金 日 成

敵の細菌兵器に対する闘争対策について
 ―朝鮮民主主義人民共和国軍事委員会拡大会議でおこなった演説―
1952年2月20日 

 同志の皆さん!

 私はきょう、敵の細菌兵器との闘争対策について述べようと思います。

 現在人民軍部隊は、敵と対峙している状態で積極的な陣地防御戦をおこなっています。人民軍は、前線と海岸線に坑道をはじめ、防御施設を堅固に築く一方、積極的な戦闘を繰り広げ敵に甚大な打撃を与えています。

 人民軍の英雄的な戦いによって敗戦を重ねているアメリカ帝国主義者は、恥ずべき敗北を挽回しようと細菌兵器を使用するまでにいたりました。彼らは、この1月28日から2月17日までのあいだにも、前線の多くの地域と後方の一部の地域に、ノミやハエなど、各種の昆虫を大量投下しました。それを検査したところによると、昆虫の体内にペスト菌やコレラ菌などの各種伝染病菌があることが判明しました。これは、アメリカ帝国主義者が計画的に細菌兵器を使用していることを証明するものです。

 アメリカ帝国主義者は、細菌兵器を使用して人民軍と平和な住民を大量殺りくし、人民軍部隊の戦闘力を弱め、前線と後方の連係を断ち、軍隊と人民に恐怖心を起こさせようとしています。

 アメリカ帝国主義侵略者が、人類の道徳と国際法を乱暴に踏みにじり、何のためらいもなく野蛮な細菌戦を強行している状況下にあって、それをいち早く粉砕することは、人民軍の戦闘力と後方の強化にとって重要な意義があります。

 アメリカ帝国主義侵略者の細菌兵器の使用に対して、我々は少しも驚いたり、恐れたりするものではありません。我々は、すでに1950年末、敵の細菌兵器の使用に対して戦った経験をもっており、また、敵の細菌戦を粉砕する条件を十分に備えています。すべての部門で敵の細菌兵器に対する戦いを沈着に組織し、細菌戦を徹底的に粉砕する対策を早急に講じなければなりません。

 何よりもまず、敵の細菌兵器に対する戦いを正しく組織すべきです。すべての活動の成果はその組織に大きくかかっています。それゆえ、敵の細菌兵器に対する戦いでも十分な手配をしなければ、成果をあげることはできません。

中央から道、市、郡、里にいたるまで、そして、人民軍各部隊で、早急に防疫システムを整えてその機能と役割を高め、指揮系統を正しく立てなければなりません。それに、人民軍と地方の各級防疫機関を政治的、思想的に堅実で高度の専門技術を所有した要員でかため、必要な場合は新たな防疫機関も組織すべきです。こうして、防疫機関が中心になって敵の細菌兵器に対する戦いに積極的に取り組むべきであります。

 仕事の手配でまた重要なことは、防空監視と通報組織を綿密におこなうことです。部隊と職場、都市と農村、道路の要所に監視網と警戒網を組織し、敵機の細菌弾投下を適時に発見し、細菌兵器やそれらしき物を発見した場合は、直ちに防疫委員会に通報する制度を確立すべきです。細菌兵器の通報を受けた防疫委員会は、直ちに上級防疫委員会に報告し、各道防疫委員会や人民軍各軍団防疫委員会は、それを国家非常防疫委員会と最高司令部軍医局に報告すべきであります。防疫通報に対しては、機関や部隊の通信施設を優先的に利用できるようにすべきです。各政党、大衆団体と内務省、鉄道省などの各機関でも防疫情報活動に積極的に協力すべきであります。

 細菌兵器に対する戦いを機動的に組織しなければなりません。中央と各道に、有能な保健医療従事者で機動防疫隊を早急に組織し、装備を整え、即時動員できるようにすべきであります。保健相と内務相、民族保衛相は、下級機関と部隊で実施すべき具体的な防疫対策を立て、承認を得て示達すべきであります。

 次に、すべての部門と単位で衛生・防疫活動システムと防疫規律を確立し、敵の細菌戦を粉砕する闘争を大衆的運動として強力に繰り広げるべきです。

 保健医療事業で基本をなすのは、発病者をださないよう、十分な予防対策を講じることです。細菌兵器に対する戦いでも衛生・防疫活動を活発におこない、伝染病を予防することが大切です。

