金 日 成

戦後の経済建設と人民軍の課題
 ―朝鮮人民軍連隊長および政治担当副連隊長会議でおこなった演説―
1954年2月12日 

 私はこの機会に、わが党の戦後の経済建設政策と人民軍の強化におけるいくつかの問題について述べたいと思います。

 こんにちの内外情勢は、社会主義陣営の革命勢力を強化することを求めています。

 革命勢力を強化するのは、軍隊が敵の陣地を占領してそれを強固にし、新たな攻撃に移る準備を整えるのと同じことです。革命勢力の強化なくしては、これまでにかちとった革命の勝利を強固なものにし、革命と建設を新たな高い段階に前進させることも、世界革命の勝利を早めることもできません。

 第1次世界大戦中にロシアの労働者、農民が、ツァーの専制をくつがえして世界最初の社会主義国家を創建したとき、レーニンは個々の国が社会主義革命で勝利した後には、世界革命の陣地を強化するために闘争すべきであると教えました。こうして、ソ連は10月社会主義革命が勝利した後、平和的な対外政策を堅持しつつ、それまでに達成した革命の成果を帝国主義の侵略から守り、それを強固にする闘争に全力をかたむけました。共産党の指導のもとにソ連人民は、資本主義の包囲のなかで外国武力干渉者を撃退し国内戦で勝利をおさめ、社会主義的工業化と農業の集団化を実現して革命勢力を強化しました。

 もし、ソ連人民が10月革命の勝利後、国内の革命勢力を強化しなかったならば、ファシスト・ヒトラーが引き起こした第2次世界大戦において勝利できなかったでしょう。第2次世界大戦におけるソ連の世界史的勝利は、ソ連人民をファシズムの奴隷化から救出し、さらにはヨーロッパと東方諸国での革命勝利の重要な要因となりました。

 10月革命直後には一国の枠を出なかった社会主義が、こんにちでは多くの国で勝利をおさめ、世界の革命勢力はかつてなく強化されました。社会主義陣営諸国は、戦後の経済建設を通じて一段と強力になり、プロレタリア国際主義の旗のもとにかたく団結しています。こんにち社会主義陣営は、人口や国家相互間の連帯、物質的力量からみても、かつてなく強化され成長しました。

 これに反し、第2次世界大戦後、資本主義陣営は著しく弱体化しました。ヨーロッパとアジアの10余カ国が資本主義体制から離脱して社会主義の道をしっかりと踏み出し、インド、ビルマ、インドネシアなどの諸国が帝国主義植民地から解放され民族の独立を達成しました。また、世界の多くの地域で民族解放闘争がはげしく盛り上がっています。資本主義が世界を支配した時代は、すでに遠い過去のこととなりました。

 第2次世界大戦後、社会主義と資本主義間の力関係は、社会主義の側に決定的に有利に変わりました。

 しかし、革命の勝利は、自然にもたらされるものではなく、たたかいとらなくてはなりません。社会主義陣営諸国は、平和な時期を最大限に利用し、社会主義陣営の政治、経済、軍事力の強化のために積極的にたたかうべきであります。これは、社会主義陣営の個々の国に負わされた栄えある任務であります。

 わが党は、8・15解放後、共和国北半部に革命的民主基地を創設する路線を示しました。これは、祖国の統一と自主独立を実現するための最も正しい革命路線であり、同時にこの路線の実現は、世界革命勢力の強化においても大きな意義をもちました。

 革命的民主基地創設とその強化をめざすわが党の闘争過程には難関も少なくありませんでした。

 朴憲永、呉淇燮などの反党分派分子は、共和国北半部に革命の根拠地を創設する党の路線に反対し、南朝鮮に根拠地を設けて「共和国」を樹立すべきであると主張しました。アメリカ帝国主義侵略軍が南朝鮮を占領している状況下にあって、このような主張は荒唐無けいなものでした。それゆえ、我々はそれを断固として排撃しました。

 アメリカ帝国主義者が第2次世界大戦においてヒトラー・ドイツと戦うゼスチュアを演じたのも、それは戦後の利権を得るためであって、決して他国を解放するためではありませんでした。

