金 日 成

わが国の科学発展のために
科学者大会でおこなった演説 
 −1952年4月27日−
 
 
 1952年4月27日、科学者大会で演説する金日成主席
 
 親愛な科学者、技術者の皆さん!

 この科学者大会は重要な国家的意義をもっています。この大会は、戦争の勝利と人民経済の復興のために共和国に提起される膨大な経済的・文化的課題の解決へ、民族インテリを奮起させる、大きな役割を果たさなければなりません。

 わが党と共和国政府は、インテリに対する活動に常に特別な関心を払ってきました。党と政府はインテリ陣容を拡大してその実力を高め、彼らを政治的、思想的に教育し民主主義独立国家の建設に積極的に参加させるために力を注いできました。

 インテリは国の大きな力であり、大事な宝です。インテリなくしては、また彼らの積極的な活動なくしては、国の経済的発展も文化的発展も考えられません。それゆえ解放後、我々に提起された第一の課題は、民族インテリを育成する問題であり、国家活動のすべての分野に必要な民族幹部を育成する問題でした。

 有能な幹部の不足は、以前もいまも我々の活動の大きな支障となっています。長いあいだの日本帝国主義支配の後遺症は、特に幹部問題に深刻に現われています。

 周知のように日本侵略者は、朝鮮であらゆる面から民族文化の発展を妨げ、朝鮮人に教育を受ける機会を与えませんでした。

 国家行政と生産部門の要職にはいっさい朝鮮人を採用しませんでした。

 学校は、すべて日本帝国主義者の手中にありました。それらはすべて植民地支配者の目的にかなった学校でした。もちろん彼らは、一部の朝鮮青年をそうした学校で教育しました。しかし、それは朝鮮の青年を日本人化して彼らの民族意識を抹殺し、日本の影響を朝鮮人民に伝播する人間を育てるためでした。

 大学を出た朝鮮人はごくわずかでした。日本帝国主義者のこのような政策の結果、解放当時の朝鮮には、朝鮮人の専門家がほとんどいませんでした。

 そのうえ、日本帝国主義者の学校で教育を受けたインテリは多くの欠陥をもっており、これは彼らが民主主義的独立国家の建設に参加するうえで妨げとなりました。そのため、我々の政策を彼らに理解させ、祖国と人民に対するインテリの義務を認識させるために粘り強い政治教育が必要でありました。

 朝鮮の古くからのインテリは、日本の学校を出たにもかかわらず、基本的には朝鮮人民に忠実であったし、また解放後に少々の動揺はありましたが、国家建設に積極的に参加しました。アメリカ帝国主義者の武力侵略は、インテリの思想に一大転換をもたらしました。祖国解放戦争は、帝国主義者に対する彼らの憎悪心をかきたて、祖国の自由と独立のために人民とともに戦う決意をかためさせました。

 しかし、古くからのインテリだけでは、我々に課された膨大な課題を解決することは困難でした。それは、その数があまりにも少ないという事実一つを見ても明白です。それゆえ政府は、人民のなかから早急に新しい民族幹部を育てるためのすべての対策を講じました。

 共和国北半部で実施された歴史的な民主改革は、新しい勤労インテリの育成に有利な条件をつくりだしました。新しいインテリの大集団が5、6年のあいだに育成されるものと考えるのは、もちろん誤りです。インテリを育成するには長い時日を要します。これは決して容易なことではありません。しかし、我々は解放後の6年間に、この事業で多大の成果をあげました。

 戦争前の1949年に、共和国の専門学校数は1944年に比べて12倍に増え、解放前北朝鮮に一つもなかった大学が1949年には15校も運営され、ここで1万を越える学生が学ぶようになりました。

 1949年に専門学校は4000名、大学は1400名以上の卒業生を送りだしました。また1946年から毎年ソ連などの兄弟諸国へ多数の留学生を送っています。

 我々は工業や農業、その他国家活動の各部門に必要な有能な幹部を育成する課題を立派に解決するでしょう。今後、社会主義の精神で教育を受けたより多くの専門家が、毎年生産に従事することになるでしょう。

