金 日 成

人民軍内の党政治活動を強化するための課題について
朝鮮労働党中央委員会政治委員会での結語 
1952年7月7日

 昨年、党中央委員会政治委員会で人民軍内の党組織と政治機関の活動状況を討議して以来1年近くになります。この期間、人民軍内の党組織と政治機関の活動に大きな前進が見られました。人民軍内の党組織と政治機関の組織動員者、教育者としての役割が強化され、党員の前衛的役割が著しく強まりました。

 人民軍の軍人と党員は、世界戦争史にその例を見ない苛烈な戦争において敵に甚大な打撃を与え、朝鮮人民の気概をいかんなく示しました。昨年、人民軍の軍人が、敵の「夏季および秋季攻勢」を撃破し、1211高地を死守する苛烈な戦闘で発揮した集団的英雄主義と無比の勇敢さは、人民軍内の政治機関と党組織の役割が強化され、党員の前衛的役割が高まったことを示す生き生きとした実例であります。人民軍軍人の政治的・思想的水準は、極めて高く、戦闘士気も旺盛です。

 党中央委員会第4回総会以後、人民軍内の党組織と政治機関は、党と祖国と人民のために勇敢に戦った多くの軍人を入党させました。その結果、人民軍内の党勢は急速に拡大され、人民軍の戦闘力もいっそう強化されました。

 人民軍内の規律と秩序を確立するうえでも、かなりの前進が遂げられました。党組織と政治機関の役割によって、軍隊内に指揮官の命令と指示を確実に実行する気風が確立され、各種の非常事故が著しく減少しました。

 人民軍内の党組織と政治機関は、将校および将官を再教育する党の方針を貫くうえでも、一定の成果をおさめました。

 指揮官の指揮能力と水準は、部隊の戦闘力を強化する重要な要因であり、戦争の勝利を決定する鍵であります。ところが戦争勃発後、多くの連合部隊と軍種、兵種部隊が新規に編制され、軍事知識をもたない地方の党および政権機関、大衆団体の活動家が多数将校の陣容に加わりました。こうした事情から、人民軍内の中核である将校、将官を政治的、思想的に、軍事技術的にしっかりと準備させることが必要でした。

 我々は戦略的な一時的後退を終え、再進撃の準備を整えていたときから指揮官の指揮能力と水準の向上に深い関心を払いました。特に、戦線が38度線一帯を境にして膠着状態に入り、人民軍部隊が全面的な陣地防御戦に移った状況を利用して、将校に2、3か月間の短期講習をおこなう思い切った措置をとりました。この措置によって、今年の年頭から本格的に将校の講習をおこないました。

 人民軍内の党組織と政治機関の指導と援助によって、指揮官講習が順調に進められ、多数の指揮官が将校講習所やその他の教育機関で講習を受けました。その結果、指揮官の指揮能力と部隊管理水準が著しく向上しました。

 これらの成果は、党組織の組織活動の改善に関する党中央委員会第4回総会の決定および人民軍内の党組織と政治機関の活動強化に関する党中央委員会政治委員会の決定が、全面的に正しかったことを示しています。

 この1年間、人民軍内の党組織と政治機関の活動には成果があった反面、若干の欠陥もあらわれました。

 その主な欠陥は、将校や将官のあいだで党性鍛練のための組織・政治活動が十分におこなわれなかったことです。少なからぬ党組織と政治機関は、将校と将官のあいだで党性を鍛えるための活動に非常に消極的でした。その結果、彼らには党性に欠けた行為がかなり見られます。

 そうした現象は、党の決定と指示を誠実に実行しないことにあらわれました。

 党員の党性の基本的基準は、党に対する忠実さであります。党員は、党中央委員会を生命を賭して守り、党の決定と指示をあくまで無条件に貫徹し、いつ、どこにあっても党の立場、階級的立場を堅持し、敵とは仮借なくたたかわなければなりません。

 ところが一部の将校や将官は、党の戦略的・戦術的方針と最高司令部の命令や指示を正確に実行しないか、またはその実行を怠るという許しがたい行動をとりました。党は戦争の過程で得た経験と教訓を生かし、山の多いわが国の地形条件に適した曲射砲を多く使用する方針を示しました。しかし、一部の指揮官は、党の方針に反し、火砲は不必要だとして最前線の火砲を後方に移動させ、その代わりに軽火器と手榴弾を要求しました。党性があり、現代戦の特徴を心得ている指揮官であれば、こうした行動はとらなかったはずです。