 大戦終結後、アメリカ帝国主義者が南朝鮮に上陸したのも南朝鮮を植民地にするためにほかなりませんでした。それにもかかわらず、朴憲永の主張どおりソウルに「共和国」の看板をかかげ、そこを根拠地にしていたなら、どうなったでしょうか。

 解放直後、祖国が南北に分断され、北と南が相異なる情勢のもとにおかれたので、我々はアメリカ軍のいない北半部に革命の根拠地をきずき、党と大衆団体と軍隊を組織し、経済建設を進めて革命勢力を強化したうえで祖国を統一することを主張しました。そこで、朴憲永に南朝鮮では地下活動を強化して革命勢力を保存し、時機が到来すれば決定的闘争に立ち上がらせるべきであると話しました。

 ところが朴憲永は、1946年の春、ソウルでソ米共同委員会が開かれるや、直ちに独立が実現するものと考え南朝鮮の地下組織を総動員してデモをおこない、秋には独断で暴動を組織して大衆を敵の銃剣の前にさらしました。朴憲永の「指導」によって起きた「烽火」は、アメリカ帝国主義とかいらい李承晩一味の脅威にはならず、かえって敵の前に組織を露出させ、革命勢力の破壊を招きました。アメリカ帝国主義者とかいらい李承晩一味は、デモや暴動を理由に民主勢力を厳しく弾圧しました。

 その結果、人民軍が敵の武力侵略を撃退して反撃に移り、南進したあの好機に、南朝鮮では大衆運動がついに起こりませんでした。朴憲永は、釜山に6000名の南朝鮮労働党員がいると言いましたが、もしそれが事実であったなら、人民軍が洛東江の線に進出した時、それに呼応して暴動を起こしたはずであり、そうなればアメリカ帝国主義者は逃げ場を失っていたでしょう。しかし、彼の言葉は偽りでした。朴憲永は我々を信頼せずアメリカを崇めました。

このような反党分派分子の大きな妨害策動にもかかわらず、全党員と人民は、わが党のまわりにかたく団結して党の革命的な民主基地創設路線を支持し、その貫徹のためにたたかった結果、共和国北半部には強力な革命勢力がきずかれました。こうした強力な革命勢力があったからこそ、我々は祖国解放戦争の厳しい試練を乗り越え、偉大な勝利を達成することができたのです。

 若年の人民軍と人民が、共和国北半部をいっきょに制圧しようとしたアメリカ帝国主義侵略者の攻撃をうち破り、彼らが戦争を始めた38度境界線にとどまって停戦協定に署名せざるをえなくし、第3次世界大戦の勃発を防いだのは大きな勝利であります。

 停戦が実現したこんにち、朝鮮人民には祖国解放戦争の勝利をかため、共和国北半部の革命基地を強化すべき課題が提起されています。わが国の革命勢力を強化するのは、とりもなおさず社会主義陣営の力を強めることになります。

 我々は、全力をあげて革命勢力を強化すべきであり、そうしてこそ祖国統一の日に十分備えることができます。諸君は、「祖国の統一はいつ実現するのか。今後何年待てばよいのか」と質問するかも知れませんが、祖国の統一は南朝鮮社会の内部矛盾が激化し、南朝鮮人民がアメリカ帝国主義者とその手先に反対する闘争に総決起したときに実現するでしょう。また、国際的な大事変が起こり、アメリカ帝国主義者がこれ以上南朝鮮に止まれなくなったときに、その機会が到来するでしょう。

 祖国統一の日が到来するのは疑う余地がありません。侵略者が駆逐されて人民が解放を達成し、資本主義が滅亡し社会主義が勝利するのは、何ものも阻むことのできない社会発展の法則であります。