 生産部門内でも人材が育っています。人民政権樹立後の数年間に多くの先進的労働者が指導的地位に登用されました。彼らは新しいインテリ陣容を補充し、この陣容に生気はつらつとした労働者階級の熱情を吹き込んでいます。

 このように共和国ではいま、人民に忠実に奉仕する新しい民族インテリが育っており、その陣容は質量ともに日一日と拡大しています。

 しかし、新しいインテリが成長しているからといって、古くからのインテリを過小評価してもよいというわけではありません。専門家の不足を痛感させられている今日、古くからのインテリと新しいインテリが協力し合うことは特に重要な意義があります。古くからのインテリは自分たちが人民民主主義制度の恩恵によって植民地支配者の屈辱的なさげすみと搾取から解放されたことを確信しており、人民民主主義制度が祖国の繁栄と人民の福祉のために創造的エネルギーをそそぐ無限の可能性を与えていることをかたく信じています。それゆえ、古くからのインテリは、我々の政策を積極的に支持しています。我々は、これらのインテリを尊重し、その再教育に力ぞえし、粘り強い政治教育を通じてその思想・意識を高めなければなりません。

 戦争は、インテリにとっても厳しい試練でした。我々はいま、彼らがこの試練に耐えぬいたと、断言することができます。

 アメリカ帝国主義者の武力干渉に反対する正義の戦いで、朝鮮人民は無比の勇敢さと献身性を発揮しました。労働者階級と勤労農民、インテリは、敵を撃退しその侵略計画を破綻させるため、全力をそそいで戦っています。この会議に代表を派遣した生産部門のインテリは、特に大きな功績を立てました。彼らは戦時の困難な状況下にあっても工場で生産をつづけ、敵に破壊された生産施設を復旧し、戦後の人民経済の復興発展に必要な条件をつくるために献身しています。

 インテリは、前線援護と戦争勝利のためのすべての愛国的創意考案運動において人民の最前列に立ち、党と共和国政府の政策を積極的に支持しています。

 党と政府は、インテリ陣容をさらに拡大し、彼らが課された重責を立派に果たすよう、その水準を高めるために全力を尽くすでしょう。

 人民のために献身するのは、勤労インテリの崇高な任務であります。

 資本主義諸国では大多数のインテリがブルジョア階級の召使い役を強いられており、インテリの上層部はその社会的地位からブルジョア階級と深く結びついています。ブルジョア階級は人民の利益に背き、平和を脅かし、その政治的支配権を強化するためにインテリを利用しています。

 例えば、アメリカのブルジョア出身インテリはいま、実に恥ずべきことをしています。彼らは戦争放火者に奉仕し、その一部は大量虐殺手段である原子爆弾や細菌兵器を製造しています。強盗アメリカ帝国主義が朝鮮人民に対し細菌兵器を用いているのは世人のよく知るところです。

 勤労者の国である朝鮮では、インテリは人民に奉仕しています。

 皆さん!

 アメリカ帝国主義侵略者に抗する朝鮮人民の祖国解放戦争におけるインテリの課題は非常に重大です。工業と農業を復旧し、前線と後方への供給を保障するために人民を助けるのはインテリの栄誉であり義務であります。

 敵の侵略計画を粉砕するためには、たえず我々の力をつちかわなければなりません。我々には多くの欠陥と困難があります。これらの欠陥と困難を必ず克服しなければなりません。もし、技術者や科学者が課された現実的課題の解決に全力を注ぐならば、最終的勝利の日はいちだんと早められるでしょう。

 何よりもまず、アメリカ帝国主義者の蛮行によって全般的に破壊された人民経済と文化施設を重点的に早急に復旧し、共和国の国防力と経済的基盤をいっそう強化すべきであります。

