金 日 成

人民軍を強化しよう
 朝鮮人民軍高級将校会議でおこなった演説
 −1952年12月24日−


  諸君!

 米英武力干渉者と売国奴李承晩一味に反対する朝鮮人民の偉大な祖国解放戦争は、すでに3年間もつづいています。正義の解放闘争に決起した朝鮮人民は必勝の信念をもって、熾烈な戦いをへてかちとった人民民主主義制度をかたく守り抜いています。

 今年は、朝鮮人民と人民軍の生活で大きな歴史的意義をもち、平和、自由、独立の戦いで達成した大勝利によって輝いています。

 この会議は、米英帝国主義武力侵略者に反対する祖国解放戦争勃発以後、朝鮮人民の武装力である人民軍の戦闘力を強化する対策を講ずるうえで大きな意義をもつ、幅の広い軍事会議であります。

 アメリカ帝国主義者は、朝鮮人民ばかりでなく、アメリカ人民の基本的利益にも合致する我が方の合理的な停戦条件を受け入れようとしていません。その結果、停戦会談は長いあいだ中断せざるをえない状態にあり、戦争は新たな段階を迎えています。


 1 朝鮮戦争の本質と性格

 現国際情勢は、人類に新たな世界大戦を押しつけようとする米英帝国主義者の策動によって特徴づけられます。

 アメリカ支配層が戦後に実施したすべての政策は、アメリカを流血的な冒険の道へ追いやりました。2年半前、アメリカの戦争放火者は、それまでの威嚇・恐喝政策を直接的な侵略政策に変え、朝鮮人民をこの政策の最初の対象に選びました。

 ブルジョア御用学者は、戦争の実際の原因とその階級的性格をおおい隠し、戦争の「必要性」を論証し正当化しようとやっきになっています。

 現代ブルジョア戦争論の反動的本質を暴露する強力な思想的武器は、マルクス・レーニン主義であります。マルクス・レーニン主義学説のみが、戦争の実際の根源を解明し、戦争のあらゆる原因を除去し、戦争そのものを廃絶する正しい道を示します。

 戦争は本質において、特別な暴力的手段による特定階級の政治の継続であります。

 レーニンは「弁証法の基本的命題を戦争に適用するとき、『戦争は別の』(暴力的な)『手段による政治の継続である』(中略)マルクスとエンゲルスは、常にこのような観点に立っていた。かれらは個々の戦争を当該時期の当該関係列強(そして、その列強内の相異なる諸階級)の政治の継続とみた」と述べました。

 この命題を具体化して、スターリンは「戦争問題を政治問題と切り離して考察してはならない。戦争は、政治の表現である」と述べました。

 戦争の本質とその原因を理解するためには、戦争以前に支配階級が実施した対内対外政策、戦争をまねいた政策を解明する必要があります。

 マルクス主義の立場から戦争を考察するに当たって最も重要なのは、戦争遂行の目的、戦争をまねいた歴史的・経済的条件、戦争を遂行している階級について解明することです。

 したがって、諸階級および国家の政策にたいする研究は、戦争の性格とその階級的内容を規定し、どの階級の経済的・政治的利益が戦争をまねいたかを確定することを可能にします。

 もし、政治が帝国主義的なものならば、この政治からうまれる戦争は帝国主義的侵略戦争となり、もし、政治が民族解放的なものならば、すなわち、それが人民の利益を守り、民族的抑圧に反対する人民の闘争の表現であるならば、その戦争は民族解放戦争となります。

 戦争には、正義の戦争と不正義の戦争、先進階級の戦争と反動階級の戦争、階級的・民族的抑圧からの解放をめざす戦争とこの抑圧を強化するための戦争があります。

 反動的搾取階級の不正義の侵略戦争は、社会の発展を阻害します。不正義の戦争は、世界再分割のため、商品市場と原料供給地、投資圏獲得のために帝国主義諸国間でおこなわれる戦争であり、勤労大衆の革命運動に反対し、民族的解放と国の独立めざして戦う植民地・従属国人民に反対してブルジョアジーがおこなう戦争であります。

