金 日 成

現段階における地方政権機関の任務と役割
 道・市・郡人民委員会委員長および党幹部連席会議でおこなった演説
−1952年2月1日− 


 みなさん!

 多くの人が、その発言のなかで戦時下における地方政権機関の実際の活動について述べました。発言にもあったように、地方政権機関の活動には多くの欠陥があります。それで私は、現段階における地方政権機関の任務と役割にかんする基本問題について、いま一度、強調する必要があると思います。


 1 人民政権の性格と現段階におけるその基本任務

 みなさん!

 中央政権機関である共和国政府と地方政権機関である各級人民委貢会は、新しい形態の人民政権機関であります。

 我が国が日本帝国主義の植民地支配から解放されてから、朝鮮人民は、はじめて自己の政権をもちました。この政権は、朝鮮人民の絶対多数をしめる労働者、農民、勤労インテリおよび小ブルジョアジーをふくむ広範な人民が代表を選んで組織した政権であります。

 この政権機関の特徴は、人民自身の手によって組織され、人民の利益を擁護し、人民の自由と幸福のためにたたかう政権であるということです。この政権機関は、人民と密接に結びついており、人民に依拠して活動し人民大衆の支持を受けています。人民政権機関は、広範を人民大衆をその活動に参加させ、人民大衆のなかに深く根をおろして活動する政権機関であります。

 人民政権は、帝国主義者の手先としてその勢力を植えつける地主、買弁資本家および親日派、親米派、民族反逆者にたいしては独裁を実施し、人民自身にたいしては民主主義を実施します。

 人民政権は、勤労大衆の前衛部隊である朝鮮労働党の指導のもとに、労働者階級をはじめとする全人民と祖国戦線傘下のすべての愛国的民主勢力をそのまわりに結集して、朝鮮人民の極悪な敵である民族反逆者、親日派、親米派、買弁資本家、地主を代表する李承晩反動派および外来侵略者との全民族的な闘争を展開し、朝鮮の完全な独立と国の民主的発展のために、自立的民族経済の建設と人民生活の向上のためにたたかうことを現段階における基本任務としています。

 周知のように、労働者階級による政権の掌握はプロレタリア革命の第一歩にすぎません。スターリンは、労働者階級が政権を握ったのち、プロレタリアート独裁は自己に課された次のような3つの主要任務を遂行しなければならないと述べています。

 「第1に、革命によって打ち倒され、収奪された地主と資本家の反抗を打ち破り、資本の権力を復活させようとするかれらのあらゆる企てを根だやしにすることであり、第2に、すべての勤労者をプロレタリアートのまわりに結集するように、建設を組織し、かつ、この活動を階級の廃止と絶滅を準備する方向でおこなうことであり、第3に、外敵とたたかうために、帝国主義とたたかうために、革命を武装し、革命の軍隊を組織することである」

 我が党と人民政権は、スターリンが指摘したこの原則を終始一貫指針としてきました。

 朝鮮人民は、政権をみずからの手に掌握した後、人民の敵である親日派、親米派、民族反逆者、買弁資本家および地主が再び権力を復活させようとする企てを粉砕するためにたえずたたかってきました。人民政権は、党の指導のもとに北半部で民主改革を実施し、経済、文化の建設をおし進めて、祖国の統一独立と民主的発展を保障する政治的・経済的力量を準備するとともに、外来侵略者と国内反動の武装勢力を粉砕する人民軍を組織し、それを強化するために努力してきました。

 しかし、国土が分断され、民族が二分されている状況のもとで、我々は国のすべての資源と全人民の力を民主建設に動員することができませんでした。さらに1950年6月25日、敵の不意の武力侵略によって、我が国の平和的建設は中断され、朝鮮人民は祖国の独立と自由を守る祖国解放戦争に入ったのであります。

 このように、解放後の我が国の情勢は複雑をきわめ、平和的建設の期間は極めて短かったにもかかわらず、この期間に我々は北半部に強力な民主基地を創設し、それを強固にし、防衛する政治的・経済的・軍事的力量を蓄積しました。

 朝鮮人民は朝鮮労働党の指導のもとに、すでに北朝鮮臨時人民委員会のときから土地改革、産業国有化、労働法令、男女平等権法令など、歴史的意義をもつ民主改革を実施し、民主主義制度を強固にする大きな事業をなし遂げました。人民政権は、民族経済と民族文化を速やかに復興発展させ、人民大衆の物質・文化生活を向上させ、各部門に必要な民族幹部を大量に養成するなど経済・文化建設を遂行し、人民軍をこんにちのような立派に戦える軍隊に育成し、人民を先進的な思想で教育しました。

