金 日 成

1211高地を死守しよう
 朝鮮人民軍第256軍部隊の指揮官におこなった談話
 −1951年9月23日−


 私はきょう、1211高地の勇士たちが元気で縦横無尽に敵を撃滅している姿を見て、うれしくもあり、力がわきます。

 諸君は私が危険な最前線に来たことを心配していますが、兵士たちの戦っているところへ、私が来ていけないということはありえません。兵士たちが戦っているところなら、どんなに遠く危険なところでも行くのが当然です。

 抗日武装闘争の時期以来、常に強調していることですが、戦いに勝利するためにはなによりも、指揮官が常に敵の企図を正確に見抜き、敵を掃滅する万端の準備をととのえていなければなりません。

 アメリカ帝国主義者が鳴物入りで宣伝した「夏季攻勢」は挫折しました。かれらは「夏季攻勢」をしかけ、朝鮮での山地戦に見合った「最大の綿密性を期した作戦」とか「波状攻撃」とかいって、戦況に転換をもたらすことができるかのように騒ぎたてました。しかし、人民軍部隊は強力な反撃を加えて、敵の膨大な兵員と戦闘技術機材を掃滅し、「夏季攻勢」を完全に粉砕しました。その結果、敵も「夏季攻勢」の失敗を認めざるをえなくなりました。

 アメリカ帝国主義侵略者は、「夏季攻勢」で実現できなかった野望を「秋季攻勢」で達成しようと妄想し、停戦会談の裏で兵力を増強し、新たな大規模の攻勢を準備しています。

 敵が主な攻撃方向を戦線東部に定めていることは確定的です。敵は、1211高地と文登(ムントゥン)里、カチ峰、月飛(ウォルビ)山界線を掌握すると同時に、ひいては戦線を元山(ウォンサン)以北地域に押し上げようと妄想しています。したがって、敵は1211高地界線の突破を執拗に試みるはずです。

 1211高地は、戦略的に極めて重要な高地です。もし、1211高地を敵の手に渡すようになれば、金剛(クムガン)山をはじめ、多くの地域を失うようになります。諸君が1211高地を防衛できなければ、敵に金剛山を奪われ、そうなれば、その後方には陣をしいて戦える高地がないので、元山まで明け渡さなければならなくなります。1211高地がこのように戦略的に重要であるため、敵はそれを占領しようと必死になり、人民軍勇士もこの高地を守り抜くために犠牲をいとわず戦っているのです。

 また、諸君が1211高地を防衛できなければ、地上前線部隊の進撃に呼応して東西両海岸からの上陸を狙う敵の企図を破綻させることができません。海岸からの敵の上陸企図を挫折させるか否かも、1211高地を防衛するか否かに大きくかかっています。

 敵は数十万の大兵力を投入して地上で攻撃を強行する一方、東西両海岸からの上陸を企てています。アメリカ帝国主義侵略者はおびただしい艦船を東海の海上に集結し、航空機と新たな師団をいつでも戦闘に投入できるよう待機させています。また、敵は准陽(ヘヤン)郡麻田(マジョン)里一帯と安辺(アンビョン)原一帯に落下傘部隊を降下させ、
狡猾な兵力機動によって、我々の作戦を混乱させようと策しています。もちろん、我が方はこれに対処できるよう部隊を配置してあるので、それを重大視してはいません。

 我が方が1211高地の防衛に大きな意義を認めているのは、この高地を守ることによって、全戦線の戦況を我が方に有利に変えることができるからです。諸君は、1211耕地の寸土をも敵の手に渡さず、この高地を生命をとして防衛しなければなりません。

 1211高地を防衛するためにはまず、防御陣地を難攻不落の要塞にきずかなければなりません。

 当面する人民軍の第1の任務は、前線を堅固にすることです。アメリカ帝国主義のおおがかりな兵力増強によって祖国解放戦争は長期戦の様相をおびるようになったため、頑強な陣地防御戦をおこなうべきです。

 防御陣地を不抜の要塞につくるためには、前線の高地と海岸の陣地を徹底的に坑道化しなければなりません。

 坑道戦法は、現情勢と我が国の地形条件、彼我の力関係を考慮した新たな戦法であります。坑道化された陣地にたよって戦うならば、人民軍の兵員や戦闘技術機材を最大限に保護しながらも、より多くの敵を掃滅することができます。したがって、人民軍は今後、坑道陣地に依拠して戦う戦法を基本とすべきです。