 帝国主義侵略者に反対する人民の解放戦争は、正義の戦争であります。正義の戦争は、社会発展の利益に合致します。この戦争はいかなる形でおこなわれるにしても、常に社会の発展を阻害する反動階級とその支配機関を弱体化させるか、完全に掃滅し、被抑圧人民を資本主義的奴隷制度から解放し、植民地人民を帝国主義的抑圧から解放し、全世界人民の自主的な国家的・民族的発展の条件をもたらします。

 戦争にかんするマルクス・レーニン主義の学説は、現在、正義の戦争の立派な典型となっている朝鮮人民の祖国解放戦争の偉大さを明確に認識させます。

 こんにち、朝鮮人民が全世界の進歩的人民から熱烈な同情を得ているのは、祖国の独立と自由を守り、米英帝国主義武力侵略者に反対する正義の戦争をおこなっているからです。

 アメリカ武力干渉者に抗する朝鮮人民の武力闘争は、祖国の自由と独立を守る闘争であると同時に、全世界の平和と安全を守る闘争であります。

 朝鮮人民の闘争は、植民地・従属国人民の民族解放闘争の旗印となっています。それは、朝鮮人民と戦っているアメリカ帝国主義が国際反動の主柱であり鼓舞者であると同時に、新しい世界大戦の主な放火者であり、自由と民族の独立をめざす被抑圧人民の闘争の絞殺者であるためです。

 アメリカ帝国主義者は、長年にわたって朝鮮を垂涎の的として見てきました。レーニンは1920年に、はやくも「アメリカ人は、朝鮮というこの豊饒な土地を奪おうと欲している」と述べました。アメリカ帝国主義者は、朝鮮の天然資源と有利な戦略的位置に注目し、それを手に入れようと策しています。

 朝鮮半島の軍事戦略的意義はすでに、日本侵略者の悪名高い「田中上奏文」のなかで規定づけられています。この「上奏文」は次のように指摘しています。「世界制覇のためにはアジアを征服せねばならず、アジアを征服するためには中国を占領せねばならず、中国を占領するためには朝鮮を隷属せねばならない」

 1945年に南朝鮮を占領したアメリカ帝国主義者は、長年にわたって練ってきた対朝鮮侵略計画の実現に乗り出しました。アメリカ帝国主義者は、中国の鉄道網とつながっている朝鮮の鉄道と朝鮮の便利な港湾を利用し、朝鮮半島を、自国軍隊を日本からアジア大陸に輸送する中間兵站基地にしようと妄想しています。アメリカ軍部は、その侵略計画を実現するために南朝鮮の港湾基地を改築し、南朝鮮全域に多くの軍用飛行場を新設し、38度線の付近に軍隊を集結しました。

 共和国北半部にたいする侵攻を準備しながら、アメリカ帝国主義者は占領初期から警察隊とテロ団を中心にした「国防軍」の創設に着手しました。

 1946年の末、アメリカ軍政当局は、陸軍部、海軍部、空軍部をもつ南朝鮮の武力機関を組織し、その後間もなく指揮官養成の軍事学校を設置しました。

 1950年までに、アメリカ帝国主義者は、南朝鮮を極東侵略の基地に、軍事戦略基地にする作業を終え、同年6月、朝鮮への武力侵攻を開始して侵略戦争を起こしました。

 かれらは、朝鮮民主主義人民共和国を征服し、北朝鮮を占領した後、中国、ソ連国境に進出することをこの戦争の主な目的にしていました。

 しかし、朝鮮を植民地に、中華人民共和国とソ連にたいする戦争の基地にしようとしたアメリカ帝国主義侵略者の企ては水泡に帰しました。かれらの武力侵略は、全朝鮮人民に占領者にたいする敵がい心を強めさせ、祖国の自由と独立のために決起した朝鮮人民は、武力侵略者に抗する正義の祖国解放戦争をすでに3年間も頑強に戦いつづけ、最後の勝利を達成する基盤をきずいています。


