金 日 成

部隊の戦闘力を強化するための課題
 −朝鮮人民軍第831軍部隊の軍人におこなった演説−
1953年10月16日

 私はきょう、第831軍部隊の区分隊の兵舎と訓練場を見て回りました。諸君は、去る祖国解放戦争で戦ったその意気込みで戦闘・政治訓練や防御工事を立派におこない、生活も規律ただしくおこなっています。私は、これを非常に満足に思い、部隊のすべての軍人に謝意を表します。

 私はきょう部隊を訪れた機会に、停戦の実現に伴って諸君のなすべき課題について述べようと思います。

 何よりもまず、部隊の戦闘動員態勢に万全を期さなければなりません。

 部隊の戦闘動員態勢を整えるうえで重要なのは、軍人が平和的気分にとらわれず、高度の革命的警戒心をもつことです。停戦は、完全な平和を意味するものではありません。アメリカ帝国主義侵略者は、停戦協定に署名したインキもかわかぬうちに、再び戦争挑発に狂奔しています。わが国は、いつまた戦争が起きるかわからない状態にあります。それゆえ、軍人は決して平和的気分にとらわれてはならず、いま一度敵と戦う思想的決意をかためなければなりません。同時に、高度の革命的警戒心をもって敵の一挙一動を鋭く注視すべきであります。

 部隊の戦闘動員態勢を整えるうえで重要なのはまた、防御工事に力を入れ、防御地域を鉄壁の要塞にかためることです。祖国解放戦争の過程で我々が編み出した坑道戦は非常にすぐれた戦法です。坑道に依拠して戦えば、少ない兵力で数的に優勢な敵を掃討することも十分可能です。部隊では、防御地域の主要高地と地点に頑丈な坑道をつくるべきであります。

 軍事施設を巧みに擬装しなければなりません。防御工事をいかに頑丈におこなっても、陣地が露呈するならなんの役にも立ちません。スパイや破壊・謀略分子は、軍事施設を探り、それを破壊するため悪辣に策動しています。それゆえ、軍事施設物が彼らに発見されないよう徹底した偽装をほどこすべきです。

 戦闘技術機材をいつでも動員できるよう、よく整備しておかなければなりません。

 次に、戦闘訓練を強化すべきです。

 人民軍部隊は、今後再び戦争が起これば、祖国解放戦争の経験を生かして、朝鮮の実情に適した戦闘をおこなわなければなりません。したがって、戦闘訓練は、祖国解放戦争の経験を踏まえて朝鮮の具体的実情と部隊の戦闘任務に即して、また実戦同様の環境でおこなうべきです。部隊では、祖国解放戦争の経験を正確に分析総括して長所と短所を見つけ、朝鮮の実情に即した戦法を完成しなければなりません。そして、その戦法に精通するよう戦闘訓練をおこなうべきです。

 山地訓練を強化しなければなりません。

 山の多い朝鮮の地形条件を利用して山地戦を巧みにおこなえば、技術的、数的に優勢な敵も十分に撃滅することができます。部隊では、山地帯で敵の防御を迅速に撃破し高地をいっきょに占領する訓練、通過困難な地帯や高峰、断崖を突破する訓練に力を入れるべきです。こうして、いかに険しい地形条件や複雑な戦闘状況のもとでも、軍人が独自に戦闘任務を立派に遂行できるようにしなければなりません。

 夜間訓練も強化しなければなりません。

 抗日武装闘争の経験や祖国解放戦争の経験からして、夜間戦を巧みにおこなうことが極めて重要です。祖国解放戦争のとき、人民軍の軍人は巧みな夜間戦をおこなって多大な戦果をあげました。アメリカ帝国主義侵略者は、人民軍の夜襲を最も恐れました。諸君は、夜間行軍と夜襲訓練に力を入れなければなりません。