 防御陣地の坑道化とならんで、戦闘員間、区分隊間、高地間をそれぞれ交通壕で連結し、堅固な野戦陣地を構築すべきです。こうすれば、敵機の爆撃や各種火砲の不意の攻撃から兵員や戦闘技術機材を保護することができます。

 すべての戦闘単位では防御陣地を坑道化し、それに依拠して頑強な防御戦を展開し、攻撃する敵に痛撃を加えなければなりません。諸君は非戦闘的損失を出さず、人民軍の兵力を維持強化することに格別の関心を払わなければなりません。

 次に、各種奇襲組の活動を強化すべきです。

 陣地防御戦の強化は、決して奇襲組の活動を排除するものではありません。頑強な陣地防御戦をおこなうと同時に、必要に応じて大胆な奇襲を敢行すべきです。そうすれば、より多くの敵兵力と戦闘機材を掃滅し、敵を混乱に陥れることができます。人民軍部隊は、奇襲組活動を強化して、随所で奇襲を決行し、敵の兵員と各種対象物、戦闘技術機材をたえず掃滅すべきです。

 次に、火力配備を緻密におこなうべきです。

 敵が兵員と戦闘機材を総動員して「波状攻撃」をつづけている状況のもとで、人民軍が兵員と機材を巧みに配置し、火力配備を緻密におこなえば、敵の狂気じみた攻撃を挫折させ、防御戦の成果を拡大することができます。火力配備においては、狙撃兵器を巧みに配置するのも重要ですが、より重要なのは砲火力を巧みに配備することです。

 あらゆる戦闘の組織や戦法の運用においてもそうですが、砲火力の配備においても、外国の経験を機械的に取り入れようとしてはなりません。あくまで、山が多く平地の少ない我が国の実状に即して朝鮮式に砲火力を配備すべきであります。

 各種の火砲を決定的に最前線に接近させて配置し、より多くの直射砲を高地に引き上げて配置すべきです。これは近代戦史にも、どの国の兵書にも記されていないことです。火砲を高地に引き上げて配置し、砲火力の密度を巧みに造成することによって、敵の火砲を味方の火砲で制圧し、味方の歩兵の戦闘行動を砲火力によって極力支援すべきです。こうして、歩兵と砲兵の緊密な協同によって、敵の兵員と軍事施設を破壊し、掃滅すべきです。また、部隊間の隣接点にたいする火力配備も手抜かりなくおこなうべきです。

 次に、軍需物資の輸送に深い関心を向けなければなりません。

 軍需物資の円滑な輸送は、前線の勝利を保障する基本的要因の一つです。

 アメリカ帝国主義者は、我が方の補給路を遮断して、我が軍部隊を現在の線から後退させるために、航空隊を投入して連日のように末輝(マルヒ)里、准陽、鉄嶺(チョルリョン)、高山(コサン)一帯に野蛮な爆撃をつづけています。敵が爆撃をおこなっているこれらの地帯は、我が軍部隊に軍需物資を補給する生命線とも言える極めて重要な地点です。これらの界線が封鎖されれば、1211高地をはじめ、戦線東部への輸送が困難になる恐れがあります。したがって、敵の狂気じみた盲爆に対処して、軍需物資の輸送をとどこおりなくおこなう万全の対策を講ずるべきです。

 軍需物資の輸送を円滑に保障するためには、対空火力の組織を緻密におこなうべきです。敵の盲爆がつづけられている地帯の峰々や重要な道路、橋梁の周辺に飛行機狩り組を配置して、敵機が意のままに来襲できなくし、来襲する敵機は残らず撃墜すべきです。これとならんで、防空監視哨所を増やし、防空監視を強化すべきです。

 道路補修作業もおこなわなければなりません。長雨で道路にひどいひずみが生じています。工兵区分隊を動員し、人民の支援を受けて、道路を早急に補修すべきです。そうすれば、軍需物資の輸送を円滑に保障できます。

 次に、軍人にたいする政治活動を活発におこなうべきです。

 政治活動をさかんにおこなえば、軍人の士気を高めることができます。軍人の士気を高めることは、戦闘勝利の基本的条件の一つです。敵の爆撃と砲撃が激しくなり、戦闘が苛烈になるほど、軍人にたいする政治活動を活発におこなうべきです。

 指揮官と政治幹部は、軍人に、祖国の寸土をも敵に渡してはならないという党の戦略的スローガンの真意をはっきりと認識させ、1211高地を防衛する気高い闘争で比類ない勇敢さと集団的英雄主義をいかんなく発揮するようにしなければなりません。

