金 日 成

有能な技術者を多く養成しよう
 金策工業大学の教職員、学生におこなった演説
−1952年6月17日− 


 みなさん!

 私が当地を訪れようとしたとき、党中央では、敵の爆撃が激しく危険であるかな思いとどまるようにと言いました。しかし、戦争が終わった後の復興建設を思うと、技術幹部の養成を担当している金策(キムチェク)工業大学に出かけるのを一刻も遅らせることができず、きょう、こうしてみなさんを訪ねてきました。

 当地にきて、戦時の困難のなかでも我が党の技術幹部養成方針を貫くため大きな努力をかたむけているみなさんを見て、喜びにたえません。

 私は、きょうみなさんに現下の軍事・政治情勢と技術幹部の養成事業を強化する問題について述べたいと思います。

 現在、戦況は我が方に有利に進展しています。

 戦線は、昨年6月から38度線一帯で膠着状態にあります。人民軍勇士は、防御陣地を難攻不落の要塞にきずき、それに依拠して積極的な陣地防御戦と機動的な奇襲攻撃をおこなって、敵に甚大な打撃を加える一方、時間をかせいで戦争の最終的勝利を達成する万端の準備をととのえています。

 昨年7月から開始された停戦会談は、こんにちまで1年近くつづけられましたが、いまだに決着を見ていません。停戦会談の遅延は、全的にアメリカ帝国主義者の狡猾な策動と関連しています。

 アメリカ帝国主義侵略者は、戦争で達成できなかった目的を停戦会談を通じて達成しようと小細工を弄しています。敵は戦争でこうむった惨敗と地にまみれた威信を挽回し、「名誉ある停戦」を達成しようと不当な主張に固執して停戦会談を遅延させています。

 我々は停戦は支持しますが、祖国と民族の利益がおかされる不当な停戦には反対します。公明正大かつ合理的な停戦のみを支持するものです。

 アメリカ帝国主義者はまた、戦争をさらに拡大しようと策動しています。かれらは、停戦会談の裏で兵力を大々的に増強し、侵略戦争を拡大し、新たな世界大戦を引き起こそうと企んでいます。

 我々は停戦してもよいし、戦争がつづいてもかまいません。長期戦になっても、少しも恐れることはありません。都市や農村、工場や企業所はことごとく破壊され、これ以上破壊されるものはありません。しかし我々は、アメリカ帝国主義侵略者を掃滅し、戦争の最終的勝利を達成する力をもっています。人民軍はこれまでの戦争過程を通じて量的に成長したばかりか、政治的、思想的に、軍事技術的にさらに強化されました。我々は孤立していません。ソ連、中国などの友邦諸国の人民と全世界の平和愛好諸国人民が、我々の正義の大業を積極的に支援しています。

 アメリカ帝国主義者は戦争を拡大し、新たな世界大戦を引き起こそうと策動していますが、我々の威力を知っているだけに、あえてそうすることはできないはずです。もし、かれらが戦争を拡大して新たな世界大戦を引き起こすならば、滅亡の運命をまぬがれないでしょう。

 停戦会談にいかなる期待もかけるべきでありません。もし、停戦が実現したとしても、それは完全な平和を意味するのではなく、文字どおり戦争の一時的な中止にすぎません。停戦になっても、アメリカ帝国主義者とその手先がいつ再び攻撃してくるかしれません。したがって、停戦になっても絶対に平和的気分にとらわれてはならず、常に高度の警戒心を堅持し、緊張した態勢のもとで生活し働くべきであります。

 いかに必死に策動しようとも、敵は遠からず朝鮮人民の前に膝を屈することになるでしょう。勝利の鍵はすでに朝鮮人民の手中にあります。

 このような情勢のもとで、我々は停戦と戦争の継続とにかかわりなく祖国解放戦争の最終的勝利に備える一方、戦後の復興建設の準備を十分におこなわなければなりません。

 戦争が終われば、我々のなすべき仕事は山積しています。破壊された経済を復興し、疲弊した人民生活の安定、向上をはからなければなりません。特に、朝鮮を富強な自主独立国家に建設するために、自立的な民族経済を建設し、工業化を実現しなければなりません。このような課題の遂行において最も重要な問題は、民族技術幹部を多く養成することです。民族技術幹部なくしては戦後の復興建設も、自立的な民族経済の建設も不可能です。