 将校や将官の党性に欠けた行為は、部隊管理を無責任におこない、官僚主義的・軍閥主義的行動をとるところにもあらわれました。

 官僚主義、軍閥主義は、搾取階級の利益を擁護する反動的軍隊の反人民的な部隊管理方法です。したがって、朝鮮人民軍では、官僚主義、軍閥主義が絶対に許されてはなりません。人民軍は、抗日遊撃隊の革命伝統を受け継いだ軍隊であります。かつて、抗日遊撃隊の指揮官は、常に、隊員を兄弟のようにいたわり、誤りを犯した隊員はじゅんじゅんと諭し、実践を通じて教育し改造しました。そのため、抗日遊撃隊内には、常に、革命的同志愛にもとづく統一と団結が保たれました。ところが、人民軍の一部の指揮官は、隊員を兄弟のように大事にせず、頭ごなしに怒鳴りつけ、必要以上に処罰を加えています。

 将校や将官の党性の欠如は、党組織生活に誠実に参加せず、党の規律に違反する行為にもあらわれています。

 党内には、特殊な党員は存在しません。すべての党員は、一つの組織規律に従って活動し、行動しなければなりません。党員である将校や将官は、自分を特殊な存在と考えてはならず、誰よりも党組織規律を自発的に守り、党生活において模範となるべきです。しかし、一部の将校、将官は、自分を特別な存在のように思い、党細胞会議にもよく参加せず、党員の正当な批判をおさえ、党組織の指導と統制をわずらわしく思っています。党員が党の組織規律に反し、党組織生活に誠実に参加しなければ、党性を鍛えることはできず、したがって、党から与えられた任務を円滑に遂行することはできません。

 一部の将校、将官が、党組織の指導と統制をこころよく思わないのは、政治幹部の軍事唯一管理制に違反する行動とある程度関係があります。軍隊内の政治幹部は、軍事指揮官の命令の下達に干渉すべきでなく、それが正確に伝達され実行されるように助けるべきです。私は既に、人民軍総政治局をはじめ、各級政治機関活動家の軍事唯一管理制違反行為を批判しましたが、まだ是正されていません。

 次に、人民軍内の党組織と政治機関の活動上の欠陥は、軍人のあいだで革命軍隊の気高い政治的・道徳的品位を培う思想教育を十分におこなわないことです。

 任務遂行における高度の責任感と厳格な規律は、革命軍隊の軍人が身につけるべき気高い政治的・道徳的品位であります。しかし、人民軍内の党組織と政治機関は、軍人、特に、指揮官のあいだで戦闘任務の遂行に責任をもち、活動と生活で倦怠感をなくし、軍規を厳守するための教育活動を十分におこないませんでした。その結果、一部の指揮官は、部隊に課された戦闘任務の遂行に全力を尽くさず、平和的気分にとらわれて安逸な生活を追い求め、前線の兵士から問題が一つ提起されても責任をもって解決しようとしないありさまです。

 次に、人民軍内の党組織と政治機関の活動上の重要な欠陥は、軍人に対する思想教育の水準が低く、政治幹部が現地に行かないことです。

 現在、少なからぬ政治幹部は、軍人のなかに入って起居をともにしながら政治活動をおこなうのではなく、事務室で不必要な書類の作成に没頭し、政治活動をおこなう場合も一般的な訴えや強調にとどまっています。個別的軍人との話し合いも巧みでありません。

 人民軍内の党組織と政治機関の活動におけるこうした欠陥は、人民軍の戦闘力の強化と前線での勝利の達成を妨げています。

 きょう党中央委員会政治委員会で、人民軍内の党政治活動の強化問題を再び討議するのは、当面するわが国の軍事・政治情勢に対処して党の武装力である人民軍の戦闘力を強化するためであります。

 戦争は、長期戦の様相を呈しています。前線の状況は、彼我ともに相手側より優位な力で戦争の決定的局面に対処する準備を整える段階にあります。わが党は、戦争の最終的勝利の条件を敵よりさきに整えるため、人民軍の装備を改善する一方、軍人を政治的、思想的に、軍事技術的にしっかり備えさせ、指揮官の軍事的・政治的能力をいちだんと高めるために大きな力を注いでいます。

 人民軍内の党組織と政治機関は、党の方針に従って党の政治活動を改善強化し、すべての軍人が党と祖国と人民から負わされた任務の重大さを深く認識して、戦闘・政治訓練と部隊の戦闘準備の完成に積極的に参加し、敵を不断に掃滅し弱体化させる果敢な軍事行動を展開するようにすべきです。

