金 日 成

祖国解放戦争の最終的勝利をかちとるための人民軍の課題
 ―朝鮮人民軍連隊幹部短期講習会でおこなった演説―
1952年2月7日 

 昨年末から人民軍の質的強化のために指揮官短期講習会をおこなっています。

 私はきょう、講習会に参加した諸君と会った機会に、わが国の軍事・政治情勢と祖国解放戦争の最終的勝利をかちとるための人民軍の課題について述べたいと思います。

 周知のように、人民軍はいま陣地防御戦を積極的に進めるという党の方針に従い、現在の対峙線で敵を不断に掃滅弱体化させる一方、戦闘・政治訓練を強め、戦争の最終的勝利を早める万端の準備を整えています。

 アメリカ帝国主義者は、人民軍の強力な打撃を受け、深刻な軍事的・政治的危機に陥っています。連敗を重ねた彼らは、昨年の夏、やむなくわが方に停戦会談を申し入れてきました。アメリカ帝国主義は一見強力であるかのように見えても、実際はそうでありません。もし、彼らが強いなら、わが方に停戦会談を申し入れてくるはずはありません。彼らは自分らに勝算がないため、停戦会談を申し込んできたのです。

 しかし、アメリカ帝国主義は、停戦会談で強盗さながらの目的を達成するために策動する一方、新年早々から新たな軍事攻勢の準備に狂奔しています。敵は、いま兵力の大々的な増強をはかりつつ、やっきになって前線と海岸線、後方に爆撃と砲撃を加えています。

 諸君は、停戦会談に期待をかけて平和的気分にとらわれたり、緊張を緩めたりしてはなりません。

 人民軍は、時間を最大限に利用し、血でかちえた勝利をかため、これまでの経験を踏まえて祖国解放戦争の最終的勝利を達成するため万端の準備を整えるべきであります。

 何よりもまず、政治的・思想的準備を徹底的におこなわなくてはなりません。

 軍人を政治的・思想的に武装させることは、戦争勝利の決定的な保証となります。軍人が、政治的、思想的に武装すれば、いかなる逆境にもめげず、あくまで戦い勇猛さと犠牲精神を発揮することができます。

 政治的・思想的準備で重要なのは、敵に対する激しい憎悪心で軍人を武装させることです。アメリカ帝国主義侵略者の蛮行と罪状をつぶさに知らせて軍人を階級的に目覚めさせ、火のような敵がい心を植えつけなければなりません。

 軍人のあいだで、共和国北半部の先進的社会制度と南半部の反動的社会制度に対する比較教育を強めなければなりません。そうして、すべての軍人が、共和国の社会制度の優位性を明確に認識し、祖国と人民を熱烈に愛し、祖国の寸土を血をもって守るようにすべきであります。

 前線部隊では、敵の反動的欺瞞宣伝にまどわされることのないよう軍人を教育しなければなりません。敵はいま、前線地帯でビラを散布し、放送をさかんにおこなっていますが、それを傍観視してはならず、その反動性と欺瞞性を徹底的に暴露し、敵の策動に先んじて、軍人の政治教育を主動的におこなうべきであります。

 政治的・思想的準備で重要なのはまた、他人に頼らず自力で侵略者を撃退し、最後の勝利を達成する心構えをもつよう軍人を教育することです。

 兄弟諸国の人民や世界の平和愛好諸国の人民はいま、朝鮮人民の戦いに積極的な支援を寄せていますが、祖国解放戦争の主人はあくまでも朝鮮人自身であります。誰が我々に力をかしてくれようとも、人民軍は主人としての役割をまっとうしなければなりません。思想教育を強め、すべての軍人に、他人に対する依存心をすて自力でアメリカ帝国主義侵略者を撃退し、最後の勝利を達成するという高度の思想的覚悟をもたせなければなりません。

 政治的・思想的準備で重要なのはまた、軍人に勝利に対する確信をもたせることです。

 人民軍の兵器は、敵の兵器より劣っていても必勝の信念をもって戦えば、十分に勝つことができます。正義の大業のために戦う人民と軍隊が、革命闘争で勝利するのは必然的であります。

