金 日 成

敵背後における戦闘の強化について
 朝鮮人民軍第2軍団長に与えた指示
−1950年11月17日− 


 私は、諸君が敵の背後で勇敢に戦っていることを聞きました。諸君は、後退の困難な状況下においても、敵の背後で果敢な戦いを展開して襄陽(ヤンヤン)、高城(コソン)、通川(トンチョン)をはじめ各地を解放し、多くの愛国者と人民を救出しました。私は、諸君の敵背後での戦闘成果を満足に思い、高く評価するものです。諸君の戦いは、被占領地城の人民に勝利の信念と勇気を与え、アメリカ帝国主義者とかいらい李承晩一味に反対する闘争を大きく励ましました。現在、被占領地域の人民は、敵の野蛮な弾圧にも屈せず各地で遊撃闘争や地下闘争を果敢にくりひろげています。

 敵背後の困難な環境のなかにあっても屈することなく戦い、輝かしい勝利をかちとった部隊内のすべての将校、下士官、兵士に感謝を送ります。

 戦況は、我が方に有利に変わっています。我が方の第3段階第1次作戦によって、大きな打撃をこうむり攻勢をくじかれた敵は、清川(チョンチョン)江、長津(チャンジン)湖畔、漁郎(オラン)川一帯で立ちすくんでいます。それでも殺人鬼マッカーサーは、攻撃企図を放棄せず、今年のクリスマス以前に共和国北半部の全地域を占領すると豪語しながら「クリスマス総攻勢」を準備しています。

 現在、清川江一帯には、敵の主力であるアメリカ8軍管下の全兵力が集結しており、戦線東部には、アメリカ第10軍団と李承晩かいらい軍第1軍団が配置されています。敵の兵力配置状態と動静から見て、我が方が予測したとおり、敵の主攻撃方向は戦線西部であり、第2攻撃方向は戦線東部であります。敵は、我が軍に戦線西部で主攻撃を加える一方、戦線東部で第2攻撃を加えることによって、共和国北半部の全地域を一挙に占領しようと企んでいます。しかし、敵のこの企みは妄想にすぎません。

 軍事的に見て、敵の作戦計画と指揮系統には本質的な弱点があります。敵が占領している清川江の河口から漁郎川までの戦線の幅はおよそ400キロメートルに及び、またその大部分が険しい山岳地帯です。したがって、敵は戦線に数10個師団の大兵力を投入したにもかかわらず、戦線西部と東部の敵集団のあいだに隙が生じています。また敵は、主に大道路に沿って攻撃したため、敵の両翼がすでに露呈されています。これとともに、敵の指揮系統が混乱に陥っており、敵集団間の共同作戦が円滑に保障されていません。敵の主力であるアメリカ8軍とアメリカ10軍団は、駐日アメリカ極東軍司令官マッカーサーの指揮下で、それぞれ独立して行動しています。マッカーサーがいくら才気にたけていても、日本にいて前線の各軍団をまともに指揮統制することは不可能です。それゆえ、前線集団にたいする指揮と集団間の共同作戦にはいつも混乱が生じています。

 我が軍は、敵のこのような軍事上の弱点を利用して、その攻撃企図を破綻させ決定的な反撃に移るべきです。

 これからの作戦において、我が軍の主攻撃方向を戦線西部において全戦線にわたって反撃を開始し、主力部隊と敵背後の第2戦線部隊との共同作戦を積極的に展開し、敵の基本集団を清川江、長津湖畔、咸興(ハムフン)、清津(チョンジン)一帯で包囲せん滅し、共和国北半部の全地域を敵の占領から解放するでしょう。また、戦果を38度線の以南にひきつづき拡大し、戦争の最終的勝利を促進するでありましょう。これが、我が軍の基本的な作戦方針であります。