 もしも、このような準備がなかったならば、我々は敵の進攻を挫折させて反撃に移り、敵を洛東(ラクトン)江の線まで撃退することはできなかったであろうし、また、こんにちのように米英帝国主義武力侵略者と長期にわたって戦うこともできなかったはずです。

 これらの成果は、朝鮮労働党の指導のもとに全朝鮮人民がかちとった偉大な勝利であり、人民政権が進めてきた緊張した闘争の結果であります。これらの成果は、朝鮮人民がみずからうちたてた新しい形態の政権機関が、我が国の実情に適したすぐれた政権形態であることを示しています。


 2 祖国解放戦争と人民政権

 人民政権は、平和的建設の時期にその優位性を示したばかりでなく、戦時にもその優位性を示しました。祖国解放戦争は、この政権こそ我が国の独立と自由を外来侵略者の侵害から守り、朝鮮人民を幸福へ導く唯一の政権であることを示しました。

 朝鮮人民は、自己の政権と人民軍を強化したがゆえに、アメリカ帝国主義着の不意の侵略にもあわてることなく、国内のすべての事業を戦時体制にきりかえ、すべてを戦争勝利のために動員することができました。そして朝鮮人民は、党と政権の指導のもとに、19カ月間も強大な敵と戦って、こんにちに見るような勝利をおさめることができたのであります。

 この戦争で、朝鮮人民は敵に大きな打撃を与え、敵をして朝鮮人民を征服することは不可能であることを思い知らせました。

 敵は、戦車、航空機など優勢な軍事技術をもって、一撃のもとに我が国と人民を征服できるものと考えました。しかし、こんにちの朝鮮人民は李朝封建時代の朝鮮人民ではなく、当時のように腐敗した政権のもとに生きる人民ではありません。こんにちの朝鮮人民は、マルクス・レーニン主義思想で武装した朝鮮労働党によって導かれる人民であり、自己の手に権力を握った人民であり、祖国の自由と独立のためには最後の血の一滴までささげて戦う覚悟のできた、解放された人民であります。

 こんにち、朝鮮人民がくりひろげているアメリカ帝国主義略奪者との戦争は、帝国主義の侵略から我が国の独立と自由を守るための祖国解放戦争であるばかりでなく、全世界の平和と安全を守る戦争であります。アメリカ帝国主義者とその手先一味の武力侵攻にたいする朝鮮人民の英雄的な闘争は、東方の植民地被抑圧民族の解放運動の旗印となっています。それゆえ、全世界の進歩的な人民が、朝鮮人民の正義の闘争を支持しており、朝鮮戦争は全世界の世論と関心の的となっているのであります。

 人民政権は、戦争の過程で厳しい試練を克服し、いちだんと強化されました。

 朝鮮人民は、自己の政権であるこの新しい形態の政権を限りなく愛しています。それは、この政権こそ朝鮮人民の政権であり、この政権こそ帝国主義者の侵害から我が国の独立と自由を守り、祖国解放戦争を勝利に導くことができ、またこの政権こそ戦争で勝利をおさめた後、人民に幸福な生活をもたらし、我が国を民主主義と社会主義の道へ進ませることができることを、かれらが確信しているからであります。

 現段階における我々の最も重要な任務は、敵を撃滅して我が国の独立と自由を守り、朝鮮民主主義人民共和国を守ることであります。アメリカ帝国主義者は、いまなお全朝鮮を植民地化する野望をすてず、戦争を拡大しようと企てています。敵は、朝鮮人民の不倶戴天の敵、日本帝国主義を再武装させており、朝鮮を侵略の足がかりにしてアジアを征服し、新しい世界戦争を引き起こそうと策しています。したがって、祖国解放戦争における我々の勝利は朝鮮人民の勝利であるばかりでなく、平和を願うアジアと全世界人民の勝利となるのであります。

