金 日 成

人民軍空軍を強化しよう
 朝鮮人民軍第564軍部隊軍事・政治幹部会議でおこなった演説
 −1952年6月20日−


 諸君!

 現在、前線の状態は、彼我の力量が対等な状況下で相対峙し、相手側の弱点をとらえようとする一方、味方の力をさらに強化して相手側より優位な力で、決定的局面を迎える準備をととのえる段階にあります。

 したがって、我が方の基本的課題は、敵の弱点をとらえ決定的な打撃を与えることによって、最終的な勝利を達成する条件を敵に先んじてととのえることであります。

 将来、決定的局面にいたって完全な勝利を達成するためには、なによりも人民軍を軍事技術的に政治的、思想的に強化する問題が極めて重要です。これが、こんにちにおける我が党中央委員会と政府の基本的方針であります。

 人民軍の力量を全般的に強化するうえで、空軍部隊を軍事技術的に、政治的、思想的に強化することは極めて重要であります。

 では、空軍部隊を軍事技術的に強化するためには、いかにすべきでしょうか。

 第1に、将校の指揮能力を高めるべきであります。

 空軍部隊は、組織されて間もないため経験が浅く、理論的・技術的水準が高くありません。したがって、軍人を教育する指揮幹部の能力を高めることが重要であります。もし、理論水準が高く、歩兵部隊をはじめ、各兵種との共同作戦を巧みに組織できるすぐれた指揮官が部下を教育すれば、その部隊は強くなり、反対に指揮幹部の能力が高くなければ、部隊の戦闘力は強化されないでしょう。

 それゆえ、すべての将校は、おごることなくその理論水準を不断に高め、指揮能力を向上させなければなりません。

 第2に、技術水準を高めるべきであります。指揮官、航空兵、技術勤務員は言うに及ばず、空軍部隊のすべての軍人が技術水準を高め、部隊を量的にも増強しなければなりません。

 我々の敵は決して弱い敵ではありません。アメリカは、資本主義国のうちでも最強国であり、数十年にわたって技術を習得した雇い航空兵を多く有し、「技術上の優位」と「数量上の優位」を誇っています。

 それでは、我が軍の航空兵はどうでしょうか。かれらは、労働者、農民の子弟で、以前は航空機はおろか、自動車さえ知らずに育った人たちです。解放後我が党は、二度と朝鮮人民を帝国主義者の奴隷にしないために空軍を創設し、すぐれた青年を空軍部隊に送りました。諸君は、高度の愛国主義的献身性を発揮して働く過程で技術を習い、習いながら働いて、短期間に急速な進歩を遂げました。しかし、我が軍の航空兵は、技術的にまだ未熟であり、なお上達の余地があります。

 空軍部隊の軍人はすべて、航空機を巧みに操縦して敵を打ち破り、我が空軍部隊の威力を示すために技術を熱心に習得し研究し、上達することが最も重要な課題であることを認識しなければなりません。

 第3に、戦闘技術機材を愛護すべきであります。

 周知のように、諸君の使用する戦闘技術機材はまだ国内では作られていないものです。諸君が乗る航空機は、人民が衣食に不自由しながらも、戦争勝利のためにあらゆる困難を克服して求めた最も貴重な人民の財産であります。

 私は、農村のある婦人の言葉をみなさんに伝えようと思います。息子を全部前線に送り出したその婦人は、「私たちの飛行機が一日も早く飛んで、強盗アメリカの飛行機を落としてくれれば、息子が帰ってきてくれることよりうれしい」と言いました。このように、私たちの父母や兄弟姉妹は勝利を願っており、戦争勝利のためにすべてを犠牲にして戦っています。

 諸君は、自分が乗る航空機、自分が使用している一本の釘やねじがすべて人民の血と汗のたまものであることを片時も忘れてはなりません。諸君は、航空兵を愛する朝鮮のすべての母親を思い、航空機を大事にすべきであります。

