応じなかったばかりでなく、個人の利益のみを追求し、米の1俵や2俵のことで党員の名誉を傷つけるという容認しがたい非党的、非階級的行為をおこなっています。

 第3に、一部の党員は階級意識が低いため、搾取行為との原則的な闘争をおこなわず、労働にたいする古いブルジョア的見解を一掃しておらず、国家的所有および社会的所有にたいして不真面目な態度をとっています。

 このような党員は、労働規律の違反や国家計画課題の未達成を恥とも罪とも思わず、国家と社会の財産の着服や浪費、国家財政規律の甚だしい違反行為を平気でおこなったり、あるいはそのような行為と強くたたかおうとしていません。

 また、農村党員の一部には部分的ではありますが、秘かに人手を雇用し、あるいは高利貸しをする者まであらわれています。また一部の国家機関の活動家は、階級的自覚が足りないため、課税を口実に原則に反した営業許可を与えて破産した都市の中小企業者を復活させ、結局、搾取的要素の増大に手をかしています。

 第4に、一部の党員と責任幹部は、革命と党の利益のために忠実路奉仕し、活動のうえで原則を守るために勇敢にたたかうのではなく、自分自身の功名や栄達、物欲に目がくらんで事実をうそで飾り、上部にはへつらい、下部にたいしては叱りつける、といった官僚主義的活動方法をつづけています。

 そして、我が党の力の源泉である大衆との結びつきを破壊して党の権威を落とし、党の威力を弱め、批判と自己批判、特に下部からの正当な批判を恐れ、それを抑えつけて党と国家の活動に多くの損失を与えています。

 このような傾向は、今度の穀物買付けに集中的にあらわれました。多くの幹部は、穀物買付けの政治的意義を大衆のなかに深く浸透させ綿密な調査と準備をおこなったうえで、この仕事を順調に遂行しようとするのではなく、日本帝国主義の官僚式、官吏式の強制や強要のやり方で党の政策を実行したため、農民大衆に不平不満をいだかせ、大衆から党を引き離す結果をまねきました。

 第5に、一部の党員には、いまなお党の統一を破壊し、党を分裂させる分派行動の悪習が残っており、その毒素が根をはっています。

 分派分子は、かつての分派仲間をたずねまわり、自分の勢力基盤をきずこうとして分派的な行動をおこなっています。かれらは、うわべでは党を支持するふりをしながら、かげでは党を誹謗し、積極的に党活動に参加せず、党や国家機関の高い地位ばかりを狙っていろいろな策動をこらし、幹部相互の離間をはかり、党内の団結を破壊しようと企んでいます。またある者は、党内の不平分子をかき集め、同じところから来た者同士でかばいあい、かれらだけで不平不満をならべ家族主義的にふるまっています。このようなふるまいが助長されれば、結局、党を破壊し階級の利益に背く道におちこんでしまいます。

 第6に、一部の党員と幹部の階級的自覚の足りなさは、成果に酔って安逸に流れ、心がゆるみ、敵にたいして警戒心を高めないことにあらわれています。

 政治的意識が低く、階級的立場の不徹底な一部の党員は、我が党の寛容な政策を誤って理解し、妥協してはならない敵対分子にたいしてまで「寛容さ」を示し、あらゆる敵対分子のスパイ・謀略破壊工作を適時に暴露し粉砕せずに黙認し、かれらとなれあい、あるいは党および国家の機密をもらしたりしています。

 このような党員は、政治的なにぶさ、警戒心のなさから、自分が敵に利用され、敵を助けていることや、労働者、農民の階級的利益と革命の利益に莫大な損失を与えていることなどに、気がついていないのです。

 以上で指摘したすべての事実は、党内でマルクス・レーニン主義教育を強化し、全党員の革命的自覚を高めなければならない緊切な課題を提起しています。


 3 党内での階級的教育の基本方向と対策

 各級党機関と党組織は、現段階における党の基本的任務である祖国の統一独立の達成と、共和国北半部における社会主義基礎建設の遂行を保障するため、党内の階級的教育に特に注意を払わなければなりません。

 党内の階級的教育の基本方向は、次のような点に向けなければなりません。

 第1に、マルクス・レーニン主義の学説と諸原則を我が国の具体的な実情に結びつけて研究すべきであり、我が国の躍動する現実の生活と実際の闘争を通じて、党員の階級的教育をおこなわなければなりません。

 我々は、他の国の党の闘争経験を朝鮮の実情に結びつけて研究せず、それを機械的に受け入れて党員に注入するといった傾向を絶対に許してはなりません。

 我々がマルクス・レーニン主義を学習し、他の国の党の闘争経験を研究するのは、けっして、たんに知識を得るためのものではありません。我々は、我が国の革命の問題、我が国の政治的・経済的諸問題を正確に分析し、闘争で行動の指針とするために、マルクス主義の理論、観点、方法を学び、兄弟党の革命闘争の経験を研究するのであります。