 何よりもまず、軍人の思想教育を強化しなければなりません。

 党組織と政治機関は、すべての軍人が、党に限りなく忠実で祖国と人民を熱烈に愛し、敵を憎み、勝利への確信を強めるよう教育すべきです。特に、すべての軍人が、停戦に対する正しい認識をもち、緊張した動員態勢を堅持するよう教育すべきです。

 停戦は、決して完全な平和を意味しません。停戦は、文字どおり、戦争を一時中止するのであって、恒久平和を保障するものではありません。停戦が実現しても、アメリカ帝国主義侵略者は、南朝鮮から撤退せず、共和国北半部に対する侵略の野望を遂げようと執拗に策動するでしょう。そればかりでなく、彼らはいま、停戦会談を引きのばしながら新たな大規模の攻撃を準備しています。それゆえ、停戦会談が開かれているからといって、人民軍の戦闘力を絶対に弱めてはなりません。人民軍内の党組織と政治機関は、すべての軍人に停戦会談に対するわが党の立場を正しく認識させるべきです。これと同時に、軍人のあいだに停戦会談に対する幻想や厭戦気分、安逸怠惰な傾向があらわれないよう思想闘争を強化しなければなりません。そして、すべての軍人が、高度の革命的警戒心を堅持し、緊張した生活をするようにすべきです。

 党組織と政治機関は、軍人の思想教育において形式主義と教条主義を一掃し、思想教育を部隊の戦闘任務と密接に結びつけて実質的におこなうべきです。特に、扇動活動は、現実と結びついた気迫と説得力のあるものにしなければなりません。そうすれば、軍人を戦闘任務の遂行に力強く奮起させることができます。

 軍人の思想教育を正しくおこなうためには、扇動員を堅実な人たちでかため、その水準を高めなければなりません。政治機関は、扇動員の講習会を計画的におこない、よい扇動資料をつくって与えるべきです。

 次に、党員の党生活を強化しなければなりません。

 そのためには、党生活を正しく組織し、その指導と統制を十分におこなうべきです。そうすれば、党員の前衛的役割が強まり、部隊の戦闘任務が立派に遂行されます。

 党組織は、党会議が教育的価値のあるものになるように正しく運営し、党員を問題の討議に積極的に参加させるべきです。すべての党員に、常時、党の任務分担をおこない、党組織の決定と分担された任務を誠実に実行するようにすべきです。党内に二重の規律を許してはならず、将校でも将官でもその職務にかかわりなく、すべての党員が党生活規範に従って行動するようにしなければなりません。

 党内での批判を強化すべきです。批判は、党員の党性鍛練と党活動の発展にとって重要な作用をします。批判を強化して、党会議によく参加しない傾向、党組織の決定と分担された任務を誠実に実行しない傾向、党の規律に違反して不道徳な行為をはたらく傾向、学習を怠る傾向をはじめ、あらゆる反党的で不健全な要素を徹底的に克服しなければなりません。批判を強化するためには、党内民主主義を十分に発揮させて自由な批判の雰囲気をつくり、批判を抑制する傾向があらわれないようにすべきであります。

 党員の党生活を指導するうえで、党細胞を強化することが極めて重要です。党細胞は、党員の党生活を直接指導する党の基礎組織であります。したがって、党細胞を強化することによって党員の党生活を正しく組織し、その指導と統制をよくおこなうことができます。党細胞を強化するためには、党細胞委員会を党性の強い党員でかためて、その水準を高め、細胞の中核を多く育成しなければなりません。

 党組織は、党勢拡大において党規約上の基準を遵守し、新入党員の系統的な教育、訓練に大きな力を注ぐべきであります。

 次に、指揮官の指揮能力と水準を高め、活動方法の改善に深い党的な注意を向けなければなりません。

 党組織と政治機関は、指揮官が軍事的・政治的能力を高めるための学習を日常おこない、わが国の実状に即した戦法を絶えず研究して軍事行動に広く運用するようにすべきです。これと同時に、指揮官のあいだに最新の軍事知識と技術を普及し、祖国解放戦争で得たすぐれた戦闘経験を広く一般化しなければなりません。

 現役将校の再教育は、指揮官の指揮能力と水準を高めるうえで極めて重要な意義をもちます。現役将校を再教育する党の方針は、実生活を通じて、既に、その優位性が実証されています。政治機関では、党のこの方針を貫き、すべての将校が、義務的に再教育を受けるようにすべきです。