 特に、長期戦を戦っているこんにちの情勢下にあって、戦争の最終的勝利をかちとるために、すべての軍人は国の困難な経済状態を正しく認識し、全党的、全国家的運動として展開されている、国の物資と軍需機材の愛護節約運動で、高度の愛国的献身性を発揮すべきであります。

 第4に、軍事規定を厳守すべきであります。

 すべての軍人は、人民軍に入隊するとき、軍事規定を厳守することを軍人の誓いで誓いました。規定を巌守し、軍隊内の規律と秩序を強化するために努力することは、各軍人の最も重要な義務であります。

 規律のない軍隊は軍隊でありません。規律の強い軍隊は百戦百勝し、逆に規律のない軍隊は百戦百敗します。

 特に、空軍部隊は技術部隊であるため、強い規律と秩序がなければ、部隊の戦闘力は絶対に高められません。

 空軍の一切の規律と秩序は、機械の歯車のようでなければなりません。歯車のどの部分に異常が生じても機械全体が停止するように、部隊のどの隅においても規律がゆるめば、全部隊は崩壊のうきめにあいます。いかに技術的にすぐれている部隊であっても、規律と秩序がなければ、その部隊は戦闘力を失うようになります。

 すべての軍人は、部隊の戦闘力を強める重要な第一歩として、部隊内の規律と秩序を確立し、軍事規定を厳守するために極力努力すべきであります。

 第5に、参謀部の活動を強化すべきであります。

 参謀部は、部隊で人間の頭脳に等しい役割を果たします。部隊の活動を計画し組織し、部隊を動かすのが参謀部の役目です。

 昔の将軍たちは、個々別々に、単純な方法で戦ったものですが、こんにちの発達した最新科学技術を適用する現代戦では、各軍種、兵種が一致して行動し、強力に組織された戦力をもって戦わなければ、敵を撃破することができません。戦闘で協同行動を巧みにおこない、部隊の戦闘力を高めるためには、参謀部の役割をたえず高めなければなりません。部隊の戦闘力が高いか否かは、その部隊の参謀部の活動を見れば評価できます。

 しかし、いまなお我が軍の一部の参謀部員は、最新科学技術が適用される現代戦に即した新しい方式で活動する努力に欠け、旧来の方式で活動するため、成果が見られません。空軍部隊ではいまなお参謀部の活動が軌道に乗っておらず、これが最大の弱点となっています。師団長、連隊長などの指揮官と部隊の政治幹部は、参謀部の活動をあらゆる面から強化するために努力すべきであります。

 参謀部員は、戦闘計画を作成しそれを実行に移し、その実行状況を点検できるようでなければなりません。各級の参謀部員は、日常このように活動し、各自の仕事に精通していなければなりません。

 参謀部の活動で特に重要なのは、敵軍にたいする研究を強化することです。

 敵を知らなくては戦闘で勝利できません。すもうをとるとき、相手の技を試して弱点をつかみ相応の技をかければ勝てるように、戦争でも敵の戦術を研究して、強弱の両側面を見極め、その弱点を突けば勝利します。

 ところが現在、空軍部隊では、このような対敵研究が満足になされていません。今後、指揮官は言うに及ばず、航空兵と技術勤務員とを問わず、すべてが敵を研究し、常に敵情を探知し、参謀部内偵察部門の活動の強化に格別の注意を払うべきであります。

 次に、空軍部隊を政治的、思想的に強化するためにはいかにすべきでしょうか。

 第1に、労働党員の党性をさらに高めるべきであります。

 党性とはなんでしょうか。党性とは、労働党員としての自覚をもち、常に党の綱領と規約および党の政策と決定を実行するために水火をもいとわず全力を尽くし、必要とあれば生命までもささげて戦おうとする党にたいする忠誠心であります。