 これと同時に、軍人に必勝の信念をいだかせなければなりません。そのためには、我々の大業の正しさと戦争に勝利する要因を軍人に明確に認識させなければなりません。

 人民軍と人民は、敵の侵略から祖国と民主主義制度を守る崇高な正義の戦争をおこなっていますが、アメリカ帝国主義者は、朝鮮を植民地にするための不正義の侵略戦争をおこなっています。正義のために戦う人民は常に勝利し、不正義の戦争をおこなう侵略者は常に敗北するものです。これは動かしがたい歴史の発展法則であります。

 我々には、祖国解放戦争の勝利を保障しうる要因があります。我々には、すべての勝利の組織者であり、励まし手である朝鮮労働党があり、そのまわりにかたく団結した英雄的な人民軍と人民があります。

 人民軍と人民は、極めて高度の政治的・思想的決意をもっています。特に、人民軍勇士は最後の血の一滴までささげて、祖国の領土で敵を掃滅する強い敵がい心に燃えています。かれらは、この1年間の戦争過程を通じてさらに鍛えられ、豊かな戦闘経験をつみました。党の賢明な指導を受ける人民軍と人民の力は不敗であり、それは祖国解放戦争の最終的勝利をかちとる決定的要因であります。

 我が方の力は、政治的、思想的に敵軍とは比べようもなく強大であり、軍事技術的にも決して敵軍に劣りません。人民軍部隊は新たな戦闘技術機材で武装し、特に第一次進撃当初に比べて航空隊と砲兵部隊の威力は著しく強化されました。したがって、米軍機は、過去のように平壌以北の上空に自由に来襲できなくなりました。敵の宣伝する「技術万能」の時代はすでに過ぎ去りました。人民軍と人民は、必ずアメリカ帝国主義とその手先の侵略から祖国の領土を守り、敵を打ち破って祖国解放戦争の最後の勝利をかちとるでありましょう。

 次に、指揮官は軍人の生活に常に深い関心を向けなければなりません。

 戦闘員は、すべて貴重な宝であり、革命の戦友であります。軍人の生活に心を配るのは指揮官の気高い義務であります。指揮官は、軍人の衣食や休息の問題から戦闘行動にいたるまで、生活全般を親身になって、細かく心を配らなければなりません。

 前線部隊では軍人に野菜を十分に供給できないかも知れませんが、それでは軍人がビタミン欠乏症にかかる恐れがあります。それゆえ、どんなことがあっても軍人に野菜を供給し、それができないときには山菜や松葉を利用してでも、軍人のビタミン欠乏症を予防しなければなりません。大豆を送り届けるようにしますから、それでモヤシをつくり、軍人にあえものや汁をつくって与えるべきです。

 諸君は激しい戦闘のさ中にも、体の衰弱した軍人に休養をとらせているとのことですが、それは大変よいことです。虚弱者のために餅米を届けますから、餅をついて与えるようにすべきです。敵と決戦をくりひろげている戦闘員のためなら、なにも惜しむものはありません。指揮官は軍人が生活に不自由なことがあれば、直ちに申し出るようにすべきです。

 次に、人民との結びつきを強化すべきです。

 人民軍は、文字どおり労働者、農民をはじめ、勤労人民の子弟で組織され、勤労人民に奉仕する人民の軍隊であります。人民軍が人民との結びつきを強化するのは当然であり、軍隊は人民を援助し、人民は軍隊を援助しながら一丸となって戦えば、戦争に勝つことができます。

 戦時下にあって前線地帯の人民の生活にはゆとりがないだけに、絶対にかれらに負担をかけてはなりません。人民軍部隊が駐屯地域の人民の生活に心を配っているそうですが、人民の軍隊はそうでなくてはなりません。

 いま江原(カンウォン)道の人民が、人民軍を支援して立派に戦っています。アメリカ帝国主義者を撃滅し戦争に勝つためには、人民がひきつづき人民軍を援護しなければなりません。人民は、後方で農業を営み、破壊された道路や橋梁を復旧し、前線に弾薬や食糧を運んで高地で戦っている人民軍を極力支援すべきです。

 私は、諸君が党の戦略的方針を支持し、陣地を難攻不落の要塞にきずき、すべての戦闘を綿密に組織して、1211高地を必ず防衛するものと確信します。

出典:『金日成著作集』6巻


ページのトップ


inserted by FC2 system