 ところが、少なからぬ党員は、他の国の党の闘争経験を批判的にくみとるのでなく、それをうのみにし、他の国のものをそのまま真似ることはできても、それを我が国の実情にあわせて適用することはできません。そのため、かれらの知識は実際の活動に役立たず、他の国のものを我が国の現実に機械的に適用して、教条主義的な誤りをおかしています。

 党員にたいする政治教育は、かれらがマルクス・レーニン主義の学説と先進的な経験をたんに知識として理解するにとどまらず、それを我が国の実情に即して適用し、それにもとづいて我が国の情勢を分析し、現在ばかりでなく将来まで見通せるようにすることに重点をおかなければなりません。

 我が国の実際の生活と闘争を通じて党員の階級意識を高めるためには、全党員に我が国の社会発展の客観的法則を正しく認識させ、特に社会発展の各段階における経済形態と各階級の社会的・経済的地位ならびにそれらの相互関係を科学的に分析できるようにすることが最も重要であります。

 偉大なレーニンは、労働者に各階級の経済的本性と社会的・政治的実態を認識させることが、かれらの革命的積極性をつちかううえでの不可欠の条件であることを教えています。我々は全党員に、過去と現在を通じて、我が国で朝鮮人民を抑圧し搾取する者がどのような階級であり、かれらがどんな理由で祖国と人民に背き、いかに狡猾に労働者、農民をだますかを理解させることによって、敵対階級の反動性を明確に認識させなければなりません。また、祖国の自由と独立のために、誰が最も革命的にたたかうことができるか、どの階級と階層がどんな理由で我々とともに手を握って進むことができるか、ということを理解させることによって、革命の基本原動力と同盟者にたいする問題を党員に正しく把握させなければなりません。

 党員は、革命における敵味方の関係をはっきりわきまえることによって、自己の同盟者と手を握ることができるし、また敵を孤立させるためには、あまり期待できない同盟者や動揺分子であってもかれらを獲得することができ、革命の勝利のためには、あらゆる可能性と闘争形態をすべて利用することができるのです。敵味方の見分けかたを知れば、我が国の具体的な情勢と各階級の立場についての科学的分析にもとづいた我が党の路線と政策を明確に認識し、その実践にあたって革命的な積極性を発揮することができるでしょう。

 第2に、党員を百戦百勝のマルクス・レーニン主義思想で教育し、かれらに自然と社会についての唯物弁証法的世界観を確立させ、朝鮮革命の最後の勝利にたいする信念をもたせなければなりません。

 そのためには、各党員に自然と社会発展の一般的合法則性を明確に認識させ、特に資本主義のもとでの階級闘争の本質と、資本主義と帝国主義は必ず滅亡し、社会主義と共産主義は必ず勝利するという科学的知識でかれらを武装させるべきであります。

 第1次世界大戦の結果、ソ連で社会主義革命が勝利し、第2次世界大戦の結果、中華人民共和国をはじめ、人民民主主義諸国が資本主義体制から離脱し、世界の資本主義は日を追って没落と滅亡の道をたどっています。もし、帝国主義者が再び世界大戦を引き起こすならば、世界の資本主義体制は全般的な崩壊をまぬがれないでしょう。

 我々は、帝国主義を打倒し、世界社会主義革命の勝利を達成するための闘争に参加しているという、高い栄誉感と自負をもつように党員を教育すべきであり、またかれらに、抑圧されている勤労人民の解放と社会主義・共産主義の勝利の必然性にたいする確信、自分がなしている仕事の正しさにたいする自覚にもとづく革命的楽天主義をはぐくまなければなりません。

 アメリカ帝国主義とのたたかいで朝鮮人民は孤立していません。ソ連人民をはじめ、世界各国の進歩的な人々が、すべてアメリカ帝国主義の侵略行為に反対しています。特にアジアでは、アメリカ帝国主義に反対するたたかいの戦線に6億の中国人民が我々とともに立っています。

 我々は各党員に、このような国際主義的連帯が朝鮮革命の勝利の重要な裏付けになることを深く認識させ、かれらをプロレタリア国際主義の思想と気高い愛国主義精神で武装させるべきであります。

 こうして、ソ連をはじめ、すべての兄弟諸国の人民とかたく団結し、アメリカ帝国主義者に反対して全人民が団結するようにたゆみなく努力し、革命勢力の強化のためにたたかってこそ、最後の勝利を保障することができます。

 第3に、現段階だけでなく、朝鮮革命の最終目的を達成するときまで、全党員を常に我が国の勤労大衆の先駆者として、党と革命の利益のためには、生命までもささげる覚悟をもった不屈の革命闘士に、熱烈な政治活動家に育成し訓練しなければなりません。

 すべての党組織は、各党員が労働党員という光栄ある称号を純潔に保ち、党の念願と行動に自己の念願と行動を従わせ、党の決定、指示と国家の法令を義務として実行し、言葉と行動、理論と実践を統一し、全一的で義務的な党的・革命的規律と秩序を厳格に守るように教育し訓練しなければなりません。

 すべての党組織は、各党員や幹部が党生活に忠実で、党内批判、ことに下からの批判を広く展開し、党の利益に反するすべての欠陥と誤りを適時に改めるようにすべきであり、また、党にたいして率直でなく、真実をおおい隠し、虚飾を好むへつらい分子や欺瞞分子と断固たたかうようにしなければなりません。