 必勝の信念をもって正義の大業のために戦う革命軍隊が、技術上優位な帝国主義侵略者に勝利するのは歴史的事実によって立証されているところです。

 かつて、抗日遊撃隊は極めて困難な状況下にありながらも、必勝の信念をもって戦ったため、ついに強大な日本帝国主義を打ち破り、祖国の解放をなし遂げました。

 ロシアの社会主義10月革命が勝利したのも、ロシアの労働者階級がレーニンの指導のもとに、資本主義は滅び社会主義は必ず勝利するという確信をもって戦ったからです。

 こんにち、人民軍はかつての抗日武装闘争当時に比べれば、極めて有利な条件のもとで戦っています。

 人民軍は近代的兵器と戦闘技術機材で武装しており、強固な後方をもっています。我々には、すべての勝利の組織者、鼓舞者としての朝鮮労働党とその正しい指導があり、党のまわりにかたく団結した人民があります。

 人民軍は、労働者、農民の利益のために戦う人民の軍隊であり、朝鮮労働党の指導を受ける党の軍隊、革命の軍隊であります。

 人民軍は、外国帝国主義の侵略から祖国を守る、正義の戦争を遂行しています。

 しかし、アメリカ帝国主義侵略軍は、少数の独占資本の利益のために他国を侵略し、略奪する反動的かつ反人民的な軍隊です。

 アメリカ帝国主義軍隊は、朝鮮を侵略し、さらには中国とソ連への侵略を企む不正義の戦争をおこなっています。

 我々は、人民民主主義諸国の人民と世界の平和愛好人民から積極的に支援されています。

 したがって、人民軍が必勝の信念をもって戦うならば、アメリカをかしらとする帝国主義武力侵略者とかいらい李承晩一味に反対する偉大な祖国解放戦争で必ず輝かしい勝利を達成することができるでしょう。

 全人民軍将兵に、この戦争の正義の性格と、我々の大業の正当性を明確に認識させ、彼らが勝利に対する確信をもって勇敢に戦うようにしなければなりません。

 次に、陣地防御戦を積極的に進めるという党の方針をひきつづき貫徹すべきであります。

 この方針の貫徹において、連隊は極めて重要な位置をしめています。連隊が戦闘任務を確実に遂行できなければ、師団の戦闘任務も円滑に遂行できず、ひいては党の戦略的方針を立派に実現することもできません。

 諸君は、帰隊すれば党の方針通り防御編制に万全を期して陣地を強固にきずき、前線と海岸線を鉄壁の要塞に強化しなければなりません。

 坑道を基本とする防御陣地をさらに多く、より強固に構築しなければなりません。坑道に依拠して戦えば、敵の各種の打撃から兵員と戦闘技術機材をしっかりと守ることができ、敵のいかなる攻撃も撃退することができます。坑道は、その戦術的利用を考慮して野戦陣地と密接に組みあわせて構築すべきであります。全防御部隊は、第一陣地の防御工事を早急に完了し、防御陣地の縦に通ずる道路に沿って奥行きのある陣地体系を形成し、戦術的に重要な高地や地点をひきつづき強化しなければなりません。山岳地帯である戦線東部では、重要な峰ごとに円形防御が可能なように陣地を構築すべきであります。

 火力体系を稠密に組織しなければなりません。狙撃兵器の火力が及ばない谷間や遮蔽地帯は砲火力と地雷で完封しなければなりません。

 防御戦闘組織を綿密におこなうべきであります。特に、区分隊の配置と任務確定、指揮組織と協同行動組織に万全を期さなければなりません。

 これとともに、防御をさらに積極化し、敵の兵力を不断に消耗、弱体化させるべきであります。陣地にたてこもり敵の攻撃をまって打撃を加えようとばかりせず、奇襲組の活動をはじめ、狙撃兵組や移動砲中隊の活動を強化し、いたるところで敵の兵員と兵器、戦闘技術機材に損失を与え、敵を疲労させ恐怖におののかせなければなりません。

 敵に不意打ちをかけて掃滅する最適の方法は奇襲攻撃であります。夜間奇襲戦を巧みにおこなえば、いかなる敵でも容易に掃滅することができます。歩兵連隊では、奇襲戦、特に、夜間に奇襲組を敵陣に潜入させて奇襲攻撃を活発に展開し、敵の火砲、戦車など戦闘技術機材や各種対象物を不断に破壊すべきであります。