 射撃訓練を強化すべきであります。

 軍人は山地における射撃訓練をつみ、どんな複雑な地形においても一発必中の射撃ができるよう熟達しなければなりません。特に、夜間射撃訓練を強化し、夜間に各方角から出現する相異なる目標をすべて消滅しうる百発百中の射撃術を身につけるべきです。

 軍人が射撃に熟達するためには、射撃訓練を強化すると同時に、武器を大切に扱い、それに精通しなければなりません。軍人は武器の性能に通じ、それを規定どおりに保管し取り扱うべきです。きょう中隊を見たところ、軍人の武器管理状態は良好でした。部隊では、これからもすべての軍人が武器と戦闘技術機材を瞳のように愛護し、その保管と取扱いの秩序を厳守するようにしなければなりません。特に、軍隊内の民主青年同盟組織は、かつての抗日遊撃隊員のように武器を愛護するよう青年軍人を教育し、軍人にとっても
っとも大切なものは武器であることをよく認識させるべきです。

 軍人は自分の武器に精通すると同時に、敵の武器も扱えるようにならなければなりません。

 砲兵訓練を強化すべきであります。

 砲兵は、現代戦において極めて重要な役割を果たします。砲兵なしには現代戦を巧みにおこなうことができず、砲兵の役割を過小評価しては大きな戦果は期待できません。ところが祖国解放戦争のとき、一部の指揮官は、狙撃兵器と手榴弾さえあれば戦闘で勝てるといって、火砲を十分に使用しませんでした。これは、現代戦の性格を無視した誤った行為です。

 人民軍は、朝鮮の地形条件に即して迫撃砲を含む曲射砲火力を増強し、砲兵訓練を強化しなければなりません。砲兵訓練では射撃術の向上に重点をおくべきです。こうして砲兵が、地上、空中、海上を問わず、すべての目標に百発百中させる高度の射撃術を習得するようにしなければなりません。砲手は射撃訓練に励んで砲の戦闘準備時間を短縮し、指揮官は砲兵を巧みに動かし、上手に指揮しなければなりません。砲兵は他の兵種との共同訓練にも力を入れるべきです。

 指揮官、参謀部要員の訓練を強化し、その戦闘指揮能力を向上させなければなりません。

 彼らが戦闘指揮を巧みにおこなうことは、戦闘勝利の重要な保証であります。緻密かつ科学的な戦闘計画と綿密な戦闘組織、巧みな部隊指揮をぬきにしては現代戦の勝利は望めません。部隊では、指揮官、参謀部要員の訓練を強化して、現代戦の特質に即した戦闘計画を正しく作成して実行し、その遂行状況を点検できる能力を備えさせるべきです。また、彼らが先進的な軍事科学・技術と高度の用兵術を身につけるようにしなければなりません。

 指揮官や参謀部要員は、部隊や区分隊の戦闘訓練計画を綿密に立て、訓練の組織と指導を確実におこない、訓練においていかなる形式主義も許してはなりません。

 訓練場を整備し、訓練機材を十分に整えるべきです。諸君は遊休資材で訓練機材をつくったそうですが、それは非常に良いことです。鉄棒や平行棒などは軍人が常時利用できるように、兵舎の近くにつくるべきです。

 次に、軍規を強めなければなりません。

 規律の乱れた軍隊は、敵に勝つことができません。我々は、抗日武装闘争当時から革命軍隊の規律は自覚的なものでなければならないと強調してきました。抗日遊撃隊の輝かしい革命伝統を継承した人民軍の規律は当然自覚的なものであるべきです。

 南朝鮮かいらい軍の規律は、強圧的なものです。革命軍である人民軍の規律と、強制的に駆り集めた南朝鮮かいらい軍の規律との本質的相違点はここにあるのです。部隊では、すべての軍人が軍規を自覚的に守るようにしなければなりません。

 軍規の強化において重要なのは、部隊内に厳格な命令・指揮体系を確立することです。これなしには部隊の全一的な指揮は不可能です。部隊内に上級の命令に絶対服従する鉄の軍規を確立しなければなりません。