 祖国統一の日が明日か明後日、あるいは今夜到来しても、常にその備えができていなければなりません。

 それでは、我々が自力で北半部の革命基地を強化し、祖国の統一を達成することができるでしょうか。それは十分に可能であります。

 こんにち我々は、抗日武装闘争期に比べれば、極めて有利な状況下でたたかっています。抗日武装闘争のときには、家も、食糧もないまま、日に数十里を行軍しながら日本帝国主義と戦わなくてはなりませんでした。しかし、抗日遊撃隊員は日本帝国主義が滅亡し、我々は必ず勝利するという信念をもって戦い勝利しました。現在我々には、共和国北半部の強力な革命的民主基地があり、100万の党員と革命闘争を通じて鍛えられた点検ずみの幹部と、それに戦車、航空機、大砲で武装した数十万の軍隊と強力な経済力があり、また、兄弟諸国の国際主義的援助があります。このような状況において、我々にできないことはなに一つありません。

 共和国北半部の革命基地の強化における重要な問題は、工業化を実現することであります。

 我々は3カ年計画を遂行した後、社会主義工業化の基礎を築く第1次5カ年計画の遂行に取り組むことになります。

 朝鮮人民は、植民地的奴隷生活の悲しみと惨めさを骨身にしみて体験しました。我々は、いかなることがあっても国の工業化を実現し、自立的民族経済を建設して、二度とそのような運命に陥らないようにすべきです。

 我々には、自力で近代的重工業を創設できる豊富な地下資源があり、工業の土台もある程度もっています。

 社会主義的工業化を実現するためには、何よりも大量の鉄が必要ですが、朝鮮には鉄鉱石が豊富に埋蔵されています。茂山鉱山だけでも10億トン以上の埋蔵量をもっています。金、銀、銅、鉛などの非鉄金属資源にも恵まれています。鉱山は60を数え、製鉄所と製錬所もあります。

 また石炭や電力資源も豊富にあります。水豊発電所の発電能力が70万キロワットであり、それに長津江、赴戦江、虚川江発電所を加えれば、わが国の発電能力は140万〜150万キロワットに達します。水力資源は、この他にも禿魯江をはじめ多くの地域にあります。これまでの調査資料によれば、将来数十万キロワット程度の発電能力はさらに確保できます。レーニンは、共産主義はソビエト政権プラス全国の電化であると言いましたが、電力が豊富にあれば工業化を順調に実現できます。

 以上のように、我々には、重工業の発展に必要な原料基地、動力基地が備わっています。

 現在欠けているのは、機械製作工業であります。それは、日本帝国主義から奇形的な工業を引き継いだためです。彼らは血眼になって朝鮮から原料を略奪しましたが、簡単な農業機械を製作する機械工業すら建設しませんでした。

 我々は、国の工業化にとって基本的条件であり、国防上重要な意義をもつ機械製作工業を必ず創設しなければなりません。

 わが党は、すでに戦時中から機械製作工業の発展に深い関心を払いました。戦時中熙川に大規模の機械工場を地下に建設しましたが、そこでは旋盤、フライス盤だけでも年に1000台を生産します。同じく戦時に建設された熙川自動車部品工場では、すでに40余種の製品が生産されています。

 3カ年計画期間に多くの機械工場を新設する予定です。今後、平壌に総合的な機械工場を建設し、鋳鉄管やポンプ、電気計器類、変圧器、電線などの電気機材も生産する計画です。また、鉱山機械工場、機関車、客車、貨車の修理工場、工具工場、起重機工場も新設する予定です。

 わが国には石灰石が無尽蔵に埋蔵されていますが、これは人民経済の発展にとって重要です。石灰石ではカーバイドを生産し、それでアルコール、合成ゴム、合成繊維などの各種化学製品を生産します。それゆえ、石灰石資源を有効に利用するため化学工業も急速に発展させるべきであります。

 セメント工場の復旧を急ぐべきであります。勝湖里セメント工場を先に復旧し、新たなセメント工場の建設を早めて、その生産量を早急に65万トン水準に引き上げるべきです。レンガ工場も多く建設しなければなりません。そして、建設場でセメントやレンガに不自由しないようにすべきです。