 人民経済の復興で戦争の経験を生かして軍需工業を系統的に発展させ、これと並行して基礎的工業部門を復興しなければなりません。

 これと同時に、日本帝国主義植民地支配の後遺症としての人民経済の跛行性と戦争によって生じた不均衡を一掃し、将来の工業化に必要な条件をつくるために金属、機械、化学および建材工業部門を復旧拡張しなければなりません。

 我々は戦争によってひどく零落した人民生活の早急な安定と、人民経済各部門の全般的復興促進に短時日内に効果を現わし、国防力の強化と人民生活の安定に役立つ施設を重点的に復旧するようにしなければなりません。

 金属工業、機械工業、化学工業、建材工業などの重工業部門と同時に、紡織工業と製靴工業の発展に重点をおき、工業の配置では戦争の経験に照らして企業所の過度の集中を避けると同時に、戦時の条件下でやむをえず四方に分散させた企業所は再配置すべきであります。

 運輸逓信部門では、破壊された施設を早急に復旧整備し、輸送と通信を円滑に保障する対策を講じなければなりません。

 農業では耕地面積を拡張し、農産物と畜産物の生産を増大させ、工芸作物をさらに多く生産し、ぜんじ農業を機械化する方向で努力すべきです。

 これが人民経済復興の基本方向であります。このように膨大な人民経済の復興のために先進科学と技術を大いに導入し、機械化と自動化を促進して労働生産性と復興建設のテンポを高め、復旧した設備をフルに利用して生産を増大させ、資材、労働力および資金を極力節約してコストを切り下げ、蓄積を増やさなければなりません。

 これらの課題を立派に遂行するためには、全勤労大衆の愛国的熱意を引き出すと同時に、科学・技術の研究と各種の探求を活発におこなわなければなりません。科学・技術部門の研究と探求は、人民経済復興発展の実践と密接に結びつけて、それに倍するテンポで進めなければなりません。

 戦争の勝利と人民経済の復興促進のために、自然科学と技術学、社会科学部門で早急に解決しなければならない問題が山積しています。

 各種の豊富な地下資源や天然エネルギーとその他の天然資源の有効な開発利用、破壊された施設の早急な復旧とその能力の最大限の利用、原料、資材、労働力の合理的な使用などの対策を講じることが必要です。

 人民経済の基礎的工業であり、軍事上最も重要な工業である金属工業部門では、溶鉱炉の利用方法を改善するための理論・実践上の研究、平炉と電気炉に高速溶解法を導入し、ベッセマー製鋼法を新たに導入し特殊鋼の品質を向上させるための各種の研究が必要であります。金属工業の発展に大いにかかわりのある各種の耐火れんがの生産において、国内の原料で良質の製品をつくる研究もまた重要であります。

 機械工業部門では各種兵器の生産に必要な精密機械、器具、工具の生産にかんする先進理論と技術を習得し、それを早急に生産に導入する課題が提起されています。それと同時に機械生産でいまだに少なからぬ不合格品を出し、コストが高く品質の低い現象をなくすための確実な技術的対策を講じ、それを系統的に実施しなければなりません。この努力なくしては、機械工業の発展とひいては人民経済全般の発展を期待することはできません。

 化学工業では国内源泉をすべて利用して、産業用火薬と軍需用火薬の生産をいかなる困難があってもつづけなければなりません。

 まだわが国で油田が発見されていない状況にあって、咸北炭田の褐炭を原料とする石炭液化工業の創設は、科学・技術上の関心事となるばかりでなく、人民経済、特に戦時経済の強化にとって極めて重要な意義があります。

 朝鮮の工業は高分子有機合成工業発展の立派な可能性をもっているにもかかわちず、これはいまだに全面的な利用段階にいたっていません。解放後、技術者がカーバイドでアルコールや酢酸を生産したのは、もちろん大きな成果であります。我々はこれに止まることなく、軍事的、経済的に緊要な各種の電気絶縁材、高級塗料、合成樹脂、合成ゴムなど高級有機合成製品を国内で生産できるようにしなければなりません。