 我々はこの正義の戦いで勝利をおさめており、また必ず勝利するでありましょう。

 一部の人は、我々が強大なアメリカ帝国主義者と戦って勝てるだろうか、と言っています。反逆者・李承晩一味の支配下にあった開豊(ケプン)、延白(ヨンペク)、甕津(オンジン)の一部の里人民委員会の幹部は、「共和国政府は朝鮮人民のための政府であり、人民政権は朝鮮人民のための政権だ。共和国政府の施策は朝鮮人民のための施策だ。あなたたちの言っていることや実施していることはみな正しい。だが、里人民委員会の仕事をしているうちにアメリカ人がやって来たら、私たちはみな殺されてしまう」と言っています。かれらは、「朝鮮がアメリカと戦ってどうして勝てるか。朝鮮は日本にもかなわなかったのに、日本よりも強大をアメリカと戦ってどうして勝てるか」と言います。

 しかし、我々は勝てます。19カ月間の戦争の過程がこれをはっきりと示しています。アメリカ帝国主義者は、あらゆる手段を尽くしたが、朝鮮人民を征服することはできませんでした。

 もちろん、我々が孤立して単独で戦うのなら話は別です。我々の時代は、エルベ川から太平洋にいたるまで、社会主義・民主主義国家の旗がひるがえっている時代であります。

 我々は、ひとりで戦っているのではありません。中国人民の派遣した中国人民志願軍が我々とともに戦っています。我々の側には、世界で最も強大なソ連を先頭に人民民主主義諸国の人民と全世界の自由愛好人民が立っており、東方の植民地被抑圧人民も我々を支持しています。それゆえ、我々の力は敵の力よりも強大であります。

 戦略上から言っても、朝鮮人民軍と中国人民志願軍は、自国の領土と自国の玄関先で戦っており、強固な後方からはなれずに戦っています。しかし、アメリカ帝国主義侵略軍は後方から数千里も遠くはなれて戦っています。したがって、この面でも我々がはるかに有利です。

 軍人の精神状態を見ましょう。アメリカ兵は金で雇われて朝鮮戦線にきており、イギリスやその他の国の兵隊は強制的にかりだされてきたのです。かれらは不正義の侵略戦争をおこなっているため、正当な戦争目的をもっていません。かれらは日がたつにつれて、誰がゆえに、そして誰のために朝鮮戦線で犬死にしなければならないのかを知るようになります。したがって、かれらの士気は日に日に衰えています。

 しかし、朝鮮人民軍と中国人民志願軍は、これとは正反対であります。かれらは、祖国の独立と自由のため、人民のため、革命のために正義の戦争をしていることを知っているため決死の覚悟で戦っています。

 それでは、我々が敵にくらべて劣っているのはなんでしょうか。我々は敵より、軍事の面で技術上の準備が劣っています。しかし、技術はもって生まれたものではありません。それは、いくらでも身につけることができます。我々の軍事技術は、日一日と発達し強化されています。時間は我々に有利に作用しています。時間がたてばたつほど、我が軍は技術的に武装を強化してさらに強力な軍隊となり、ついには最後の勝利を達成するでありましょう。

 勝利を達成するために、国内のすべての力をより効果的に動員し、すべての仕事を立派になし遂げ、人民政権機関である人民委員会をいちだんと強化しなければなりません。
 敵との長期にわたる戦いで勝利をおさめるために、人民政権機関はなにをなすべきでしょうか。

 人民政権機関は、その役割を高めるべきであり、人民との結びつきを緊密にし、かれらを政権のまわりにかたく団結させ、すべての力を戦争勝利のために動員すべきであり、人民がすべての仕事で積極性を発揮するよう、かれらの政治意識を高めなければなりません。


 3 人民政権を強化するための今後の任務

 人民政権を強化するためには、次のような任務を遂行すべきであります。

 第1に、日本帝国主義思想および古い封建思想の残りかすとたたかい、そのあらわれである官僚主義的な活動作風とたたかわなければなりません。

 日本帝国主義思想の残りかすは、各方面にわたって我々の仕事に大きな弊害をまねいています。もちろん、この古い思想の残りかすを根絶する問題は、短期間に解決できることではありません。長い期間をかけてねばりづよくたたかわなければなりません。

 日本帝国主義思想の残りかすとたたかうためには、大衆にたいする政治教育活動をいっそう強化し、広範な人民大衆に政府の施策をたえず解説し、浸透させる活動を強力に展開しなければなりません。

 我々にはなぜ、特に、政権の運営において日本帝国主義思想の残りかすが多くあらわれるのでしょうか。

 朝鮮人民は、半世紀近く日本帝国主義の植民地奴隷となっていたため自己の政権をもつことができず、したがって、政権運営の経験がありません。政権機関に参与した人がいるとすれば、それはごく少数の親日派であり、まれには、年とった人のなかに昔の李朝封建政権に参与した人がごく少数いるにすぎません。