 2 人民軍の性格

 ソ連軍がアジアで日本軍国主義者を撃滅した結果、朝鮮から日本占領者が駆逐され、朝鮮史上初めて人民が国家権力を掌握し、朝鮮は民主主義人民共和国を宣布しました。

 長期にわたる日本帝国主義の抑圧から解放された朝鮮人民は、人民政権を創建するために積極的な闘争を展開しました。祖国を民主国家に統一するための朝鮮人民の闘争における唯一の指導的・嚮導的勢力である朝鮮労働党は、広範な人民大衆のこの戦いを指導してきたし、現在も指導しています。

 共和国で実施された民主諸改革は、人民民主主義制度を強化し、民族文化、科学、芸術の発展をもたらす物質的土台をきずきました。それはまた、祖国の南半部人民大衆の深い共鳴を呼び、飢餓と奴隷の制度である李承晩支配体制に反対する闘争へとかれらを励ましました。南朝鮮の勤労大衆は、これまでのように生きることを欲せず、祖国の統一と人民民主主義制度の樹立を求めました。

 祖国と人民に反対する侵略勢力が存在する状況にてらして、我が党は祖国防衛のために軍隊を創建する必要に迫られ、1948年2月、朝鮮人民軍を創建しました。

 朝鮮人民軍は、日本帝国主義の過酷な弾圧下で祖国と人民の解放のために抗日武装闘争に献身してきた朝鮮の革命家を中核とし、その豊かな闘争経験をもとにして組織されました。

 「支配権をかちとるために決起した新しい社会階級は(中略)困難な公民戦争で新しい軍隊、新しい規律、新しい軍事組織を漸次つくり出すことなくしては、この支配権をかちとり、強化することができなかったし、現在もできない」というレーニンの命題は、人民軍の建設において労働党と人民政権の指針となりました。

 1950年6月25日、売国奴李承晩一味の戦争挑発とアメリカ帝国主義略奪者の武力干渉は、創建間もない人民軍に複雑な課題を提起しました。それは、人民が獲得した民主主義的成果と祖国の自由と独立を戦火のなかで守りぬく課題でした。

 アメリカ帝国主義者の野蛮な侵略は、朝鮮人民を我が党のまわりにかたく団結させ、国家と民族存亡の危機に直面した朝鮮人民の精神的統一を強めさせました。

 燃える敵がい心と正義の解放戦争を遂行するという強い自覚に貫かれたこの精神的統一は、前線の勇士と後方の勤労者、被占領地区のパルチザンを励ましています。

 労働党の指導のもとに、人民軍は戦争の過程ですぐれた指揮能力を所有し鍛練された軍隊に成長しました。我が党は、偉大な祖国解放戦争の経験を踏まえて、軍人に勇敢さ、機敏さ、いかなる状況下にあっても敵をうち破る能力をつちかうためにたえず教育し訓練しています。

 こんにち、朝鮮人民軍は、敵の侵略勢力を粉砕しうる強力な軍事力に強化されました。正義の大業と祖国の自由と独立のための闘争は、朝鮮人民軍将兵の英雄主義の源泉であります。祖国の自由と独立のために正義の戦争を遂行しているという兵士の気高い自覚は、若い人民軍を勇敢で強靭な軍隊にし、かれらがアメリカ帝国主義侵略者に抗して献身的で英雄的な闘争をおこない、敵に大きな打撃を与えるようにしました。

 人民軍は、祖国の自由と独立、共和国に樹立された人民民主主義制度を生命をささげて守る新しい型の軍隊であり、不敗の軍隊であります。

 新しい型の軍隊である人民軍の力の源泉はどこにあり、その特質はなんでしょうか。

 人民軍は、勤労人民に反対し、それを抑圧する搾取者の道具となっている資本主義国の軍隊とは根本的に異なります。

 例えば、アメリカ軍は、レーニンが指摘したように「反動の道具であり、労働に反対する闘争における資本の忠僕であり、人民的自由の絞殺者」であったし、現在もやはりそうであります。アメリカ帝国主義は、久しい以前から自国の軍隊を使って国際憲兵の役割を果たしており、弱小民族の最も恥知らずな抑圧と絞殺の執行人となっています。