 次に、わが国の自然環境に対する科学的な調査をおこなうことが非常に重要です。わが国の自然環境に対する科学的な資料にもとづいて、利用可能なすべての条件を人民経済の建設に利用し、天然資源を広く開発すれば、人民経済を飛躍的に発展させることができます。

 日本帝国主義支配当時におこなわれた探鉱事業は、非組織的かつ小規模なものであったため、極めて不十分な資料しか残されていません。朝鮮全域の12%、北半部地域の9%にすぎない限られた地域に対する調査でさえ、それは系統的でなく粗雑なものでした。そのため、いま我々には信頼するに足る科学的な資料がありません。このように貧弱な調査資料を受け継いだうえ、こんにちまでいろいろな理由によって、地質調査および探鉱を広くおこなえず、長いあいだ姑息的に仕事をしてきました。

 もちろんこの事業でかなりの成果はありましたが、まだ過去の痕跡はなくなっておらず、非鉄金属鉱採掘の増大する要求は十分にみたされていません。

 それゆえ、軍事的に緊切に必要であり、人民経済の復興に多く必要とされる各種の有用鉱物、特に金、銀、銅、鉛、亜鉛などの非鉄金属鉱物や重石鉱、ニッケル鉱、その他特殊鉱物の埋蔵量を早急に探査すべきであります。

 まだ実地踏査のなされていない広大な山岳地帯の地質調査と、すでに知られている有望な地帯の探鉱を活発におこなうべきです。

 重要な資源である河川や湖水、潮水を人民経済の発展に、総合的に利用する研究も不十分です。河川一つ例にとっても、水力発電、灌漑、工業および都市への給水、河川運輸、養魚など利用範囲が少なくありません。しかし、河川や湖水に対する必要な調査は、以前も現在も分散的かつ小規模におこなわれているにすぎません。

 朝鮮は水力発電に極めて有利な地理的条件をもっており、多くの有望な水力発電地点もすでに調査されていました。しかし、以前のこのような調査資料はアメリカ帝国主義侵略者によってほとんどなくなってしまったので、すでに知られている有望な地点の再確認と、有利な地点の新たな調査をおこなうべきです。同時に河川と湖沼の水を農業発展の重要な物質的基礎となる灌漑に合理的に利用できるよう河川や湖沼の調査を実施すべきです。

 これはまた、洪水の被害防止のためにも必要であり、雨期の大量の雨水が無為に海へ流れるのを防ぎ、それを蓄えて人民経済に有効に利用するためにも必要であります。

 農業を発展させるためには、自然条件に対する綿密な研究と調査が必要であります。朝鮮の農耕地は非常に限られています。したがって、北半部で食糧を増産するには、全国的に単位面積当たりの収量を高めると同時に、新しい耕地の開墾をおこなわなければなりません。

 まず、地方に残っている休耕地をすべて起耕すると同時に、西海岸の広大な干潟に目を向ける必要があります。西海岸には利用可能な干潟が30万へクタール近くもあります。これは北半部総耕地面積の15%に該当するものです。潮水を堤防でせき止め、干潟を干拓して農耕地や工業用地、塩田などを造成するための設計を作成すべきであります。同時に比較的塩分の多いところによく育つ作物を選択して、新たに開いた干拓地に植える対策を講ずるべきです。

 収量を高める土壌学的研究とその他の農業科学研究をたゆみなくおこなうべきです。

 先進的学説を大胆に受け入れて育種事業を発展させ、作物種子の品質を改善しなければなりません。例えば、旱ばつに耐える多収穫品種の稲の種子を育成したり、わが国の短い繊維種の綿花を長い繊維種に改良したりすれば、多収穫のためにたたかう農民の切実な要望を解決するばかりでなく、国家にも大きな利益を与えるようになるでしょう。