 人民軍軍事指揮官の基本的な表徴は、高度の党性、階級性、人民性であります。軍事指揮官にこれが欠けているときは、党に忠実になれないだけでなく、隊員の声に耳を傾けず、その生活にに関心を払わず、部隊の革命的規律と秩序に違反して、官僚主義的・軍閥主義的行動をとるようになります。政治機関は、軍事指揮官に党性、階級性、人民性を培う教育に力を入れ、革命軍の指揮官としての気高い品位を身につけるようにすべきです。

 政治機関は、軍事指揮官が高い党的責任感をもって部隊管理を立派におこない、常に、兵士の教育に深い関心を払うようにすべきです。戦争の過程で、新兵の補充による戦闘員の交替は避けられないことです。したがって、部隊の戦闘力を正常に維持するためには、兵士に対する教育を一時も中断してはなりません。指揮官は、いかに困難かつ複雑な環境にあっても兵士、特に、新兵の教育に深い関心を向けなければなりません。

 次に、中隊を人民軍内における党政治活動の拠点にしなければなりません。

 中隊は、人民軍の基礎組織であり、基本的戦闘単位であります。中隊には、党細胞と民青初級組織が組織されており、中隊を単位にして軍人の軍勤務生活がおこなわれています。人民軍における中隊の位置と役割が非常に重要なので、私は中隊の強化についてしばしば強調し、既に、必要な措置をとりました。

 中隊を人民軍内の党政治活動の拠点にするためには、党細胞と民青初級組織、初級扇動員の役割を高め、小隊、分隊に党員を正しく配置しなければなりません。また、中隊の「建国室」をよく整え、それを正しく利用すべきです。「建国室」には新聞、図書をはじめ、各種の教育資料や文化・娯楽器材を備えておくべきです。こうして、「建国室」で軍人が会議や学習もおこない、放送を聞いたり娯楽も楽しめるようにすべきです。

 模範中隊創造運動を活発に展開しなければなりません。政治機関は、この運動を正しく指導し、ここで得たすぐれた経験を広く紹介して模範中隊の隊列を絶えず拡大しなければなりません。

 人民軍内の党組織と政治機関の役割を高めるためには、政治幹部の活動方法を改善し、その水準を高めなければなりません。

 政治幹部は、文書の作成や会議の組織に没頭せず、常に、兵士のなかで活動する気風をうち立てるべきです。また、管下政治機関の活動に対する指導・点検方法を改善すべきです。点検の目的は、欠陥を暴き、下部の働き手を追及し処罰することにあるのではなく、欠陥を改めさせ、下部の働き手の活動を助けることにあります。政治幹部は、点検をその目的に合致するようにおこない、下部の働き手の活動を実質的に助けるべきです。

 政治幹部の水準を絶えず高めなければなりません。いま、少なからぬ政治幹部は、政治・軍事知識水準が低く、活動経験も足りません。政治幹部の政治・軍事知識水準が低ければ、部隊の軍事任務の遂行を政治的に裏打ちすることができません。政治幹部は、政治・実務水準を高め、軍事知識を身につけるために努力すべきです。政治幹部の講習会や経験交流会を計画的に開き、彼らを頻繁に移動させず、一個所に長期間固着させるべきです。そうすれば、彼らの政治・実務水準を高め、各自の仕事に精通させることができます。

 人民軍の党政治活動を強化するためには、軍事委員の責任感と役割を高めなければなりません。

 軍事委員は、党と政府の全権代表であります。軍事委員は、管轄単位の党政治活動と軍事活動を指導し統制する責任を担っています。したがって、軍事委員は、その単位において党の路線と政策、党の戦略的・戦術的方針が確実に実行されるよう、常に、指導、統制しなければなりません。軍事委員は、毎月、軍事委員会を開き、部隊の党政治活動状況と戦闘準備、軍事訓練、部隊管理状況および軍人の政治的・道徳的状態などを分析し、必要な対策を立てるべきです。軍事委員は、軍事指揮官が部隊の戦闘任務を遂行できるよう、よく補佐しなければなりません。

 人民軍の党組織を強化するために、今年の8〜9月に中隊党細胞から連隊党委員会にいたるまでの党指導機関の総括および選挙をおこなうべきです。総政治局をはじめ、政治機関では、いまからその準備を十分に進めるべきです。

 きょうの党中央委員会政治委員会では、人民軍内の党政治活動を改善するための重要な問題を討議しました。総政治局は、会議で採択された決定を実行する組織・指導活動を立派におこなわなければなりません。

 私は、人民軍内における今後の党政治活動において新たな前進を遂げるものと確信します。
                                                
出典:『金日成著作集』7巻


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