 民族技術幹部が不足している朝鮮の現実は、民族技術幹部養成事業の強化をさらに緊切に求めています。日本帝国主義植民地支配の後遺症によって、朝鮮には民族技術幹部が非常に不足しています。こんにち、民族技術幹部問題の解決いかんは、廃墟と化した祖国の今後の再建の成否にかかわる極めて重大な問題であります。

 それゆえ、党中央委員会では戦争がつづく状況のもとでも、民族技術幹部の養成に常に大きな関心を払い、その強化のために一連の措置を講じています。我々はすでに、前線におもむいた教員や大学生を呼び戻すようにし、最近には幹部養成展望計画を立て、見通しをもって進める対策を講じました。

 民族幹部はあくまでも国内で、自力で養成すべきであります。民族幹部を自力で養成するのは、民族幹部問題の解決で我が党が一貫して堅持している重要な原則であります。もちろん、いま戦争をしているので兄弟諸国に留学生を一部送っていますが、これは民族幹部問題解決の基本的方途にはなりません。国内の大学と専門学校を復旧整備し、自力で民族幹部養成事業を強化すべきであります。

 民族技術幹部問題の解決において、金策工業大学は重大かつ栄誉ある使命を担っています。金策工業大学は、技術幹部養成の総合的基地であります。先進思想と高度の科学・技術知識を身につけた有能な技術幹部を多く養成すべき任務が、金策工業大学の教職員の双肩に負わされています。金策工業大学の全教職員は、国家の民族技術幹部問題の解決において、自己に負わされた重責を深く自覚し、技術幹部養成事業を強化するためにすべての力と知恵を注ぐべきであります。

 なによりもまず、学生にたいする教授・教育活動に力を入れなければなりません。

 教授・教育活動に力を入れるのは、大学の基本的任務であります。大学では、戦時の困難を克服して教授・教育活動を正常化し、学習規律を確立すべきであります。

 教授・教育活動で重要なのは、学生に我が党の路線と政策をしっかりと身につけさせることです。大学では、学生を党の思想で武装させることを第一義的課題とし、かれらに党の路線と政策を体系的に深く認識させ、特に各時期における党の決定や指示を即時正確に知らせなければなりません。こうして、すべての学生が党の意図を明確に認識し、その通りに考え、行動するようにすべきです。

 学生を民族的自負と必勝の信念で教育することが重要です。大学では学生に、朝鮮人民は長い歴史とさん然たる文化をもつ聡明で勇敢な人民であることを明確に教えるべきです。特に、朝鮮人民が祖国解放戦争で世界「最強」を誇るアメリカ帝国主義とその追随諸国の軍隊を相手に勇敢に戦って、勝利している現実的資料をもって学生を教育し、民族的自負と必勝の信念をいっそう強めさせるべきであります。

 大学では、学生を政治的、思想的に鍛えると同時に、豊かな先進科学技術を身につけ、専攻部門に精通するよう教育しなければなりません。そのためには、現代科学・技術の発展に即応して不断に授業を充実させ、理論教育と実験実習を密接に結合させなければなりません。

 学生は、学習に励まなければなりません。戦争をおこなっているいま、学生にとって学習は戦闘と同じであります。学生は今後、戦後復興建設と新しい社会の建設に貢献すべき任務を担っており、それだけに党と人民は学生に大きな期待をかけています。

 学生は昨日まで前線でアメリカ帝国主義侵略者を撃滅したその勢いで、学習にすべてのエネルギーを注ぐべきです。学生は、学習気風を確立し、党政策と専攻部門の学習を強化して有能な技術幹部にならなければなりません。

 次に、教員不足を解決すべきであります。

 教員は、教授・教育活動の直接の担当者であります。教員が不足し、その水準が低ければ、教授・教育活動に支障をきたし、学生の学科実力を高めることができません。

 教員不足を解決するためには、教授組織を合理化し、在職教員の責任感と役割をさらに高めるべきです。教員が足りない現状を考慮し、学科をあまり増やさず、適切に組織して運営すべきです。