 周知のとおり、朝鮮の畜産業は極めて立ち後れた状態にあります。畜産業の発展に大きな力を注ぐべきであります。共和国畜産業の全面的な革新のためには、家畜の品種改良、特に退化の傾向をたどっている朝鮮牛や豚の品種の改良と新しい品種づくり、家畜防疫の強化と飼育管理法の改善、飼料源の確保など多面的な研究活動をおこなうべきであります。

 人民の生活向上をはかるためには、水産業に大きな関心を払わなければなりません。

 畜産業の発展が極めて困難な状態にある朝鮮では、水産業を各面から発展させることが緊切に望まれます。それゆえ、水産物の生産を高め、浅海養殖、養魚を発展させるための調査・研究活動を大々的におこなわなければなりません。貿易で重要な位置をしめる各種水産物の大量生産のために努力すると同時に、その品質を向上させることが重要です。

 朝鮮の山林資源は、解放前の日本帝国主義者の乱伐によって年一年と蓄積が減少し、最近はアメリカ帝国主義者の蛮行による一部地帯の焼失によって、山林蓄積は他の国に比べ極めて少ない有様です。朝鮮の山林蓄積はこのように貧弱なうえに、北部山間地帯に偏在しており、海に近い地帯には樹木が少ないか、ほとんど皆無に近い状態にあります。

 このような地域には生長が早く利用価値の多い樹木を選択して植林し、蓄積の多い地帯でも赤松が多すぎて林相のかんばしくないのは改善し、針葉樹と広葉樹の混生林を造成する研究をおこなうべきです。

 木材の合理的な利用のため、化学的方法を各方面に適用しなければなりません。特に木材の防腐に力を入れて、毎年地中で腐朽する枕木や電柱に防腐剤を塗布し、多くの木材を節約するようにしなければなりません。木材の腐朽を防ぐ最も効果的な方法を講じると同時に、タンニンやメタノールなど化学製品を量産する研究活動を促進させる必要があります。

 保健医療部門では戦争過程で得た貴重な経験を総括し、それを保建医療事業の発展に利用するようにすべきです。特に最近頻繁になったアメリカ帝国主義の野蛮な細菌兵器の使用に効果的に対処するため、伝染病やその他の疾病の予防事業を改善し、各種の予防薬を量産しうるよう科学研究活動をおこなうべきです。

 薬学部門では化学的合成薬にのみ頼ることなく、薬草栽培をさかんにすると同時に、薬草の栽培方法と利用方法の研究をさらに具体化し、薬草を広く利用するようにすべきであります。

 私は以上、主に自然科学と技術学に属するいろいろな問題について述べました。この他に、社会科学部門にも人民経済の復興と文化発展の促進のために解決すべき問題が少なくありません。

 まず経済学者に多くの問題が提起されています。例えば、労働生産性向上の問題、コスト引下げの問題、流通費の節約問題などのような重要な問題を理論的、実践的に解決すべきであり、朝鮮の工業の植民地的披行性と戦争によって新たに生じた不均衡を正すため、将来、工業の構造を合理的に改造する問題も研究しなければなりません。価格を合理的に制定する問題、協同経営の発展にかんする問題は、早急な解決がまたれる当面の経済問題であります。

 法学、哲学、史学、言語学、教育学、文学などの部門に従事する科学者は、マルクス・レーニン主義思想で人民大衆を教育し、民族文化を継承発展させ、すべての勤労者を愛国主義思想で武装させ、人民の文化水準を全般的に高めるため、知恵と才能を尽くすべきであります。

 大学、研究所、工場、その他の機関に勤務する科学者、技術者は、労働者、農民と緊密に協力して国を富強にし、人民の福祉向上をはかり、民族文化を発展させ、祖国の自由と独立をかちとるための大業に尽力すべきであります。

 親愛な科学者と技術者の皆さん!