 人民軍部隊では、これまでの狙撃兵組活動での成果を総括し、この活動をさらに高い段階に引き上げなければなりません。射撃が巧みで視聴覚の鋭い軍人で狙撃兵組を多く組織し、講習をあたえて戦闘方法を詳細に教えるべきです。

 移動砲中隊の活動を強めなければなりません。この活動は、少ない砲兵兵力で多くの敵を掃滅し、その行動を制圧するのに適した方法です。移動砲中隊の活動を強め、より多くの敵兵員と火力機材を掃滅すべきです。

 敵機をより多く撃墜しなければなりません。今後飛行機狩り組大会を開き、これまでの活動状況を総括し、敵の航空戦術の変化にともなう新たな戦闘方法を提示し、この運動に一大転換を起こす計画です。

 飛行機狩りで成果をおさめるためには、飛行機狩り組が1カ所に固着せずに、たえず移動しながら、各種の偽造施設物や偽造砲、偽造自動車などで敵機を誘導し撃墜すべきであります。

 山地戦と夜間戦を巧みにおこなわなければなりません。山が多いわが国での戦闘は、激烈な高地争奪戦であると言えます。それゆえ諸君は、山地戦を巧みにおこない、敵のしめている高地を一つ一つ奪取し、確実に前進すべきであります。

 陣地防御戦を積極的に進めるという党の方針を貫くうえで重要なのは、連隊長と連隊参謀長の部隊指揮能力を高め、参謀部の活動を改善することです。

 現代戦は、昔の武将が馬にまたがって軍隊を指揮した時代のそれとは異なります。現代戦は、発達した兵器と戦闘技術機材で武装した数百万の軍隊が縦横に広大な戦線で、高度の機動速度をもって戦う機械化戦であり、立体戦であります。現代戦で勝利するためには、指揮官の高度の指揮能力と参謀部の正確な活動が保障されなければなりません。指揮官は、近代的な兵器と戦闘技術機材の特徴をよく生かして巧みに運用できるばかりでなく、各軍種と兵種の部隊や区分隊間の協同行動を緻密に組織できなければなりません。

 指揮官は砲兵を巧みに運用できなければなりません。以前、一部の連隊長や大隊長は、火砲を十分に利用しなかったばかりか、それを軽視する傾向さえありました。一部の指揮官などは、火砲の役割を過小評価して、それを後方の線まで後退させる害悪行為まではたらきました。

 指揮官は、火砲をはじめ、すべての火力機材を有効に利用してより多くの敵を掃滅し、戦果を拡大する方法を深く研究しなければなりません。砲火力は分散させず、集中的に利用すべきです。分散させれば、敵に大きな打撃を加えることができません。

 特に、わが国のように山が多い状況のもとでは、各種の火砲を戦闘的特質を生かして使うのが極めて重要です。1211高地でのように、直射砲を高地に引き上げて敵の兵員を掃滅するばかりか、個別的火点や戦車を破壊し、対火砲戦もおこなわなければなりません。また、砲兵の射撃術を不断に練磨し、少ない砲弾で多数の敵を掃滅するようにすべきであります。

 連隊長が砲兵を巧みに運用するためには、山地における火砲の戦術的利用と砲射撃理論の原則を深く把握し、砲兵指揮官が任務を立派に遂行できるよう正しく指導しなければなりません。

 指揮官はまた、隣接部隊との協同行動を巧みに組織し、隣接支援を正しくおこなわなければなりません。戦況が随時変動する現代戦では、協同行動の巧みな組織と維持、責任的な隣接支援が極めて重要です。ところが一部の指揮官や参謀部では、隣接支援を軽視しているばかりか、隣接部隊が敵の攻撃を撃退する困難な戦闘をおこなっているのに、それを積極的に支援しない現象まであるとのことです。これは、革命軍隊における指揮官の戦闘姿勢ではありません。部隊間で互いに支援し救出し合って全般的戦果を拡大するようにすべきであります。