 我が軍は、今後の反撃において敵を駆逐するばかりでなく、いたるところで包囲せん滅し、その兵力を再収拾できないようにすべきです。まず、清川江界線に集結している敵の基本主力であるアメリカ第8軍を包囲せん滅し、戦線西部を突破すべきです。そうすれば、敵の全戦線で一大混乱が生じるでしょう。これとときを同じくして、清津と長津湖畔一帯の我が軍部隊は、それぞれ正面の敵を撃破し、咸興界線で迅速に合流し、第2攻撃方向である戦線東部に新たな包囲圏を形成すべきです。

 主力部隊の反撃開始と同時に、第2戦線部隊は、敵の背後に痛打を加えなければなりません。敵背後の部隊が、主力部隊の反撃に合流して猛烈な背後攻撃を加えれば、敵を一大包囲網に追い込んで全滅させることができます。

 第2軍団の基本的任務は、黄海(ホワンヘ)道と江原(カンウォン)道一帯の広い地帯に展開して積極的に敵の背後を攻撃することであります。各地における主導的かつ積極的な戦闘行動により、道路と橋梁を破壊、掌握し、敵の輸送路と退路を遮断し、退却する敵とその増援部隊を掃滅して反撃作戦の成果を保障しなければなりません。

 第2次作戦が開始されれば、第2軍団は平壌(ピョンヤン)−開城(ケソン)間、平壌−新渓(シンゲ)間、陽徳(ヤンドク)−元山(ウォンサン)間の道路を掌握し、敗走する敵を迎撃しなければなりません。また、我が軍主力部隊の攻撃成果が拡大するにつれて、敵が敗残兵と作戦予備部隊をくり出して、38度線界線で中間防御を試みることが予想されるので、速やかに38度線界線を掌握して敵の増援部隊をせん滅し、敵の中間防御企図を完全に粉砕しなければなりません。

 これと同時に、敵の占領地城を解放して、党および人民政権機関を建て直し、人民のなかで政治活動を強化してアメリカ帝国主義侵略者との闘争に奮起するようにしなければなりません。いまこの瞬間にも、我々の多くの父母兄弟が敵に無残に虐殺されています。我々は、一刻も早くかれらを救出しなければなりません。

 軍団が敵背後での戦闘任務を立派に遂行できるかどうかは、遊撃戦をいかにおこなうかに大きくかかっています。かつての抗日武装闘争時期に得た経験を生かして、遊撃戦を巧みに展開すべきです。

 遊撃戦で成果をおさめるためには、なによりもまず、部隊を軍事的、政治的に強化しなければなりません。

 部隊の編成を早急に終え、編成された連合部隊と部隊に活動地域と戦闘任務を正確に与えるべきです。これとあわせて、後退してくる個々の区分隊と軍人をすべて第2戦線部隊に編入させ協同して戦うようにすべきです。

 部隊の規律をさらに強化しなければなりません。いま一部の敵背後の部隊では、部隊内政治機関の組織体系を勝手に改める無規律な傾向が見られますが、このような行為は早急になくすべきです。

 軍人にたいする思想教育を活発におこなわなければなりません。部隊が敵の背後で戦っている状況下では、軍人にたいする思想教育に特別な関心を払うべきです。思想教育で重要なのは、軍人に必勝の信念を強めさせることであります。指揮官と政治幹部は、軍人に、我々には革命の参謀部である朝鮮労働党と、党のまわりにかたく団結した人民と勇敢な人民軍があり、多くの兄弟諸国人民と平和愛好諸国人民の支援があるため、必ず勝利するということ、そして、遠からず人民軍が中国人民志願軍部隊と協同して決定的な反撃を開始するということを明確に教えるべきです。そして、すべての軍人が勝利の確信をもって戦うようにすべきです。

 次に重要なのは、戦闘で主導権を掌握することです。戦闘で主導権を掌握するか否かは、戦闘の勝敗を左右する重要な問題です。ことに、遊撃戦で主導権を握る問題は極めて重要です。遊撃戦で主導権をしっかり握れば意のままに敵に打撃を与えることができますが、そうでない場合は受身に陥り戦闘で失敗を免れません。