 活動家の絶対多数が見たり聞いたりしたのは日本のものであります。日本帝国主義者は、官僚的・警察的方法で朝鮮人民を支配しました。こうして、日本帝国主義の統治機関に服務した人はいうまでもなく、そうでない人たちも自然に日本帝国主義思想の影響を受けるようになりました。

 人民政権機関で働いている活動家の一部には、いまだに日本帝国主義思想の残りかすをすてきっていない人がいます。かれらは、自分が人民のなかから選出された人民の代表であることを忘れ、日本帝国主義支配当時の官吏のように行動し、人民をどなりつけています。こういう活動家は、人民政権機関の活動家が決して官吏なのではなく、人民のために奉仕する人民の忠僕であることを知らないのです。かれらは、たとえ人民のなかから生まれて人民によって選出されたとはいえ、いったん選出されるとすぐそれを忘れてしまいます。そして、きのうまで労働者や農民の言葉で話し、謙虚であった人が、人民の代表に選出されると言葉づかいから荒くなり、官僚風を吹かせ高慢になります。つまり、人民に奉仕する人民政権の幹部ではなく、官吏になってしまうのです。

 ある農村で、両人民委員長や里人民委員長の土地を村の人が耕してやるとか、かれらの誕生日や祝い事に、村人たちが金を集めてやるとか、かれらがいろいろな口実で人民に税以外の負担をさせるとか、また、黄海(ホワンヘ)道のある郡人民委員長が勲章を授かったとき、牛をほふって祝宴をはり、後でその費用を人民に負担させるなど、これら一連の事実は、一部の活動家が官吏化しつつあることを示しています。

 多くの活動家は、税金の徴収でも日本帝国主義の官吏のように行動し、甚だしくは掛けで国家買付けをするというような不当なことをしています。一部の活動家は、現物税をとるのも日本帝国主義支配当時の供出のようにおこなっており、人民の米びつやたんすの中まで平気でしらべています。

 こうしたふるまいは、日本帝国主義支配当時の面長、郡守、巡査のふるまいとなんの変わりがあるでしょうか。変わるところは何もありません。変わったところがあるとすれば、それは一方が人民委員会の委員長であり、他方が日本帝国主義の官吏だという点だけであって、かれらの官僚的なふるまいはどちらも同じであります。

 人民政権機関の活動家のこのような官僚的なふるまいを根絶しなければ、人民との結びつきを強化することはできず、どんなに立派な決定や法令も効力をあらわすことはできません。我々は官吏ではなく、人民によって選出された人民の忠僕であることを肝に銘じるべきであります。

 我々は極端な官僚的行動ばかりでなく、あらゆる活動にあらわれるさまざまな官僚主義的作風ともたたかわなければなりません。

 一部の幹部は、人民の声に耳を傾け、その要求を解決してやり、解説と説得の方法で活動するのではなく、人民に命令し、どなりつけ、威圧するので人民から浮き上がっています。

 こういう官僚主義者は、大衆がなにを求めているかを知ろうともせず、自分のおこなっていることはなんでも正しいと主張し、他人の忠告や大衆の声を聞こうともしません。こういう人は、地方に出かけても人民の声には耳を傾けず、へつらい者の言うことだけを聞き、その偽りの報告に満足し、下部の人たちがなにか言えば一言目にはどなりつけ、仕事のうえでの意見を上部に反映させる機会を与えません。そのため下部では、都合のよいことだけを上部に報告し、都合の悪いことは上部や他の人に知れるのを恐れて、できるだけ隠そうとします。

 このようなことは、上部の者が、下部の者を頭から抑えつけ、また下部の困難や障害がどこにあるかを詳しく研究して難問題を解決してやろうとせず、かれもに仕事のできる条件をつくってやって、仕事で成果をあげられるように援助しないところから生まれるものです。

 例えば、秋耕が終わっていないのに100%すんだと、里では面に、面では郡に、郡では道に報告します。道人民委員長はこれを知っていながら、またそのとおり中央へ報告します。

 現物税の問題について見ましょう。一部の地方で現物税の賦課に間違いがあると訴えています。その原因はどこにあるのでしょうか。

 現物税の賦課に誤りがあるのは、春のまきつけのときから間違いがあったからです。まきつけ面積を水増しして報告し、上部ではまた実状を調べもせずに、その報告にもとづいて現物税を課します。