 重工業を急速に発展させながら、同時に人民生活の安定、向上のために軽工業と農業も発展させなければなりません。

 人民生活の向上において重要なのは、衣料問題の解決であります。しかし、解放前は、紡織工業の大部分が南朝鮮に集中しており、解放後我々の引き継いだ紡織工業は貧弱なものでした。北半部には沙里院と新義州に小さな紡織工場があったのですが、紡錘数は合わせて2万錘にもなりませんでした。

 現在平壌に6万錘、亀城に1万錘の紡織工場を建設中であります。これらの工場では、綿織物だけでも年間約7000万メートルを生産することになります。

 昔から朝鮮の絹織物は世界に広く知られています。今後建設を予定している近代的な絹織物工場では、年間1000万メートル以上の絹織物を生産することになります。

 3カ年計画の末にゴム靴1400万足、布靴5600万足の生産を予定しています。これだけあれば、北半部の人民に履物を十分に供給できます。

 食品工業の発展もまた重要であります。食品工業部門では、各種缶詰工場の建設を急ぎ、魚類や食肉の加工を発展させなければなりません。

 農業の発展は、人民経済全般の発展と人民生活の向上において重要であります。

 農業部門では、今後300万トン以上の穀物を生産して、戦前の水準をはるかに上回るようにしなければなりません。穀物増産のためには、平南潅漑工事とオジドン潅漑工事などの潅漑工事を大々的に進め、用水の問題から先に解決すべきであります。また、土地の流失を防いで十分に保護し、海面干拓をおこなって耕地面積を増やすために努力しなければなりません。これと同時に、土地を改良してヘクタールあたりの穀物収量を高めることが重要です。

 今後、国家は、貧農に対する融資を増やし、農機具工場や牛馬賃耕所も新設する予定です。農民が国家から大量の農機具や化学肥料の供給を受け、畜力問題も解決されれば農業生産をいちだんと高めることができます。農業生産が増えれば、農民の収入が増え、物価が下がり、人民生活全般が急速に豊かになるでしょう。

 3カ年計画期間に、国営農牧場が強化され食肉生産が増大するでしょう。国営農牧場では、食肉生産を増やし、国家への義務的食肉売渡し制を廃止して農民の負担を軽くすべきであります。

 国営農牧場は、社会主義農業制度の発展において大きな役割を果たすようになるでしょう。国営農牧場の食肉生産を増やすと同時に、農民の個人畜産業もたえず発展させなければなりません。

 わが党は、農業の社会主義的協同化に着手しました。今年、実験的に各郡に3、4の農業協同組合を組織するつもりです。来年はそれを2、3倍に増やし、明後年からは農業協同化運動を大々的に展開し、短時日内にそれを完成しなければなりません。

 3カ年計画期間に水産業も急速に発展させるでありましょう。

 3面が海に面している朝鮮は豊かな水産資源に恵まれています。人民の魚類の需要をみたすため、その生産を急速に増大させなければなりません。水産部門では今年度に16万〜20万トンの魚類を水揚げし、3カ年計画末には漁獲高を60万トン水準に引き上げる予定です。

 3カ年計画が遂行されれば、自立的経済の基礎がきずかれ、人民生活は現在よりはるかに向上するでしょう。

 戦後の社会主義建設に対するわが党の方針と経済発展の展望は、およそ以上のとおりです。人民軍の軍人は、わが党の政策と方針を明確に把握しなければ、それを熱烈に支持し擁護することも、各自の戦闘的使命を全うすることもできません。

 党の戦後経済建設課題を遂行するためには、敵が共和国北半部を再び攻撃できないように停戦を恒久平和に転換させ、人民の平和的労働を守るべきであり、そのためには人民軍の戦闘力をあらゆる面から強化しなければなりません。

 もし、人民軍が祖国解放戦争の勝利に陶酔して防御工事をおこたり、学習に励まず、軍事技術を練摩せず、安逸に流れるならば、敵は停戦協定を破って再び侵略してくるでしょう。しかし、人民軍が強力な戦闘力をもつ幹部軍隊として万端の準備を整え、常に緊張した動員態勢を堅持すれば、敵は恐れをなして攻めてこられないでしょう。敵が共和国北半部を再び侵略するかどうかは、我々の力のいかんにかかっています。