 空軍部隊は、我が党と人民の最もすぐれた息子、娘で組織されました。党は困難な状況下でも、空軍部隊の強化のために全力を尽くしています。それゆえ、空軍部隊の各党員は、誰よりも党に忠実であり、党と祖国と人民への高度の献身性をつちかうべきであります。

 ひたすら党と祖国のために最期の瞬間まで勇敢に戦う、党性の強い軍人になるべきであります。

 第2に、敵がい心を強めるべきであります。

 軍人の敵がい心を強めるのは、極めて重要なことであります。敵にたいする憎悪心が強ければ、規律違反行為も、戦闘機材や国家物資の浪費行為もあらわれないでしょう。敵にたいする憎悪心はとりもなおさず、敵撃滅のためにすべてをささげて戦う強大な力となるのです。

 アメリカ帝国主義者とその手先は、朝鮮人民にどのようなことをしたでしょうか。かれらは、我が国土を焼きはらい、人民の手できずかれた工場や農村、そして、人民の大事な財産をすべて破壊しました。そればかりか、私たちの父母、兄弟姉妹を野蛮に大量虐殺しました。アメリカ人は、罪のない婦女子や街頭で遊んでいる幼い子供たちまでも手当たりしだいに虐殺しました。

 先ごろにも敵機は、江東(カントン)郡のある農村で田植えにいそしむ朝鮮婦人を射撃し、平壌では孤児院で遊んでいる天真らんまんな子供たちにまで機銃掃射を浴びせました。諸君のなかにも、父母、兄弟や親戚が敵に虐殺された人が多いことでしょう。敵は特に労働党員を憎み、多数の労働党員を無惨に虐殺しました。

 我々が、どうして敵を憎まず、復讐せずにいられましょうか。

 アメリカ帝国主義者は、全朝鮮人民の不倶戴天の敵であることを、我々は寸時も忘れてはなりません。朝鮮人民であれば誰もが、アメリカ帝国主義者にたいする強い敵がい心を燃やし、あくまで戦わなければなりません。

 第3に、指揮官と政治幹部は、部隊と軍人の生活に深い関心を払うべきであります。

 すべての指揮官と政治幹部は、部下を正しく教育し保護すべき義務を担っています。上部が下部を親切に教育し、下部が上部を心から尊敬し、その命令に服従するのは、朝鮮人民軍の気高い道徳的品性であります。

 人民軍の下士官や兵士は、将校を父母や兄のように信頼し尊敬し、慕っています。したがって、指揮官と政治幹部は、親がいつも息子に、食欲はどうか、寝床の具合はどうか、睡眠は十分にとったか、健康状態はどうかと気遣うように、部下の生活を常に肉親の情で見守り、困難な問題は解決してやらなければなりません。指揮官は父親のように厳しく、政治幹部は母親のようにやさしく接しながら、下士官や兵士たちを軍事的、政治的に正しく教育すべきであります。

 第4に、革命的警戒心を高めるべきです。

 さきにも述べたように、彼我対峙状態にある現況下にあって、敵は我が方の弱点をとらえようと血眼になっています。この2年間の戦争で甚大な敗北を喫した敵は、我が軍の歩兵がかれらの歩兵より強いことをよく知っています。敵はただ、「空軍の優位」を頼み、「技術上の優位」を誇りながら、まだ完全に膝を屈していません。

 今後、我が空軍が優位をしめるようになれば、敵は決定的な打撃をこうむり、最終的敗北を免れないでしょう。これは敵も熟知しています。それゆえ敵は、我が軍の航空隊が強化されるのをなによりも恐れています。

 敵は、我が空軍部隊の弱体化を狙ってあらゆる陰謀と策略を弄しています。我々の隊列内にスパイや破壊分子を潜入させ、我が軍の行動や作戦を探知し、機材を破壊し、将兵間を離間させようと策しています。また、女性を利用して航空兵の自覚を鈍らせ、悲観分子や堕落分子を多くつくり、それを通じて軍人の勝利の信念にひびを入れるなど、各種の方法で我が軍部隊の戦闘力を弱めようと試みています。