 アメリカ独占資本家は、「平和愛好」について大々的なデマ宣伝をくりひろげて、人民の警戒心を麻痺させ、人民を奴隷化しようと企てています。

 かれらはまた、「援助」の名のもとに圧殺政策を実施し、服従しない人民に飢餓の首かせをはめています。

 アメリカ、イギリス、フランスその他の帝国主義者は、常に自国軍隊を動員し、直接血なまぐさい強圧的方法で他国の人民を奴隷化しています。

 朝鮮人民軍は、帝国主義国の軍隊とは反対に、共和国の解放された労働者、農民と全人民の軍隊であります。人民とは無縁の、人民の敵対勢力であるブルジョア軍隊とは逆に、人民軍は真の人民の軍隊であります。これが、人民軍の最も重要な特徴の一つであります。

 朝鮮人民と人民軍は、利益と目的の共通性によって、また、祖国の独立を守る課題の共通性によって結ばれた一つの統一体、一つの家庭をなしています。

 人民軍は人民の利益を守るという点ばかりでなく、その階級構成も資本主義国の軍隊とは根本的に異なります。我が国においては、政権が人民のものとなっているので人民軍は人民のなかから補充され、軍隊では労働者、農民など勤労人民のすぐれた代表が指揮官に抜擢されています。

 人民軍は、人民の軍隊として抗日パルチザンの栄えある革命伝統を継承し、さらに発展させています。

 人民軍は、アメリカ帝国主義者とその共謀者の侵略軍に抗する神聖な正義の戦争において、人民とともに民族の独立と民族の自主権の旗を高くかかげています。

 侵略者の撃滅をめざす人民軍全将兵の不屈の意志と祖国の自由と独立を守る崇高な志向は、アメリカ帝国主義者の冒険を絶望的な状態に陥れました。

 アメリカ帝国主義の軍隊は、人民から愛されず、また、愛されることのできない反人民的な軍隊です。アメリカ軍の歴史は罪悪と蛮行によって彩られています。

 20世紀の初期までに、アメリカ軍は114回の野蛮な略奪戦争に参加しました。アメリカ原住民のインディアンの絶滅は、アメリカ軍の血なまぐさい歴史の最も恥ずべき序章であります。ハワイ島、メキシコ、フィリピン、アルゼンチンその他多くの国の人民の虐殺は、アメリカ軍の汚らわしい歴史を示すものです。

 このようにアメリカ軍は、生まれた当初から進歩的民主運動を鎮圧する道具となり、アメリカ帝国主義者はこれを動員して侵略政策を実施し、莫大な資本主義的超過利潤を獲得しました。それゆえ、軍閥がアメリカの最も積極的な政治勢力として登場し、アメリカの諸政策を侵略的軍国主義の方向に導く政治家や外交官の大多数をしめていることは偶然ではありません。

 諸君!

 全朝鮮人民は、朝鮮でおこなったアメリカ帝国主義侵略軍の悪逆な蛮行をよく知っています。アメリカ帝国主義武力侵略者は、朝鮮で最も野蛮で、最も悪逆な中世的方法で戦争をおこなっています。かれらは、平和な都市と農村をことごとく破壊し、ナパーム弾で田野を焼き払い、老若男女の別なく平和な住民を虐殺しています。かれらは、前線と後方に細菌兵器と化学兵器を投下し、我が方の捕虜を残忍に虐殺しています。