 指揮官は、軍規を厳守するよう統制を強化し、みずからその模範を示すべきであります。特に、下士官は規律生活で兵士の模範となり、部隊を正しく管理しなければなりません。

 軍人は。内務班生活をはじめ軍隊生活のすべてを規定と教範に従っておこなうべきです。軍人はいかなる場合でも上級に対する礼節を守り、汽車やバスの中でも座席をゆずるなど気高い道徳的品性を身につけなければなりません。部隊の戦闘力と指揮官の指揮能力は、軍人の規律状態をもって評価できます。強力な戦闘力をもつ部隊の軍人は、品行方正で礼節を重んじますが、そうでない部隊の軍人は上級に対する礼節を守らず、公共の場における初歩的な公衆道徳さえ守ろうとしません。それゆえ、指揮官は、軍人が礼節を守らず公衆道徳を違えることを軽視せずに部隊の戦闘力に関わる重大問題とみなし、軍人のなかでこうした傾向があらわれないようにすべきです。部隊内の党組織や民青組織でも礼節や公衆道徳をわきまえない行為とは、強い思想闘争をおこなうべきです。

 軍事機密を厳格に守るべきです。軍人は常に軍事機密を厳守し、それを漏らす行為は直ちに問題視し、強くたたかわなければなりません。

 次に、軍人は自力更生の革命精神を発揮して区分隊の生活を几帳面に運営すべきであります。

 今日、この部隊にきて見たところ、軍人たちは兵舎をきちんと整えて生活しています。人民軍は戦闘に強いばかりでなく、生活も自力で立派におこなうべきです。かつて抗日遊撃隊員は、自力更生の革命精神を発揮して自力で生活を上手にきりもりしました。このような精神で戦ったので強盗日本帝国主義にうち勝つことができたのです。諸君は、抗日遊撃隊員のように自力更生の革命精神を大いに発揮して、自力で生活を立派にきずくべきです。兵舎もよく整頓し、食堂も衛生的、文化的に整えるべきです。

 指揮官は、兵士の軍務と生活に常に深い関心を払うべきであります。

 指揮官は、兵士が過失をおかした場合は、親身になって諭し、適時に是正させるべきです。指揮官はまた、兵士の寝食や被服にも細かく気を配り不便がないようにしなければなりません。そうすれば、兵士たちはホームシックにかからず軍務に専心し、敵の攻撃には指揮官と一心同体となって当たるようになるでしょう。

 各中隊に毛布やシーツを遅滞なく支給し、軍人に石けんや学習要具も供給すべきです。たばこは上等なものを支給すべきです。

 次に、軍民一致の伝統的美風を大いに発揮しなければなりません。

 かつて抗日遊撃隊員は筆舌に尽くしがたい困難のもとでも強盗日本帝国主義にうち勝つことができたのは「魚が水を離れては生きていけないように、遊撃隊は人民を離れては生きていけない」というスローガンのもとに、人民と一心同体になって戦ったからです。先の祖国解放戦争で若年の人民軍が世界「最強」を誇るアメリカ帝国主義を打ち破ったのも、全人民が人民軍を兄弟のように愛し援護したからです。今後、再び戦争が起きれば、人民軍は人民と同じ塹壕で戦わなければなりません。軍人は、人民を親のように尊敬し愛し、人民の財産にはいささかの損害も与えてはなりません。軍人は、人民のなかに入って党政策を広く解説すべきであります。また、人民とともに戦後の復興建設に積極的に参加し、駐屯地周辺の農家の仕事も熱心に手伝うべきです。こうして、一日も早く人民の生活を安定させなければなりません。