 郡人民委員長は、正確な判定の結果にもとづいて現物税を賦課するのではなく、収穫が少ないときでも、上部の顔色をうかがって機嫌がよさそうだと、困ると一言いってみるが、そうでないときには二つ返事でできると答え、結局は農民に過重な量を均一に割り当てて賦課します。そのため、あるところでは多くとり、あるところでは少なくとるといったように、地方によっては正確におこなわれていません。

 一部の地方では、現物税を受け取るとき、実状を考慮せずに納入期日ばかり強調して、徴収率をあげようとしたため、未熟な穀物を納入させて農民や国家に大きな損失を与えています。また、水害のため現物税を全然納められないのに、数量をみたすため、米がなければ買ってでも出せと督促した事実もあります。

 これらすべてのことは、活動家たちに甚だしい官僚主義的活動作風があることを物語っています。

 もし、このような官僚主義的活動方法を改めないならば、必ず人民から浮き上がり、我々の正当な事業を破綻させることにもなりかねません。そして、我々は農民に土地を与え、立派な現物税制を実施しながらも農民の不満をかい、かれらから浮き上がってしまうでしょう。

 政権機関の活動家たちの仕事にはこのような重大な欠陥があるにもかかわらず、人民は我が党と政府を信頼しています。農民は、現物税を割当て式に、不正確に課したことについて「戦争だから米がたくさん必要なのだろう」といって、なにも言わずに言われたとおりの現物税を国に納めています。もし我々が、農民がなにも言わないからといって、これから先もこのような官僚主義的活動方法を改めないならば、それは我々の事業に大きな弊害を及ぼすことになり、広範な人民大衆のなかで人民政権の権威を失墜させることになるでしょう。

 官僚主義は、綿布生産運動にもあらわれました。綿布生産運動は、軍隊の需要をみたし、戦災民を救済するための立派な愛国的運動であります。しかし、この愛国的運動を官僚主義者たちが妨害しています。

 中央では綿布の生産期日を3か月と決定したのに、期限前に完納したという功績をあげるため、道では中央が指定した期日を20日間、郡ではまた道で指定した期日を20日間、面では郡の指定期日を20日間、里では面の指定期日を20日間ずつ短縮したので、結局、実際に生産する人民には、90日の指定期日が10日しか残りませんでした。人民は精一杯努力しても、10日間ではとうてい計画を実行することができません。しかし、督促が厳しいので、ある農民はやむを得ず、息子や娘の婚礼の仕度にとっておいた綿布を納め、それもない農民は市場で高い値段で買ってきて納めることになります。これでは、人民が不満をいだくのは当然です。

 これは、大衆はどうなろうと自分さえ責任をのがれればすむという行為であり、また大衆を犠牲にして自分の功名をあげようとする行為であります。綿布生産運動は立派な運動ですが、それを官僚主義的におこなったため、結局悪い影響を与えることになりました。

 このように、一部の政権機関の活動家が官僚主義的に仕事をするので、農民の不満をかうようになるのです。ところが、農民のなかから不満が出ると、ある人は「それは農民が立ち後れているからであって、なにも気にする必要はない」と言います。これは正しくありません。これは、ことを破綻に導く言動であります。我々は、人民の要求と世論を注意深く研究、分析して、対策を講じなければなりません。

 官僚主義者はまた、仕事を進めるとき、下部の人や積極分子を広く参加させずに自分ひとりで担当し、独断でやろうとして仕事を失敗させています。我々は、このように仕事を独断でおこなう官僚主義的作風とたたかわなければなりません。多くの政権機関は、下部の意見に耳を傾けず、下部の実状をよく知らないために、往々にして地方の実状にあわない決定を採択し、また、立派な決定を採択したにしても、それを実行するときに人民大衆の創意性を広く発揮させようとせず、官僚主義的方式でおこなうため、結局仕事で失敗をまねくのであります。

 秋耕の例をあげてみましょう。秋耕はもちろんよいことであり、収穫を高めるために必要なことです。しかし、このようなよいことでも農民の利害関係を考慮せず、督促ばかりしているので、農民はいい加減に土を掘り返して秋耕を終えたと上部に報告しています。これらはみな、政権機関の活動家が下部の実状を知らず、人民の意見を聞かず、功名をあげることばかり考えて形式的に仕事をする官僚主義的作風の結果であります。