 上に指摘した問題は、祖国解放戦争の最終的勝利と人民経済の早急な復興のために、共和国の科学者、技術者が必ず解決しなければならない課題であります。国家は皆さんに実に大きな期待をかけています。

 しかし、これまでの科学研究活動にはかなりの欠陥がありました。科学者、技術者はまだ大胆に革新者の隊列に加わっておらず、国防力の強化と人民経済の発展のために提起される現実的問題を適時に解決できないでいます。人民経済の発展に当然優先させるべき科学・技術分野の研究活動が低調なのは、もちろん科学・技術水準がまだ低く、その歴史が短いことに起因していますが、原因は他にもあります。

 第1に、科学者、技術者には、共和国科学戦線の栄えある先駆者としての責任感と国の主人としての自負心が欠けていました。

 そのため科学者、技術者は祖国と人民に奉仕する働き手として、勇敢に自信にみちて仕事を進めることができませんでした。

 それはまず、科学者が各自の研究成果や見解の発表に極めて消極的であることに現われています。これは科学者の研究活動の停滞を示すと同時に、一部の科学者が批判をおそれるあまり、正しい見解の発表までためらっていることを物語っています。

 このように科学者の責任感と自負心の欠如のため、科学研究活動を活発に進める気風と建設的な理論闘争を通じて科学を発展させる明るい雰囲気がつくられていないことを、第一の大きな欠陥として指摘しないわけにいきません。

 第2に、こんにちまでの科学研究活動は、旧来の方式通り生産とは無関係におこなわれ、個別的な働き手や機関が互いに連携せず単独でおこなったため、集団的な力が発揮されませんでした。

 同じ省管下の研究所相互間、重工業省と工業大学間、農林省と農業大学間の連携と協力が不十分でした。

 また科学者、技術者のなかには、まず国防力の強化と人民経済の建設に緊要な問題の解決から取り組むのでなく、個人的な趣味本位または偏狭な個人的利益から国家的要請とはほど遠く、現実性の希薄な問題に執着し、それをあたかも崇高な研究であるかのように考える傾向が少なくありません。このような事実は、特に各大学の科学者が研究テーマを戦時体制に適応して変更せず、依然として現実性の希薄な平和時期の研究をつづけていることに現われています。

 第3に、行政機関の働き手が人民経済の発展における科学研究活動の重大な意義を正しく認識できなかったため、科学研究活動や各種の探究活動に深い関心を払いませんでした。

 科学研究活動に対する不断の配慮を払おうとせず、必要な物質的条件を整えず、なりゆきにまかせる傾向が少なくありません。

 教育省では、各大学に科学活動の助けとなる具体的な指導を与えず、実験室、実験器具、書籍などを十分に保障しませんでした。

 農林省管下の中央気象台の仕事が長いあいだ振わず、重工業省管下の中央鉱業研究所が地下資源の調査と探鉱で成果があがらず、有名無実な存在となっているにもかかわらず、関係機関ではその対策を立てずに放任してきました。

 行政機関の働き手のなかには、一部の科学者、技術者の立ち後れた現象を全般的な現象と思いこみ、彼らを尊重せず、科学研究活動で直ちに目ぼしい成果が上がらないということで性急に非難する近視眼的な人もかなりいます。

 行政機関の働き手は性急さをすて、科学者、技術者におおらかに接し、可能な援助を惜しまず与えるべきであります。

 第4に、若手の科学者、技術者が苦心のすえ達成した研究成果を正しく評価し、それを直ちに経済建設に導入する活動が不十分です。

 まだ一部の人には程度の差こそあれ、自国の科学者や技術者の業績は頭から無視し、外国のものは無条件称賛する卑屈な思想傾向が残っています。

 一例をあげると、わが国の製薬工場で生産されるアスピリン剤は十分な効能をもっているにもかかわらず、ドイツのバイエルアスピリン剤をあがめ、わが国のぶどう糖注射液が外国製に劣らないのに、日本のぶどう糖注射液を求めようとする傾向があります。

 最後に、欠陥の原因は人材不足にあります。

 科学研究活動には経験に富む有能な専門家が必要です。すでに述べたように、日本帝国主義支配下では自国の有能な科学・技術人材が育成できませんでした。

 解放後、各部門にわたり短時日内に有能な新しい人材を多数育成しました。しかし、他の部門とは異なり、比較的長期間の正規の教育を必要とする科学・技術分野では、まだ有能な人材を十分に育成していません。その結果、科学研究活動の発展における最も重要な問題点である、幹部の不足をいまだに解決していません。

 親愛な科学者、技術者の皆さん!