 大学教員を他の部門に配置するようなことがあってはなりません。いま一部の働き手は、科学院の創設にかんする党の指示を実行するため、大学教員まで異動させて科学院の陣容をととのえようとしていますが、そうしてはなりません。大学教員は、絶対に異動させないようにすべきです。また大学では、自力で養成して教員を補充すべきであります。

 教員の実力を向上させなければなりません。

 いま教員の実力が低いため、教授・教育活動で所期の成果をおさめていません。大学では、教員の学習気風を確立し、党政策と専攻科目、教育実務学習を強化し、講習会や科学・技術討論会などを随時おこない政治的・実務的水準を決定的に高めるべきであります。

 学生に書籍や実験設備をととのえてやらなければなりません。

 いま学生は、教科書や参考書、実験器具の不足のため学習に支障をきたしているそうですが、大学で解決できるものは大学で解決し、大学の力でできないものは国で解決してやるべきです。

 教育省など関係部門では、大学生に必要な書籍や実験設備をととのえるための具体策を講ずるべきです。いますぐ国内での解決が困難な参考書や実験設備は、外国から購入してでもととのえてやるべきです。

 かといって、少々努力すれば自力で解決できるものまで外国から購入しようとしたり、他人の援助に頼ろうとしてはなりません。少々の困難や隘路があっても、すべてを自力で解決する原則を堅持すべきであります。朝鮮革命の成果的遂行は、主人である朝鮮人民自身の努力いかんにかかっています。

 朝鮮人民自身が自国革命の遂行のため積極的に努力すれば、外国の援助も得られます。倒れても自力で起き上がろうと懸命に努力する人には、他人も手をかしたくなるものです。こんにち、兄弟諸国から朝鮮人民に援助が寄せられているのも、朝鮮人民自身が国の主人としての自覚をもって、アメリカ帝国主義者とその手先に反対して英雄的に戦っているからです。我々は、自力更生の精神を高度に発揮して、ないものはつくり、足りないものはさがしだし、自力ですべてを解決するようにしなければなりません。

 次に、科学研究活動に力を入れるべきであります。

 戦争が終われば、破壊された人民経済をたんに現状どおり復旧するだけでなく、戦争の過程であらわれた欠陥と経済の植民地的跛行性をなくし、国内の豊かな原料源に依拠して、自立的民族経済の基盤をきずく方向で経済を復興改造し、工業化を実現していかなければなりません。科学研究活動は、このような課題の遂行に必要な科学・技術上の問題の解決に重点をおいておこなうべきであります。

 なによりもまず、天然資源の開発利用にかんする研究をすすめるべきです。

 朝鮮は、天然資源が無尽蔵な国であります。自立的民族経済を建設し、工業化を実現するためには天然資源を有効に開発利用しなければなりません。

 地上と地下、海洋の資源をすべて開発利用する研究活動を広範におこなうべきです。我が国は燃料事情が緊張しているため、代用燃料の研究開発もおこなわなければなりません。

 電力工業発展の研究を進めるべきであります。破壊された経済の復興と国の富強発展のためには、電力工業を発展させ、国の電化を実現しなければなりません。したがって、いまから電力工業発展の研究に力を入れることが重要です。電力工業の発展は、電気資材と設備を国内で生産できるか否かに大きくかかっています。電気資材と設備を国内で生産するための研究をおこなうべきです。

 兵器工業の研究を進めるべきであります。

 世界に帝国主義が存在するかぎり、我々は祖国と民族を守るため今後も国防力を強化すべきであり、そのためには兵器工業を発展させなければなりません。特に祖国解放戦争の経験にてらして、兵器工業の基盤をしっかりときずく必要があります。

 兵器工業を発展させるからといって、兵器をすべて国内で生産する必要はありません。兵器工業を発展させるのは、他国を侵略するためではなく、敵の侵略から祖国と民族を守るためであるので、それに即して兵器工業を発展させるべきであります。

 我々は、朝鮮の具体的な実状と、朝鮮人の体質にあった各種現代兵器の量産問題の研究をおこなうべきであります。特に戦争の経験にてらして、各種の歩兵兵器と通信機材、補給機材の研究に力を注ぐべきです。