 次に、訓練組織を正しくおこない、部隊の戦闘力をたえず強めるべきであります。

 戦闘訓練は実戦に必要な事項を教えるという党の方針にそって、これまでの戦争の経験とわが国の実状、部隊の当面の戦闘任務にふさわしく進めるべきです。特に、現在の界線で防御戦と奇襲戦を巧みに展開できるよう、山地訓練と夜間訓練を強化すべきであります。敵は人民軍の夜襲をもっとも恐れています。したがって、夜間戦闘行動に慣れさせる夜間訓練に力を入れなければなりません。

これと同時に指揮官、参謀部の訓練を強化すべきであります。

 今回の講習会では平地での戦術集団演習にかぎったとのことですが、今後はわが国の実状に即応した山地帯での戦術集団演習に力を注ぐべきです。諸君は帰隊後、地形の模型をつくり戦闘の経験を踏まえて現実的な問題を一つ一つ解決し、すぐれた戦術を修得するようにすべきです。

 次に、部隊内に鉄の軍規を確立し、部隊管理を正しくおこなうべきです。

 規律は軍隊の生命であります。規律の強い軍隊は、兵器は劣悪でも技術上優位な敵を撃破することができます。こんにち、人民軍が世界「最強」を誇るアメリカ帝国主義侵略軍を撃破している重要な要因の一つは、人民軍に鉄の規律が確立されていることにあります。

 指揮官はすべての軍人が軍規を自覚的に守り、指揮官の命令を必ず実行するよう、日ごろから教育すべきであります。

 指揮官は、軍人を愛しいたわり、部隊管理を正しくおこなわなければなりません。一部の指揮官はいま、軍人にあたたかく接し、親切に諭そうとせず、叱責や号令によって規律を立てようとしていますが、このような方法では規律を立てることができません。罵倒や号令は、資本主義国の軍隊のやり方です。人民軍ではこのような強圧的方法は許されません。

 部隊が強力な戦闘力をもつ隊伍となるためには、指揮官と兵士大衆が思想的、意志的にかたく団結しなければなりません。

 諸君は、労働者、農民のすぐれた子弟である多数の兵士をあずかる指揮官であります。それゆえ、軍人を革命の同志としてあたたかく接し、父母の心情で愛しいたわり、常に彼らの悩みごとを知り、適時に解決してやるべきです。

 指揮官は、兵士の日常生活に深い関心を払うべきです。前線では区分隊単位で生活をしているので、指揮官がその気にさえなれば兵士の面倒をよく見てやることができます。

 指揮官は熾烈な戦闘をおこなっている高地の軍人たちに、いつも炊きたてのご飯とスープを供給するように努めるべきです。

 また、前線で軍人が常に新聞や雑誌などの出版物を読み、楽天的に生活するようにしなければなりません。戦闘では勇敢に戦い、娯楽時間には愉快に楽しみ、休息は楽しく過ごすのが人民軍の生活気風です。

 指揮官は戦闘でも日常生活でも、常に率先垂範しなければなりません。抗日遊撃隊の指揮官は、戦闘と生活で常に率先垂範して隊員を導きました。彼らは、戦闘のときには先頭に立って勇敢に戦い、行軍の後の宿営では真っ先に木を伐ってテントを張り、隊員とともに衛兵勤務にも立ちました。抗日遊撃隊では上下間にいささかのへだたりもありませんでした。人民軍の指揮官は、抗日遊撃隊の指揮官のように、すべての面で率先垂範すべきであります。

 最後に、指揮官はこれまでの戦争経験と近代的軍事科学を深く研究し、それを戦闘に正しく適用すべきです。

 人民軍は、攻撃戦や後退、陣地防御戦や海岸防御戦、奇襲戦などいろいろな作戦や戦闘を経験しました。この戦争経験は、世界「最強」を誇るアメリカ帝国主義侵略軍との戦いでえた現代戦の生きた経験であり、わが国の軍事科学発展の貴重な基礎となるものです。

 祖国解放戦争で創造された戦法や戦闘経験を深く研究しなければなりません。祖国解放戦争の貴重な経験を研究し、わが国の軍事科学の発展に役立てるため、すべての指揮官は自分の戦闘経験を総参謀部に書面で提出すべきであります。

 私は、諸君が戦争勝利の日まで健康で立派に戦うよう願うものです。
出典:サイト「わが民族同士」 参照:『金日成著作集』7巻 

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