 政治幹部は、軍人のなかで革命的警戒心を高度に強めるたたかいを展開すべきです。すべての軍人が、いつどこにあっても敵の陰謀に乗ぜられることなく警戒心を強め、敵の行動を注視するならば、敵は身動きできなくなるでしょう。

 革命的警戒心を高めるたたかいで、党員は常に前衛的役割を果たすべきです。党員は、誰もが敵のスパイ、謀略分子と巧みにたたかえるようでなければなりません。

 第5に、平和的な気分や安逸な生活とたたかうべきであります。

 一部の軍人のなかには、後方にいるということや、停戦会談が進められているということから緊張がゆるみ、平和的気分にひたる誤った傾向があらわれています。これは正しくない傾向であります。

 停戦は、軍人にとってさほど重要な問題ではありません。停戦するかしないかは政府の一つの政策であって、軍隊はあくまでも戦闘力を強化し、いつでも敵を撃破できる戦闘準備をととのえるべきであります。

 万一、停戦になるとしても、それは完全な平和を意味するものではなく、まして、祖国統一の任務が完遂されたことを意味するものではありません。停戦になってもならなくても、我が国土にアメリカ帝国主義が残っており、売国奴李承晩一味が完全に掃滅されない限り、我々には祖国の統一を完成すべき任務が依然として残されています。

 もし、停戦が実現すれば、そのときには戦闘がおこなわれない有利な条件を利用して、我が軍の弱い面を早急に補強し、技術水準をさらに高めるなど、すべての戦闘準備を短期間に完成すべき課題が提起されます。

 軍人は停戦になるかならないかに気をつかわずに、一日も早く戦闘力を強化することに専念し、いささかも平和的気分にとらわれるようなことがあってはなりません。

 いま前線では、依然として苛烈な戦闘がつづいています。諸君は、前線の将兵があらゆる困難を克服しつつ敵と戦っていることを片時も忘れてはならず、戦う前線地帯人民の勇姿を胸に刻み、戦闘任務の遂行に熱意と献身性を発揮し、全人民と前線将兵の待望する空軍部隊の戦闘準備を完成すべきであります。

 空軍部隊の戦闘力を高めるための課題は以上のとおりであります。

 現在、一部の航空兵たちは、早く参戦させてほしいと要望しています。そのような闘志はたいへん立派です。しかし、こんにちの我が空軍部隊の重要課題は、ただ単に敵と対戦することにあるのではなく、今後、決定的段階が到来すれば、地上部隊との緊密な共同作戦によって決定的勝利をかちとる万端の準備をととのえることにあります。

 我が空軍部隊が戦争の決定的段階にいたって、敵の空軍を制圧し、攻撃する地上部隊を援護し敵陣に猛烈な爆撃を加えれば、敵はかつてない甚大な打撃をこうむるでしょう。

 我が歩兵は、すでに敵機の襲撃になれており、敵機にたいする戦闘で豊富な経験をつんでいます。かれらは敵機を恐れないばかりでなく、敵機と巧みに戦闘できるようになりました。

 しかし、敵はまだこのような経験をもっておらず、我が航空機の出撃を非常に恐れています。それゆえ、敵の戦術は、我が軍の航空隊が技術的、数的に十分成長する前に抹殺しようとすることにあります。いま敵は、航空機を数機失ってでも、我が空軍機一機をなくそうとやっきになっています。

 我々の当面の任務は、人民軍空軍をさらに強化し、今後決定的段階において総力を挙げて勝利をかちとることにあります。

 空軍部隊は、極力戦闘力を強化し、万端の戦闘準備をととのえ、いったん命令がくだれば、地上部隊との巧みな共同作戦によって、前線と敵の背後に進出して敵を決定的にせん滅し、党と祖国から課された任務を忠実に遂行すべきであります。

出典:『金日成著作集』7巻


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