 日本帝国主義思想の残りかすはまた、一部の活動家が大衆と一体となって活動せず、官僚や貴族のように行動しているところにもあらわれています。道路復旧工事などの勤労動員に、幹部たちは全然参加せず、人民だけを動員しています。そのような活動家は、自分も昨日までは普通の人であったの.に、遠出されるか登用されて人民委員長や分駐所長になったからといって、人民とともに働くと人格がさがるかのように考えているのです。これはなんと恥ずべきことであり、あきれたことでしょう。困難なとき、人民とともに働き、人民と呼吸をともにし、人民に解説してやるのがどうしていけないことなのでしょうか。人民とともに働くこと以上に光栄なことがどこにあるでしょうか。しかし一部の活動家は、なにかの「長」のポストにでもつくと人民を忘れてしまいます。このような傾向とたたかわなければなりません。

 人民政権機関の活動家は、人民に依拠して活動し、人民の利益を尊重し、人民をどなりつけずかれらを説得、教育し、常に人民から学び、誠心誠意人民のために奉仕する人民の活動家にならなければなりません。

 我々が政権機関の活動上の欠陥を暴露して是正させ、一部の活動家に残っている日本帝国主義思想の影響と官僚主義的活動作風をなくすということは、決して税の収納をやめるとか、買付け事業をやめるようにということではありません。それはまた、農民の小ブルジョア思想とたたかうのをやめよという意味でもありません。

 農民のなかには先進的な農民もいれば、国家の利益をかえりみず自分の暮らしだけを考える立ち後れた農民もいます。我々は全力を尽くして勤労農民を支持する一方、他人の困難に乗じて自分だけよくなろうとする貪欲な、立ち後れた農民とはたたかわなければなりません。

 我々は、国家と人民の利益のために正しい政策をたて、それを正しく実行しなければなりません。税を国家で決めたとおり正確に収納し、必要な買付けは当然おこなわなければなりません。掛けの買付けなどは絶対におこなってはなりません。

 収穫高をごまかし、現物税を優良穀物でおさめようとせず、国家への納税も適時におこなわず、戦時の困難な条件を利用して投機をこととする一部の農民の立ち後れた思想とはたたかわなければなりません。

 一方で広範な人民大衆にたいする思想教育活動と党の政治活動を強めるとともに、他方では戦時の国家規律を強化して、納税をおこたり国家を欺き、投機をこととするような傾向にたいしては革命的法律を適用しなければなりません。

 第2に、増産と節約で祖国解放戦争の勝利を保障しなければなりません。

 戦争はつづいており、敵は我が国土から簡単には撤退しようとはしません。我々は、敵が侵略行動をやめるまで戦いつづけなければなりません。

 工場では、戦時の困難な状況下においても生産を円滑に保障し、いっそう増大させなければなりません。そして、軍需品や生活必需品をより多く生産し、前線と後方の需要をみたさなければなりません。

 農民は、食糧をさらに増産しなければなりません。ひとうねの土地でも遊ばせることなく耕作して、より多くの食糧と原料を生産し、牧畜業を発展させて食肉の需要をみたすと同時に、役畜の問題も解決しなければなりません。

 すべての力を増産闘争に動員して前線の需要をみたし、人民生活を安定させるべきであります。

 戦争に必要なもので国内で生産できるものは、すべて自力で生産するようにすべきです。自力で生産できるものを生産せず、外国の援助だけにたよろうとするのは正しくありません。

 昼夜兼行で生産をつづけられるように仕事を組織しなければなりません。1952年度の生産計画は、けっして容易に実行できる計画ではありません。しかしながら、戦時下で生産計画を実行できないならば、それは祖国と人民にたいする大きな罪悪であり、前線で血を流して戦っている人民軍将兵や志願軍将兵に面目が立ちません。あらゆる手段と方法を尽くして今年度の生産計画を完遂、または超過完遂しなければなりません。

 戦争がつづく状況のもとでも、各方面で節約して生産により多くの投資をおこない、商品価格を適切に調節して人民生活を安定させ、前線と後方により多くの軍需品と物資を供給して戦争の勝利を保障すべきであります。

 そのために、広範な人民大衆の積極性と創意性を高度に発揮させ、かれらを戦時増産運動と節約運動に決起させなければなりません。

 こんにち、各級人民委員会には次のような経済的任務が提起されています。

 1 農業を正しく指導し、農民の愛国的熱意をさらに高め、かれらが相互協力と自力更生の方法で困難と障害を克服し、全力を尽くして、1952年度の食糧増産計画を超過遂行するようにすべきです。