 衛生・防疫活動では、清掃と消毒が重要です。清掃と消毒がゆきとどいていれば、細菌が撒かれても伝染せず、伝染したとしてもまん延を防止することができます。それゆえ、すべての単位で、常に清掃と消毒を十分おこなうようにすべきです。特に、人民と軍人は住宅地区や兵舎を清掃し、井戸や便所をきれいにし、害虫や鼠を撲滅し、生水を飲まずに湯ざましを飲み、衣類や寝具はしばしば熱湯消毒をして洗濯するようにすべきです。

 衛生・防疫活動ではまた、住民と軍人に予防注射をうつことが重要です。医師と看護婦を動員してまず、危険地区の住民と軍人にペスト、コレラをはじめ、悪性伝染病の予防注射をうつようにすべきです。

 これとあわせて、アメリカ帝国主義者が航空機から伝染病菌をもつ昆虫や動物を投下すれば、それを直ちに撲滅し、細菌に汚染した器物は焼き払うか、地中に深く埋めるようにすべきです。

 敵の細菌兵器による汚染区域は、防疫従事者が現場調査をおこない、消毒対策を講じ、人間はもとより動物も立入りできないように厳重に隔離すべきです。万一、危険地区で特殊伝染病患者が発生した場合には、当該住民区域を隔離し、即時に徹底した防疫対策を講じ、伝染病のまん延を防止すべきであります。

 衛生・防疫活動でまた重要なのは、すべての単位で防疫規律を確立することです。特殊伝染病は、伝染速度が早く死亡率が高いため、防疫規律を厳守しなければたいへんな結果をまねきかねません。したがって、防疫規律の違反者に対しては、法律をもって厳しく追及すべきであります。

 他の活動と同様に、敵の細菌戦粉砕のたたかいも広範な大衆を動員せずには成果がのぞめません。したがって、これには、保健医療専従者だけでなく、政権機関、人民軍、内務機関、大衆団体のすべての者が参加するようにすべきです。各級党組織は、すべての党員と大衆をこの活動に動員する組織・指導活動を正しくおこなうべきです。

 また、各政党、大衆団体と政権機関、人民軍部隊では、人民と軍人のなかにアメリカ帝国主義侵略者の犯罪的な細菌戦を暴露する宣伝活動を広くおこなうべきであります。保健省と軍医局は、伝染病に対する医学常識とその予防対策の宣伝資料を多くつくり、文化宣伝省と人民軍総政治局は、宣伝活動を活発におこない、全人民と軍人が敵の細菌兵器とのたたかいに参加するようにすべきです。全人民と軍隊が立ち上がってたたかえば、敵の細菌戦を完全に破綻させることができるでしょう。

 次に、敵の細菌兵器に対処する物質的保障対策を十分に講ずるべきです。国では、各級防疫隊や防疫所に、コレラ、ペストの予防注射をふくむ各種の予防剤と消毒剤、殺虫剤、殺鼠剤を十分に供給し、細菌実験用の実験機材や設備、また敵の細菌兵器に対処する機動機材を早急に解決しなければなりません。工兵局で細菌実験室に使用する坑道をつくり、国家計画委員会と後方総局は防疫車とトラックを、内閣食糧局は隔離患者に食糧をそれぞれ供給すべきであります。

 次に、細菌兵器を使用するアメリカ帝国主義侵略者の野獣じみた蛮行を全世界の人民に暴露する対外宣伝活動を活発におこなうべきであります。

 アメリカ帝国主義侵略者の細菌戦は、その蛮行のなかで最も犯罪的なものです。ジュネーブ協定で細菌兵器の使用は禁止されているにもかかわらず、アメリカ帝国主義者はひきつづき細菌戦を強行しています。これは、アメリカ帝国主義が、朝鮮人民の敵であるばかりでなく、全世界平和愛好諸国人民の敵であることを明白に示しています。我々は、朝鮮におけるアメリカ帝国主義者の犯罪的な細菌戦が、以前からの計画的な準備によるものであり、人類の道徳と国際協約の初歩的な規定まで乱暴に踏みにじる醜悪な蛮行であることを、全世界の人民に暴露しなければなりません。また、国際民主団体の代表と各国のジャーナリストが朝鮮を訪問してアメリカ帝国主義侵略者の細菌戦の蛮行を調査し、全世界平和愛好諸国人民に暴露するようにしなければなりません。

 このような活動を正しくおこなうならば、アメリカ帝国主義侵略者の犯罪的な蛮行は残らず暴露され、彼らは国際的に孤立し、我々の正義の闘争を支援する全世界進歩的人民の声は高まるでしょう。

 我々が敵の細菌兵器に対する闘争対策を十分に講じ、全人民と軍人を力強く立ち上がらせるならば、アメリカ帝国主義侵略者の細菌戦を完全に粉砕することができるでしょう。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』7巻 

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