 遊撃戦で主導権を掌握するためには、敵をよく知り、常に敵を先制しなければなりません。そのためには、敵情偵察を強化し、情勢と具体的状況に即して部隊を迅速に集中、分散、移動し、種々の戦闘行動を巧みにおこなわなければなりません。そして、いたるところで敵の指揮部、通信連絡所、倉庫、道路、橋梁を破壊、掃滅し、敵を不安におののかせなければなりません。

 次に、根拠地を正しく設定し、それをたえず拡大強化すべきです。

 諸君は敵の背後で戦っているだけに、根拠地を正しく設定し、それを拡大するために努力しなければなりません。軍事的、政治的に、自然地理的に有利な地帯に根拠地をつくり、それに依拠して部隊の組織・編成と軍事・政治訓練をおこない、部隊の休養と負傷兵の治療もおこなうべきです。敵背後の部隊はまた、根拠地において党および人民政権機関を建て直し、地元人民の生活を安定させ、政治活動をおこなって人民がアメリカ帝国主義侵略者に反対する闘争に決起するようにすべきです。今度、敵の背後に入るとき、解放地域で活動する党および政権機関の働き手も一部引率していくべきです。

 革命軍隊が敵との戦いで勝利する要因の一つは、人民の積極的な支援をえ、人民と一体となって戦うところにあります。我々が過去に、日本帝国主義者に反対する困難な武装闘争で勝利したのは、人民から絶大な支援をえて戦ったからです。

 諸君は敵の背後で戦うだけに、人民との結びつきを強めるために極力努力し、いつどこにあっても人民の強い支援を得るようにすべきです。常に人民を愛し、援助すべきです。人民の財産に損害を与えたり、その利益を侵すような行動をしては絶対になりません。食糧も敵から奪ってまかなうべきです。やむをえず人民から食糧の援助をえる場合は、必ず代価を支払わなければなりません。金の持ち合わせがなくて支払えないときは、後日、返済できるように証明書を書いて渡すべきです。

 これと同時に、敵の背後で活動している人民遊撃隊との連係を強めなければなりません。いま、被占領地城の人民は、私の10月11日の放送演説の方針に従い、各地で人民遊撃隊を組織して勇敢に戦っています。諸君は、かれらがより強く戦えるよう極力援助し、かれらも軍団の統一的な指揮のもとに行動するようにすべきです。

 次に、軍人の生活をよく気遣うべきです。敵の背後で戦うだけに、食糧や被服、負傷兵の治療などをはじめ、種々の難問題があると思います。指揮官は困難なときほど、軍人の生活を責任をもって気遣わなければなりません。軍人の一人ひとりが、革命の戦友であり、国の貴い宝であります。後退してくる困難な状況下においても、諸君が一人の負傷兵も残さず全員連れてきたのは、たいへん立派なことです。兵士を愛しいたわるのは、革命軍指揮官の任務であり、我が党の要求であります。指揮官は、これを片時も忘れてはなりません。敵の背後で戦う軍人はまだ夏服を着ているのですから、どんなに寒いでしょう。補給物資はありますが、前線の状況が複雑で送り届けることができませんでした。今度、諸君が赴くときに、かれらの冬服も持っていくべきです。また、かれらが食事を欠かさないように糧米や食肉も十分用意していかなければなりません。

 終わりに、敵軍切り崩し工作を巧みに組織し、特に捕虜にたいする工作を正しくおこなうべきです。敵の背後で捕虜を連れて歩くことはできません。かれらに我が党の捕虜政策をよく解説し、二度とアメリカ帝国主義者とかいらい李承晩一味の手先になったり、弾よけになるようなことがないようによく教育して、郷里に帰してやるべきです。

 私は、軍団の全将兵が党の方針に従って敵背後での戦闘を積極的に展開し、当面の作戦の勝利的遂行はもちろん、戦争の最終的勝利を早めるうえに大きく寄与するものと確信します。

出典:『金日成著作集』6巻


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