 アメリカ軍は、こうした方法で朝鮮人民とアジア諸国人民を威嚇、屈服させ、自由と独立のための闘争に決起したかれらの意志をくじくことができると考えました。

 しかし、アメリカ帝国主義者は朝鮮人民とアジア諸国人民を孤立させたのではなく、かえって全世界の人民大衆のはげしい憎悪と憤激を買っただけでした。

 祖国の自由と独立を守る正義の偉業でおさめた朝鮮人民の成果は、労働党の正しい指導と人民民主主義諸国の積極的な援助と密接に結びついています。

 我が党は、朝鮮人民を人民民主主義制度の強化と祖国の統一をめざす闘争に導いています。労働党は、人民軍を創建して武装させ、政治・軍事教育をおこないました。

 人民軍は、アメリカ帝国主義者と売国奴李承晩一味に反対し、祖国の独立と統一をめざす戦いで勝利する諸条件をそなえています。

 それは第1に、全朝鮮人民の指導的・嚮導的勢力であり、鉄のように統一団結し、不屈の革命精神に貫かれている労働党があることです。

 労働党は、朝鮮のすべての愛国的・民主的勢力の先頭に立っています。マルクス・レーニン主義思想で武装した労働党の威力と強固さは、我々の成果と勝利の最も重要な保証であります。

 第2に、人民軍を強化する活動を常に指導する労働党と共和国政府の政策が最も正しく、この政策が人民の利益に完全に合致していることです。人民軍の戦いは、父母兄弟と子女の幸福と自由のための戦いであり、祖国の独立と自由を守る戦いであります。

 第3に、人民軍が人民にあくまで忠実で、人民が人民軍を兄弟のように愛し、支持し、信頼していることです。

 後方はすべて、戦争の勝利のために、前線への補給を円滑に保障することに寄与しています。

 第4に、人民軍は戦火のなかで鍛えられ、戦闘の勝利を保障する指揮法を身につけた有能な指揮官でかためられていることです。軍隊内には、政治機関と党組織があります。これらは、軍人の政治教育と戦闘任務の遂行、軍規の強化、英雄主義の発揚、部隊および区分隊の戦闘政治訓練の実施などを立派に保障した豊かな経験を有しています。そのうえ、人民軍は現在、全般的に近代的な最新軍事技術で装備しています。

 第5に、人民軍はアメリカ侵略者との英雄的な戦いにおいて、人民民主主義諸国人民の支持と援助、全世界の平和愛好諸国人民の同情を得ていることです。


 3 祖国解放戦争の過程における朝鮮人民軍の成長とその状態

 祖国の独立と自由、勤労大衆の権利を守るために戦う朝鮮人民軍は、その組織とあらゆる活動をマルクス・レーニン主義的軍事建設の原則と軍事科学に依拠しておこなっています。

 スターリンが戦争の運命を決定する恒久的要因について述べたように、戦争の運命は、偶発的な契機によるものではなく、恒久的に作用する要因、すなわち後方の強固さ、軍隊の道徳的品位、師団の量と質、軍隊の武装状態、指揮官の組織者的能力などによって決定されます。

 戦争の運命を決定する恒久的要因のうち、第一義的なものは、国家の軍事力と武装力の戦闘的機能の基礎となる後方の強固さであります。

 スターリンは、「世界のいかなる軍隊も強固な後方をもつことなしには勝利することができない。後方、これは、前線に各種の軍需品を供給するばかりでなく、健全な思想をもった戦闘員を補充する。後方が強固でなく、ことに敵対的であればいかに優秀な、いかに団結した軍隊も精強でありえず、無力な集団と化してしまう」と述べています。

 戦争の運命を決定する恒久的な要因の一つである後方の強固さは、その他の恒久的要因を決定する基礎であります。

 常に恐慌の危機にさらされ、死滅しつつある社会政治体制をもつ帝国主義国家は、社会主義国と人民民主主義諸国に反対する不正義の侵略戦争において強固な後方をもつことができません。

 我が国の強固な後方のもつ優位性は、偶然的、自然発生的にもたらされたものではありません。我が国の後方の堅固さは、内部源泉と労働党の活動および人民民主主義諸国との友好関係に根ざしています。

 戦時中に我が国の後方は、著しく強化されました。現在、人民軍は、組織化された強固な後方をもっています。これは、気高い自覚をもつ闘士でひきつづき軍隊を補充しており、前線への補給を迅速に、円滑にみたすため兵器と軍需機材を増産しています。そして、敵にいっそう大きな致命的な打撃を与えることができるようになりました。

 3年間の熾烈な戦争過程で、日増しに向上する人民軍のすぐれた道徳的品性は、勤労大衆の政治的自覚の全般的向上と不可分に結びついており、軍隊と大衆の自覚の向上は、すべての将兵に戦争の社会的・政治的性格とその目的を明確に認識させています。

