金 日 成

特務長の役割を高めるために
―朝鮮人民軍特務長講習所の教員、受講生におこなった談話― 
1952年2月25日 

 私はかねてからこの講習所を訪ねようと思っていましたが、時間の都合でそれがきょうようやく実現しました。

 これまでこの講習所では、戦時の困難な状況下にあっても一件の事故も起こさず講習を立派におこないました。現在この講習所の教職員の活動意欲と受講生の学習熱は高く、生活条件も基本的に整っています。私は、本講習所教職員と受講生が健康な身体で仕事をし、勉強していることに対し、満足に思います。

 私はきょう、諸君に会えた機会に、区分隊に配属して遂行すべき特務長の課題について述べようと思います。

 現在戦況は、わが軍に非常に有利です。人民軍部隊は各戦線にわたって主導権を握り、アメリカ帝国主義侵略者に連続的な強打を加え敵を守勢に追い込んでいます。

 国際情勢もわが方に有利に変わっています。アメリカ帝国主義侵略者は、世界平和愛好諸国人民の厳しい糾弾を浴び、国際的に孤立しています。世界のいたるところで、アメリカ帝国主義は朝鮮から血ぬられた手をひけ、という抗議の声が日増しに高まっています。アメリカの本土でさえも朝鮮人民の正義の大業を支援する運動が展開されています。

 祖国の自由と独立を守る朝鮮人民の正義の大業は、必ず勝利するでしょう。

 しかし、勝利は決しておのずともたらされるものではなく、たたかい取らなければなりません。アメリカ帝国主義侵略者は、敗北を挽回しようとやっきになっています。したがって人民軍将兵は、絶対に勝利におぼれることなく、常に敵に対する警戒心を高め、人民軍の戦闘力を強めるために全力を尽くすべきであります。

 人民軍の戦闘力を強めるうえで重要なのは、中隊をあらゆる面から強化することです。中隊を強化すれば、全軍を鉄の隊伍につくることができます。

 中隊を強化するためには、特務長の役割を高めなければなりません。中隊で軍人を教育し、規律と秩序をうち立て、戦闘準備を整えるうえで、特務長は重要な役割を果たします。これまでの経験は、特務長がその役割を立派に果たす中隊では万事が円滑に運ぶが、そうでないところでは規律と秩序が乱れ、ことが順調に運ばないことを示しています。中隊における特務長は、家庭でいえば長兄に当たります。特務長は長兄の気持で隊員を愛し、常にその生活に心を配らなければなりません。

 隊員に欠陥が現われたときには、親切に諭し是正させ、彼らを政治的、軍事的に教育すべきであります。

 特務長は、中隊に強い規律と秩序を確立すべきです。

 規律は、軍隊の生命であり、戦闘力の強化と戦争勝利の基本的な保証であります。中隊に強い規律と秩序が確立されなければ、中隊の戦闘力を高めることができず、さらには全軍の戦闘力の強化ものぞめません。

 特務長は、中隊の規律生活を強化し、隊員が軍事規定と教範にしたがって生活するように教育すべきであります。人民軍の規律は、帝国主義国軍隊の強圧的な規律とは根本的に異なる、自覚的な規律です。だからといって、人民軍の規律が自然に確立されるものではありません。規律は、常に軍人を教育し、軍人が軍規を自覚的に守るときに確立されるものです。特務長は、隊員に軍規を強化する必要性とその意義を強く認識させ、彼らが軍事規定に従って生活するよう、常に教育し啓発すべきであります。

 規律と秩序を強めるためには、特務長が隊員に対して厳格でなければなりません。特務長は、原則的問題に対しては隊員に一歩も譲らず強く要求し、原則に違反する行為とは容赦なくたたかうべきであります。こうして、すべての隊員が指揮官の命令と指示を適時に正確に実行し、革命軍らしく戦闘・政治訓練と日常の軍務生活を正しくおこなうようにすべきであります。

 また特務長は、隊員の一挙一動を正確に掌握し統制しなければなりません。隊員のすべての活動は、特務長の関心事とならなければなりません。

 特務長は、中隊の生活を正しく管理すべきであります。

 中隊の生活を正しく管理するのは容易なことではありません。

 中隊の生活では、隊員の衣食の問題から戦闘準備の完成にいたるまで、多くの複雑な問題があります。

 特務長は、隊員の生活に常に深い関心を払い、中隊の生活を立派に管理しなければなりません。特に兵舎と食堂をよくととのえ、隊員たちがなんの不便もなく生活できるようにすべきです。

 特務長は、隊員の食生活の改善に深い関心を払うべきであります。隊員の食生活を豊かにするのは特務長の重要な任務です。

 食生活を改善するためには、手近にある材料をよく利用すべきです。大豆ひとしなでも、いろいろなものをつくって食べさせるために努力すべきです。熾烈な戦闘をつづけている1211高地では、大豆でもやしをつくって軍人たちに供給し、非常に喜ばれているとのことです。もやしをつくることは、別に難しいことでもありません。仕事の手配さえおこなえば、いくらでも隊員たちに食べさせることができます。野菜類はできるだけ自給自足するようにすべきです。そうすれば、食生活を改善できるだけでなく農民の負担も軽減することができます。じゃがいもなども自分で十分栽培できます。山菜を摘んで副食物にすればよいでしょう。わが国にはいたるところに多くの山菜があります。山菜は栄養価も高く、味もよいものです。

 特務長は、隊員の衛生管理を正しくおこなうべきであります。

 衛生管理をよくすれば、隊員が健康な身体で戦闘任務を円滑に遂行することができます。特務長は、隊員が風呂にもよく入り、下着類もきれいに洗濯し、衛生観念を高めるようにしなければなりません。