 輸送事業を発展させる科学研究活動もおこなうべきです。

 輸送部門で最も弱い部分である自動車運輸と河川運輸の研究に力を注がなければなりません。

 いま自動車の需要は、日一日と高まっていますが、国内生産はおこなわれていません。自動車を生産するのはさほど難しいことではありません。自動車生産の研究に努力すれば、十分自力で生産できます。部品の生産から始めて、順次自動車の生産に進むようにすべきです。

 河川運輸も発展させるべきです。

 朝鮮には大小の河川が多いので、河川運輸の発展にとっては条件が有利です。大同(テドン)江をはじめとする河川を水路に利用すれば、緊張している輸送問題を少なからず解決できるし、内陸地方の発展のためにも有利でしょう。

 河川運輸の発展のためには、急流河川輸送用船舶を建造すべきであります。そうすれば、水豊(スプン)−恵山(ヘサン)間、徳川(トクチョン)−南浦(ナムポ)間の輸送を船舶でおこない、清川(チョンチョン)江も河川運輸に利用できます。

 今後、アメリカ帝国主義者とその手先を撃滅して祖国が統一すれば、漢(ハン)江をはじめ、南半部の河川を水路に利用できるよう、それにたいする研究も進めなければなりません。

 科学研究活動に必要な資金と設備は国家が提供します。科学研究活動のためには惜しむべきものはなにもありません。みなさんは科学研究活動をねばりづよくおこなわなければなりません。

 科学研究に平坦な大道はありえません。それは、新しいものを志向し探求する前人未到の険しい道です。それゆえ科学の要塞を占領するためには、科学者は進取の精神と忍耐性、探求心と情熱、それに加えて党と人民にたいする限りない忠誠心と熱烈な愛国心を発揮しなければなりません。

 次に、大学の教員と学生の生活に関心を払うべきであります。

 かれらはすべて国の貴重な宝であり、革命の戦友です。かれらのなかには洛東(ラクトン)江の戦線まで進撃し、血を流して敵と戦った勇敢な人も少なくありません。したがって教員や学生の生活に関心を払うのは、大学当局者の崇高な義務であり、同志的信義でもあります。

 教員と学生の食生活の改善をはからなければなりません。大学当局者は、誠意を尽くしておいしく栄養価の高い食事をかれらに給食しなければなりません。

 国では大学生にたいする食糧供給量を増やし、大豆を百グラム増配する措置を講じますから、豆腐などをつくってやるようにすべきです。大学では、教員と大学生に食用油や野菜類などいろいろな副食物も供給しなければなりません。

 最近、党および政府では、労働者、事務員の食生活の改善のため、機関、企業所での副業を奨励する対策を講じました。金策工業大学でも、休耕地を開墾して副業をおこなっているとのことですが、これはたいへんよいことです。

 大学で副業をおこなえば、教員や学生にいろいろな副食物を多く供給でき、また適当な労働をするので健康にもよく、勤労精神をつちかうためにも悪くありません。またこれは、集団経営の優位性を農民に示すためにもよいことです。

 大学では、今後いっそう副業に精を出し、教職員、学生の食生活を不断に改善しなければなりません。

 学生の寄宿舎も新しく建てるべきです。いま学生は、農家に分宿しているので集団生活に不便を感じているとのことですが、寄宿舎を建て、一か所に集まって生活しなければなりません。寄宿舎は、地元に豊富な材木を使って、日当たりのよい山裾に建てるのがよいでしょう。そうすれば爆撃の被害もうけなくてすみます。

 浴場もいまのものでは小さすぎるので、もう一つ設けて学生が常に風呂に入り、衣服もしばしば洗濯して着替えられるようにしなければなりません。そうすれば、伝染病などの疾病を予防することができます。

 教員と学生の衣服や寝具類をととのえるべきです。いま国の経済状態は楽ではありませんが、国で教員に衣服を一着ずつ供給し、学生には制服をつくって着せるべきです。また学生には、季節ごとに寝具類も支給すべきです。

 私は、金策工業大学の教職員と学生が不屈の闘争精神を発揮し、教授・教育活動と学業に励み、党の技術幹部育成方針を貫くものと確信します。

出典:『金日成著作集』7巻


ページのトップ


inserted by FC2 system