金 日 成

実験的に組織した農業協同組合を立派に
管理運営するために
 平安南道内農業協同組合管理委員長協議会でおこなった演説
 −1954年2月13日−


 きょうみなさんが一堂に会し、農業協同組合の組織運営でえた経験を分かちあったのは、非常によいことだと思います。

 周知のように、我が国の農業は、3年間の戦争によって甚大な被害をこうむりました。農村の労動力と畜力が著しく減少し、多くの貯水池や潅漑施設が破壊されました。農民の生活も極度に疲弊しています。農村の労働力と畜力の不足問題を解決し、破壊された農業を急速に復興し、疲弊した農民の生活を安定、向上させる唯一の方途は、農業の協同化であります。農業の協同化は、農業を工業のように計画的に発展させ、農村における搾取と貧困の根源を一掃し、農民の物質・文化生活を急速に向上させる根本的な保証となります。

 我が党は、農業の実態を科学的に分析したうえで、昨年の8月に開かれた党中央委員会第6回総会において個人農経営を漸次協同化する方針を示し、今年から一部の地域に農業協同組合を実験的に組織することにしました。平安南道をはじめ各道で、党の方針を積極的に受け入れて、すでに多くの農業協同組合を組織しました。

 きょうみなさんの発言を聞いてみても、労働力や畜力などすべてが不足している条件のもとでも、協同経営が個人農経営に比べてはるかにすぐれていることがわかります。協同組合が共同で作業をおこない、役牛や農機具を共同で利用するのを見て、個人農がたいへんうらやましがっているとのことですが、これは、協同経営が個人経営より優っていることを示すものです。

 新たに誕生した農業協同組合は、農村にまかれた社会主義の種子であると言えます。この種子を丹念に手入れし丈夫に育てるのは、協同化運動において非常に重要な意義をもちます。もし、これらの農業協同組合の管理運営を誤まれば、その優位性を全面的に発揮できず、したがって、個人農経営の協同化と社会主義農村の建設に大きな支障をきたすことになるでしょう。組織されて間もない農業協同組合を政治的、経済的に強化し、その優位性を全面的に発揮させるべきであります。

 そのためには、協同経営を多角的に発展させ、組合員の穀物分配と現金収入を増大させなければなりません。こうして、組合員の生活を向上させ、個人農に協同組合の優位性を実物で示すべきであります。

 組合員の生活を向上させるためには、まず農作を立派におこなって穀物を増産しなければなりません。

 農業協同組合では、土地を極力改良し、堆肥を多く施し、優良種子を植え、先進営農方法と技術を導入してヘクタール当たりの収量を高めるべきであります。

 穀物増産の大きな予備は、収量の少ない畑を水田にかえ、畑潅漑の面積を増やすことにあります。このためには用水問題を解決しなければなりません。江西(カンソ)郡八清(パルチョン)里ムンドン農業協向組合ではいま、水不足のため農作業に支障をきたしており、勝湖(スンホ)郡槐陰(ケウム)里槐陰農業協同組合もまた水不足によって畑を水田に転換できないでいます。農業協同組合では、水源を積極的に探しだし、潅漑工事を大々的におこなって用水問題を解決すべきであります。

 農業協同組合は、土地の保護と整理を念入りにおこなわなければなりません。国家では、今年度に各郡に農業機械賃耕所を設け、機械で畑の起耕と種まき、運搬作業をおこなうようにする予定です。農業協同組合では、機械で農作業ができるよう、いまから耕地整理に力を入れなければなりません。

 穀物を増産するためには、現在の耕地を有効に利用するとともに、その面積をさらに増やさなければなりません。現在、農村には荒れ地や休耕地など、耕地に開墾できる多くの土地があります。農業協同組合では、これらを極力開墾し、新たな耕地をさらに多く獲得すべきであります。

 組合員の生活水準を向上させるためにはまた、養蚕業、果樹栽培業、畜産業を発展させ、農閑期に副業を盛んにおこなうべきです。

 農業協同組合では、畑のあぜや小山に桑の木を大々的に植え、養蚕を活発におこなうべきであります。農業省は、農業協同組合が必要とする桑の苗木を供給しなければなりません。クヌギの多い地方では、柞蚕を飼うべきです。

 畜産業を発展させるのは、組合員の現金収入を増やすためばかりでなく、国の食肉需要と軽工業原料をまかなうためにも必要であります。農業協同組合では、牛、豚、羊などの家畜を共同で多く飼育するとともに、組合員の家族にも豚や鶏などを多く飼わせるべきです。

 農業協同組合を立派に運営し、その優位性を高度に発揮させるためには、組合の管理幹部の役割を高めなければなりません。

 我が党は、農業協同組合の管理幹部に組合を立派に運営して、組合員の生活を個人農の水準より高める重い任務を与えました。管理幹部は、党から与えられたこの重責を立派に遂行するために努力し、党の意図に背かないよう組合を正しく運営しなければなりません。また、常に組合の活動全般に細心の注意を払い、すべての活動を綿密に組織し指導すべきであります。