 特務長はまた、常に隊員に端正な身なりをさせなければなりません。軍人の身なりは、その精神状態を反映するものです。

 隊員が軍服を端正に着け、頭をきれいに刈り、襟布もしばしば替えるようにしなければなりません。

 軍人のなかで節約運動を強化すべきであります。特務長は、1粒の米、1本の糸といえども粗末にせず節約するよう、常に隊員を教育しなければなりません。特に武器や弾薬、戦闘技術機材を瞳のように大事に管理させることに深い注意を払うべきです。

 特務長は軍人に、軍民一致の伝統的美風を高度に発揮させるべきであります。

 抗日武装闘争の時期に我々は、「魚が水を離れては生きていけないように、遊撃隊は人民を離れては生きていけない」というスローガンをかかげ、常に人民を信頼し、人民に依拠して戦ったため、あれほど困難な状況下にあっても強盗日本帝国主義を撃滅することができました。

 諸君は抗日遊撃隊の模範に習い、駐屯地域人民との結びつきを強めるべきであります。人民軍は、文字通り人民に服務する人民の軍隊です。したがって諸君は、困難な問題が提起されても決して人民に迷惑をかけてはなりません。もし、駐屯地域住民の生活用具などを借りて使うようなことがあれば、それを間違いなく返さなければなりません。営農期には周辺農民の仕事を極力助けるべきです。こうして、軍隊と人民が混然一体となるべきです。

 特務長は、活動と生活のすべての面で隊員の模範となるべきであります。

 実践的模範は、隊員を教育し感化する立派な方法です。特務長が活動と生活で模範を示せば、隊員もそれに見習って軍務生活を立派におこなうようになります。

 特務長は、内務班生活で模範になるべきであります。諸君は講習所の兵舎を立派に整え、よく整理整とんしていますが、区分隊に行ってもそのようにしなければなりません。戦時だからといって、なりゆきまかせの生活をしてはなりません。内務班生活を軍事規定どおり、正しくおこなうべきであります。特務長は、隊員が作業をするときはいっしょに作業をし、困難で骨の折れる仕事では常に、隊員の先頭に立つべきであります。

 特務長は、常に謙虚で素朴でなければなりません。謙虚さと素朴さは、革命家に固有な品性です。諸君は尊大ぶってはならず、活動と生活、言動で謙虚かつ素朴でなければなりません。隊員に悩みごとや困難な問題がある場合は、わがことのように考え、そのつど解決すべきであります。

 特務長が任務を正しく遂行するためには、自分自身を政治的、思想的に十分鍛えなければなりません。

 諸君は党と革命のため、祖国と人民のためなら生命をささげて戦う高度の革命的自覚をもたなければなりません。そのためには、政治学習に熱心に参加して党の路線と政策を深く体得し、階級意識をたえず高めなければなりません。特に、祖国と人民を熱烈に愛する愛国主義精神とアメリカ帝国主義と地主、資本家を激しく憎悪する階級意識で強く武装すべきであります。

 これとあわせて、党生活と民主青年同盟生活などの組織生活に積極的に参加し、みずからをたえず鍛えるべきであります。

 特務長は、政治的・思想的水準が高いばかりでなく、軍事技術的にも能力をそなえていなければなりません。隊員を指導し教育するためには、特務長自身が豊かな知識をもっていなければなりません。軍事訓練に熱心に参加して軍事知識を習得し、射撃も上手でなければなりません。特務長は、軍事規定と教範を深く研究し、それに従って行動する習慣をつけなければなりません。

 諸君は、講習期間に規律を守り、講習に積極的に参加して大いに学ばなければなりません。戦争のさ中に特務長講習を組織するだけに、諸君は寸秒を惜しんで政治学習と軍事訓練に励み、訓練要綱を完全に消化すべきであります。

 講習所では、特務長講習の目的と意義を明確に認識し、講習を成功裏におこなうために全力を尽くすべきであります。

 講習所は、訓練要綱の実行で教条主義を徹底的に警戒すべきであります。他の分野と同様、軍事分野でも外国のものを決して機械的に取り入れてはなりません。講習は、あくまでも祖国解放戦争の経験と教訓にもとづき、わが国の実情に即しておこなうべきです。わが国の実情に合わないものは修正して、わが国の実情に合うように教えなければなりません。今後、軍事規定なども検討し、わが国の実情に合わないものは改めるべきであります。

講習所ではまた、受講生に中隊の内務班生活の組織と中隊管理に必要なことを多く教え、中隊生活を軍事規定にもとづいて正しく組織できるようにすべきです。こうすれば、今後中隊に配属されてからも講習所で学んだとおり、その任務を立派に遂行することができます。特に、受講生に兵舎や食堂など講習所の建物を清潔に整えさせ、きちょうめんな生活をさせるよう深い関心を払うべきであります。

 講習所では、受講生の生活に深い関心を払わなければなりません。

 何よりもまず、受講生の食生活を豊かにしなければなりません。受講生に食肉や食用油、野菜などの副食物を十分に供給し、食事の質を高めるべきです。冬季には、軍人の食卓に必ず熱いスープをそえてやるようにすべきであります。

 敵機の爆撃が激しいだけに、防空対策に万全を期すべきです。

 兵舎や食堂などの講習所の建物とその周囲を巧みに偽装し、要所要所に待避壕をつくらなければなりません。また、昼間は煙をださないようにし、日が暮れてから兵舎に火をたくようにすべきです。

 私は、諸君が緊張した動員態勢で講習を立派におこなうよう期待するものです。
 出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』7巻

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