金 日 成

戦後復興建設における建築家と建設技術者の任務
 ―全国建築家および建設技術者大会でおこなった演説―
1954年3月26日 

 皆さん!

 私はまず、この会場に集まったわが国の大切な建築家、建設技術者と戦後の人民経済復興発展のために情熱と才能を尽くしている全国の建設者に感謝と祝賀の意を表します。

 きょうこの大会は最も重要な、意義のある大会であります。敵の蛮行によって見る影もなく破壊された人民経済の復興が課題として提起されているいま、建設で中核的役割を果たしている建築家と建設技術者が一堂に会し、建設の経験を分かち合い、破壊された産業・鉄道運輸施設や都市と農村を急速に復旧する決意を新たにすることは、極めて緊切なことであり、大きな意義をもつものと言わなければなりません。

 周知のように、数千年にわたって建設されたわが国の都市と農村、文化遺産は、戦時中にアメリカ帝国主義者の蛮行によって、すべて破壊されました。このような惨禍をこうむったのは、わが国の歴史にいまだかつてなかったことであります。

 しかし、朝鮮人民は、祖国解放戦争で英雄的に戦って祖国の自由、独立と栄誉を守り勝利したように、戦後の復興建設でも愛国的献身性と英雄主義を発揮し、アメリカ帝国主義と反逆者李承晩一味によって破壊された都市と農村を短期間に、以前よりも美しく、立派に建設するでありましょう。

 戦後の復興建設ですべての建設従事者、特に、その中核をなす建築家と建設技術者の任務はじつに重大かつ栄誉あるものです。それは、建設事業が戦後の人民経済復興発展において第一義的、中心的な課題として提起され、その成果が人民経済の発展と人民の物質・文化生活の向上にとって最も重要な部分となっているからです。

 戦後の復興建設が容易な事業ではなく、極めて複雑多難な事業であることは言うまでもありません。しかし、我々は戦後の復興建設を十分遂行することができます。それは第1に、人民政権があり、第2に、平和的建設と戦争の過程でつんだ豊かな経験があり、第3に、ソ連、中国をはじめ、人民民主主義諸国の兄弟的援助があるからです。

 戦後の復興建設の重大な任務を遂行するうえで、最も大きな役割を果たすべき人は、ここに集まった皆さんと全国の建築家、建設技術者であります。いまこそ皆さんが、建築家、建設技術者としての才能と力をいかんなく発揮できる絶好の機会であります。

 国家建設委員会委員長の報告で、建設上の諸問題が具体的に指摘されたので、私は若干の問題について簡単に述べたいと思います。

 第1に、建築家と建設技術者は、常に人民に奉仕する立場に立たなければなりません。皆さんは人民の中から生まれ、人民の中で育った幹部であるだけに、皆さんの仕事はすべて、いっときも人民の利益をぬきにしては考えることができません。

 過去、日本帝国主義支配当時、朝鮮人技術者は、生きてゆくために特権階級や日本人に奉仕しなければならなかったし、彼らに安楽とぜいたくをさせるために働かなければなりませんでした。しかし、こんにちでは根本的に事情が異なっています。

 こんにち、国の主人は、日本帝国主義者や地主、資本家ではなく、勤労する人民であります。したがって、皆さんの仕事は、祖国のための仕事であり、人民のための仕事であります。皆さんは、すべての建設を人民に奉仕する立場に立っておこない、技術と才能を最大限に発揮し、すべての建築物を人民の便宜と幸せをはかって設計し施工しなければなりません。そうして、わが国で立派な場所はすべて人民の幸福の場に変えなければなりません。

 しかし、一部の人には、古い思想の影響が残っており、それが仕事にかなりの支障をきたしています。皆さんは、古い思想を捨て人民に奉仕する真実さと進歩的思想を身につけ、それが建築に十分に表現されるようにすべきです。

 第2に、新たな建築芸術を創造するために努力しなければなりません。

 そのためには、祖先の建築芸術を正しく評価することが大切です。ところが、皆さんがいまもっている建築技術や史料だけでは、祖先伝来の建築芸術を正しく評価することができません。

 祖先の建築芸術を正しく評価するためには、史料を広く収集して研究し、みずからの建築芸術の水準をたえず高めなければなりません。建築芸術の水準を高めなければ、祖先の建築芸術を正しく評価し、そのすぐれた点を建築に立派に継承発展させていくことができません。