 農業協同組合の管理幹部は、組合の運営において民主主義を発揚し、組合員の意思を尊重しなければなりません。また、組合の運営において提起される諸問題を自分の主観的見解や個人の「聡明さ」によって処理してはなりません。そのようにすれば、活動で成果をあげることができず、失敗をまぬがれません。組合の管理幹部は、常に党組織に依拠して仕事をする一方、組合の運営で提起される問題はすべて組合員の集団的知恵を集めて解決すべきであります。こうすれば、組合員は組合の仕事に主人らしく参加し、仕事が順調に運ぶようになるでしょう。

 農業協同組合の管理幹部は、労働点数の評価を正しくおこなわなければなりません。組合員の労働点数を不正確に評価すれば、組合員の集団労働にたいする認識を誤らせ、組合の仕事に熱意をもたなくなるでしょう。それゆえ、組合員の労働点数の評価は、その日のうちに正確におこなわなければなりません。

 農業協同組合の管理幹部は、組合の共同資金を勝手に流用したり、個人から借金して役牛を買い入れるようなことがあってはなりません。個人が役牛や農機具を組合に提供した場合には、秋にそれに相当する代金を必ず支払うべきであります。

 農業協同組合の管理幹部は、組合員の生活の面倒をよくみてやらなければしなりません。組合が組織されて間もないため、組合員の生活には困難な問題が多いと思います。管理幹部は、組合員の生活に常に気を配り、困っている問題があれば適時に解決してやるべきであります。

 農業協同組合の管理幹部は、組合員の思想・意識水準の向上に関心を払うべきであります。また、組合員の思想教育を強め、その思想・意識水準をたえず高めなければなりません。

 農業協同組合の管理幹部が組合を立派に運営するためには、政治的・実務的水準を決定的に高めなければなりません。現在、組合の管理幹部、特に、管理委員長の政治的・実務的水準は、その職責に比べて非常に低い状態にあります。管理委員長は、組合の管理と運営の方法もよく心得ていません。そのうえ、農業協同組合には組合の管理運営規定もありません。管理委員長は、組合の管理運営の方法を修得するための学習に力を入れると同時に、他の組合のすぐれた活動経験から多く学ぶべきであります。

 道・市・郡では、農業協同組合管理委員長の実務水準を高めるための講習会を多く組織すべきであります。近いうちに党中央委員会の関係部署と農業省が、我が国の実情に合った農業協同組合規準定款をつくって管理委員長講習会をおこなう予定です。平安南道ではそれを待つことなく、他に先かけて組合の管理運営に必要な初歩的な問題をもって管理委員長講習会を組織すべきであります。

 協同組合管理委員長の政治的・実務的水準が低い実情を考慮して、郡党委員長や郡人民委員長、道や中央機関の幹部が出向き、実践を通じて援助すべきです。郡党委員長や郡人民委員長、道や中央機関の幹部は、農業協同組合を一つずつ担当して管理委員長に組合の管理運営方法を具体的に教えるべきであります。

 農業協同組合を経済的に強化し、その優位性を発揮させるうえで国家の物質的支援が極めて重要な意義をもちます。国家は、農業協同組合に種子用穀物や食糧、営農資金を貸与し、また化学肥料や農機具、潅漑工事用設備や資材を優先的に供給すべきであります。潅漑施設や農業機械賃耕所の農業機械も、農業協同組合に優先的に使用させるべきです。また、協同組合に除隊軍人を多数配置し、農繁期には労働者、事務員を農作業に動員して援助すべきであります。

 組織されて間もない農業協同組合を政治的、経済的に強化してその優位性を発揮させる一方、新たに農業協同組合を多く組織しなければなりません。

 農業の協同化は、朝鮮の社会主義農村建設における不可欠の要請であり、こんにち、我が党の重要な革命路線であります。党の路線を貫徹して、ここ数年のあいだに個人農経営を協同化し、すべての農民が協同組合に加入するようにしなければなりません。

 個人農経営の協同化は、決して簡単な問題ではありません。解放後、実施された土地改革が、農民を封建的な搾取と従属から解放する歴史的な変革であったとすれば、こんにちの農業協同化は、個人農経営を社会主義的協同経営に改造する深刻かつ複雑な社会的・経済的変革であります。この運動がいかに困難かつ複雑であっても、これまでに達成した成果を踏まえて、農業協同化を立派に実現することができます。

 農業協同組合を組織するにあたって自発性の原則を厳守すべきであります。

 農業協同組合をなんの考慮もなしに募集するようなやり方で組織したり、農民を強制的な方法で加入させるようなことがあってはなりません。農業協同化が農民を裕福にさせる事業である以上、農民が進んで協同組合に入るようにすべきです。農業協同組合の組織において自発性の原則を貫くためには、農民に農業協同化の優位性を広く宣伝するとともに、協同化の優位性を実物で示さなければなりません。実験的に農業協同組合を組織する目的も、農業協同化の優位性を実物で示すことにあります。