 2 労働者、手工業者および合作社員たちが軍需物資や生活必需品をより多く生産するように導き、商品流通を手際よく組織して人民生活の安定をはかるべきであります。

 3 労働者、事務員の生活を保障するために賃金ばかり引き上げようとする傾向を排して、かれらの生活上の.需要を現物で供給する対策を立てなければなりません。

 そのためには、副業経営と生産合作社を組織し、労働者、事務員の家族を生産に引き入れる運動を広く展開すべきであります。

 4 長期戦を戦いぬくためには、食糧や物資の節約を厳密におこない、その分配を正しくおこなわなければなりません。

 機構の定員を最小限に縮小し、非生産的労働力を減らして多くの人員を生産に参加させなければなりません。いま、我が国には非生産的労働力が多すぎます。工場、企業所の破壊によって生産が減ったにもかかわらず、生産的労働力と非生産的労働力の数は軍隊と内務機関を除いても、戦前より7万名近く増えています。これは、幹部たちが戦時に事務機関を簡素化したのではなく、それを必要以上に拡大し、非生産的労働力を平和期よりさらに増やしたことを示します。戦時下に、このようなことは許されません。それゆえ内閣は、国家行政事務機関を簡素化して、余裕労働力を農村に送り、農業生産に従事させなければなりません。

 不正配給を徹底的に取り締まり、食糧や物資の配給を正確におこなうべきであります。そのために、食糧行政機関および物資配給機関には、政治的に信頼できる、計算と統計に明るい人を配置すべきであります。

 物資と食糧の消費を厳格に統制しなければなりません。国家の物資を浪費、横領する行為との大衆的闘争をくりひろげるべきであります。

 5 財政規律を強化しなければなりません。

 平壌市党活動者会議以後、財政規律を強化する運動が多少展開されましたが、いまでは問題がすべて解決されたかのようにまた静まりかえっています。この運動は、いまだ全人民のあいだで、我が党の全党員のあいだで、そして、幹部と国家機関の働き手、軍人のあいだで広く展開されていません。財政規律を強化する運動を全党的・全人民的運動として展開しなければなりません。

 我々は、すでに19カ月間も平和的建設ができなかったため、国家の収入が平和期に比べて非常に減少しました。敵の爆撃や蛮行によって多くの工場が破壊され、交通運輸が順調でない状況のもとで、生産と収入は減り、支出と消費は著しく増えています。

 ところが一部の人は、このような重大な状況を考慮せず、平和期と同じ生活条件をそのまま維持しようとする利己的な行動をとっています。政権機関の働き手が困難にうちかてず思想的に腐敗し、悪徳商人と結託して商売をし、国家の物資を横領して売りはらい、国家の財産で宴会を設けて上部にへつらったり、個人に贈り物をしたり、不必要な事務用品や施設をととのえるために国家の財産を浪費するなど、不正行為や財政規律違反行為がいろいろとあらわれています。このように国家の財産を横領し、浪費する不正行為とは容赦なくたたかわなければなりません。

 ある人民委員会では、国家の財政規律を強化せよというと、国家の財産を節約するという口実のもとに、人民に少なからぬ税以外の負担をかけています。これは、さらにゆゆしい問題です。

 財政規律を強化することは、すなわち党性の強化を意味します。戦時の困難な状況のもとで、わずかの金でも節約してたたかう人こそ、心から党のため、国家と人民のためにたたかう党性の強い人であります。

 財政規律の違反や国家財産の浪費とのたたかいは、日本帝国主義思想の残りかすと資本主義的影響を一掃するたたかいであることを知るべきです。古い日本帝国主義思想の残りかすを一掃し、財政規律を強めることなしには、戦争で勝利することも、富強な民主主義独立国家を建設することもできません。

 それゆえ我々は、全党が奮起して日本帝国主義支配の所産である横領、窃取、浪費、利己主義など、あらゆる不正行為と容赦なくたたかい、国家の財政規律を強化しなければなりません。

 第3に、人民政権機関の働き手は、行政活動を正しく指導しなければなりません。

 1 人民政権機関の活動を正しく指導するには、なによりもまず、すべての仕事を計画的に組織し、幹部の責任感を高めるべきであります。

 党および政権機関の働き手は、すべての仕事に高度の責任感をもってのぞみ、それを深く研究し、詳しく分析したうえで、その仕事を実行するための正確な計画を立てなければなりません。