 人民軍は、平和的な時期を最大限に利用し、部隊の戦闘力を強化しなければなりません。これが、人民軍に対するわが党の要求であり、人民軍将兵に与えられた基本的課題であります。

 人民軍の戦闘力の強化において重要なのは、祖国解放戦争の経験に照らして、現在我々にないもの、弱いもの、不足するものを慎重に検討し、短時日内にないものは新しく作り、弱いものは補強し、不足しているものは補充することであります。

 戦争は、相撲にたとえることができます。一度相撲をとった後は、相手は腕と足が弱いから外掛けで押すべきだ、また外掛けで相手に敗けたから腕と足の力を養うべきだというように防備を考えなければ相撲に勝てないように、戦争に勝つためには味方の弱点をよく研究して、徹底した是正策を講じなければなりません。

 さきの戦争で、かりにある連隊の砲兵の射撃が下手であったり、歩兵が砲兵との協同行動を上手におこなえなかったとすれば、砲兵は砲射撃訓練を、歩兵は砲兵との協同行動訓練を強化すべきであります。また、参謀部の通信、偵察活動に欠点があったとすればその改善策を講じ、偵察兵が敵の警戒網を突破できず戦闘任務の遂行に支障を受けたとすれば、それを克服する訓練を強化しなければなりません。これとあわせて、人民軍の戦法のなかで敵が恐れているものはなんであるかを知り、それを発展させて完成すべきであります。

 祖国解放戦争の経験を総括的に分析してみると、人民軍の弱点は参謀部の活動にあり、また砲兵の用法がまずく、部隊の戦闘訓練と軍人の思想教育が不十分であったことでした。人民軍部隊では、まずこのような欠陥から早急に是正すべきであり、そのためには、戦争経験の総合と分析、総括を正確におこなわなければなりません。

 人民軍部隊の各級指揮官と参謀部要員、政治幹部などすべての指揮官が、各自の活動上の欠点を探しだし、その早急な是正策を講じて、一つ一つ実践に移さなければなりません。

 人民軍の戦闘力を強化するためにはまた、人民軍将兵、特に指揮官が最新軍事科学・技術を身につけなければなりません。

 指揮官が最新軍事科学・技術を知らなくては、近代的な正規軍を巧みに指揮することができません。

 最新軍事科学・技術を修得するためには、何よりも一般知識を所有しなければなりません。少なからぬ将校が中学校にも正規に通っていないので、一般知識を身につけることが極めて重要です。最近総参謀長と総政治局長に、数学、物理学、化学などの一般基礎知識を人民軍の軍事・政治幹部に教える対策を講ずるよう指示しましたが、それを必ず実行しなければなりません。

 私の考えでは、兵書とともに自然科学の教材も部隊に配布すべきだと思います。

 将校に化学や物理学を学ばせる目的は、将来彼らを化学工場の技師長に派遣するためではなく、敵の化学兵器に怖じず、科学的な防備策を立てられるようにするためです。将校が1、2年間努力すれば、基礎科学の原理を修得することができるでしょう。

 もし、指揮官が「自分は洛東江まで進撃して勝利した」といって最新軍事科学・技術の修得をおこたり、また「自分は歩兵だから、他の兵種の軍事知識など知る必要はない」といって戦車や航空機は知らなくてもよいと考えるならば、それはたいへんな間違いであります。指揮官は、知識は力であることを肝に銘じ、学習に励んで最新軍事科学・技術を広く体得すべきであります。

 次に、部隊の管理において官僚主義を一掃すべきであります。

 下部の人に怒鳴ったり押しつけることだけが官僚主義ではありません。自分の仕事を他人にさせるのも、解決すべきことをずるずる引き延ばしたり、下部の人に関心をもたないのもすべて官僚主義であります。