 農業協同組合の組織において自発性の原則を守るとして、希望者を誰かれの別なく加入させるべきではありません。労働を嫌い遊んで暮らすのを好む怠け者を組合に加入させてはなりません。もちろん、将来はそういう人もすべて教育改造して組合に加入させるべきですが、現段階でそういう人を加入させるならば、農業協同化の優位性を農民に示すことができません。実験的な段階では、かつての雇農や貧農、敵に虐殺された人の家族、戦死者遺家族、人民軍留守家族および精農を基本にして協同組合を組織すべきであります。かつての雇農や貧農は、地主の搾取と抑圧に苦しみ解放後、土地改革のおかげで土地の主人となった人たちですから、農業協同化を心から支持しています。戦時中に都市から農村にきて農業に従事している人が、組合の加入を希望するときにはよく検討してみて、心から農業協同化を支持しまじめに働く人であれば加入させてもかまわないでしょう。

 農業協同組合の組織において、その形態を正しく規定することが重要です。

 農業協同組合の形態は一律にすべきでありません。農民の思想・意識水準と経済生活の条件は同一ではありません。農民のなかには役牛をもたない人やもっている人、人手の足りない人や余っている人、土地の少ない人や多い人などいろいろあります。また、なかには、戦時中にアメリカ帝国主義侵略者の爆撃によって家屋や家財をすべて失った人もいます。このように、農民の生活と経済状態の差によって、その考え方も同一ではありません。農民の思想・意識水準と経済状態を考慮し、農業協同組合の形態を多様に定めるべきであります。

 戦時中に、役牛をもたないか人手の足りない農民が、役牛の共同利用班や労力互助班を組織して農業を営んだ経験を生かし、土地や農機具を統合せずに、農作業だけを共同でおこなう組合を組織することができます。このような農業協同組合は、最も低い形態として第1形態と呼ぶことができます。文徳(ムンドク)郡龍五(リョンオ)里パクビ農業協同組合がこの第1形態に属します。

 次に、土地を統合して農業を共同で営み、労働と提供した土地によって分配をおこなう形態の農業協同組合を組織することができます。このような形態は、半社会主義的形態として第2形態と言えるでしょう。

 次に、土地をはじめ、基本生産手段を共同所有にし、ただ労働の質量によってのみ分配を受ける形態の農業協同組合を組織することができます。このような形態は、完全な社会主義的形態として第3形態ということができます。これは、農業協同組合のうちで最も高い形態であります。

 このように、農業協同組合の形態を3つに規定し、農民に各自の意思と希望に従い、そのうちの一つを選択させるべきであります。農民の思想・意識水準を考慮に入れず、最初から高い形態を強要するようなことがあってはなりません。平安南道で実験的に組織した農業協同組合のうち大部分が第3形態だそうですが、それが農民の意思によるものであれば結構だと思います。

 農業協同組合の組織において、その規模を適切に定めるのにも深い注意を払うべきであります。管理幹部の水準が低い現状においてその規模をあまり大きくすれば、農業協同組合を正常に管理運営することができません。江西郡八清里ムンドン農業協同組合は、150戸で組織したそうですが、それはあまり規模が大きすぎます。

 現状では、その規模を15〜20戸、多くて30戸程度にするのがよいでしょう。今後、必要な条件がととのうにつれて、その規模を拡大すべきであります。

 農業協同組合の管理幹部を多数養成しなければなりません。今後、農業協同化運動を大々的に展開するためには、多数の管理幹部が必要です。したがって、いまから管理幹部を計画的に養成しなければなりません。道・市・郡党組織は、短期講習所を設けて、以前の雇農、貧農や愛国烈士遺家族、人民軍留守家族、除隊軍人のうちから有能な人を選んで、農業協同組合の管理幹部に養成すべきであります。

 我々は現在、アメリカ帝国主義者との対峙状態のなかで個人農経営の協同化を進めています。アメリカ帝国主義者とかいらい李承晩一味は、農業協同化運動を破綻させるために悪辣に策動しています。共和国北半部に潜んでいる反動分子もアメリカ帝国主義者とかいらい李承晩一味の指示のもとに、農業協同組合の共同財産を破壊、焼却するため狡猾に蠢動しており、協同化運動を中傷誹謗しています。階級の敵の蠢動にたいして高度の警戒心をもつべきであります。

 終わりに重ねて強調しますが、農業協同組合の管理委員長は非常に重い任務をになっています。私は、みなさんが与えられた任務を立派に遂行し、党の期待に必ずこたえるものと確信します。

 出典:『金日成著作集』8巻


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