 以上述べた欠陥の早急な是正と、科学研究における今後の飛躍的な発展のためには、次のような課題を解決しなければなりません。

 第1に、重要な問題は理論と実践の結合に関する問題であります。

 理論と実践との結合なくして、また科学者と生産者の創造的協力なくして、科学・技術の発展は期待できません。スターリンは次のように述べています。「 科学の論拠は常に実践によって、経験によって検査された。(中略)科学は偶然を認めず陳腐となったもの、古いものに打撃を加えることを恐れず、経験、実践の声に鋭敏に耳を傾けるからこそ、科学と言われるのである」(スターリン『レーニン主義の諸問題』)

 科学者と生産者の創造的協力は、科学研究の成果と科学的発見を人民経済に導入することを容易にします。またこの協力は、生産の要請に即応した科学の正しい道と方向を示してくれます。

 このように、理論と実践との立派な結合は、生産のためのみでなく、科学そのものの発展のためにも大きな力となるでしょう。

 しかし遺憾ながら、わが国では科学者と生産者間に活発かつ日常的な連係がないことを認めざるをえません。

 科学研究機関と技術学校では、生産にさほど関心を払っていません。一部の学者は、生産の緊要な要請を考慮せず、人民経済の実践とは完全に遊離した研究をおこなっています。

 このような学者の努力がいかなる成果ももたらしえないのは自明のことです。

 工業部門では新しい発明と生産の合理化に対する関心が少なく、専門技術をもつ労働者の発案や創意が正しく奨励されていません。すでに知られている新しい生産組織方法と先進技術の導入も順調におこなわれていません。

 我々はこのような事態を放任することはできません。科学と実践の結合を強めるため必要なあらゆる対策を講じなければなりません。

 科学者は、朝鮮の労働者階級が戦時条件下の生産と復旧できずいたこれまでの革新的成果に関心を向けるべきであります。

 科学者、技術者は、先進的生産革新者が立てた労働の偉勲と貴重な経験を一般化し、それを大衆に広く普及すべきであります。

 第2に、科学研究活動を国家計画の重要な部門として計画的に推進し、すべての可能性を利用し、それを唯一の国家的目的に服従させなければなりません。

 共和国政府は、科学研究活動に対する総合的な指導機関として、国家計画委員会内に科学研究局を設けました。すべての科学者、技術者は国家から与えられた研究課題を定められた期間内に責任をもって遂行し、研究成果が直ちに戦争の勝利のために利用されるようにしなければなりません。

 そのためには、科学・技術の研究と各種の探究活動により多くの物質的援助を与える必要があります。緊要な研究活動に財政支出を惜しむべきでなく、各種の研究設備、機材、文献を十分に保障すべきです。自然科学と技術学の研究に必要な実験器具や資材の輸入を増やすと同時に、器具や機材を可能なかぎり国内で生産供給するようにしなければなりません。

 いろいろな記録文献や書籍、その他貴重な文化財が分散消失し、研究活動に少なからぬ支障を与えています。朝鮮民族の文化遺産を継承し、我々の時代の新しい科学を建設するため、これらの資料を全国家的範囲で収集整理し、研究者が広く自由に利用できるよう対策を立てなければなりません。

 第3に、国家的意義をもつ研究活動の円滑な遂行のために、すべての省、直属局とその管下の研究機関や各大学が互いに緊密な連係を保ち、相互協力の精神にたって集団的な力を発揮するようにすべきであります。