 建築芸術の創造において重要な問題は、民族的特質を近代的美感に合わせて立派に生かすことです。

 いま一部の人のあいだには、昔のものであればなんでも良いとする傾向もあり、昔のものはすべてとるべきものがないとする傾向もあります。また、ヨーロッパのものであればなんでも首肯する傾向もあります。これらの傾向はいずれも正しくない偏見です。祖先の建築術には良い点もあれば悪い点もあるので、昔のものはすべて悪いとする必要もなく、祖先の創造物はなんでも良いとする必要もありません。

 社会は進歩し、人間の欲求もたえず向上します。したがって、昔のものを社会の進歩と人間の欲求に合わせて発展させることが重要です。もし、昔のものが良いとして、いまの青年に冠をかぶらせるなら、彼らは喜ばないでしょう。しかし、わが国の昔の服装で婦人の衣服は見栄えがします。朝鮮の婦人服は、外国人もほめています。ですから、こういうすぐれたものは生かす必要があります。

 ヨーロッパ文化のなかには、朝鮮人の風俗や感情に合うものもあり、そうでないものもあります。したがって、外国の文化を取り入れる場合にも、機械的になんでも取り入れようとせずに朝鮮人民の風習や感情に合うものだけを正しく摂取すべきです。

 西洋のものも取り入れ、民族的なものも継承するということで、それらを不釣合いに混合してはなりません。すなわち、洋服を着た人に冠をかぶらせるようなことをしてはなりません。

 皆さんは民族文化遺産を正しく継承し、外国の文化を朝鮮入の生活感情に合うように摂取して、朝鮮の美しい山河、気候条件、朝鮮人の生活様式に合う建築物を建設すべきです。立ち後れたものは改造し、すぐれたものは生かして、うるわしい山河に立派な家を建て、美しい都市を建設しなければなりません。

 第3に、建築物を短期間に多く建設すると同時に、堅固に、美しく、しかも経済的に建設しなければなりません。もちろん、これは難しい課題です。しかし、建設は必ずこうした方向でおこなうべきです。

 建設企業所の幹部と党組織は、労働者大衆に依拠し、唯一管理制を強化し、具体的な作業計画を作成し、労働規律と作業秩序を厳守し、大衆的競争運動を展開し、作業工程を機械化して資材、労働力、時間を節約するようにすべきです。

 建設の速度と質を高めるうえで最上の方法は、設計の標準化、建材生産の工業化、施工の機械化をおこなうことです。建設従事者は、こうした先進的建築方法の習得につとめるべきです。

 設計の標準化は、設計家が不足し経験が浅い実情から非常に重要です。そのため、党中央委員会第6回総会でも設計の標準化を重要な問題として提起しました。

 建材生産の工業化をいますぐ全面的に実施することは難しいでしょう。現在建材生産の工業化水準は、かまちなどを工業的に生産できる程度です。しかし、今後建材生産を全面的に工業化する方向に進むべきです。標準設計にもとづいて工場でつくられた建材を使用すれば、建築の質が保障されるばかりでなく、建設速度をいちだんと高め、建材を節約することもできます。

 また、施工を機械化することが重要です。労働力の不足している実情から施工を決定的に機械化する方向に進むべきです。近代的機械設備がなくては、施工の機械化ができないと考えてはなりません。近代的機械設備の輸入なしには施工を機械化できないとする誤った認識をもって、なんの創意も発揮しない傾向とたたかうべきです。施工の機械化は、最も骨が折れ非能率的で単純な作業からおこなうべきです。例えば、背負い運搬をせずに手押し車を使えば、作業ははるかに能率的で楽なものになるでしょう。このように、施工の機械化は単純な作業からおこなうべきです。

 第4に、建築家と建設技術者のあいだに残っている請負式活動作風をなくすべきです。

 請負式活動作風は、最も有害な日本帝国主義思想の影響の一つです。資本主義社会では、土木・建築工事などはすべて請負業者に依頼します。それで、土木・建築従事者に請負式活動作風が生じるようになりました。

 請負業者にまかせる工事は不満足な結果をまねくのみです。彼らは、建物が早く痛まなければ工事を請負うことができず営利をはかれないので、建物の質を保障せず、長もちしないことを望みます。それで、請負業者は間に合わせ式におおざっぱな工事をおこないます。水豊発電所を例にとっても、請負業者がおおざっぱな工事をおこなったために、解放後エプロン工事をやりなおさなければなりませんでした。日本帝国主義支配当時に請負業者が建設した橋梁や建物は、いずれも、堅固ではありません。