 計画を立てた後は、またその計画を実行するための手配が必要です。

 計画を立て、それを実行するための手配をおこなった後にはまた、実行にたいする点検を組織することが必要です。点検は、点検のための点検であってはならず、欠陥の是正を助けるためのものとならなければなりません。点検は、下部の者がするのではなく、責任幹部が直接おこなうべきであります。

 どんな仕事でも、それを遂行した後か、あるいは遂行過程での総括が必要です。そして総括で、えた経験をその後の活動に生かさなければなりません。

 それと同時に、すべての仕事を一般的かつ一律に指導すべきではなく、分析的に、具体的に指導しなければなりません。

 2 市・郡人民委員会は、活動の重点を里人民委員会におくべきであります。

 里人民委員会は、直接人民を対象として活動する末端の政権機関であります。それゆえ、市・郡人民委員会が里人民委員会の活動に中心をおくべきだというのは、活動の中心を農村と工場におかなければならないことを意味します。大衆は、市・郡人民委員会の事務室にいるのではなく、農村や工場にいます。大衆からはなれた人民委員会の活動はなんの成果もあげられず、役所仕事になってしまうでしょう。

 現在、里人民委員会の活動水準は、非常に低い状態にあります。それゆえ、市・郡・両人民委員会の働き手は、里人民委員会に出向き直接かれらに実務的な援助を与え、仕事をどう組織し、大衆とどのようにつながりをもち、里人民委員会の活動に大衆をどのように参加させるべきかについて教えなければなりません。また、里人民委員会の幹部に政府の決定や法令を解説して、それにたいする正しい認識をもたせ、正確に実行するようにすべきであります。

 里人民委員会の仕事が順調にゆけばすべての仕事が順調にゆき、里人民委員会の仕事が順調にいかなければすべての仕事が順調にいかない、ということを知るべきであります。

 3 仕事は独断でおこなうべきでなく、集団的に処理すべきであります。仕事をひとりで受け持って失敗するようなことをせずに、多くの人に任務を分担し、各人がそれぞれの仕事で創意を発揮するように組織し、励ますべきです。そうすれば成果をおさめることができます。

 だからといって、人民委員会の委員長が下部の働き手に任務を分担して、自分はなにもしなくてもよいというのでは決してありません。「自分は偉いのだから仕事はしなくてもいい」とか、「こんな問題は下部の者がすることであって、委員長は知らなくてもかまわない」というのは誤りです。そういう立ち後れた思想とはたたかわなければなりません。ある人が言うには、委員長はつとまっても部長はつとまらないとのことです。だとすれば、委員長はなにをする人なのでしょうか。星回りがよくて委員長になれたのではありません。仕事をもっと多く、もっと立派におこない、仕事を組織し指導してもらうために委員長にしたのです。

 こんにち、多くの人民委員会委員長は下部の事情をよく知りません。「長」になると、まずもったいぶろうとします。なにか聞かれると、そんなことは課長の持ち分で、自分は知らないと言います。そういう人民委員長は、いつも課長をつれて歩かなくてはならないでしょう。「長」はもったいぶるための「長」ではなく、仕事をするための「長」です。

 仕事を組織し指導するには、まずその仕事をよく知るべきであり、もし知らなければ恥ずかしがらずに学ぶべきであり、熱心に研究すべきです。

 みなさんは、仕事を綿密に組織することも、具体的に指導することもでき、また仕事をおこなう過程で大衆を奮い立たせることもできる幹部となり、すべての行動で人々の手本とならなければなりません。

 4 幹部を正しく配置し、正しく登用できるようにならなければなりません。

 幹部をよく理解しないで登用し、みだりに異動させるようなことがあってはなりません。幹部をたえず理解し、立派に育てることは、とりもなおさず人民委員会を強化する仕事であることを知るべきです。

 5 各級人民委員会の活動家の政治理論水準を高めるために努力しなければなりません。

 すべての政治活動家は、党の政治路線と政府の政策を正しく認識し、それを大衆のなかに深く浸透させ、党と人民のために献身的にたたかう闘士とならなければなりません。政治活動家が我々の活動の正しさとその勝利にたいする確信をもち、前途を見通して仕事を組織し指導するためには、自分自身をマルクス.レーニン主義の世界観で武装しなければなりません。

 これらすべての課題をなし遂げることによって、人民政権機関の機能と役割を高め、全人民の力を戦争の勝利に奮起させなければなりません。

出典:『金日成著作集』7巻


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