 すべての党組織は、各党員に、労働は最も栄誉あるものであり、人間生活にとって不可欠の条件であることを認識させ、社会的所有を自分の瞳のように愛護し、個人の利益より党と国家、社会の利益を重んじる集団主義精神がかれらの日常生活を貫くようにすべきであります。すべての党員と勤労者が、社会主義建設のすべての分野で献身性と創造的な積極性を発揮し、実際の闘争を通じて労働にたいするまちがった態度を正し、都市と農村におけるいっさいの搾取行為を根絶するため、積極的にたたかうようにしなければなりません。

 党組織は、広範な党員大衆が階級の敵を見ぬき、政治的にぶさと、いっさいの安逸、心のゆるみにたいして断固たたかい、敵の破壊・謀略工作にたいして鋭い視線を向け、それをいち早く摘発、暴露し、全人民的な防諜闘争の先頭に立つよう教育すべきであります。

 第4に、以上のような党内の階級的教育の基本方向にもとづいて、党の政治教育と学習方法を根本的に改めなければなりません。

 こんにちまで、党組織の政治教育活動には、個々の党員の知識程度と政治理論水準を具体的に考慮せず、同一の学習要綱にもとづいて教材を経文読み式に口伝注入する、といった形式主義的方法がなくなっていません。

 党の学習で、不必要な年代や語句、命題などの暗唱と引用にのみ重きをおき、その基本思想と政治的内容を把握する努力が足りなかったため、党の学習が実生活に役立つ生きた知識を与えることができず、階級意識を高めることに役立ちませんでした。

 また、党の教育活動を指導する一部の宣伝活動家は、大衆の理解できるやさしい言葉で解説するのではなく、自分でもよくわからないような難しい用語や命題を並べたてています。また我が党の出版物も多くの場合、似た題目で内容の貧弱な、あまりにも長い宣伝文や論説を載せるため、読者に興味を覚えさせることができず、党員大衆に基本的な問題を理解させるうえで、かえって混乱をもたらしています。

 我々は、党の教育活動でのこのような教条主義と形式主義を克服し、我が党の路線と政策が時期を逸することなく党員大衆のなかに深く浸透し、それが立派に実行されるようにしなければなりません。

 そのためには、階級的教育を強化する方向で各級の教育体系と教材を改編し、特に党と国家の指導的幹部のマルクス・レーニン主義の理論学習を強化し、日常的に一般の党員と接触する宣伝・教育活動家の選抜、配置、育成に深い注意を払い、その政治理論水準を高めなければなりません。こうして、我が党の出版物は、一般大衆に理解しやすく、興味がもてるように、その内容と形式を決定的に改善すべきです。

 同時に、党内の階級的教育にたいする党組織の指導を改善しなければなりません。各道・市・郡党委員会と初級党組織は、党の思想活動を過小評価するいっさいの正しくない傾向を根絶し、幹部と党員大衆にたいするマルクス・レーニン主義教育活動を党組織の最も重要な課題とみなし、それを日常的に、系統的に指導しなければなりません。

 少なからぬ党組織と幹部は、党の思想・政治活動を通じて大衆を経済的課題の遂行へと励まし、奮い起こしてこそ、党機関に提起される経済的課題の遂行が保障されることをいまだに理解しておらず、党の政治活動と経済活動を正しく結びつけていません。このような党組織では、思想活動のもつ意義が過小評価されており、党組織の日常の活動のなかで思想活動は第二義的なものにされ後まわしにされています。

 党の思想・政治活動の重要性を忘れて、それにたいする指導をおろそかにする党活動家は、一介の実務主義者となって行政上の仕事を代行するか、あるいは、その後をついてまわるようになります。そうして、キャペーンだけに没頭して、あまり大衆との日常的なつながりをもたず、下部の実情にうとく重要な党の政策上の問題をつかむことができません。その結果、仕事のうえで創造的な経験を発見することができず、起こりうる事態を予見できないため、欠陥をまえもって防止することができません。

 党組織は、党の基本路線と当面する党政策の諸問題、党の組織的・思想的強化のための諸問題を中心的な内容とし、目的志向性をもって宣伝活動を進めなければなりません。

 今後、各級党組織と党機関は、党の教育活動の内容と方法について党会議で討議し、その決定の実行にたいする指導・点検を系統的におこなって、すぐれた経験をそのつど一般化し、党の教育活動における無階級性、無思想性、そしてあらゆる形式主義と経文読み主義を一掃するようにしなければなりません。

 党中央委員会は、各級党組織がマルクス・レーニン主義教育を強化することによって、すべての党員を、どんな力をもってしても屈服させることのできない鋼鉄の革命闘士として教育、訓練し、マルクス・レーニン主義の不滅の旗を高くかかげて、党中央委員会の指導のもとに南北の全朝鮮人民を祖国の統一独立のための闘争へ力強く導くものと確信します。

 出典:『金日成著作集』9巻


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