 教育省、重工業省、農林省、保健省、その他の省、内閣直属局では、管下の科学研究機関の活動を系統的に指導し援助すべきです。

 全国の優秀な科学者を集結し、科学研究活動を集団的におこなうため、科学院を創設すべきであります。

 第4に、すべての科学者、技術者は、政治・思想意識を高め、国家と人民に忠実に奉仕する立場にしっかりと立たなければなりません。

 あらゆる部門の科学者、技術者は各自の研究部門の専門家になるばかりか、自国の運命を常に念頭におき、社会の発展法則を認識し、その法則の利用ができ、国家の政治生活に積極的に参加する愛国的で先進的な科学者となるべきです。それゆえ科学者はマルクス・レーニン主義を身につけるため、たえず努力しなければなりません。マルクス・レーニン主義は、自然と社会の発展法則に対する科学的認識と世界改造の方法を示す唯一の正しい世界観であります。

 第5に、科学研究活動での成果は、それがいかに小さなものであっても、直ちに実践に取り入れ、普及すべきであります。

 研究結果の独占は許されません。

 研究の成果に多少の欠陥があっても、基本的方向が正しければ、思いきって発表し、批判と援助を受けてさらに完成させなければなりません。

 これと関連して科学研究活動の成果を計画的に出版し、広く普及することが必要です。

 第6に、科学研究活動の発展のため、学界で批判を奨励し強めるべきであります。

 活発で建設的な批判が自由におこなわれるところでは、科学の健全な発展が可能です。いかなる科学も、論争と批判の自由がなければ発展しません。

 しかし、批判を活発にするということで、新しい芽を不当に踏みにじる、原則から外れた批判は排すべきであり、あくまでも新しい芽を尊重し、それを支持し育む方向で欠陥を批判する気風を立てるべきであります。

 第7に、科学者、技術者は先進科学の成果と方法を大いに学び、取り入れるべきであります。

 自分の旧来の方法を固執し、すでにおさめた成果に自己満足し、急速に発展する世界の科学水準に急速に追いつくために努力しなければ、わが国の科学研究活動は立ち後れた状態からぬけだすことはできないでしょう。

 第8に、すべての活動の成功いかんは、幹部の質と量にかかっています。まだわが国の科学者、技術者は、非常に不足しています。科学部門に従事する皆さんは、新しい科学者を誠意をもって育成しなければなりません。

 古くからの科学者、技術者が新しい幹部を多く育成し、科学・技術分野で確固たる伝統をきずくのは、わが国の将来の科学発展の最も有力な保証であります。

 最後に、専門家の実務水準を高める問題についてふれておきたいと思います。

 科学者と生産技術インテリには、技術の発展と生産工程の改善をはかり、工場や炭鉱、鉱山で労働生産性を高めるべき重大な課題が提起されています。この課題の成功的遂行いかんは、技術者が技術熟練度の向上のためにいかに努力するかに大きくかかっています。

 それゆえ、工業と運輸部門の働き手に対する技術教育を広く組織し、技能工と技術者の養成を強化しなければなりません。

 大部分の男子が軍隊に服務し、企業所では婦人が男子にかわって働く実状を考慮し、婦人に専門技術を教え、技術の伝習に特別な注意を払うべきです。

 また技術者と科学者の再教育事業を改善することが重要です。

 技術者の教育および再教育体系と科学者養成体系を改善する対策を講じるべきであります。

 皆さん!

 戦争は人民経済に多大の損失をもたらしました。この損失は、アメリカ帝国主義侵略者の都市と農村に対する野蛮な爆撃の継続によってさらに拡大されています。このような状況下にあって、科学者および生産技術インテリ、生産革新者と発明家は、戦時の困難にうちかち、前線での勝利を保障すると同時に、戦後の人民経済の復興にも、エネルギーと知識と経験を惜しみなくささげるべきであります。

 これはインテリの祖国に対する最も気高い義務であります。私は、インテリがこの義務をあくまで誇らしく遂行するものと確信します。
                                               
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』7巻 

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