 最後に部隊内の党組織は、幹部と党員の党生活を強化し、軍事課題の遂行において党員の前衛的役割を高め、すべての活動に政治活動を優先させるべきです。

 幹部の党組織生活を強化しなければなりません。そうしないときには高慢になり、ついには思想的な変質をきたしかねません。部隊内の党組織は、幹部の党組織生活で二重の規律を許してはなりません。幹部は党組織生活で率先垂範し、党組織の決定と任務分担を尊重して確実に遂行する厳格な規律を確立しなければなりません。

 党内に健全な批判の気風をうち立てるべきです。党員は、常に自分の生活を批判的に反省すると同時に、他の党員の欠点に対してもそのつど批判しなければなりません。

 党員の前衛的役割を高めるために大きな力を注ぐべきです。去る祖国解放戦争において労働党員は常に隊列の先頭に立って勇敢に戦いました。燃える高地で、党のために生命をささげて戦う誓いを立てることを最初に提起したのも労働党員であり、共和国国旗をひるがえして進撃の先頭に立ったのもやはり労働党員でした。労働党員が困難な戦闘のたびに先頭に立ち、すべてをささげて勇敢に戦ったからこそ、戦争で勝利することができたのです。部隊内の党組織は党の教育を強化して、党員が常に困難な仕事を引き受け、軍事課題の遂行で非党員の軍人を力強く導くようにしなければなりません。

 党勢拡大を正しくおこなうべきであります。これは、わが党の強化にとって重要な意義があります。祖国解放戦争に参戦した軍人は戦火のなかで鍛えられているので、彼らのうちから党政策で武装し、党に忠実で軍務に誠実な先進分子を入党させるべきであります。新隊員のなかからも戦闘・政治訓練においてすぐれた軍人を選び、一定の期間、系統的な教育と実践を通じて点検した後、入党させるべきです。

 党中核の育成に力を入れなければなりません。党の質的強化において、中核の育成は極めて重要です。特に、軍隊内における党員のレベルに差があるため、中核の育成は緊切な問題となります。政治機関と党組織は、中核を掌握し系統的に教育してその役割を十分に果たさせるようにすべきです。こうすれば、部隊に困難な課題が提起されても、中核が先頭に立って党員をその遂行に立派に導いていくことができます。

 3年間の祖国解放戦争で鍛えられ、豊かな戦闘経験を身につけた軍人は、わが党の貴重な財産です。祖国解放戦争の初期から参戦して立派に戦った軍人を大事にし、よく教育して、これからも与えられた任務を円滑に果たすようにすべきです。

 祖国解放戦争の参戦者は、かつて勇敢に戦ったように、これからも活動と生活で中核となり、模範となるべきであります。

 部隊内の党政治活動を強化するためには、政治機関と党組織の役割を高めなければなりません。党組織は、党員の党組織生活に対する指導と統制を強化し、軍人に対する教育を着実におこなうべきです。そのためには、党組織が生気にみちた生きた組織にならなければなりません。

 軍事指揮官も政治活動に関心を払うべきであります。指揮官は、命令一つで軍事活動が遂行できると考えるのは間違っています。活動が順調にいかないからといって、どなったり、命令ですべてをおこなおうとするのは、革命軍隊の指揮官の品性とは言えません。指揮官は、軍人に対する党政策教育を強め、すべての軍人が党政策を積極的に支持し、あくまでそれを貫くようにしなければなりません。また、複雑な軍事課題が提起されれば政治活動を優先させ、説得の方法で軍人をその実行に動員しなければなりません。

 諸君は戦争に勝利したからといって、決して自己満足や安逸に流れてはなりません。アメリカ帝国主義者が再び攻撃してくるときには、決戦を繰り広げて掃討し、祖国の統一をなし遂げなければなりません。

 諸君は第1次南進のさい、安東解放戦闘をはじめ、前半部の広い地域を解放する戦闘で輝かしい偉勲を立てました。党は、諸君が今後さらに大きな偉勲を立てるものと確信します。
                                               
出典:『金日成著作集』8巻 

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