 それと同時に、戦闘の熾烈さと困難さ、戦争の長期化は、人民軍将兵に厳しい道徳的試練を克服することを求めています。

 戦争の正義的性格と戦争目的にたいする全将兵の明確な認識、戦争の目的と人民の利益との密接な結びつきにたいする理解、これらの諸条件が人民軍の道徳的品性の向上に大きな意義をもっています。

 軍隊の政治的・道徳的水準は、戦闘において特別な意義をもちます。戦争に勝利したすべての経験は、党の政治活動が勝利をかちとるうえで大きな役割を果たすことを示しています。それゆえ、党の政治活動の主な内容は、戦闘員に各自の任務を認識させ、戦闘の成果が自分の位置で英雄的、犠牲的に戦う各人の役割にかかっていることを深く理解させることでなければなりません。

 軍事幹部と政治幹部の教育的役割の強化、軍隊内で広く展開される党の政治活動と戦闘におけるすべての労働党員の自己犠牲的模範は、人民軍の不屈の頑強さと戦闘精神をいっそう高めます。

 人民軍の政治的・道徳的品性を高めるにあたって、軍人に祖国の自由と栄誉を奪うために血まみれた触手をのばしている米英帝国主義侵略者への強い敵がい心と憎しみを鼓吹することは、大きな意義があります。

 このように、人民軍の気高い道徳的品性は、軍隊の党組織が党の政治教育をいかにおこなうかに大きくかかっています。

 人民軍の道徳的品性は、世界の平和擁護闘争からも影響されています。最近ウィーンで開かれた世界平和擁護人民大会は、侵略者への厳しい警告でありました。

 これらは、人民軍の道徳的品性を高め、人民軍が帝国主義侵略者を撃破する複雑な課題を立派に遂行できることを可能にします。

 戦争の運命を決定する恒久的要因の一つである師団の量と質は、武装力強化の基本です。勝利を達成するための我が方の力のうえでの優位は確定的であり、量と質において優位な軍隊は常に勝利するものです。基本的兵種を有する師団は、自立的に戦術的課題を遂行できるので戦術的基本連合部隊となり、師団の質は、その組織の科学性と相応の戦闘力、武器の構成と質、各将兵の訓練水準にかかっています。それゆえ、各師団の量と質は全軍の量と質を示すのです。

 祖国解放戦争期間に人民軍は量的に3倍も増強されました。そして、1952年に各歩兵師団の火力は、1951年の160%に強化されました。この実例だけでも、人民軍の戦力がどれほど強化されたかを十分に知ることができます。1951年の各師団の各種兵器による1分間の弾丸発射能力を100%とすれば、1952年のそれは140%に増加しました。人民軍のこうした質的強化は、強力な戦闘手段である砲、迫撃砲、機関銃、自動短銃その他の兵器を増強した結果であります。

 武装した軍隊の戦闘は、兵法発展の可能性を規定する決定的条件の一つであります。兵法の本質的変化は、社会的・政治的条件の変化と新たな戦闘手段の出現によって生じ、兵法は軍事技術を通じて生産に依存していることを示しています。

 人民軍は、新たな軍事技術によって質的、量的にたえず成長しています。1951年から1952年のあいだに、人民軍の武装は自動短銃144%、機関銃124%、砲128%、迫撃砲140%、高射砲218%、戦車と自動砲182%にそれぞれ増強されました。歩兵の自動兵器の火力は141%に増大しました。すべての部隊は、長期戦を戦いぬく十分な軍需機材を所有しています。我々は、人民軍を装備させる労働者階級に謝意を表すべきであります。また、軍隊の機械化水準もかなり向上しました。1951年に兵士一人当たりの馬力を100%とすれば、1952年には300%に増大しました。