 請負式活動作風は、我々の活動作風とは少しの共通性もありません。請負式活動作風は、ブルジョア思想の現われです。

 こんにち、わが国の建設事業は請負業ではなく、国と自分自身のための事業であります。したがって、建築家と建設技術者は、あらゆる形式的な急場しのぎのやり方、なすことなく時間を費やす無責任な作業態度、実質を伴わず外見を飾るだけの請負式方法を一掃し、主人らしく働かなければなりません。そうしてはじめて、立派な家と美しい都市を建設することができます。

 次に、古い技術者と新しい技術者は、学び合い、緊密に協力しなければなりません。技術者のあいだには、長年専門分野で働いて多くの経験はもっているが新しい理論を所有していない人もおり、新しい理論は学んだが実践的経験の少ない人もいます。ところで、古い技術者のあいだには、経験を固執し新しいものを取り入れようとしない傾向があり、新しい技術者のあいだには、古い技術者の経験を取り入れようとせず排斥する傾向があります。これはいずれも正しくありません。

 古い技術者は新しい技術者から先進技術を学び、新しい技術者は古い技術者から立派な経験を学ぶべきです。このように両者が互いに学び、経験を分かち合って、ともに前進すべきです。

 次に、建設事業で規律と秩序を確立しなければなりません。

 過去朝鮮の建設労働者は、一定の職場に定着せず渡り歩いたため、組織性と規律に欠けています。建設部門に労働力の流動が多く見られるのも、資本主義の遺物です。こうした傾向と強くたたかい、建設部門での労働力の流動をなくすべきです。職場に定着して働かず、無規律に渡り歩く傾向と強くたたかわなければ、こんにちの膨大な建設事業を計画的に遂行できないばかりでなく、労働者は主人らしくないその日ぐらしの古い習性を捨てることができなくなるでしょう。

 建設部門で規律と秩序を立てることは、建設部門のすべての労働者、技手、技師が党と国家に対する責任を全うするための極めて重要な問題です。したがって、政治・思想教育を強化して建設労働者の階級意識を強め、労働規律を自覚的に守らせるために深い関心を向けるべきです。

 規律と秩序を確立するためにはまず、すべての働き手に所定の規定を厳守する精神を所有させなければなりません。そうして、内閣や上級機関が承認した設計や計画を法とみなし、なんぴともそれを勝手に変更してはならないということを明確に認識させなければなりません。

 具体的で正確な設計にもとづいて施工をおこなう規律を立てるべきです。設計のない施工を許せば、規律と秩序は確立できません。これまで確かな設計なしに施工をおこない、気に入らなければ修正する傾向が少なくありませんでしたが、これは建設に大きな混乱と弊害を及ぼしました。それで設計のない工事には資金を支出しないようにしました。建設従事者のあいだに強い規律を立て、設計もなしに無責任に施工する傾向を徹底的になくし、設計にもとづいてのみ施工をおこなうように制度化しなければなりません。

 最後に、会議で提起されたいくつかの問題について述べたいと思います。

 第1に、建材試験所を新設すべきだという意見が出されましたが、それを設けることは必要です。しかし、現状からみて部門別に直ちに建材試験所を設立することはできません。それでまず、国家建設委員会に建築資材試験所のようなものを設置するのがよいと思います。

 第2に、設計審査のために機構定員を増加しない方向で、重工業省、交通省、軽工業省など主な省に少数の人員で設計審査機関を組織すべきです。これに関する具体案は、国家建設委員会委員長が作成して内閣に提出しなければなりません。

 第3に、建築家同盟を組織すべきです。それは建築家が経験を分かち合い、建築知識を普及するために緊切に必要です。本大会では、まず建築家同盟組織委員会を構成し、今後の活動をもとにして同盟の結成大会を招集するのが望ましいと思います。

 皆さん!

 建築家、建設技術者に対し、党と政府と人民は極めて大きな期待をかけています。皆さんの手で都市の設計がおこなわれ、住宅や経済・文化機関が建設されます。

 都市建設に国の政治的・経済的面貌が反映されます。建設を立派におこなえば、国の面貌が改まり、そうでなければ国の面貌はみすぼらしいものになります。

 したがって、皆さんは、破壊、焼失した住宅、都市、工場をいっそう美しく、堅固に復興建設するために全力を尽くすべきです。

 私は、皆さんが党と政府と人民の期待にこたえ、負わされた任務を立派に遂行するものと確信します。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』8巻 

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