 人民軍は金銭のために服務する帝国主義の雇い兵とは異なり、祖国と人民のために自覚をもって服務する革命の軍隊であります。したがって、人民軍には自覚的な規律が支配し、上下が互いに尊敬し愛し合い、生死苦楽をともにする気高い気風が確立されなければなりません。

 指揮官は、部隊管理において官僚主義、軍閥主義を一掃し、部隊を規律の正しい、思想的、意志的にかたく団結した革命的な集団につくるべきです。

 次に、停戦が実現したからといって、軍人が安逸に流れないよう思想教育を強化すべきであります。

 停戦は、完全な平和ではありません。わが国は、現在も戦時状態にあると言えます。敵は、共和国北半部に対する再侵略の機会をうかがいスパイ、 ・破壊 謀略分子を不断に送り込んでいます。

 人民軍将兵は、常に緊張した動員態勢を堅持し、警戒心を高めて敵の一挙一動を監視しなければなりません。

 敵は、共和国北半部にブルジョア反動思想を広め、我々の内部を切り崩そうと策動しています。それゆえ、軍事・政治幹部は、高度の政治的自覚と党性を堅持し、ブルジョア思想が人民軍の内部に浸透できないようにすべきです。

 党中央委員会第5回総会でも強調したように、朝鮮人民にはまだ封建思想やブルジョア思想の影響が残っており、また古い思想の温床としての社会的・経済的根源も完全になくなっていない状況のもとで、軍人の思想鍛練を強化しないならば、古い思想がはびこり、結局は軍人が党の立場を確固と守れなくなるでしょう。軍人の政治的自覚を高め、規律と秩序を確立し、マルクス・レーニン主義思想の教育を強化すれば、敵が有害な思想を広めることはできません。

 マルクス・レーニン主義思想は、労働者階級と被抑圧人民の解放闘争の武器であります。これは、資本主義の滅亡と社会主義勝利の信念をかたくさせ、革命大業の最終的勝利の道を示してくれます。それゆえ、わが党は、常にマルクス・レーニン主義を深く研究し、朝鮮の実情に即して創造的に適用するよう強調しています。

 マルクス・レーニン主義で武装しなければ動揺する恐れがあります。マルクス・レーニン主義学習をおこたる人は社会発展の法則が理解できず、確信をもって革命に参加することができません。

 かつて、日本帝国主義者は、朝鮮を占領し、中国東北地方を手に入れたのち全中国を征服する野望を抱いて、「大日本」が「大東亜共栄圏」をつくると豪語しました。第2次世界大戦当時ヒトラーは、ドイツ軍がソ連のウラルまで進撃すれば「ドイツと日本が世界を支配する」と広言しました。こうした時期に、マルクス・レーニン主義で武装していない一部の人は、帝国主義者のデマに乗ぜられて信念を失い変節しました。ある反動作家は、自分一個人の享楽に目がくらみ、日本人と朝鮮人は「同祖同根」であるという途方もないことを唱えて日本帝国主義にこびへつらい、えせ共産主義者は日本帝国主義に「転向書」を出して「大日本帝国」に「忠誠」を誓いました。さきの戦争で人民軍が一時的に後退したときにも、マルクス・レーニン主義で武装していない人は狼狽してなすすべを知らず、一部の人は敵に投降し「滅共団」「大韓青年団」「治安隊」などの反動団体に加担して祖国と人民に反逆する行為をはたらきました。

 歴史的事実は、人びとがマルクス・レーニン主義で武装すれば、いかに困難かつ複雑な闘争においても必ず勝利することができることを示しています。

 マルクス・レーニン主義思想で武装したわが党は、祖国解放戦争の困難な後退の時期にも最後の勝利を確信し、人民軍を再編制して敵に大きな打撃を加え、前線と銃後のすべての事業を正しく組織指導して祖国解放戦争を勝利に導きました。朝鮮共産主義者が祖国の解放をめざす困難な抗日武装闘争において勝利したのも、祖国解放戦争において朝鮮人民が党の指導のもとに、強敵アメリカ帝国主義を打ち破ったのも、すべてマルクス・レーニン主義の勝利であります。