 軍隊において、指揮官は極めて大きな役割を果たします。指揮官の能力は全軍の質を決定する重要な条件であるため、我が党は指揮官の養成に大きな関心を払っています。

 指揮官の組織者的能力は、戦闘勝利の重要な要因であり、それは決しておのずから身につけられるものではありません。

 指揮官の組織者的能力と戦開機能は、厳しい戦場において、軍事学院やその他の教育機関において養われるものです。戦時中に指揮官は、量的、質的にかなり成長しました。

 人民軍は比較的有能な指揮官で組織されており、今後ひきつづき補充できる予備指揮官をもっています。1952年に45%の指揮官が、将校講習所やその他の教育機関で再教育を受けました。指揮官は軍事理論と戦闘経験を深め、戦闘を立派に組織、遂行できるようになりました。

 指揮官は、党と人民から任された軍隊を正しく指揮し、戦場で戦闘技術機材を有効に用いて勝利を達成しなければなりません。

 参謀部は、軍隊の指揮ができ、戦闘で指揮官の助力者になっています。


 4 我々の当面課題

 1953年度の当面課題は、アメリカ帝国主義武力侵略者と売国奴李承晩一味に反対する朝鮮人民の正義の祖国解放戦争の目的によって規定されます。

 自由と独立を守るための朝鮮人民の闘争は、人民軍が国連や開城(ケソン)停戦会談における米英帝国主義者の偽善的な策動に欺かれず警戒心をゆるめないことを求めており、長期戦と大規模の戦闘の準備を強化することを求めています。

 それでは、人民軍の課題はなんでしょうか。

 第1に、すべての将兵に祖国の自由、独立と栄誉を守る我々の偉業の正しさを認識させ、長期戦をねばりづよく遂行できるよう備えさせなければなりません。敵の狂気じみた攻撃や上陸作戦を撃退するばかりでなく、致命的打撃を加えて、戦局を我が方に決定的に有利に変える思想的準備をととのえなければなりません。

 すべての党政治活動は、唯一管理制を強化し、部隊の軍規と秩序を確立し、全将兵にアメリカ武力干渉者と売国奴李承晩一味への強い憎悪心をつちかい、軍事機密を厳守し、兵器と戦闘技術機材を愛護する精神で教育することに向けられなければなりません。規律と組織性に欠けていては、勝利することができません。

 第2に、各兵種の作戦的・戦術的利用と戦闘におけるそれらの協同行動を改善すべきです。

 地上および海岸の前線を強固に、頑強に防御すべきです。敵の侵攻と上陸を阻止しなければなりません。防御における人民軍部隊の積極性を強め、全力を尽くして敵を疲労させ、その兵員と戦闘機材をより多く掃滅すべきです。

 高射砲部隊の火力の命中率を高めなければなりません。

 第3に、指揮官と参謀部の作戦的・戦術的訓練を決定的に充実させるべきです。部隊参謀部の活動水準を高めて、部隊の指揮を巧みに保障し、指揮官の立派な助力者になるようにすべきです。

 偵察なしには、敵に打撃を加えることができないことを忘れずに、各種偵察を改善すべきです。

 敵に打撃を加える準備をねばりづよくおこなうべきです。

 第4に、各兵種部隊の戦闘訓練では、戦争および戦闘に必要なことを教育すべきです。

 戦術訓練と射撃訓練を強化すべきです。すべての訓練は、山地と平地で実戦に最も近い条件でおこない、そのうちの40%以上は夜間に実施すべきです。天然の要塞と敵の防御陣を迅速に突破し、昼間と夜間に強行軍ができるよう部隊を訓練しなければなりません。

 兵器と戦闘技術機材に精通し、それを大事にしなければなりません。

 第5に、戦闘と作戦の成果が、部隊に弾薬、食糧をはじめ軍需物資を迅速に、十分に補給しうるかどうかにかかっていることを銘記し、軍隊の補給を現代戦の求める水準に引きあげなければなりません。

 あらゆる分野で、浪費、損失、横領行為と断固たたかうべきです。

 兵士にたいする医療奉仕と、獣医防疫を改善しなければなりません。

 私は、指揮官がこれらの課題を十分に遂行するものと確信します。

 人民は、人民軍に大きな期待を寄せており、その勝利を確信しています。

出典:『金日成著作集』7巻


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