 連隊長と政治担当副連隊長は、人民軍の重要な地位にあります。諸君は誰よりもマルクス・レーニン主義思想で武装し、下部の将兵をマルクス・レーニン主義思想で教育するために大きな力を注ぐべきであります。

 連隊長、政治担当副連隊長は、祖国防衛の任務を高度の責任感をもって遂行すべきであります。

 党と国家は、諸君が祖国防衛の任務を立派に遂行できるよう、諸君の連隊に軍旗を授与し、航空機、大砲、戦車などの近代兵器や戦闘技術機材を与え、人民の大切な息子、娘たちをあずけています。諸君は、高度の責任感をもって党と国家から与えられた重大な任務を誠実に遂行し、無責任な、安逸な行動を厳に慎むべきであります。

 かつて、抗日遊撃隊員は、全朝鮮人民の運命と祖国の未来を担っていることを深く自覚し、人民の期待にこたえるべく常に高度の責任感をもって日本帝国主義と戦いました。人民軍将兵もまた、そのような高度の責任感をもってたたかわなければなりません。

 こんにち、朝鮮人民は、党の指導のもとに、破壊された人民経済の復興と国の経済的土台の強化のために総決起しています。

 我々は、経済建設を強力におし進めて社会主義的工業化を早急に実現し、農業を機械化し、高層ビルの立ち並ぶ雄大な都市を建設し、文化革命に力を入れて初等義務教育を実施し、人民の生活を文化的なものにしなければなりません。こうして、共和国北半部に地上の楽園を建設し、人民生活において南半部とは天と地ほどの差をつけるべきであります。

 現在南朝鮮は、アメリカ帝国主義の完全な植民地、生き地獄に転落しています。かいらい李承晩一味は、戦後アメリカ帝国主義者と売国的な「韓米相互防衛条約」を締結して南朝鮮全体を彼らにゆだね、手段と方法の限りを尽くして人民の血と汗を搾り取っています。

 我々が社会主義を立派に建設して北半部に幸福な地上の楽園をきずきあげれば、かつて抗日武装闘争の時期に遊撃隊員がソ連の社会主義建設の成果から大きな力を得たように、南朝鮮の人民は北半部の社会主義建設の成果に励まされて、アメリカ帝国主義者とかいらい李承晩一味に反対する闘争をさらに力強く展開するようになるでしょう。

 人民軍の指揮官は、軍服を着ているからといって高慢になり、地方の党・政権機関を無視し、人民の利益を損ねるような行為をしてはなりません。諸君が少しでもそのような行為をはたらくならば、党と祖国と人民のために敵と勇敢に戦って倒れた戦友に申訳が立たなくなるでしょう。

 後方の労働力が不足しているので、人民軍が復興建設を極力援助すべきであります。

 さきの戦争で人民軍将兵は、先祖の墳墓がある祖国の大地を血潮で守り、多数の英雄的な兵士が革命的民主基地を守るため敵の銃眼を胸でふさぎました。諸君は血潮で守った祖国を富強にし、革命的民主基地を強化する復興建設に決起した人民を極力援助しなければなりません。

 人民軍部隊は今後、都市や港湾の建設、植樹や農村建設の援助を計画的におこなうべきであります。

 作業動員に参加する軍人は、規律と秩序を厳守し、1粒の米、1本の釘、1枚のレンガといえどもそれが人民の財産であることを肝に銘じて大切にあつかい、極力節約し、人民が生命、財産を人民軍にあずけることができるという信頼感を強く抱くようにしなければなりません。

 また人民軍部隊は、駐屯地の政権機関と密接な連係を保ち、戦死者や愛国烈士遺家族の援助に力を入れなければなりません。

 遺家族のためにまき(薪)取りや住宅の修理、庭の掃除をするなどの美風を部隊内に確立すべきであります。

 私は、諸君が戦争の経験を深く研究して、現代戦を巧みにおこなえるよう人民軍の戦闘力をあらゆる面から強化し、高度の革命的警戒心をもって人民の平和的建設をかたく防衛するものと確信します。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』8巻 

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